説明

成膜装置のクリーニング装置およびそれを用いたクリーニング方法

【課題】成膜装置の電極の汚染物除去を短時間で行い、電極表面を清浄な状態に保つことにより、成膜装置による成膜の歩留まり改善および装置稼働率の向上を図る。
【解決手段】反応容器114と、反応容器114内に互いに離間して対向配置された第1電極111および第2電極112と、被成膜基板を搬入して第2電極112上に設置しかつ成膜後に所望の膜が成膜された被成膜基板を反応容器114の外部へ搬出する基板搬送手段とを備えた成膜装置をクリーニングする際に、基板搬送手段にて第1電極111と第2電極112の間に搬送されるクリーニング装置であって、第1電極111の表面に接触可能な汚染物除去部102を備え、基板搬送手段にて第1電極111と第2電極112の間に搬送されることにより、汚染物除去部102が第1電極111の表面に摺接して第1電極111の表面に付着した汚染物Cを払い落として除去するように構成されたことを特徴とする成膜装置のクリーニング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置のクリーニング装置およびそれを用いたクリーニング方法に関し、さらに詳しくは、反応容器内の電極の表面をクリーニングする成膜装置のクリーニング装置およびそれを用いたクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマCVD装置のような成膜装置は、排気部および反応性ガス導入部と接続された反応容器内に、上方の第1電極と下方の第2電極が互いに対向して配置された構造を有している。このような成膜装置による成膜するに際しては、第2電極上に基板を設置し、前記ガス導入部から所定の反応性ガスを反応容器内に導入すると共に、前記排気部にて排気して反応容器内を所定の真空度に制御した後、第1および第2電極間に電力を供給して、第1電極と基板の間にプラズマを発生させて前記反応性ガスを分解することにより、基板上に所望の膜を成膜する。
【0003】
通常、前記構成の成膜装置で成膜を行うと、第2電極上の基板と対向する第1電極にも何らかの汚染物(生成物)が堆積する。そのため、成膜プロセスを繰り返すと、反応容器内にパウダー状の汚染物が発生する。この汚染物が成膜中の膜表面に飛来した場合、膜中に取り込まれ、欠陥形成やピンホール発生の原因となる。よって、成膜プロセスを繰り返すと目的物の特性や歩留まりが次第に低下するという問題が生じる。
また、第1電極表面への汚染物の付着量が増えると、第1電極の表面近傍でのプラズマ状態が不安定になり、汚染物が成膜中の膜表面に飛来しなかった場合でも、特性低下を引き起こすことがある。
【0004】
これらの問題を解決するためには、反応容器内のクリーニングを頻繁に行う必要がある。クリーニングの方法としては、定期的な電極交換が一般的であり、最近ではプラズマクリーニング方法も提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−201738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電極交換の場合は成膜装置を停止し、反応容器である真空チェンバーの大気開放を行う必要があるため、稼働率の低下と共に多大な労力を要することになる。また、高温の熱処理を行う成膜装置では、真空チェンバー内の温度を電極交換作業が可能な温度まで下げる必要があり、さらに時間を要するといった問題がある。
【0006】
一方、プラズマクリーニングの場合は、反応性ガスのプラズマを用いることにより、真空チェンバーの大気開放を行うことなく、反応容器内の汚染の原因である上記汚染物の除去を行うことができるため、電極交換と比較するとクリーニング工程の時間を短縮することができる。しかしながら、プラズマクリーニングに用いる反応性ガスは、目的物を成膜するための原料ガスと異なるため、プラズマクリーニングの前後で、ガス置換、排気切り替え等を行う必要があり、それぞれの工程に要する時間を考えると結果的には装置稼働率の低下につながるという問題がある。
【0007】
したがって、成膜工程において、歩留まりを改善し、さらに装置稼働率を高めるためには、短時間で反応容器内の汚染物除去を行い電極表面を清浄な状態に保つことが重要である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、成膜装置内の電極表面の汚染物を迅速かつ簡単に除去できることを見出し、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、反応容器と、該反応容器内に互いに離間して対向配置された第1電極および第2電極と、被成膜基板を搬入して前記第2電極上に設置しかつ成膜後に所望の膜が成膜された被成膜基板を反応容器の外部へ搬出する基板搬送手段とを備えた成膜装置をクリーニングする際に、前記基板搬送手段にて前記第1電極と第2電極の間に搬送されるクリーニング装置であって、前記第1電極の表面に接触可能な汚染物除去部を備え、前記基板搬送手段にて第1電極と第2電極の間に搬送されることにより、前記汚染物除去部が前記第1電極の表面に摺接して第1電極の表面に付着した汚染物を払い落として除去するように構成された成膜装置のクリーニング装置が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、反応容器と、該反応容器内に互いに離間して対向配置された第1電極および第2電極と、被成膜基板を搬入して前記第2電極上に設置しかつ成膜後に所望の膜が成膜された被成膜基板を反応容器の外部へ搬出する基板搬送手段とを備えた成膜装置をクリーニングするクリーニング方法であって、前記基板搬送手段によって前記請求項1〜5のいずれか1つに記載のクリーニング装置を前記第1電極と第2電極の間に搬送することにより、前記汚染物除去部が第1電極の表面に摺接して第1電極表面に付着した汚染物を払い落として除去する工程を有する成膜装置のクリーニング方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成膜装置の基板搬送手段を用いて反応容器内の電極間に本クリーニング装置を搬送するだけで電極表面に付着した汚染物を簡便に短時間でクリーニング除去できる。したがって、反応容器の大気開放を行う必要が無く、装置改造も伴わないため、低コストで装置稼働率および歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の成膜装置のクリーニング装置は、反応容器と、該反応容器内に互いに離間して対向配置された第1電極および第2電極と、被成膜基板を搬入して前記第2電極上に設置しかつ成膜後に所望の膜が成膜された被成膜基板を反応容器の外部へ搬出する基板搬送手段とを備えた成膜装置をクリーニングする際に、前記基板搬送手段にて前記第1電極と第2電極の間に搬送され搬出されるクリーニング装置であって、前記第1電極の表面に接触可能な汚染物除去部を備え、前記基板搬送手段にて第1電極と第2電極の間に搬送されることにより、前記汚染物除去部が前記第1電極の表面に摺接して第1電極の表面に付着した汚染物を払い落として除去するように構成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明のクリーニング装置は、反応容器内に略平行に対向して配置された少なくとも一対の電極(アノードおよびカソード)と、一方の電極上に被成膜基板を搬入しかつ成膜された被成膜基板を搬出する基板搬送手段を備えた各種成膜装置に使用可能であり、電極の形状、配置、個数、基板搬送手段の構成等は特に限定されるものではない。例えば、平板状または棒状に形成された電極あるいは表面に凹凸を有する電極を備えた成膜装置、第1電極と第2電極が上下に位置する横型の成膜装置、第1電極および第2電極が地面に対して垂直に立設された縦型の成膜装置などに本クリーニング装置を使用することができる。具体的には、プラズマCVD装置、スパッタ装置などに本クリーニング装置を使用することができる。
【0012】
このクリーニング装置は、汚染物除去部の形状や構造が、クリーニングしようとする電極表面に摺接するものであれば限定されるものではなく、また汚染物除去部を支持する基部をさらに有する構成であってもよい。基部は、例えば、基板搬送手段が電極間に搬送する被成膜基板と同様の板状とすることができる。基部が板状であれば、基板搬送手段にてクリーニング装置を搬送し易く、また成膜装置が横型の場合に上方の電極の表面をクリーニングしたときに落ちる汚染物を基部にて回収することができる利点がある。汚染物除去部と基部は、それぞれ別部材で構成されても、同一の材料にて一体状に形成されていてもよい。また、汚染物除去部は、第1電極と第2電極の間を通過する方向(以下、搬送方向と称する)との略直交方向に延び、かつ電極表面の前記略直交方向の幅以上の長さを有して、基部に取り付けられていることが好ましい。このようにすれば、汚染物除去部が電極表面全体を摺接するため、電極表面に付着した汚染物を払い残すことがない。
【0013】
この汚染物除去部は、汚染物が付着した電極表面に適度な摩擦力をもって摺接する形状や構造であることが好ましく、例えば金属またはプラスチックからなる繊維の集合体がブラシ状または織物状に形成されたもの、あるいは適度な弾性または可撓性を有する材料にて板状または櫛歯状に形成されたもの、あるいは前記繊維の集合体にて板状または櫛歯状に形成されたもので構成することができる。ただし、汚染物除去部の構成材料は、電極を傷付けないように電極材料の硬度と同等以下の硬度を有するものが好ましい。
これらの構成の汚染物除去部は、搬送方向と略直交する方向に延びる列を、搬送方向に1列または複数列で基部に配置することができる。特に櫛歯状の場合は、複数列でかつ各列の歯の位置をずらして汚染物除去部を配置することが好ましい。
【0014】
前記構成の成膜装置をクリーニングする際は、前記クリーニング装置を第1電極と第2電極の間に搬送することにより、汚染物除去部が第1電極と第2電極のうちの一方の電極表面に摺接してこの電極表面に付着した汚染物を払い落として除去する工程を行う。
また、このクリーニング方法では、成膜装置がプラズマCVD装置である場合、クリーニング装置により電極表面に付着した汚染物を除去する工程の前に、反応容器内に反応性クリーニングガスを導入し、前記クリーニングガスをプラズマ化して電極表面に付着した汚染物をプラズマエッチングする前処理工程を行ってもよい。つまり、電極に強固に固着した汚染物を除去する場合には、前記前処理によって汚染物を脆くしておき、クリーニング装置によって汚染物を確実に除去することができる。この前処工程では、汚染物を脆い構造にすればよく、汚染物を除去する必要は無いので、短時間の処理で十分である。したがって、プラズマエッチングのみで汚染物を除去する場合と比較して、汚染物除去工程のトータル時間を大幅に短縮することができる。
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は本発明に係るクリーニング装置の実施形態1を示す図であって、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。図2は本発明のクリーニング装置を用いてクリーニングされる一般的なプラズマCVD装置を示す概略断面図である。
このクリーニング装置100は、長方形板状の基部101と、基部101の一面(この場合上面)の搬送方向Xの下流端101a寄りに、かつ搬送方向Xと略直交する方向Yに延びて形成された垂直板状の汚染物除去部102とからなり、基部101は、後述するプラズマCVD装置の基板搬送手段の一構成要素である移動機構によって装置内を移動可能に構成されている。
【0016】
ここで、クリーニング装置100にてクリーニングされるプラズマCVD装置の一例について説明する。
プラズマCVD装置は、反応容器114と、反応容器114内に互いに対向して略平行に配置された第1電極111および第2電極112と、反応容器114の外部から電極間に被成膜基板を搬入するためのシャッター機構を有する搬入口115と、電極間の被成膜基板を反応容器114の外部に搬出するためのシャッター機構を有する搬出口116と、反応容器114内に反応性ガスやキャリアガス等のガスを導入するためのガス導入口(図示省略)と、反応容器114内のガスを外部に排出する排気口117および図示しない真空ポンプと、反応容器114の搬入口115側に設けられて内部を真空と大気開放に切り換え可能な第1室(図示省略)と、反応容器114の搬出口116側に設けられて内部を真空と大気開放に切り換え可能な第2室(図示省略)と、第1電極111と第2電極112の間に基板を搬出入することができる基板搬送手段(図示省略)とを備える。
【0017】
基板搬送手段としては、例えば、被成膜基板を載置する枠形トレーと、このトレーを前記第1室から反応容器114および第2室へ移動させる移動機構と、被成膜基板を載置したトレーを第1室に搬入する搬入アームと、成膜後の基板を載置したトレーを第2室から搬出する搬出アームとを備える構成が挙げられる。また、前記移動機構としては、例えば、トレーを支持しながら移動させる複数の駆動ローラーおよびガイドローラーを備えた構成が挙げられる(例えば、特表2002-516239号公報参照)。
このように構成されたプラズマCVD装置は、被成膜基板を載置した枠形トレーが反応容器に搬送されると、トレー下方の第2電極が上昇してトレー内を通り抜けて被成膜基板を押し上げ、これによって成膜時に第2電極上の被成膜基板と第1電極との間にプラズマを発生させることができる。
なお、基板搬送部を収容する真空と大気開放に切り替え可能な反応容器は搬送入出口が1つの場合は第一室のみであっても構わない。
【0018】
クリーニング装置100において、基部101のY方向の幅および汚染物除去部102のY方向の長さは、プラズマCVD装置の第1電極111のY方向の幅以上である。
基部101および汚染物除去部102の材質としては、ステンレス、銅、真鍮等の金属材料や種々の樹脂系材料などが好適に用いられる。ただし、クリーニング装置100を使用する温度に応じた耐熱性を有している材質を選ぶ必要がある。また、電極を傷つけないためにも汚染物除去部102の材質は第1電極111の材質と比較して同等以下の硬度であることが好ましい。また、プラズマCVD装置にて可燃性または支燃性の原料ガスを用いたCVDプロセスを行う場合には、摩擦による帯電を防ぐために汚染物除去部102の材質として導電体を用いるかまたは絶縁体に導電体コーティングを行うなどの帯電抑制処理を行うことが好ましい。
【0019】
汚染物除去部102の基部101への固定の方法は特に限定されるものではないが、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、はんだ、溶接、ねじ止め等の方法から、汚染物除去部102の材質および使用温度に応じて選択することができる。
また、クリーニング装置100は、プラズマCVD装置の第1電極111と第2電極112との間に基板搬送手段の移動機構によって搬送されて汚染物除去部102が第1電極111の表面に摺接することで、第1電極111の表面に付着した汚染物を除去することができる。
したがって、汚染物除去部102の基部101からの突出寸法は、第2電極112上の基部101の上面と第1電極111の表面との間隔より僅かに長いことが好ましい。加えて、クリーニング装置100の搬送を円滑に進めるためには、基板搬送手段の搬送の駆動力に合わせて汚染物除去部102の材質と長さとを調整することが好ましい。例えば、駆動力が0.5N・mのとき、汚染物除去部102の弾性係数が1.0Gpa以上80.0GPa以下で、かつ電極間距離と10mmを足し合わせた長さ以下であるとき、円滑な搬送ができる。このようにすれば、汚染物除去部102が第1電極111に接触した際に適度な摩擦抵抗を生じて効率良く第1電極111の表面に付着した汚染物を除去することができる。
次に、このように構成されたクリーニング装置100を用いたプラズマCVD装置のクリーニング工程の一例を説明する。
【0020】
プラズマCVD装置にて被成膜基板の成膜工程が終了した後、搬入口115側の前記第1室にクリーニング装置100を設置し、第1室内を真空引きして空気を排出する。このとき、反応容器114の搬入口115および搬出口116は閉じている。また、前記第2室内を真空引きして空気を排出する。
続いて、図3および図4に示すように、搬入口115および搬出口116を開いて基板搬送手段(図示省略)にてクリーニング装置100を第1電極111と第2電極112の間に搬送する。クリーニング装置100が電極間を移動することにより、汚染物除去部102が第1電極111の表面を摺接して第1電極111の表面に付着した汚染物Cを払い落とす。払い落とされた汚染物Cは基部101上に落ちて回収される。なお、図4および図5ではクリーニング装置100が第2電極112上を摺動しているように図示されているが、実際はクリーニング装置100と第2電極112との間にはスムーズな搬送を行うため、搬送時にクリーニング装置100と第2電極112との間の摩擦を低減するような隙間が存在していることが好ましい。
【0021】
このようにして汚染物除去部102が第1電極111の全面に摺接して汚染物Cを除去した後、図5に示すようにクリーニング装置100は第2室内へ搬出される。
その後、搬入口115および搬出口116を閉じ、第2室からクリーニング装置100を外部に取り出す。
このようなクリーニング工程によれば、反応容器114内を大気開放することがなく、反応容器114内に空気中の不純物が侵入することがないため、次に行なう成膜工程の前に反応容器114内を不活性ガスにて清浄化する必要がなく、プラズマCVD装置の稼働率を低下させずに迅速にクリーニング作業を終了することができる。
なお、成膜装置によっては1つの開閉口で被成膜基板の搬入と搬出を兼ねるものがあり、この場合は基板搬送手段にてクリーニング装置を第1・第2電極間で往復移動させてクリーニングを行う。
【0022】
また、第1電極に付着した汚染物は、塊状のみならず微粒子状のものが含まれる場合があり、微粒子状の汚染物はクリーニング装置100の基部101上に落ちずに反応容器114内に飛散することが考えられる。このような場合は、クリーニング装置100による汚染物の除去中乃至除去後に、反応容器114内への不活性ガスの導入と排気を行い、ガス流によって反応容器114内に残留する微粒子状の軽い汚染物を外部に排出することが好ましい。
【0023】
また、汚染物は第1電極に強固に固着する場合がある。このような場合には、クリーニング装置100による汚染物の除去工程の前に、汚染物と反応する反応性クリーニングガスを反応容器114に導入し、このクリーニングガスをプラズマ化して、汚染物をプラズマエッチングする前処理工程を行ってもよい。この前処理工程では、汚染物が完全に分解せずともクリーニング装置100にて除去できる程度の脆い構造に分解すればよい。
本発明では、汚染物の状態により上述の方法を適宜組み合わせることができる。
【0024】
(実施形態2〜4)
図6(a)は実施形態1のクリーニング装置の正面図を示し、このクリーニング装置100の汚染物除去部102は板状であったが、図6(b)に示すように櫛歯状に汚染物除去部202を形成してもよい(実施形態2)。また、図6(c)に示すように、複数の毛束302aを基部101に接着してブラシ状に汚染物除去部302を形成してもよい(実施形態3)。
また、図7(a)および(b)に示すように、織物状に汚染物除去部402を形成してもよい(実施形態4)。この場合、例えば四角形の織物状汚染物除去部402を二つ折りにしてその一端側を基部101に埋め込み接着することができる。
【0025】
(他の実施形態)
成膜装置によっては、第1電極および第2電極が垂直に立てられた縦型成膜装置があるが、この縦型成膜装置の場合も本クリーニング装置を用いて汚染物が付着した一方の電極表面をクリーニングすることができる。このような縦型成膜装置では、第1および第2電極間の下方に移動機構(例えばローラー等)が設けられているため、上記実施形態で示したクリーニング装置の基部を立てた状態で移動機構によって移動させ、垂直方向の汚染物除去部を一方の電極表面に摺接させてクリーニングすることができる。この場合、一方の電極表面から除去された汚染物は他方の電極上には落ちないため問題はないが、粉末状の軽い汚染物は上述のように不活性ガスと共に外部へ排出してもよい。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
図6(c)に示すような高さ10mmのステンレスブラシ(SUS304:弾性係数74GPa)をシリコーン系接着剤(GE東芝シリコーンTSE397-B)を用いて基部に接着して汚染物除去部を形成して、基部および汚染物除去部の合計高さが11.5mmのクリーニング装置を作製した。
そして、図3〜5で説明したように、このクリーニング装置を電極間距離が11mmの平行平板型プラズマCVD装置に通常の成膜プロセスと同様に搬入・搬出して電極クリーニングを行った。この際、クリーニング装置を支障なく搬送・搬出することができた。なお、プラズマCVD装置は、成膜時にH2、SiH4、B2H6、PH3、CH4を使用して1枚の被成膜基板に膜厚2μmのSi膜を成膜した後の状態でクリーニングされた。
その後、カソード(第1電極)表面の汚染物を除去できることを目視にて確認した。汚染物が除去されたことは、クリーニング前のカソード表面に存在していた突起状の汚染物が、クリーニング後には無くなっていることで判断できた。
【0027】
(実施例2)
実施例1と同一のプラズマCVD装置(電極間距離11mm)に対して、前処理としてNF3の反応性ラジカルによるプラズマクリーニングを行い、その後、クリーニング装置は以下のものを使用したこと以外は実施例1と同様に汚染物の除去を行った。
クリーニング装置としては、高さ10mmのステンレス板をシリコーン系接着剤(GE東芝シリコーンTSE397-B)を用いて基部に搬送方向と直交方向に接着して汚染物除去部を形成し、基部および汚染物除去部の合計高さが11.5mmとなったものを使用した。また、プラズマCVD装置は、成膜時にH2、SiH4、B2H6、PH3、CH4を使用して1枚の被成膜基板に膜厚2μmのSi膜を成膜した後の状態でクリーニングされた。
クリーニングの際、このクリーニング装置を支障なく搬送・搬出することができた。
その後、電極間距離を測定したところ、クリーニングを行う前の電極間距離と同じ11mmであり、クリーニング装置の基部上に落下物が確認されたことから、クリーニング装置によってカソード表面から汚染物が除去されたと判断できた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るクリーニング装置の実施形態1を示す図であって、図1(a)は側面図であり、図1(b)は平面図である。
【図2】本発明のクリーニング装置を用いてクリーニングされる一般的なプラズマCVD装置を示す概略断面図である。
【図3】実施形態1のクリーニング装置をプラズマCVD装置の反応容器内に搬入する状態を示す概略断面図である。
【図4】実施形態1のクリーニング装置にてプラズマCVD装置の第1電極をクリーニングする状態を示す概略断面図である。
【図5】実施形態1のクリーニング装置をプラズマCVD装置の反応容器外に搬出する状態を示す概略断面図である。
【図6】図6(a)は実施形態1のクリーニング装置の正面図、図6(b)は実施形態2のクリーニング装置の正面図、図6(c)は実施形態3のクリーニング装置の正面図である。
【図7】実施形態4のクリーニング装置を示し、図7(a)は正面図、図7(b)は要部側面図である。
【符号の説明】
【0029】
100 クリーニング装置(実施形態1)
101 基部
102、202、302、402 汚染物除去部
111 第1電極
112 第2電極
114 反応容器
115 搬入口
116 搬出口
117 排気口
C 汚染物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器と、該反応容器内に互いに離間して対向配置された第1電極および第2電極と、被成膜基板を搬入して前記第2電極上に設置しかつ成膜後に所望の膜が成膜された被成膜基板を反応容器の外部へ搬出する基板搬送手段とを備えた成膜装置をクリーニングする際に、前記基板搬送手段にて前記第1電極と第2電極の間に搬送されるクリーニング装置であって、
前記第1電極の表面に接触可能な汚染物除去部を備え、前記基板搬送手段にて第1電極と第2電極の間に搬送されることにより、前記汚染物除去部が前記第1電極の表面に摺接して第1電極の表面に付着した汚染物を払い落として除去するように構成されたことを特徴とする成膜装置のクリーニング装置。
【請求項2】
前記汚染物除去部を支持する基部をさらに有してなり、
汚染物除去部は、第1電極と第2電極の間を通過する方向に対して略直交方向に延びると共に、前記電極表面の前記略直交方向の幅以上の長さを有する請求項1に記載の成膜装置のクリーニング装置。
【請求項3】
前記汚染物除去部が繊維の集合体からなる請求項2に記載の成膜装置のクリーニング装置。
【請求項4】
前記繊維の集合体がブラシ状または織物状に形成された請求項3に記載の成膜装置のクリーニング装置。
【請求項5】
前記汚染物除去部が板状または櫛歯状に形成された請求項2に記載の成膜装置のクリーニング装置。
【請求項6】
成膜装置が、プラズマCVD装置である請求項1〜5のいずれか1つに記載の成膜装置のクリーニング装置。
【請求項7】
反応容器と、該反応容器内に互いに離間して対向配置された第1電極および第2電極と、被成膜基板を搬入して前記第2電極上に設置しかつ成膜後に所望の膜が成膜された被成膜基板を反応容器の外部へ搬出する基板搬送手段とを備えた成膜装置をクリーニングするクリーニング方法であって、
前記基板搬送手段によって前記請求項1〜5のいずれか1つに記載のクリーニング装置を前記第1電極と第2電極の間に搬送することにより、前記汚染物除去部が第1電極の表面に摺接して第1電極表面に付着した汚染物を払い落として除去する工程を有する成膜装置のクリーニング方法。
【請求項8】
前記成膜装置がプラズマCVD装置であり、前記クリーニング装置により電極表面に付着した汚染物を除去する工程の前に、前記反応容器内に反応性クリーニングガスを導入し、前記クリーニングガスをプラズマ化して電極表面に付着した汚染物をプラズマエッチングする前処理工程を含む請求項7に記載の成膜装置のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−177280(P2008−177280A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8114(P2007−8114)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】