説明

抗血栓剤複合体を含有する医療用具用コーティング

【課題】櫛状抗血栓剤複合体の製法であって、水溶性PVAの実質的に全ての側鎖が、開環重合によって伸ばされて、実質的に全ての末端が抗血栓剤の分子に結合される共重合体を形成する、製法を提供する。
【解決手段】櫛状抗血栓剤複合体を含むコーティングを、植え込み可能な用具の少なくとも一部分に塗布して、用具の表面上の血栓形成を防止または軽減するための方法を更に提供する。コーティングの第1の層または副層は、高分子材料および生理活性薬剤を溶媒と混合し、均質な溶液を形成することによって調製する。櫛状抗血栓剤複合体を含む第2の層または外層は、浸漬被覆法または吹付け被覆法を使用して、薬剤含有内層の上に塗布されることができる。医薬剤を密封するためのマトリックス材料として櫛状抗血栓剤複合体を使用して、ミクロスフェアまたはナノスフィアを形成し、次いで、医療用具上にミクロスフェアまたはナノスフィアを堆積させることができる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、物品の表面の少なくとも一部分に塗布される材料、または、物品内部に植え込まれる材料に関する。とりわけ、本発明は、抗血栓性組成物が結合されている櫛状生体吸収性高分子であって、該生体吸収性高分子の高分子マトリックスの内部に抗再狭窄剤(anti-restenotic agent)を含有させ得る該生体吸収性高分子に関する。本発明は更に、該複合体(conjugate)が、用具(device)の表面に被覆されているか、または用具それ自体の内部に含有されている該用具に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
狭窄症(stenosis)は、脂質、コレステロールおよび他の物質が経時的に累積されることによって生じる、血管の狭窄(narrowing)または圧縮(constriction)である。狭窄症は重症例では、血管を完全に閉塞することがある。狭窄血管を広げるために、介入処置(interventional procedures)が使用されてきた。介入処置の1つの例は、経皮経管冠動脈拡張術(percutaneous transluminal coronary angioplasty)(PTCA)、即ちバルーン冠動脈形成術(balloon coronary angioplasty)である。この処置では、バルーンカテーテルを挿入し、次いで、血管の狭窄部位で拡張して閉塞部を開通させる。PTCAを受ける患者の約1/3は、再狭窄症を患っている。その場合、処置後約6ヶ月以内に血管は再び閉塞する。したがって、再狭窄動脈は別の血管形成術を受けなければならないだろう。更なるPTCAを回避するために、PTCAに引き続いて、または、PTCAに代えて、血管内部にステントのような植え込み可能な医療用具が配置されてきた。それにもかかわらず、再狭窄症は、ステントを植え込んでも依然として起こることがある。
【0003】
再狭窄症は、血管形成術に代えて、または、血管形成術に加えて、動脈の病変部位の中にステントを挿入する過程から成る常法によって抑制することができる。ステントは、金属またはプラスチックで作られた管であり、該管は、固体の壁または網状壁を有することがある。使用されているほとんどのステントは、金属性であり、自己拡張型またはバルーン拡張型である。ステントの挿入処置を行う決定は、動脈狭窄の幾つかの特徴によって決まる。これらの特徴には、動脈の大きさ、および、狭窄の位置が包含される。ステントの機能は、血管形成術を使用して新たに拡張された動脈を支持することである。あるいは、血管形成術が使用されなかった場合、ステントは、動脈の弾性反跳(elastic recoil)を防ぐために使用される。ステントは典型的には、カテーテルによって植え込まれる。バルーン拡張型ステントの場合、ステントは、小径に縮められてバルーンカテーテル上を摺動する。カテーテルは、次いで、患者の血管系を通して、新たに拡張された領域または損傷の部位まで操作される。ステントは、ひとたび適切な位置に配置されれば、拡張され、次いで、適所で固定される。ステントは、動脈内に恒久的に留まり、該動脈を開いた状態に保持し、該動脈を通過する血流量を改善して、症候(たいていは胸痛)を軽減する。
【0004】
ステントは、そのインプラント部位の再狭窄症を防止するのに完全に効果的である訳ではない。再狭窄症は、ステントの長さ部分の上に、および/または、ステントの端部の先に発生することがある。医師は最近、平滑筋細胞増殖を抑制する薬剤を担持した高分子薄膜で被覆された、新しいタイプのステントを使用している。そのコーティングは、動脈の中に挿入される前のステントに、当該技術分野において周知の方法(例えば、溶媒蒸発法(solvent evaporation technique))を用いて塗布される。溶媒蒸発法では、溶媒中で前記の高分子と薬剤とを混合する必要がある。次いで、該高分子と該薬剤と該溶媒とを含有する溶液は、浸漬法または噴霧法によって、ステントの表面に塗布されることができる。次いで、該ステントは、乾燥工程にかけられる。乾燥工程の間、該溶媒は蒸発し、該高分子材料の中に該薬剤が分散している該高分子材料は、該ステント上に薄膜層を形成する。
【0005】
前記高分子材料から前記薬剤が放出される機構は、該高分子材料の種類と、組み入れられる該薬剤とによって決まる。該薬剤は、該高分子を通って高分子−流体の界面まで拡散し、次いで、該流体の中に拡散する。放出は、該高分子材料の分解によって起こることもある。該高分子材料の分解は、加水分解または酵素消化過程(enzymatic digestion process)によって起こり、結果的に、組み入れられた薬剤を周辺組織の中に放出することができる。
【0006】
被覆されたステントを使用する際の重要な検討事項は、コーティングから薬剤が放出される速度である。薬剤の有効治療量は、血管形成術後またはステント植え込み後の生物学的過程(biological processes)の期間を含むかなり長い期間の間、ステントから放出されることが望ましい。植え込み直後のバースト放出(burst release)、高放出速度は、望ましくなく、持続的な問題である。バースト放出は、患者にとって典型的には有害ではないが、必要有効量の数倍を放出することによって、薬剤の限られた供給量を「浪費し(wastes)」、放出持続期間を縮める。バースト放出を減少させるために、幾つかの技術が開発されてきた。例えば、ヤン(Yang)等への米国特許第6,258,121B1号明細書には、異なる放出速度を有する2種類の高分子を混合し、次いで、それらを合体して単一層にすることによって放出速度を変える方法が開示されている。
【0007】
薬剤溶出性ステント(DES)を植え込むことに関連する潜在的欠点は、植え込み後または配置後の様々な時間に血栓症が発現し得ることである。血栓症は、血管内の、植え込まれた用具(implanted device)の上または近辺に血餅(blood clots)が形成されることである。血餅は一般に、細胞要素(cellular elements)の捕捉(entrapment)と共に、血液因子(主として血小板およびフィブリン)の凝集によって形成される。血栓症は、再狭窄症に類似し、しばしば、それが形成される部位に血管閉塞を引き起こす。再狭窄症も血栓症も、重症でありかつ潜在的に致死性の2つの容態であって、医学的介入を必要とする容態である。ステント表面に血栓が形成されることは、しばしば致命的であり、血管に血栓症を患っている患者に20〜40%の高死亡率を生じさせている。
【0008】
再狭窄症を防止するのに利用されるコーティングの諸成分の幾種類かは、再狭窄症を減少させるのに有効であるが、血栓症の危険性を増大させる。薬剤溶出性ステントは典型的には、ステント植え込み後の急性血栓症および亜急性血栓症(SAT)または中期血栓症(medium term thrombosis)(ステント植え込み後30日)の増大と関連していない。しかし、長期臨床経過観察による研究は、これらの植え込み用具が、超遅発性ステント血栓症(very long term thrombosis)(LST)の発生率が増大していることと関連があることを示唆している。LSTの増加率は1%未満であることが分かってきたが、高死亡率は通常、LSTと関連している。このことを防止するための1つの方法は、植え込み用具の表面にヘパリン等の抗凝血剤のコーティングを含有させることである。
【0009】
ステント血栓症の形成に取り組むための1つの方法は、ヘパリン等の抗凝血剤を利用する方法である。ヘパリンは、それの抗凝血能で周知の物質である。溶媒蒸発法を用いて、ヘパリンを担持した薄い高分子コーティングをステント表面に塗布することは、当該技術分野で知られている。例えば、ディング(Ding)等への米国特許第5,837,313号明細書には、ヘパリンコーティング組成物を調製する方法が記述されている。しかし、ヘパリンの使用を妨げるものは、ヘパリンが再狭窄症を防止する薬剤とうまく共存しないことである。例えば、高分子コーティング内部でヘパリンが抗血栓剤と混合されると、抗再狭窄剤のための望ましい溶出プロフィールは、ヘパリンの親水性によって妨げられる。例えば、治療薬剤は、溶媒処理によって、高分子コーティングのマトリックスの中に埋め込まれる。抗凝血剤もまた該高分子マトリックス中に埋め込まれるならば、該抗凝血剤は、制御されないやり方では水を引き付ける。このことは、製造中に、または、被覆された用具が植え込まれる時に生じることがあり、しかも、抗再狭窄剤の安定性もしくは有効性に悪影響を及ぼすか、または、望ましい溶出プロフィールを妨げる。
【0010】
それにもかかわらず、植え込み可能な医療用具のためのコーティングの内部で抗血栓剤と治療薬剤とを組み合わせるための幾つかのアプローチが提案されてきた。ホイットボーン(Whitbourne)への米国特許第5,525,348号明細書には、(ヘパリンを含む)医薬剤を第四級アンモニウム成分(quaternary ammonium components)または他のイオン性界面活性剤で錯体化し、次いで、抗血栓性コーティング組成物としての水不溶性高分子と結合させる方法が開示されている。この方法は、セルロース等の天然由来高分子またはそれの誘導体であって、自然状態では異質であり、植え込み部位で望ましくない炎症反応を引き起こすかもしれない該高分子またはそれの誘導体を導き入れる恐れがあるという欠点を有する。ヘパリン等の抗血栓剤と逆帯電したキャリヤ高分子との間のこれらイオン結合型錯体(ionic complexes)もまた、コーティング組合せ体(coating integration)に悪影響を及ぼすことがある。また、これらのイオン結合型錯体は、更なる諸医薬剤が存在するとき、これらの医薬剤の貯蔵性および放出反応速度(release kinetics)に影響を及ぼすことがある。
【0011】
僅かに異なるアプローチが、ビョン(Byun)への米国特許第6,702,850号、同第6,245,753号および同第7,129,224号明細書に開示されている。それらの米国特許明細書において、ヘパリン等の抗血栓剤は、コーティング製剤に使用される前、ポリアクリル酸等の非吸収性高分子に共有結合される。これらの複合体(conjugates)の全疎水性度(overall hydrophobicity)は、長い炭化水素鎖を有するアミンである疎水性物質(例えば、オクタデシルアミン)を添加することによって更に調節される。このアプローチは、生体内でヘパリンが代謝された後、幾つかの潜在的不都合(例えば、ポリアクリル酸の既知の毒性)を有する。疎水性アミンを添加すれば、各段階の置換反応の再現と組織適合性(tissue compatibility)とに関する懸念が増大する。更に、該コーティングの残部成分は、生分解性でない。
【0012】
もう1つの抗血栓性コーティングによるアプローチは、ホルマー(Holmer)への米国特許第6,559,132号、ショランダー(Scholander)への米国特許第6,461,665号、および、エケトロップ(Eketrop)への米国特許第6,767,405号明細書に開示されている。これらの米国特許明細書によると、医療用具の活性化金属表面にキトサン等のキャリヤ分子が結合される。その後、ヘパリンは中間分子に共有結合される。この過程は、所望の抗血栓性層が得られるまで数回繰り返されることがある。代わりに、この被覆加工はバッチ処理モードで達成することができる。しかし、このアプローチは、1種以上の医薬剤を含有する高分子コーティングで被覆されている医療用具には容易に適用することができない。これらの成功的な抗再狭窄剤の幾種類(例えば、シロリムス(sirolimus))かは、これらの複合化過程(conjugating processes)、とりわけ、水性過程(aqueous processes)を伴うこれらの複合化過程が行われる間に損傷を受けることがある。
【0013】
シュトゥッケ(Stucke)等の、特許協力条約に基づく出願の国際公開番号WO2005/097223A1号パンフレットには、同一のコーティング溶液の中で、ポリ(ブチルメタクリレート)等の他の耐久性高分子で溶解された光活性架橋剤、または、該耐久性高分子で分散された光活性架橋剤と結合したヘパリンとポリ(ビニルピロリドン)との混合物であって、溶液中で、または、コーティングが塗布された後、紫外線で架橋された混合物が適用される方法が開示されている。このアプローチの潜在的欠点は、混合された1種以上の薬剤が、架橋過程の間に高エネルギー紫外線によって悪影響を受けることがあり、更に悪いことに、該薬剤が該紫外線エネルギーによって活性化され得る官能基を有する場合、該薬剤がマトリックス高分子に架橋結合することがあるということである。
【0014】
もう1つの一般的アプローチは、米国特許出願第2005/0191333A1号明細書、米国特許出願第2006/0204533A1号明細書および国際公開番号WO2006/099512A2号パンフレット[出願人は全て、スウ(Hsu)、リー・チェーン(Li-Chien)、等]に開示されるように、ヘパリンと対イオン(ステアリルコニウムヘパリン(stearylkonium heparin))との低分子量複合体、または、高分子量の高分子電解質複合体(例えば、デキストラン(dextran)、ペクチン(pectin))を使用して、抗血栓性構成要素(antithrombotic entity)の複合形態を形成する。これらの抗血栓剤複合体(antithrombotic complexes)は、薬剤を更に含有することのできる高分子マトリックスの中に更に分散される。そのようなアプローチは、薬剤とヘパリンの親水性種との不均質マトリックスであって、該親水性種が、植え込みの前および植え込みの後、水を引き寄せて、該薬剤の安定性と放出反応速度(release kinetics)とに悪影響を及ぼす不均質マトリックスを作り出す。加えて、ヘパリンと類似薬剤との望ましい抗血栓性機能は好ましくは、被覆された医療用具の表面に配置されるべきであり、被覆された医療用具の表面から溶出されるべきではない。
【0015】
したがって、医療用具の少なくとも1つの表面に塗布するための、上述のような厳重な必要条件を満たすことのできるコーティング材料であって、該コーティングに添加された反応し易い医薬剤または治療薬剤と適合性のある工程によって調製することのできる該コーティング材料を得る必要性が存続している。このコーティング材料は、薬剤溶出性ステントの外面に塗布されたとき、再狭窄症を処置するだけでなく血栓症を防止するコーティングを得る必要性を満たすのに役立つ。
【0016】
〔発明の概要〕
ヘパリンと、遊離のカルボキシル末端基を有する生体吸収性櫛状高分子との間の複合体;および、用具の表面に該複合体が塗布されている該用具、または、用具の構造体の内部に該複合体が埋め込まれている該用具;が提供される。コーティングの最外層は、本発明の複合体であって、血栓の形成を防止し、更に、該コーティングの1つ以上の内層の内部に含有される1種類以上の薬剤の放出反応速度を調節するのにも役立つ該複合体を含む。
【0017】
コーティングの第1の層または副層(sub-layer)は、高分子材料および生理活性薬剤を溶媒と混合し、そうすることにより、均質な溶液を形成することによって調製する。高分子材料は、様々な合成材料から選定し得るが、1つの典型的な具体例では、ポリ(ラクチド・グリコリド共重合体)(poly(lactide-to-glycolide)(PLGA)を使用する。生理活性薬剤は、所望の治療結果に応じて選定する。内層の中に、例えば、パクリタキセル等の抗増殖剤、ラパマイシン等の免疫抑制剤、デキサメタゾン(dexamethasone)等の抗炎症薬を含有させることができる。前記の溶液は、ひとたび調製されれば、浸漬法または吹付け法によって、用具に塗布されることができる。乾燥工程の間、溶媒は蒸発し、かつ、生理活性薬剤を担持した高分子材料の薄層は、ステントの上に被覆された状態で置き去りにされる。本発明は、1つの層当り唯1つの内層または唯1種類の生理活性薬剤に限定される訳ではないことに注目すべきである。各々の層に1種類以上の異なる生理活性薬剤を添加すること、および/または、2つ以上の内層に生理活性薬剤を担持させることは、本発明の範囲内である。
【0018】
第2の層または外層は、抗血栓剤ヘパリン−生体吸収性高分子の複合体を含む。このコーティングは、例えば、浸漬被覆法または吹き付け被覆法を使用して、薬剤含有内層の上に塗布されることができる。本発明の1つの典型的な実施形態において、外層は、抗血栓剤ヘパリン−生体吸収性高分子の複合体であって、酢酸エチル(EA)およびイソプロパノール(IPA)を含む混合溶媒系に溶解し得る該複合体を含む。その場合、上述のように既に薬剤含有層で被覆されてしまった用具の表面の上に、その溶液を吹き付ける。前記の抗血栓剤ヘパリン−生体吸収性高分子の複合体は、乾燥工程の後、コーティングの外層の中に残留し、薬剤が内層から外層を通って溶出するのを可能にする。
【0019】
前記の被覆された用具の特性によって決まる適切な手段を用いて、該用具を体の患部領域(例えば、冠状動脈のような血管)の中に挿入する。該用具は、ひとたび適切な位置に配置されれば、その血管を開いた状態に保持する。生理活性薬剤は、第1の層から放出され、そうされることによって、所望の治療結果(例えば、平滑筋細胞増殖の抑制)を提供する。最外層中の抗血栓剤ヘパリン−生体吸収性高分子の複合体は、部分的に水和されて、該用具の上および該用具の周辺における血液凝固を防止し、このようにして、血栓症と亜急性用具血栓症(sub-acute device thrombosis)とが抑制される。加えて、最外層中の抗血栓剤ヘパリン−生体吸収性高分子の複合体は、生理活性薬剤を含有する内層から該薬剤がバースト放出されるのを更に軽減するか、または防止することができ、そうすることによって、薬剤を比較的長い期間にわたって放出させることが可能になる。
【0020】
代わりに、櫛状高分子とヘパリンとの複合体の高分子マトリックスを、該複合体の高分子マトリックスの内部に存在する治療薬剤のためのキャリヤとして利用して、粒子を作り出すことができる。この実施形態において、該薬剤は、該櫛状高分子の疎水性コアに幾分結合している。後で蒸発する溶媒を用いて該薬剤を該複合体と一緒に共溶解させ、複数個の粒子のコアの所に該薬剤を含有する該粒子を作り出す。これらの粒子は、用具の構造体の内部に配置されるのに理想的に適している。例えば、用具は、ウェル(wells:穴)、刻み目(indentations:ギザギザ)、ひだ(folds)または溝(channels)のような複数個の構造的特徴部(structural features)であって、それらの中に複数個の粒子を有する、構造的特徴部を有することができる。このことによって、異なる特性を有する諸粒子を、該用具に沿った様々な位置に配置することが可能になる。更に、少なくとも2種類の異なる薬剤を含有する粒子を、同一の構造的特徴部の内部に配置することができる。それらの粒子が分解されるにつれて、薬剤は該構造的特徴部から放出される。同時に、ヘパリンが存在することによって、該用具の配置部位における血栓症が防止される。
【0021】
本発明の諸特徴および諸利点は、次の詳細な記述から当業者には明白になるであろう。
【0022】
〔発明の詳細な記述〕
高分子組成物の1つ以上の層が医療用具に塗布されて該医療用具にコーティングが提供されるか、または、該層は医療用具の構造的特徴部の内部に入れられる。高分子組成物は様々な機能を果たす。例えば、1つの層は、追加層が該1つの層に付着するのを可能にするベース被膜(base coat)を含むことができる。1つ以上の追加層は、それらの高分子マトリックスの内部に生理活性薬剤(bioactive agents)を担持することができる。代わりに、単一の被膜を塗布することができる。その場合、高分子組成物は、そのコーティングが複数の機能(例えば、該コーティングが医療用具に付着するのを可能にすること、および、血栓症を防止する薬剤を貯蔵すること)を果たすようなものである。
【0023】
薬剤の化学的性質によって、コーティングが担持することのできる薬剤の種類数が制限されることがある。例えば、抗血栓剤は親水性である傾向があるのに対し、抗増殖剤は比較的疎水性である傾向がある。したがって、高分子マトリックス内部に疎水性薬剤を取り込んで、水への暴露を制限し、かつ、該薬剤の該マトリックスからの溶出を制御することが望ましい。本発明は、ヘパリン等の抗凝血剤と、遊離のカルボキシル末端基を有する生体吸収性高分子との複合体(conjugate)を提供することによって、異なる特性を有する2種類の薬剤を極めて接近させて支持する。この相対的配置(configuration)によって結果的に、親水性ヘパリンは、高分子マトリックス内部に存在する疎水性薬剤から実質的に離れた方向に配向する。したがって、複合体を含有するコーティングが医療用具に塗布されるとき、該コーティングによって、抗血栓剤は、高分子マトリックス内部に含有され得るいかなる疎水性薬剤からも実質的に離れた方向に確実に配向される。
【0024】
次の諸定義は、本発明の理解を容易にするために与えられるが、本発明の記述を決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0025】
本出願書類で用いられる「ステント(stent)」は、あらゆる生体適合性材料から作られる、概して管状の構造体であって、導管(conduit)の中に挿入されて、その内腔を開いた状態に保持して、狭窄症または外部圧迫に起因する閉鎖(closure)を防止する該構造体を意味する。
【0026】
本出願書類で用いられる「生理活性薬剤(biologically active agent)」は、生体に対する治療効果を有する薬剤または他の物質を意味する。生理活性薬剤は、抗血栓剤、抗癌剤、抗凝血剤、抗血小板薬、血栓溶解剤、抗増殖性物質、抗炎症薬、再狭窄症を抑制する薬剤、平滑筋細胞の抑制剤、抗生物質、および同類のもの、ならびに/もしくは、それらの混合物、ならびに/または、生体に対する治療効果を提供する機能を実行する場合に他の物質の助けとなり得るあらゆる物質を含むが、それらに限定されない。
【0027】
典型的な抗癌剤には、アシビシン(acivicin)、アクラルビシン(aclarubicin)、アコダゾール(acodazole)、アクロナイシン(acronycine)、アドゼレシン(adozelesin)、アラノシン(alanosine)、アルデスロイキン(aldesleukin)、アロプリノール・ナトリウム(allopurinol sodium)、アルトレタミン(altretamine)、アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、アモナフィド(amonafide)、アンプリジェン(ampligen)、アムサクリン(amsacrine)、アンドロゲン(androgens)、アングイジン(anguidine)、グリシン酸アフィディコリン(aphidicolin glycinate)、アサレイ(asaley)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、5−アザシチジン(5-azacitidine)、アザチオプリン(azathioprine)、カルメット・ゲラン菌(Bacillus calmette-guerin (BCG))、ベイカーのアンチフォル(Baker's Antifol)(可溶性)、β−2'−デオキシチオグアノシン(beta-2'-deoxythioguanosine)、塩酸ビスアントレン(bisantrene hcl)、硫酸ブレオマイシン(bleomycin sulfate)、ブスルファン(busulfan)、ブチオニンスルフォキシミン(buthionine sulfoximine)、セラセミド(ceracemide)、カルベチマー(carbetimer)、カルボプラチン(carboplatin)、カルムスチン(carmustine)、クロラムブシル(chlorambucil)、クロロキノキサリン−スルホンアミド(chloroquinoxaline-sulfonamide)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、クロモマイシンA3(chromomycin A3)、シスプラチン(cisplatin)、クラドリビン(cladribine)、コルチコステロイド(corticosteroids)、コリネバクテリリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、塩酸イリノテカン(CPT-11)、クリスナトール(crisnatol)、サイクロシチジン(cyclocytidine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、シタラビン(cytarabine)、シテムベナ(cytembena)、ダビスマレアート(dabis maleate)、ダカルバジン(dacarbazine)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、塩酸ダウノルビシン(daunorubicin HCl)、デアザウリジン(deazauridine)、デクスラゾキサン(dexrazoxane)、ジアンヒドロガラクチトール(dianhydrogalactitol)、ジアジクオン(diaziquone)、ジブロモズルシトール(dibromodulcitol)、ジデムニンB(didemnin B)、ジエチルジチオカルバマート(diethyldithiocarbamate)、ジグリコアルデヒド(diglycoaldehyde)、ジヒドロ‐5‐アザシチジン(dihydro-5-azacytidine)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エキノマイシン(echinomycin)、エダトレキサート(edatrexate)、エデルフォシン(edelfosine)、エフロルニチン(eflomithine)、エリオットの溶液(Elliott's solution)、エルサミトルシン(elsamitrucin)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、エストラムスチンホスファート(estramustine phosphate)、エストロゲン(estrogens)、エタニダゾール(etanidazole)、エチオホス(ethiofos)、エトポシド(etoposide)、ファドラゾール(fadrazole)、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド(fenretinide)、フィルグラスチム(filgrastim)、フィナステリド(finasteride)、フラボン酢酸(flavone acetic acid)、フロクスウリジン(floxuridine)、リン酸フルダラビン(fludarabine phosphate)、5−フルオロウラシル(5-fluorouracil)、フルオゾール(Fluosol)(登録商標)、フルタミド(flutamide)、硝酸ガリウム、ゲムシタビン(gemcitabine)、酢酸ゴセレリン(goserelin acetate)、ヘプスルファム(hepsulfam)、ヘキサメチレンビスアセトアミド(hexamethylene bisacetamide)、ホモハリングトニン(homoharringtonine)、硫酸ヒドラジン(hydrazine sulfate)、4−ヒドロキシアンドロステンジオン(4-hydroxyandrostenedione)、ヒドロキシ尿素(hydrozyurea)、塩酸イダルビシン(idarubicin HCl)、イホスファミド(ifosfamide)、インターフェロンα(interferon alfa)、インターフェロンβ(interferon beta)、インターフェロンγ(interferon gamma)、インターロイキン−1αおよびインターロイキン−1β(interleukin-1 alpha and beta)、インターロイキン−3(interleukin-3)、インターロイキン−4(interleukin-4)、インターロイキン−6(interleukin-6)、4−イポメアノール(4-ipomeanol)、イプロプラチン(iproplatin)、イソトレチノイン(isotretinoin)、ロイコボリンカルシウム(leucovorin calcium)、酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)、レバミソール(levamisole)、リポゾーマル・ダウノルビシン(liposomal daunorubicin)、リポソームカプセル化ドキソルビシン(liposome encapsulated doxorubicin)、ロムスチン(lomustine)、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、塩酸メクロレタミン(mechlorethamine hydrochloride)、メルファラン(melphalan)、メノガリル(menogaril)、メルバロン(merbarone)、6−メルカプトプリン(6-mercaptopurine)、メスナ(mesna)、カルメット・ゲラン菌のメタノール抽出残渣(methanol extraction residue of Bacillus calmette-guerin)、メトトレキサート(methotrexate)、N−メチルホルムアミド(N-methylformamide)、ミフェプリストン(mifepristone)、ミトグアゾン(mitoguazone)、マイトマイシン−C(mitomycin-C)、ミトタン(mitotane)、塩酸ミトキサントロン(mitoxantrone hydrochloride)、単球/マクロファージ・コロニー刺激因子(monocyte/macrophage colony-stimulating factor)、ナビロン(nabilone)、ナホキシジン(nafoxidine)、ネオカルチノスタチン(neocarzinostatin)、酢酸オクトレオチド(octreotide acetate)、オルマプラチン(ormaplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、パクリタキセル(paclitaxel)、パーラ(pala)、ペントスタチン(pentostatin)、ピペラジンジオン(piperazinedione)、ピポブロマン(pipobroman)、ピラルビシン(pirarubicin)、ピリトレキシム(piritrexim)、塩酸ピロキサントロン(piroxantrone hydrochloride)、PIXY-321、プリカマイシン(plicamycin)、ポルフィマーナトリウム(porfimer sodium)、プレドニムスチン(prednimustine)、プロカルバジン(procarbazine)、プロゲスチン(progestins)、ピラゾフリン(pyrazofurin)、ラゾキサン(razoxane)、サルグラモスチム(sargramostim)、セムスチン(semustine)、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、スピロムスチン(spiromustine)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、スロフェヌル(sulofenur)、スラミン・ナトリウム(suramin sodium)、タモキシフェン(tamoxifen)、タキソテール(taxotere)、テガフル(tegafur)、テニポシド(teniposide)、テレフタルアミジン(terephthalamidine)、テロキシロン(teroxirone)、チオグアニン(thioguanine)、チオテパ(thiotepa)、チミジン・インジェクション(thymidine injection)、チアゾフリン(tiazofurin)、トポテカン(topotecan)、トレミフェン(toremifene)、トレチノイン(tretinoin)、塩酸トリフルオペラジン(trifluoperazine hydrochloride)、トリフルリジン(trifluridine)、トリメトレキサート(trimetrexate)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ウラシル・マスタード(uracil mustard)、硫酸ビンブラスチン(vinblastine sulfate)、硫酸ビンクリスチン(vincristine sulfate)、ビンデシン(vindesine)、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンゾリジン(vinzolidine)、ヨシ−864(Yoshi 864)、ゾルビシン(zorubicin)、および、それらの混合物が含まれる。
【0028】
典型的な抗炎症薬には、典型的な非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDS)[例えば、アスピリン(aspirin)、ジクロフェナク(diclofenac)、インドメタシン(indomethacin)、スリンダク(sulindac)、ケトプロフェン(ketoprofen)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、イブプロフェン(ibuprofen)、ナプロキセン(naproxen)、ピロキシカム(piroxicam)、テノキシカム(tenoxicam)、トルメチン(tolmetin)、ケトロラク(ketorolac)、オキサプロシン(oxaprosin)、メフェナム酸(mefenamic acid)、フェノプロフェン(fenoprofen)、ナブメトン(nambumetone)(レラフェン(relafen))、アセトアミノフェン(acetaminophen)(タイレノール(Tylenol)(登録商標))、および、それらの混合物];COX−2阻害剤[例えば、ニメスリド(nimesulide)、NS−398、フロスリド(flosulid)、L−745337、セレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、SC−57666、DuP−697、パレコキシブナトリウム(parecoxib sodium)、JTE−522、バルデコキシブ(valdecoxib)、SC−58125、エトリコキシブ(etoricoxib)、RS−57067、L−748780、L−761066、APHS、エトドラク(etodolac)、メロキシカム(meloxicam)、S−2474、および、それらの混合物];グルココルチコイド(glucocorticoids)[例えば、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、コルチゾン(cortisone)、プレドニゾン(prednisone)、プレドニゾロン(prednisolone)、メチルプレドニゾロン(methylprednisolone)、メプレドニゾン(meprednisone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、パラメタゾン(paramethasone)、フルプレドニソロン(fluprednisolone)、ベータメタゾン(betamethasone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、デゾキシコルチコステロン(desoxycorticosterone)、および、それらの混合物];ならびに、それらの混合物;が含まれる。
【0029】
本出願書類で用いられる「有効量(effective amount)」は、薬理活性物質の量であって、無害であるが、あらゆる医療に付随する妥当な便益/危険比で所望の局所的な効果およびパフォーマンス(effect and performance)、または、所望の全身的な効果およびパフォーマンスを提供するのに十分である量を意味する。
【0030】
図3は、表面2に塗布された、本発明の1種類以上のコーティングの典型的な実施形態を例示する。表面2は、例えば、植え込み可能な医療用具の上に位置する。該コーティングは、生理活性薬剤(例えば、平滑筋細胞の増殖または移動を防止する生理活性薬剤)を担持した高分子膜の第1の層または内層4を含む。第1の層または第1のコーティング4は、1種類以上の生理活性薬剤を含有することができる。
【0031】
生理活性薬剤が高分子マトリックスの内部に配置される1つの方法には、1種類の溶媒または複数種類の溶媒の混合物であって、その中に該生理活性薬剤および該高分子が溶解する該溶媒を使用する工程が含まれる。その混合物が乾燥するにつれて、該生理活性薬剤は該高分子マトリックスの内部に捕捉されたまま、前記溶媒は除去される。高分子の内層/第1の層を作るために使用することのできる典型的な高分子には、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PLLA−ポリ−グリコール酸(PGA)共重合体(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)ポリ−(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバレラート)共重合体(PHBH)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(Teflon)(登録商標))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(ポリ−HEMA)、ポリ(エーテルウレタン尿素)、シリコーン(silicones)、アクリル樹脂(acrylics)、エポキシド(epoxides)、ウレタン、パーレン(parlenes)、ポリホスファゼンポリマー(polyphosphazene polymers)、フルオロポリマー(fluoropolymers)、ポリアミド、ポリオレフィン、および、それらの混合物が含まれる。高分子の内膜/第1の膜を作るために使用することのできる典型的な生体吸収性高分子には、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリリン酸エステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート(polyalkylene oxalates)、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、および、脂肪族ポリカーボネートが含まれる。
【0032】
第2の層または最外層6は、強い抗凝血特性を有する、抗血栓剤ヘパリン‐生体吸収性高分子の複合体を含むことができる。抗血栓剤ヘパリン‐生体吸収性高分子の複合体の第2の層は、第1の層または内層4の中に分散された生理活性薬剤のバースト放出(burst release)を防止する効果を更に有することができ、結果的に、2種類以上の生理活性薬剤を含有し得る層4が比較的長い放出期間を有する。更に複合体6は、親水性ヘパリン8を、疎水性内層4から実質的に離れた方向に配向させる。
【0033】
本発明を説明する目的で、1種類以上のコーティングをステントおよび/またはステント・グラフト(stent-graft)のような医療用具に塗布する。ステントは一般に、ステンレス鋼またはコバルト・クロム合金から製造される金属のような金属で作られる。しかし、ステントは、高分子材料から作ることもできる。また、有機流体と接触するあらゆる基体(substrate)、医療用具、またはそれらの部品、等も本発明品で被覆することができることも理解されるべきである。例えば、他の用具(例えば、大静脈フィルタおよび吻合器具(anastomosis devices))は、コーティングの中に生理活性薬剤を含有する該コーティングを施して使用することができる。あるいは、それらの用具それら自体、高分子材料の中に生理活性薬剤を含有する該高分子材料で作製することができる。本出願書類に記述されるステントまたは他の医療用具のいずれも、生理活性薬剤を局部または局所に送出するために利用することができる。バルーン拡張型ステントは、かなり多数の血管または導管で利用することができ、冠状動脈で使用するのにとりわけ適している。一方、自己拡張型ステントは、破損回復(crush recovery)が重要な要素である血管(例えば、頸動脈)で使用するのにとりわけ適している。
【0034】
第1のコーティングまたは層4、および、第2のコーティングまたは層6は、ステントの全表面2の少なくとも一部分を被覆することが望ましいが、不可欠である訳ではない。第1の層4の塗布は、溶媒蒸発法または他のある既知の方法(例えば、溶媒流延吹付け塗装(solvent cast spray coating))によって達成する。溶媒蒸発法は、高分子材料および生理活性薬剤をテトラヒドロフラン(THF)等の溶媒と混合し、次いで、それらを撹拌して混合物を形成する工程が必要である。第1の層の実例となる高分子材料にはポリウレタンが含まれ、また、実例となる生理活性薬剤にはラパマイシンが含まれる。その混合物は、その溶液をステント上に吹き付けること、または、その溶液の中にステントを浸漬することによって、該ステントの表面2に塗布される。該混合物を塗布した後、該ステントを乾燥工程にかける。乾燥工程の間に、溶媒は蒸発し、次いで、高分子材料および生理活性薬剤は該ステント上に薄膜を形成する。代わりに、第1の層4には複数種類の生理活性薬剤を添加することができる。
【0035】
ステントのコーティングの第2の層または最外層6は、抗血栓剤ヘパリン−生体吸収性高分子の複合体を含有する。抗血栓剤ヘパリン−生体吸収性高分子の複合体は、有機溶媒に、または、様々な極性の複数種の溶媒の混合物に溶解することができる。ヘパリン8には、非分画ヘパリン(unfractionated heparin)、分画ヘパリン(fractionated heparin)、低分子量ヘパリン、脱硫酸化ヘパリン(desulfated heparin)、および、様々な哺乳類源のヘパリンが含まれうる。典型的な抗血栓剤には、ビタミンK拮抗薬[例えば、アセノクマロール(Acenocoumarol)、クロリンジオン(Clorindione)、ジクマロール(Dicumarol, Dicoumarol)、ジフェナジオン(Diphenadione)、ビスクマ酢酸エチル(Ethyl biscoumacetate)、フェンプロクモン(Phenprocoumon)、フェニンジオン(Phenindione)、チオクロマロール(Tioclomarol)、ワルファリン(Warfarin)];ヘパリン基血小板凝集阻害剤(Heparin group anti-platelet aggregation inhibitors)[例えば、抗トロンビンIII(Antithrombin III)、ベミパリン(Bemiparin)、ダルテパリン(Dalteparin)、ダナパロイド(Danaparoid)、エノキサパリン(Enoxaparin)、ヘパリン(Heparin)、ナドロパリン(Nadroparin)、パルナパリン(Parnaparin)、レビパリン(Reviparin)、スロデキシド(Sulodexide)、チンザパリン(Tinzaparin)];他の血小板凝集阻害剤(platelet aggregation inhibitors)[例えば、アブシキシマブ(Abciximab)、アセチルサリチル酸(Acetylsalicylic acid)(アスピリン(Aspirin))、アロキシプリン(Aloxiprin)、ベラプロスト(Beraprost)、ジタゾール(Ditazole)、カルバサラートカルシウム(Carbasalate calcium)、クロリクロメン(Cloricromen)、クロピドグレル(Clopidogrel)、ジピリダモール(Dipyridamole)、エプチフィバチド(Eptifibatide)、インドブフェン(Indobufen)、イロプロスト(Iloprost)、ピコタミド(Picotamide)、プラスグレル(Prasugrel)、プロスタサイクリン(Prostacyclin)、チクロピジン(Ticlopidine)、チロフィバン(Tirofiban)、トレプロスチニル(Treprostinil)、トリフルサール(Triflusal)];酵素抗凝血剤(enzymatic anticoagulants)[例えば、アルテプラーゼ(Alteplase)、アンクロド(Ancrod)、アニストレプラーゼ(Anistreplase)、ブリナーゼ(Brinase)、ドロトレコジン・アルファ(Drotrecogin alfa)、フィブリノリジン(Fibrinolysin)、プロテインC(Protein C)、レテプラーゼ(Reteplase)、サルプラーゼ(Saruplase)、ストレプトキナーゼ(Streptokinase)、テネクテプラーゼ(Tenecteplase)、ウロキナーゼ(Urokinase)];直接トロンビン阻害物質[例えば、アルガトロバン(Argatroban)、ビバリルジン(Bivalirudin)、ダビガトラン(Dabigatran)、デシルジン(Desirudin)、ヒルジン(Hirudin)、レピルジン(Lepirudin)、メラガトラン(Melagatran)、キシメラガトラン(Ximelagatran)];ならびに、他の抗血栓剤[例えば、ダビガトラン(Dabigatran)、デフィブロチド(Defibrotide)、デルマタンスルファート(Dermatan sulfate)、フォンダパリヌクス(Fondaparinux)、リバロキサバン(Rivaroxaban)]が含まれうる。
【0036】
図1および図2に示されるように、典型的な、抗血栓剤ヘパリン−生体適合性共重合体の複合体は、次のように調製する。先ず、図1に示されるように、触媒のオクタン酸第一スズ[Sn(Oct)]と、開環重合開始剤としての所定量の(PVA,水溶性となるように十分に加水分解された)ポリ(ビニルアルコール)との存在の下、d,l−ラクチドの環状二量体を約140℃の高温で重合させる。開環重合によって結果的に、複数個のヒドロキシル末端基を有するポリエステルの単独重合体を含有する最終生成物が得られる。各々の高分子の分子量は、該環状二量体と該PVA重合開始剤との間の比によって決定する。[該環状二量体]対[該重合開始剤]比が大きければ大きいほど、PVA−PLA共重合体の分子量は大きくなる。
【0037】
本発明の1つの実施形態において、前記の最終のPVA−PLA共重合体の一方の端部のヒドロキシル基は、ヘパリン分子との後続の複合化反応で使用することのできるカルボキシル基に更に転化することができる。最終の抗血栓剤ヘパリン−生体吸収性高分子の複合体を作るためのカップリング反応では、あらゆるヘパリン分子、リコンビナント・ヘパリン(recombinant heparin)、ヘパリン誘導体または(1.66×10−21g(1,000ダルトン)〜1.66×10−18g(1,000,000ダルトン)の好ましい重量を有する)ヘパリン類似体を使用することができるが、脱硫酸化ヘパリンを使用して、該反応のカップリング効率を高めることが好ましい。
【0038】
ひとたび、抗血栓剤ヘパリン−生体吸収性高分子の複合体が調製されてしまえば、溶媒蒸発法または他の適切な方法を使用して、抗血栓剤ヘパリン−生体適合性共重合体の複合体を含む第2の層を、第1の層の上に直接塗布することができる。植え込み可能な医療用具の表面から溶媒が蒸発した後、抗血栓剤ヘパリン−生体吸収性高分子の複合体を含む薄膜が、用具の最外表面の上に形成される。代わりに、抗血栓性かつ生体適合性の櫛状共重合体は、薬剤溶出性用具に添加される前、生理活性薬剤を更に含有するミクロスフェアまたはナノスフィアの形態に加工処理されることが可能である。
【0039】
次の諸実施例は、本発明の原理による前記複合体の製造方法および使用方法を例示する。
【0040】
実施例1 重合開始剤としてポリ(ビニルアルコール),PVAを用いたラクトン二量体(ラクチド)の開環重合による、生分解性櫛状PLA(ポリ乳酸)の調製
図1に示されるように、(米国、ピューラック社(Purac)からの)所定量のd,l−ラクチドを、電磁撹拌棒を備えた乾燥丸底ガラス反応器に移す。所定量のポリ(ビニルアルコール)[例えば、デュポン社(Du Pont, Inc.)からの、十分に加水分解されたエルバノール(Elvanol)70−03]と、オクタン酸第一スズ(米国セントルイス(St. Louis)、シグマ社(Sigma))と、を該ガラス反応器に添加する。次いで、該ガラス反応器は、栓(stopper)で密封して、アルゴンガスと真空との間を3回循環させ、該反応器内部の空気および酸素を除去する。次いで、その密封した反応器は、真空下、140℃まで徐々に加熱して、該電磁撹拌棒で撹拌し続ける。反応が終了した時、その高分子は、塩化メチレンに溶解させ、次いで、メタノールに沈降させ、次いで、真空および低温で乾燥させる。
【0041】
実施例2 抗血栓剤ヘパリンと生体吸収性高分子との櫛状複合体の調製
図2に示されるように、櫛状PLA(ポリ乳酸)[例えば、上記の実施例1に従って作り出された櫛状PLA]を無水ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、次いで、無水コハク酸およびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を溶解させる。結果として得られる溶液は、真空の下、室温で5時間の間保持する。副産物のジシクロヘキシル尿素(DCU)ならびに未反応のDCCおよびNHSは、濾過して除去する。次いで、結果として得られる中間体は、メタノールに再沈降させ、次いで、真空オーブンで乾燥させる。次いで、カルボン酸で端末キャップされた中間体は、ジメチルホルムアミドに入っているN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を添加することによって活性化し、次いで、室温でヘパリンと4時間の間更に反応させて、本発明の生分解性の高分子−ヘパリン櫛状複合体の最終の櫛状複合体を作る。該最終複合体は、沈降させ、次いで、凍結乾燥させる。
【0042】
実施例3 被吸収性高分子とヘパリンとの櫛状複合体を含む最外層による薬剤溶出性ステントの被覆
図3に示されるように、薬剤を含有する高分子溶液であって、例えば、酢酸エチル(EA)含有PLGAとラパマイシン(rapamycin)とを含むことができる高分子溶液を、コバルト・クロムのステントの表面10に吹き付け塗装する。PLGAとラパマイシンとの間の重量比は、2:1である。該薬剤含有層20を乾燥させた後、被吸収性の高分子−ヘパリン櫛状複合体を含有するコーティング溶液を、第1の薬剤含有層20の上に吹き付け塗装する。該層が乾燥した後、最外表面に被吸収性高分子−ヘパリン櫛状複合体を含有する薄膜30が形成される。
【0043】
上述のコーティングのようなコーティングは薄く、典型的には深さが5〜8μmである場合がある。ステント等の用具の表面積は他と比べると非常に大きいので、有益薬剤の全体積は、非常に短い拡散経路を有して周辺組織の中に送り出される。結果として得られる、薬剤の累積放出プロフィールは、望ましい「均一な持続放出」すなわち線形放出(linear release)ではなく、漸近線までの急接近が後に続く、大きな初期バースト(initial burst)により特徴付けられる。ステント等の用具からの治療薬剤の溶出パターンに変化を付けることは、しばしば望ましい。加えて、該用具に沿った様々な位置の薬剤の量に変化を付けることも望ましい。このことは、該用具の構造的特徴部(structural feature)の内部に薬剤を配置することによって達成することができる。
【0044】
図5に示されるように、拡張可能な用具は、該用具上に少なくとも1種の薬剤を配置するのを容易にする複数個の構造的特徴部を有する。図5に例示される拡張可能な医療用具10は、拡張可能な円筒形用具を形成するために管材料から切り取ることができる。拡張可能な医療用具10は、複数個の架橋要素(bridging elements)14によって相互連結されている複数個の円筒形部分12を含む。該医療用具を血管系の曲がりくねった経路に通して配置部位まで通過させるとき、架橋要素14によって該医療用具を軸方向に曲げることが可能であり、しかも、該医療用具を内腔の湾曲に一致させる必要があるとき、架橋要素14によって該医療用具を軸方向に曲げることが可能である。複数個の細長いストラット(struts)18であって、複数個の延性ヒンジ(ductile hinges)20と複数個の円周方向ストラット(circumferential struts)22とによって相互連結されている、ストラット18の網状構造は、円筒形管12を構成する。医療用具10が拡張される間、延性ヒンジ20は変形するのに対し、ストラット18は変形しない。拡張可能な医療用具の例の更なる詳細は、米国特許第6,241,762号明細書に記述されている。この米国特許明細書は、参照されることによってそっくりそのまま本明細書に組み入れられる。
【0045】
複数個の細長いストラット18および複数個の円周方向ストラット22は、複数個の構造的特徴部(例えば、複数個の開口30)を含み、該開口30の幾つかは、拡張可能な医療用具が植え込まれる内腔に送出される薬剤で選択的に充填されている。開口30の深さは、ストラット22の厚さに左右される。他の構造的特徴部には、隆起した部分または窪み(dimples);スリット(slits:細長い孔);細長い開口;付加された材料;および、拡張可能な医療用具の上に配置することが望ましい物質を捕捉することができるか、または含有することのできるあらゆる特徴部;が含まれうる。更に、医療用具10の他の部分(例えば、架橋要素14)は、構造的特徴部を含むことができる。図5に示される特定の例において、複数個の開口30は、医療用具10の非変形部分(例えば、ストラット18)に設けられる。そのために、開口30は非変形性であり、該医療用具が拡張される間、薬剤は、破損する危険性も、押し出される危険性も、損傷する危険性もなく、送り出される。有益薬剤を開口30内部に担持させることのできる方法の1つの例の更なる記述は、米国特許第6,764,507号明細書に記述されている。この米国特許明細書は、参照されることによってそっくりそのまま本明細書に組み入れられる。
【0046】
図5に示される用具の構造的特徴部の内部に1種類または複数種類の薬剤を配置するのを容易にするため、治療薬剤のためのキャリヤとしての、高分子とヘパリンとの櫛状複合体を利用して、図4に示されるような粒子40を作り出すことができる。この実施形態において、薬剤42は、櫛状高分子44の疎水性コア46に幾分結合している。後で蒸発して該薬剤を粒子のコアの所に含有する該粒子を作り出す溶媒を使用して、薬剤42を複合体と共溶解させる。これらの粒子は、図5に例示されるような用具の構造の内部に配置するのに理想的に適している。例えば、用具は、ウェル、刻み目、ひだまたは溝のような複数個の構造的特徴部であって、それらの中に粒子を有する、構造的特徴部を有することができる。このことによって、異なる特性を有する諸粒子を、該用具に沿った様々な位置に配置することが可能になる。更に、少なくとも2種類の異なる薬剤を有する粒子を、同一の構造的特徴部の内部に配置することができる。それらの粒子が分解されるにつれて、薬剤は該構造的特徴部から放出される。同時に、ヘパリンが存在することによって、該用具の配置部位における血栓症が防止される。
【0047】
図6は、図5の用具10の開口50の横断面図を例示する。複数個の粒子40が、2つの層52および54の間に配置されている。層52および54の組成および厚さを変化させて、水性環境に対する粒子40の暴露量(exposure)を制御することができる。このことによって、粒子40のコア内部からの薬剤の放出が制御される。加えて、それらの粒子を単一物質と混合して、用具10の開口50の内部に配置することができる。
【0048】
用具の構造的特徴部の上に、または、構造的特徴部の内部に配置するためのナノ粒子およびミクロ粒子を形成するための方法の例を以下に示す。
【0049】
実施例4 被吸収性の櫛状高分子とヘパリンおよびパクリタキセルとを用いたナノ粒子の形成
パクリタキセル(Paclitaxel)20mgと、ポリ(ラクチド・グリコリド共重合体)、PLGA50/50 200mgとを、穏やかに撹拌しながら、塩化メチレン16mLに溶解させる。形成された溶液は、乳化剤としての(ポリビニルアルコール)(PVA)4%を含有する水溶液250mLに移す。その混合溶液は、超音波処理器のパルスモードのエネルギー出力50mWで90秒間の間超音波処理する。次いで、そのエマルションは、室温で一晩中撹拌して溶媒を除去する。このことによって、パクリタキセルを含有するナノスフィアが形成される。該ナノスフィアを、12000rpmで30分間の間遠心分離して回収し、更にまた、脱イオン水で4回洗浄して過剰の乳化剤を除去する。次いで、生成物は、塗布前に凍結乾燥させる。
【0050】
実施例5 被吸収性の櫛状高分子とヘパリンおよびパクリタキセルとを用いたミクロ粒子の形成
パクリタキセル20mgと、ポリ(ラクチド・グリコリド共重合体)、PLGA50/50、200mgとを穏やかに撹拌しながら、酢酸エチル(EA)16mLに溶解させる。水(注射用水)80mLを50℃まで加熱し、次いで、磁気撹拌プレートで撹拌し続ける。所定量の乳化剤(PVA,0.4g)を添加して水溶液を形成する。次いで、該水溶液を、連続的に撹拌しながら室温まで冷却する。穏やかに撹拌しながら、該水溶液に酢酸エチル(3.2mL)を添加する。次いで、500rpmで撹拌されている乳化済み水溶液に、パクリタキセルとPLGAとの溶液をゆっくり注ぐ。該エマルションは室温で4時間の間更に撹拌して、ミクロスフェアを固化する。次いで、最終のミクロスフェアを、濾過を行って回収し、次いで、注射用水で2回洗浄する。最終のミクロスフェアは、その後使用する前、一晩中、凍結乾燥する。
【0051】
図4は、上記の実施例に従って作製された粒子であって、図5に示される用具の開口内部に配置される、粒子を示す。該粒子は、静電沈着法等の乾燥粉末堆積法(dry powder deposition method)によって、これらの開口の内部に配置することができる。これらの粒子を含有する用具は、溶媒噴霧法(solvent spray process)等の方法を用いて薬剤の放出反応速度を調節するために更に処理することができる。薬剤の放出反応速度を更に調節するために、開口を更なる被覆剤で覆って、薬剤の放出反応速度を調節することができる。
【0052】
本発明は、特定の好ましい諸実施形態について上述されてきたが、本発明の趣旨または本質的特性から逸脱することなく、これらの構想に対して多くの部分的変更および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲を示すものとしては、前述の明細事項ではなく特許請求の範囲を参照すべきである。提供された記述は、説明目的のために提供されており、本発明を限定するようには意図されていない。更に、それらの記述は、使用方法の範囲・分野を何ら制限するようには意図されておらず、また、排除に関する明白ないかなる用語をも構成するようには意図されていない。
【0053】
〔実施の態様〕
(1)複合体材料において、
生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体、
を含み、
実質的に全ての側鎖は、抗血栓剤に結合している、複合体材料。
(2)実施態様1に記載の複合体材料において、
前記抗血栓剤は、ヘパリンである、複合体材料。
(3)実施態様2に記載の複合体材料において、
前記ヘパリンは、低分子量ヘパリンである、複合体材料。
(4)実施態様2に記載の複合体材料において、
前記ヘパリンは、脱硫酸化ヘパリンである、複合体材料。
(5)実施態様1に記載の複合体材料において、
前記生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体は、ポリビニルアルコール、および生分解性ポリエステルを含む、複合体材料。
(6)実施態様5に記載の複合体材料において、
前記ポリビニルアルコールは、生理学的条件下で水溶性となるように十分に加水分解されている、複合体材料。
(7)実施態様6に記載の複合体材料において、
前記ポリビニルアルコールの分子量は、8.30×10−20g(50,000ダルトン)以下である、複合体材料。
(8)実施態様5に記載の複合体材料において、
前記生分解性ポリエステルは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート・バレラート共重合体)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸・トリメチレンカーボネート共重合体)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、脂肪族ポリカーボネート、および、ポリ(エーテルエステル共重合体)から成る群から選ばれている、複合体材料。
(9)実施態様1に記載の複合体材料において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVA−PLA共重合体を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含み、
前記複合体は、次の構造を有し:
【化1】

式中、
nは2〜1000の整数であり、
mは100〜5000の整数であり、
LAは乳酸の繰り返し単位であり、
SAはコハク酸であり、
Hpはヘパリンである、
複合体材料。
(10)実施態様1に記載の複合体材料において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、l,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、複合体材料。
【0054】
(11)実施態様1に記載の複合体材料において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、d,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、複合体材料。
(12)コーティングにおいて、
表面に塗布された第1の生体吸収性高分子と、
前記第1の生体吸収性高分子の内部に含有されている薬剤と、
生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体を含む複合体材料であって、実質的に全ての側鎖は抗血栓剤により伸ばされており、前記複合体は前記第1の生体吸収性高分子の最上面に塗布されている、複合体材料と、
を含む、コーティング。
(13)実施態様12に記載のコーティングにおいて、
前記複合体の前記抗血栓剤の分子は、前記第1の生体吸収性高分子の層から遠位に実質的に位置されている、コーティング。
(14)実施態様12に記載のコーティングにおいて、
前記抗血栓剤の分子は、ヘパリンを含む、コーティング。
(15)実施態様12に記載のコーティングにおいて、
前記薬剤は、ラパマイシン、パクリタキセル、およびピメクロリムスから成る群から選ばれた抗再狭窄剤である、コーティング。
(16)実施態様12に記載のコーティングにおいて、
前記第1の生体吸収性高分子は、第1の共重合体を含み、
第2の生体吸収性高分子は、PVAであって、それの側鎖の実質的に全てが第2の生体吸収性共重合体によって伸ばされている、PVAを含む、コーティング。
(17)実施態様16に記載のコーティングにおいて、
前記第1および第2の共重合体は、同一であり、かつ、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート・バレラート共重合体)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸・トリメチレンカーボネート共重合体)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、脂肪族ポリカーボネート、および、ポリ(エーテルエステル共重合体)から成る群から選ばれている、コーティング。
(18)実施態様12に記載のコーティングにおいて、
前記第1の生体吸収性高分子は、単独重合体である、コーティング。
(19)実施態様12に記載のコーティングにおいて、
前記生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体は、PVAと、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリリン酸エステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、および脂肪族ポリカーボネートから成る群から選ばれた生体吸収性単独重合体と、を含む、コーティング。
(20)実施態様12に記載のコーティングにおいて、
前記第1の生体吸収性高分子は、単独重合体を含み、
前記第2の生体吸収性高分子は、PVAであって、それの側鎖の実質的に全てが第2の生体吸収性共重合体によって伸ばされている、PVAを含む、コーティング。
【0055】
(21)実施態様12に記載のコーティングにおいて、
前記コーティングは、植え込み可能な医療用具に塗布されている、コーティング。
(22)実施態様21に記載のコーティングにおいて、
前記医療用具は、ステントを含む、コーティング。
(23)抗血栓剤複合体を形成するための方法において、
少なくとも1種の環状ラクトン分子を提供する工程と、
前記少なくとも1種の環状ラクトン分子の開環重合で、重合開始剤としてPVAを用いて生体吸収性共重合体を形成する工程と、
前記生体吸収性共重合体を、ジカルボン酸無水物およびヘパリンにより逐次伸ばす工程と、
を含む、方法。
(24)実施態様23に記載の方法において、
前記少なくとも1種の環状ラクトン分子は、ラクチドを含む、方法。
(25)実施態様23に記載の方法において、
前記少なくとも1種の環状ラクトン分子は、グリコリドを含む、方法。
(26)実施態様23に記載の方法において、
前記少なくとも1種の環状ラクトン分子は、カプロラクトンを含む、方法。
(27)実施態様23に記載の方法において、
第2のラクトン分子を提供する工程、
をさらに含む、方法。
(28)実施態様23に記載の方法において、
前記ジカルボン酸無水物のカップリング剤は、無水コハク酸である、方法。
(29)実施態様23に記載の方法において、
前記ジカルボン酸無水物のカップリング剤は、無水フマル酸である、方法。
(30)実施態様23に記載の方法において、
前記ジカルボン酸無水物のカップリング剤は、無水セバシン酸である、方法。
【0056】
(31)治療薬剤のためのキャリヤとして、高分子・抗血栓剤複合体を利用して、複数個の粒子を作る方法において、
少なくとも1種の溶媒に治療薬剤および高分子・抗血栓剤複合体を溶解して、第1の溶液を形成する工程と、
前記第1の溶液を、水および少なくとも1種の界面活性剤を含む第2の水溶液と混合して、エマルションを形成する工程と、
前記エマルションから前記溶媒を除去して複数個の粒子を形成する工程と、
を含む、方法。
(32)実施態様31に記載の方法において、
前記複合体は、生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体であって、側鎖の実質的に全てが抗血栓剤によって伸ばされる、共重合体を含む、方法。
(33)実施態様31に記載の方法において、
前記抗血栓剤は、ヘパリンである、方法。
(34)実施態様33に記載の方法において、
前記ヘパリンは、低分子量ヘパリンである、方法。
(35)実施態様33に記載の方法において、
前記ヘパリンは、脱硫酸化ヘパリンである、方法。
(36)実施態様31に記載の方法において、
前記生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体は、ポリビニルアルコール、および生分解性ポリエステルを含む、方法。
(37)実施態様36に記載の方法において、
前記ポリビニルアルコールは、生理学的条件の下で水溶性となるように十分に加水分解されている、方法。
(38)実施態様37に記載の方法において、
前記ポリビニルアルコールの分子量は、8.30×10−20g(50,000ダルトン)以下である、方法。
(39)実施態様36に記載の方法において、
前記生分解性ポリエステルは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート・バレラート共重合体)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸・トリメチレンカーボネート共重合体)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、脂肪族ポリカーボネート、および、ポリ(エーテルエステル共重合体)から成る群から選ばれる、方法。
(40)実施態様31に記載の方法において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVA−PLA共重合体を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含み、
前記複合体は、次の構造を有し:
【化2】

式中、
nは2〜1000の整数であり、
mは100〜5000の整数であり、
LAは乳酸の繰り返し単位であり、
SAはコハク酸であり、
Hpはヘパリンである、
方法。
【0057】
(41)実施態様31に記載の方法において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、l,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、方法。
(42)実施態様31に記載の方法において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、d,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、方法。
(43)実施態様31に記載の方法において、
前記複数個の粒子は、ミクロ粒子を含む、方法。
(44)実施態様31に記載の方法において、
前記複数個の粒子は、ナノ粒子を含む、方法。
(45)用具において、
第1の直径から第2の直径まで拡張可能なフレームであって、前記フレームは内部表面および外部表面を有しており、それらの表面の間の距離は、前記フレームの壁厚を画定している、フレームと、
前記フレームに沿って配されている複数個の構造的特徴部と、
前記複数個の構造的特徴部の内部に位置されている、高分子・抗血栓剤複合体の複数個の粒子と、
を含む、用具。
(46)実施態様45に記載の用具において、
前記複数個の構造的特徴部は、前記フレームの表面の上に配された隆起部を含む、用具。
(47)実施態様45に記載の用具において、
前記複数個の構造的特徴部は、前記フレームの中に形成された複数個のウェルを含む、用具。
(48)実施態様47に記載の用具において、
前記ウェルは、前記外部表面から前記内部表面まで延びている、用具。
(49)実施態様47に記載の用具において、
前記複数個のウェルは、前記複数個の粒子で充填されている、用具。
(50)実施態様45に記載の用具において、
前記高分子・抗血栓剤複合体の複数個の粒子は、治療薬剤のためのキャリヤとしての機能を果たしている、用具。
【0058】
(51)実施態様50に記載の用具において、
前記抗血栓剤複合体は、生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体であって、側鎖の実質的に全てが抗血栓剤によって伸ばされている、共重合体を含む、用具。
(52)実施態様51に記載の用具において、
前記抗血栓剤は、ヘパリンである、用具。
(53)実施態様52に記載の用具において、
前記ヘパリンは、低分子量ヘパリンである、用具。
(54)実施態様53に記載の用具において、
前記ヘパリンは、脱硫酸化ヘパリンである、用具。
(55)実施態様51に記載の用具において、
前記生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体は、ポリビニルアルコール、および生分解性ポリエステルを含む、用具。
(56)実施態様55に記載の用具において、
前記ポリビニルアルコールは、生理学的条件下で水溶性となるように十分に加水分解されている、用具。
(57)実施態様56に記載の用具において、
前記ポリビニルアルコールの分子量は、8.30×10−20g(50,000ダルトン)以下である、用具。
(58)実施態様55に記載の用具において、
前記生分解性ポリエステルは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート・バレラート共重合体)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸・トリメチレンカーボネート共重合体)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、脂肪族ポリカーボネート、および、ポリ(エーテルエステル共重合体)から成る群から選ばれている、用具。
(59)実施態様55に記載の用具において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVA−PLA共重合体を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含み、
前記複合体は、次の構造を有し:
【化3】

式中、
nは2〜1000の整数であり、
mは100〜5000の整数であり、
LAは乳酸の繰り返し単位であり、
SAはコハク酸であり、
Hpはヘパリンである、
用具。
(60)実施態様55に記載の用具において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、l,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、用具。
【0059】
(61)実施態様55に記載の用具において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、d,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、用具。
(62)実施態様55に記載の用具において、
前記複数個の粒子は、ミクロ粒子を含む、用具。
(63)実施態様55に記載の用具において、
前記複数個の粒子は、ナノ粒子を含む、用具。
(64)実施態様55に記載の用具において、
前記フレームの表面に塗布された抗血栓性コーティング、
をさらに含む、用具。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】重合開始剤としてポリビニルアルコール(PVA)を用いた、ラクトン二量体(ラクチド)の開環重合であって、櫛状高分子を形成する該開環重合の概略図である。
【図2】PVAで開始されたPLA(ポリ乳酸)の生分解性櫛状高分子に対するヘパリンの結合の概略図である。
【図3】本発明の、生分解性櫛状ポリエステルとヘパリンとの複合体であって、用具の表面に塗布された外層の中に存在する該複合体を有するコーティングの概略図である。
【図4】本発明の、生分解性櫛状ポリエステルとヘパリンとの複合体であって、最初に薬剤と組み合わされてナノ粒子またはミクロスフェアを形成している該複合体を示す概略図である。
【図5】拡張可能な医療用具の構造的特徴部の中に粒子が選択的に配置されている、該医療用具の等角図である。
【図6】第1の複数個の穴部の中に本発明による粒子を有している拡張可能な医療用具の横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体材料において、
生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体、
を含み、
実質的に全ての側鎖は、抗血栓剤に結合している、複合体材料。
【請求項2】
請求項1に記載の複合体材料において、
前記抗血栓剤は、ヘパリンである、複合体材料。
【請求項3】
請求項2に記載の複合体材料において、
前記ヘパリンは、低分子量ヘパリンである、複合体材料。
【請求項4】
請求項2に記載の複合体材料において、
前記ヘパリンは、脱硫酸化ヘパリンである、複合体材料。
【請求項5】
請求項1に記載の複合体材料において、
前記生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体は、ポリビニルアルコール、および生分解性ポリエステルを含む、複合体材料。
【請求項6】
請求項5に記載の複合体材料において、
前記ポリビニルアルコールは、生理学的条件下で水溶性となるように十分に加水分解されている、複合体材料。
【請求項7】
請求項6に記載の複合体材料において、
前記ポリビニルアルコールの分子量は、8.30×10−20g(50,000ダルトン)以下である、複合体材料。
【請求項8】
請求項5に記載の複合体材料において、
前記生分解性ポリエステルは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート・バレラート共重合体)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸・トリメチレンカーボネート共重合体)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、脂肪族ポリカーボネート、および、ポリ(エーテルエステル共重合体)から成る群から選ばれている、複合体材料。
【請求項9】
請求項1に記載の複合体材料において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVA−PLA共重合体を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含み、
前記複合体は、次の構造を有し:
【化1】

式中、
nは2〜1000の整数であり、
mは100〜5000の整数であり、
LAは乳酸の繰り返し単位であり、
SAはコハク酸であり、
Hpはヘパリンである、
複合体材料。
【請求項10】
請求項1に記載の複合体材料において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、l,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、複合体材料。
【請求項11】
請求項1に記載の複合体材料において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、d,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、複合体材料。
【請求項12】
コーティングにおいて、
表面に塗布された第1の生体吸収性高分子と、
前記第1の生体吸収性高分子の内部に含有されている薬剤と、
生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体を含む複合体材料であって、実質的に全ての側鎖は抗血栓剤により伸ばされており、前記複合体は前記第1の生体吸収性高分子の最上面に塗布されている、複合体材料と、
を含む、コーティング。
【請求項13】
請求項12に記載のコーティングにおいて、
前記複合体の前記抗血栓剤の分子は、前記第1の生体吸収性高分子の層から遠位に実質的に位置されている、コーティング。
【請求項14】
請求項12に記載のコーティングにおいて、
前記抗血栓剤の分子は、ヘパリンを含む、コーティング。
【請求項15】
請求項12に記載のコーティングにおいて、
前記薬剤は、ラパマイシン、パクリタキセル、およびピメクロリムスから成る群から選ばれた抗再狭窄剤である、コーティング。
【請求項16】
請求項12に記載のコーティングにおいて、
前記第1の生体吸収性高分子は、第1の共重合体を含み、
第2の生体吸収性高分子は、PVAであって、それの側鎖の実質的に全てが第2の生体吸収性共重合体によって伸ばされている、PVAを含む、コーティング。
【請求項17】
請求項16に記載のコーティングにおいて、
前記第1および第2の共重合体は、同一であり、かつ、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート・バレラート共重合体)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸・トリメチレンカーボネート共重合体)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、脂肪族ポリカーボネート、および、ポリ(エーテルエステル共重合体)から成る群から選ばれている、コーティング。
【請求項18】
請求項12に記載のコーティングにおいて、
前記第1の生体吸収性高分子は、単独重合体である、コーティング。
【請求項19】
請求項12に記載のコーティングにおいて、
前記生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体は、PVAと、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリリン酸エステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、および脂肪族ポリカーボネートから成る群から選ばれた生体吸収性単独重合体と、を含む、コーティング。
【請求項20】
請求項12に記載のコーティングにおいて、
前記第1の生体吸収性高分子は、単独重合体を含み、
前記第2の生体吸収性高分子は、PVAであって、それの側鎖の実質的に全てが第2の生体吸収性共重合体によって伸ばされている、PVAを含む、コーティング。
【請求項21】
請求項12に記載のコーティングにおいて、
前記コーティングは、植え込み可能な医療用具に塗布されている、コーティング。
【請求項22】
請求項21に記載のコーティングにおいて、
前記医療用具は、ステントを含む、コーティング。
【請求項23】
抗血栓剤複合体を形成するための方法において、
少なくとも1種の環状ラクトン分子を提供する工程と、
前記少なくとも1種の環状ラクトン分子の開環重合で、重合開始剤としてPVAを用いて生体吸収性共重合体を形成する工程と、
前記生体吸収性共重合体を、ジカルボン酸無水物およびヘパリンにより逐次伸ばす工程と、
を含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、
前記少なくとも1種の環状ラクトン分子は、ラクチドを含む、方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法において、
前記少なくとも1種の環状ラクトン分子は、グリコリドを含む、方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法において、
前記少なくとも1種の環状ラクトン分子は、カプロラクトンを含む、方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法において、
第2のラクトン分子を提供する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法において、
前記ジカルボン酸無水物のカップリング剤は、無水コハク酸である、方法。
【請求項29】
請求項23に記載の方法において、
前記ジカルボン酸無水物のカップリング剤は、無水フマル酸である、方法。
【請求項30】
請求項23に記載の方法において、
前記ジカルボン酸無水物のカップリング剤は、無水セバシン酸である、方法。
【請求項31】
治療薬剤のためのキャリヤとして、高分子・抗血栓剤複合体を利用して、複数個の粒子を作る方法において、
少なくとも1種の溶媒に治療薬剤および高分子・抗血栓剤複合体を溶解して、第1の溶液を形成する工程と、
前記第1の溶液を、水および少なくとも1種の界面活性剤を含む第2の水溶液と混合して、エマルションを形成する工程と、
前記エマルションから前記溶媒を除去して複数個の粒子を形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、
前記複合体は、生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体であって、側鎖の実質的に全てが抗血栓剤によって伸ばされる、共重合体を含む、方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法において、
前記抗血栓剤は、ヘパリンである、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、
前記ヘパリンは、低分子量ヘパリンである、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法において、
前記ヘパリンは、脱硫酸化ヘパリンである、方法。
【請求項36】
請求項31に記載の方法において、
前記生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体は、ポリビニルアルコール、および生分解性ポリエステルを含む、方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、
前記ポリビニルアルコールは、生理学的条件の下で水溶性となるように十分に加水分解されている、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法において、
前記ポリビニルアルコールの分子量は、8.30×10−20g(50,000ダルトン)以下である、方法。
【請求項39】
請求項36に記載の方法において、
前記生分解性ポリエステルは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート・バレラート共重合体)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸・トリメチレンカーボネート共重合体)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、脂肪族ポリカーボネート、および、ポリ(エーテルエステル共重合体)から成る群から選ばれる、方法。
【請求項40】
請求項31に記載の方法において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVA−PLA共重合体を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含み、
前記複合体は、次の構造を有し:
【化2】

式中、
nは2〜1000の整数であり、
mは100〜5000の整数であり、
LAは乳酸の繰り返し単位であり、
SAはコハク酸であり、
Hpはヘパリンである、
方法。
【請求項41】
請求項31に記載の方法において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、l,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、方法。
【請求項42】
請求項31に記載の方法において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、d,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、方法。
【請求項43】
請求項31に記載の方法において、
前記複数個の粒子は、ミクロ粒子を含む、方法。
【請求項44】
請求項31に記載の方法において、
前記複数個の粒子は、ナノ粒子を含む、方法。
【請求項45】
用具において、
第1の直径から第2の直径まで拡張可能なフレームであって、前記フレームは内部表面および外部表面を有しており、それらの表面の間の距離は、前記フレームの壁厚を画定している、フレームと、
前記フレームに沿って配されている複数個の構造的特徴部と、
前記複数個の構造的特徴部の内部に位置されている、高分子・抗血栓剤複合体の複数個の粒子と、
を含む、用具。
【請求項46】
請求項45に記載の用具において、
前記複数個の構造的特徴部は、前記フレームの表面の上に配された隆起部を含む、用具。
【請求項47】
請求項45に記載の用具において、
前記複数個の構造的特徴部は、前記フレームの中に形成された複数個のウェルを含む、用具。
【請求項48】
請求項47に記載の用具において、
前記ウェルは、前記外部表面から前記内部表面まで延びている、用具。
【請求項49】
請求項47に記載の用具において、
前記複数個のウェルは、前記複数個の粒子で充填されている、用具。
【請求項50】
請求項45に記載の用具において、
前記高分子・抗血栓剤複合体の複数個の粒子は、治療薬剤のためのキャリヤとしての機能を果たしている、用具。
【請求項51】
請求項50に記載の用具において、
前記抗血栓剤複合体は、生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体であって、側鎖の実質的に全てが抗血栓剤によって伸ばされている、共重合体を含む、用具。
【請求項52】
請求項51に記載の用具において、
前記抗血栓剤は、ヘパリンである、用具。
【請求項53】
請求項52に記載の用具において、
前記ヘパリンは、低分子量ヘパリンである、用具。
【請求項54】
請求項53に記載の用具において、
前記ヘパリンは、脱硫酸化ヘパリンである、用具。
【請求項55】
請求項51に記載の用具において、
前記生体適合性かつ生体吸収性の櫛状共重合体は、ポリビニルアルコール、および生分解性ポリエステルを含む、用具。
【請求項56】
請求項55に記載の用具において、
前記ポリビニルアルコールは、生理学的条件下で水溶性となるように十分に加水分解されている、用具。
【請求項57】
請求項56に記載の用具において、
前記ポリビニルアルコールの分子量は、8.30×10−20g(50,000ダルトン)以下である、用具。
【請求項58】
請求項55に記載の用具において、
前記生分解性ポリエステルは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ−D,L−乳酸(DL−PLA)、ポリ−L−乳酸(L−PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート・バレラート共重合体)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸・トリメチレンカーボネート共重合体)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステル・ウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、脂肪族ポリカーボネート、および、ポリ(エーテルエステル共重合体)から成る群から選ばれている、用具。
【請求項59】
請求項55に記載の用具において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVA−PLA共重合体を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含み、
前記複合体は、次の構造を有し:
【化3】

式中、
nは2〜1000の整数であり、
mは100〜5000の整数であり、
LAは乳酸の繰り返し単位であり、
SAはコハク酸であり、
Hpはヘパリンである、
用具。
【請求項60】
請求項55に記載の用具において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、l,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、用具。
【請求項61】
請求項55に記載の用具において、
前記生体適合性櫛状共重合体は、PVAと、d,l−ポリラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの三元共重合体と、を含み、
前記抗血栓剤は、ヘパリン分子を含む、用具。
【請求項62】
請求項55に記載の用具において、
前記複数個の粒子は、ミクロ粒子を含む、用具。
【請求項63】
請求項55に記載の用具において、
前記複数個の粒子は、ナノ粒子を含む、用具。
【請求項64】
請求項55に記載の用具において、
前記フレームの表面に塗布された抗血栓性コーティング、
をさらに含む、用具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−11814(P2009−11814A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−116898(P2008−116898)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(597041828)コーディス・コーポレイション (206)
【氏名又は名称原語表記】Cordis Corporation
【Fターム(参考)】