説明

成膜方法

【課題】膜表面に発現した光触媒作用を速やかに消失させることができる光触媒性薄膜を基板の表面に成膜することができる成膜方法を提供する。
【解決手段】真空容器11の内部に形成された成膜プロセス領域20Aで、少なくともチタン、亜鉛及びタンタルを含む群から選択される金属で構成されたターゲット22a,22bをスパッタし、基板Sに金属で構成される膜原料物質を付着させるスパッタ工程と、成膜プロセス領域20Aとは離間して形成された反応プロセス領域60Aで、少なくとも反応性ガスのプラズマを膜原料物質に接触させて膜原料物質で構成される第1の薄膜を生成させる反応工程と、スパッタ工程及び反応工程を複数回繰り返し、第1の薄膜を複数回堆積させて第2の薄膜を形成する薄膜堆積工程とを有する成膜方法であって、第2の薄膜に対し、反応性ガスとともに不活性ガスを積極的に含む混合ガスのプラズマを第2の薄膜に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンに代表される酸化物光触媒に、そのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光(例えば紫外光)が照射されると、光励起により光触媒作用を発現することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−87016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した酸化物光触媒による光触媒作用の発現機構は、光励起により伝導帯に電子を生じ、価電子帯に正孔を生じることに起因するものと考えられている。電子の強い還元力、正孔の強い酸化力により、光触媒に接触してくる有機物や窒素酸化物を水や炭酸ガスなどに分解することができ、防汚、防臭、抗菌機能などの諸機能が発揮される。すなわち、上記酸化物光触媒に例えば紫外光を照射すると、その酸化物光触媒表面の水の接触角が低下し、高度に親水化された状態となる。その一方で、紫外光の照射を停止すると、水の接触角が20〜30度程度の元の状態に戻る。
【0005】
しかしながら、一旦、十分に親水化した酸化物光触媒は、少なくとも数十時間もの間、紫外光が当たらずとも高度な親水化状態が持続される。従って、表面エネルギー状態を元の状態に戻すことを望む場合、数十時間もの長い時間を無駄に費やさなければならないという問題があった。
【0006】
発明が解決しようとする課題は、膜表面に発現した光触媒作用を速やかに消失させることができる光触媒性薄膜を基板の表面に成膜することができる成膜方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の解決手段では、発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明したが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0008】
この発明は、真空容器(11)の内部に形成された成膜プロセス領域(20A)で、少なくともチタン、亜鉛及びタンタルを含む群から選択される金属で構成されたターゲット(22a,22b)をスパッタし、基板(S)に金属で構成される膜原料物質を付着させるスパッタ工程と、成膜プロセス領域(20A)とは離間して形成された反応プロセス領域(60A)で、少なくとも反応性ガスのプラズマを膜原料物質に接触させて膜原料物質の化合物又は不完全化合物で構成される第1の薄膜を生成させる反応工程と、成膜プロセス領域(20A)と反応プロセス領域(60A)の間で基板(S)を移動させ、スパッタ工程及び反応工程を複数回繰り返し、第1の薄膜を複数回堆積させて第2の薄膜を形成する薄膜堆積工程とを有する成膜方法であって、第2の薄膜に対し、反応性ガスとともに不活性ガスを積極的に含む混合ガスのプラズマを接触させることによって上記課題を解決する。
【0009】
「不活性ガスを積極的に含む」とは、意図に反し、結果として不活性ガスが含まれることとなる場合を排除する趣旨である。例えば、成膜プロセス領域に導入される不活性ガスが何らかの理由で該領域から漏れ、これが反応プロセス領域に紛れ込み、結果として反応プロセス領域に導入される反応性ガスと混合して混合ガスを形成する場合は除かれる。
【発明の効果】
【0010】
上記発明によれば、基板の表面に光触媒性の第2の薄膜を堆積させた後、反応性ガスと不活性ガスを含む混合ガスのプラズマを第2の薄膜に接触させる後処理を施すことにより、膜表面に発現した光触媒作用を速やかに消失させることが可能な光触媒性薄膜を基板の表面に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本実施形態に係る成膜装置を上面から見た説明図である。
【図2】図2は図1の成膜装置を側面から見た説明図である。
【図3】図3は図1の成膜装置の成膜プロセス領域周辺を拡大して示した説明図である。
【図4】図4は図1の成膜装置の反応プロセス領域周辺を拡大して示した説明図である。
【図5】図5は図1の成膜装置を用いた成膜方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は実施例2で得られた酸化チタン薄膜断面のSEM画像である。
【図7】図7は実施例2〜4の酸化物薄膜の紫外線照射時間と水に対する接触角との関係を示すグラフである。
【図8】図8は実施例2〜4の酸化物薄膜の暗所放置時間と水に対する接触角との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、上記発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
《成膜装置》
まず、本発明の製造方法を実現することができる一例としての成膜装置を説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る成膜装置1は、真空容器11と、回転ドラム13と、モータ17と、スパッタ手段20と、スパッタガス供給手段30と、プラズマ発生手段60と、ガス供給手段70とを含む。なお、図中では、スパッタ手段20及びプラズマ発生手段60は破線で、スパッタガス供給手段30及びガス供給手段70は一点鎖線で表示する。
【0014】
真空容器11は、公知の成膜装置で通常用いられるようなステンレススチール製で、ほぼ直方体形状をした中空体である。真空容器11の内部は、開閉扉としての扉11Cによって成膜室11Aとロードロック室11Bに分けられる。真空容器11の上方には扉11Cを収容する扉収納室(不図示)が接続されており、扉11Cは、真空容器11の内部と扉収納室の内部との間でスライドすることで開閉する。
【0015】
真空容器11には、ロードロック室11Bと真空容器11の外部とを仕切るための扉11Dが設けられている。扉11Dはスライド又は回動することで開閉する。成膜室11Aには排気用の配管16a−1が接続され、この配管16a−1には真空容器11の内部を排気するための真空ポンプ15aが接続されている。真空容器11の内部において配管16a−1には開口が形成されており、この開口は真空容器11の内部の成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aとの間に位置している。これにより、成膜プロセス領域20Aで飛散した膜原料物質を真空ポンプ15aで吸引することが可能となり、成膜プロセス領域20Aから飛散した膜原料物質が反応プロセス領域60Aに侵入してプラズマ発生手段60を汚染したり、成膜プロセス領域20Aの外に位置する基板Sの表面に付着して汚染したりすることを防止している。
【0016】
ロードロック室11Bには排気用の配管16bが接続され、この配管16bには真空容器11の内部を排気するための真空ポンプ15bが接続されている。
【0017】
なお、真空容器11は、ロードロック室11Bを備えるロードロック方式に限定されず、ロードロック室11Bを設けないシングルチャンバ方式を採用することも可能である。また、複数の真空室を備え、それぞれの真空室で独立に成膜を行うことが可能なマルチチャンバ方式を採用することも可能である。
【0018】
回転ドラム13は、表面に薄膜を形成させる基板Sを真空容器11の内部で保持するための筒状の部材であり、成膜対象移動手段としての機能を有する。
【0019】
回転ドラム13は、複数の基板保持板13aと、フレーム13bと、基板保持板13a及びフレーム13bを締結する締結具13cとを含む。
【0020】
基板保持板13aはステンレススチール製の平板状部材で、基板Sを保持するための複数の基板保持孔を、基板保持板13aの長手方向に沿って板面中央部に一列に備えている。基板Sは、基板保持板13aの基板保持孔に収納され、脱落しないようにネジ部材等を用いて基板保持板13aに固定される。また、基板保持板13aの長手方向の両端部には、締結具13cを挿通可能なネジ穴が板面に設けられている。
【0021】
フレーム13bはステンレススチール製からなり、上下に配設された2つの環状部材で構成されている。フレーム13bのそれぞれの環状部材には、基板保持板13aのネジ穴と対応する位置にネジ穴が設けられている。基板保持板13aとフレーム13bはボルト及びナットからなる締結具13cを用いて固定される。具体的には、ボルトを基板保持板13a及びフレーム13bのネジ穴に挿通してナットで固定することにより固定される。
【0022】
なお、回転ドラム13は、平板状の基板保持板13aを複数配置しているため横断面が多角形をした多角柱状をしているが、このような多角柱状のものに限定されず、円筒状や円錐状のものであってもよい。
【0023】
回転ドラム13は、成膜室11Aとロードロック室11Bとの間を移動できるように構成されている。本実施形態では、真空容器11の底面にレール(不図示)が設置されており、回転ドラム13はこのレールに沿って移動する。回転ドラム13は、円筒の筒方向の回転軸線Zが真空容器11の上下方向になるように真空容器11の内部に配設される。基板保持板13aをフレーム13bに取り付ける際やフレーム13bから取り外す際には、回転ドラム13はロードロック室11Bに搬送されて、このロードロック室11B内で基板保持板13aがフレーム13bに着脱される。一方、成膜中にあっては、回転ドラム13は成膜室11Aに搬送されて、成膜室11A内で回転可能な状態になっている。
【0024】
回転ドラム13の下面中心部はモータ回転軸17aの上面と係合する形状になっている。回転ドラム13とモータ回転軸17aとは、モータ回転軸17aの中心軸線と回転ドラム13の中心軸線とが一致するよう位置決めされ、両者が係合することにより連結されている。回転ドラム13下面のモータ回転軸17aと係合する面は絶縁部材で構成されている。これにより、基板Sの異常放電を防止することが可能となる。また、真空容器11とモータ回転軸17aとの間は、Oリングで気密が保たれている。
【0025】
回転ドラム13の上面にはドラム回転軸18が設けられており、回転ドラム13の回転に伴ってドラム回転軸18も回転するように構成されている。真空容器11の上壁面には孔部が形成されており、ドラム回転軸18はこの孔部を貫通して真空容器11の外部に通じている。孔部の内面には軸受が設けられており、回転ドラム13の回転をスムーズに行えるようにしている。また、真空容器11とドラム回転軸18との間は、Oリングで気密が保たれている。
【0026】
真空容器11の内壁には、回転ドラム13へ面した位置に仕切壁12と仕切壁14が立設されている。仕切壁12と仕切壁14は、いずれも真空容器11と同じステンレススチール製の部材である。仕切壁12と仕切壁14は、いずれも上下左右に一つずつ配設された平板部材により構成されており、真空容器11の内壁面から回転ドラム13に向けて四方を囲んだ状態となっている。これにより、成膜プロセス領域20A及び反応プロセス領域60Aが真空容器11の内部でそれぞれ区画される。
【0027】
真空容器11の側壁は、外方に突出した横断面凸状をしており、突出した壁面にはスパッタ手段20が設けられている。成膜プロセス領域20Aは、真空容器11の内壁面と、仕切壁12と、回転ドラム13の外周面と、スパッタ手段20により囲繞された領域に形成されている。成膜プロセス領域20Aでは、成膜対象としての基板Sの表面に膜原料物質を付着させるスパッタ処理が行われる。
【0028】
成膜プロセス領域20Aから回転ドラム13の回転軸を中心として90°離間した真空容器11の側壁もまた、外方に突出した横断面凸状をしており、突出した壁面にはプラズマ発生手段60が設けられている。反応プロセス領域60Aは、真空容器11の内壁面と、仕切壁14と、回転ドラム13の外周面と、プラズマ発生手段60により囲繞された領域に形成されている。反応プロセス領域60Aでは、基板Sの表面に付着した膜原料物質と所定ガス(本実施形態では不活性ガス及び反応性ガス)との反応が行われる。
【0029】
図3に示すように、成膜プロセス領域20Aにはスパッタ手段20が設置されている。スパッタ手段20は、一対のターゲット22a,22bと、ターゲット22a,22bを保持する一対のマグネトロンスパッタ電極21a,21bと、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに電力を供給する交流電源24と、交流電源24からの電力量を調整する電力制御手段としてのトランス23とを含む。
【0030】
真空容器11の壁面は外方に突出しており、この突出部の内壁にマグネトロンスパッタ電極21a,21bが側壁を貫通した状態で配設されている。このマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、接地電位にある真空容器11に不図示の絶縁部材を介して固定されている。マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、複数の磁石が所定の方向に配置された構造を有している。マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、トランス23を介して交流電源24に接続され、両電極に1kHz〜100kHzの交番電界が印加できるように構成されている。
【0031】
マグネトロンスパッタ電極21a,21bには、ターゲット22a,22bがそれぞれ保持されている。ターゲット22a,22bは、膜原料物質を平板状に形成したものであり、図3に示すように、ターゲット22a,22bの長手方向が回転ドラム13の回転軸線Zと平行になり、しかも回転ドラム13の側面に対向するように設置されている。
【0032】
成膜プロセス領域20Aの周辺にはアルゴン等のスパッタガスを供給するスパッタガス供給手段30が設けられている。スパッタガス供給手段30は、スパッタガス貯蔵手段としてのスパッタガスボンベ32と、スパッタガス供給路としての配管35a及び配管35cと、スパッタガスの流量を調整するスパッタガス流量調整手段としてのマスフローコントローラ31とを含む。
【0033】
スパッタガスボンベ32、マスフローコントローラ31はいずれも真空容器11の外部に設けられている。マスフローコントローラ31は、スパッタガスを貯蔵する単一のスパッタガスボンベ32に配管35cを介して接続されている。
【0034】
マスフローコントローラ31は配管35aに接続されており、配管35aの一端は真空容器11の側壁を貫通して成膜プロセス領域20A内のターゲット22a,22bの近傍に延びている。図2に示すように、配管35aの先端部はターゲット22a,22bの下部中心付近に配設され、その先端にはターゲット22a,22bの前面中心方向に向けて導入口35bが開口している。
【0035】
図3に戻り、マスフローコントローラ31はガスの流量を調節する装置であり、スパッタガスボンベ32からのガスが流入する流入口と、スパッタガスを配管35aへ流出させる流出口と、ガスの質量流量を検出するセンサと、ガスの流量を調整するコントロールバルブと、流入口より流入したガスの質量流量を検出するセンサと、センサにより検出された流量に基づいてコントロールバルブの制御を行う電子回路とを含む。電子回路には外部から所望の流量を設定することが可能となっている。
【0036】
図4に示すように、反応プロセス領域60Aに対応する真空容器11の壁面には、プラズマ発生手段60を設置するための開口が形成されている。また、反応プロセス領域60Aには、Y字型の配管75aが接続されており、この配管75aは真空容器11の外で分岐している。分岐した配管75aの一端にはマスフローコントローラ72が接続されており、このマスフローコントローラ72は更に反応性ガスボンベ71に接続されている。また、分岐した配管75aの他端にはマスフローコントローラ74が接続されており、このマスフローコントローラ74は更に不活性ガスボンベ73に接続されている。このため、反応プロセス領域60A内に、反応性ガスボンベ71から反応性ガスと、不活性ガスボンベ73から不活性ガスとを供給することができるようになっている。
【0037】
反応プロセス領域60Aに面する側の仕切壁14の壁面には、熱分解窒化硼素(PBN)からなる保護層が被覆されている。さらに、真空容器11の内壁面の反応プロセス領域60Aに面する部分にもPBNからなる保護層が被覆されている。PBNは、化学的気相成長法(CVD)を利用した熱分解法によって仕切壁14や真空容器11の内壁面へ被覆される。このような保護層は、必要に応じて設けることができる。
【0038】
プラズマ発生手段60は、反応プロセス領域60Aに面して設けられており、ケース体61と、誘電体板62と、アンテナ63と、マッチングボックス64と、高周波電源65とを含む。
【0039】
ケース体61は、真空容器11の壁面に形成された開口11aを塞ぐ形状を備え、ボルト(不図示)で真空容器11の開口11aを塞ぐように固定されている。ケース体61が真空容器11の壁面に固定されることで、プラズマ発生手段60は真空容器11の壁面に取り付けられている。ケース体61はステンレスなどで構成される。誘電体板62は、板状の誘電体で形成されている。本実施形態において、誘電体板62は石英で形成されているが、Al等のセラミックス材料で形成されたものでもよい。誘電体板62は、図示しない固定枠でケース体61に固定されている。誘電体板62がケース体61に固定されることで、ケース体61と誘電体板62によって囲繞された領域にアンテナ収容室61Aが形成される。
【0040】
ケース体61に固定された誘電体板62は、開口11aを介して真空容器11の内部(反応プロセス領域60A)に臨んで設けられている。このとき、アンテナ収容室61Aは、真空容器11の内部と分離している。すなわち、アンテナ収容室61Aと真空容器11の内部とは、誘電体板62で仕切られた状態で独立した空間を形成している。また、アンテナ収容室61Aと真空容器11の外部は、ケース体61で仕切られた状態で独立の空間を形成している。このように独立の空間として形成されたアンテナ収容室61Aの中に、アンテナ63が設置されている。なお、アンテナ収容室61Aと真空容器11の内部、アンテナ収容室61Aと真空容器11の外部との間は、それぞれOリングで気密が保たれている。
【0041】
本実施形態では、配管16a−1から配管16a−2が分岐している。この配管16a−2はアンテナ収容室61Aに接続されており、アンテナ収容室61Aの内部を排気して真空状態にする際の排気管としての役割を備えている。
【0042】
配管16a−1には、真空ポンプ15aから真空容器11の内部に連通する位置にバルブV1、V2が設けられている。また、配管16a−2には、真空ポンプ15aからアンテナ収容室61Aの内部に連通する位置にバルブV3が設けられている。バルブV2,V3のいずれかを閉じることで、アンテナ収容室61Aの内部と真空容器11の内部との間での気体の移動は阻止される。真空容器11の内部の圧力や、アンテナ収容室61Aの内部の圧力は、真空計(不図示)で測定される。
【0043】
成膜装置1には制御装置(不図示)が備えられている。この制御装置には、真空計の出力が入力される。制御装置は、入力された真空計の測定値に基づいて、真空ポンプ15aによる排気を制御して、真空容器11の内部やアンテナ収容室61Aの内部の真空度を調整する機能を備える。制御装置がバルブV1,V2,V3の開閉を制御することで、真空容器11の内部とアンテナ収容室61Aの内部を同時に、又は独立して排気できる。
【0044】
アンテナ63は、高周波電源65から電力の供給を受けて真空容器11の内部(反応プロセス領域60A)に誘導電界を発生させ、反応プロセス領域60Aにプラズマを発生させる手段である。アンテナ63は、銅で形成された円管状の本体部と、本体部の表面を被覆する銀で形成された被覆層を備える。すなわち、アンテナ63の本体部を安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い銅で円管状に形成し、アンテナ63の表面を銅よりも電気抵抗の低い銀で被覆している。これにより、高周波に対するアンテナ63のインピーダンスを低減して、アンテナ63に電流を効率よく流すことによりプラズマを発生させる効率を高めている。本実施形態では、高周波電源65からアンテナ63に周波数100kHz〜50MHzの交流電圧を印加して、反応プロセス領域60Aに反応性ガスのプラズマを発生させるように構成されている。
【0045】
アンテナ63は、マッチング回路を収容するマッチングボックス64を介して高周波電源65に接続されている。マッチングボックス64内には、図示しない可変コンデンサが設けられている。アンテナ63は、導線部を介してマッチングボックス64に接続されている。導線部はアンテナ63と同様の素材からなる。ケース体61には、導線部を挿通するための挿通孔が形成されており、アンテナ収容室61A内側のアンテナ63と、アンテナ収容室61A外側のマッチングボックス64とは、挿通孔に挿通される導線部を介して接続される。導線部と挿通孔との間にはシール部材が設けられ、アンテナ収容室61Aの内外で気密が保たれる。
【0046】
反応プロセス領域60Aの内部及びその周辺にはガス供給手段70が設けられている。ガス供給手段70は、反応性ガスを貯蔵する反応性ガスボンベ71と、反応性ガスボンベ71より供給される反応性ガスの流量を調整するマスフローコントローラ72と、不活性ガスを貯蔵する不活性ガスボンベ73と、不活性ガスボンベ73より供給される不活性ガスの流量を調整するマスフローコントローラ74と、これらのガスを反応プロセス領域60Aに導入する配管75aとを含む。すなわち、本実施形態では、ガス供給手段70から供給される反応性ガスと不活性ガスのそれぞれの流量を、マスフローコントローラ72,74にて個別に調整することができるようになっている。
【0047】
なお、反応性ガスボンベ71と不活性ガスボンベ73は、成膜プロセス領域20Aのスパッタガスボンベ32と同様の装置とすることが可能である。また、マスフローコントローラ72とマスフローコントローラ74は、成膜プロセス領域20Aのマスフローコントローラ31と同様の装置を採用することが可能である。
【0048】
本実施形態の成膜装置1は、スパッタによる膜原料物質を供給する成膜プロセス領域20Aと、膜原料物質と反応性ガスの反応を行う反応プロセス領域60Aが真空容器11内の離間した位置に分離した状態で形成されている。このため、従来の一般的な反応性スパッタリング装置を用いた場合のように、ターゲット22a,22bと反応性ガスが反応して異常放電が起こるとの不都合を生じにくい。従って、従来のように基板Sの温度を上昇させて反応性を向上させる必要が無く、低い温度で十分に反応を行うことが可能となる。これにより、耐熱性の低いプラスチック樹脂などで構成される基板Sに対しても、十分に反応を行うことが可能となり、膜質のよい光触媒性薄膜を形成することができる。
【0049】
本実施形態の成膜装置1は、基板Sの温度を制御するための温度制御手段を備えていないが、温度制御手段を備えていなくても、上述した理由により基板Sの温度を上昇させる必要がないため、100℃以下の低温で成膜を行うことが可能となっている。なお、基板Sの温度を制御する温度制御手段を設けて基板Sの温度を所定の温度とすることができるのはいうまでもない。この場合、基板Sの耐熱性温度より低い温度となるように温度制御手段を制御することが好ましい。具体的には、温度を上昇させる加熱手段と、温度を下降させる冷却手段の両方を設けると共に、基板Sの配置される位置に温度センサを設けて、この温度センサで検知した温度に基づいて温度制御手段をフィードバック制御すると好ましい。
【0050】
《成膜方法》
次に、図1〜図4に示す成膜装置1を用いた成膜方法の一例を説明する。
【0051】
(1)まず、図5のステップ(以下「S」と略記する。)1にて、成膜の前準備をする。具体的には、例えば、まずマグネトロンスパッタ電極21a,21bの上にターゲット22a,22bを保持させる。これとともに、真空容器11の外で回転ドラム13に基板Sをセットし、真空容器11のロードロック室11B内に収容する。
【0052】
ターゲット22a,22bとしては、例えばチタン(Ti)の他に、その酸化物が紫外光により光触媒作用を示す他の金属材料、例えば亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)若しくはこれらの少なくとも2つの合金、例えばTiとZnの合金を用いることもできる。以下では、ターゲット22a,22bとして、チタン(Ti)を用いる場合を例示する。
【0053】
基板Sとしては、酸化ケイ素(SiO)からなるガラス材料(例えば石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスなど)の他に、プラスチック材料やセラミックス材料、金属などで構成することもできる。本実施形態では、上述した理由により基板Sの温度を上昇させる必要がないので、基板Sの構成材料にプラスチック材料を用いることができる。
【0054】
次に、図示しないレールに沿って回転ドラム13を成膜室11Aに移動させた後、扉11C及び扉11Dを閉じた状態で真空容器11内を密閉し、真空ポンプ15aを用いて真空容器11内を10−5〜0.1Pa程度の高真空状態にする。このとき、バルブV1,V2,V3が開放され、アンテナ収容室80Aも同時に排気される。
【0055】
次に、真空容器11の下部に設けられたモータ17を駆動させることでモータ回転軸17aを回転させる。この回転に伴って、モータ回転軸17aに連結された回転ドラム13は回転軸線Zを中心に回転する。各基板Sは、回転ドラム13上に保持されているため、回転ドラム13が回転することで回転軸線Zを公転軸として公転する。回転ドラム13の回転速度は、例えば50rpm以下(0rpmを除く)、好ましくは10rpm以下(0rpmを除く)、より好ましくは6rpm以下(0rpmを除く)の範囲で適宜選択される。
【0056】
モータ17によって回転ドラム13が回転すると、回転ドラム13の外周面に保持された基板Sが公転して、成膜プロセス領域20Aに面する位置と反応プロセス領域60Aに面する位置との間を繰り返し移動することになる。基板Sを公転させることで、後述するように、成膜プロセス領域20Aでのスパッタ処理と、反応プロセス領域60Aでの反応処理とが順次繰り返し行われて、基板Sの表面に最終薄膜(第2の薄膜)を生成させることになる。
【0057】
(2)次に、図5のS2にて、成膜プロセス領域20Aでの処理を行う。
【0058】
真空容器11内の圧力の安定を確認した後、成膜プロセス領域20A内の圧力を例えば0.05〜0.2Paに調整し、その後、成膜プロセス領域20A内にスパッタガスをスパッタガスボンベ32からマスフローコントローラ31で流量を調節して配管35a内に導入する。配管35aに導入されたスパッタガスは、導入口35bより成膜プロセス領域20Aに配置されたターゲット22a,22bの前面に導入され、これにより成膜プロセス領域20A内のスパッタ雰囲気を調整する。
【0059】
スパッタガスとしては、例えばアルゴンやヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。以下ではアルゴンガスの場合を例示する。スパッタガスの導入流量は、例えば100〜700sccm程度に調整される。なお、「sccm」は、0℃、101325Paにおける1分間あたりの流量を表すもので、cm/minに等しい。
【0060】
次に、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに交流電源24から、例えば周波数1kHz〜100kHzの交流電圧を印加し、ターゲット22a、22bに交番電界が掛かるようにする。本実施形態では、基板Sの構成材質を問わず、例えば4kW〜6kW程度の電力(スパッタ電力)を供給する。これにより、ある時点においてはターゲット22aがカソード(マイナス極)となり、その時ターゲット22bは必ずアノード(プラス極)となる。次の時点において交流の向きが変化すると、今度はターゲット22bがカソード(マイナス極)となり、ターゲット22aがアノード(プラス極)となる。このように一対のターゲット22a、22bが、交互にアノードとカソードとなることにより、プラズマが形成され、カソード上のターゲットに対してスパッタを行う。
【0061】
成膜プロセス領域20Aにスパッタガス供給手段30からアルゴンガスが供給されて、ターゲット22a,22bの周辺がアルゴンガス雰囲気になった状態で、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに交流電源24から交流電圧を供給すると、ターゲット22a,22b周辺のアルゴンガスの一部が電子を放出してイオン化する。
【0062】
マグネトロンスパッタ電極21a,21bに配置された磁石によりターゲット22a,22bの表面に漏洩磁界が形成されるため、この電子はターゲット22a,22bの表面近傍に発生した磁界中を、トロイダル曲線を描きながら周回する。この電子の軌道に沿って強いプラズマが発生し、このプラズマ中のアルゴンガスのイオンが負電位状態のターゲットに向けて加速され、ターゲット22a,22bに衝突することでターゲット22a,22bの表面の原子や粒子(本実施形態ではチタン原子やチタン粒子)が叩き出される(スパッタ)。
【0063】
スパッタを行っている最中は、基板温度を例えば室温(基板Sがプラスチックの場合。基板Sがガラスの場合の基板温度は例えば50〜80℃とする)に保持し、回転ドラム13を回転駆動させて、基板Sを移動させながら、基板Sの表面に、叩き出された薄膜の原料である膜原料物質としてのチタン原子やチタン粒子を付着させる。
【0064】
スパッタを開始する時には、スパッタが安定して行われるようになるまでターゲット22a、22bと回転ドラム13との間をプレスパッタシールドで遮断し、スパッタが安定して行われるようになった後にターゲット22a、22bと回転ドラム13との間を開放する。これにより、スパッタが安定してから基板Sへスパッタ原子(チタン原子やチタン粒子)を堆積させることができる。
【0065】
スパッタ処理後に堆積するスパッタ原子は、本実施形態ではチタンの不完全酸化超薄膜であると考えられる。ここで超薄膜とは、超薄膜が複数回堆積されて最終的な薄膜(第2の薄膜)となることから、この「薄膜」との混同を防止するために用いた用語であり、最終的な「薄膜」より十分薄いという意味である。
【0066】
なお、スパッタ電極21a、21bと回転ドラム13との間に、補正板及び遮蔽板(いずれも図示省略)を設け、遮蔽板の形状に応じた膜厚分布の薄膜を形成させるようにしてもよい。
【0067】
(3)次に、図5のS3にて、反応プロセス領域60Aでの処理を行う。具体的には、回転ドラム13の回転駆動により基板Sを、成膜プロセス領域20Aから反応プロセス領域60Aに移動させる。反応プロセス領域60Aでは、回転ドラム13の回転駆動により、成膜プロセス領域20Aから反応プロセス領域60Aに移動してきた基板Sの表面に付着したチタンの不完全酸化超薄膜をプラズマ処理し、チタンの完全酸化物(第1の薄膜)を生成させる。
【0068】
本実施形態では、反応プロセス領域60Aには、少なくとも、反応性ガスボンベ71から配管75aを通じて反応性ガスを導入させる。これとともに、不活性ガスボンベ73から配管75aを通じて不活性ガスを積極的に導入することもできる。以下では、反応プロセス領域60Aには、反応性ガスボンベ71から配管75aを通じて反応性ガスを導入させるとともに、不活性ガスボンベ73から配管75aを通じて不活性ガスを積極的に導入させる場合を例示する。
【0069】
なお、「積極的に導入する」とは、意図に反し、結果として不活性ガスが含まれることとなる場合を排除する趣旨である。例えば、成膜プロセス領域20Aに導入される不活性ガスが何らかの理由で該領域20Aから漏れ、これが反応プロセス領域60Aに紛れ込み、結果として反応プロセス領域60Aに導入される反応性ガスと混合して混合ガスを形成する場合は除かれる。
【0070】
反応性ガスとしては、酸素ガスに加え、オゾンガスなどをさらに添加してもよい。以下では酸素ガスのみを使用する場合を例示する。不活性ガスとしては、アルゴンガスに限定されず、ネオンガス、ヘリウムガスなどであってもよい。以下ではアルゴンガスを例示する。
【0071】
反応プロセス領域60Aへ積極的に導入するアルゴンガスの流量は、特に制限されず、酸素ガスを導入する効果を阻害しない程度の少量(酸素ガス100sccmに対するアルゴンガスの導入量が例えば数〜数十sccm)でもよく、あるいは酸素ガスの導入流量と同一流量程度若しくはそれ以上の流量で導入することもできる。
【0072】
反応プロセス領域60Aの圧力は、例えば0.07〜1Paに維持される。また、少なくとも反応プロセス領域60Aにプラズマを発生させている際中は、アンテナ収容室80Aの内部の圧力は、0.001Pa以下を保持する。
【0073】
反応性ガスボンベ71や不活性ガスボンベ73から酸素ガスやアルゴンガスを導入した状態で、アンテナ63に高周波電源65から、例えば100kHz〜50MHzの交流電圧が供給されると、反応プロセス領域60A内のアンテナ63に面した領域にプラズマが発生する。
【0074】
本実施形態では、基板Sがガラス基板の場合、例えば3kW以上、好ましくは4kW以上、より好ましくは4.5kW以上の大きな電力(プラズマ処理電力)を供給し、基板Sがプラスチック樹脂材料で構成される場合には、例えば1kW以下、好ましくは0.8kW以下、より好ましくは0.5kW以下の小さな電力を供給する。
【0075】
発生したプラズマ中には、少量の酸素ガスの活性種が存在し、この酸素ガスの活性種は、反応プロセス領域60Aに導かれる。そして、回転ドラム13が回転して、チタンの不完全酸化超薄膜が付着した基板Sが反応プロセス領域60Aに導入されると、反応プロセス領域60Aでは、チタンを反応させる工程を行う。これにより、基板Sの表面に、チタンの完全酸化物である酸化チタン(TiO)薄膜(第1の薄膜)が生成する。
【0076】
本実施形態では、図5のS2における成膜プロセス領域20Aでの処理と、図5のS3における反応プロセス領域60Aでの処理を、基板Sの表面に形成される薄膜が所定の膜厚となるまで複数回繰り返す(薄膜堆積工程)。これにより、目的とする数nm〜数百nm程度の膜厚を有する最終薄膜(第2の薄膜)が基板Sの表面に形成される。
【0077】
本実施形態では、目的の膜厚よりも相当程度薄い薄膜を基板Sの表面に付着するスパッタ処理と、この薄膜に対して酸化などの処理を行って薄膜の組成を変換するプラズマ処理とにより、基板Sの表面に中間薄膜(第1の薄膜)を形成し、このスパッタ処理とプラズマ処理を複数回繰り返すことで、中間薄膜を複数層積層して目的の膜厚を有する最終薄膜(第2の薄膜)を基板Sの表面に形成する。具体的には、スパッタ処理とプラズマ処理によって組成変換後における膜厚の平均値が0.01〜1.5nm程度の中間薄膜(第1の薄膜)を基板Sの表面に形成する工程を、回転ドラム13の回転毎に繰り返すことにより、目的とする数nm〜数百nm程度の膜厚を有する最終薄膜(第2の薄膜)を形成する。
【0078】
本実施形態では、ここで生成される最終薄膜としての酸化チタン薄膜に対し、プラズマ後処理を施す。以下、一例に係る後処理の詳細を説明する。
【0079】
(4)すなわち次に、図5のS4にて、回転ドラム13の回転を一旦停止し、交流電源24からの電力供給を停止して薄膜堆積工程を終了する。一方で、反応プロセス領域60Aではガス供給手段70による酸素ガス及びアルゴンガスの供給、並びに交流電源24からの電力の供給を継続して、プラズマを発生させる。
この状態で、回転ドラム13を再回転して基板Sを反応プロセス領域60Aに搬送すると、基板Sの表面に生成した酸化チタン薄膜は、反応プロセス領域60Aを通過する間にプラズマ処理される(後処理)。なお、酸素ガス及びアルゴンガスの供給、並びに交流電源24からの電力の供給とともに、回転ドラム13の回転も継続してもよい。
【0080】
このようなプラズマ後処理を施すことで、一旦、発現した光触媒作用を速やかに消失させることが可能な酸化チタン薄膜を得ることができる。
【0081】
なお「光触媒性」又は「光触媒作用」とは、光励起により活性酸素種を発生させ有機物を分解する特性(分解活性)と、高度な親水化現象を発現する特性(光励起による親水化現象)のことを意味する。
【0082】
本実施形態では、反応プロセス領域60Aへの不活性ガスの導入流量を、好ましくは反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量とする。ただし、反応プロセス領域60Aでの混合ガスのプラズマ密度をより濃くし、上述した特性を円滑に発現させるために、不活性ガスの導入流量を反応性ガスの導入流量よりも多くすることが好ましい。より好ましくは、不活性ガスの導入流量を反応性ガスの導入流量の少なくとも3倍にし、さらに好ましくは5倍以上、最も好ましくは7倍以上とすることもできる。具体的には、例えば、100sccmの反応性ガスに対する不活性ガスの導入流量を、好ましくは300sccm以上、より好ましくは500sccm以上、さらに好ましくは700sccm以上とする。不活性ガスの導入割合を調整することで、光触媒作用の消失に至るまでの時間をコントロールすることが可能となる。なお、不活性ガスの導入割合が多くなると、光触媒作用の消失までに時間がかかる傾向がある。
【0083】
後処理の時間は、形成後の酸化チタン薄膜に要求される物理的・光学的特性に応じて1〜60分程度の範囲内で適切な時間とする。高周波電源65から供給される電力も、1k〜5kWの範囲内で適宜決定する。薄膜の結晶粒界に界面準位を形成させ、その結果、光触媒作用の発現状態を速やかに消失させるため、反応プロセス領域60Aに導入される酸素ガスの圧力(成膜圧力)を適切に制御する。具体的には例えば0.07〜1Paに維持される。また、少なくとも反応プロセス領域60Aにプラズマを発生させている際中は、アンテナ収容室80Aの内部の圧力は、0.001Pa以下を保持する。
【0084】
酸素ガスの流量はマスフローコントローラ72で、高周波電源65から供給される電力はマッチングボックス64で、それぞれ調整することができる。アルゴンガスの流量はマスフローコントローラ74で調整する。
【0085】
反応性ガスボンベ71や不活性ガスボンベ73から反応性ガスや不活性ガスを導入した状態で、アンテナ63に高周波電源65から、例えば100kHz〜50MHzの交流電圧が供給されると、反応プロセス領域60A内のアンテナ63に面した領域にプラズマが発生する。供給するプラズマ処理電力は、基板Sがガラス基板の場合、例えば3kW以上、好ましくは4kW以上、より好ましくは4.5kW以上の大きな電力(プラズマ処理電力)であり、基板Sがプラスチックで構成される場合には、例えば1kW以下、好ましくは0.8kW以下、より好ましくは0.5kW以下の小さな電力である。
【0086】
なお、後処理を行うに際し、反応プロセス領域60Aから成膜プロセス領域20Aに流入する酸素ガスによってターゲット22a,22bの表面が酸化されるのを防ぐため、成膜プロセス領域20A内にアルゴンガスを導入しておくことが好ましい。この時点においては、マグネトロンスパッタ電極21a,21bには交流電源24から電力を供給していないため、ターゲット22a,22bはスパッタされない。
【0087】
本実施形態では、図5のS3におけるプラズマ処理(反応処理)と、図5のS4における後処理とを同一条件で行ってもよいし、異なる条件で行うこともできる。
【0088】
以上の工程が終了すると、回転ドラム13の再回転を停止し、真空容器11の内部の真空状態を解除して、回転ドラム13を真空容器11から取り出す。基板保持板13aをフレーム13bから取り外して、基板Sを回収する。回収した基板Sの表面には、光触媒作用を適切に制御しうる光触媒性薄膜が成膜される。
【0089】
本実施形態で得られる、光触媒性薄膜が成膜された基板Sは、例えば、自動車のサイドミラー、バックミラー、路面に設置される反射ミラーや看板、ビルや家屋などの建築物の外装建材、建築物の外壁や浴室に使用されるタイル、道路などの舗装用ブロック、屋外に設置されるテント、ブラインドなどの内装品、屋外カメラのレンズ保護窓などに使用されうる。
【0090】
光触媒作用を示す酸化チタン(以下「酸化チタン光触媒」という。)に紫外光が照射されると、光励起され、その内部に荷電子対が生成される。さらに、その荷電子対により表面及びその近傍に水酸基ラジカルや、スーパーオキサイドイオン等の活性酸素種が発生し、これらの活性酸素種の持つ強力な酸化力により有機物を分解する特性(分解活性)を発現する。このように励起状態の酸化チタン光触媒では、分解活性とともに、高度な親水性も発現する(光励起による親水化現象)。その一方で、励起状態の酸化チタン光触媒を暗所放置し、所定時間を経過させると、その酸化チタン光触媒は基底状態に戻る。
【0091】
しかしながら、従来の酸化チタン光触媒では、一旦、そのエネルギー状態が励起状態になって親水化現象が発現すると、これを暗所放置しても、撥水性を示す基底状態(例えば水の接触角が20〜30度程度)に戻るのに数週間もの長期間を要する。このため、例えば日中(昼間)は光触媒作用を発現させ、酸化チタン光触媒の表面に付着した汚れなどの有機物成分を分解する一方で、夜間は光触媒作用を消失させ、後に訪れる翌日の日中に酸化チタン光触媒表面に付着した有機物成分を容易に分解させるために、酸化チタン光触媒表面に付着した有機物成分を浮かび上がらせるとの作用を発現させることは困難であった。
【0092】
なお、酸化チタン光触媒を基底状態から励起状態へ変動させるには、積極的に紫外光を照射する場合は勿論こと、太陽光に晒しておくことも有効である。太陽光には紫外光成分が含まれるので、酸化チタン光触媒を太陽光に晒すことによって当該酸化チタン光触媒のエネルギー状態を基底状態から励起状態へと変動させることができる。
【0093】
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた。その結果、以下のように考えた。
(1)一度励起状態になり光触媒作用を発現した酸化チタン光触媒が、その後に暗所放置しても長期間にわたり光触媒作用を発現し続けるのは、光触媒作用を発現する起源と考えられる、薄膜表面(以下「膜表面」という。)に存在する活性電子(e)と活性正孔(h)の存在寿命が長いためである。
(2)そして、この膜表面に存在する活性電子と活性正孔の寿命を短くすることができれば、膜表面に発現している光触媒作用を速やかに消失させることができるのではないか。
【0094】
こうした作用を生じさせるために、本実施形態に係る成膜装置1を用いた成膜方法によれば、チタンの不完全酸化超薄膜をチタンの完全酸化物に変換させた後の反応プロセス領域60A内に、反応性ガスとしての酸素ガスとともに、不活性ガスとしてのアルゴンガスを積極的に導入し、混合ガスのプラズマを発生させ、このプラズマを用いた後処理を施す。この後処理を施すことで、一旦、発現した光触媒作用を速やかに消失させることが可能な酸化チタン薄膜を得ることができることを見出した。
【0095】
なお、こうした特性が、特定の後処理を施すことによって発現するメカニズムは必ずしも明らかではない。
【0096】
一般に、結晶成長の理論から、バルク内部に存在する不純物や欠陥は、バルク内の結晶相の成長に伴い、結晶相の外方に析出する傾向があることが知られている。思うに、本実施形態では、後処理において、反応性ガスに不活性ガスを積極的に含有させると、反応プロセス領域60Aでの混合ガスのプラズマ密度が濃くなる。密度が高濃度のプラズマが第2の薄膜に接触すると、酸化チタン中に形成された欠陥は、酸化チタンの結晶構造がアナターゼ構造に変動する過程で、柱状組織の外方、すなわち結晶粒界部分に析出する。そして、この析出した欠陥部分が、光触媒作用を発現させる、膜表面に生じた活性電子(e)と活性正孔(h)の再結合中心としての界面準位(欠陥準位)として機能し、こうした機能を発揮することで、上述した特性が得られたものではないかと思われる。この界面準位は、膜表面に発現した活性電子と活性正孔を膜内部に引き込み、膜表面から消失させる。膜表面に存在していた活性電子と活性正孔が消失すると同時に、膜表面の光触媒作用は消失する。
【0097】
なお、「界面準位」とは、界面の存在(或いは形成)によって生じる電子準位(電子状態)を意味する。
【0098】
以上説明した実施形態は、上記発明の理解を容易にするために記載されたものであって、上記発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、上記発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0099】
上述した実施形態では、図5のS2による成膜プロセス領域20Aでの処理に先立ち、基板Sの表面に対し、プラズマ処理を施すこともできる(前処理。図5のS5参照)。この場合、前処理は、図5のS3におけるプラズマ処理及び図5のS4における後処理と、同一条件で行ってもよいし、異なる条件で行うこともできる。
【0100】
上述した実施形態では、スパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行う成膜装置1を用いたスパッタリング法により成膜する場合を例示したが、これに限定されず、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等、他の公知のスパッタを行う成膜装置を用いた他のスパッタリング法や、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンプレーティングなどの真空蒸着法により成膜することもできる。
【実施例】
【0101】
次に、上記発明の実施形態をより具体化した実施例を挙げ、発明をさらに詳細に説明する。
【0102】
《実施例1》
図1〜図4に示す成膜装置1を用いて、基板Sの表面に酸化チタン(TiO)の薄膜を形成した。基板Sとして、ガラス性基板であるBK7を用いた。成膜は以下の条件で行った。なお、成膜レートは0.18nm/sとした。
【0103】
《成膜プロセス領域20Aでの処理》
・基板温度:室温、
・ターゲット22a,22b:チタン(Ti)、
・ターゲット22a,22bに供給される電力(スパッタ電力):5.0kW、
・スパッタ電極21a,21bに印加する交流電圧の周波数:40kHz、
・アルゴンガスの導入流量:300sccm。
【0104】
《反応プロセス領域60Aでの処理》
・高周波電源65からアンテナ63に供給される電力(プラズマ処理電力):表1を参照、
・アンテナ63に印加する交流電圧の周波数:13.56MHz、
・酸素ガスの導入流量:200sccm、
・アルゴンガスの導入流量:500sccm。
【0105】
上述した成膜条件で、図5のS2における成膜プロセス領域20Aでの処理と、図5のS3における反応プロセス領域60Aでの処理を複数回繰り返し(薄膜堆積工程)、基板Sの表面に厚み140nmの酸化チタン薄膜(第2の薄膜)を形成した。
【0106】
次に、回転ドラム13の回転を停止し、交流電源24からの電力供給を停止(成膜プロセス領域20Aの作動を停止)して薄膜堆積を終了するとともに、反応プロセス領域60Aでは、上述した酸素ガス及びアルゴンガスの供給、並びに交流電源24からの電力の供給を継続し、反応プロセス領域60Aに酸素及びアルゴンの混合ガスのプラズマを発生させた状態で、回転ドラム13を再回転して基板Sを反応プロセス領域60Aに搬送し、基板Sの表面に生成した第2の薄膜としての酸化チタン薄膜に対して、反応プロセス領域60Aを通過する間にプラズマ後処理を施した。後処理時間は30分とした。
【0107】
以上の条件で、基板Sの表面に、厚み140nm(全成膜時間39分(成膜9分+後処理30分))の酸化チタン薄膜を形成した。
【0108】
《実施例2》
成膜プロセス領域20Aでの処理に先立ち、基板Sの表面に対し、プラズマ前処理を施した。具体的には、まず成膜プロセス領域20Aは作動させず、実施例1と同一条件で反応プロセス領域60Aのみを作動させて、基板Sの表面にプラズマ前処理を施した。前処理時間は30分とした。
【0109】
続いて、成膜プロセス領域20Aを作動させ、実施例1と同様の条件で薄膜を堆積させ、基板Sの表面に厚み140nmの酸化チタン薄膜(第2の薄膜)を形成した。続いて、実施例1と同様の条件で後処理を施した。
【0110】
以上の条件で、基板Sの表面に、厚み140nm(全成膜時間69分(前処理30分+成膜9分+後処理30分))の酸化チタン薄膜を形成した。
【0111】
実施例2で得られた酸化チタン薄膜の断面をSEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)を用いて観察した結果、図6に示すように、ガラス基板の表面に略垂直配列で柱状成長した連続膜構造の酸化チタン薄膜が形成されていることが確認できた。
【0112】
《比較例1》
前処理及び後処理の何れも行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で、基板Sの表面に酸化チタン薄膜を形成した。
【0113】
《薄膜の評価1》
実施例1及び比較例1で得られた酸化チタン薄膜の光触媒作用の発現と消失のサイクル評価を行った。この評価は、作成した酸化チタン薄膜に対して、水の接触角の経時変化を調べることにより行った。
【0114】
具体的には、まず、(1)作成直後の酸化チタン薄膜に対して、水の接触角を測定した(接触角a)。次に、(2)この作成直後の酸化チタン薄膜に対して、紫外線を10mW/cmの照射量で60分照射し、水の接触角を所定値(接触角b。本例ではb=10°前後)以下にまで低下させた。次に、(3)水の接触角がbにまで低下した、すなわち光触媒作用を発現した状態の酸化チタン薄膜を暗所に放置し、水の接触角が上述したaに戻るまでの時間を求めた。
【0115】
なお、水に対する接触角は、JIS−R3257に準拠した方法(ぬれ性試験)で測定される値を用いた。具体的には、試験台に基板Sを載置し、基板Sの酸化チタン薄膜側に蒸留水を滴下し、静置した状態で水滴の接触角を自動接触角計(DM500、協和界面科学社)を用いて光学的に測定することにより、水に対する接触角を求めた。
【0116】
その結果、実施例1のサンプルでは、紫外線の照射が約60分で薄膜の水の接触角が、接触角aの70°弱から接触角bの10°付近まで低下した。すなわち、約60分の紫外線照射で光触媒作用を発現した。一方、暗所に放置してから約30分で水の接触角が、接触角bの10°付近から接触角aの70°付近にまで上昇した。すなわち、約30分の暗所放置で光触媒作用が消失した。
【0117】
実施例2のサンプルでは、紫外線の照射が約5分で薄膜の水の接触角が、接触角aの70°弱から接触角bの10°付近まで低下した。すなわち、約5分の紫外線照射で光触媒作用を発現した。一方、暗所に放置してから約5分で水の接触角が、接触角bの10°付近から接触角aの70°付近にまで上昇した。すなわち、約5分の暗所放置で光触媒作用が消失した。
【0118】
これに対し、比較例1のサンプルでは、紫外線の照射が1時間で薄膜の水の接触角が、接触角aの70°弱から接触角bの10°付近まで低下した。すなわち、1時間の紫外線照射で光触媒作用を発現した。一方、暗所に放置してから1時間を経過しても水の接触角は、接触角bの10°付近から変動せず、この状態をさらに3日間継続させてはじめて水の接触角が接触角aの70°付近にまで上昇した。すなわち、合計72時間もの長時間にわたる暗所放置で、ようやく光触媒作用が消失した。
【0119】
以上の結果からも分かるように、実施例1及び2のサンプルでは、比較例1のサンプルと比較して、酸化チタン薄膜の膜表面に発現した光触媒作用を速やかに消失させることができることが確認できた。
【0120】
《実施例3》
成膜装置1内に設置するターゲット22a,22bとして、チタンに代え、亜鉛(Zn)とした以外は、実施例1と同様の方法で、基板Sの表面に酸化亜鉛(ZrO)薄膜を形成した。
【0121】
《実施例4》
成膜装置1内に設置するターゲット22a,22bとして、チタンに代え、タンタル(Ta)とした以外は、実施例1と同様の方法で、基板Sの表面に酸化タンタル(Ta)薄膜を形成した。
【0122】
《薄膜の評価2》
実施例2〜4で作成した各酸化物薄膜に対し、照射量が10mW/cmの紫外線を照射し、所定時間経過毎の、水に対する接触角の経時変化を評価した。結果を図7に示す。
【0123】
また同様に、各酸化物薄膜に対し、照射量が10mW/cmの紫外線を12時間照射し、水に対する接触角を所定値(接触角b。本例ではb=10°前後)以下にまで低下させた後、暗所に放置し、所定時間経過毎の、水に対する接触角の経時変化を評価した。結果を図8に示す。
【0124】
なお、図7において、横軸の紫外線照射時間は、成膜直後を基準(0時間)として、接触角の測定を行った時点での経過時間を示す。図7において、横軸の放置時間は、紫外線照射直後を基準(0時間)として、接触角の測定を行った時点での経過時間を示す。図7及び図8において、菱形の点は実施例2の結果を示し、三角の点は実施例3の結果を示し、四角の点は実施例4の結果を示す。
【0125】
図7に示すように、光触媒作用を発現するまでに必要な紫外線照射時間が最も短かったのは、実施例2の酸化チタン薄膜であり、以降順次、実施例4の酸化タンタル薄膜、実施例3の酸化亜鉛薄膜であった。照射時間の長短があるにせよ、いずれにしても実施例2〜4のすべての酸化物薄膜に光触媒作用が発現することが確認できた。なお、水に対する接触角が10°前後以下になった時点で、光触媒作用が発現したと判断した。
【0126】
図8に示すように、光触媒作用が消失するまでに必要な暗所放置時間が最も短かったのは、実施例2の酸化チタン薄膜であり、以降順次、実施例3の酸化亜鉛薄膜、実施例4の酸化タンタル薄膜であった。放置時間の長短があるにせよ、いずれにしても実施例2〜4のすべての酸化物薄膜に光触媒作用が消失することが確認できた。なお、水に対する接触角が70°付近にまで上昇した時点で、光触媒作用が消失したと判断した。
【0127】
以上の結果からも分かるように、実施例3,4のサンプルでも、実施例2のサンプルと同様に、比較例1のサンプルと比較して、酸化物薄膜の膜表面に発現した光触媒作用を速やかに消失させることができることが確認できた。
【0128】
《実施例5〜8》
酸素ガスの導入流量は200sccmのままで、反応プロセス領域60Aへのアルゴンガスの導入流量を、200sccm、400sccm、600sccm、800sccmとした以外は、実施例2と同様の条件で、基板Sの表面に、厚み140nm(全成膜時間69分(前処理30分+成膜9分+後処理30分))の酸化チタン薄膜を形成した。
【0129】
酸素ガスに対するアルゴンガスの導入割合が多くなると、光触媒作用の消失までに時間がかかる傾向があるが、比較例1のサンプルと比較した場合、格段に、酸化チタン薄膜の膜表面に発現した光触媒作用を速やかに消失させることができることが確認できた。
【符号の説明】
【0130】
1…成膜装置、11…真空容器、13…回転ドラム、S…基板、20…スパッタ手段、20A…成膜プロセス領域、30…スパッタガス供給手段、31…マスフローコントローラ、32…スパッタガスボンベ、35a…配管、35b…導入口、35c…配管、60…プラズマ発生手段、60A…反応プロセス領域、70…ガス供給手段、71…反応性ガスボンベ、72…マスフローコントローラ、73…不活性ガスボンベ、74…マスフローコントローラ、75a…配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に光触媒性薄膜を形成する成膜方法であって、
真空容器の内部に形成された成膜プロセス領域で、少なくともチタン、亜鉛及びタンタルを含む群から選択される金属で構成されたターゲットをスパッタし、前記基板に前記金属で構成される膜原料物質を付着させるスパッタ工程と、
前記成膜プロセス領域とは離間して形成された反応プロセス領域で、少なくとも反応性ガスのプラズマを前記膜原料物質に接触させて第1の薄膜を生成させる反応工程と、
前記成膜プロセス領域と前記反応プロセス領域の間で前記基板を移動させ、前記スパッタ工程及び前記反応工程を複数回繰り返し、前記第1の薄膜を複数回堆積させて第2の薄膜を形成する薄膜堆積工程と、
前記反応プロセス領域で、前記反応性ガスとともに不活性ガスを積極的に含む混合ガスのプラズマを前記第2の薄膜に接触させる後処理工程とを、有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
請求項1記載の成膜方法において、
前記後処理工程では、前記反応プロセス領域に、前記不活性ガスを前記反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量で導入し、前記混合ガスのプラズマを発生させることを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の成膜方法において、
前記後処理工程では、前記不活性ガスを前記反応性ガスの導入流量よりも多い流量で導入し、前記混合ガスのプラズマを発生させることを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項記載の成膜方法において、
前記後処理工程では、前記反応プロセス領域に、前記不活性ガスを前記反応性ガスの導入流量の少なくとも3倍の流量で導入し、前記混合ガスのプラズマを発生させることを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項記載の成膜方法において、
前記反応工程では、前記反応プロセス領域に、前記反応性ガスとともに不活性ガスを積極的に導入し、前記不活性ガス及び前記反応性ガスを含む混合ガスのプラズマを発生させることを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
請求項5記載の成膜方法において、
前記反応工程では、前記不活性ガスを前記反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量で導入することを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の成膜方法において、
前記反応工程では、前記反応プロセス領域に、前記不活性ガスを前記反応性ガスの導入流量よりも多い流量で導入することを特徴とする成膜方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項記載の成膜方法において、
前記スパッタ工程に先立ち、前記反応プロセス領域で、前記反応性ガスとともに不活性ガスを積極的に含む混合ガスのプラズマを前記基板の表面に接触させる前処理工程を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
請求項8記載の成膜方法において、
前記前処理工程では、前記反応プロセス領域に、前記不活性ガスを前記反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量で導入し、前記混合ガスのプラズマを発生させることを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の成膜方法において、
前記前処理工程では、前記反応プロセス領域に、前記不活性ガスを前記反応性ガスの導入流量よりも多い流量で導入し、前記混合ガスのプラズマを発生させることを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
基板の表面に光触媒性薄膜を形成する成膜方法であって、
真空容器の内部に形成された成膜プロセス領域で、少なくともチタン、亜鉛及びタンタルを含む群から選択される金属で構成されたターゲットをスパッタし、前記基板に前記金属で構成される膜原料物質を付着させるスパッタ工程と、
前記成膜プロセス領域とは離間して形成された反応プロセス領域で、反応性ガス及び前記反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量で導入された不活性ガスを含む混合ガスのプラズマを前記膜原料物質に接触させて第1の薄膜を生成させる反応工程と、
前記成膜プロセス領域と前記反応プロセス領域の間で前記基板を移動させ、前記スパッタ工程及び前記反応工程を複数回繰り返し、前記第1の薄膜を複数回堆積させて第2の薄膜を形成する薄膜堆積工程と、
前記反応プロセス領域で、前記混合ガスのプラズマを前記第2の薄膜に接触させる後処理工程とを、有することを特徴とする成膜方法。
【請求項12】
基板の表面に光触媒性薄膜を形成する成膜方法であって、
真空容器の内部に形成された成膜プロセス領域とは離間して形成された反応プロセス領域で、反応性ガス及び前記反応性ガスの導入流量と少なくとも同一流量で導入された不活性ガスを含む混合ガスのプラズマを前記基板に接触させる前処理工程と、
前記成膜プロセス領域で、少なくともチタン、亜鉛及びタンタルを含む群から選択される金属で構成されたターゲットをスパッタし、前処理済みの前記基板に前記金属で構成される膜原料物質を付着させるスパッタ工程と、
前記反応プロセス領域で、前記混合ガスのプラズマを前記膜原料物質に接触させて第1の薄膜を生成させる反応工程と、
前記成膜プロセス領域と前記反応プロセス領域の間で前記基板を移動させ、前記スパッタ工程及び前記反応工程を複数回繰り返し、前記第1の薄膜を複数回堆積させて第2の薄膜を形成する薄膜堆積工程と、
前記反応プロセス領域で、前記混合ガスのプラズマを前記第2の薄膜に接触させる後処理工程とを、有することを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−201339(P2010−201339A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49597(P2009−49597)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(390007216)株式会社シンクロン (52)
【Fターム(参考)】