説明

手動変速機の変速操作機構

【課題】チェンジレバー操作時の引っかかりをコストをかけずに解消することができる手動変速機の変速操作機構を提供する。
【解決手段】ケース41(変速機ケース2)内のセレクトレバー32(アーム部32c)のケース41(変速機ケース2)側に臨んだ端部に板ばね321を設け、ケース41(変速機ケース2)外側に、板ばね321の幅方向両側をそれぞれ押圧可能とする調整用ボルト322を設ける。そして、一対の調整用ボルト322により板ばね321の幅方向両側を押圧して、セレクトレバー32とシフタアーム48及び補助シフタアーム49との係合が一時的に解除するようにセレクトレバー32を予め回動させておくことにより、フォークロッド側の中立位置にセレクトレバー32の中立位置を合わせることができ、チェンジレバー操作時の引っかかりが解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動変速機の変速操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、手動変速機は、エンジン側に配置された入力軸と車輪側に配置された出力軸との間に、複数段の前進ギヤとリバースギヤとが配置されている。前進ギヤは全てシンクロメッシュ機構を備えた常時噛合式、リバースギヤは選択摺動式であり、チェンジレバーの前後左右操作に応じて、複数段の前進ギヤとリバースギヤのなかから所望のギヤが選択されるようになっている。
【0003】
このような手動変速機の変速操作機構にあっては、変速機ケース内には、軸方向にスライド移動することによってシンクロメッシュ機構またはリバースアイドラギヤと係合するシフタフォークが個々に設けられた複数のフォークロッドと、複数のフォークロッドに選択的に係合するように動作するシフタアームと、が設けられている。
また、変速機ケースの内外にわたって、左右方向のチェンジレバー操作に応じて回動してシフタアームを複数のフォークロッドのうちの1本と選択的に係合させるセレクトレバーと、前後方向のチェンジレバー操作に応じてシフタアームを動作させてフォークロッドを軸方向にスライド移動させるシフタレバーと、が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、ドライバがチェンジレバーを左右方向に操作すると、セレクトレバーがシフタアームを動作させて複数のフォークロッドのうちの1本と選択的に係合させる。そして、シフタアームが複数のフォークロッドのうちの1本と選択的に係合している状態で、ドライバがチェンジレバーを前後方向に操作すると、シフタレバーがシフタアームを動作させて選択されたフォークロッドを軸方向にスライド移動させる。すると、選択されたフォークロッドのシフタフォークがシンクロメッシュ機構のシンクロナイザスリーブの外周に形成された環状溝に係合することによって、所望の前進ギヤが選択されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平09−32921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したような従来の手動変速機の変速操作機構にあっては、セレクトレバーの中立位置は、ロッキングボール溝にスプリングを介してロッキングボールを押し付けることによって位置決めを行うことが多い。チェンジレバーからセレクトレバーに至るまでの中立位置は、ロッキングボール溝と、チェンジレバーからセレクトレバーに至るまでの構成部品の積算公差とによって決定されるが、ロッキングボール溝にスプリングを介してロッキングボールを押し付けて位置決めをするやり方では、フォークロッド側の中立位置にセレクトレバー側の中立位置を合わせることはできないので、チェンジレバー操作時に引っかかりが生じる虞があった。
そこで、そのような問題を解決するために、チェンジレバーからセレクトレバーフォークロッドに至るまでの構成部品の部品精度の向上を図ることが考えられるが、このような方法ではコストがかかってしまう。
【0007】
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、チェンジレバー操作時の引っかかりをコストをかけずに解消することができる手動変速機の変速操作機構を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、変速機ケース内に設けられ、軸方向にスライド移動することによってシンクロメッシュ機構を動作させるシフタフォークが個々に設けられた複数のフォークロッドと、変速機ケース内に設けられ、前記複数のフォークロッドと選択的に係合するように動作するシフタアームと、前記変速機ケースの内外にわたって回動可能に設けられ、左右方向のチェンジレバー操作に応じて回動して前記シフタアームと係合し、前記シフタアームを前記複数のフォークロッドのうちの1本と選択的に係合させるセレクトレバーと、前記変速機ケースの内外にわたって設けられ、前後方向のチェンジレバー操作に応じて前記シフタアームを動作させて前記選択したフォークロッドを軸方向にスライド移動させるシフタレバーと、を備えた手動変速機の変速操作機構において、
前記変速機ケース内の前記セレクトレバーの変速機ケース側に臨んだ端部に設けられ、加えられた押圧力に応じて前記セレクトレバーをチェンジレバー操作によることなく回動させる弾性部材と、前記変速機ケース外側に、前記変速機ケース外側からケース内に突出した状態で設けられ、前記弾性部材の幅方向両側をそれぞれ押圧する一対の調整用ボルトと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成において、前記弾性部材は、前記セレクトレバーに固定された状態にあっては、前記セレクトレバーの幅方向中心線と直交し、かつ前記セレクトレバーの幅方向中心線から幅方向両側に向かって張り出していることを特徴とする。
【0010】
請求項1,2に記載の発明によれば、変速機ケース内のセレクトレバーの変速機ケース側に臨んだ端部に設けられた弾性部材の幅方向両側を、変速機ケース外側からケース内に突出した一対の調整用ボルトで押圧すると、チェンジレバー操作によることなくセレクトレバーが回動する。
ところで、シフタアームの中立位置とセレクトレバーの中立位置とが合っていないということは、中立位置にあるシフタアームにセレクトレバーが係合してしまっているということである。そこで、一対の調整用ボルトにより弾性部材の幅方向両側を押圧して、セレクトレバーとシフタアームとの係合が一時的に解除するようにセレクトレバーを予め回動させておくことによって、シフタアームの中立位置、すなわちフォークロッド側の中立位置にセレクトレバーの中立位置を合わせることが可能となる。従って、チェンジレバー操作時の引っかかりを、部品精度の向上を図って解消する場合よりも低コストに行うことができる。
しかも、チェンジレバー操作に応じてセレクトレバーが回動しても、調整用ボルトに押圧された弾性部材は、より弓なりにしなるだけであるから、チェンジレバー操作を妨げることはない。
【0011】
しかも、このようなチェンジレバーの中立位置(ニュートラル位置)調整は、変速機ケース外側の調整用ボルトをねじ込むことによって行われるので、チェンジレバーの中立位置(ニュートラル位置)調整を行う際に手動変速機を分解する必要はなく、作業時間を大幅に短縮したり、作業コストを大幅に削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の手動変速機の変速操作機構によれば、一対の調整用ボルトにより弾性部材の幅方向両側を押圧して、セレクトレバーとシフタアームとの係合が一時的に解除するようにセレクトレバーを予め回動させておくことによって、フォークロッド側の中立位置にセレクトレバーの中立位置を合わせることができる。従って、チェンジレバー操作時の引っかかりをコストをかけずに解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る変速機の変速操作機構について図1〜6を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による手動変速機の内部構造を表したスケルトン図、図2は、図1に示した手動変速機の変速操作機構の断面図、図3は、図2中のA−A矢視断面図、図4は、図2の平面図、図5は、図4中のB矢視図、図6は、図2中のC−C矢視断面図である。
【0014】
図1,2,4に示されるように、手動変速機10の変速機ケース2内には、軸方向にスライド移動することによって前進ギヤ用のシンクロメッシュ機構18〜20と係合するシフタフォーク60a〜62aが個々に設けられた複数のフォークロッド60〜62と、複数のフォークロッド60〜62に選択的に係合するように動作するシフタアーム48及び補助シフタアーム49と、が設けられている。
【0015】
また、図2に示されるように、変速機ケース2の内外にわたって回動可能に設けられ、左右方向のチェンジレバー操作に応じて回動してシフタアーム48及び補助シフタアーム49に係合し、シフタアーム48及び補助シフタアーム49を複数のフォークロッド60〜62のうちの1本と選択的に係合させるようにシャフト42の軸心方向に上下動させるセレクトレバー32と、変速機ケース2の内外にわたって設けられ、前後方向のチェンジレバー操作に応じてシフタアーム48及び補助シフタアーム49をシャフト42の軸周りに回動させて、選択したフォークロッドを軸方向にスライド移動させるシフタレバー35と、が設けられている。
【0016】
さらに、図4,5に示されるように、変速機ケース2内のセレクトレバー32(後述するアーム部32cのこと)の変速機ケース側に臨んだ端部には、加えられた押圧力に応じてセレクトレバー32をチェンジレバー操作によることなく回動させる弾性部材としての板ばね321が設けられている。
また、変速機ケース2外側には、板ばね321の幅方向両側をそれぞれ押圧する一対の調整用ボルト322が変速機ケース2外側からケース内に突出した状態で設けられている。
【0017】
詳述すると、手動変速機10は、図1に示されるように、ディファレンシャル装置26が一体化された横置きトランスアクスル型であって、クラッチハウジング1と一体の変速機ケース2及びサイドケース3を備えている。エンジン5のクランク軸6は、クラッチハウジング1内部のクラッチ7に連結されていると共に、このクラッチ7は、変速機10の入力軸11に連結されている。
【0018】
変速機ケース2とサイドケース3との内部において、入力軸11と出力軸12とが平行して回転可能に配置されている。入力軸11と出力軸12との間には、前進ギヤとして、クラッチ側から1速ギヤ13、2速ギヤ14、3速ギヤ15、4速ギヤ16及び5速ギヤ17が順次配置されていると共に、リバースギヤ21が設けられている。
【0019】
1,2速用のシンクロメッシュ機構18は出力軸12側に、3,4速用のシンクロメッシュ機構19及び5速用のシンクロメッシュ機構20は入力軸11側に設けられている。そして、チェンジレバー操作に従って、入力軸11上を空転している3速、4速、5速ギヤ(ドリブンギヤ)及び出力軸12上を空転している1速、2速ギヤ(ドリブンギヤ)が、シンクロメッシュ機構18〜20のうち何れか1つによって各々固定されることにより、入力軸11に伝わった動力が、入力軸11上の各変速ギヤから、これと常時噛み合いの出力軸12上の変速ギヤに伝わるようになっている。
【0020】
リバースギヤ21は、入力軸11上にドライブギヤ22、出力軸11上の1−2速シンクロナイザハブ上にドリブンギヤ23が設けられており、これらと選択摺動式のリバースアイドラギヤ24を噛み合わせることによって、回転方向を逆にしている。
【0021】
また、出力軸12のクラッチ7側には、小径のドライブギヤ25が一体的に連なっており、このドライブギヤ25が、ディファレンシャル装置26の大径のファイナルギヤ27に噛み合うことによって最終減速が行われるようになっている。そして、ディファレンシャル装置26の差動装置28から左右に突出した一対のサイドギヤ軸29には、それぞれ車輪8が取り付けられている。
【0022】
次に、手動変速機10の変速操作機構30について説明する。
変速操作機構30は、図2に示されるように、運転席横のフロアに設けられたチェンジレバー31と、変速機ケース2に一体的に設けられたシフトセレクト装置40とを備えて構成されている。
【0023】
チェンジレバー31は、図2に示されるように、前後左右に操作できるHパターンが用いられ、ニュートラルの前側に1速、3速、5速、後側に2速、4速、R(リバース)が配置されている。
【0024】
このチェンジレバー31は、詳しくは後述するが、シフトセレクト装置40のケース41(変速機ケース2)に回動可能に支持されたセレクトレバー32にケーブル34を介して連なっている。さらに、このチェンジレバー31は、ケース41に回動可能に支持されたシフタレバー35にケーブル36を介して連なっている。
【0025】
シフトセレクト装置40は、セレクトレバー32、シフタレバー35、ケース41、シャフト42、インターロックプレート43、シフタアーム48、補助シフタアーム49、を備えて構成されている。
【0026】
詳述すると、シフトセレクト装置40は、変速機ケース2の上部側方に一体的に組み付けられているものであって、変速機ケース2の一部となみされるケース41内には、シャフト42がフォークロッド60〜62に直交した状態で回転可能に配置されている。そして、このシャフト42に、セレクトレバー32、シフタレバー35、インターロックプレート43、シフタアーム48、補助シフタアーム49が連接されている。
【0027】
セレクトレバー32は、図2に示されるように、本体部32a、軸部32b、アーム部32c、係合部32dを備えて構成されている。
本体部32aは、ケース41(変速機ケース2)外側に配置されているものであって、その図中上部には、チェンジレバー31がケーブル34を介して連接していると共に、図中下部には、軸部32bが連なっている。
軸部32bは、ケース41(変速機ケース2)を外部から内部に貫通した状態でケース41(変速機ケース2)に回動可能に軸支されている。また、ケース41(変速機ケース2)内の軸端部には、アーム部32cが、軸部32bと直交し、かつケース41(変速機ケース2)側からシャフト42側に向かって延びた状態で一体的に結合固定されていると共に、この軸部32bは、アーム部32cの中央部ケース寄りに結合固定されている。
アーム部32cは、ケース41(変速機ケース2)内側に配置され、軸部32bを軸心として本体部32aと共に回動動作するアーム部材であって、そのアーム部32cのシャフト42側の端部に、突起状の係合部32dが設けられている。そして、この係合部32dは、図4に示されるように、補助シフタアーム49に一体成形された断面コ字状の凹部49bに、遊びが少しある状態で係合している。
【0028】
シフタレバー35は、ケース41(変速機ケース2)を貫通した状態でケース41(変速機ケース2)に回動可能に支持されていると共に、シャフト42の図中上部に一体的に連なっている。そして、チェンジレバー31の前後操作に応じてシフタレバー35とシャフト42とが共に回動動作するようになっている。
【0029】
また、シャフト42の外周面には、インターロックプレート43がシャフト42の軸方向にスライド移動可能、かつ軸周りに回動可能に設けられており、シフタアーム48及び補助シフタアーム49が選んだフォークロッド以外のフォークロッドの動きを固定し、ギヤの二重噛み合いを防止するようになっている。
【0030】
さらに、このシャフト42の半径方向には、通常シフト用のシフタアーム48と、リバースシフト時に入力軸11の回転を停止する補助シフタアーム49とが、上下に一体的に連なり、かつ、その上下両端部をインターロックプレート43の水平な上下面部に接合した状態で取り付けられている。このため、補助シフタアーム49をシフタアーム48の一部とみなすことが可能となっている。
【0031】
シフタアーム48は、シャフト42とシフタアーム48との間に介設されたキー50(図2に図示)によって、シャフト42と一体回転可能、かつ、シャフト42の軸方向にスライド移動可能とされている。
一方、補助シフタアーム49は、シャフト42と補助シフタアーム49との間に介設されたボールロック手段51(図2に図示)により、シャフト42の軸周りに回転可能、かつ、シャフト42の軸方向にスライド移動可能となっている。
【0032】
また、補助シフタアーム49には、後述する1−2フォークロッド60の凹部60c(図3に図示)に係合する係合部49a(図2に図示)が一体形成されている。この係合部49aは、後述するインターロックプレート43の上下2つのロック片43a,43bによって形成された隙間よりも下方側に位置しており、5−Rセレクト位置でのみ、1−2フォークロッド60の凹部60cと係合するようになっている。さらに、この補助シフタアーム49には、セレクトレバー32のアーム部32cの係合部32dが摺動可能に係合する断面コ字状の凹部49b(図3,4に図示)が一体形成されている。
なお、図2中の符号51は、補助シフタアーム49の位置決めするボールロック手段であり、リバースシフト完了時に補助シフタアーム49と1−2フォークロッド60とが中立位置(ニュートラル位置)に自動的に戻るようになっている。
【0033】
インターロックプレート43は、図3に示されるように、インターロックプレート43の垂直な中央面部に穿設された長溝43cに、ケース41にネジ止め固定されたガイド44の先端部が係合することによって、予め設定された所定範囲内でのみ回動するように回動規制がなされている。
また、インターロックプレート43の水平な上面部とケース41との間には、スプリング45と、このスプリング45によって上向きに付勢されたストッパ46が介設されている。このストッパ46は、5速とリバースとのセレクト位置を定める板状部材である。
また、インターロックプレート43の下方には、1速と2速のセレクト位置を定めるリテーナ47がスプリングによって上方に付勢された状態で配置されている。
【0034】
さらに、インターロックプレート43には、所定の隙間をあけて互いに対向する上下2つのロック片43a,43bが一体形成されている。これらロック片43a,43bによって形成される隙間には、図6に示されるように、シフタアーム48の係合部48aが位置している。
【0035】
手動変速機10の出力軸12の上方には、図2,4に示されるように、3本のフォークロッド(シフタレールともいう)60〜62が互いに平行となるように配置されている。これらフォークロッド60〜62は、その両端部が変速機ケース2によって軸方向にスライド移動可能に支持されていると共に、ボールロック手段64(但し、図4中にあってはロッキングボール溝のみ図示)によって、各シフト位置に位置決めされるようになっている。
【0036】
1−2フォークロッド60には、シンクロ機構18を動作させるためのシフタフォーク60aがロックピン63により抜け止め固定されている。そして、この1−2フォークロッド60に一体的に連なったアーム60bが、図2に示されるように、インターロックプレート43に向かって延設されていると共に、図4に示されるように、そのアーム先端部には、コ字状の凹部60cが一体形成されている。そして、この凹部60cに、係合部48aまたは49aが係合するようになっている。
【0037】
3−4フォークロッド61には、シンクロ機構19を動作させるためのシフタフォーク61aがロックピンにより抜け止め固定されている。そして、この3−4フォークロッド61に一体的に連なったアーム61bが、インターロックプレート43に向かって延設されていると共に、このアーム先端部には、平面視コ字状の凹部61cが一体形成されている。そして、この凹部60cに、係合部48aまたは49aが係合するようになっている。
【0038】
5−Rフォークロッド62には、シンクロ機構20及びアイドラギヤ24を動作させるための2個のシフタフォーク62a,62dがロックピンにより抜け止め固定されている。そして、5−Rフォークロッド62に一体的に連なったアーム62bがインターロックプレート43に向かって延設されていると共に、このアーム先端部には、平面視コ字状の凹部62cが一体形成されている。
【0039】
そして、3−4セレクト位置では、係合片48aが凹部61cに係合する。そして、その状態にあっては、ロック片43a,43bが他の凹部60c,62cにインターロックしてギヤの二重噛み合いを防止する。
また、1−2セレクト位置では、係合片48aが凹部60cに係合し、5−Rセレクト位置では、係合片48aが凹部62cに係合するようになっている。
【0040】
上述した構成により、チェンジレバー31を中立位置(ニュートラル位置)で左右方向に操作すると、セレクトレバー32のアーム部32cが回動し、係合部32dが、補助シフタアーム49、シフタアーム48及びインターロックプレート43を軸方向に上下移動させることによってシフタアーム48の係合部48aが複数のフォークロッドのうちの1本と選択的に係合する。
【0041】
そして、チェンジレバー31を3−4セレクト位置に位置させている状態にあっては、インターロックプレート43等は、図2に示されるように、中間位置(すなわち、チェンジレバー31が中立位置)に位置する。また、チェンジレバー31を1−2セレクト位置に位置させると、インターロックプレート43等が下方に移動し、5−Rセレクト位置に位置させると、インターロックプレート43等が上方に移動する。
【0042】
さらに、中立位置(ニュートラル位置)で左右方向に操作したチェンジレバー31を前後方向に操作すると、シフタレバー35とこれに連なったシャフト42の回動動作によって、シフタアーム48及び補助シフタアーム48aが軸周りに回動して、選択したフォークロッドを軸方向に移動させることによって、シンクロメッシュ機構がアイドラギヤを固定して、所望のギヤが入るようになっている。
【0043】
ところで、チェンジレバーからセレクトレバーに至るまでの構成部品の精度によっては、フォークロッド側の中立位置とセレクトレバー側の中立位置とがずれてしまい、チェンジレバー操作時に引っかかりが生じる虞がある。
【0044】
そこで、この手動変速機10は、セレクトレバー32の中立位置を調整できるセレクトリターン機構320を備えている。
【0045】
具体的には、このセレクトリターン機構320は、図4,5に示されるように、アーム部32cのケース41(変速機ケース2)側に臨んだ端部に設けられ、加えられた押圧力に応じてセレクトレバー32をチェンジレバー操作によることなく回動させる板ばね321と、ケース41(変速機ケース2)外側に、ケース41(変速機ケース2)外側からケース内に突出した状態で設けられ、板ばね321の幅方向両側をそれぞれ押圧する一対の調整用ボルト322と、を備えている。
【0046】
板ばね321は、例えば、横長矩形状の1枚の金属バネであって、アーム部32cのケース41側に臨んだ端部を垂直(フォークロッド側)に折り曲げることによって形成されたフランジ部32eに、その板ばね321の中央部が固定用ボルト32fにより締結固定されている。
さらに、図5に示されるように、この板ばね321は、アーム部32cに締結固定された状態にあっては、板ばね321の長手方向がアーム部32cの幅方向中心線Zと直交していると共に、板ばね321の幅方向両側は、アーム部32cの幅方向中心線Z(フランジ部32e)から幅方向両側に向かって張り出している。この板ばね231の張り出し長さは、左右等しくても等しくなくともよい。
なお、板ばね321は、金属製にのみ限定されるものではなく、非金属製、例えば、合成樹脂製、ゴム製、カーボンファィバー製、グラスファィバー製、竹製であってもよい。要は、弓なりに撓ったりまた元の状態に戻ったりすることが繰り返しできるのであれば何を用いてもよい。
【0047】
さらに、アーム部32cの左右側部には、水平な左右端部が上向きに折り曲げられ、さらにケース41(変速機ケース2)側に向かって張り出されることによって、アーム部32c、つまりセレクトレバー32の回動量の最大値を規制する左右一対のストッパ部32gが一体形成されている。そして、チェンジレバー操作に応じてセレクトレバー32が回動した際、このストッパ32gがケース41(変速機ケース2)に当接することによって、調整用ボルト322によって加わる押圧力によって板ばね231が破断したり、塑性変形するのを防止するようになっている。
なお、ストッパ部32gは、アーム部32cとは別に形成して、アーム部32cに後付けするようにしてもよい。
【0048】
一方、ケース41(変速機ケース2)には、アーム部32cの幅方向中心線Zから左右両側に等しく離れた位置に、調整用ボルト322が螺合し、かつボルト先端部がケース内に突出するボルト孔410がそれぞれ穿設されている。
また、ケース41(変速機ケース2)内側のボルト孔410周辺は、予め厚肉に形成されていると共に、その厚肉部が、特にストッパ部32g側の横方向に向かって延設されることによって、ストッパ部32gが当接可能な当接部411が形成されている。
【0049】
かかる構成によれば、ケース41(変速機ケース2)内のセレクトレバー32の変速機ケース側に臨んだ端部に設けられた板ばね321の幅方向両側を、ケース41(変速機ケース2)外側からケース内に突出した一対の調整用ボルト322で押圧すると、チェンジレバー操作によることなくセレクトレバー32が回動する。ところで、シフタアーム48及び補助シフタアーム49の中立位置と、セレクトレバー32の中立位置とが合っていないということは、中立位置にあるシフタアーム48及び補助シフタアーム49にセレクトレバー32が係合してしまっているということである。
【0050】
そこで、一対の調整用ボルト322により板ばね321の幅方向両側を押圧して、セレクトレバー32とシフタアーム48及び補助シフタアーム49との係合が一時的に解除するようにセレクトレバー32を予め回動させておく。それにより、シフタアーム48及び補助シフタアーム49の中立位置、すなわちフォークロッド側の中立位置にセレクトレバー32の中立位置を合わせることが可能となる。従って、チェンジレバー操作時の引っかかりを、部品精度の向上を図って解消する場合よりも低コストに行うことができる。
しかも、チェンジレバー操作に応じてセレクトレバー32が回動しても、調整用ボルト322に押圧された板ばね321は、より弓なりにしなるだけであるから、チェンジレバー操作を妨げることはない。
【0051】
以上説明したように本発明の手動変速機の変速操作機構によれば、一対の調整用ボルト322により板ばね321の幅方向両側を押圧して、セレクトレバー32とシフタアーム48及び補助シフタアーム49との係合が一時的に解除するようにセレクトレバー32を予め回動させておくようにした。これにより、フォークロッド側の中立位置にセレクトレバー32の中立位置を合わせることができるので、チェンジレバー操作時の引っかかりをコストをかけずに解消することができる手動変速機の変速操作機構が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態による手動変速機の内部構造を表したスケルトン図である。
【図2】図1に示した手動変速機の変速操作機構の断面図である。
【図3】図2中のA−A矢視断面図である。
【図4】図2の平面図である。
【図5】図4中のB矢視図である。
【図6】図2中のC−C矢視断面図である。
【符号の説明】
【0053】
2…変速機ケース
10…手動変速機
32…セレクトレバー
32a…本体部
32b…軸部
32c…アーム部
32d…係合部
320…セレクトリターン機構
321…板ばね(弾性部材)
322…調整用ボルト
35…シフタレバー
41…ケース(変速機ケース)
48…シフタアーム
49…補助シフタアーム(シフタアーム)
60〜62…フォークロッド
60a〜62a…シフタフォーク
Z…幅方向中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケース内に設けられ、軸方向にスライド移動することによってシンクロメッシュ機構を動作させるシフタフォークが個々に設けられた複数のフォークロッドと、
変速機ケース内に設けられ、前記複数のフォークロッドと選択的に係合するように動作するシフタアームと、
前記変速機ケースの内外にわたって回動可能に設けられ、左右方向のチェンジレバー操作に応じて回動して前記シフタアームと係合し、前記シフタアームを前記複数のフォークロッドのうちの1本と選択的に係合させるセレクトレバーと、
前記変速機ケースの内外にわたって設けられ、前後方向のチェンジレバー操作に応じて前記シフタアームを動作させて前記選択したフォークロッドを軸方向にスライド移動させるシフタレバーと、を備えた手動変速機の変速操作機構において、
前記変速機ケース内の前記セレクトレバーの変速機ケース側に臨んだ端部に設けられ、加えられた押圧力に応じて前記セレクトレバーをチェンジレバー操作によることなく回動させる弾性部材と、
前記変速機ケース外側に、前記変速機ケース外側からケース内に突出した状態で設けられ、前記弾性部材の幅方向両側をそれぞれ押圧する一対の調整用ボルトと、
を備えたことを特徴とする手動変速機の変速操作機構。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記セレクトレバーに固定された状態にあっては、前記セレクトレバーの幅方向中心線と直交し、かつ前記セレクトレバーの幅方向中心線から幅方向両側に向かって張り出していることを特徴とする請求項1に記載の手動変速機の変速操作機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−236141(P2009−236141A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79823(P2008−79823)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】