説明

打抜部品の貼着方法

【課題】テープ部材からパンチによって打ち抜いた打抜部品を板状の被貼着体の所定箇所に押圧して圧着する際に、幅広の打抜部品であっても、パンチの先端面に打抜部品を保持しつつ被貼着体に仮圧着し、被貼着体との接着面に気泡を残留させることなく貼着し得る打抜部品の貼着方法。
【解決手段】パンチ14として、打抜部品12aを先端面に保持できるように、真空吸着孔14aが先端面に開口されているパンチ14を用い、パンチ14の先端面に保持している打抜部品12aを、その一端側を放熱板16の所定箇所に押圧する部分押圧によって部分的に仮圧着し、打抜部品12aの他端側を未貼着とした後、打抜部品12aの仮圧着した一端側から未貼着の他端側方向にローラによって順次押圧し、打抜部品12aの貼着面を被貼着体の所定箇所に圧着する本圧着を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は打抜部品の貼着方法に関し、更に詳細には可撓性を有するテープ部材からパンチによって打ち抜いた打抜部品を、板状の被貼着体の所定箇所に押圧して、前記打抜部品及び被貼着体の少なくとも一方側に塗布された接着剤によって貼着する打抜部品の貼着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、一面側が接着剤塗布面に形成された可撓性を有するテープ部材からパンチによって打ち抜いた細幅の打抜部品を、板状の被貼着体の所定箇所に押圧して貼着する貼着方法が記載されている。この貼着方法を図3に示す。
図3に示す貼着方法では、先ず、図3(a)に示す様に、穿設孔100aが形成されたダイ100の一面側に、可撓性を有するテープ部材102を、その接着剤塗布面が当接するように載置する。
このダイ100の一面側には、パンチ104が昇降可能に設けられており、パンチ104内には、パンチ104の先端面に開口する真空吸引孔104aが形成されている。この真空吸引孔104aは、真空ポンプ(図示せず)に繋がっており、パンチ104の先端面に打ち抜いた打抜部品を真空吸着できる。
また、ダイ100の他面側には、テープ部材102から打ちぬかれた打抜部品を貼着する板状の被貼着体106が加熱圧着ツール108上に載置されている。
【0003】
図3(a)に示すパンチ104を降下し、先端部をダイ100の穿設孔100aに挿入することによって、図3(b)に示す様に、ダイ100の一面側に載置されていたテープ部材102を打ち抜く。打ち抜かれた打抜部品102aは、真空ポンプ(図示せず)を駆動し真空吸引孔104aを介してパンチ104の先端面に真空吸着される。
パンチ104の先端面に真空吸着された打抜部品102aは、図3(c)に示す様に、パンチ104と共に降下し、加熱圧着ツール108上に載置されている被貼着体106に打抜部品102aの接着剤塗布面が当接して加熱圧着され、打抜部品102aが被貼着体106の所定箇所に仮圧着される。
更に、同様にして、板状の被貼着体106に打抜部品102a,102a・・を仮圧着した後、打抜部品102a,102a・・が仮圧着された被貼着体106は、図4に示す様に、圧着ツール110,112の間に挟み込んで加熱加圧により本圧着を施す。この本圧着では、打抜部品102a,102a・・の各全面に亘って同時に押圧が施されている。
【0004】
図3及び図4に示す貼着方法では、細幅の打抜部品102aであれば問題ないが、一面側に半導体素子を後工程で搭載する1個のフレキシブル配線基板を含む打抜部品のように幅広の打抜部品102aの場合、被貼着体106に幅広の打抜部品102aを仮圧着したとき、接着面に気泡が残留し易くなった。この気泡は、図4に示す本圧着でも抜けることなく残留している。かかる残留気泡は、打抜部品102aと被貼着体106との接着力低下の原因となり易い。
この気泡が残留し難い貼着方法として、下記特許文献2には、図5に示す様に、板状の被貼着体200に対し、フィルム部材202を、その一端側からローラ204によって順次圧着することが提案されている。
【特許文献1】特開平5−301669号公報(図6)
【特許文献2】特開2003−152143号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示す様に、板状の被貼着体200に対し、フィルム部材202を、その一端側からローラ204によって順次圧着することによって、開放されたフィルム部材202の他端側から被貼着体200との間の空気を排出しつつ仮圧着できる。
しかしながら、図3に示す貼着方法では、図5に示すローラ204を用いて、打抜部品102を被貼着体106に仮圧着することは極めて困難である。
つまり、図3に示すパンチ104の先端面に真空吸着した打抜部品102を、図5に示す様に、ローラ204で圧着する一端側に対し、被貼着体106との間の空気を排出する他端側を未貼着の開放状態とすることが必要だからである。
一方、図3に示す貼着方法では、パンチ104によって打ち抜いた打抜部品102を、そのパンチ104の先端面に保持して被貼着体106に仮圧着する際に、打抜部品102を持ち替える操作を必要とせず、仮圧着操作を簡単化できる。
そこで、本発明の課題は、テープ部材からパンチによって打ち抜いた打抜部品を板状の被貼着体の所定箇所に押圧して圧着する際に、幅広の打抜部品であっても、パンチの先端面に打抜部品を保持しつつ被貼着体に仮圧着し、被貼着体との接着面に気泡を残留させることなく貼着し得る打抜部品の貼着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、パンチの先端面に保持している打抜部品を、その一端側を被貼着体の所定箇所に押圧する部分押圧によって部分的に仮圧着でき、仮圧着した打抜部品の一端側から他端側の方向にローラによって順次押圧することによって、被貼着体との間の空気を未貼着の他端側から排出して打抜部品の貼着面を貼着できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、可撓性を有するテープ部材からパンチによって打ち抜いた打抜部品を、板状の被貼着体の所定箇所に押圧して、前記打抜部品及び被貼着体の少なくとも一方に塗布された接着剤によって貼着する際に、該パンチとして、打ち抜いた打抜部品を先端面に保持できるように、吸着孔が前記先端面に開口されているパンチを用い、前記パンチの先端面に保持している打抜部品を、その一端側を被貼着体の一面側の所定箇所に押圧する部分押圧によって部分的に仮圧着し、前記打抜部品の他端側を未貼着とした後、前記打抜部品の仮圧着した一端側から未貼着の他端側方向にローラによって順次押圧し、前記打抜部品の貼着面を被貼着体の所定箇所に圧着する本圧着を施すことを特徴とする打抜部品の貼着方法にある。
【0007】
かかる本発明において、被貼着体の他面側に設けられた、仮圧着を施す打抜部品の一端側に対応する部分が突出部に形成された圧着ツールを用い、前記圧着ツールの前記突出部の先端面とパンチの先端面との間に、前記打抜部品の一端側と被貼着体の仮圧着する箇所とを挟み込んで仮圧着を施すことによって、打抜部品の一端側を被貼着体の所定箇所に容易に仮圧着できる。
また、本圧着を、一対の加熱ローラ間に打抜部品と被貼着体とを挟み込んで施すことによって、容易に本圧着を施すことができる。
かかる仮圧着に用いる圧着ツールとして、ヒータ内蔵の加熱ツールを用いることによって、仮圧着による打抜部品の一端側を被貼着体に充分に貼着できる。
更に、接着剤として、接着温度が室温よりも高い温度の接着剤を用い、前記仮圧着及び本圧着の際に、前記接着剤の接着温度となるように、打抜部品及び被貼着体の押圧部分を加熱することによって、打抜部品の必要部分のみを接着温度以上に加熱することにより貼着できる。
尚、可撓性を有するテープ部材として、複数個のフレキシブル配線基板が形成されたテープ部材を用い、前記テープ部材から打ち抜いた少なくとも1個のフレキシブル配線基板を含む打抜部品を、放熱板の一面側に貼着することによって、少なくとも1個のフレキシブル配線基板を含む幅広の打抜部品でも放熱板に気泡を残留させることなく貼着できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可撓性を有するテープ部材をパンチによって打ち抜いた打抜部品をパンチの先端面に保持しつつ、部分的な仮圧着を施すことができる。かかる仮圧着によって、打抜部品の一端側を被貼着体の所定箇所に貼着できると共に、打抜部品の他端側を未貼着とすることができる。このため、被貼着体に貼着した打抜部品の一端側から他端側方向にローラによって順次押圧することによって、被貼着体との間の空気を未貼着の他端側から排出しつつ打抜部品の貼着面の全面を貼着できる。
その結果、可撓性を有するテープ部材をパンチによって打ち抜いた幅広の打抜部品であっても、被貼着体との接着面に気泡を残留させることなく貼着でき、残留気泡に因る接着力低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る打抜部品の貼着方法の一例を図1に示す。図1に示す貼着方法では、先ず、図1(a)に示す様に、穿設孔10aが形成されたダイ10の一面側に、可撓性を有するテープ部材12を載置する。このテープ部材12は、形成された複数個のフレキシブル配線基板のうち、1個のフレキシブル配線基板を含む部分が穿設孔10aの上方に位置するように位置調整されている。
かかるダイ10の一面側(上面側)には、パンチ14が昇降可能に設けられており、パンチ14内には、パンチ14の先端面に開口する真空吸引孔14aが形成されている。この真空吸引孔14aは、真空ポンプ(図示せず)に繋がっている。このため、ダイ10の穿設孔10aにパンチ14の先端部を挿入し、1個のフレキシブル配線基板を含む打抜部品をテープ部材12から打ち抜いたとき、真空ポンプを駆動してパンチ14の先端面に打抜部品を真空吸着できる。
また、ダイ10の他面側(下面側)には、テープ部材102から打ち抜いた抜いた打抜部品を貼着する板状の被貼着体としての放熱板16が圧着ツール18の上方に位置している。この放熱板16のダイ10側の面(表面)には、熱硬化性樹脂から成り且つ接着温度が室温よりも高い温度である接着剤が塗布されている。
更に、圧着ツール18は、放熱板16の裏面側に対して昇降可能に設けられており、一端側がダイ10の穿設孔10a方向に突出する突出部18aに形成された横断面形状がL字状に形成されている。この圧着ツール18は、ヒータを内蔵する加熱ツールであって、その突出部18aの先端面は、ダイ10の穿設孔10aの開口面よりも幅狭に形成されている。しかも、突出部18aは、その先端面がダイ10の穿設孔10aの開口周縁側に片寄って位置するように設けられている。
【0010】
図1(a)に示すパンチ14を降下し、図1(b)に示す様に、ダイ10の穿設孔10aにパンチ14の先端部を挿入して、1個のフレキシブル配線基板を含む打抜部品12aをテープ部材12から打ち抜いたとき、真空ポンプを駆動してパンチ14の先端面に打抜部品12aを真空吸着する。
更に、パンチ14の先端面に打抜部品12aを真空吸着した状態でパンチ14を降下し、打抜部品12aが放熱板16の近接したとき、パンチ14の降下を停止する。
次いで、放熱板16のダイ10側の表面に塗布された熱硬化性樹脂から成る接着剤の接着温度以上に加熱された圧着ツール18を放熱板16方向に上昇して、圧着ツール18の突出部18aの先端面を放熱板16の裏面に当接し、放熱板16の表面を打抜部品12aに押し上げて圧着する。
【0011】
この際に、圧着ツール18の突出部18aの先端面は、打抜部品12aの一端側に対応する放熱板16の裏面側の部分に所定時間当接して、突出部18aの先端面が当接した放熱板16の部分を部分的に加熱し、その加熱した部分の接着剤を接着温度以上に昇温する。このため、打抜部品12aの一端側は放熱板16に加熱圧着されて仮圧着がされるものの、その他端側は加熱圧着されず、打抜部品12aの他端側が放熱板16に未貼着状態に保持される。つまり、打抜部品12は、その貼着すべき面のうち、一部分のみを貼着し、他の部分は未貼着の状態、例えば付箋を貼着したような状態となる。
この様に、圧着ツール18による打抜部品12aの一端側への加熱圧着を施した後、圧着ツール18を降下し、真空吸引孔14aの真空状態を破り打抜部品12aの真空吸着を解消してパンチ14を上昇することによって、仮圧着工程を終了する。
その後、図3(c)に示す様に、次に打ち抜く1個のフレキシブル配線基板を含む部分が穿設孔10a上に位置するようにテープ部材12を移動すると共に、次の打抜部品12aを仮圧着する部分が穿設孔10aの下方に位置するように放熱板16を移動する。
移動した放熱板16には、移動前に一端側のみが放熱板16に仮圧着されている打抜部品12aが残されている。
【0012】
複数枚の打抜部品12aの各々を、その各他端側が放熱板16に未貼着状態を保持した状態で各一端側を放熱板16に仮圧着した後に本圧着を施す。
この本圧着では、図2に示す様に、放熱板16の一面側に塗布された接着剤の接着温度以上の温度に維持されている一対の加熱ローラ20a,20bを用い、この一対の加熱ローラ20a,20bの間に放熱板16と打抜部品12aとを挟みむことによって、各打抜部品12aの貼着面を放熱板16に加熱圧着する本圧着を施す。
かかる際に、打抜部品12a,12a・・の各々に対し、仮圧着した一端側から未貼着の他端側方向に順次一対の加熱ローラ20a,20bによって順次押圧できるように、図2に示す矢印方向に放熱板16を移送する。
この様に、仮圧着した打抜部品12aの一端側から未貼着の他端側方向に順次加熱圧着することによって、放熱板16との間の空気を充分に排出でき、打抜部品12aを放熱板16の所定箇所に接着面に気泡を残留させることなく本圧着できる。
放熱板16に本圧着した打抜部品12a,12a・・は、必要に応じて所定温度でキュアを施した後、個々に切断して得られたフレキシブル配線基板と放熱板とから成る半導体装置用基板に半導体素子を搭載して半導体装置を製造できる。
【0013】
以上の説明では、接着剤を放熱板16の接着面側に塗布していたが、テープ部材12の接着面側に塗布してもよく、放熱板16とテープ部材12との両接着面に塗布してもよい。
更に、接着剤として、熱硬化性樹脂から成る接着剤に代えて、熱可塑性樹脂から成る接着剤を用いてもよい。熱可塑性樹脂から成る接着剤の場合は、その軟化点又は融点が室温よりも高い温度のものを用いる。
また、図2に示す本圧着では、一対の加熱ローラ20a,20bを用いているが、放熱板16の裏面(打抜部品12a,12a・・が仮圧着された表面に対して反対面)側を、加熱プレートによって加熱しつつ、放熱板16の表面を非加熱のローラによって押圧してもよい。
尚、図1及び図2では、1個のフレキシブル配線基板を含む幅広の打抜部品12aについて説明してきたが、複数個のフレキシブル配線基板を含む打抜部品12aであってもよく、細幅の打抜部品についても本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る打抜部品の貼着方法で採用する仮圧着の一例を説明する工程図である。
【図2】本発明に係る打抜部品の貼着方法で採用する本圧着の一例を説明する説明図である。
【図3】従来の打抜部品の貼着方法における仮圧着を説明する工程図である。
【図4】従来の打抜部品の貼着方法における本圧着を説明する説明図である。
【図5】従来の打抜部品の貼着方法の改良方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0015】
10 ダイ
10a 穿設孔
12 テープ部材
12a 打抜部品
14 パンチ
14a 真空吸引孔
16 放熱板
18 圧着ツール
18a 突出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するテープ部材からパンチによって打ち抜いた打抜部品を、板状の被貼着体の所定箇所に押圧して、前記打抜部品及び被貼着体の少なくとも一方に塗布された接着剤によって貼着する際に、
該パンチとして、打ち抜いた打抜部品を先端面に保持できるように、吸着孔が前記先端面に開口されているパンチを用い、
前記パンチの先端面に保持している打抜部品を、その一端側を被貼着体の一面側の所定箇所に押圧する部分押圧によって部分的に仮圧着し、前記打抜部品の他端側を未貼着とした後、
前記打抜部品の仮圧着した一端側から未貼着の他端側方向にローラによって順次押圧し、前記打抜部品の貼着面を被貼着体の所定箇所に圧着する本圧着を施すことを特徴とする打抜部品の貼着方法。
【請求項2】
被貼着体の他面側に設けられた、仮圧着を施す打抜部品の一端側に対応する部分が突出部に形成された圧着ツールを用い、前記圧着ツールの前記突出部の先端面とパンチの先端面との間に、前記打抜部品の一端側と被貼着体の仮圧着する箇所とを挟み込んで仮圧着を施す請求項1記載の打抜部品の貼着方法
【請求項3】
本圧着を、一対の加熱ローラ間に打抜部品と被貼着体とを挟み込んで施す請求項1又は請求項2記載の打抜部品の貼着方法。
【請求項4】
仮圧着に用いる圧着ツールとして、ヒータ内蔵の加熱ツールを用いる請求項1〜3のいずれか一項記載の打抜部品の貼着方法。
【請求項5】
接着剤として、接着温度が室温よりも高い温度の接着剤を用い、前記仮圧着及び本圧着の際に、前記接着剤の接着温度以上となるように、打抜部品及び被貼着体の押圧部分を加熱する請求項1〜4のいずれか一項記載の打抜部品の貼着方法。
【請求項6】
可撓性を有するテープ部材として、複数個のフレキシブル配線基板が形成されたテープ部材を用い、前記テープ部材から打ち抜いた少なくとも1個のフレキシブル配線基板を含む打抜部品を、放熱板の一面側に貼着する請求項1〜5のいずれか一項記載の打抜部品の貼着方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−156880(P2006−156880A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348448(P2004−348448)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】