説明

成膜装置および集塵方法

【課題】成膜処理後の基板上の塵を確実に除去することができる成膜装置提供。
【解決手段】プラズマCVD装置(1)は、トレイ(16)上に載置された基板(17)に薄膜を形成する成膜処理室(12)と、成膜処理済みの基板(17)が載置されたトレイ(16)を搬送する搬送装置(14,15)と、搬送移動しているトレイ(16)の基板載置面に向けてエアを噴出して、トレイ(16)および該トレイ(16)に載置された基板(17)に付着する塵を吹き飛ばすブロア(22A,22B)と、吹き飛ばされた塵をエアとともに吸引するノズル(25)とを備える。ブロア(22A,22B)は、搬送方向下流側に斜めにエアを噴出する噴出口と、搬送方向上流側に斜めにエアを噴出する噴出口とを備え、ノズル(25)にはこれらの噴出口の間に配置されて基板載置面に対向する吸入口が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵装置を備えた成膜装置、および、その成膜装置における集塵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜を形成する技術の一つとして、CVD法(化学気相堆積法)がある。例えば、プラズマを用いたプラズマCVD法では、成膜チャンバに材料ガスを導入するとともに排気ポンプで減圧し、直流電力、高周波電力、マイクロ波電力などを印加してプラズマを生成し、基板上に薄膜を形成する。この成膜の際には、基板上だけではなく、基板が載置された搬送トレイやチャンバ内壁にも生成物の被膜が生成される。チャンバ内壁の被膜の付着量は、成膜処理が繰り返される度に増大する。チャンバ内壁に被膜は、付着量が増大すると膜応力により剥離が発生したり、また、温度変化によっても剥離が生じたりする。
【0003】
剥離した被膜は、基板上や搬送トレイ上に落下する。この剥離して落下する被膜の量は、成膜稼働時間が長くなるにつれて増大する傾向にある。また、搬送トレイ上やチャンバ内に残存する剥離した被膜が、チャンバ内を大気パージするときや基板搬送過程において巻き上げられて、基板上に落下する場合もある。
【0004】
そのため、従来のCVD装置では、活性化されたクリーニングガスを成膜チャンバに導入し、材料ガス導入ラインやチャンバ内壁に付着している反応生成物(成膜物や副生成物など)を除去するようにしている(例えば、特許文献1参照)。また、帯電した集塵プレートを基板処理前に成膜チャンバ内に搬送し、成膜室内に残留する粉塵を静電力により吸着する方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−252066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したクリーニング作業は、基板上への被膜の落下を防止するために行うものであって、基板上に落下した塵を除去するものではない。そのため、被膜の落下を極力抑える意味で、上述したクリーニング作業を成膜処理の度に行うようにしている。その結果、成膜処理1回当たりの時間が長くなり生産効率の低下を招くことになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る成膜装置は、トレイ上に載置された基板に薄膜を形成する成膜処理室と、成膜処理済みの基板が載置されたトレイを搬送する搬送装置と、搬送移動しているトレイの基板載置面に向けてエアを噴出して、トレイおよび該トレイに載置された基板の上の塵を吹き飛ばすブロアと、吹き飛ばされた塵をエアとともに吸引するノズルとを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の成膜装置において、ブロアは、基板載置面に対して斜めに入射するように搬送方向下流側に向けてエアを噴出する第1の噴出口と、基板載置面に対して斜めに入射するように搬送方向上流側に向けてエアを噴出する第2の噴出口とを備え、ノズルは第1の噴出口と第2の噴出口との間に配置され、基板載置面に対向する吸入口を備えることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の成膜装置において、第1および第2の噴出口から噴出される各エアの噴出方向は、該第1および第2の噴出口から噴出されるエアが、基板の表面よりもトレイ側において交差するように設定されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の成膜装置において、成膜装置への未処理基板の搬入および成膜装置からの成膜処理済み基板の搬出を行うロード・アンロード室と、成膜処理済み基板をロード・アンロード室に搬送するリターン搬送室とを備え、ブロアおよびノズルをリターン搬送室に設けたことを特徴とする。
請求項5の発明は、成膜装置の集塵方法であって、成膜処理室における成膜を停止して該成膜処理室の温度を低下させる工程と、基板が載置されていないトレイを成膜処理室に供給する工程と、成膜処理室に供給されたトレイを搬送装置により搬送する工程と、搬送装置によりトレイを搬送しつつ該トレイ上の塵を集塵する工程とを有することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載の集塵方法において、集塵する工程では、トレイ上の塵をブロアからのエアによって吹き飛ばし、その吹き飛ばされた塵をノズルによりエアとともに吸引することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成膜処理後の基板上およびトレイ上の塵を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による集塵装置を備えた成膜装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】集塵装置2の構成を説明する平面図である。
【図3】ブロア22A,22Bおよび吸入ノズル25の位置関係を説明する図である。
【図4】吸入ノズル25の下方をトレイ16が移動する間の集塵作業の状況を示す模式図である。
【図5】他の例を示す図である。
【図6】被膜除去作業の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
―第1の実施の形態―
図1は本発明による成膜装置の第1の実施の形態を示したものであり、プラズマCVD装置の概略構成を示す模式図である。プラズマCVD装置1は、ロード/アンロード室11、成膜処理室12、昇降室13およびリターン搬送室14を備えている。成膜処理室12には、トレイ16を搬入および搬出するためのゲートバルブV1,V2が設けられている。基板17が載置されるトレイ16は、コンベア15により各室間を搬送される。なお、図示していないが、ロード/アンロード室11および昇降室13には、トレイを昇降するための昇降機構が設けられている。
【0011】
ロード/アンロード室11においては、未処理の基板17の供給および成膜処理済の基板17の回収が行われる。例えば、真空吸着チャックやベルヌーイチャック等の基板供給/回収装置18を用いて、トレイ16上へ未処理の基板17を載置し、また、トレイ16上の処理済み基板17を回収する。なお、上述したチャックによる基板17のハンドリングが確実に行われるように、すなわち、基板17がトレイ16の表面から容易に引き離されるように、トレイ16の基板載置面には溝が形成されている。なお、ロード/アンロード室11に基板加熱用のヒータを設けて、未処理の基板17の予備加熱を行うようにしても良い。
【0012】
ロード/アンロード室11への基板17の供給が終了したならば、エアパージを行って成膜処理室12を大気圧状態に戻し、ゲートバルブV1を開いてトレイ16を成膜処理室12に搬送する。その後、ゲートバルブV1を閉じて真空排気した後に材料ガスを導入し、プラズマCVD処理によりに所望の薄膜を基板17上に成膜する。本実施の形態の成膜装置はプラズマCVD法により成膜を行うものであるが、プラズマPの生成方法としては容量結合型プラズマ、誘導結合型プラズマ、表面波プラズマなど種々の方法がある。それらの方法でプラズマPを生成し、そのプラズマを利用して成膜処理室12内に導入された材料ガスを分解・反応させて、基板17上に薄膜を形成する。
【0013】
上述したように、成膜処理によって成膜処理室12の内壁にも被膜が形成され、成膜処理が繰り返されられると内壁の被膜が剥離して基板17やトレイ16上に落下することがある。また、搬送過程や成膜処理室12を大気圧状態へ戻すときのエアパージにより、成膜処理室12内に落下した被膜が舞い上がり、基板17上に落下する場合もある。
【0014】
基板17上への成膜が終了したならば、エアパージを行って成膜処理室12を大気圧状態に戻した後にゲートバルブV2を開閉し、成膜処理済みの基板17が載置されたトレイ16を昇降室13に搬送する。昇降室13にはトレイ16を昇降させる昇降機構が設けられており、トレイ16をリターン搬送室14への搬送位置まで降下させる。トレイ16の位置が搬送位置となったならば、コンベア15によりトレイ16をリターン搬送室14へ搬送する。
【0015】
リターン搬送室14には、コンベア15とともに集塵装置が設けられている。図1に示したブロア22A,22Bおよび吸引ノズル25は、集塵装置を構成する部品の一部である。集塵装置の詳細構成は後述する。コンベア15によりトレイ16を図示右方向に搬送しながら、ブロア22A,22Bよりエアを搬送トレイ16の方向に吹き付ける。基板17上および搬送トレイ16上の塵(剥離した被膜等)は吹き付けられたエアによりが吸引ノズル25方向に舞い上げられ、エアと共に吸引ノズル25により吸い込まれる。このように、トレイ16の搬送移動を行いながら、基板17およびトレイ16上に落下した塵の集塵作業が自動的に行われる。
【0016】
集塵作業が終了すると、トレイ16はロード/アンロード室11に戻される。ロード/アンロード室11に搬送されたトレイ16は、昇降機構により基板供給/回収位置まで上方に移動される。トレイ16が搬入/回収位置まで上昇すると、成膜処理済みの基板17は基板供給/回収装置18により回収される。
【0017】
図2は集塵装置2の構成を説明する図であり、リターン搬送室14を成膜処理室12方向から見た平面図である。上述したように、トレイ16上には複数の基板17が載置されている。集塵装置2は、ブロア22A,22Bおよびノズル25に加えて、ガス供給装置20,吸引装置21,配管23およびマニホールド24を備えている。図1に示したコンベア15により、成膜処理済みの基板17を載置したトレイ16は図示右方向に搬送されるため、トレイ16の全領域が集塵装置2の下方を通過することになる。
【0018】
ブロア22A,22Bはガス噴出口を備えた配管で構成され、その配管には大気圧よりも若干圧力の高いエアがガス供給装置20から供給される。ブロア22A,22Bのエアによって舞い上げられた塵を吸入する吸入ノズル25は、上方から見てT字形状をしており、トレイ16と対向する底面部分に吸入口25aが形成されている。図2に示すように、複数の吸入ノズル25が、トレイ16の移動方向に対して直行する方向に隙間無く並設されている。それらの吸入ノズル25は、マニホールド24に取り付けられている。
【0019】
マニホールド24には吸引装置21からの配管23が接続されており、この配管23を介してマニホールド24内のエアを吸引装置21により吸引する。配管23には蛇腹状のフレキシブル配管が用いられ、マニホールド24の位置を調整することで、吸入ノズル25とトレイ16との隙間を正確に調整することができる。吸引ノズル25により吸引された塵はエアと共に吸引装置21まで運ばれ、吸引装置21内に設けられたダストボックスに回収される。
【0020】
図3は、ブロア22A,22Bおよび吸入ノズル25の位置関係を説明する図である。吸入ノズル25の底面部分には、幅寸法Wを有するスリット状の吸入口25aがトレイ16の基板載置面に対向するように形成されている。一対のブロア22A,22Bは基板搬送方向に並設されており、吸入口25aに対してブロア22Aは搬送方向の上流側に配置され、ブロア22Bは搬送方向の下流側に配置されている。吸入ノズル25は、吸入口25aがブロア22A,22Bの中間位置に配設されるように位置調整されている。
【0021】
ブロア22A,22Bには、エア噴出口220がブロア配管の延在方向、すなわち、トレイ搬送方向に対して直交する方向に複数並設されている。ブロア22Aのエア噴出口220は、鉛直下方向に対して角度θだけ搬送下流方向に傾いた位置に形成されており、基板17の面またはトレイ16の面に対して角度θを成す斜め前方(搬送下流方向)にエアが吹き出される。一方、ブロア22Bのエア噴出220は、鉛直下方向に対して角度θだけ搬送上流方向に傾いた位置に形成されており、基板17の面またはトレイ16の面に対して角度θを成す斜め後方(搬送上流方向)にエアが吹き出される。
【0022】
符号101は、ブロア22A,22Bから噴出されるエアの噴出方向を示す直線の交点を示している。角度θは、交点101が基板17の表面よりも下側(トレイ側)に位置するように設定される。すなわち、ブロア下端と交点101との間の鉛直方向距離h2を、ブロア下端と基板表面位置100との間の鉛直方向距離h1よりも大きく設定する。このように設定することにより、ブロア22Aのエア噴出方向を示す直線と基板表面位置100とが交差する位置は交点101よりも搬送方向下流となり、ブロア22Bのエア噴出方向を示す直線と基板表面位置100とが交差する位置は交点101よりも搬送方向上流となる。
【0023】
図3において、矢印曲線Gは、基板17があった場合の噴出エアの流れを模式的に示したものである。ブロア22Aの噴出口220から斜め右下に噴出されたエアは、基板表面位置100で示す基板表面に沿って図示右方向に流れる。一方、ブロア22Bの噴出口220から斜め左下に噴出されたエアは、基板表面に沿って図示左方向に流れる。この2つのエアの流れは、吸入ノズル25の吸入口25aの直下で衝突し、基板面から上方に上昇するような流れとなる。このエアの流れにより、基板表面やトレイ表面に載っている塵や剥離片は上方に舞い上げられる。
【0024】
このように、角度θを成すようにエアを2方向から噴出しているので、塵が吸入口25aの位置から大きく左右に外れて舞い上げられるのを避けることができる。一方、吸入ノズル25は吸入口25aから積極的にエアを吸入しているので、舞い上げられた塵はエアとともに吸入ノズル25内に吸入されることになる。
【0025】
なお、噴出口220の孔径φおよび角度θ、吸入口25aの幅寸法W、基板表面から吸入ノズル25およびブロア22A,22Bの下端までの距離は、実際に集塵試験を行うことで最適な値に決定される。
【0026】
(集塵動作の説明)
図4は、吸入ノズル25の下方をトレイ16が移動する間の集塵作業の状況を示す模式図である。図4(a)は、吸気ノズル25がトレイ16に対向している場合を示したものである。上述したように、ブロア22A,22Bから噴出されたエアは、トレイ表面に衝突して吸入口25aの直下においては上昇するような流れとなっている。そのため、トレイ16上の塵30は、トレイ16の表面から上方に舞い上げられ、吸入口25aから吸入ノズル25内にエアとともに吸い込まれる。
【0027】
図4(b)は、図4(a)の状態からさらにトレイ16が右方向に移動して、基板17の一部が吸入ノズル25の下方に入った状態を示す。この状態では、ブロア22Aから噴出されたエアのみが基板17の表面に直接当たっていて、ブロア22Bからのエアはトレイ16の表面に吹き付けられることになる。そのため、基板17にはブロア22Aから噴出されるエアによってトレイ16に押し付けられる力が働くため、ブロア22Bから噴出されトレイ表面に沿って流れてくるエアが基板17の端面部分に当たっても、破線で示すように基板17がトレイ16から浮きあがってずれたりすることがない。
【0028】
上述したように、トレイ16の基板載置面には、基板回収時にトレイ16から基板17が離れやすくするために溝等が形成されている。そのため、図4(b),(c)のように基板17の縁の部分にブロア22A,22Bからのエアが吹き付けられたときに、エアがトレイ16と基板17との隙間に入りやすくなり、基板17がシリコンウエハのように面積がそれほど大きくなく厚さが非常に薄い基板である場合には、基板17が浮き上がるおそれがある。しかしながら、図3に示すような配置とすることで、他方のブロアからのエアによる押し付け力により、基板17の浮き上がりが防止される。
【0029】
図4(c)は、図4(b)の状態からさらにトレイ16が右方向に移動して、図4(a)の場合とは逆に、基板17の反対側の端部が吸入ノズル25の下方に入った場合を示す。この場合には、噴出されたエアが基板17の表面に直接当たっているのはブロア22Bからのエアのみであり、ブロア22Aからのエアはトレイ16の表面に吹き付けられることになる。そのため、ブロア22Bから噴出されるエアによって基板17にはトレイ16に押し付けられる力が働き、ブロア22Aからのエアが基板端面に吹き付けられても、基板17が浮きあがるようなことはない。
【0030】
上述したように、基板端部にブロア22A,22Bからのエアが吹き付けられた場合でも、基板の吹き上がりを防止できるという作用効果は、交点101の位置が基板表面よりも下側(トレイ側)になるように角度θや距離h1を設定することにより得られる。
【0031】
(他の例)
図5は、図3に示した構成に対する他の例を示したものである。図5(a),(b)は、噴出ガスの方向を示す直線の交点101が基板表面付近に有る場合を示したものである。このような設定であっても塵を集塵する機能は生じるし、面積が大きく比較的重量のある基板であれば上述したような浮きあがりは生じない。
【0032】
ただし、シリコンウエハのような軽い基板の場合には、図5(a)に示すような基板位置において、ブロア22Bから噴出されたエアにより基板17が浮きあがってしまうおそれがあり、位置ズレにより基板同士が重なったりすることがある。また、図5(b)は、基板17の左端が吸入口25aの下側を通過する状況を示したものであり、この場合にもブロア22Aからのエアにより基板17が浮きあがるおそれがある。
【0033】
図5(c)は、一つのブロア22から角度θで斜めにエアを噴出し、ブロア22とは反対方向の角度θ方向に吸入ノズル25を配置した場合の構成を示したものである。この構成の場合には、塵はブロア22からのエアによって吸入ノズル25の方向へ吹き飛ばされるので、その吹き飛ばされた塵を吸入ノズル25により吸い込むようにしている。この構成の場合にも、移動する基板17の縁にブロア22からのエアが吹き付けられた際に、基板17が浮き上がって位置ずれするおそれがある。
【0034】
本実施の形態においては、上述した基板17上およびトレイ16の塵や剥離片を除去する集塵動作は、プラズマCVD装置1による成膜作業を行っている間、常時行われている。その結果、成膜後の基板17に塵(剥離した被膜等)が残留するのを防止することができる。
【0035】
―第2の実施の形態―
ところで、成膜処理室12の内壁に付着する被膜は成膜処理回数が増えるに従って増加する。そして、被膜の付着量が増えるにしたがい、被膜の剥離の頻度も増加する。そのため、定期的なメンテナンスとして、成膜処理室12の内壁に付着した被膜や、成膜処理室内に落下した剥離片を除去するクリーニング作業を、装置を停止して手作業で行うのが一般的である。このメンテナンスを行う場合、基板上の塵が基準量を超えたならば生産稼働を停止し、チャンバ内や搬送トレイを掃除機等で除去する。
【0036】
一方、本実施の形態のプラズマCVD装置1では、上述した集塵装置2を用いることで、成膜処理室内壁に付着した被膜の除去作業を、人手を介さず自動的に行うことができる。被膜除去作業は、図6に示すような手順で行われる。
【0037】
まず、ステップ#1において成膜作業を停止する。すなわち、成膜処理室12の成膜動作を停止するとともに、基板17の供給を停止する。なお、成膜動作は停止させるが、成膜動作以外の動作、すなわち、ロード/アンロード室11,昇降室13,リターン搬送室14の駆動は継続され、トレイ16の搬送および集塵装置2による集塵作業は引き続き行われている。
【0038】
ステップ#2では、トレイ16の連続搬送動作を開始する。この動作においては、成膜処理室12は大気圧に戻され、ゲートバルブV1,V2は開状態に維持される。そして、基板17を載置していない複数のトレイ16が次から次へと、開状態とされたゲートバルブV1,V2を介して成膜処理室12内を連続的に移動するように動作させる。
【0039】
上述したステップ#1で成膜処理室12における成膜動作が停止されると、成膜処理室12の温度が徐々に低下するので、この温度変化により壁面に付着していた被膜が剥離して落下する。上述したステップ#2により、成膜処理室12内においてはトレイ16が連続的に移動しているため、そのトレイ16上に剥離した被膜が落下する。剥離落下した被膜を載せたトレイ16は、コンベア15により成膜処理室12から搬出され、昇降室13を介してリターン搬送室14へと搬送される。
【0040】
リターン搬送室14に搬送されたトレイ16は、リターン搬送室14内を移動している間に、トレイ16上に落下した剥離被膜や塵が集塵装置2によって除去される。集塵装置2によりクリーニングされたトレイ16は、ロード/アンロード室11を介して再び成膜処理室に搬送される。このような被膜除去作業を所定時間行ったならば、ステップ#3において被膜除去作業を終了する。次いで、ステップ#4において、成膜動作を再開する。
【0041】
上述したように、第2の実施の形態では、成膜装置の集塵方法であって、成膜処理室12における成膜を停止して該成膜処理室12の温度を低下させる工程と、基板17が載置されていないトレイ16を成膜処理室12に供給する工程と、成膜処理室12に供給されたトレイ16を搬送装置15により搬送する工程と、搬送装置15によりトレイ16を搬送しつつ該トレイ16上の塵を集塵する工程とを有する。その結果、剥離した被膜はトレイ16によって受け止められ、その剥離被膜は集塵装置2で集塵され、成膜処理室12の内壁に付着した被膜の除去を、人手を使うことなく行うことができる。また、集塵工程では、トレイ16上の塵はブロア22A,22Bからのエアによって吹き飛ばされ、その吹き飛ばされた塵はノズル25によりエアとともに吸引される。
【0042】
プラズマCVD装置1にはこのような自動クリーニングモードが設定されており、オペレータが自動クリーニングモードを指示すると装置は自動クリーニングモードに入って、自動的に成膜処理室12の内壁に付着した被膜の除去を行う。
【0043】
もちろん、上述の自動クリーニングでは、トレイ16以外の場所に落下した剥離被膜は回収できず、人手により被膜を除去する場合に比べて十分な被膜除去は行えなかったりする。しかし、上述の自動クリーニングはプラズマCVD装置1全体を停止することなく実行できるので、装置全体を停止して人手を使って行う定期的なクリーニングメンテナンスの間隔をより延長することが可能となり、コスト低減を図ることができる。
【0044】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えば、図2に示す例では、ノズルを複数並設したが大きなノズルを一つ設けても良いし、図2に示す大きさのノズルをトレイの大きさに応じて1〜3個設けるようにしても良い。また、上述した実施形態では、成膜装置としてプラズマCVD装置を例に説明したが、プラズマ利用しないCVD装置にも適用できるし、スパッタを利用した成膜装置等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:プラズマCVD装置、11:ロード/アンロード室、12:成膜処理室、13:昇降室、14:リターン搬送室、15:コンベア、16:トレイ、17:基板、18:基板供給/回収装置、20:ガス供給装置、21:吸引装置、22,22A,22B:ブロア、23:配管、24:マニホールド、25:吸引ノズル、25a:吸入口、101:交点、220:エア噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ上に載置された基板に薄膜を形成する成膜処理室と、
成膜処理済みの基板が載置された前記トレイを搬送する搬送装置と、
搬送移動している前記トレイの基板載置面に向けてエアを噴出して、トレイおよび該トレイに載置された基板の上の塵を吹き飛ばすブロアと、前記吹き飛ばされた塵をエアとともに吸引するノズルとを備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置において、
前記ブロアは、前記基板載置面に対して斜めに入射するように搬送方向下流側に向けてエアを噴出する第1の噴出口と、前記基板載置面に対して斜めに入射するように搬送方向上流側に向けてエアを噴出する第2の噴出口とを備え、
前記ノズルは前記第1の噴出口と前記第2の噴出口との間に配置され、前記基板載置面に対向する吸入口を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置において、
前記第1および第2の噴出口から噴出される各エアの噴出方向は、該第1および第2の噴出口から噴出されるエアが、前記基板の表面よりもトレイ側において交差するように設定されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の成膜装置において、
成膜装置への未処理基板の搬入および成膜装置からの成膜処理済み基板の搬出を行うロード・アンロード室と、
成膜処理済み基板を前記ロード・アンロード室に搬送するリターン搬送室とを備え、
前記ブロアおよび前記ノズルを前記リターン搬送室に設けたことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
成膜装置の集塵方法であって、
前記成膜処理室における成膜を停止して該成膜処理室の温度を低下させる工程と、
前記基板が載置されていないトレイを前記成膜処理室に供給する工程と、
前記成膜処理室に供給された前記トレイを搬送装置により搬送する工程と、
前記搬送装置により前記トレイを搬送しつつ該トレイ上の塵を集塵する工程とを有することを特徴とする集塵方法。
【請求項6】
請求項5に記載の集塵方法において、
前記集塵する工程では、前記トレイ上の塵をブロアからのエアによって吹き飛ばし、その吹き飛ばされた塵をノズルによりエアとともに吸引することを特徴とする集塵方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−236489(P2011−236489A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111131(P2010−111131)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】