説明

成膜装置および成膜方法

【課題】成膜される膜の膜厚均一性に優れた成膜装置および成膜方法を提供する。
【解決手段】容器131と,容器131内を加熱するヒータ137と、容器131内に設けられ、液体状または固体状の成膜材料135がその内部に置かれ、気体状となった成膜材料を容器131内に供給する成膜材料供給部133と、容器131に設けられた開口部136と、被成膜体11を開口部136の最外部よりも内側に位置させる回転ドラム110と、開口部136と連通する真空容器102と、真空容器102を排気する真空ポンプ103と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関し、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子に使用する膜を成膜する成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光材料の特徴により、低分子系の有機エレクトロルミネッセンス素子と高分子系の有機エレクトロルミネッセンス素子に大きく分けられ、低分子系の有機エレクトロルミネッセンス素子は、真空蒸着法によって製造されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1においては、ノズル内で有機発光材料を気化させて、気化した有機発光材料を基板に向けてノズルから吐出させることにより基板上に有機発光材料からなる膜を成膜している。そして、ノズルと基板との距離を15mm以下とすることにより、膜中に取り込まれる水分を少なくして有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化を図っている。
また、非特許文献1においては、有機発光材料を蒸発させるノズル内部に流路補正板を設置することで幅方向の膜厚分布を改善できることが示されている。
【0004】
しかしながら、非特許文献1の方法によっても膜厚の均一性の改善は十分ではなく、成膜される膜の膜厚均一性に優れた成膜装置および成膜方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−287996号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】信学技法 IEICE Technical Report OME 2009−10 (2009−05)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の主な目的は,成膜される膜の膜厚均一性に優れた成膜装置および成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者達は、上述した従来の方法について考察した結果、以下の知見を得た。すなわち、従来の方法は、いわゆる真空蒸着法であり、ノズル内で有機発光材料を気化させて気化粒子を作成し、気化粒子をノズルから基板に向けて輸送し、基板上に気化粒子を付着堆積させて有機発光材料からなる膜を作成する方法であるので、ノズルから基板に向かう気化粒子の流れの分布を均一にしない限り、膜厚分布は均一にはならない。その一方で、上述したような従来の方法では、ノズルと基板との距離を短くしており、そのような状況では、ノズルから基板に向かう気化粒子の流れの分布を均一にすることは非常に困難である。
【0009】
このように、従来のような真空蒸着の手法を用いる限り、ノズルと基板との距離を短くした場合には、気化粒子の流れ分布を基板上で均一にすることは非常に困難である。従って、膜厚分布をさらに均一なものとするためには、真空蒸着とは全く異なった手法を用いる必要がある。
【0010】
本願発明者達は、このような考えの下、鋭意研究した結果、真空蒸着法のように基板を気化粒子の流れの中に置くのではなく、気化粒子が一定の蒸気圧で存在する真空の状態であって、気化粒子の流れがない真空の状態に基板を置けばいいということを見出した。このような状態では、気化粒子は、3次元的に等方的に運動をしているので、気化粒子が基板に付着・堆積することによって基板上に成膜される膜の膜厚は均一なものとなる。
【0011】
本発明は上記の知見に基づくものであり、
本発明の好ましい一態様によれば、
容器と,
前記容器内を加熱する加熱手段と、
前記容器内に設けられ、液体状または固体状の成膜材料がその内部に置かれ、気体状となった前記成膜材料を前記容器内に供給する成膜材料供給部と、
前記容器に設けられた開口部と、
被成膜体を前記開口部の最外部よりも内側に位置させる位置手段と、
前記開口部と連通する真空容器と、
前記真空容器を排気する排気手段と、
を備える成膜装置が提供される。
【0012】
この装置では、成膜材料供給部が容器内に設けられ、当該容器は加熱手段によって加熱されるので、加熱された温度において、液体状または固体状の成膜材料と平衡な状態にある気体状の成膜材料がこの容器内の空間に存在する。
【0013】
また、上記容器とは別に真空容器が設けられ、この真空容器を排気する排気手段が設けられ、上記容器に設けられた開口部はこの真空容器に連通しているので、容器内を所定の真空にすることができる。そして、成膜材料供給部から液体状または固体状の成膜材料と平衡な状態にある気体状の成膜材料が供給されるので、容器内を気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空の状態とすることができる。
【0014】
そして、位置手段によって被成膜体を開口部の最外部よりも内側に位置させるので、容器内を気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空内で、気体状の成膜材料の流れがない箇所に被成膜体を位置させることができる。そして、この状態で被成膜体に成膜材料を付着させて被成膜体上に膜を成膜する。このように、気体状の成膜材料の流れがない箇所に被成膜体を位置させているので、気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている箇所に被成膜体を位置させることになり、成膜された膜の膜厚は非常に均一なものとなる。
【0015】
好ましくは、前記位置手段によって、前記被成膜体を一方向に、前記容器の外側から前記開口部へ移動させ、前記開口部から前記容器の外側へ移動させる。このようにすれば、被成膜体に連続的に成膜することができる。
【0016】
また、好ましくは、前記開口部の最外部は、前記容器の最外部である。
【0017】
また、好ましくは、前記開口部の最外部は、前記容器の外面より突出する突出部の最外部である。このように、突出部を設けた場合には、突出部の最外部に対して、被成膜体を位置させることができる。
【0018】
また、好ましくは、前記開口部の最外部は、前記容器の外面より突出し、前記一方向に沿って延在する突出部の最外部である。このようにすれば、突出部を設けた場合にも、被成膜体に連続的に成膜することができる。
【0019】
また、好ましくは、前記位置手段は、その表面に前記被成膜体が巻き掛けられる回転ドラムである。このようにすれば、回転ドラムを回転することによって、被成膜体を移動させることができ、被成膜体に連続して成膜することができる。
【0020】
また、好ましくは、前記位置手段は、前記開口部へ前記被成膜体を直線的に移動させる移動手段である。このようにすれば、被成膜体を直線的に移動させることによって、被成膜体に連続して成膜することができる。
【0021】
本発明の好ましい他の態様によれば、
容器と、
前記容器内を加熱する加熱手段と、
前記容器内に設けられ、液体状または固体状の成膜材料がその内部に置かれ、気体状となった前記成膜材料を前記容器内に供給する成膜材料供給部と、
前記容器の互いに対向する側面にそれぞれ設けられた2つの開口部と、
被成膜体を前記2つの開口部を貫通させて前記容器内へ位置させる位置手段と、
前記開口部と連通する真空容器と、
前記真空容器を排気する排気手段と、
を備える成膜装置が提供される。
【0022】
この装置では、成膜材料供給部が容器内に設けられ、当該容器は加熱手段によって加熱されるので、加熱された温度において、液体状または固体状の成膜材料と平衡な状態にある気体状の成膜材料がこの容器内の空間に存在する。
【0023】
また、上記容器とは別に真空容器が設けられ、この真空容器を排気する排気手段が設けられ、上記容器に設けられた開口部はこの真空容器に連通しているので、容器内を所定の真空にすることができる。そして、成膜材料供給部から液体状または固体状の成膜材料と平衡な状態にある気体状の成膜材料が供給されるので、容器内を気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空の状態とすることができる。
【0024】
そして、容器の互いに対向する側面に開口部をそれぞれ設け、位置手段によって被成膜体を2つの開口部を貫通させて容器内へ位置させるので、容器内を気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空内で、気体状の成膜材料の流れがない箇所に被成膜体を位置させることができる。そして、この状態で被成膜体に成膜材料を付着させて被成膜体上に膜を成膜する。このように、気体状の成膜材料の流れがない箇所に被成膜体を位置させているので、気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている箇所に被成膜体を位置させることになり、成膜された膜の膜厚は非常に均一なものとなる。また、容器の互いに対向する側面に開口部をそれぞれ設け、位置手段によって被成膜体を2つの開口部を貫通させて容器内へ位置させるので、容器内にある被成膜体の周囲に成膜することができる。さらに、位置手段によって被成膜体を一方の開口部から他方の開口部に向かって移動させれば、被成膜体に連続して成膜することができる。
【0025】
また、好ましくは、前記気体状となった成膜材料が前記容器内に前記成膜材料の飽和蒸気圧で存在する状態で成膜を行う。
【0026】
本発明の好ましい他の態様によれば、
容器と、
一定の蒸気圧の気体状の成膜材料を前記容器に供給する成膜材料供給手段と、
前記容器に設けられた開口部と、
真空排気手段と、
前記真空排気手段と前記開口部との間に設けられた排気経路と、
前記容器内に前記開口部を介して被成膜体を位置させる位置手段と、を備えた成膜装置であって、
前記位置手段によって前記容器内に前記被成膜体を位置させた際に、前記被成膜体の被成膜面が位置している箇所には、気体の流れがない成膜装置が提供される。
【0027】
この装置では、容器に開口部が設けられ、この開口部と真空排気手段との間には排気経路が設けられているので、容器内を所定の真空にすることができる。そして、成膜材料供給手段から、一定の蒸気圧の気体状の成膜材料が容器に供給されるので、容器内を気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空の状態とすることができる。
【0028】
そして、位置手段によって容器内に被成膜体を位置させた際に、被成膜体の被成膜面が位置している箇所には、気体の流れがないので、気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている箇所に被成膜体の被成膜面を位置させることになり、成膜された膜の膜厚は非常に均一なものとなる。
【0029】
さらに、当該位置手段は、容器内に開口部を介して被成膜体を位置させるので、成膜中に開口部を通じて被成膜体を移動させることができ、このようにすれば、被成膜体に連続的に成膜することができる。
【0030】
本発明の好ましい他の態様によれば、
容器と、
一定の蒸気圧の気体状の成膜材料を前記容器に供給する成膜材料供給手段と、
前記容器に設けられた開口部と、
真空排気手段と、
前記真空排気手段と前記開口部との間に設けられた排気経路と、
前記容器内に前記開口部を介して被成膜体を位置させる位置手段と、を備えた成膜装置であって、
前記位置手段によって前記容器内に前記被成膜体を位置させた際に、前記被成膜体の被成膜面が位置している箇所では前記気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている成膜装置が提供される。
【0031】
この装置では、容器に開口部が設けられ、この開口部と真空排気手段との間には排気経路が設けられているので、容器内を所定の真空にすることができる。そして、成膜材料供給手段から、一定の蒸気圧の気体状の成膜材料が容器に供給されるので、容器内を気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空の状態とすることができる。
【0032】
そして、位置手段によって容器内に被成膜体を位置させた際に、被成膜体の被成膜面が位置している箇所では、気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしているので、
成膜された膜の膜厚は非常に均一なものとなる。
【0033】
さらに、当該位置手段は、容器内に開口部を介して被成膜体を位置させるので、成膜中に開口部を通じて被成膜体を移動させることができ、このようにすれば、被成膜体に連続的に成膜することができる。
【0034】
また、開口部を、容器の互いに対向する側面にそれぞれ設けられた2つの開口部とし、位置手段によって被成膜体を前記2つの開口部を貫通させて位置させてもよく、容器内にある被成膜体の周囲に成膜することができる。さらに、位置手段によって被成膜体を一方の開口部から他方の開口部に向かって移動させれば、被成膜体に連続して成膜することができる。
【0035】
好ましくは、前記位置手段によって前記被成膜体を前記開口部の最外部よりも内側に位置させる。
【0036】
好ましくは、前記成膜装置は、前記成膜材料供給手段が前記容器内に配置され、前記容器内を所定の温度に加熱する加熱手段をさらに備える。
【0037】
このようにすれば、一定の蒸気圧の気体状の成膜材料を容器に供給する成膜材料供給手段が容器内に配置され、当該容器は加熱手段によって所定の温度に加熱されるので、加熱された所定の温度において、熱的に平衡状態にある気体状の成膜材料の蒸気圧で、気体状の成膜材料がこの容器内の空間に存在する。
【0038】
好ましくは、前記一定の蒸気圧は、前記成膜材料の前記所定の温度における飽和蒸気圧である。
【0039】
好ましくは、前記成膜材料供給手段が前記容器の外部に配置され、前記容器内を第1の所定の温度に加熱する第1の加熱手段および前記成膜材料供給手段を第2の所定の温度に加熱する第2の加熱手段をさらに備える。
【0040】
このようにすれば、一定の蒸気圧の気体状の成膜材料を容器に供給する成膜材料供給手段が容器の外部に配置され、成膜材料供給手段は第2の加熱手段によって第2の所定の温度に加熱されるので、加熱された第2の所定の温度において、熱的に平衡状態にある気体状の成膜材料の蒸気圧で、気体状の成膜材料がこの成膜材料供給手段の空間に存在し、その蒸気圧の気体状の成膜材料が容器に供給される。そして、容器内は第1の加熱手段によって第1の所定の温度に加熱されるので、成膜温度と、成膜材料の蒸気圧を決定する温度とを異なるものとすることができるようになる。
【0041】
好ましくは、前記一定の蒸気圧は、前記成膜材料の前記第2の所定の温度における飽和蒸気圧である。
【0042】
また、好ましくは、前記成膜材料供給手段は、液体状または固体状の前記成膜材料がその内部に置かれる成膜材料容器と、前記成膜材料と反応しない第1の気体を成膜材料容器に供給する第1の気体供給手段とを備え、前記一定の蒸気圧の気体状の成膜材料は、前記第1の気体と共に、前記第2の所定の温度における飽和蒸気圧で前記容器に供給される。
【0043】
また、好ましくは、前記成膜材料供給手段は、液体状または固体状の前記成膜材料がその内部に置かれる成膜材料容器と、前記成膜材料と反応しない第1の気体を成膜材料容器に供給する第1の気体供給手段と、前記成膜材料と反応しない第2の気体を成膜材料容器の下流に供給する第2の気体供給手段とを備え、前記一定の蒸気圧の気体状の成膜材料は、(前記第2の所定の温度における飽和蒸気圧)×(前記第1の気体の流量)/(前記第1の気体の流量+前記第2の気体の流量)の蒸気圧で前記容器に供給される。
【0044】
このようにすれば、容器に供給される気体状の成膜材料の蒸気圧を、成膜材料供給手段の第2の加熱手段による加熱温度だけでなく、第1の気体の流量と第2の気体の流量によっても制御することができるようになる。
【0045】
本発明の好ましい他の態様によれば、
容器と、
一定の蒸気圧の気体状の成膜材料を前記容器に供給する成膜材料供給手段と、
前記容器内に被成膜体を位置させる位置手段と、を備えた成膜装置であって、
前記容器内に前記被成膜体を位置させた際に、前記被成膜体の被成膜面が位置している箇所には、気体の流れがない成膜装置が提供される。
【0046】
このように、容器内に被成膜体を位置させた際に、被成膜体の被成膜面が位置している箇所には、気体の流れがないので、気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている箇所に被成膜体を位置させることになり、成膜された膜の膜厚は非常に均一なものとなる。
【0047】
本発明の好ましい他の態様によれば、
容器と、
一定の蒸気圧の気体状の成膜材料を前記容器に供給する成膜材料供給手段と、
前記容器内に被成膜体を位置させる位置手段と、を備えた成膜装置であって、
前記容器内に前記被成膜体を位置させた際に、前記被成膜体の被成膜面が位置している箇所では前記気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている成膜装置が提供される。
【0048】
このように、容器内に被成膜体を位置させた際に、被成膜体の被成膜面が位置している箇所では気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしているので、成膜された膜の膜厚は非常に均一なものとなる。
【0049】
好ましくは、前記成膜材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する材料である。
【0050】
本発明の好ましい他の態様によれば、
気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空内であって、前記気体状の成膜材料の流れがない箇所に被成膜体を位置させ、前記被成膜体に前記成膜材料を付着させて成膜する成膜方法が提供される。
【0051】
このように、気体状の成膜材料の流れがない箇所に被成膜体を位置させ、被成膜体に成膜材料を付着させて成膜するので、気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている箇所に被成膜体を位置させて成膜することになり、成膜された膜の膜厚は非常に均一なものとなる。
【0052】
本発明の好ましい他の態様によれば、
気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空内であって、前記気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている箇所に被成膜体を位置させ、前記被成膜体に前記成膜材料を付着させて成膜する成膜方法が提供される。
【0053】
このように、気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている箇所に被成膜体を位置させて成膜するので、成膜された膜の膜厚は非常に均一なものとなる。
【0054】
好ましくは、前記気体状の成膜材料が容器内に前記一定の蒸気圧で存在し、前記容器内には前記一定の蒸気圧の気体状の成膜材料が供給されると共に、前記容器は排気されている。このようにすれば、容器内を気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空の状態とすることができる。
【0055】
好ましくは、前記一定の蒸気圧は前記成膜材料の飽和蒸気圧である。
【0056】
また、好ましくは、前記成膜材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する材料である
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、成膜される膜の膜厚均一性に優れた成膜装置および成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の第1乃至4の実施の形態で製造される有機エレクトロルミネッセンス素子を説明するための概略縦断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1乃至4の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置を説明するための概略縦断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【図4】図4は、図3のX1−X1線断面図である。
【図5】図5は、図3のX1−X1線断面図である。
【図6】図6は、図3のX2−X2線断面図である。
【図7】図7は、図4のA部の部分拡大縦断面図である。
【図8】図8は、本発明の第1乃至4の実施の形態で製造される有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、本発明の第2の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【図10】図10は、図9のX3−X3線断面図である。
【図11】図11は、図10のB部の部分拡大縦断面図である。
【図12】図12は、本発明の第3の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【図13】図13は、図12のX4−X4線断面図である。
【図14】図14は、図13のC部の部分拡大縦断面図である。
【図15】図15は、本発明の第4の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【図16】図16は、図15のX5−X5線断面図である。
【図17】図17は、図15のX6−X6線断面図である。
【図18】図18は、図16のD部の部分拡大縦断面図である。
【図19】図19は、本発明の第5の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【図20】図20は、図19のX7−X7線側面図である。
【図21】図21は、本発明の第6の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【図22】図22は、図21のX8−X8線側面図である。
【図23】図23は、本発明の第7の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【図24】図24は、図23のX9−X9線側面図である。
【図25】図25は、本発明の第8の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【図26】図26は、本発明の第9の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【図27】図27は、本発明の第10の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【図28】図28は、本発明の第11の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置に使用されるCuPC膜成膜室を説明するための概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0060】
(第1の実施の形態)
図1を参照すれば、本発明の第1乃至11の実施の形態で製造される有機エレクトロルミネッセンス素子10は、基板11上に、陽極12、正孔注入層13、正孔輸送層14、発光および電子輸送層15、電子注入層16、陰極17がこの順に形成されている。
【0061】
基板11は、例えば、長さが数十mのPET (ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルムからなる長尺のフレキシブル基板である。陽極12は、膜厚が例えば150nmのITO(酸化インジウムスズ)からなる透明電極である。正孔注入層13は、膜厚が例えば10nmのCuPC(銅フタロシアニン)からなっている。正孔輸送層14は、膜厚が例えば50nmのa−NPD(ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル]ベンジジン)からなっている。発光および電子輸送層15は、膜厚が例えば65nmのAlq3(8-ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体)からなっている。電子注入層16は、膜厚が例えば0.5nmのLiF(フッ化リチウム)からなっている。陰極17は、層厚が例えば80nmのAI(アルミニウム)からなっている。
【0062】
次に、図2を参照すれば、本発明の第1乃至12の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置100は、成膜室101と、基板繰り出し室180と、基板巻き取り室190と、制御部300とを備えている。
【0063】
基板繰り出し室180は、チャンバ181と、真空ポンプ186とを備え、チャンバ181内には、ロール状の基板11を繰り出す繰り出しローラ182と、基板11をガイドするガイドローラ183と、基板11を上下方向から扶持するローラ184、185とが設けられている。チャンバ181内は真空ポンプ186によって排気される。
【0064】
基板巻き取り室190は、チャンバ191と、真空ポンプ194とを備え、チャンバ191内には、基板11をガイドするガイドローラ193と、基板をロール状に巻き取る巻き取りローラ192とが設けられている。チャンバ191内は真空ポンプ194によって排気される。
【0065】
成膜室101は、チャンバ102と、真空ポンプ103と、回転ドラム110と、CuPC膜を成膜するCuPC膜成膜室130と、αーNPD膜を成膜するαーNPD膜成膜室140と、Alq3膜を成膜するAlq3膜成膜室150と、LiF膜を成膜するLiF膜成膜室160と、Al膜を成膜するAl膜成膜室170とを備えている。CuPC膜成膜室130、αーNPD膜成膜室140、Alq3膜成膜室150、LiF膜成膜室160およびAl膜成膜室170は、回転ドラム110の回転方向にこの順で回転ドラム110の外周面に沿って配置されている。チャンバ102内は真空ポンプ103によって排気される。
【0066】
チャンバ102の壁104には、基板繰り出し室180および基板巻き取り室190とそれぞれ連通する連通孔105および連通孔106がそれぞれ設けられている。基板繰り出し室180内の繰り出しローラ182から繰り出された基板11は、ガイドローラ183によってガイドされ、ローラ132、133によって上下方向から扶持され、連通孔105を通って成膜室101に入り、成膜室101内に設けられた回転ドラム110の外周面上を搬送され、CuPC膜成膜室130、αーNPD膜成膜室140、Alq3膜成膜室150、LiF膜成膜室160およびAl膜成膜室170をこの順に経由し、その後、連通孔106を通って基板巻き取り室190に入り、ガイドローラ193によってガイドされ、巻き取りローラ192によってロール状に巻き取られる。
【0067】
制御部300は、CuPC膜成膜室130と信号線301で接続され、CuPC膜成膜室130から温度等の信号を受け取り、それに応じてCuPC膜成膜室130の温度等を制御する。制御部300は、αーNPD膜成膜室140と信号線302で接続され、αーNPD膜成膜室140から温度等の信号を受け取り、それに応じてαーNPD膜成膜室140の温度等を制御する。制御部300は、Alq3膜成膜室150と信号線303で接続され、Alq3膜成膜室150から温度等の信号を受け取り、それに応じてAlq3膜成膜室150の温度等を制御する。制御部300は、LiF膜成膜室160と信号線304で接続され、LiF膜成膜室160から温度等の信号を受け取り、それに応じてLiF膜成膜室160の温度等を制御する。制御部300は、Al膜成膜室170と信号線305で接続され、Al膜成膜室170から温度等の信号を受け取り、それに応じてAl膜成膜室170の温度等を制御する。
【0068】
また、制御部300は、真空ポンプ103および成膜室101の真空度を測定する真空計(図示せず)と信号線306で接続され、当該真空計から真空度の信号を受け取り、それに応じて真空ポンプ103を制御して、成膜室101内を所定の真空度に制御する。制御部300は、真空ポンプ186および基板繰り出し室180の真空度を測定する真空計(図示せず)と信号線307で接続され、当該真空計から真空度の信号を受け取り、それに応じて真空ポンプ186を制御して、基板繰り出し室180内を所定の真空度に制御する。制御部300は、真空ポンプ194および基板巻き取り室190の真空度を測定する真空計(図示せず)と信号線308で接続され、当該真空計から真空度の信号を受け取り、それに応じて真空ポンプ194を制御して、基板巻き取り室190内を所定の真空度に制御する。
【0069】
さらに、制御部300は、回転ドラム110,繰り出しローラ182および巻き取りローラ192と信号線311、312および309でそれぞれ接続され、回転ドラム110,繰り出しローラ182および巻き取りローラ192の回転等をそれぞれ制御する。
【0070】
次に、CuPC膜成膜室130、αーNPD膜成膜室140、Alq3膜成膜室150、LiF膜成膜室160およびAl膜成膜室170を説明するにあたり、CuPC膜成膜室130を例にとって説明する。αーNPD膜成膜室140、Alq3膜成膜室150、LiF膜成膜室160およびAl膜成膜室170はCuPC膜成膜室130と同じ構成なので、その説明は省略する。
【0071】
図3〜6を参照すれば、CuPC膜成膜室130は、容器131と、容器131内を加熱するヒータ137と、容器131内に設けられ、成膜材料135がその内部に置かれる成膜材料容器133と、成膜材料容器133の上側開口を閉じる蓋134であって、上下移動可能な蓋134とを備えている。容器131の側面(本実施の形態では底面)131aには開口部136が設けられている。
【0072】
回転ドラム110が、この開口部136に配置され、それによって、回転ドラム110の外周面上に位置している基板11の被成膜面11aが、開口部136の最外部、すなわち、本実施の形態では、側面(底面)131aの最外部である表面131b(図7参照)、よりも内側に位置している。
【0073】
基板11は、回転ドラム110が左回りに回転するにつれて、一方向131x(図3では紙面の右から左方向、図4では、紙面の裏側から表側)に移動する。
【0074】
制御部300は、ヒータ137および容器131内の温度を測定する温度計(図示せず)と信号線310で接続され、当該温度計から温度の信号を受け取り、それに応じてヒータ137を制御して、容器131内を所定の温度に制御する。
【0075】
このように、成膜材料容器133が容器131内に設けられ、当該容器131内はヒータ137によって加熱されるので、加熱された温度において、成膜材料135(CuPC)と平衡な状態、すなわち、飽和の状態にある気体状の成膜材料(CuPC)がこの容器131内の空間132に存在する。容器131内の空間132には、加熱された温度における飽和蒸気圧で気体状の成膜材料(CuPC)が存在している。
【0076】
また、上記容器131とは別に成膜室102のチャンバ102が設けられ、このチャンバ102を排気する真空ポンプ103が設けられ、上記容器131に設けられた開口部136はこのチャンバ102に連通しているので、容器131内を所定の真空にすることができる。そして、成膜材料容器133から成膜材料135(CuPC)と平衡な状態にある気体状の成膜材料(CuPC)が供給されるので、容器131内を気体状の成膜材料(CuPC)が一定の蒸気圧、本実施の形態では飽和蒸気圧、で存在する真空の状態とすることができる。
【0077】
そして、回転ドラム110によって基板11の被成膜面11aを開口部136の最外部131bよりも内側に位置させるので、容器131内を気体状の成膜材料(CuPC)が一定の蒸気圧、本実施の形態では飽和蒸気圧、で存在する真空内で、気体状の成膜材料(CuPC)の流れがない箇所に基板11の被成膜面11aを位置させることができる。そして、この状態で基板11の被成膜面11aに成膜材料(CuPC)を付着させて基板11の被成膜面11a上にCuPC膜を成膜する。このように、気体状の成膜材料(CuPC)の流れがない箇所に基板11の被成膜面11aを位置させているので、気体状の成膜材料(CuPC)が3次元的に等方的に運動をしている箇所に基板11の被成膜面11aを位置させることになり、成膜されたCuPC膜の膜厚は非常に均一なものとなる。
【0078】
次に、上記した有機エレクトロルミネッセンス素子の製造装置100を用いて、上記し
た有機エレクトロルミネッセンス素子10を製造するための製造方法を図8を参照して説明する。
【0079】
まず、基板11として、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルムからなる長尺のフレキシブル基板を準備し、基板11の表面にITO(酸化インジウムスズ)12を形成する。そして、ITO20が形成された基板11をロール状にし、繰り出しローラ182、回転ドラム110、巻き取りローラ192にセットする。
【0080】
次に、回転ドラム110の外周面上を搬送されてくる基板11に対し、CuPC膜成膜室130、αーNPD膜成膜室140、Alq3膜成膜室150、LiF膜成膜室160およびAl膜成膜室170によって、順次CuPC膜13、αーNPD膜14、Alq3膜15、LiF膜16およびAl膜17を形成する。
【0081】
(第2の実施の形態)
図9乃至図11を参照して第2の実施の形態を説明する。第1の実施の形態では、基板11を回転ドラム110の外周面上を搬送したが、本実施の形態では、基板11を張り渡して直線状に移動させる点が第1の実施の形態と異なるが他の点は同じである。
【0082】
(第3の実施の形態)
図12乃至図14を参照して第3の実施の形態を説明する。第2の実施の形態では、基板11の被成膜面11aを開口部136の最外部131bよりも内側に位置させていたが、本実施の形態では、容器131の外面より突出する突出部201を基板11の移動方向に沿って設けており、基板11の被成膜面11aを突出部201の最外部201bよりも内側に位置させている点が第2の実施の形態と異なるが他の点は同じである。
【0083】
(第4の実施の形態)
図15乃至図18を参照して第4の実施の形態を説明する。第1の実施の形態では、基板11の被成膜面11aを開口部136の最外部131bよりも内側に位置させていたが、本実施の形態では、容器131の外面より突出する突出部201を設けており、基板11の被成膜面11aを突出部201の最外部201bよりも内側に位置させている点が第1の実施の形態と異なるが他の点は同じである。
【0084】
(第5の実施の形態)
図19、図20を参照して第5の実施の形態を説明する。第1乃至第4の実施の形態では、容器131の底面131aに開口部136を設け、基板11の被成膜面11aを開口部136内に位置させていたが、本実施の形態では、容器131の底面131aには開口部は設けず、容器131の互いに対向する側面131bに開口部212をそれぞれ設け、位置手段(図示せず)によって被成膜体である平板状の基板11を2つの開口部212を貫通させて容器131内へ位置させ、2つの開口部212をチャンバ212内に位置させている点が第1乃至第4の実施の形態と異なるが他の点は同様である。本実施の形態では、容器131内にある基板11の周囲に成膜することができる。さらに、位置手段(図示せず)によって被成膜体を一方の開口部212から他方の開口部212に向かって移動させれば、基板11に連続して成膜することができる。
【0085】
(第6の実施の形態)
図21、図22を参照して第6の実施の形態を説明する。第5の実施の形態では、基板11は平板状であったが、本実施の形態では、基板11は棒状である点が第5の実施の形態と異なるが他の点は同じである。
【0086】
(第7の実施の形態)
図23、図24を参照して第7の実施の形態を説明する。第5の実施の形態では、基板11は平板状であったが、本実施の形態では、基板11は筒状である点が第5の実施の形態と異なるが他の点は同じである。
【0087】
(第8の実施の形態)
図25を参照して第8の実施の形態を説明する。第1の実施の形態では、成膜材料容器133の上側開口を閉じる蓋134であって、上下移動可能な蓋134を備えており、成膜しない時には、蓋134によって成膜材料容器133の上側開口を閉じることによって成膜材料が不必要に消費されるのを防止していたが、本実施の形態では、蓋134は設けず、成膜材料容器133の基板11が配置される側の空間132aと成膜材料容器133側の空間244とを隔てる隔壁240を成膜材料容器133に設け、隔壁240と容器130の上面131cとの間に隙間241を設けている点が第1の実施の形態と異なるが他の点は同様である。このような構造にすれば、隙間241を介して、成膜に必要十分な量の成膜材料を基板11の被成膜面11aに供給できる。なお、本実施の形態でも、ヒータ137によって加熱された温度において、成膜材料135(CuPC)と平衡な状態、すなわち、飽和の状態にある気体状の成膜材料(CuPC)がこの容器131内の空間244および132aに存在する、すなわち、容器131内の空間244および132aには、加熱された温度における飽和蒸気圧で気体状の成膜材料(CuPC)が存在している点も第1の実施の形態と同じである。
【0088】
(第9の実施の形態)
図26を参照して第9の実施の形態を説明する。第8の実施の形態の成膜室130に対して、容器131の側壁131dに、気体供給管243をさらに設けた点が第8の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。気体供給管243からは、成膜材料135と反応しない気体、例えば、Ar等を供給する。このようにすれば、ヒータ137によって加熱された温度における飽和蒸気圧で気体状の成膜材料(CuPC)を気体供給管243に供給される気体によって、空間244から空間132aに運ぶことができる。
【0089】
(第10の実施の形態)
図27を参照して第10の実施の形態を説明する。第1の実施の形態では、成膜材料容器133と基板11が配置される側の空間とが一つの容器131内に設けられていたが、本実施の形態では、基板11が配置される成膜容器251と成膜材料135が配置される成膜材料容器261とを別々のものとしている。CuPC膜成膜室130は、成膜容器251を有する成膜室250と、成膜容器251内を加熱するヒータ137と、成膜材料容器261を有する成膜材料供給室260と、成膜材料容器261内を加熱するヒータ138と、を備えている。
【0090】
成膜容器250の底面131aには開口部136が設けられている。回転ドラム110が、この開口部136に配置され、それによって、回転ドラム110の外周面上に位置している基板11の被成膜面11aが、開口部136の最外部、すなわち、本実施の形態では、底面131aの最外部である表面131b(図7参照)よりも内側に位置している。基板11は、回転ドラム110が左回りに回転するにつれて、一方向131x(紙面の裏側から表側)に移動する。
【0091】
成膜材料容器261内には、成膜材料135が置かれている。成膜材料容器261と成膜容器251との間には、管266が成膜材料容器261の側面262と成膜容器250の側面252とを貫通して設けられ、管266によって、成膜材料容器261内の空間264と成膜容器251内の空間254とを連通している。成膜材料容器261の側面263を貫通して気体供給管265が設けられている。気体供給管265からは、成膜材料135(CuPC)と反応しない気体、例えば、Arが供給される。
【0092】
制御部300は、ヒータ137および成膜容器251内の温度を測定する温度計(図示せず)と信号線310で接続され、当該温度計から温度の信号を受け取り、それに応じてヒータ137を制御して、成膜容器251内を所定の温度に制御する。制御部300は、また、ヒータ138および成膜材料容器261内の温度を測定する温度計(図示せず)と信号線311で接続され、当該温度計から温度の信号を受け取り、それに応じてヒータ138を制御して、成膜材料容器261内を所定の温度に制御する。
【0093】
このように、成膜材料容器261内はヒータ138によって所定の温度に加熱されるので、加熱された温度において、成膜材料135(CuPC)と平衡な状態、すなわち、飽和の状態にある気体状の成膜材料135(CuPC)がこの成膜材料容器261内の空間264に存在する。すなわち、成膜材料容器261内の空間264には、加熱された温度における飽和蒸気圧で気体状の成膜材料135(CuPC)が存在している。そして、気体供給管265から供給された気体と共に、ヒータ138によって加熱された温度における飽和蒸気圧で気体状の成膜材料135(CuPC)が管266を介して、成膜容器251内の空間254内に供給され、基板11の被成膜面11aに成膜される。
【0094】
成膜容器251内はヒータ137によって所定の温度に加熱されるので、成膜材料容器261内の温度と、成膜容器251内の温度とを異なるものとすることができる。すなわち、成膜温度を、成膜材料の蒸気圧を決定する温度とを異なるものとすることができる。なお、本実施の形態では、成膜材料の凝縮や凝固を防止するために、成膜容器251内の温度を成膜材料容器261内の温度以上とすることが好ましい。
【0095】
(第11の実施の形態)
図28を参照して第10の実施の形態を説明する。第10の実施の形態の管266に対して、気体供給管267をさらに接続して設けた点が第10の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。気体供給管267からは、成膜材料135と反応しない気体、例えば、Ar等を供給する。
【0096】
このようにすれば、成膜材料135は、(成膜材料容器261内の温度における飽和蒸気圧)×(気体供給管265から供給される気体の流量)/(気体供給管265から供給される気体の流量+気体供給管267から供給される気体の流量)の蒸気圧で成膜容器251内の空間254内に供給され、基板11の被成膜面11aに成膜される。
【0097】
本実施の形態では、成膜容器251内に供給される気体状の成膜材料135の蒸気圧を、ヒータ138によって加熱された成膜材料容器261内の温度だけでなく、気体供給管265から供給される気体の流量と気体供給管267から供給される気体の流量とによっても制御することができるようになる。本実施の形態では、成膜材料容器261内の温度と、成膜容器251内の温度とを異なるものとすることができるが、気体供給管267から供給される気体によって、成膜容器251内に供給される気体状の成膜材料135の蒸気圧を成膜材料容器261内の温度における飽和蒸気圧よりも下げることができるので、成膜材料の凝縮や凝固を防止するために、成膜容器251内の温度を成膜材料容器261内の温度以上とする必要はなくなり、成膜容器251内の温度を成膜材料容器261内の温度以上とすることも可能となる。
【0098】
なお、以上の各実施の形態では、成膜材料容器133や成膜材料容器261に置かれる成膜材料は、その材料や成膜材料容器133や成膜材料容器261の温度に応じて、液体状または固体状である。
【符号の説明】
【0099】
10 有機エレクトロルミネッセンス素子
11 基板
12 ITO(陽極)
13 CuPC(正孔注入層)
14 αーNPD(正孔輸送層)
15 Alq3(発光および電子輸送層)
16 LiF(電子注入層)
17 Al(陰極)
100 有機エレクトロルミネッセンス素子製造装置
101 成膜室
102 チャンバ
103 真空ポンプ
104 壁
105、106 連通孔
110 回転ドラム
130 CuPC膜成膜室
131 容器
131a 底面
131b、131d 側面
131c 上面
132、132a 空間
133 成膜材料容器
134 蓋
135 成膜材料
136 開口部
137、138 ヒータ
140 αーNPD膜成膜室
150 Alq3膜成膜室
160 LiF膜成膜室
170 Al膜成膜室
180 基板繰り出し室
181 チャンバ
182 繰り出しローラ
183 ガイドローラ
184、185 ローラ
186 真空ポンプ
190 基板巻き取り室
191 チャンバ
192 巻き取りローラ
193 ガイドローラ
194 真空ポンプ
212 開口部
240 隔壁
241 隙間
243、265、267 気体供給管
244 空間
250 成膜室
251 成膜容器
252、262、263 側面
254、264 空間
260 成膜材料供給室
261 成膜材料容器
266 管
300 制御部
301〜311 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と,
前記容器内を加熱する加熱手段と、
前記容器内に設けられ、液体状または固体状の成膜材料がその内部に置かれ、気体状となった前記成膜材料を前記容器内に供給する成膜材料供給部と、
前記容器に設けられた開口部と、
被成膜体を前記開口部の最外部よりも内側に位置させる位置手段と、
前記開口部と連通する真空容器と、
前記真空容器を排気する排気手段と、
を備える成膜装置。
【請求項2】
前記位置手段によって、前記被成膜体を一方向に、前記容器の外側から前記開口部へ移動させ、前記開口部から前記容器の外側へ移動させる請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記開口部の最外部は、前記容器の最外部である請求項1または2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記開口部の最外部は、前記容器の外面より突出する突出部の最外部である請求項1または2記載の成膜装置。
【請求項5】
前記開口部の最外部は、前記容器の外面より突出し、前記一方向に沿って延在する突出部の最外部である請求項2記載の成膜装置。
【請求項6】
前記位置手段は、その表面に前記被成膜体が巻き掛けられる回転ドラムである請求項1乃至5のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項7】
前記位置手段は、前記開口部へ前記被成膜体を直線的に移動させる移動手段である請求項1乃至5のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項8】
容器と、
前記容器内を加熱する加熱手段と、
前記容器内に設けられ、液体状または固体状の成膜材料がその内部に置かれ、気体状となった前記成膜材料を前記容器内に供給する成膜材料供給部と、
前記容器の互いに対向する側面にそれぞれ設けられた2つの開口部と、
被成膜体を前記2つの開口部を貫通させて前記容器内へ位置させる位置手段と、
前記開口部と連通する真空容器と、
前記真空容器を排気する排気手段と、
を備える成膜装置。
【請求項9】
前記気体状となった成膜材料が前記容器内に前記成膜材料の飽和蒸気圧で存在する状態で成膜を行う請求項1乃至8のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項10】
容器と、
一定の蒸気圧の気体状の成膜材料を前記容器に供給する成膜材料供給手段と、
前記容器に設けられた開口部と、
真空排気手段と、
前記真空排気手段と前記開口部との間に設けられた排気経路と、
前記容器内に前記開口部を介して被成膜体を位置させる位置手段と、を備えた成膜装置であって、
前記位置手段によって前記容器内に前記被成膜体を位置させた際に、前記被成膜体の被成膜面が位置している箇所には、気体の流れがない成膜装置。
【請求項11】
容器と、
一定の蒸気圧の気体状の成膜材料を前記容器に供給する成膜材料供給手段と、
前記容器に設けられた開口部と、
真空排気手段と、
前記真空排気手段と前記開口部との間に設けられた排気経路と、
前記容器内に前記開口部を介して被成膜体を位置させる位置手段と、を備えた成膜装置であって、
前記位置手段によって前記容器内に前記被成膜体を位置させた際に、前記被成膜体の被成膜面が位置している箇所では前記気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている成膜装置。
【請求項12】
前記位置手段によって前記被成膜体を前記開口部の最外部よりも内側に位置させる請求項10または11記載の成膜装置。
【請求項13】
前記開口部は、前記容器の互いに対向する側面にそれぞれ設けられた2つの開口部であり、前記位置手段によって前記被成膜体を前記2つの開口部を貫通させて位置させる請求項10または11記載の成膜装置。
【請求項14】
前記成膜材料供給手段が前記容器内に配置され、前記容器内を所定の温度に加熱する加熱手段をさらに備える請求項10乃至13のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項15】
前記一定の蒸気圧は、前記成膜材料の前記所定の温度における飽和蒸気圧である請求項14記載の成膜装置。
【請求項16】
前記成膜材料供給手段が前記容器の外部に配置され、前記容器内を第1の所定の温度に加熱する第1の加熱手段および前記成膜材料供給手段を第2の所定の温度に加熱する第2の加熱手段をさらに備える請求項10乃至13のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項17】
前記一定の蒸気圧は、前記成膜材料の前記第2の所定の温度における飽和蒸気圧である請求項16記載の成膜装置。
【請求項18】
前記成膜材料供給手段は、液体状または固体状の前記成膜材料がその内部に置かれる成膜材料容器と、前記成膜材料と反応しない第1の気体を成膜材料容器に供給する第1の気体供給手段とを備え、前記一定の蒸気圧の気体状の成膜材料は、前記第1の気体と共に、前記第2の所定の温度における飽和蒸気圧で前記容器に供給される請求項16記載の成膜装置。
【請求項19】
前記成膜材料供給手段は、液体状または固体状の前記成膜材料がその内部に置かれる成膜材料容器と、前記成膜材料と反応しない第1の気体を成膜材料容器に供給する第1の気体供給手段と、前記成膜材料と反応しない第2の気体を成膜材料容器の下流に供給する第2の気体供給手段とを備え、前記一定の蒸気圧の気体状の成膜材料は、(前記第2の所定の温度における飽和蒸気圧)×(前記第1の気体の流量)/(前記第1の気体の流量+前記第2の気体の流量)の蒸気圧で前記容器に供給される請求項16記載の成膜装置。
【請求項20】
容器と、
一定の蒸気圧の気体状の成膜材料を前記容器に供給する成膜材料供給手段と、
前記容器内に被成膜体を位置させる位置手段と、を備えた成膜装置であって、
前記容器内に前記被成膜体を位置させた際に、前記被成膜体の被成膜面が位置している箇所には、気体の流れがない成膜装置。
【請求項21】
容器と、
一定の蒸気圧の気体状の成膜材料を前記容器に供給する成膜材料供給手段と、
前記容器内に被成膜体を位置させる位置手段と、を備えた成膜装置であって、
前記容器内に前記被成膜体を位置させた際に、前記被成膜体の被成膜面が位置している箇所では前記気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている成膜装置。
【請求項22】
前記成膜材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する材料である請求項1乃至21のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項23】
気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空内であって、前記気体状の成膜材料の流れがない箇所に被成膜体を位置させ、前記被成膜体に前記成膜材料を付着させて成膜する成膜方法。
【請求項24】
気体状の成膜材料が一定の蒸気圧で存在する真空内であって、前記気体状の成膜材料が3次元的に等方的に運動をしている箇所に被成膜体を位置させ、前記被成膜体に前記成膜材料を付着させて成膜する成膜方法。
【請求項25】
前記気体状の成膜材料が容器内に前記一定の蒸気圧で存在し、前記容器内には前記一定の蒸気圧の気体状の成膜材料が供給されると共に、前記容器は排気されている請求項23または24記載の成膜方法。
【請求項26】
前記一定の蒸気圧は前記成膜材料の飽和蒸気圧である請求項23乃至25のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項27】
前記成膜材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する材料である請求項23乃至26のいずれかに記載の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−68981(P2011−68981A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110352(P2010−110352)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(509243768)株式会社TI (1)
【Fターム(参考)】