説明

把持装置、及び、ハニカム構造体の製造方法

【課題】 ハニカム構造体を適切な姿勢で把持し、所定の位置に簡便に搬送して載置することができる把持装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の把持装置は、回転軸が平行となる少なくとも2個の支持ローラを有する第一の把持部と、上記第一の把持部の支持ローラに対向する少なくとも1個の支持ローラを有する第二の把持部と、上記第一の把持部及び上記第二の把持部を有する少なくとも1つの把持機構とを備え、上記第一の把持部の支持ローラの回転軸と上記第二の把持部の支持ローラの回転軸とは平行になっており、上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方を移動させることにより、上記支持ローラを介して上記第一の把持部と上記第二の把持部との間に被把持物を把持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置、及び、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排ガス中に含有されるスス等のパティキュレートが環境や人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。
そこで、排ガス中のパティキュレートを捕集して、排ガスを浄化するフィルタとして多孔質セラミックからなるハニカム構造体を用いたハニカムフィルタが種々提案されている。
【0003】
従来、ハニカム構造体を製造する際には、例えば、まず、セラミック粉末とバインダと分散媒液等とを混合して湿潤混合物を調製する。そして、この湿潤混合物をダイスにより連続的に押出成形し、押し出された成形体を所定の長さに切断することにより、角柱形状のハニカム成形体を作製する。
【0004】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥させ、その後、所定のセルに目封じを施し、セルのいずれかの端部が封止された状態とする。
目封じをされたハニカム成形体を脱脂炉に投入して、脱脂処理を行う。
【0005】
次いで、脱脂処理を施したハニカム成形体を焼成炉に投入して焼成処理を施し、その後、冷却してハニカム焼成体を作製する。
【0006】
この後、ハニカム焼成体の側面にシール材ペーストを塗布し、ハニカム焼成体同士を接着させることにより、シール材層(接着剤層)を介してハニカム焼成体が多数結束した状態のハニカム焼成体の集合体を作製する。次に、得られたハニカム焼成体の集合体に、切削機等を用いて円柱、楕円柱等の所定の形状に切削加工を施してセラミックブロックを形成し、最後に、セラミックブロックの外周にシール材ペーストを塗布してシール材層(コート層)を形成することにより、ハニカム構造体の製造を終了する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうして製造したハニカム構造体を搬送するには、従来、緩衝材を備えたクランプ等の把持具を用いていた。ハニカム構造体をこのような把持具を用いて搬送する際に、傾いた姿勢の状態でハニカム構造体を把持すると、傾いた姿勢のままハニカム構造体を把持してしまい、搬送の途中で脱落の危険性があった。また、搬送の途中で脱落せずとも、ハニカム構造体を傾いた状態で把持していることから、搬送後に所定の位置へ載置する際には、ハニカム構造体の端面と側面との境界近傍である角部等が最初に載置面に接触し、角部等における欠けやクラック等の原因となっていた。
【0008】
ところで、ボトル容器の口元部にキャップを自動的に巻き締めるライン式キャップ巻締め機等の装置において、ボトル容器の回り止めやセンタリングを行うのに使用する容器把持装置として、容器の搬送路の両側のグリッパーの一対の支持ローラによって容器の搬送路の両側から容器を挟持するようにした容器把持装置が開示されている(特許文献1)。
【0009】
上記容器把持装置では、容器の外径寸法が多少変化しても回り止めやセンタリングは可能であるが、ライン上にある容器に対して一対のグリッパーを一度に駆動させて両側から挟持するだけであるので、容器をその場で固定することはできるものの、把持した際の把持姿勢を適切な姿勢に修正することは困難であった。
【0010】
ここで、ハニカム構造体を把持するのに上記容器把持装置を適用しようとしても、上記のように適切な姿勢で把持することが必要であることから適用は非常に困難であった。
従って、ハニカム構造体の製造工程において、ハニカム構造体を傾いた状態で把持しても、把持した際の姿勢を自然に修正してハニカム構造体を適切な姿勢で把持することができる把持装置の開発が望まれていた。
【0011】
【特許文献1】特開2003−20099号公報
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、所定の位置関係を満たす支持ローラを有する把持部材を備えた把持装置を用いてハニカム構造体を把持すると、把持の際の姿勢を容易に修正しつつ、確実に把持することができることを見出し、本発明の把持装置、及び、本発明のハニカム構造体の製造方法を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明の把持装置は、回転軸が平行となる少なくとも2個の支持ローラを有する第一の把持部と、
上記第一の把持部の支持ローラに対向する少なくとも1個の支持ローラを有する第二の把持部と、
上記第一の把持部及び上記第二の把持部を有する少なくとも1つの把持機構とを備え、
上記第一の把持部の支持ローラの回転軸と上記第二の把持部の支持ローラの回転軸とは平行になっており、
上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方を移動させることにより、上記支持ローラを介して上記第一の把持部と上記第二の把持部との間に被把持物を把持することを特徴とする。
【0014】
本発明の把持装置は、上記第一の把持部が取り付けられた支持アームと上記第二の把持部が取り付けられた支持アームとを有し、
上記第一の把持部が取り付けられた支持アーム及び上記第二の把持部が取り付けられた支持アームのうち、一方の支持アームを移動させることが望ましい。
【0015】
本発明の把持装置では、上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方は、伸縮可能な連結部材を有し、
上記少なくとも一方の把持部の支持ローラは、その回転軸で上記連結部材に連結されていることが望ましい。
【0016】
本発明の把持装置では、上記連結部材が所定距離短縮した際に、上記回転軸又は上記支持ローラと接触して上記支持ローラの回転を停止させる回転停止具を備えていることが望ましい。
【0017】
本発明の把持装置では、上記支持ローラの表面には弾性材料からなる弾性材層が形成されていることが望ましい。
【0018】
本発明の把持装置では、上記被把持物が柱状形状であることが望ましい。
【0019】
本発明の把持装置は、セラミック原料を成形することで、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造工程における搬送工程で使用される把持装置であって、
上記搬送工程が、ハニカム成形体搬送工程、ハニカム焼成体搬送工程及びハニカム構造体搬送工程のうちの少なくとも1つの搬送工程であることが望ましい。
【0020】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、セラミック原料を成形することで、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
回転軸が平行となる少なくとも2個の支持ローラを有する第一の把持部と、上記第一の把持部の支持ローラに対向する少なくとも1個の支持ローラを有する第二の把持部と、上記第一の把持部及び上記第二の把持部を有する少なくとも1つの把持機構とを備え、上記第一の把持部の支持ローラの回転軸と上記第二の把持部の支持ローラの回転軸とは平行になっており、上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方を移動させることにより、上記支持ローラを介して上記第一の把持部と上記第二の把持部との間に被把持物を把持する把持装置を使用して、
上記ハニカム成形体を焼成工程に搬送するハニカム成形体搬送工程、上記ハニカム焼成体をハニカム構造体形成工程に搬送するハニカム焼成体搬送工程、及び、上記ハニカム構造体を検査工程に搬送するハニカム構造体搬送工程のうちの少なくとも1つの搬送工程を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記把持装置は、上記第一の把持部が取り付けられた支持アームと上記第二の把持部が取り付けられた支持アームとを有し、
上記第一の把持部が取り付けられた支持アーム及び上記第二の把持部が取り付けられた支持アームのうち、一方の支持アームを移動させることが望ましい。
【0022】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方は、伸縮可能な連結部材を有し、
上記少なくとも一方の把持部の支持ローラは、その回転軸で上記連結部材に連結されていることが望ましい。
【0023】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記把持装置は、上記連結部材が所定距離短縮した際に、上記回転軸又は上記支持ローラと接触して上記支持ローラの回転を停止させる回転停止具を備えていることが望ましい。
【0024】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記支持ローラの表面には、弾性材料からなる弾性材層が形成されていることが望ましい。
【0025】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記搬送工程は、上記ハニカム構造体搬送工程であり、
上記ハニカム構造体が円柱形状、楕円柱形状又は長円柱形状であることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の把持装置では、第一の把持部及び第二の把持部に取り付けられた支持ローラを介して被把持物を把持することにより、把持の際の被把持物の姿勢を自然に修正することができる。これによって、把持した後に被把持物が脱落したり、被把持物を載置する際に被把持物の角部等が載置面に接触して欠けてしまったりすることを有効に防止することができる。
【0027】
本発明の把持装置は、ハニカム構造体の製造工程における各搬送工程において、脆性材料で構成されているハニカム構造体やその構成部材等を把持するための把持装置として好適に使用することができる。
【0028】
本発明のハニカム構造体の製造方法によると、全製造工程のうちの所定の搬送工程において、本発明の把持装置を用いて各工程を経た構成部材等を把持するので、破損の生じやすい搬送工程において不具合が生じることを有効に防止することができる。特に、取扱いに慎重を要していた完成品であるハニカム構造体を確実かつ容易に把持することができることから、製造工程全体の生産性の効率化をも図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
まず、本発明の把持装置について図面を参照しつつ説明する。
本発明の把持装置は、回転軸が平行となる少なくとも2個の支持ローラを有する第一の把持部と、
上記第一の把持部の支持ローラに対向する少なくとも1個の支持ローラを有する第二の把持部と、
上記第一の把持部及び上記第二の把持部を有する少なくとも1つの把持機構を備え、
上記第一の把持部の支持ローラの回転軸と上記第二の把持部の支持ローラの回転軸とは平行になっており、
上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方を移動させることにより、上記支持ローラを介して上記第一の把持部と上記第二の把持部との間に被把持物を把持することを特徴とする。
【0030】
本発明の把持装置において把持の対象とする被把持物は、特に限定されず、種々の被把持物を把持の対象とすることができる。ここでは、被把持物の例として、脆性材料で構成されているために取扱いに慎重を要するようなセラミック材料で構成されているハニカム構造体を例に説明する。
【0031】
図1(a)は、本発明の把持装置の実施形態の一例を示した側面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した本発明の把持装置の実施形態の正面図である。また、図2は、図1(a)に示した第二の把持部を拡大して示した拡大側面図であり、図3は、図1(a)に示した第一の把持部を拡大して示した拡大上面図である。
【0032】
把持装置10は、図1(a)に示すように、第一の把持部12が取り付けられた支持アーム12aと、第二の把持部14が取り付けられた支持アーム14aと(以下、第一の把持部及び/又は第二の把持部を、単に把持部という場合がある)、支持アーム12aと支持アーム14aとを支持する基部16とで構成されている。支持アーム12a及び支持アーム14aは、それぞれ基部16と垂直になるように支持されており、支持アーム12aと支持アーム14aとは互いに平行になるように配設されている。
ここで、本明細書において、基部とは、把持装置が被把持物を把持したり、把持した被把持物を開放したりする際に、この被把持物に対して、それ自体が移動することがない部材をいう。
なお、図1(a)に破線で示したハニカム構造体130については、把持装置の把持動作の説明において後に説明する。
また、図1(b)では、図1(a)に破線で示したハニカム構造体130を説明の便宜上省略してある。
【0033】
第一の把持部12が取り付けられた支持アーム12aの一端は、基部16の下部に固定されて支持されている。一方、第二の把持部14が取り付けられた支持アーム14aの一端は、基部16内部に配設されているエアシリンダー又はボールネジ等の駆動機構と連結され、第一の把持部12との平行を保ちながら移動可能なように支持されている。この第二の把持部14が取り付けられた支持アーム14aと連結している駆動機構により、第一の把持部12と第二の把持部14との間の距離を被把持物の大きさに応じて適宜調整することができる。
【0034】
第一の把持部12は、図1(a)及び(b)並びに図3に示すように、基部16の下部に支持された1本の支持アーム12aに取り付けられている。支持アーム12aは角柱状の板材からなり、支持アーム12aには、2個の支持ローラ15aが、互いに回転軸13aが平行になるように、かつ、第二の把持部14と対向するように取り付けられている。図1(b)に示す両矢印Aの方向での支持アーム12aの幅は、図1(b)に示す第二の把持部14における折り曲げ部140a間の距離Lより大きい。図3に示すように、第一の把持部12は互いに回転軸13aが平行になる2個の支持ローラ15aを有しており、各支持ローラ15aは独立して回転することができる。また、支持ローラ15aの回転軸方向の幅(図1(b)に示す両矢印Aの方向)は、支持アーム12aの幅よりわずかに小さくなっている。
【0035】
支持アーム12aには、支持ローラ15aの回転軸13aを支持するように連結部材18が設けられている。この連結部材18を介して支持アーム12aに取り付けられた支持ローラ15aの回転軸13aは、図3に示すように支持アーム12aの長手方向(図3に示す両矢印Cの方向)と直交しており、支持アーム12aの上面、すなわち第二の把持部14と対向する面から所定の間隔をあけて上方に支持されている。支持ローラ15aの回転軸13aが連結部材18により支持アーム12aの上面から所定の間隔をあけて上方に取り付けられているので、被把持物の外形状に凹凸等が存在していても、その凹凸等に沿うように支持ローラ15aが接触し、しっかりと被把持物を把持することができる。
【0036】
一方、第二の把持部14は、図2に示すように、1本の支持アーム14aに取り付けられており、この支持アーム14aは、細長い板において、その長手方向に沿って2本の折り目を入れて3分割し、両側の部分を内側に折ったような形状を有している。
【0037】
この第二の把持部14は、1個の支持ローラ15bを有しており、図1(b)及び2に示すように、支持ローラ15bは、支持アーム14aにおいて折り曲げられて平行になった折り曲げ部140aの間に架かるように支持されている。支持ローラ15bは、第一の把持部12が有する支持ローラ15aの回転軸13aと平行な回転軸13bを有し、かつ、支持ローラ15aと対向するように支持アーム14aに取り付けられている。支持ローラ15bの回転軸13bも、支持アーム12aに取り付けられた支持ローラ15aの回転軸13aと平行であることから、第二の把持部14が取り付けられた支持アーム14aの長手方向(図2に示す両矢印Bの方向)と直交することになる。また、支持アーム14aに取り付けられた支持ローラ15bの回転軸方向の幅(図1(b)に示す両矢印Aの方向)も、支持アーム14aの長手方向と直交方向の幅よりわずかに小さくなっている。
【0038】
支持ローラ15bに隣接した折り曲げ部140aには、切欠き部17が形成されている(図2を参照)。この切欠き部17により、被把持物の外形状に凹凸等が存在していても、被把持物の外縁が支持アーム14aに接触することなく、被把持物の外形状に沿って支持ローラ15bが被把持物に接触することができる。
【0039】
支持ローラ15a、15bは、上記のように互いに対向するように支持アーム12a及び支持アーム14aにそれぞれ取り付けられている。また、2個の支持ローラ15aの回転軸間の中心と支持ローラ15bの回転軸の中心とは、第二の把持部14の移動方向と平行な線とほぼ同一線上に存在する(図1(a)参照)。
【0040】
このように、支持アーム12aに取り付けられた支持ローラ15aを有する第一の把持部12と、支持アーム14aに取り付けられた支持ローラ15bを有する第二の把持部14とで把持機構11が構成されている。従って、図1(a)に示す把持装置10は、この把持機構11を1つ備えていることになる。後述するように、1つの把持機構11では、1個の被把持物を把持することができる。
【0041】
基部16の内部に配設された駆動機構は、上述のように第二の把持部14を第一の把持部12に対して移動可能なエアシリンダー又はボールネジ等で構成されている。また、基部16の内部には、上記駆動機構の他、第二の把持部14に圧力が負荷されたことを認識し、その圧力を計測することができる圧力センサ(図示せず)が備え付けられていてもよく、上記駆動機構としてボールネジを用いる場合は、圧力センサが備え付けられていることが望ましい。この圧力センサにより、被把持物を第一の把持部12と第二の把持部14との間に把持した際に、第二の把持部14に負荷される圧力を計測することができるので、適切な圧力で被把持物を把持することができるからである。
【0042】
次に、本発明の把持装置により被把持物として図11に示したようなハニカム構造体を把持する際の動作を説明する。ここでは、図1(a)、1(b)、図2及び図3に示した構成を有する把持装置10を用いて被把持物を把持する動作について説明する。
把持装置10では、第二の把持部14を第一の把持部12に対して移動させることにより、支持ローラ15a、15bを介して1個の被把持物を第一の把持部12と第二の把持部14との間に把持する。
【0043】
図1(a)に示した把持装置10は、所定の載置面や載置台等に載置されたハニカム構造体130に対して、ハニカム構造体130の側面側から側面を把持するように近づく。ハニカム構造体130が支持ローラ15a、15bとの間に位置するようになるまで把持装置10が近づいたら、ハニカム構造体130への接近を停止し、把持動作に移る。
【0044】
まず、支持アーム12aに取り付けられている第一の把持部12をハニカム構造体の側面に接近させて、支持ローラ15aをハニカム構造体の側面に接触させる。このとき、支持ローラ15aは、連結部材18を介して支持アーム12a上面から所定距離あけるように上方に支持されているので、ハニカム構造体130が円柱状の外形状を有し、側面が曲面であっても、その側面に沿って確実に接触することができる。
【0045】
次いで、基部16内部の駆動機構を駆動させることにより、支持アーム14aに取り付けられた第二の把持部14を第一の把持部12に対して近づくように移動させる。そして、ハニカム構造体130の側面に支持ローラ15bが接触した時点で、基部16内部に配設された圧力センサが第二の把持部14に負荷される圧力の変化を検出し、その後の第二の把持部14の移動により第二の把持部14に負荷される圧力が所定の圧力(すなわち、ハニカム構造体を把持して搬送するために持ち上げたときに脱落を防止するのに充分な圧力)まで上昇した時点で、第二の把持部14の第一の把持部12に対する移動を停止させる。
【0046】
把持装置10では、ハニカム構造体130を把持する際に、ハニカム構造体130の長手方向が支持ローラ15a、15bの回転軸13a、13bと平行でない姿勢でハニカム構造体130を把持しても、支持ローラ15a、15bがそれぞれ独立して回転することで、ハニカム構造体130の長手方向の姿勢が支持ローラ15a、15bの回転軸13a、13bと平行な方向の姿勢となるように自然に修正される。このようにして把持装置10では、支持ローラ15a、15bを介して第一の把持部12と第二の把持部14との間に1個のハニカム構造体130を確実に把持することができる。
【0047】
また、ハニカム構造体130を把持する前の段階において、把持した後のハニカム構造体130の姿勢が適切となるように、把持装置10のハニカム構造体130に対する位置を精密に調整する必要がないので、ハニカム構造体130を把持し、その後必要に応じて搬送して載置するという一連の流れを有効に効率化することができる。
【0048】
ここで、被把持物であるハニカム構造体を把持した際のハニカム構造体と支持ローラとの関係を図8(a)を参照しつつ説明する。図8(a)は、ハニカム構造体を把持した状態にある把持機構を示す模式図である。
【0049】
図8(a)に示した把持機構11は、図1(a)、1(b)に示した把持機構の構成に対応しており、2個の支持ローラ15aを有する第一の把持部12と、1個の支持ローラ15bを有する第二の把持部14とを有する。なお、図8(a)では、支持アームや連結部材は説明の簡略のため省略してある。
【0050】
図8(a)に示したように、把持機構11は3個の支持ローラを有しており、上側で1箇所、下側で2箇所の合計3箇所でハニカム構造体130を把持している。2個の支持ローラ15aを有する第一の把持部12をハニカム構造体130に接触させた後、1個の支持ローラ15bを有する第二の把持部14をハニカム構造体130に対して移動させることにより、図8(a)に示す把持機構の状態となる。ハニカム構造体130を把持する際に、ハニカム構造体130の長手方向が支持ローラ15a、15bの回転軸13a、13bと平行でなくても、把持の際に3個の支持ローラ15a、15bが独立して回転することができるので、ハニカム構造体130を把持した際の姿勢を自然に修正することができる。
【0051】
上記第一の把持部及び/又は上記第二の把持部は、互いに平行に離間して配設された複数の支持アームに取り付けられていることが望ましい。
図1(a)、1(b)、図2及び図3を参照して説明した把持装置10では、第一の把持部12及び第二の把持部14が、それぞれ1本の支持アーム12a及び1本の支持アーム14aに取り付けられている。本発明の把持装置では、この態様に限定されず、第一の把持部12及び/又は第二の把持部14は、それぞれ複数の支持アームに取り付けられていてもよい。第一の把持部が2本の支持アームに取り付けられ、第二の把持部が1本の支持アームに取り付けられた実施の態様を把持装置10のバリエーションとして図4(a)、4(b)、図5及び図6を参照しつつ説明する。
なお、図4(a)に破線で示したハニカム構造体130については、把持装置の把持動作の説明において後に説明する。また、図4(b)では、図4(a)に破線で示したハニカム構造体130を説明の便宜上省略してある。
【0052】
第一の把持部22は、図4(b)及び図6に示すように、互いに平行に離間して配設された2本の支持アーム22aに取り付けられている。支持アーム22aは角柱状の棒材からなり、各支持アーム22aには、2個の支持ローラ25aが、同じ間隔で、互いに回転軸23aが平行になるように、かつ、第二の把持部24と対向するように取り付けられている。2本の支持アーム22a間の離間距離は、図4(b)に示す第二の把持部24における折り曲げ部240a間の距離Lより大きい。図6に示すように、第一の把持部22は、互いに回転軸23aが平行となっている合計4個の支持ローラ25aを有しており、各支持ローラ25aは独立して回転することができる。また、支持ローラ25aの回転軸方向の幅(図4(b)に示す両矢印Dの方向)は、支持アーム22aの幅よりわずかに小さくなっている。
【0053】
第一の把持部22は、その回転軸23aで連結部材28と連結されており、連結部材28は、図4(a)に示すように、それぞれ2本の支持アーム22aに固定されている。この連結部材28を介して2本の支持アーム22aに連結された支持ローラ25aの回転軸23aは、図6に示すように全て支持アーム22aの長手方向(図6に示す両矢印Fの方向)と直交しており、支持アーム22aの上面、すなわち第二の把持部24と対向する面から所定の間隔をあけて上方に支持されている。支持ローラ25aの回転軸23aが連結部材28を介して支持アーム22aの上面から所定の間隔をあけて上方に連結されているので、被把持物の外形状に凹凸等が存在していても、その凹凸等に沿うように支持ローラ25aが接触し、しっかりと被把持物を把持することができる。
【0054】
一方、第二の把持部24は、図1(a)、1(b)及び図2を参照して説明した第二の把持部14と同様に、細長い板を折り曲げたような形状の支持アーム24aに取り付けられている。図1(a)、1(b)に示した第二の把持部14は、支持ローラ15bを1個を有しているが、図4(a)、4(b)及び図5に示す第二の把持部24は、2個の支持ローラ25bを有している。2個の支持ローラ25bは、第一の把持部22が有する支持ローラ25aの回転軸23aと平行な回転軸23bを有し、かつ、支持ローラ25aと対向するように、支持アーム24aに取り付けられている。支持ローラ25bの回転軸23bも、支持アーム22aに取り付けられた支持ローラ25aの回転軸23aと平行であることから、第二の把持部24が取り付けられた支持アーム24aの長手方向(図5に示す両矢印Eの方向)と直交することになる。また、支持アーム24aに取り付けられた支持ローラ25bの回転軸方向の幅(図4(b)に示す両矢印Dの方向)も、支持アーム24aの長手方向と直交方向の幅よりわずかに小さくなっている。
【0055】
2個の支持ローラ25b間に存在する折り曲げ部240aには、切欠き部27が形成されている(図5を参照)。この切欠き部27により、被把持物の外形状に凹凸等が存在していても、被把持物の外縁が支持アーム24aに接触することなく、被把持物の外形状に沿って支持ローラ25bが被把持物に接触することができる。
【0056】
支持ローラ25a、25bは、上記のように互いに対向するように支持アーム22a及び支持アーム24aにそれぞれ取り付けられており、各支持ローラ25a、25bの取り付け間隔としては、支持アーム22aに取り付けられた2個の支持ローラ25a間の間隔が、支持アーム24aに取り付けられた支持ローラ25b間の間隔より大きいという関係を有する。また、図4(a)に示した把持装置20を把持装置20の側面からの投影図としてみた場合に、同一の支持アームに取り付けられた2個の支持ローラ25a間の中心と、2個の支持ローラ25b間の中心とは、第二の把持部14の移動方向と平行な線とほぼ同一線上に存在する。この場合、同一の支持アームに取り付けられた2個の支持ローラ25a間の間隔と、2個の支持ローラ25b間の間隔とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
このように、支持アーム22aに取り付けられた支持ローラ25aを有する第一の把持部22と、支持アーム24aに取り付けられた支持ローラ25bを有する第二の把持部24とで把持機構21が構成されている。従って、図4(a)に示す把持装置20は、この把持機構21を1つ備えていることになり、1個の被把持物を把持することができる。
【0058】
図4(a)、4(b)及び図6を参照しつつ説明した把持装置の実施形態では、第一の把持部22が、互いに平行に離間して配設された2本の支持アーム22aに取り付けられているが、第一の把持部の態様は、これに限定されず、3本以上の支持アームに取り付けられていてもよい。第二の把持部24についても、既に説明した態様に限定されず、2本以上の支持アームに取り付けられていてもよい。ただ、被把持物を把持した際の安定性は、被把持物の形状等に応じて変化するので、被把持物の形状の変化による把持の際の安定性の変化に柔軟に対応することができるように、第一の把持部及び/又は第二の把持部は、複数の支持アームに取り付けられていることが望ましい。本発明の把持装置では、被把持物を把持した際のその姿勢を安定化するように、被把持物の形状の変化に応じて支持アームによる支持点数を適宜選択すればよい。
【0059】
第一の把持部及び第二の把持部が取り付けられた支持アームの形状としては、図1(a)、1(b)、図2、3、図4(a)、4(b)、図5及び図6に示した具体的な形状に限定されず、種々の形状を採用することができる。例えば、第二の把持部が取り付けられた支持アームの形状として、上記のように細長い板の長手方向の両端部分を谷折りにしたような形状でなく、第一の把持部が取り付けられた支持アームのような角柱状の棒材を第二の把持部が取り付けられた支持アームの形状としてもよく、細長い板材の下面において2組の連結部材を介して支持ローラを2本支持するような形状であってもよい。反対に、角柱状の棒材として説明した第一の把持部が取り付けられた支持アームの形状を、図2又は図5に示した第二の把持部が取り付けられた支持アームのような形状としてもよいし、1枚の細長い板の上面に図1(a)又は図4(a)に示す連結部材を2個取り付けて、合計4個の支持ローラを取り付けた形状であってもよい。
【0060】
ここで、図4(a)、4(b)、図5及び図6を参照しつつ説明した把持装置を用いて、被把持物であるハニカム構造体を把持した際のハニカム構造体と支持ローラとの関係を図8(b)を参照しつつ説明する。図8(b)は、ハニカム構造体を把持した状態にある把持機構の別の一例を示す模式図である。なお、図8(b)においても、支持アームや連結部材は説明の簡略のため省略してある。
【0061】
図8(b)に示した把持機構21は、4個の支持ローラ25aを有する第一の把持部22と、2個の支持ローラ25bを有する第二の把持部24とを有している。把持機構21は、6個の支持ローラにより、ハニカム構造体130を上側2箇所、下側4箇所の合計6箇所で把持している。把持機構21においても、第一の把持部22と第二の把持部24との間にハニカム構造体130をしっかりと把持しており、また、把持の際にはハニカム構造体130の姿勢を自然に修正することができる。
【0062】
このように、既に説明した図8(a)、及び、図8(b)に示した把持機構では、第一の把持部と第二の把持部との間にハニカム構造体130を1個把持することができる関係にあるが、第一の把持部及び第二の把持部がそれぞれ有する支持ローラの数を変更することにより、1つの把持機構が把持することのできるハニカム構造体(被把持物)の数を適宜変更することができる。また、本発明の把持装置における把持機構自体の数を変更することでも、把持することのできるハニカム構造体の数を変更することができる。
【0063】
これまで、本発明の把持装置における第一の把持部及び第二の把持部の移動の態様としては、固定された支持アームに第一の把持部が取り付けられており、この固定された第一の把持部に対して第二の把持部が移動するという態様を図1(a)、1(b)、図2及び図3を参照して説明したが、上記態様に限定されず、固定された支持アームに第二の把持部が取り付けられており、この固定された第二の把持部に対して第一の把持部が移動してもよいし、第一の把持部及び第二の把持部がともに移動してもよい。第一の把持部及び第二の把持部にはそれぞれ、把持の際の被把持物の姿勢を自然に修正することができる支持ローラが取り付けられているので、いずれの態様であっても被把持物を確実かつ容易に把持することができる。
【0064】
上記第一の把持部及び第二の把持物の移動の態様のうち、第一の把持部又は第二の把持部を固定して被把持物を把持する場合、支持ローラが2個取り付けられている把持部を固定することが望ましい。
固定された把持部に取り付けられている2個の支持ローラと被把持物とを接触させると、被把持物を支持する支持点数が多いので、被把持物を把持する際の把持動作の安定性を高めることができる。なお、第一の把持部及び第二の把持部のそれぞれに2個の支持ローラが取り付けられている場合には、いずれの把持部を固定してもよい。
【0065】
上記の第一の把持部及び第二の把持部の移動の態様に加えて、以下のような移動の態様も例示することができる。例えば、第一の把持部が取り付けられた支持アームと第二の把持部が取り付けられた支持アームとをそれぞれの中心付近でX字状に交差させて、交差した部分を止め具等で回動可能なように固定し、この固定した交差部分を支点として、いわゆるハサミのような形で、第一の把持部及び第二の把持部の支持ローラが取り付けられた端部同士をそれぞれ近づけることにより被把持物を把持するようにしてもよい。このような被把持物の把持の態様であっても、把持した際の被把持物の姿勢を適切な姿勢に自然に修正し、かつ、確実に把持することができる。
【0066】
上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方が、支持アームに取り付けられていることが望ましい。
2個の支持ローラを有する第一の把持部及び1個の支持ローラを有する第二の把持部が、ともに支持アームに取り付けられた態様を説明してきたが、上記態様に限定されず、第一の把持部又は第二の把持部のいずれか一方が支持アームに取り付けられ、他方が支持アームではなく、例えば、基部等に取り付けられていてもよい。いずれの態様でも被把持物を効率的にかつ確実に把持することができる。
【0067】
第一の把持部が基部に取り付けられ、第二の把持部が支持アームに取り付けられている把持装置の実施態様を図7を参照しつつ説明する。図7は、本発明の把持装置のさらに別の実施形態の一例を示した側面図である。
図7に示す把持装置30では、L字形状の支持アーム34aが、基部36の上部に形成された支持孔36aに挿入され、スライド可能に支持されている。基部36には、連結部材38を介して第一の把持部32が取り付けられており、一方、支持アーム34aの折れ曲がった部分の先端領域には、第一の把持部32と対向するように第二の把持部34が取り付けられている。
【0068】
第一の把持部32は、2個の支持ローラ35aを有しており、第二の把持部34も、2個の支持ローラ35bを有している。こうして、把持装置30は、第一の把持部32と第二の把持部34とを有する1つの把持機構を備えている。
【0069】
把持装置30により被把持物としてのハニカム構造体130を把持するには、支持アーム34aに取り付けられた第二の把持部34を第一の把持部32に対して移動させるように、支持アーム34aをスライドさせ、ハニカム構造体130を第一の把持部32と第二の把持部34との間に把持する。
本発明の把持装置がこのような構成を有していても、把持する際にハニカム構造体130の姿勢を自然に修正しつつ、ハニカム構造体130をしっかりと把持することができる。
【0070】
本発明の把持装置は、上記第一の把持部が取り付けられた支持アームと上記第二の把持部が取り付けられた支持アームとを有し、
上記第一の把持部が取り付けられた支持アームと上記第二の把持部が取り付けられた支持アームとは互いに平行であり、
上記第一の把持部が取り付けられた支持アーム及び上記第二の把持部が取り付けられた支持アームのうち、一方の支持アームが他方の支持アームに対して移動可能であることが望ましい。
上記構成を採用することで、本発明の把持装置により被把持物を把持する際に、静止している一方の支持アームを把持動作の基準とすること(すなわち、一方の支持アームを被把持物の近くに位置させること)が可能となり、より容易にかつ安全に被把持物を把持することができる。
【0071】
支持ローラが1本の支持アームに取り付けられている場合の支持ローラの回転軸方向の長さは、特に限定されないが、被把持物が図11に示したハニカム構造体130である場合、ハニカム構造体の長手方向の長さに対して1〜50%の長さであることが望ましい。
上記長さが1%未満であると、被把持物を把持した状態が不安定となって、被把持物が脱落したり、把持の際の姿勢が変化したりするおそれが生じ、一方、50%を超えると、被把持物を載置する際に、支持ローラが取り付けられている支持アームが載置面に接触して所定の位置に載置することができないおそれが生じる。
【0072】
また、支持ローラが2本の支持アームにそれぞれ取り付けられている場合における2本の支持アームの離間距離は、特に限定されないが、被把持物が図11に示したハニカム構造体である場合、ハニカム構造体の長手方向の長さに対して15〜90%の距離であることが望ましい。
上記距離が15%未満であると、被把持物を把持した状態が不安定となって、被把持物が脱落したり、把持の際の姿勢が変化したりするおそれが生じ、一方、90%を超えると、被把持物を載置する際に、支持ローラが取り付けられている支持アームが載置面に接触して所定の位置に載置することができないおそれが生じる。
【0073】
図1(a)、1(b)を参照しつつ、第二の把持部において支持ローラが1個取り付けられた態様を説明し、また、図4(a)、4(b)を参照しつつ、第二の把持部において支持ローラが2個取り付けられた態様を説明したが、第二の把持部における支持ローラの数は、1個でもよく、2個でもよく、さらに、3個以上であってもよい。同様に、第一の把持部は、少なくとも2個の支持ローラを有していればよく、3個以上の支持ローラを有していてもよい。少なくとも2個の支持ローラを有する第一の把持部と少なくとも1個の支持ローラを有する第二の把持部とにより、被把持物を確実に把持することができることから、被把持物の形状や搬送の状況等に応じて支持ローラの数を設定することができる。
【0074】
第一の把持部及び第二の把持部にそれぞれ2個の支持ローラが取り付けられている場合、同一の把持部に取り付けられた支持ローラ間の距離は、被把持物の大きさ等に応じて変更すればよいが、被把持物が円柱形状であり、その端面の直径が、例えば、200mmである場合は、上記支持ローラ間の距離は、50〜200mmであることが望ましい。
支持ローラ間の距離が50mm未満であると、被把持物を把持した際に姿勢を修正することができない場合があり、一方、上記距離が200mmを超えると、被把持物の外形状に沿うように把持することが制限され、対象とする被把持物が限定される場合がある。
【0075】
被把持物の外形状に沿うように把持するために、第一の把持部には連結部材が備え付けられ、また、第二の把持部には切欠き部が形成されている。このような構成の他、第一の把持部及び第二の把持部を構成する支持アームの形状に応じて、それぞれ切欠き部を形成したり、連結部材を備え付けたり、切欠き部と連結部材を組み合わせて使用したりと、適宜の構成を採用することができる。また、連結部材の高さや、切欠き部の深さ及び形状等も、被把持物の大きさや形状に応じて適宜変更することができる。
【0076】
連結部材が固定されている支持アームの上面と、支持ローラの回転軸との距離は、被把持物の形状や大きさによって適宜変更することができるが、被把持物が円柱形状であり、その端面の直径が、例えば、200mmである場合は、上記支持アームの上面と支持ローラの回転軸との距離は、50〜200mmであることが望ましい。
上記の距離が50mm未満であると、被把持物の外形状に沿うように支持ローラが接触することができず、一方、200mmを超えても被把持物の姿勢を修正するという効果に関してそれほど変化せず、また、被把持物を把持するための第一の把持部と第二の把持部との間の距離を広げる必要が生じ、把持装置自体が大きくなってしまう。切欠き部を形成する際の切欠き部の深さも、上記とほぼ同様の範囲とすることができる。
【0077】
被把持物を把持する際の圧力は、特に限定されないが、例えば、被把持物の重量が10kgである場合、被把持物を把持する際の圧力は、0.3〜2MPaであることが望ましい。
把持の際の圧力が0.3MPa未満であると、把持した被把持物が搬送の途中で脱落するおそれがあり、一方、2MPaを超えると被把持物が破損するおそれが生じる。
【0078】
上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方は、伸縮可能な連結部材を有し、上記少なくとも一方の把持部の支持ローラは、その回転軸で上記連結部材に連結されていることが望ましい。
第一の把持部の支持ローラは、その回転軸で連結部材に連結されていることから、支持ローラは被把持物の外形状に沿うように接触することができる。さらに、この連結部材が衝撃吸収具(例えば、ダンパー等)のように伸縮可能であると、被把持物を把持した際の衝撃を和らげることができ、把持の際の被把持物の破損を有効に防止することができる。特に、上記連結部材が、伸縮可能であると同時に、バネ等の弾性部材を組み合わせた衝撃吸収具のように弾性伸縮可能であると、衝撃を和らげることができる。上記連結部材が、例えば衝撃吸収具である場合には、上記支持ローラの回転軸の両端にそれぞれ1個ずつ衝撃吸収具が取り付けられ、これら衝撃吸収具の上記支持ローラの回転軸が取り付けられている側と反対の側で、上記2個の衝撃吸収具が支持アームに固定されている。上記支持ローラの回転軸は、上記衝撃吸収具を介することにより上記支持アームの上面(上記衝撃吸収具が取り付けられている面)から所定の距離をあけて支持される。また、第一の把持部の支持ローラ及び第二の把持部の支持ローラの両方が、それらの回転軸を介して連結部材に連結されていてもよい。いずれの態様であっても、被把持物を把持する際の衝撃を和らげることができる。上記衝撃吸収具の様式は、オイル式、バネ式、空圧式、又は、これらの組み合わせ等、任意の様式を採用することができる。
【0079】
本発明の把持装置は、連結部材が所定距離短縮した際に、上記回転軸又は上記支持ローラと接触して上記支持ローラの回転を停止させる回転停止具を備えていることが望ましい。
伸縮可能な連結部材を有する把持部により被把持物を把持する際には、上記連結部材は、支持ローラの回転軸と支持アームの上面との間の距離が小さくなる方向(近づく方向)に短縮し、把持の際の衝撃を和らげながら被把持物を把持する。このとき、本発明の把持装置に回転停止具が備え付けられていると、上記連結部材が所定距離短縮した時点で上記回転軸又は上記支持ローラと上記回転停止具とが接触し、支持ローラの回転を停止させることができるので、被把持物を把持して搬送している間に被把持物が回転することを防止することができ、搬送途中での脱落や、把持した後に被把持物の位置が回転によってずれること等を有効に防止することができる。回転停止具の構成としては、特に限定されず、例えば、弾性材料で構成されたブロック片や、表面の摩擦抵抗を大きくした樹脂製のブロック片等が挙げられる。
なお、連結部材が短縮することのできる距離としては、被把持物の重量や被把持物を把持する際の圧力等を考慮して設定すればよく、例えば、5〜50mmという範囲を例示することができる。
【0080】
上記支持ローラの表面には弾性材料からなる弾性材層が形成されていることが望ましい。
このような弾性材層が支持ローラの表面に形成されていると、支持ローラが被把持物と接触する際の衝撃を吸収して被把持物の破損を防止することができるとともに、被把持物の表面を傷つけることなく被把持物を把持することができる。弾性材料としては、例えば、合成ゴム、天然ゴム、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、プロピレン樹脂等が挙げられる。
【0081】
上記被把持物は柱状形状であることが望ましい。
被把持物の形状としては特に限定されず、例えば、柱状形状、立方体形状、球状形状、板状形状、異形形状等の任意の形状の被把持物が挙げられ、いずれの形状の被把持物であっても確実に把持することができる。
上記形状のうち、特に、被把持物は、柱状形状が望ましい。柱状形状の被把持物としては、例えば、円柱形状、角柱形状、楕円柱形状、長円柱形状、略三角柱形状等が挙げられ、円柱形状、楕円柱形状、長円柱形状がより望ましい。このような形状では、曲面部分が多いため、支持ローラの回転によって被把持物の把持の際の姿勢が自然に修正されやすいためである。また、被把持物の形状としては、図11に示すハニカム構造体のような円柱形状が最も望ましい。被把持物が円柱形状であると、支持ローラの回転によって被把持物の把持の際の姿勢が自然に修正されるという効果を最も有効に発揮することができるからである。
【0082】
把持装置10は、第一の把持部12と第二の把持部14とから構成されている把持機構11を1つ備えており、この1つの把持機構11により被把持物を1個把持することができる。また、把持装置20も、第一の把持部22と第二の把持部24とで構成されている把持機構21を1つ備えており、被把持物を1個把持することができる。本発明の把持装置は、少なくとも1つの把持機構を備えていればよく、その数は限定されない。従って、本発明の把持装置が複数の把持機構を備えている場合は、本発明の把持装置は、把持機構の数と同数の被把持物を把持することができる。
【0083】
以下、図9及び図10を参照しつつ、把持機構を複数備えた本発明の把持装置の実施形態のバリエーションを説明する。
図9は、複数の把持機構を備える本発明の把持装置の実施形態の一例を模式的に示した側面図であり、図10は、複数の把持機構を備える本発明の把持装置の実施形態の別の一例を模式的に示した側面図である。
【0084】
図9に示す把持装置40は、図4(a)に示す把持機構と同様の構成を有する把持機構を基部46から遠ざかる方向に3つ備えている。
把持装置40において、第一の把持部42は、図4(a)に示したような互いに平行に離間して配設された2本の支持アーム42aに取り付けられており、第二の把持部44は、1本の支持アーム44aに取り付けられている。支持アーム42aと支持アーム44aとは基部46に固定されて支持されており、支持アーム44aに取り付けられた第二の把持部44は、基部46内部の駆動機構により第一の把持部42に対して移動可能である。なお、図9が側面図であることから、第一の把持部42が取り付けられている2本の支持アーム42aのうち1本は省略してある。
【0085】
第一の把持部42が取り付けられている支持アーム42aには、連結部材48を介して、2個の支持ローラ45aが、互いに平行な回転軸43aで連結部材48に連結されている。一方、第二の把持部44が取り付けられている支持アーム44aには、2個の支持ローラ45bが、支持ローラ45aの回転軸43aと平行な回転軸43bを有し、かつ、支持ローラ45aと対向するように取り付けられている。
【0086】
図9に示す実施形態では、上記のように支持アーム42aに取り付けられた2個の支持ローラ45aを有する第一の把持部と、支持アーム44aの端部に取り付けられた2個の支持ローラ45bを有する第二の把持部とを一組として、1つの把持機構が構成されている。さらに、この1つの把持機構に隣接するように、支持アーム42a及び支持アーム44aにはそれぞれ4個の支持ローラが取り付けられており、上記と同様にして、隣接した支持ローラを有する第一の把持部及び第二の把持部によって2つの把持機構が構成されている。従って、把持装置40は、把持機構を合計3つ備えており、これら3つの把持機構によって3個の被把持物を一度に把持することができる。
なお、把持機構の数は、特に限定されず、目的とする処理数に応じて適宜設定することができる。各構成部材の詳細については、図1(a)、1(b)、図2、3、図4(a)、4(b)、図5及び図6を参照して説明した把持装置と同様の構成を好適に採用することができる。
【0087】
把持装置40が3個の被把持物を一度に把持する場合は、ある程度整列するように載置された3個の被把持物が、3つの把持機構とそれぞれ対応する位置関係となるように把持装置40を移動させる。そして、基部46内部の駆動機構を駆動させて第二の把持部44を第一の把持部42に対して移動させることにより、3つの把持機構で3個の被把持物を一度に把持することができる。また、3個の被把持物をそれぞれ支持ローラを介して把持することで把持の際の姿勢を自然に修正することができるので、把持前に3個の被把持物の姿勢を正確に整列させる必要がなく、スムーズにかつ効率的に被把持物を把持することができる。
【0088】
次に、図10に示す本発明の把持装置の実施形態について説明する。
把持装置50は、図4(a)に示す把持機構と同様の把持機構を、第一の把持部52を挟んで対称的に2つ備えている。
把持装置50は、第一の把持部52が取り付けられた支持アーム52aと、2つの第二の把持部54が取り付けられた支持アーム54a、54bと、基部56とで構成されている。支持アーム54a、54bは、支持アーム52aを挟むようにして、かつ、支持アーム52aと平行に対向するように支持アーム52aの両側に配設されている。支持アーム52aと支持アーム54a、54bとは、基部56内部の駆動機構と連結されており、それぞれ別個に移動可能である。
【0089】
支持アーム52aの上面には、2個の支持ローラ55aが、それらの回転軸53aで連結部材58に連結されており、また、支持アーム54aには2個の支持ローラ57aが、支持ローラ55aと平行な回転軸59aを有し、かつ、支持ローラ55aと対向するように取り付けられている。従って、支持アーム52aに取り付けられた第一の把持部52と、支持アーム54aに取り付けられた第二の把持部54とが有する上記4個の支持ローラ55a、57aを合わせて、1つの把持機構が構成されている。
【0090】
一方、支持アーム52aの下面にも、2個の支持ローラ55bが、それらの回転軸53bで連結部材58に連結されており、また、支持アーム54bにも2個の支持ローラ57bが、支持ローラ55bと平行な回転軸59bを有し、かつ、支持ローラ55bと対向するように取り付けられている。従って、支持アーム52aの下面側においても、支持アーム52aに取り付けられた第一の把持部52と、支持アーム54bに取り付けられた第二の把持部54とが有する上記4個の支持ローラ55b、57bを合わせて、1つの把持機構が構成されている。
【0091】
このように、図10に示した把持装置50は、合計2つの把持機構を備えている。また、第一の把持部52と2つの第二の把持部54とは、別個に移動可能であるので、把持装置50によって2個の被把持物を一度に把持することができる。
【0092】
把持装置50が2個の被把持物を把持する際の動作順序の一例として、ある程度整列させた2個の被把持物が2つの把持機構のそれぞれの間に位置するように把持装置50を移動させる。次に、第一の把持部52を固定させておき、2つの第二の把持部54を第一の把持部52に対して同時に又は別個に移動させるという動作順序が挙げられる。
【0093】
また、他の動作順序の一例として、第二の把持部54の一方を固定させておき、第一の把持部52を固定された第二の把持部54に対して移動させて1個の被把持物を把持し、さらに、他方の第二の把持部54を第一の把持部52に対して移動させてもう1つの被把持物を把持するという動作順序が挙げられる。
【0094】
さらに別の動作順序の一例としては、第一の把持部52及び/又は第二の把持部54の一方を移動させて1個の被把持物を把持した後、この1個の被把持物を把持した第一の把持部52と第二の把持部54の一方とを一組とする1つの把持機構を、他方の第二の把持部54に対して移動させてもう1個の被把持物を把持するという動作順序が挙げられる。
上記いずれの動作順序であっても効率よくかつ確実に2個の被把持物を把持することができる。また、他の動作順序の態様も本発明に含まれる。
【0095】
本発明の把持装置は、把持装置全体を三次元方向で自由に移動させることができるように、例えば、移動用ロボットアーム等に連結されていてもよい。本発明の把持装置が移動用ロボットアーム等に連結されていると、被把持物を把持する前後にわたって移動用ロボットアームにより把持装置全体を自由に移動させることができ、被把持物の把持、移動、載置を連続的かつ効率的に行うことができる。図1(a)、1(b)に示す把持装置10を参照して説明すると、例えば、基部16の背面で(把持機構11と反対側の面)移動用ロボットアーム等に連結されていてもよい。こうすることで、把持装置10によりハニカム構造体130を把持した後に、使用者が把持装置10全体を別の位置に移動させることができる。さらに、基部16と上記移動用ロボットアームとの間に回転機構等を配設することで、把持した後のハニカム構造体130の姿勢を90°回転させることができ(例えば、ハニカム構造体130の長手方向を鉛直方向から水平方向に回転させる等)、次いで、その姿勢を回転させたハニカム構造体130を所定の位置まで移動させたりすることもできる。
【0096】
本発明の把持装置は、セラミック原料を成形することで、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造工程における搬送工程で使用される把持装置であって、上記搬送工程が、ハニカム成形体搬送工程、ハニカム焼成体搬送工程、ハニカム構造体搬送工程のうちの少なくとも1つの搬送工程であることが望ましい。
本発明の把持装置は、上記のように、被把持物の形状を問わず被把持物を確実に把持することができるので、幅広い用途に適用させることができるが、ハニカム構造体の製造工程で作製されるハニカム成形体、ハニカム焼成体及びハニカム構造体(以下、ハニカム成形体、ハニカム焼成体及びハニカム構造体を総称してハニカム製品ともいう)を把持する対象とすることが望ましい。ハニカム製品は、脆性材料で構成されており、把持や搬送に困難が伴うことが多い。例えば、搬送途中にハニカム製品が脱落して破損したり、把持した際の姿勢が傾いているために載置するときに破損したりするおそれがある。本発明の把持装置は、把持の際の被把持物の姿勢を修正することができ、確実に被把持物を把持することができるので、上記のようなハニカム製品を好適に把持の対象とすることができる。
なお、各搬送工程を含むハニカム構造体の製造方法については、以下に本発明のハニカム構造体の製造方法と合わせて説明する。
【0097】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、セラミック原料を成形することで、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、上記ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
回転軸が平行となる少なくとも2個の支持ローラを有する第一の把持部と、上記第一の把持部の支持ローラに対向する少なくとも1個の支持ローラを有する第二の把持部と、上記第一の把持部及び上記第二の把持部を有する少なくとも1つの把持機構とを備え、上記第一の把持部の支持ローラの回転軸と上記第二の把持部の支持ローラの回転軸とは平行になっており、上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方を移動させることにより、上記支持ローラを介して上記第一の把持部と上記第二の把持部との間に被把持物を把持する把持装置を使用して、
上記ハニカム成形体を焼成工程に搬送するハニカム成形体搬送工程、上記ハニカム焼成体をハニカム構造体形成工程に搬送するハニカム焼成体搬送工程、及び、上記ハニカム構造体を検査工程に搬送するハニカム構造体搬送工程のうちの少なくとも1つの搬送工程を行うことを特徴とする。
【0098】
図11は、ハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図12(a)は、上記ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、図12(b)は、そのX−X線断面図である。
【0099】
ハニカム構造体130では、図12(a)に示すようなハニカム焼成体140がシール材層(接着剤層)131を介して複数個結束されたセラミックブロック133を構成し、さらに、このセラミックブロック133の外周にシール材層(コート層)132が形成されている。
また、ハニカム焼成体140は、図12(a)に示すように、長手方向(図12(a)に示す両矢印Hの方向)に多数のセル141が並設され、セル141同士を隔てるセル壁143がフィルタとして機能するようになっている。
【0100】
すなわち、ハニカム焼成体140に形成されたセル141は、図12(b)に示すように、排ガスの入口側又は出口側の端部のいずれかが封口材層142により目封じされる。一のセル141に流入した排ガスは、必ずセル141を隔てるセル壁143を通過した後、他のセル141から流出するようになっており、排ガスがこのセル壁143を通過する際、パティキュレートがセル壁143部分で捕捉され、排ガスが浄化される。
【0101】
なお、本明細書において、ハニカム成形体、ハニカム焼成体及びハニカム構造体のいずれの形態においても、それぞれの外形状をなす面のうち、セルが露出している面を端面といい、端面以外の面を側面といい、また、セルが形成されている方向を長手方向(図11、12(a)に示す両矢印G及び両矢印Hの方向)という。
【0102】
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法について、工程順に説明する。
ここでは、構成材料の主成分が炭化ケイ素のハニカム構造体を製造する場合を例に、セラミック原料である炭化ケイ素粉末を使用した場合のハニカム構造体の製造方法について説明する。
勿論、ハニカム構造体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に限定されるわけではなく、他のセラミック原料として、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック等が挙げられる。
これらのなかでは、非酸化物セラミックが好ましく、炭化ケイ素が特に好ましい。耐熱性、機械強度、熱伝導率等に優れるからである。なお、上述したセラミックに金属ケイ素を配合したケイ素含有セラミック、ケイ素やケイ酸塩化合物で結合されたセラミック等のセラミック原料も構成材料として挙げられ、これらのなかでは、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたもの(ケイ素含有炭化ケイ素)が望ましい。
【0103】
まず、セラミック原料として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末等の無機粉末と有機バインダとを乾式混合して混合粉末を調製するとともに、液状の可塑剤と潤滑剤と水とを混合して混合液体を調製し、続いて、上記混合粉末と上記混合液体とを湿式混合機を用いて混合することにより、成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0104】
上記炭化ケイ素粉末の粒径は特に限定されないが、後の焼成工程で収縮の少ないものが好ましく、例えば、0.3〜50μmの平均粒径を有する粉末100重量部と0.1〜1.0μmの平均粒径を有する粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが好ましい。
ハニカム焼成体の気孔径等を調節するためには、焼成温度を調節する必要があるが、無機粉末の粒径を調節することにより、気孔径を調節することができる。
【0105】
上記有機バインダとしては特に限定されず、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらのなかでは、メチルセルロースが望ましい。
上記バインダの配合量は、通常、無機粉末100重量部に対して、1〜10重量部が望ましい。
【0106】
上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、グリセリン等が挙げられる。
また、上記潤滑剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物等が挙げられる。
潤滑剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等が挙げられる。
なお、可塑剤、潤滑剤は、場合によっては、混合原料粉末に含まれていなくてもよい。
【0107】
また、上記湿潤混合物を調製する際には、分散媒液を使用してもよく、上記分散媒液としては、例えば、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられる。
さらに、上記湿潤混合物中には、成形助剤が添加されていてもよい。
上記成形助剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられる。
【0108】
さらに、上記湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
上記バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等を挙げることができる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0109】
また、ここで調製した、炭化ケイ素粉末を用いた湿潤混合物は、その温度が28℃以下であることが望ましい。温度が高すぎると、有機バインダがゲル化してしまうことがあるからである。
また、上記湿潤混合物中の有機分の割合は10重量%以下であることが望ましく、水分の含有量は8.0〜20.0重量%であることが望ましい。
【0110】
上記湿潤混合物は、調製後搬送され、成形機に投入されることとなる。
上記搬送装置で搬送された湿潤混合物を押出成形機に投入した後は、押出成形により所定の形状のハニカム成形体とする。
次に、上記ハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させ、乾燥させたハニカム成形体とする。
【0111】
ここで、切断装置を用いて作製したハニカム成形体の両端を切断する切断工程を行い、ハニカム成形体を所定の長さに切断する。
【0112】
次いで、必要に応じて、入口側セル群の出口側の端部、及び、出口側セル群の入口側の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封じする。このセルの目封じの際には、ハニカム成形体の端面(すなわち切断工程後の切断面)に目封じ用のマスクを当てて、目封じの必要なセルにのみ封止材ペーストを充填する。
【0113】
上記封止材ペーストとしては特に限定されないが、後工程を経て製造される封止材の気孔率が30〜75%となるものが望ましく、例えば、上記湿潤混合物と同様のものを用いることができる。
【0114】
上記封止材ペーストの充填は、必要に応じて行えばよく、上記封止材ペーストを充填した場合には、例えば、後工程を経て得られたハニカム構造体をハニカムフィルタとして好適に使用することができ、上記封止材ペーストを充填しなかった場合には、例えば、後工程を経て得られたハニカム構造体を触媒担持体として好適に使用することができる。
【0115】
次に、上記封止材ペーストが充填されたハニカム成形体を脱脂するために、ハニカム成形体を脱脂炉投入装置により脱脂炉に搬送する。
上記脱脂炉投入装置によりハニカム成形体を脱脂炉に投入し、所定の条件で脱脂(例えば、200〜500℃)する。
【0116】
次いで、脱脂処理を施したハニカム成形体を焼成するために焼成炉に搬送する。
ここで、本発明のハニカム構造体の製造方法では、回転軸が平行となる少なくとも2個の支持ローラを有する第一の把持部と、上記第一の把持部の支持ローラに対向する少なくとも1個の支持ローラを有する第二の把持部と、上記第一の把持部及び上記第二の把持部を有する少なくとも1つの把持機構とを備え、上記第一の把持部の支持ローラの回転軸と上記第二の把持部の支持ローラの回転軸とは平行になっており、上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方を移動させることにより、上記支持ローラを介して上記第一の把持部と上記第二の把持部との間に被把持物を把持する把持装置を使用して、上記ハニカム成形体を焼成工程に搬送するハニカム成形体搬送工程を行う。このような把持装置としては、既に説明した本発明の把持装置を好適に使用することができる。
【0117】
本発明の把持装置は被把持物の形状を問わないので、図12(a)に示した角柱形状のハニカム成形体であっても効率的かつ確実にハニカム成形体を把持することができる。従って、本発明のハニカム構造体の製造方法において、ハニカム成形体搬送工程は、脱脂後のハニカム成形体を焼成工程に搬送する搬送工程に限定されず、セラミック原料を押出成形してハニカム成形体を得た以降の搬送工程であってハニカム成形体を焼成するまでに必要とされる搬送工程の一部又は全部を含む。このような角柱形状のハニカム成形体であっても本発明の把持装置により効率的かつ確実に把持して搬送することができるので、把持及び搬送の際の破損を防止しつつ、搬送効率を有効に向上させることができる。
【0118】
上記把持装置を使用してハニカム成形体搬送工程を行う態様として、例えば、脱脂後のハニカム成形体を搬送する搬送工程としては、まず脱脂炉の出口付近に図4(a)に示した把持装置を配置し、脱脂炉から搬出されたハニカム成形体を上記把持装置により把持して、把持したハニカム成形体を焼成炉の入り口付近へと搬送するという手順等が挙げられる。上記把持装置でハニカム成形体を把持する際には、ハニカム成形体の側面に対して支持ローラが接触するように把持する。従って、上記把持装置によってハニカム成形体を把持した際には、ハニカム成形体の側面4面全てに支持ローラが接触し、4個の支持ローラを介してハニカム成形体を把持することになる。ハニカム成形体搬送工程には、ここに例示した搬送工程以外の搬送工程も含まれ、いずれの搬送工程であっても本発明の把持装置を使用して好適に行うことができる。
【0119】
本発明の把持装置でハニカム製品を把持して搬送するには、図4(a)に示す把持装置20の基部26に、例えば、周知のロボットアーム機構、クレーン機構等を取り付ける等して把持搬送装置として使用することができる。
【0120】
そして、搬送装置を使用して焼成炉にハニカム成形体を搬送して焼成し、得られるハニカム焼成体を冷却することにより、全体が一の焼成体から構成され、複数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設され、かつ、上記セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼成体(図12(a)、12(b)参照)を製造することができる。
【0121】
次に、得られたハニカム焼成体を、ハニカム焼成体を構成単位とするハニカム構造体を形成するハニカム構造体形成工程へと搬送する。ここでのハニカム焼成体搬送工程を本発明の把持装置を使用して行う。ハニカム焼成体は角柱形状であるが、上述のハニカム成形体の場合と同様に上記把持装置によってしっかりと把持することができる。
【0122】
ハニカム焼成体の側面に、シール材層(接着剤層)となるシール材ペーストを均一な厚さで塗布してシール材ペースト層を形成し、このシール材ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返し、所定の大きさのハニカム焼成体の集合体を作製する。
また、セル封止ハニカム成形体の集合体を作製する際には、予めセル封止ハニカム成形体同士をスペーサを介して組み上げておき、その後、セル封止ハニカム焼成体同士の間隙にシール材ペーストを注入することにより、セル封止ハニカム焼成体の集合体を作製してもよい。
【0123】
上記シール材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機繊維及び/又は無機粒子とからなるもの等が挙げられる。
上記無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機バインダのなかでは、シリカゾルが望ましい。
【0124】
上記有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0125】
上記無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバー等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機繊維のなかでは、アルミナファイバが望ましい。
【0126】
上記無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等を挙げることができ、具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等からなる無機粉末を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化ケイ素が望ましい。
【0127】
さらに、上記シール材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
上記バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等を挙げることができる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0128】
次に、このハニカム焼成体の集合体を加熱してシール材ペースト層を乾燥、固化させてシール材層(接着剤層)とする。
次に、ダイヤモンドカッター等を用い、ハニカム焼成体がシール材層(接着剤層)を介して複数個接着されたハニカム焼成体の集合体に切削加工を施し、円柱形状のセラミックブロックを作製する。
【0129】
本発明のハニカム構造体の製造方法におけるハニカム焼成体の搬送工程には、焼成後のハニカム焼成体を搬送する搬送工程以外に、上記セラミックブロックを搬送する工程も含まれる。すなわち、ハニカム焼成体搬送工程とは、焼成炉から搬出されたハニカム焼成体を搬送する搬送工程からハニカム焼成体の集合体を作製するまでに必要とされる搬送工程の一部又は全部をいう。
【0130】
そして、セラミックブロックの外周に上記シール材ペーストを用いてシール材層(コート層)を形成することで、ハニカム焼成体がシール材層(接着剤層)を介して複数個接着された円柱形状のセラミックブロックの外周部にシール材層(コート層)が設けられたハニカム構造体とすることができる。
【0131】
その後、必要に応じて、ハニカム構造体に触媒を担持させる。上記触媒の担持は集合体を作製する前のハニカム焼成体に行ってもよい。
触媒を担持させる場合には、ハニカム構造体の表面に高い比表面積のアルミナ膜を形成し、このアルミナ膜の表面に助触媒、及び、白金等の触媒を付与することが望ましい。
【0132】
上記ハニカム構造体の表面にアルミナ膜を形成する方法としては、例えば、Al(NO等のアルミニウムを含有する金属化合物の溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法、アルミナ粉末を含有する溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
上記アルミナ膜に助触媒を付与する方法としては、例えば、Ce(NO等の希土類元素等を含有する金属化合物の溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
上記アルミナ膜に触媒を付与する方法としては、例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液([Pt(NH(NO]HNO、白金濃度4.53重量%)等をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法等を挙げることができる。
また、予め、アルミナ粒子に触媒を付与して、触媒が付与されたアルミナ粉末を含有する溶液をハニカム構造体に含浸させて加熱する方法で触媒を付与してもよい。
【0133】
また、ここまで説明したハニカム構造体の製造方法により製造するハニカム構造体は、複数のハニカム焼成体がシール材層(接着剤層)を介して結束された構成を有する集合型ハニカム構造体であるが、本発明の製造方法により製造するハニカム構造体は、柱形状のセラミックブロックが1つのハニカム焼成体から構成されている一体型ハニカム構造体であってもよい。ここで一体型ハニカム構造体の主な構成材料は、コージェライトやチタン酸アルミニウムであることが望ましい。
【0134】
このような一体型ハニカム構造体を製造する場合は、まず、押出成形により成形するハニカム成形体の大きさが、集合型ハニカム構造体を製造する場合に比べて大きい以外は、集合型ハニカム構造体を製造する場合と同様の方法を用いて、ハニカム成形体を作製する。
【0135】
次に、集合型ハニカム構造体の製造と同様に、上記ハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させる。
次いで、乾燥させたハニカム成形体の両端部を切断する切断工程を行う。
【0136】
次に、入口側セル群の出口側の端部、及び、出口側セル群の入口側の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封じする。
その後、集合型ハニカム構造体の製造と同様に、脱脂、焼成を行うことによりセラミックブロックを製造し、必要に応じて、シール材層(コート層)の形成を行うことにより、一体型ハニカム構造体を製造することができる。また、上記一体型ハニカム構造体にも、上述した方法で触媒を担持させてもよい。
【0137】
このようにして製造した一体型ハニカム構造体又は集合型ハニカム構造体について、形状検査や外観検査等の所定の検査を行うために、上記ハニカム構造体を検査工程へと搬送する。本発明のハニカム構造体の製造方法では、このハニカム構造体搬送工程も本発明の把持装置を使用して行う。ハニカム構造体を把持して搬送する動作順序としては、本発明の把持装置の説明で記載した動作順序を好適に採用することができる。
【0138】
これまで、本発明のハニカム構造体の製造方法の各工程では、本発明の把持装置を使用して、ハニカム成形体搬送工程、ハニカム焼成体搬送工程、及び、ハニカム構造体搬送工程の全ての工程を行うと説明した。しかし、本製造方法では、本発明の把持装置を使用して全ての搬送工程を行う必要はなく、ハニカム成形体搬送工程、ハニカム焼成体搬送工程、及び、ハニカム構造体搬送工程のうちの少なくとも1つの搬送工程を行えばよい。上記把持装置を使用していずれの搬送工程を行っても、搬送途中でハニカム構造体が脱落したり、把持の際にハニカム構造体の姿勢が傾いて、ハニカム構造体を載置するときに破損したりするのを有効に防止することができる。
【0139】
上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方が、支持アームに取り付けられていることが望ましい。
この場合には、煩雑な手順や高価な機器等を使用せずとも、被把持物であるハニカム構造体を把持する動作の自由度を上げることができるので、本発明の把持装置によって被把持物を把持する際の利便性を向上させることができる。
【0140】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記把持装置は、上記第一の把持部が取り付けられた支持アームと上記第二の把持部が取り付けられた支持アームとを有し、
上記第一の把持部が取り付けられた支持アームと上記第二の把持部が取り付けられた支持アームとは互いに平行であり、
上記第一の把持部が取り付けられた支持アーム及び上記第二の把持部が取り付けられた支持アームのうち、一方の支持アームが他方の支持アームに対して移動可能であることが望ましい。
これにより、上記把持装置によりハニカム製品を把持する際に、静止している一方の支持アームを基準として把持動作を行うこと(すなわち、一方の支持アームをハニカム製品の近くに位置させること)が可能となり、より容易にかつ安全にハニカム製品を把持することができる。
【0141】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記第一の把持部及び/又は上記第二の把持部は、同数の支持ローラを備え、互いに平行に離間して配設された複数の支持アームから構成されていることが望ましい。
把持する対象であるハニカム製品の形状に応じて、支持アームによる支持点数を変化させることができ、種々の形状のハニカム製品に適用させることができる。
【0142】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記第一の把持部及び上記第二の把持部の少なくとも一方は、伸縮可能な連結部材を有し、上記少なくとも一方の把持部の支持ローラは、その回転軸で上記連結部材に連結されていることが望ましい。
把持の際の衝撃を抑制することができるので、脆性材料で構成されているハニカム製品であっても、破損を防止しつつ効率的に把持して搬送することができる。
【0143】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記搬送装置は、上記連結部材が所定距離短縮した際に、上記回転軸又は上記支持ローラと接触して上記支持ローラの回転を停止させる回転停止具を備えていることが望ましい。
搬送途中でハニカム製品の姿勢が変化することを防止することができ、搬送先において適切な位置に容易に載置することができるからである。特に、ハニカム製品が円柱形状である場合において、ハニカム製品がその長手方向軸を中心として回転してしまうことを有効に防止することができ、載置後の位置や姿勢としてそのようなハニカム製品の方向が問題となる場合であっても適切な姿勢を保ちながら搬送して載置することができる。
【0144】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、上記支持ローラの表面には、弾性材料からなる弾性材層が形成されていることが望ましい。
脆性材料で構成されているハニカム製品であっても、把持の際の衝撃による破損を防止することができるとともに、効率よくかつ簡便に把持して搬送することができる。
【0145】
上記搬送工程は、上記ハニカム構造体搬送工程であり、上記ハニカム構造体が円柱形状、楕円柱形状又は長円柱形状であることが望ましい。
本製造方法で製造されるハニカム構造体は最終製品であって、中間品と異なることから取扱いに慎重を要したり、ハニカム構造体の形状が図11に示すような円柱形状、楕円柱形状又は長円柱形状であるので、把持することに困難が伴ったりするが、このようなハニカム構造体であっても効率的かつ確実に把持することができ、好適に把持の対象とすることができる。
【0146】
また、上記把持装置を使用して把持するハニカム製品の数は、1個に限定されず、複数個のハニカム製品を一度に把持して各搬送工程を行ってもよい。この場合には、本発明の把持装置のバリエーションとして図9及び図10を参照して説明したような把持装置を好適に使用することができる。
【0147】
以上、説明した本発明のハニカム構造体の製造方法では、作業効率よくハニカム構造体を製造することができる。
また、上述した方法によりハニカム構造体を製造する場合、全製造工程のうちの任意の搬送工程において、本発明の把持装置を用いて各工程を経たハニカム製品を搬送するので、取扱いに慎重を要していたハニカム製品を確実かつ容易に搬送することができる。また、各搬送工程を本発明の把持装置を使用して行うことによって一連の作業工程の連携をスムーズに行うことができるので、さらなる製造ラインの効率化を図ることができる。従って、本発明のハニカム構造体の製造方法では、その製造工程全体の効率をも向上させることができる。
【0148】
またここでは、ハニカム構造体として、排ガス中のパティキュレートを補集する目的でも用いるハニカムフィルタを中心に説明したが、上記ハニカム構造体は、排ガスを浄化する触媒担体(ハニカム触媒)としても好適に使用することができる。
【実施例】
【0149】
以下に実施例を掲げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0150】
本発明のハニカム構造体の製造方法を用いてハニカム構造体を作製し、作製したハニカム構造体を、本発明の把持装置を使用して搬送した場合と、本発明の把持装置と同様の構成であるが支持ローラが取り付けられていない把持具を使用して搬送した場合とで、搬送後のハニカム構造体の外観を比較して、ハニカム構造体を把持して搬送する際の破損の状況を評価した。
【0151】
(実施例1)
平均粒径10μmのα型炭化ケイ素粉末250kgと、平均粒径0.5μmのα型炭化ケイ素粉末100kgと、有機バインダ(メチルセルロース)と20kgとを混合し、混合粉末を調製した。
次に、別途、潤滑剤(日本油脂社製 ユニルーブ)12kgと、可塑剤(グリセリン)5kgと、水65kgとを混合して液体混合物を調製し、この液体混合物と混合粉末とを湿式混合機を用いて混合し、湿潤混合物を調製した。
【0152】
次に、搬送装置を用いて、この湿潤混合物を押出成形機に搬送し、押出成形機の原料投入口に投入した。
そして、押出成形により、図12(a)に示した形状であってセルを封止していない状態の成形体を作製した。
【0153】
次に、マイクロ波乾燥機等を用いて上記生成形体を乾燥させた後、上記湿潤混合物と同様の組成の封止材ペーストを所定のセルに充填した。
次いで、再び乾燥機を用いて乾燥させた後、400℃で脱脂し、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間で焼成を行うことにより、気孔率が40%、平均気孔径が12.5μm、その大きさが34.3mm×34.3mm×150mm、セルの数(セル密度)が46.5個/cm、セル壁の厚さが0.20mmの炭化ケイ素焼結体からなるハニカム焼成体を製造した。
【0154】
平均繊維長20μmのアルミナファイバ30重量%、平均粒径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性のシール材ペーストを用いてハニカム焼成体を多数接着させ、さらに、120℃で乾燥させ、続いて、ダイヤモンドカッターを用いて切断することにより、シール材層(接着剤層)の厚さ1.0mmの円柱状のセラミックブロックを作製した。
【0155】
次に、無機繊維としてシリカ−アルミナファイバ(平均繊維長100μm、平均繊維径10μm)23.3重量%、無機粒子として平均粒径0.3μmの炭化ケイ素粉末30.2重量%、無機バインダとしてシリカゾル(ゾル中のSiOの含有率:30重量%)7重量%、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%及び水39重量%を混合、混練してシール材ペーストを調製した。
【0156】
次に、上記シール材ペーストを用いて、ハニカムブロックの外周部に厚さ0.2mmのシール材ペースト層を形成した。そして、このシール材ペースト層を120℃で乾燥して、外周にシール材層(コート層)が形成された直径228mm×長さ300mmの円柱状のハニカム構造体を作製した。
【0157】
このようにして作製したハニカム構造体を、その端面が下面となるように水平面から15°傾けた載置台に載置した。次いで、図4(a)、4(b)に示す把持装置20において基部26に搬送用ロボットアームを取り付けた把持装置を、支持アーム22a及び支持アーム24aのそれぞれの長手方向が水平となるようにハニカム構造体に接近させた。ハニカム構造体が把持機構21の間に位置するように把持装置を移動させ、支持アーム22aに取り付けられた第一の把持部22をハニカム構造体の側面に接触させた。この後、支持アーム24aを支持アーム22aに対して移動させて、第一の把持部22と第二の把持部24との間にハニカム構造体を把持し、次いで、ハニカム構造体を持ち上げて、上面が水平である試験台まで搬送して載置した。
【0158】
把持装置の仕様としては、支持アーム22a上の支持ローラ25a間の距離が100mm、支持アーム24a上の支持ローラ25b間の距離が100mm、全ての支持ローラの直径は30mmであり、全ての支持ローラの表面にはウレタンからなる弾性材層を形成していた。また、ハニカム構造体を把持する際の圧力は0.5MPaであった。
【0159】
(比較例1)
把持装置20として、第一の把持部及び第二の把持部が取り付けられていない支持アーム22aで構成された把持装置を使用して、ハニカム構造体を把持して搬送した以外は、実施例1と同様にハニカム構造体を搬送した。
【0160】
(ハニカム構造体の搬送等に際しての破損の状況の評価)
実施例1及び比較例1で作製し、上記手順により試験台に載置した10個のハニカム構造体について、それらの外観の破損の状況を調べた。
結果を表1に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
表1から明らかなように、実施例1に係るハニカム構造体の外観に破損が生じておらず、ハニカム構造体の把持及び搬送を良好に行うことができた。一方、比較例1では、搬送後のハニカム構造体の外観において、10個のハニカム構造体のうち3個のハニカム構造体において欠けやクラック等の破損が生じていた。
【0163】
このように、本発明のハニカム構造体の製造方法におけるハニカム構造体搬送工程を本発明の把持装置を使用して行うことにより、ハニカム構造体を効率的に搬送することができ、さらに、ハニカム構造体の製造工程全体の効率化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1(a)は、本発明の把持装置の実施形態の一例を示した側面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した本発明の把持装置の実施形態の正面図である。
【図2】図2は、図1(a)に示した第二の把持部を拡大して示した拡大側面図である。
【図3】図3は、図1(a)に示した第一の把持部を拡大して示した拡大上面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の把持装置の別の実施形態の一例を示した側面図であり、図4(b)は、図4(a)に示した本発明の把持装置の別の実施形態の正面図である。
【図5】図5は、図4(a)に示した第二の把持部を拡大して示した拡大側面図である。
【図6】図6は、図4(a)に示した第一の把持部を拡大して示した拡大上面図である。
【図7】図7は、本発明の把持装置のさらに別の実施形態の一例を示した側面図である。
【図8】図8(a)は、ハニカム構造体を把持した状態にある把持機構を模式的に示す斜視図であり、図8(b)は、ハニカム構造体を把持した状態にある把持機構の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【図9】図9は、複数の把持機構を備える本発明の把持装置の実施形態の一例を模式的に示した側面図である。
【図10】図10は、複数の把持機構を備える本発明の把持装置の実施形態の別の一例を模式的に示した側面図である。
【図11】図11は、ハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図12】図12(a)は、上記ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、図12(b)は、そのX−X線断面図である。
【符号の説明】
【0165】
10、20、30、40、50 把持装置
11、21、31 把持機構
12、22、32、42、52 第一の把持部
12a、14a、22a、24a、34a、42a、44a、52a、54a、54b 支持アーム
13a、13b、23a、23b、33a、33b43a、43b、53a、53b、59a、59b 回転軸
14、24、34、44、54 第二の把持部
15a、15b、25a、25b、35a、35b、45a、45b、55a、55b、57a、57b 支持ローラ
16、26、36、46、56 基部
17、27 切欠き部
18、28、38、48、58 連結部材
36a 支持孔
130 ハニカム構造体
140a、240a 折り曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が平行となる少なくとも2個の支持ローラを有する第一の把持部と、
前記第一の把持部の支持ローラに対向する少なくとも1個の支持ローラを有する第二の把持部と、
前記第一の把持部及び前記第二の把持部を有する少なくとも1つの把持機構とを備え、
前記第一の把持部の支持ローラの回転軸と前記第二の把持部の支持ローラの回転軸とは平行になっており、
前記第一の把持部及び前記第二の把持部の少なくとも一方を移動させることにより、前記支持ローラを介して前記第一の把持部と前記第二の把持部との間に被把持物を把持することを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記第一の把持部が取り付けられた支持アームと前記第二の把持部が取り付けられた支持アームとを有し、
前記第一の把持部が取り付けられた支持アーム及び前記第二の把持部が取り付けられた支持アームのうち、一方の支持アームを移動させる請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記第一の把持部及び前記第二の把持部の少なくとも一方は、伸縮可能な連結部材を有し、
前記少なくとも一方の把持部の支持ローラは、その回転軸で前記連結部材に連結されている請求項1又は2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記連結部材が所定距離短縮した際に、前記回転軸又は前記支持ローラと接触して前記支持ローラの回転を停止させる回転停止具を備えている請求項3に記載の把持装置。
【請求項5】
前記支持ローラの表面には弾性材料からなる弾性材層が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の把持装置。
【請求項6】
前記被把持物が柱状形状である請求項1〜5のいずれかに記載の把持装置。
【請求項7】
セラミック原料を成形することで、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、前記ハニカム成形体を焼成したハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造工程における搬送工程で使用される把持装置であって、
前記搬送工程が、ハニカム成形体搬送工程、ハニカム焼成体搬送工程及びハニカム構造体搬送工程のうちの少なくとも1つの搬送工程である請求項1〜6のいずれかに記載の把持装置。
【請求項8】
セラミック原料を成形することで、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製した後、前記ハニカム成形体を焼成したハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
回転軸が平行となる少なくとも2個の支持ローラを有する第一の把持部と、前記第一の把持部の支持ローラに対向する少なくとも1個の支持ローラを有する第二の把持部と、前記第一の把持部及び前記第二の把持部を有する少なくとも1つの把持機構とを備え、前記第一の把持部の支持ローラの回転軸と前記第二の把持部の支持ローラの回転軸とは平行になっており、前記第一の把持部及び前記第二の把持部の少なくとも一方を移動させることにより、前記支持ローラを介して前記第一の把持部と前記第二の把持部との間に被把持物を把持する把持装置を使用して、
前記ハニカム成形体を焼成工程に搬送するハニカム成形体搬送工程、前記ハニカム焼成体をハニカム構造体形成工程に搬送するハニカム焼成体搬送工程、及び、前記ハニカム構造体を検査工程に搬送するハニカム構造体搬送工程のうちの少なくとも1つの搬送工程を行うことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記把持装置は、前記第一の把持部が取り付けられた支持アームと前記第二の把持部が取り付けられた支持アームとを有し、
前記第一の把持部が取り付けられた支持アーム及び前記第二の把持部が取り付けられた支持アームのうち、一方の支持アームを移動させる請求項8に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第一の把持部及び前記第二の把持部の少なくとも一方は、伸縮可能な連結部材を有し、
前記少なくとも一方の把持部の支持ローラは、その回転軸で前記連結部材に連結されている請求項8又は9に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
前記把持装置は、前記連結部材が所定距離短縮した際に、前記回転軸又は前記支持ローラと接触して前記支持ローラの回転を停止させる回転停止具を備えている請求項10に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記支持ローラの表面には、弾性材料からなる弾性材層が形成されている請求項8〜11のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項13】
前記搬送工程は、前記ハニカム構造体搬送工程であり、
前記ハニカム構造体が円柱形状、楕円柱形状又は長円柱形状である請求項8〜12のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−149445(P2008−149445A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125933(P2007−125933)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】