説明

抗炎症組成物および使用方法

【課題】 複数種類の抗炎症剤の組合せを含む組成物であって、従来の組成物と比べて予想外に高い相乗的な抗炎症性を示す傾向のある組成物を提供する。
【解決手段】 (a)オリーブ葉抽出物、ホリーハーブ、ソボク、ナツシロギクおよびそれらの2種類またはそれ以上の組合せから成る群から選ばれた抗炎症剤と、(b)少なくとも1種類のリポアミノ酸および少なくとも1種類の金属塩を含む抗炎症剤とを含有する、抗炎症組成物を提供する。更に、上記組成物を含むパーソナルケア用製品、および、それらの使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、抗炎症性を示す傾向のある組成物に関し、より詳しくは、抗炎症剤の組合せを含有する組成物であって、従来の組成物と比べて予想外に高い相乗的な抗炎症性を示す傾向のある組成物に関する。
【0002】
〔背景〕
パーソナルケア用組成物(personal care compositions)に用いるのに適した様々なスキンケア活性成分が知られている。そのようなスキンケア活性成分の例は、オリーブ葉抽出物、メナモミ(Sigesbeckia)[ホリーハーブ(Holy Herb)]、スオウ(Lignum Sappan)[ソボク(Sappan Wood)]、および、ナツシロギク(Feverfew)を含む。オリーブ葉抽出物は、経口経路で投与された場合、抗高血圧性、血糖降下性、食事および化粧品に対する抗ラジカル性(antiradical properties)、ならびに、抗炎症活性を示すとされてきた[例えば、オロロペインに富むオリーブ葉抽出物、それ由来の生産物、それらの医薬品としての適用、および、それらを含む組成物(Leaf extract of Olea europea rich in oleuropeine, products from it, their application as medicines and compositions containing them)、Combes, Georges、Escaut, Alexandre、フランス国特許出願FR 2507477 A1 19821217号(1982年);Gonzalez M他、オリーブ葉の血糖降下活性(Hypoglycemic activity of olive leaf)、Planta Med、58(6)第513〜515頁(1992年12月);オリーブ葉抽出物の抗ラジカル剤としての使用方法(Use of an extract from the leaves of Olea Europea as an antiradical agent)、Amari, Giorgio、欧州特許出願(1999年)EP 937455 A1 19990825号;Fehri B他、オリーブ:刺激性、抗潰瘍性、抗炎症性の効果(Olea europaea L.: stimulant, anti-ulcer and anti-inflammatory effects)、Boll Chim Farm、135(1)第42〜49頁(1996年)を参照されたい]。メナモミ(ホリーハーブ)は、マラリア熱、リウマチ、腎疝痛のための治療薬として、また、グリセリンと併用して白癬のための治療剤として使用されてきた。スオウ(ソボク)は、血液循環を促進して、うっ血を除去するために、そして、腫脹(swelling)を鎮静化して痛みを軽減するために使用されてきた。また、ナツシロギクは、経口的に摂取され通常の解熱剤として使用された場合、有意な薬効を有するものと認識されている。他のスキンケア活性成分には、油抽出物(oil extract)[例えば、抗腫瘍性および抗関節炎性を示すとされているボスウェリア・セラータ(Boswellia Serrata)油抽出物、ならびに、抗刺激性および抗酸化性を示すとされているエンバク油抽出物]を含む。
【0003】
本出願人は、様々な原因のうち、あらゆるものに起因する皮膚炎を、効果的に治療し、軽減し、かつ/または、予防するために、スキンケア活性成分の組合せを開発する必要があることを認識してきた。本出願人は抗炎症性を示す傾向のある様々な活性成分を認めたが、予想外に高い相乗的な抗炎症性、および、炎症を軽減させる効果とを示すであろう活性成分の組合せを予測することは、不可能ではないにしても、一般的に困難である。
【0004】
加えて、本出願人は、費用の観点から、比較的少量の活性成分を使用すること、安定性の理由で、幾種類かの活性成分と関連する望ましくない色または臭いを減少させることなどが望ましいであろうということを認識してきた。しかし、多数種の活性成分またはそれらの組合せは、比較的少量で施されたとき、炎症を軽減する効果が比較的ほとんどないか、または全く示されない傾向がある。したがって、本出願人は、比較的高い相乗的な抗炎症性と有効性とを示すスキンケア活性成分の組合せ、および、更に比較的少量でさえも効果的でありうる幾つかの組合せが必要であるということを確認した。
【0005】
〔発明の概要〕
本出願人は、予想外に高い相乗的な抗炎症性を示す複数種類のスキンケア活性成分の組合せに対する顕著な必要性を満たす組成物を発見した。加えて、本出願人は、そのような組成物の幾種類かが、比較的少量で驚くほど高い抗炎症性を示すことを確認した。
【0006】
本発明は、幾つかの実施例によると、(a)オリーブ葉抽出物、ホリーハーブ、ソボク、ナツシロギクおよびそれらの2種類またはそれ以上の組合せから成る群から選ばれた抗炎症剤と、(b)少なくとも1種類のリポアミノ酸および少なくとも1種類の金属塩を含む抗炎症剤とを含有する、組成物を提供する。
【0007】
本発明は、他の幾つかの実施例によると、本発明の組成物を含むパーソナルケア用製品を提供する。
【0008】
本発明は、更なる実施例によると、炎症を軽減する必要のある皮膚を本発明の組成物に接触させることによって、かつ/または、炎症を軽減する必要のある皮膚を本発明のパーソナルケア用製品に接触させることによって、炎症および/または発赤(redness)を治療/軽減する方法を提供する。
【0009】
〔好ましい実施例の説明〕
本発明は、幾つかの好ましい実施例によると、(a)オリーブ葉抽出物、ホリーハーブ、ソボク、ナツシロギク、または、それらの2種類またはそれ以上の組合せを含む抗炎症剤と、(b)少なくとも1種類のリポアミノ酸またはそれらの塩、および、少なくとも1種類の金属塩を含む抗炎症剤とを含有する、組成物を提供する。驚くべきことに本出願人は、抗炎症剤の上記組合せが相乗的かつ予想外に高い抗炎症性を示し、とりわけ、特許請求の範囲に記載の発明の組成物が、活性な構成要素それぞれの抗炎症性の合計よりも大きい抗炎症性を示し、しばしば、その合計よりも約1.2倍〜約1.8倍大きい抗炎症性を示すことを発見した。
【0010】
本出願書類で用いられる用語「抗炎症剤(anti-inflammatory agent)」とは、炎症を呈する皮膚に導入された時、そのような炎症を軽減する傾向のある、あらゆる化合物、または、化合物のあらゆる組合せをいう。本発明で使用するのに適した活性成分の例は、(オリーブ(Olea Europea)のあらゆる水溶性抽出物または油溶性抽出物を含む)オリーブ葉抽出物だけでなく、ホリーハーブ、ソボク、ナツシロギク、それらの2種類またはそれ以上の組合せ、および、同類のものを含む。幾つかの好ましい実施例において、その活性成分はオリーブ葉抽出物を含む。そのような適切な活性成分の多くは、例えば、オリーブ葉抽出物[商品名Eurol BTとしてバイオロジア・アンド・テクノロジア社(B & T srl)(イタリア国ミラノ)から市販されている水溶性抽出物、および、アクティブ・オーガニクス社(Active Organics)から市販されている油溶性抽出物]、ホリーハーブ[ニュージャージー州、セデルマ・エジソン社(Sederma Edison)から市販されている]、ナツシロギク[イタリア国ミラノ、インデナ社(Indena)から市販されている]などの、1つまたはそれ以上の供給源から商業的に入手することができる。
【0011】
本発明では、化粧学的に許容される適切な抗炎症剤であって、少なくとも1種類のリポアミノ酸および少なくとも1種類の金属塩を含む抗炎症剤であれば、いかなるものも使用することができる。適切なリポアミノ酸の例には、アミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、等)を脂肪酸鎖(例えば、ココイル(cocoyl)鎖または他の鎖、および、それらから誘導された塩)に結合させることによって生成されたリポアミノ酸が含まれる。好ましい幾種類かのリポアミノ酸は、(アラニン、グリシン、グルタミン酸およびアスパラギン酸をココイル部分に結合させることによって形成された)ココイルアミノ酸(cocoyl aminoacids)、ならびに、それらの塩を含む。それらの塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、等が含まれる。とりわけ好ましい幾種類かのリポアミノ酸は、ココイルアミノ酸ナトリウムを含む。適切な金属塩の例は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、それらの2種類以上の組合せ、および、同類のものを含む。好ましい幾種類かの金属塩は、アスパラギン酸塩、グルコン酸塩、グリコホスフェート(glycophosphates)、および、同類のものを含む。好ましい幾種類かの抗炎症剤は、少なくとも1種類のリポアミノ酸、および少なくとも1種類のアスパラギン酸の金属塩を含む。より好ましい幾種類かの抗炎症剤は、1種類またはそれ以上のリポアミノ酸、および少なくとも2種類のアスパラギン酸金属塩を含む。とりわけ好ましい抗炎症剤は、例えば、ココイルアミノ酸ナトリウムと、アスパラギン酸マグネシウムと、(サルコシン(sarcosine)と組み合わされた)アスパラギン酸カリウム[セピカーム(Sepicalm)SおよびセピカームS WPの商品名でセピック社(Seppic)から市販されている]との組合せを含む。
【0012】
本発明では、(a)オリーブ葉抽出物、ホリーハーブ、ソボク、ナツシロギクおよびそれらの2種類またはそれ以上の組合せから成る群から選ばれた抗炎症剤[抗炎症剤(a)]、ならびに、(b)少なくとも1種類のリポアミノ酸および少なくとも1種類の金属塩を含む抗炎症剤[抗炎症剤(b)]の適切な量を、いかなる量をも使用することができる。幾つかの実施例において、本組成物は、抗炎症剤(a)を0重量%より多く100重量%より少なく含み、かつ、抗炎症剤(b)を100重量%より少なく0重量%より多く含む。本出願書類の全体にわたって用いられる用語「重量%」は、特に記述されない限り、抗炎症剤(a)および抗炎症剤(b)の活性成分の合計重量に対する、抗炎症剤の活性主成分の重量パーセントを意味する。幾つかの好ましい実施例において、本組成物は、抗炎症剤(a)を約10〜約90重量%、および、抗炎症剤(b)を約90〜約10重量%含み、より好ましくは、抗炎症剤(a)を約20〜約80重量%、および、抗炎症剤(b)を約80〜約20重量%含み、更に好ましくは、抗炎症剤(a)を約40〜約60重量%、および、抗炎症剤(b)を約60〜約40重量%含む。
【0013】
幾つかの好ましい実施例において、[抗炎症剤(a)]対[抗炎症剤(b)]の重量比は、約4:1〜約1:4である。幾つかの他の好ましい実施例において、その重量比は、約2:1〜約1:2であり、また、他の実施例では約1:1であることが好ましい。
【0014】
本発明の組成物は、抗炎症剤(a)および抗炎症剤(b)に加えて、様々な追加の抗炎症剤および他の化粧学的に活性な薬剤のいかなるものをも更に含むことができる。「化粧学的に活性な薬剤(cosmetically active agent)」は、皮膚に対する化粧効果および治療効果を有する化合物(例えば、しわ、アクネを治療するための薬剤、または、皮膚を明化する薬剤)である。1つの実施例において、化粧学的に活性な薬剤は、それらに限定されないが、ヒドロキシ酸;過酸化ベンゾイル;硫黄レゾルシノール(sulfur resorcinol);D−パンテノール;ヒドロキノン;抗炎症剤;皮膚明化剤;抗菌剤および抗真菌剤[例えば、ミコナゾール(miconazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)およびエルビアル(elubial)];ビタミン類(例えば、アスコルビン酸);トコフェロールおよびトコトリエノール[例えば、酢酸トコフェリル(tocopheryl acetate)];レチノイド[例えば、レチノール、レチナール、パルミチン酸レチニル(retinyl palmitate)、酢酸レチニル(retinyl acetate)およびレチノイン酸];ホルモン類[例えば、エストロゲンおよびジヒドロキシアンドロステンジオン(dihydroxyandrostene dione)];2−ジメチルアミノエタノール;リポ酸;アミノ酸[例えば、プロリンおよびチロシン];ラクトビオン酸;人工日焼け用薬剤(self-tanning agents)(例えば、ジヒドロキシアセトン);ジメチルアミノエタノール;アセチル補酵素A;ナイアシン;リボフラビン;チアミン;リボース;電子伝達体[例えば、NADHおよびFADN2];植物抽出物(例えば、イチョウ葉、アロエベラおよび大豆);ならびに、それらの誘導体から成る群から選ばれる。ヒドロキシ酸の例は、(i)α−ヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸および酒石酸)、(ii)β−ヒドロキシ酸(例えば、サリチル酸)、ならびに/または、(iii)ポリヒドロキシ酸を含むが、それらに限定されない。例えば、欧州特許出願第273,202号を参照されたい。アスコルビン酸の誘導体の例は、パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム(magnesium ascorbyl phosphate)、リン酸アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビル亜鉛、アスコルビルグルコシド、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビルポリペプチド(ascorbyl polypeptide)を含むが、それらに限定されない。ヒドロキノンの誘導体の例は、アルブチン(arbutin)を含むが、それに限定されない。幾つかの好ましい実施例において、本発明の組成物は、更に1種以上のトコフェロールおよび/またはトコフェロールエステル[例えば、酢酸トコフェロール(tocopherol acetate)]を含む。
【0015】
本出願人は、予想外に高い抗炎症性を示す本発明の組成物が、多数種のパーソナルケア用製品/ヘルスケア用製品のいずれにおいても、優れた利点を得るために使用することができることを、確認した。例えば、本発明の組成物は、クリーム、ローション、香油(balms)、洗剤(washes)、ゲル、スティック(sticks)、スプレー、軟膏、ムース(mousses)、および、化粧品/顔用化粧品、として使用することができる。これらの製品は、化粧学的に許容される幾つかのタイプの担体系(carrier systems)を具備することができる。それらの担体系は、単相溶液(例えば、油性溶液)、エマルションおよびゲルを含むが、それらに限定されない。用語「化粧学的に許容される局所用担体(cosmetically-acceptable topical carrier)」とは、局所的に使用される担体であって、それの中に他の諸成分を分散させるか、または溶解させることができ、かつ、容認できる安全性を有することができる担体をいう。パーソナルケア用製品は、消費者によってスキンケア、乳児ケア(infant care)、女性の健康(women's health)、創部のケア、それらの2つまたはそれ以上の組合せ、および、同類のもののために使用されるように意図されることができる。そのような製品は、おむつかぶれの軽減、にきび抑制、老化防止、紫外線からの保護、無痛化(soothing)、保湿、それらの2つまたはそれ以上の組合せ、および、同類のものを含むあらゆる様々な利点のために市場で売買される。
【0016】
本発明の薬剤組成物を含むパーソナルケア用製品/ヘルスケア用製品は、パーソナルケア用製品で通常使用される様々な材料であればいかなるものをも更に含むことができる。例えば、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤および/またはカチオン界面活性剤;真珠光沢剤または乳白剤(pearlescent or opacifying agents);増粘剤;二次コンディショナー(secondary conditioners);保湿剤;キレート化剤;ならびに、その組成物の外観、感触(feel)および香りを改善する添加剤(例えば、着色剤、香料、防腐剤、pH調整剤、および、同類のもの);の1種またはそれ以上を使用することができる。
【0017】
本発明によって製造されるパーソナルケア用製品は、この抗炎症組成物の適切な量であればいかなる量をも含有することができる。本出願人は驚くべきことに、本発明の組成物が、パーソナルケア用製剤中に比較的少ない量で存在する場合でも、例えば、活性成分がパーソナルケア用製品の全重量に対して約0.02重量%以下という少ない量で存在する場合でも、著しい抗炎症効果を有することを確認した。したがって、本発明のパーソナルケア用製品は、組成物を製品の0重量%より多く約5重量%以下の間で含有すること(組成物を製品の約0.02〜約4重量%の間で含むこと、および、組成物を製品の約0.1〜約1重量%の間で含むことを含む)ができる。幾つかの好ましい実施例において、パーソナルケア用製品は、製品の0重量%より多く約1重量%以下で、より好ましくは製品の約0.02〜約0.5重量%の間で、更に好ましくは製品の約0.02〜約0.1重量%の間で、組成物を含有することができる。
【0018】
本発明はまた、様々な原因のいずれかによって引き起こされる皮膚の炎症および/もしくは発赤の治療、ならびに/または、その炎症および/もしくは発赤の軽減、を行う方法も提供する。それらの原因は、様々な形態の湿疹および乾癬;アクネおよび酒さ(rosacea);刺激性接触皮膚炎およびアレルギー性皮膚炎;日光誘発性皮膚疾患;外来生物、昆虫刺傷、物理的な摩耗によって引き起こされる感染症;ならびに、乾燥皮膚;を含むが、それらに限定されない。幾つかの実施例において、上記の方法は、抗炎症治療を必要とする皮膚を上述の本発明の組成物に接触させる段階を有する。幾つかの好ましい実施例において、本方法は、その皮膚を、オリーブ葉抽出物、ホリーハーブ、ソボク、ナツシロギクおよびそれらの2種類またはそれ以上の組合せから成る群から選ばれた抗炎症剤と、少なくとも1種類のリポアミノ酸および少なくとも1種類の金属塩を含む薬剤とを含む組成物に接触させる段階を有する。本発明は、他の幾つかの実施例において、抗炎症治療を必要とする皮膚を、本発明の組成物を含むパーソナルケア用製品に接触させることによって、皮膚の炎症の治療および/または軽減を行う方法を提供する。
【0019】
本発明の組成物および/またはパーソナルケア用製品は、本方法に基づく様々な手段のいずれによっても、皮膚に接触させることができる。それらの組成物および製品は、例えば、皮膚、毛髪または爪に対して局所的に施すことができる。幾つかの実施例において、それらの組成物および製品は、皮膚に対して局所的に施すことが好ましい。
【0020】
本出願人は、本方法が発赤を軽減することを可能にし、より一般的には、類似の方法に比べてより効果的なやり方で皮膚の炎症を軽減することを可能にすることを確認した。
【0021】
〔実施例〕
本発明は、次の諸実施例で更に説明される。それらの実施例は、説明に役立つように意図されているが、決して限定的であるようには意図されていない。
【0022】
<実施例1:RAW264マクロファージ細胞株における評価>
単核食細胞またはマクロファージは、多数種の皮膚中に見出だされ、先天性免疫応答の重要な構成要素である。皮膚のマクロファージは、外来病原体(例えば、細菌)の認識および排除に、酸化窒素、強力な前炎症性メディエータ(pro-inflammatory mediator)の産生を通じて関与する一次細胞である。しかし、酸化窒素が放出されると、結果的に、皮膚の炎症と、隣接する皮膚細胞に対する損傷とが生じることもあり、また、酸化窒素の無秩序な産生の結果、組織が損傷することもある。オリーブ葉抽出物、セピカーム、または、オリーブ葉抽出物とセピカームとの組合せが炎症反応に影響を及ぼす能力は、次の分析において、オリーブ葉抽出物、セピカーム、または、オリーブ葉抽出物とセピカームとの組合せの、マクロファージの活性を低下させる能力によって明らかにされた。
【0023】
マウスマクロファージ細胞株(RAW264)の細胞は、FBS[アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、バージニア州マナッサス(Manassas)]を10%含むDMEM培地で、4×105細胞/mLの濃度に調整し、次いで、100μLを、平底の96ウェル組織培養プレートに入れた。マウスマクロファージ細胞は、陽性対照(positive control)としての、細菌細胞のウェル成分であるリポ多糖(LPS)1μg/mLを用いて;または、オリーブ葉抽出物、セピカーム、もしくは、オリーブ葉抽出物とセピカームとの組合せの存在下または不存在下で;賦活化した。マクロファージの培養液は、試験試料の存在下または不存在下で、5%COにより、37℃で24時間処理し、次いで、グリース分析(Griess assay)によって、亜硝酸塩の形成、酸化窒素の安定した最終産物を分析した。結果は、賦活化された対照培養液と比較した、炎症性メディエータ産物(inflammatory mediator production)の抑制割合%として表されている。
【0024】
【表1】

【0025】
オリーブ葉抽出物もセピカームも、それぞれ、中等度の抗炎症活性を有するが、驚くべきことに、オリーブ葉抽出物とセピカームとの組み合わせは、炎症を軽減するのに著しく効果的であることが見出だされた。オリーブ葉抽出物とセピカームとの組み合わせの抗炎症活性度は、個々の活性度の合計よりも大きく、このことは、オリーブ葉抽出物とセピカームとの組み合わせが相乗反応を有することを示している。
【0026】
<実施例2:RAW264マクロファージ細胞株における[水溶性天然抽出物のセピカーム相乗作用]対[油溶性天然抽出物のセピカーム相乗作用]の比較>
天然材料の水溶性抽出物および油溶性抽出物の抗炎症活性を相乗的に高める、セピカームの能力は、次の分析において、マクロファージの活性化を減少させる能力によって明らかにされた。
【0027】
マウスマクロファージ細胞株(RAW264)の細胞は、FBS(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、バージニア州マナッサス)を10%含むDMEM培地で、4×105細胞/mLの濃度に調整し、次いで、100μLを、平底の96ウェル組織培養プレートに入れた。マウスマクロファージ細胞は、陽性対照として細菌細胞のウェル成分、リポ多糖(LPS)0.1μg/mLによって;または、セピカーム、水溶性抽出物(メナモミおよびスオウ)、部分的に水溶性/部分的に油溶性の抽出物(ナツシロギク)、油溶性抽出物(エンバク油抽出物、ボスウェリア・セラータ油抽出物)、もしくは、抽出物とセピカームとの組合せの存在下または不存在下で;賦活化した。メナモミ、いわゆるホリーハーブは、水性抽出物(ニュージャージー州、セデルマ・エジソン社)である。中国では、メナモミはマラリア熱、リウマチおよび腎疝痛のための治療薬として使用されており、英国では、主に、グリセリンと併用して白癬のための治療剤として使用されている。ソボクとも称されるスオウは、スオウノキ(Caesalpinia sappan)の乾燥芯材の水性抽出物である。スオウは、血液循環を促進して、うっ血を除去するために、そして、腫脹を鎮静化して痛みを軽減するために使用されている。ナツシロギクは、水溶性成分と油溶性成分の両方を有する(イタリア国ミラノ、インデナ社)。タナケトゥム・パルテニウム(Tanacetum parthenium)は、一般にナツシロギクとして知られている植物であるが、中世以来、経口摂取した場合、著しい薬効を有するものと認識されてきた。タナケトゥム・パルテニウムは、一般的な解熱剤として使用され、ゆえに、それは一般名称である。乳香(Frankincense)とも称されるボスウェリア・セラータ油抽出物[クエスト・インターナショナル社(Quest Intl)、ニュージャージー州サウスプレインフィールド(South Plainfield)]は、インド国の一部の乾燥森において見出だされる木、ボスウェリア・セラータのオレオガム樹脂(oleo-gum resin)の抽出物である。そのオレオガム樹脂は、芳香性であり、色が透明かつ黄褐色である。その抽出物の主要成分は、3種類のトリテルペン酸、□□および□−ボスウェル酸(boswellic acids)であり、□−ボスウェル酸は、ボスウェリア・セラータの抗腫瘍性および抗関節炎性に関与することが分かってきた。エンバク、アベナ・サティバ(Avena sativa)から単離されたエンバク油抽出物[ドラゴコ社(Dragoco)、ニュージャージー州トタワ(Totawa)]は、抗刺激剤および抗酸化剤として使用されてきた。マクロファージの培養液は、試験試料の存在下または不存在下で、5%COにより、37℃で24時間処理し、次いで、グリース分析によって、亜硝酸塩形成、酸化窒素の安定した最終産物を分析した。結果は、賦活化された対照培養液と比較した、炎症性メディエータ産物の抑制割合%として表されている。
【0028】
【表2】

【0029】
セピカームは、水溶性抽出物(メナモミおよびスオウ)ならびに部分的に水溶性/部分的に油溶性の抽出物(ナツシロギク)の抗炎症活性を相乗的に増大させることが分かったが、油溶性抽出物(エンバク油抽出物、ボスウェリア・セラータ油抽出物)の抗炎症活性は相乗的に増大させなかった。これらの発見によって、セピカームは水溶性抽出物および部分的に水溶性/部分的に油溶性の抽出物の抗炎症活性を助長し得ることが実証される。
【0030】
<実施例3>
フィッツパトリック基準(Fitzpatrick scale)で皮膚タイプ1−3を有する4人の成人白人女性について、研究を行った。研究を行う間、研究のために指定された領域には、ローション/製品は使用しなかった。
【0031】
調整期間の間、志願被験者らの皮膚を乾燥させた。被験者らには、研究前7日間の間、皮膚乾燥手順(skin-dry out protocol)に従うように依頼した。この手順は、1日に2回、(膝から下方の)両脚をアイボリー石鹸(Ivory soap)で洗浄することから成った。この手順は、研究過程の間継続した。
【0032】
研究のために、評価は、所定量の製品を施す前と、所定量の製品を施した後4時間目との両方で行った。1日目および3日目においてのみ、製品を施す前、脱毛手順(shaving protocol)を用いて、脚上の別個の部位に、炎症を更に誘発させ、次いで、上述のように測定した。2種類の製品、すなわち、セピカーム1.0%、オリーブ葉0.01%およびコビオックス(Coviox)T90 0.5%から成る活性組成物を含む製品(「活性」製品)、ならびに、同一の方法で調製した、抗炎症活性剤としてのオリーブ葉0.01%のみを含む偽薬製品(「プラセボ」)、を試験した。
【0033】
評価は、拡散反射分光法(DRS)を使用し、オキシヘモグロビンによる吸収を測定して定量化された、皮膚の発赤の評価を含んだ。
【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
<実施例4>
有効な相乗的効果が実証された諸成分の混合物は、様々なタイプの製品に組み入れることができる。それらの製品は、エマルション系、界面活性剤系、無水系、錠剤/粉末系、および、ポリマー系を含むが、それらに限定されない。各々の系のタイプの成分の範囲の例だけでなく、相乗作用する諸構成要素の上限値および下限値の例も、確認される。
【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
【表7】

【0040】
【表8】

【0041】
【表9】

【0042】
【表10】

【0043】
実施例4A〜実施例4Fに記載の製品は、次の手順によって作られる。
油および水を含む系のための製造説明:
1)水相成分を組み合わせ、混合し、次いで、均質になるまで加熱する。
2)油相成分を組み合わせ、混合し、次いで、均質になるまで加熱する。
3)両方の相が同一温度になった時、油相成分を水相成分に、混合しながら添加する。
4)必要ならば、均一、均質になるまで混合する。
5)冷却した後、防腐剤および香料を添加する。
無水系のための製造説明:
1)複数種類の成分を全て、一次反応釜に入れる。
2)相が均一になるまで、混合しながら加熱する。
3)金型またはパッケージの中に注ぎ、次いで、冷却する。
【0044】
〔実施の態様〕
(1)組成物において、
(a)オリーブ葉抽出物、ホリーハーブ、ソボク、ナツシロギク、およびそれらの2種類またはそれ以上の組合せから成る群から選ばれた抗炎症剤と、
(b)少なくとも1種類の親油性アミノ酸および少なくとも1種類の金属塩を含む抗炎症剤と、
を含有する、組成物。
(2)実施態様1に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(a)は、オリーブ葉抽出物を含む、組成物。
(3)実施態様1に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(b)は、少なくとも1種類のリポアミノ酸、および少なくとも2種類またはそれ以上のアスパラギン酸塩を含む、組成物。
(4)実施態様3に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(b)は、ココイルアミノ酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウムおよびアスパラギン酸カリウムの組合せを含む、組成物。
(5)実施態様1に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(a)を約10〜約90重量%、および、前記抗炎症剤(b)を約90〜約10重量%含む、組成物。
(6)実施態様1に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(a)を約20〜約80重量%、および、前記抗炎症剤(b)を約80〜約20重量%含む、組成物。
(7)実施態様1に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(a)を約40〜約60重量%、および、前記抗炎症剤(b)を約60〜約40重量%含む、組成物。
(8)実施態様1に記載の組成物において、
少なくとも1種類の追加の抗炎症剤、
を更に含む、組成物。
(9)実施態様8に記載の組成物において、
前記少なくとも1種類の追加の抗炎症剤は、アスコルビン酸、トコフェロール、およびトコトリエノールのような、ビタミン類から成る群から選ばれている、組成物。
(10)実施態様9に記載の組成物において、
前記少なくとも1種類の追加の抗炎症剤は、トコフェロールを含む、組成物。
【0045】
(11)組成物において、
(a)オリーブ葉抽出物、ホリーハーブ、およびソボクから成る群から選ばれた抗炎症剤と、
(b)ココイルアミノ酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、およびアスパラギン酸カリウムの組合せを含む抗炎症剤と、
を含有する、組成物。
(12)実施態様11に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(a)は、オリーブ葉抽出物を含む、組成物。
(13)実施態様12に記載の組成物において、
1種類またはそれ以上のトコフェロール、
を更に含む、組成物。
(14)パーソナルケア用製品において、
実施態様1に記載の組成物、
を含む、パーソナルケア用製品。
(15)実施態様14に記載のパーソナルケア用製品において、
前記組成物を製品の約0.02〜約1重量%含む、パーソナルケア用製品。
(16)実施態様15に記載のパーソナルケア用製品において、
前記組成物を製品の約0.02〜約0.1重量%含む、パーソナルケア用製品。
(17)実施態様16に記載のパーソナルケア用製品において、
トコフェロール、
を更に含む、パーソナルケア用製品。
(18)パーソナルケア用製品において、
実施態様11に記載の組成物、
を含む、パーソナルケア用製品。
(19)実施態様14に記載のパーソナルケア用製品において、
トコフェロール、
を更に含む、パーソナルケア用製品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物において、
(a)オリーブ葉抽出物、ホリーハーブ、ソボク、ナツシロギク、およびそれらの2種類またはそれ以上の組合せから成る群から選ばれた抗炎症剤と、
(b)少なくとも1種類の親油性アミノ酸および少なくとも1種類の金属塩を含む抗炎症剤と、
を含有する、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(a)は、オリーブ葉抽出物を含む、組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(b)は、少なくとも1種類のリポアミノ酸、および少なくとも2種類またはそれ以上のアスパラギン酸塩を含む、組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(b)は、ココイルアミノ酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、およびアスパラギン酸カリウムの組合せを含む、組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(a)を約10〜約90重量%、および、前記抗炎症剤(b)を約90〜約10重量%含む、組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(a)を約20〜約80重量%、および、前記抗炎症剤(b)を約80〜約20重量%含む、組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(a)を約40〜約60重量%、および、前記抗炎症剤(b)を約60〜約40重量%含む、組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物において、
少なくとも1種類の追加の抗炎症剤、
を更に含む、組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物において、
前記少なくとも1種類の追加の抗炎症剤は、アスコルビン酸、トコフェロール、およびトコトリエノールのような、ビタミン類から成る群から選ばれている、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物において、
前記少なくとも1種類の追加の抗炎症剤は、トコフェロールを含む、組成物。
【請求項11】
組成物において、
(a)オリーブ葉抽出物、ホリーハーブ、およびソボクから成る群から選ばれた抗炎症剤と、
(b)ココイルアミノ酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、およびアスパラギン酸カリウムの組合せを含む抗炎症剤と、
を含有する、組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物において、
前記抗炎症剤(a)は、オリーブ葉抽出物を含む、組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物において、
1種類またはそれ以上のトコフェロール、
を更に含む、組成物。
【請求項14】
パーソナルケア用製品において、
請求項1に記載の組成物、
を含む、パーソナルケア用製品。
【請求項15】
請求項14に記載のパーソナルケア用製品において、
前記組成物を製品の約0.02〜約1重量%含む、パーソナルケア用製品。
【請求項16】
請求項15に記載のパーソナルケア用製品において、
前記組成物を製品の約0.02〜約0.1重量%含む、パーソナルケア用製品。
【請求項17】
請求項16に記載のパーソナルケア用製品において、
トコフェロール、
を更に含む、パーソナルケア用製品。
【請求項18】
パーソナルケア用製品において、
請求項11に記載の組成物、
を含む、パーソナルケア用製品。
【請求項19】
請求項14に記載のパーソナルケア用製品において、
トコフェロール、
を更に含む、パーソナルケア用製品。

【公表番号】特表2009−506111(P2009−506111A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528998(P2008−528998)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/034398
【国際公開番号】WO2007/027187
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(502112382)ジョンソン・アンド・ジョンソン・コンシューマー・カンパニーズ・インコーポレイテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON & JOHNSON,CONSUMER,COMPANIES,INC.
【住所又は居所原語表記】199 Grandview Road,Skillman,NJ 08558,US
【Fターム(参考)】