説明

手荷物監視装置

【課題】従来の監視装置は,無線信号が受信できなくなった場合,または手荷物に取り付けた移動などを検知するセンサーが作動した場合などに,手荷物を置き忘れたり持ち去られたと判断しているが,無線は障害物や,妨害波による影響で伝播状態が大きく左右され,手荷物の検知センサーは,手荷物の置かれている環境条件で大きく左右されるなど,極めて不正確な警報しか発せられない欠点を有しているため,本発明は,より正確で軽量,小型な手荷物監視装置を提供する。
【解決手段】手荷物に取り付けて,手荷物の静止,移動の状態をセンサーで検知して無線で通知する機能を備える送信具と,手荷物の保持者が携帯し,送信具との通信状態を監視し,送信具からの通知を受信する機能,ならびに手荷物の保持者の静止,移動の状態をセンサーで検知する機能を備えた受信具で構成され,受信具において,送信具から通知される静止,移動の状態と,手荷物の保持者の静止,移動の状態を照合して,相関関係が無いと判断された場合に所要の警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は,手荷物に取り付けて,手荷物の静止,移動の状態をセンサーで検知して無線で通知する送信具と,手荷物の保持者が携帯し,通知を受信する機能,ならびに手荷物の保持者の静止,移動の状態をセンサーで検知する機能を備えた受信具で構成され,受信具において送信具の静止,移動の状態と,手荷物の保持者の静止,移動の状態を照合して,相関関係が無いと判断された場合に所要の警報を発する軽量,小型な手荷物監視装置。
【背景技術】
【0002】
手荷物を持って移動する場合などに,手荷物を置き忘れたり持ち去られたりするトラブルを防止するために種々の監視装置が実用化されている。一般的に,これらの監視装置は送信機と受信機からなり,送信機を手荷物に取り付けて,手荷物の保持者が受信機を携帯する形態が殆どであり,送信機と受信機との距離が離れて,送信機からの信号を受信できなくなったり,送信機に内蔵される振動,移動などを検知するセンサーが動きを検知したことを無線で通知するなどにより,手荷物が手荷物の保持者から離れたと判断して警報音を発して,手荷物の保持者に気づかせるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の監視装置は,無線信号が受信できなくなった場合,または手荷物に取り付けた振動,移動などを検知するセンサーが作動した場合などに,手荷物を置き忘れたり持ち去られたと判断しているが,この判断条件は極めて不正確である。
【0004】
なぜなら,無線は障害物や,妨害波による影響で伝播状態は大きく左右されるため,電波の伝播状態から送信,受信の乖離距離を把握することはかなり困難であり,伝播の途絶により,手荷物を置き忘れたり,持ち去られたと判断することには無理が有る。また,手荷物の振動,移動などを検知するセンサーの作動から手荷物の乖離を判断する方法に関しても,手荷物の置かれている環境条件で大きく左右されるため,手荷物に取り付けられたセンサーが作動した状況のみで手荷物が持ち去られたとは断定できない。
【0005】
要するに,無線の伝播状況や,手荷物の振動,移動などにより手荷物の置き忘れや持ち去りなどを判断する従来の監視装置は,極めて不正確な警報しか得られない欠点を有しており,本発明の課題は,より正確で軽量,小型な手荷物監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
手荷物に取り付けて,手荷物の静止,移動の状態をセンサーで検知して無線で通知する機能を備える送信具と,手荷物の保持者が携帯し,送信具との通信状態を監視し,送信具からの通知を受信する機能,ならびに手荷物の保持者の静止,移動の状態をセンサーで検知する機能を備えた受信具で構成され,受信具において,送信具から通知される静止,移動の状態と,手荷物の保持者の静止,移動の状態を照合して,相関関係が無いと判断された場合に所要の警報を発する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の手荷物監視装置では,送信具の静止,移動の状態情報に加えて,手荷物の保持者の静止,移動の状態を照合して判断することにより,手荷物と手荷物の保持者がそれぞれどのような状態かを識別して警戒のレベルを決定するため,警報の精度を著しく向上させることが出来ることにより,手荷物の置き忘れ,持ち去りなどを確実に監視することが出来る,軽量,小型な手荷物監視装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は,「手荷物と手荷物の保持者は,ともに同じ電車や車に乗って移動している」,「手荷物の保持者は座席に座り手荷物を棚に載せて,ともに静止している」,「手荷物の保持者は手荷物を手に持って,ともに移動している」,など,手荷物と手荷物の保持者とは,その動きに関して密接な関係にあり,この関係が崩される動きでは必ず警戒が必要となる点に着目している。表1に示すように,手荷物と手荷物の保持者が「移動と静止」,「静止と移動」の関係では強い警戒,「移動と移動」では要警戒,「静止と静止」では警戒は不要と判断する。すなわち,手荷物の置き忘れや持ち去りを防ぐためには,手荷物と手荷物の保持者の動きの両方を監視する必要が有る。以下,本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1は,本発明の実施例を示す軽量,小型な手荷物監視装置の送信具(1)と受信具(2)の概観斜視図である。送信具は電源スイッチ1,移動検知センサー2,送信アンテナ3,手荷物への取付部材用穴4などで構成される。受信具は電源スイッチ5,移動検知センサー6,受信アンテナ7,手荷物の保持者への取付部材用穴8,警報停止スイッチ9,スピーカー10,バイブレーター11,LED表示灯12,警報選択スイッチ13などで構成される。
【0010】
図2は送信具の回路構成を示す概略図である。送信具における移動検知センサー14は,手荷物の傾き,振動などの動きを検知するセンサーであり,ネオジウム磁石の動きをリードスイッチで非接触に検知する構造を採用し,検知処理回路15で,動きの周期,間隔,継続時間などを分析し,静止状態では送信具固有のIDコードに続けて静止コードを,移動状態ではIDコードに続けて移動の程度を符号化した移動コードを変調回路16へ出力し,変調回路では高周波の搬送波をコード信号で変調するとともに所要増幅してアンテナ17から放射して受信具に通知する。なお,通知は所定の間隔,周期で間歇的に送信することで,電池寿命を延ばす対策も施される。
【0011】
図3は受信具の回路構成を示す概略図である。受信具における移動検知センサー18は,手荷物の保持者の動きを検知するセンサーであり,ネオジウム磁石の動きをリードスイッチで非接触に検知する構造を採用し,検知処理回路19で,動きの周期,間隔,継続時間などから移動の程度を分析する。送信具から通知される無線信号はアンテナ20および受信回路21で同調,検波され,復調されたコード内容を解析し,静止コードが検知されれば送信具は静止中であり,移動コードが検知されれば送信具の移動の程度が認識される。
【0012】
これら送信具から得られる情報と,受信具の移動検知センサーにより手荷物の保持者が静止しているか,移動しているかの情報を警報分析回路22で照合し,手荷物と手荷物保持者の移動の早さなども判断条件として,警報の周期,間隔,音色などにより警報の緊急度を表示する。表1に示される警報状態表において,手荷物,手荷物の保持者の両方が移動状態に有る場合が最も微妙であり,最悪の場合は,手荷物を持って移動している人と手荷物保持者とは別人の場合も有るため,両方ともに移動状態の場合は,短時間警報を発生させて確認を喚起する方法を採用する。また,受信具の電源をONにして,所定時間が経過しても送信具からのコードが受信されない場合,ならびに受信したIDコードが複数回に渡って正常コードと相違する場合も警報を発する。警報手段は,警報選択スイッチ13によりスピーカー,バイブレーター,LED表示灯などが選択できるように構成する。また,警報は警報停止スイッチにより,警報発生中においても停止することが出来る。
【0013】
以上説明するように,本発明の手荷物監視装置では,送信具が静止しているか,移動しているかの情報に加えて,手荷物の保持者が静止しているか,移動しているかを照合して判断することにより,手荷物と手荷物の保持者がそれぞれどのような状態かを識別して警戒のレベルを決定するため,警報の精度を著しく向上させることが出来る軽量で小型な手荷物監視装置が実現される。
【実施例】
【0014】
手荷物,手荷物の保持者の動きを検知する移動検知センサーとして,ネオジウム磁石の動きをリードスイッチで非接触に検知する構造を採用し,リードスイッチとしてはガラス管封止で長さ10mm,Φ1.8mmを,ネオジウム磁石はΦ3×2mmを採用して装置の軽量化,小型化を図った。移動検知センサーとしては,リードスイッチに限定されず,半導体プロセスで作られ,XYZの3軸全ての加速度を測定できる3軸加速度センサーを使用すれば,移動速度や移動方向の識別も可能となり,移動状態の高度な判断が可能となる。
【0015】
さらに,移動検知センサーとして3軸加速度センサーとともに,半導体プロセスで作られた方位センサーを利用することにより,請求項2に記載するごとく,手荷物,ならびに手荷物の保持者の単なる移動のみではなく,どの方位に移動しているかを識別して照合することにより,手荷物監視装置の監視精度をさらに高めることが出来る。すなわち,表1に示す警報状態表における手荷物,ならびに手荷物保持者がいすれも移動していると判断される要注意状態で,それぞれの移動速度,ならびに移動方位が同じであるか否かが判断条件に加えられるため,極めて的確な判断が下される。正常な状況であれば,手荷物,ならびに手荷物の保持者は常に同じ方位に向かってほぼ等速で移動しているはずであり,電車や車で人と荷物が移動している場合も同様である。
【0016】
送信具ならびに受信具は縦×横×厚を35×55×12mmでケースはプラスチック材とし携帯性を高めた。送信具,受信具における移動検知処理,コード化,コード分析,警報分析,警報の周期・間隔・音色の作成などはマイクロプロセッサーによるソフトで対応しているため,ソフトの構成によってより高度な対応が可能であるとともに,送信具には,それぞれ固有のIDが与えられているため,複数の手荷物に対して,それぞれ送信具を取り付けて一台の受信具で監視することも出来るなど,本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば種々変形実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は,手荷物などの置き忘れ,持ち去りなどを防止するための軽量,小型な手荷物監視装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】送信具(1),受信具(2)の概観斜視図を示す。
【図2】送信具における回路構成の概略図を示す。
【図3】受信具における回路構成の概略図を示す。
【表1】
警報状態表を示す。
【符号の説明】
1 送信具の電源スイッチ 13 受信具の警報選択スイッチ
2 送信具の移動検知センサー 14 送信具の移動検知センサー
3 送信具の送信アンテナ 15 送信具の検知処理回路
4 送信具の取付部材用穴 16 送信具の変調回路
5 受信具の電源スイッチ 17 送信具のアンテナ
6 受信具の移動検知センサー 18 受信具の移動検知センサー
7 受信具の受信アンテナ 19 受信具の検知処理回路
8 受信具の取付部材用穴 20 受信具のアンテナ
9 受信具の警報停止スイッチ 21 受信具の受信回路
10 受信具のスピーカー 22 受信具の警報分析回路
11 受信具のバイブレーター
12 受信具のLED表示灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手荷物の置き忘れ,持ち去りなどを知らせる監視装置に関し,手荷物に取り付けて,手荷物の静止,移動の状態をセンサーで検知して無線で通知する機能を備える送信具と,手荷物の保持者が携帯し,送信具との通信状態を監視し,送信具からの通知を受信する機能,ならびに手荷物の保持者の静止,移動の状態をセンサーで検知する機能を備えた受信具で構成され,受信具において,送信具から通知される静止,移動の状態と,手荷物の保持者の静止,移動の状態を照合して,相関関係が無いと判断された場合に所要の警報を発することにより,手荷物の置き忘れ,持ち去りなどを確実に監視する軽量,小型な手荷物監視装置。
【請求項2】
上記送信具ならびに受信具における,静止,移動の状態,ならびに移動方位をセンサーで検知して照合し,相関関係が無いと判断された場合に所要の警報を発する,請求項1に記載する軽量,小型な手荷物監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−301469(P2008−301469A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237248(P2007−237248)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(507160344)株式会社メイルリバー (6)
【Fターム(参考)】