説明

抗血管新生性低分子および使用方法

望ましくない血管新生を阻害する方法を提供する。この方法は、本明細書に記載の治療的有効量の少なくとも1種類の化合物、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2009年7月31日に出願された米国特許仮出願第61/230,667号に対して恩典が主張される。米国特許仮出願第61/230,667号は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
開示の分野
本開示は、抗血管新生化合物、その誘導体、ならびにこのような化合物および誘導体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
血管新生は、既存の血管から新たな血管が形成するプロセスである。血管新生は、成長および発生ならびに病理学的状態における正常かつ生命維持に必要なプロセスである。血管新生は組織発生、血管疾患、および癌において基本的に重要なために、過去数十年に渡って集中的に研究されてきた。正常な生理学的条件下では、ヒトまたは動物は極めて特殊な限られた状況でしか血管を形成しない。例えば、血管新生は、通常、胎児発生および胚発生ならびに黄体形成において観察される。出生後の血管新生は、卵巣、子宮内膜、胎盤、および創傷治癒における重要な生理機能である。血管新生の調節解除は、特に、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、子宮内膜症、アテローム発生、関節炎、乾癬、角膜血管新生、慢性関節リウマチ、腫瘍形成、および転移を含む多くのヒト疾患において主要な役割を果たしている。
【0004】
腫瘍血管新生には、栄養分および酸素を供給し、老廃物を取り除く、癌に侵入する血管網の成長が関与する。血管新生は腫瘍転移の一要素でもある。癌細胞1つ1つが、確立した固形腫瘍から離れ、血管に入り、離れた場所に運ばれる。ここに細胞は転移し、続発性腫瘍の成長を開始することができる。さらに、固形腫瘍の中にある血管は実際には内皮細胞および腫瘍細胞の両方からなるモザイク血管の場合があることが示唆されている。このようなモザイク性のために腫瘍細胞は脈管構造に大量に流れ出ることができる。
【0005】
腫瘍微小血管密度と転移発生率との間には直接相関があることが示されている。腫瘍細胞それ自体が、内皮細胞の増殖および新しい毛細血管の成長を刺激する因子を産生することができる。血管新生は、腫瘍転移の2つの段階、すなわち、腫瘍細胞が血流に入り、体全体に循環するのを可能にする腫瘍血管新生の段階と、腫瘍細胞が原発部位を離れ、二次(転移)部位に定着した後に、新しい腫瘍が成長し、広がる前に血管新生が起こらなければならない段階において重要である。従って、血管新生を阻止すれば、腫瘍転移が阻止され、恐らく、原発部位にある新生物を封じ込めることができるだろう。
【0006】
血管新生の阻止は、癌(転移を含む)、他の疾患の中では網膜症および子宮内膜症に対する最も有望な戦略の1つと認識されている。過去数十年にわたって血管新生分野における研究の取り組みが大幅に増えたので、血管新生プロセスの理解が大幅に高まり、その後に、血管新生を調節する新たな治療剤が開発された。非ペプチド性の合成抗血管新生性低分子(SM)は、生物学的半減期が長く、拡散率が高く、費用対効果が大きいために製薬会社および学術機関の主な焦点である。
【0007】
血管新生をベースとする抗腫瘍療法では、典型的に、アンジオスタチン、エンドスタチン、およびタムスタチンなどの天然および合成の血管新生阻害剤が用いられる。最近、米食品医薬品局(FDA)は、結腸直腸癌における血管新生を標的とする抗体療法を認可した。この療法は、VEGFアイソフォームに対するモノクローナル抗体をベースとしており、Avastin(登録商標)という商品名で販売されている。製薬産業は、抗血管新生性低分子としてのチロシンキナーゼ阻害剤およびチューブリン結合剤の開発に注目してきた。従って、他の血管新生経路を利用した低分子が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
開示の概要
本開示は、新たな一組の抗血管新生性低分子阻害剤の特定に関する。抗血管新生性低分子の発見には、細胞ベースのハイスループットスクリーニング(HTS)とケモインフォマティクスツールが適用された。本明細書に記載のスクリーニングは、HTSの標的を1種類の細胞下分子にするのではなく血管新生の細胞プロセス全体を標的とした。特に、血管新生の最も重要な2つの段階:内皮細胞増殖および管形成である2つの細胞ベースアッセイを使用した。
【0009】
結果として、新たな一組の抗血管新生性低分子(SM)が発見された。構造活性相関(SAR)研究から、様々なデータベース(例えば、FDA marketed化合物;現在、臨床試験されているSM化合物;およびPubChem、LeadScope、DrugBank、DTP/NCIなどの化学物質データベースにおいて抗血管新生であるとアノテートされたSM化合物)との比較に基づいて、新たに特定された生理活性SMの大半は以前に認められた抗血管新生性SMと関連しないことが示された。
【0010】
この新たな一組の抗血管新生性SMの特定に基づいて、対象において血管新生(特に、望ましくない血管新生)を阻害する方法が本明細書において開示される。この方法は、本明細書において化合物1〜77と呼ばれる化合物またはその薬学的に許容される塩の中から、治療的有効量の少なくとも1種類の抗血管新生化合物(例えば、抗血管新生性低分子)を対象に投与する工程を含む。これらの例を下記で詳述する。
【0011】
血管新生を阻害する方法も本明細書において開示される。この方法は、本明細書において化合物1〜77と呼ばれる化合物またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量の少なくとも1つを対象に投与する工程を含む。これらの例を下記で詳述する。
【0012】
さらに、表1に示した式のいずれか1つによって表される構造を有する化合物(本明細書において化合物1〜77と呼ばれる)およびその薬学的に許容される塩が本明細書において開示される。前記の化合物を含む薬学的組成物も本明細書において開示される。
【0013】
従って、塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む、血管新生依存性疾患を治療するための薬学的組成物が本明細書において開示される。特定の例では、薬学的組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。
【0014】
塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む、異常な血管新生を阻害するための、または新生物組織の成長を阻害するための薬学的組成物も本明細書において開示される。特定の例では、薬学的組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。
【0015】
血管新生依存性疾患を治療する方法も本明細書において開示される。この方法は、血管新生依存性疾患を有するか、血管新生依存性疾患の素因がある対象に、塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む治療的有効量の組成物を投与する工程を含む。この方法の特定の態様において、組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。
【0016】
さらに、対象における望ましくない血管新生を阻害する方法が本明細書において開示される。この方法は、血管新生が望まれない対象を特定する工程、および塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む治療的有効量の組成物を対象に投与する工程を含む。開示された方法の特定の例では、組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。
【0017】
対象における新生物を阻害する方法も開示される。この方法は、塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む治療的有効量の組成物を対象に投与する工程を含む。特定の例では、組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。
【0018】
さらに、新たな血管の形成が望まれない対象の組織または標的領域における血管新生を阻害する方法が開示される。この方法は、新たな血管の形成が望まれない対象の組織または標的領域を特定する工程;および塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む有効量の組成物を組織または標的領域に直接的または間接的に導入し、それによって、組織または標的領域における血管新生を阻害する工程を含む。特定の例では、組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。
【0019】
前述および他の目的、特徴、および利点は以下の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。次に、図面について言及する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本明細書に記載の新たな一組の抗血管新生性SMを特定するために用いられた、手短にまとめたワークフローを示す。さらなる詳細を実施例1に示した。
【図2】増殖HTSアッセイおよび管形成HTSアッセイの基本的な実験デザインを示す。
【図3】ブタ大動脈内皮(PAE)細胞を用いた増殖HTSに含まれるプレート(4143-11)の1つにおける結果を示す。プロットは、7日間にわたる96ウェル全ての蛍光発光を表す。予想したとおり、様々なウェルが様々な蛍光値を示すが、蛍光値は経時的に増加する。96ウェル全ての合成画像も示した(増殖4日目)。陽性対照を右端のウェル縦列に示した。予想したとおり、これらの対照は(プロットの中で)蛍光最大値を示し、ウェルの中で高い細胞密度を示す。陰性対照を左のウェル縦列に示した。これらはプロットの中で低い蛍光値を示し、ウェルの中で低い細胞密度を示す。さらに、PAE増殖をブロックする化合物の一例を1番目の横列、左から4番目の縦列に示した。蛍光値は低く、ウェルの中に細胞はほとんどない。さらに、PAE増殖を阻害しない化合物の一例を7番目の横列、4番目の縦列に示した。この場合、高い蛍光値がプロットの中に示され、ウェルの中に多数の細胞があった。
【図4】同じプロトコールに従って、PAE細胞、BEC細胞、A549細胞、およびMCF7細胞に対してHTS増殖実験を行った。これらの実験は、解剖学的起源が異なる腫瘍細胞と比較して、内皮細胞における阻害活性を有するSMの特異性を探索するためにデザインされた。 図4の画像は、HTS実験において得られた結果をまとめたヒートマップ(heatmap)を示す。R統計ソフトウェアのパッケージgplotsのfunction heatmap.2を用いてヒートマップを作成した。ユークリッド距離行列を用いてクラスタリングを行った。X軸は、試験した1974個のSMを示し、Y軸は、実施した増殖HTS実験の一部を示す。全ての実験について、異なる日に得られた測定値が含められており、予想したとおり高度の一致性を示す。ヒートマップの中の濃い細胞は増殖阻害活性が最も高いSMであり、薄灰色は増殖に対する活性がないSMである。
【図5】内皮細胞または腫瘍細胞の増殖を優先的に阻害するSMを研究するために、内皮細胞および腫瘍細胞の平均増殖活性値を二変量散乱プロットにおいて比較した。SMのほとんどは、試験したどの細胞株にも増殖に影響を及ぼさず、散乱プロットの中心部に集まる(中間サイズの楕円の中に示される)。また、増殖阻害活性を有するほとんどのSMは腫瘍細胞および内皮細胞に対して似た効力を示し、従って、左下の四分円に集まる(最も大きな楕円の中に示される)。興味深いことに、数個のSMが腫瘍細胞において増殖阻害活性を示し、内皮細胞において増殖阻害活性を示さなかった(小さな楕円;表10も参照されたい)。これらの低分子の増殖活性を横のプロットに示した(低分子はプレートの中の位置によって特定される;表10はプレート位置とNSC番号を互いに関係づけている)。
【図6】PAE細胞を用いた関心対象のSM全てについて用量反応曲線を作成した。GraphPad Prism(GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA)を用いて、データを非直線シグモイド曲線にフィッティングした。初回スクリーニングが1μMの最終SM濃度を用いて行われたので、ほとんどの化合物のIC50が10-12〜10-9Mの範囲内であると確かめられた。このことは、本プロジェクトにおいて発見された全てのSMが内皮細胞増殖の極めて強力な阻害剤であることを裏付けている。
【図7】関心対象のSMの細胞傷害能を探索するために、新規のハイスループット細胞傷害アッセイを開発した。これは、(2009年4月2日にUS2009/0088341として公開され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)米国特許出願第12/060,752号においてさらに説明される。図7では、仮説に基づいた2種類の状況を図で示した。この図の下の部分では、蛍光細胞を細胞傷害性物質に曝露し、その結果、蛍光が細胞培地に遊離する。培地中の蛍光および細胞内の残りの蛍光を両方とも定量し、この図の下の部分にある式を用いて細胞傷害性パーセントを求めるのに使用することができる。プロットは、PAE細胞に対してTritonXを細胞傷害剤として使用した時に予想される用量反応曲線を示す。
【図8】増殖阻害活性を有する4つの化合物の例を示す。このうち2つは、それぞれ、強い細胞傷害活性および中等度の細胞傷害活性を示す。図7に示した、および本明細書に記載の細胞傷害アッセイを用いて、4つの化合物は細胞傷害性があると特定された(NSC88903、NSC310551、NSC18877、およびNSC321206;表10を参照されたい)。
【図9】AngioApplication(商標)と呼ばれる画像分析プログラムからのスクリーニングショットを示す。AngioApplication(商標)はHTS形式用に開発され、管形成の形態学的定量分析を可能にした(2009年4月2日にUS2009/0088341として公開され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第12/060,752号において詳述される)。このソフトウェアは、管の長さ、結節の面積、分岐点、フラクタル次元、および空隙性を含む(が、これに限定されない)、管形成画像にある様々な測定項目を迅速に評価することができる。
【図10】どの測定項目がデータセットのばらつきをよりよく説明するかを調べるために、主成分分析がどのように用いられたかを示す。結果から、空隙性および分岐指数が最も適した測定項目であることが分かった。
【図11】試験した全てのSMについて、空隙性(C1)および分岐指数(C2)を二変量散乱プロットにおいてプロットした。抗管形成活性を規定するために、陽性対照の平均とSMごとの平均とのユークリッド距離を測定項目として使用した(計算はプレートごとに別々に行った)。本質的には、陽性対照とかなり離れている化合物は抗血管新生性である可能性が高い。この図は、1個のプレートにおける全てのSMからの結果を示す。予想したとおり、化合物のほとんど(グラフの中心に集まっている小さな四角)が陽性対照(グラフの中心の近くに集まっている大きな四角)と近い位置にある。対照的に、陰性対照(グラフの右下の隅に集まっている大きな四角)は陽性対照からかなり離れた位置にある。陽性対照および陰性対照の細胞の代表的な画像を示した。管形成阻害化合物は、陽性対照と陰性対照との中間の距離に位置することが検出された。活性SMの代表的な画像を示した。ライブラリーの1974個の化合物のうち35個(1.75%)が管形成を統計学的に有意に阻害すると見出された(表10)。
【図12】全ての管形成阻害剤についてIC50を計算した。予想したとおり、ほとんどのIC50は10-9〜10-12Mの範囲にあるので、これらの化合物は極めて効果的な管形成阻害剤である。この図は化合物NSC119889を用いて作成した用量反応の一例を示す。
【図13】内皮細胞の増殖HTSおよび管形成HTSにおいて得られた結果をまとめたものである。特定の化合物に関する情報は表10にまとめた。化合物の2.4%(48)は増殖阻害剤であり、1.75%(35)は管形成阻害剤であった。化合物の0.5%(11)が増殖阻害活性および管形成阻害活性を両方とも示した。
【図14】本プロジェクトにおいて特定された抗血管新生性SMの構造を、特に、PubChem、DrugBank、LeadScope、およびFDA Marketed Drugsなどの利用可能なアノテートされたSMデータベースにあるアノテートされた化合物と比較した。LeadScopeソフトウェアを用いて構造分類を行った。特定されたSMのうちごくわずかしか、他のデータベースの中にあるアノテートされた化合物と構造上関連しなかった(上の図の括弧の中にある数字)。これは、本プロジェクトにおいて用いられた新規の創薬法によって説明することができ、予想したとおり、新規のSARを有する化合物が得られた。本プロジェクトにおいて発見された抗血管新生性SMはどれも公知の抗血管新生性SMと構造上関連しない。これは、本明細書に記載の抗血管新生性SMの新規性を裏付けており、新たなSARによって新たな細胞抗血管新生経路が活用されることを強調している。
【図15】腫瘍異種移植片の成長に対する選択されたSMの阻害作用を示した一連のグラフである。上パネルは、A549腫瘍の成長に対するSMの作用を示す。下パネルは、SK-ML-1腫瘍の成長に対するSMの作用を示す。
【図16】チューブリン重合阻害に対する選択されたSMの作用を示した一連のグラフである。
【図17】血管新生に関与する遺伝子の発現に対する選択されたSMの作用の定量リアルタイムRT-PCR分析を示す、一連のボルケイノ(volcano)プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
配列表
37C.F.R.1.822に規定されたように、添付の配列表に列挙した核酸配列および/またはアミノ酸配列を、ヌクレオチド塩基の標準的な文字略語およびアミノ酸の三文字表記を用いて示した。各核酸配列の1本の鎖しか示さなかったが、表示された鎖を参照することによって相補鎖が含まれると理解される。添付の配列表にあるSEQ ID名を表13に示した。表14に列挙した(およびncbi.nlm.nih.gov/guide/においてオンラインで入手可能な)アクセッション番号に関連する配列および情報は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0022】
配列表は、2010年7月27日に作成されたASCIIテキストファイル、Annex C/St.25テキストファイル、68.1KBとして提出した。これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0023】
いくつかの態様の詳細な説明
I.略語
bFGF:塩基性線維芽細胞増殖因子
EC50:最大半量有効濃度という用語
FDA:米食品医薬品局
GFP:緑色蛍光タンパク質
HTS:ハイスループットスクリーニング
PAE:ブタ大動脈内皮
RTK:受容体型チロシンキナーゼ
SAR:構造活性相関
SM:低分子
RFP:赤色蛍光タンパク質
VEGF:血管内皮増殖因子
YFP:黄色蛍光タンパク質
【0024】
II.用語
特に定めにない限り、技術用語は従来の用法に従って用いられる。分子生物学における一般用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, Oxford University Pressにより出版, 1994 (ISBN 0-19-854287-9); Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd.により出版, 1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.により出版, 1995 (ISBN 1-56081-569-8)において見られる。
【0025】
特に説明のない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。単数形「1つの(a)」もしくは「1つの(an)」または「その(the)」は、特に文脈によってはっきり規定されていない限り複数の指示物を含む。同様に、「または」という言葉は、特に文脈によってはっきり規定されていない限り「および」を含むと意図される。「含む(comprises)」という用語は「含む(includes)」を意味する。「例えば(e.g.)」という用語はラテン語のexempli gratiaに由来し、非限定的な例を示すために本明細書において用いられる。従って、「例えば(e.g.)」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義である。全ての化合物は、(+)および(-)両方の立体異性体(ならびに(+)または(-)いずれかの立体異性体)、ならびにその任意の互変異性体を含む。さらに、化合物に与えられた全ての分子量または分子量の値は近似値であり、説明のために示されていることに理解しなければならない。本明細書に記載の方法および材料と類似または等価な方法および材料を本開示の実施および試験において使用することができるが、適切な方法および材料が本明細書において説明される。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定を目的としない。
【0026】
本開示の様々な態様の検討を容易にするために、特定の用語を以下で説明する。
【0027】
酸:
溶解状態で水素原子を移動ことができる化合物。酸はカルボン酸を含むが、これに限定されない。
【0028】
投与する/投与:
与えること、または適用すること、例えば、対象に与えること、または適用すること。「導入する」は「投与する」と同等であると理解される。この用語は、特に、局部、非経口、経口、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、鼻、または関節内の投与経路を含む。例として、抗血管新生剤などの治療用化合物を投与することができる。投与は局所投与または全身投与でもよく、直接投与または間接投与でもよい。
【0029】
局所投与の非限定的な例には、局部投与、皮下投与、筋肉内投与、くも膜下腔内投与、心膜内投与、眼内投与、局部眼投与、または吸入投与による鼻粘膜もしくは肺への投与が含まれるが、これに限定されない。さらに、局所投与には、全身投与に典型的に用いられる投与経路、例えば、ある特定の器官または腫瘍の動脈供給に血管内投与を向けることによる投与経路が含まれる。従って、特定の態様において、局所投与には、動脈内投与および静脈内投与の標的が、ある特定の器官または腫瘍を供給する脈管構造に向けられる時には、動脈内投与および静脈内投与が含まれる。
【0030】
全身投与は、投与された化合物を、循環系を介して体全体にわたって広範囲に分布させるようにデザインされた任意の投与経路を含む。従って、全身投与には、動脈内投与および静脈内投与が含まれるが、これに限定されない。全身投与はまた、局部投与、皮下投与、筋肉内投与、または吸入による投与が吸収および循環系による体全体にわたる分布に向けられる時には、局部投与、皮下投与、筋肉内投与、または吸入による投与が含まれるが、これに限定されない。
【0031】
直接的な投与または導入は、注射などによって化合物と標的を直接接触させることを伴う。間接的な投与または導入は、化合物の直接接触とは異なる他の任意の方法、例えば、経口摂取による方法を伴う。
【0032】
アルキル:
炭素および水素しか含有しない分枝アルキル基または直鎖アルキル基。ある特定の態様では、アルキル基は、1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を含有してもよい。さらに、この用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ピバリル、ヘプチル、アダマンチル、およびシクロペンチルなどの基によって例示される。アルキル基は非置換でもよく、1つまたは複数の置換基、例えば、ハロゲン、アルコキシ、シクロアルキル、アルキルチオ、トリフルオロメチル、アシルオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、アリールオキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジン-1-イル、ピペラジン-1-イル、または他の官能基によって置換されてもよい。
【0033】
アミノ酸部分:
1つまたは複数の第一級アミノ基、第二級アミノ基、または第三級アミノ基および1つもしくは複数の酸性カルボキシル基(-COOH)を含有する部分、またはこの部分が1つもしくは複数のアミノ基(例えば、-NH2)および1つもしくは複数のエステル基(すなわち、-OC(O)-)を含有しているという意味ではアミノ酸の誘導体または残基である部分。
【0034】
動物:
多細胞性の脊椎生物。例えば、哺乳動物および鳥類を含むカテゴリー。哺乳動物という用語はヒト哺乳動物および非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、「対象」という用語は、ヒト対象および獣医学的対象、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ラット、マウス、およびウシを含む。
【0035】
血管新生:
出芽および/または既存からの血管の成長によって新たな血管が発生する生物学的プロセス。このプロセスは、既存の血管から内皮細胞が遊走および増殖することを伴ってもよい。血管新生は出生前発生、出生後発生の間に、および成人において起こる。成人では、血管新生は、女性生殖器系、創傷治癒の正常サイクルの間に、および癌などの病理学的プロセスの間に起こる(総説については、Battegay, J. Molec. Med. 73(7): 333-346, 1995を参照されたい)。
【0036】
血管新生活性:
剤が血管新生を促進または阻害する能力。血管新生活性は、血管新生アッセイ、例えば、蛍光細胞株を用いた血管新生アッセイ、ならびに本明細書および/または米国特許出願第12/060,752号(2009年4月2日にUS2009/0088341として公開され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)において開示されたアッセイにおいて測定することができる。
【0037】
血管新生依存性疾患:
疾患進行のために異常な(望ましくない)血管新生の刺激に少なくとも部分的に依存する疾患。異常な血管新生は、他の点では正常な細胞における血管新生因子の異所性発現に起因することがある。異常な血管新生は、1種類または複数の種類の血管新生因子を産生する腫瘍によって刺激されることもある。
【0038】
血管新生因子:
例えば、血管新生を刺激または阻害することによって、血管新生に影響を及ぼす分子。非常に多くの実験から、正常な血管新生プロセスおよび病理学的な血管新生プロセスの間に血液供給が不十分な条件下では、組織は、血管新生を分泌する因子を促進することが示唆されている。血管新生は、細胞(例えば、腫瘍細胞)またはアクセサリー細胞が分泌したた様々な因子によって開始および維持される。多くの異なる増殖因子およびサイトカインが、内皮細胞、平滑筋細胞、および線維芽細胞に対して走化活性、分裂促進活性、調節活性、または阻害活性を発揮することが示されており、従って、血管新生プロセスに関与すると予想することができる。例えば、血管内皮細胞の増殖、走化挙動、および/または機能活性を調節する因子には、特に、aFGF、bFGF、アンジオゲニン、アンジオトロピン(angiotropin)、上皮増殖因子、IL-8、および血管内皮増殖因子(VEGF)が含まれる。
【0039】
多くの血管新生因子は内皮細胞に対して分裂促進性および走化性であるので、これらの生物学的活性(例えば、血管新生活性)は、細胞株アッセイおよび本明細書において開示された方法を用いて、誘導性の内皮細胞遊走または内皮細胞増殖に対するこれらの因子の作用を測定することによってインビトロで確かめることができる。例えば、遊走アッセイならびに細管形成アッセイおよび増殖アッセイなどの他のアッセイはまた、血管新生活性、例えば、可能性のある血管新生阻害剤などの試験剤の存在下での血管新生活性を確かめるのに使用することもできる。
【0040】
アリール:
非置換でもよく、例えば、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、メルカプト(-SH)、アルキルチオ、トリフルオロメチル、アシルオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、アリールオキシ、別のアリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジン-1-イル、ピペラジン-1-イル、または他の官能基によって置換されてもよい、1個の環(例えば、フェニル)を有する一価不飽和芳香族炭素環式基、または複数の縮合環を有する一価不飽和芳香族炭素環式基(例えば、ナフチルもしくはアントリル)。
【0041】
生物学的試料:所望される情報、例えば、細胞増殖、細管形成、および/または細胞遊走を促進する試料の能力についての情報の基となる、植物対象または動物対象から得られた試料。本明細書で使用する、生物学的試料は、細胞、組織、および体液、例えば、血液;血液の誘導体および画分、例えば、血清、ならびにリンパ球(例えば、B細胞、T細胞、およびその亜分画);抽出された胆汁;例えば、未固定組織、凍結組織、ホルマリン固定および/またはパラフィン包埋した組織を含む、生検用に採取された組織または手術により取り出された組織;涙;乳;皮膚切屑;表面洗浄液;尿;痰;脳脊髄液;前立腺液;膿;骨髄吸引液;中耳液、気管支肺胞洗浄液、気管吸引液、痰、鼻咽頭吸引液、口咽頭吸引液、または唾液を含むが、これに限定されない全ての臨床試料を含む。特定の態様において、生物学的試料は、例えば、中耳液、気管支肺胞洗浄液、気管吸引液、痰、鼻咽頭吸引液、口咽頭吸引液、または唾液の形で動物対象から得られる。特定の態様において、血液または血清などの生物学的試料が対象から得られる。患者試料は、哺乳動物対象、例えば、医療を受けているヒト対象などの対象から得られた試料である。
【0042】
細胞活性:
ある特定の細胞株の活性、例えば、細胞が分裂する能力、刺激に応答して遊走する能力、または細管などの三次元構造を形成する能力。ある特定の細胞株の細胞活性は、インビトロアッセイ、例えば、本明細書において開示されたアッセイを用いて評価することができる。
【0043】
癌:
細胞の異常な増殖および分化を特徴とする悪性疾患。「転移性疾患」は、最初の腫瘍部位から離れ、例えば、血流またはリンパ系を介して他の身体部分に遊走した癌細胞を指す。
【0044】
血液腫瘍の例には、急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、ならびに骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、および慢性リンパ球性白血病)を含む白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(低悪性度および高悪性度)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、骨髄異形成症候群、毛様細胞性白血病、ならびに骨髄形成異常が含まれる。
【0045】
肉腫および癌腫などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系腫瘍、膵臓癌、乳癌(例えば、腺癌)、肺癌、婦人科癌(例えば、子宮癌(例えば、子宮内膜癌)、子宮頸部(例えば、子宮頸癌、前腫瘍性子宮頸部形成異常)、卵巣(例えば、卵巣癌、漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、類内膜腫瘍、セリオブラストーマ(celioblastoma)、明細胞癌、未分類の癌腫、顆粒莢膜細胞腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(例えば、扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(例えば、明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫)、胎児性横紋筋肉腫、およびファロピウス管(例えば、癌腫))、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、髄様甲状腺癌、甲状腺乳頭癌、クロム親和細胞腫皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌腫、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌腫、およびCNS腫瘍(例えば、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)、ならびに皮膚癌(例えば、黒色腫および非黒色腫)が含まれる。
【0046】
細胞培養:
制御された条件下で、原核細胞または真核細胞を増殖させるプロセス。実際には、「細胞培養」という用語は、多細胞性真核生物、特に、哺乳動物細胞などの動物細胞、例えば、本明細書において開示された蛍光細胞に由来する細胞の培養を指すようになった。哺乳動物細胞を、細胞インキュベーターに入れて適切な温度および気体混合物(典型的に、37℃、5%CO2)で増殖および維持する。培養条件は細胞タイプごとに大きく異なり、ある特定の細胞タイプの条件を変えると、異なる表現型を発現させることができる。温度および気体混合物の他に、培養系において最もよく変えられる要因は増殖培地である。増殖培地の配合は、pH、グルコース濃度、増殖因子、および他の栄養成分の存在を変えることができる。培地に添加するのに用いられる増殖因子は、仔ウシ血清などの動物血液に由来するものが多い。
【0047】
細胞の中には、血流中にある細胞など、表面に付着することなく自然に生きるものもある。固体組織に由来する大部分の細胞など他の細胞は表面を必要とする。表面に付着させずに増殖させた細胞は懸濁培養物と呼ばれる。他の付着培養細胞は組織培養プラスチックに載せて増殖することができる。組織培養プラスチックは、付着特性を高め、増殖に必要な他のシグナルを供給するために細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲンまたはフィブロネクチン)でコーティングされることがある。「共培養」は、1つの容器の中で、複数の種類の細胞株(例えば、複数の種類の開示された細胞株)を培養することを指す。共培養は2次元(2-D)でもよく、3次元(3-D)でもよい。2-D共培養および3-D共培養の例は、2010年6月10日に出願された(* として公開された)米国特許出願第12/802,666号に記載されている。
【0048】
化学療法剤:
異常な細胞増殖を特徴とする疾患の治療において治療上有用な任意の化学剤。このような疾患には、腫瘍、新生物、および癌、ならびに乾癬などの過形成成長を特徴とする疾患が含まれる。1つの態様において、化学療法剤は血管新生阻害剤である。化学療法剤は、例えば、Slapak and Kufe, Principles of Cancer Therapy, Chapter 86 in Harrison's Principles of Internal Medicine, 14th edition; Perry et al., Chemotherapy, Ch. 17 in Abeloff, Clinical Oncology 2nd ed., 2000 Churchill Livingstone, Inc; Baltzer and Berkery. (eds): Oncology Pocket Guide to Chemotherapy, 2nd ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1995; Fischer Knobf, and Durivage (eds): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1993に記載されている。併用化学療法は、癌を治療する複数の種類の剤、例えば、アルキル化剤および血管新生阻害剤の投与である。
【0049】
接触させる:
固体または液体の形を含めて直接的な物理的関係に置くこと。接触は、インビボで、例えば、剤を対象に投与することによって行われてもよく、インビトロで、例えば、単離された細胞または細胞培養物、例えば、開示された蛍光細胞株の細胞培養物を用いて行われてもよい。
【0050】
対照:
参照基準。対照とは、基底細胞活性、例えば、基底の遊走能、倍加時間、細管形成能などを示す既知の値でもよく、外因性作用物質、例えば、試験剤、1種類もしくは複数の種類の細胞株(例えば、本明細書において開示された蛍光細胞株)、血管新生因子、血管新生阻害剤などによって処理されていない対照細胞培養物、例えば、開示された蛍光細胞株の少なくとも1つを含む培養物でもよい。試験試料と対照との差は増加でもよく、逆に、減少でもよい。この差は定性的な差でもよく、定量的な差、例えば、統計的に有意な差でもよい。ある例では、差は、対照を基準にした、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または500%超の増加または減少である。
【0051】
シクロアルキル:
少なくとも1つのシクロアルキル環構造を含有する部分を含む。架橋環式構造または縮合環構造を含む1つまたは複数の環構造があってもよい。シクロアルキルは非置換でもよく、1つまたは複数の置換基、例えば、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、トリフルオロメチル、アシルオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、アリールオキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジン-1-イル、ピペラジン-1-イル、または他の官能基によって置換されてもよい。例示的なシクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロブチル、およびデカヒドロナフチルが含まれる。
【0052】
EC50:
最大半量有効濃度(EC50またはEC50)という用語は、ベースラインと最大の半分の応答を誘導する薬物の濃度を指す。EC50は、薬物の効力の尺度として一般的に用いられる。
【0053】
電磁放射線:
電場強度および磁場強度の周期的な同時変動によって伝わり、電波、赤外線、可視光、紫外線、X線、およびγ線を含む一連の電磁波。特定の例では、電磁放射線はレーザーにより発せられ、単色性、方向性、干渉性、偏光、および強度の特性を有してもよい。例えば、レーザーからのエネルギーが特定の励起波長を有するフルオロフォアを励起できるが、第1のフルオロフォアの励起波長とは異なる、かつ別個の特定の波長を有する第2のフルオロフォアを励起できないように、レーザーはある特定の波長の光(または比較的狭い範囲の波長にわたる光)を発することができる。
【0054】
発光または発光シグナル:
光源から発生したある特定の波長の光。特定の例では、蛍光タンパク質などのフルオロフォアがその励起波長の光を吸収した後に、フルオロフォアから発光シグナルが発せられる。
【0055】
励起または励起シグナル:
さらに高いエネルギーレベルへの電子遷移を励起するのに必要および/または十分な、ある特定の波長の光。特定の例では、励起は、蛍光タンパク質などのフルオロフォアが、励起シグナルからの波長とは異なる (例えば、さらに長い)波長を発するような状態にフルオロフォアを励起するのに必要および/または十分な、ある特定の波長の光である。
【0056】
外因性作用物質:
外因性作用物質は、研究しようとする標的細胞株の外側にある任意の作用物質であり、低分子、タンパク質、生物学的試料(例えば、患者試料)、および他の細胞または細胞株、例えば、標的細胞株以外の蛍光細胞株、例えば、区別可能な蛍光シグナルによって異なると特定することができる異なるタイプの細胞を含む。
【0057】
発現:
遺伝子配列に関して、遺伝子の転写、適宜、結果として生じたmRNA転写物からタンパク質への翻訳を指す。従って、タンパク質コード配列の発現、例えば、蛍光タンパク質の発現は、そのタンパク質のコード配列の転写および翻訳に起因する。構成的発現は、発現が中断されないような実質的に連続した形での、タンパク質、例えば、蛍光タンパク質などの遺伝子産物の発現を指す。構成的発現の一例は、外因性刺激剤、例えば、プロモーターを活性化するのに用いられる剤の非存在下での連続発現である。安定発現は、時が経つにつれても失われない、または大幅に低下しない発現、例えば、細胞株、例えば、蛍光タンパク質を構成的に発現する細胞株を複数回継代することによって減少しない発現を指す。
【0058】
蛍光特性:
蛍光分子、例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質などの蛍光分子の特徴。蛍光特性の例には、適切な励起波長でのモル吸光率、蛍光量子効率、励起スペクトルまたは発光スペクトルの形状(「蛍光スペクトル」、励起波長最大および発光波長最大、2種類の波長における励起振幅の比、2種類の波長における発光振幅の比、励起状態の寿命、または蛍光の異方性が含まれる。蛍光の定量とは、フルオロフォア、例えば、蛍光タンパク質が発した蛍光の量を求めることをいう。蛍光の量は、フルオロフォアが発した光子の量でもよい。ある例では、蛍光は、ある特定の波長、例えば、ある特定のフルオロフォア、例えば、蛍光タンパク質の発光最大の波長の蛍光シグナルの強度を測定することによって定量される。蛍光強度はまた、例えば、ある特定のフルオロフォア、例えば、ある特定の蛍光タンパク質の発光最大と重複し、それによって妨害する発光スペクトルを避けるために、ある特定のフルオロフォアの発光最大ではない波長で定量されてもよい。ある例では、蛍光シグナルは、蛍光タンパク質、例えば、このような蛍光タンパク質を含有する細胞の集団に存在する蛍光タンパク質の集団によって発せられる。例えば、このような蛍光シグナルを発する細胞の数または相対数を求めるために、このようなシグナルを定量することができる。蛍光パターンを検出するとは、蛍光シグナル、例えば、ある特定の波長の蛍光シグナルが生じる場所を決定するために、蛍光シグナルと特定の場所とを相関付けることをいう。ある例では、例えば、細管の総面積の数、細管の総数、結節の数、分岐点の数、結節あたりの管の数、またはこのような細胞によって形成される結節面積を求めるために、本明細書において開示された、および(2009年4月2日にUS2009/0088341として公開され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)米国特許出願第12/060,752号に開示された方法を用いて、蛍光パターンから、蛍光シグナルを発する細胞、例えば、蛍光タンパク質を含有する細胞の場所または形状が決まる。
【0059】
蛍光タンパク質:
検出可能な蛍光シグナルを発することができるタンパク質。蛍光タンパク質は、発光スペクトルの波長によって特徴付けることができる。例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)は、可視スペクトルの緑色部分の蛍光発光スペクトルを有する。緑色蛍光タンパク質に加えて、可視スペクトルの他の領域の蛍光を発する蛍光タンパク質、例えば、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、オレンジ色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、および遠赤色蛍光タンパク質が知られている。蛍光タンパク質の例は、以下の特許文書:米国特許第5,804,387号;同第6,090,919号;同第6,096,865号;同第6,054,321号;同第5,625,048号;同第5,874,304号;同第5,777,079号;同第5,968,750号;同第6,020,192号;同第6,146,826号;同第6,969,597号;同第7,150,979号;同第7,157,565;および7,166,444;および国際公開公報第07/085923号;国際公開公報第07/052102号、国際公開公報第04/058973号、国際公開公報第04/044203号、国際公開公報第03/062270号;および国際公開公報第99/64592号において見られる。蛍光タンパク質のさらなる例は、Living Colors(登録商標)という商品名でClonetech, Laboratories, Inc. (Mountain View, CA)から入手可能である。開示された蛍光細胞株の作製において使用するために、このような蛍光タンパク質をコードする核酸を哺乳動物発現ベクターに組込むことができる。
【0060】
増殖速度:
時間の関数とした、細胞分裂による、ある特定の細胞株の細胞の数の増加。一例では、増殖速度は、培養増殖させた細胞株が倍になる速度である。
【0061】
ハロゲン:
フルオロ、ブロモ、クロロ、およびヨード置換基を指す。
【0062】
ハイスループット法:
このプロセスによって、ある特定の生体分子経路、例えば、血管新生経路に影響を及ぼす活性化合物、抗体、または遺伝子を迅速に特定することができる。ある特定の例では、最新のロボット工学、データ処理および管理ソフトウェア、リキッドハンドリング装置、ならびに高感度検出器、ハイスループット法を組み合わせることによって、可能性のある薬剤を短時間で迅速にスクリーニングすることができる。
【0063】
組織学:
哺乳動物組織に由来する細胞および細胞株などの哺乳動物細胞の組織学的検査を含む、顕微解剖学の研究および組織の分類。組織学的タイピングは、例えば、微細解剖学的起源(例えば、特に、結合組織、神経、筋肉、および循環細胞)または細胞タイプ(例えば、特に、上皮細胞、ストローマ細胞)によって組織を組織タイプに分類することを指す。細胞は、染色および/もしくは抗体との反応によって、または特有の微細解剖学的特徴によって異なる組織学タイプであると分類することができる。異なる組織学タイプの細胞が異なる染料および/または抗体と異なって相互作用する。組織学的タイピングのための方法は当技術分野において周知である。組織学を用いると、細胞が異なるタイプの細胞かどうか確かめることができる。従って、ある例では、異なる細胞株は組織学的に異なる細胞株である。
【0064】
不死化細胞または不死化細胞株:
ランダムな変異または計画的な改変、例えば、テロメラーゼ遺伝子の人為的発現によって無限に増殖する能力を獲得した細胞または細胞株。特定の細胞タイプを代表する十分に確立した不死化細胞株が非常に多くある。
【0065】
阻害剤(例えば、血管新生の阻害剤):
ある測定可能な程度まで[何かを]、例えば、血管新生を阻害することができる物質。開示された例では、血管新生の阻害は、本明細書において開示されたアッセイの1つにおいて測定される。
【0066】
哺乳動物:
この用語はヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む。同様に、「対象」という用語は、ヒトおよび獣医学的対象、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシを含む。
【0067】
遊走能:
細胞、例えば、本明細書において開示された細胞株が、増殖因子などの化学刺激に応答して移動する能力。遊走能は、本明細書において開示されたアッセイを用いて確かめることができる。
【0068】
混合細胞集団:
組織学的に異なる細胞株などの2種類以上の細胞タイプを含有する、培養細胞などの細胞の集団。異なる細胞タイプの例には、異なる胚起源の細胞(例えば、外胚葉、内胚葉、または中胚葉に由来する細胞)、異なる細胞位置に由来する細胞(例えば、上皮、内皮、または間質に由来する細胞)、異なる組織または器官に由来する細胞(例えば、肺、心筋、神経、血管、皮膚、骨、または骨格筋組織もしくは平滑筋組織に由来する細胞)が含まれる。
【0069】
新生物または腫瘍:
任意の新しくかつ異常な成長;特に、成長が無秩序かつ進行性の新しい組織成長。新生物すなわち腫瘍は有用な機能を果たさず、健康な生物を犠牲にして成長する。
【0070】
一般的に、腫瘍は、細胞増殖の異常調節によって引き起こされるようにみえる。典型的に、体内の細胞の増殖は厳しく制御されている。古い細胞と交換するか、新しい機能を果たすために、新しい細胞が作り出される。細胞増殖と死とのバランスが乱れたら、腫瘍が形成することがある。通常、異常増殖を検出およびブロックする免疫系の異常も腫瘍につながることがある。他の原因には、放射線、遺伝子異常、ある特定のウイルス、太陽光、タバコ、ベンゼン、ある特定の毒キノコ、およびアフラトキシンが含まれる。
【0071】
腫瘍は、良性(ゆっくりと成長し、位置にもよるが、通常、無害である)、悪性(急速に成長し、転移し、他の器官もしくは系を傷つける可能性が高い)、または中間(良性細胞および悪性細胞の混合物)と分類される。腫瘍の中には男性または女性によくみられるものもあり、小児または高齢者によくみられるものもあり、食事、環境、および遺伝的危険因子によって変化するものもある。
【0072】
新生物の症状は腫瘍のタイプおよび位置によって決まる。例えば、肺腫瘍は、咳、息切れ、または胸痛を引き起こすことがあるのに対して、結腸腫瘍は、体重減少、下痢、便秘、および血便を引き起こすことがある。腫瘍の中には症状がないものもあるが、腫瘍に伴うことが多い症状には、発熱、悪寒、寝汗、体重減少、食欲低下、疲労、および倦怠感が含まれる。
【0073】
血管は腫瘍に栄養分および酸素を供給する。腫瘍成長は、成長している腫瘍の要求を維持することができる新たな血管の発生に依存し、多くの腫瘍は、新たな血管の成長(血管新生)を誘導することができる物質(血管新生因子)を分泌する。抗腫瘍療法は血管新生阻害剤の使用を伴う。血管新生阻害剤は腫瘍における血管の形成を低下させて、効果的に腫瘍を餓死させる、および/または腫瘍を腫瘍自身の廃棄物に浸けて溺死させる。
【0074】
新血管新生:
新しい血管の成長。新血管新生は、通常、血管を含んでいない組織内の血管の成長でもよく、虚血性組織または他の損傷組織における血管の成長でもよい。新血管新生は、望ましくない、または病理学的プロセスを媒介する時には、例えば、網膜または角膜において起こる時には病理学的な新血管新生になり得る。
【0075】
細胞の継代:
細胞の継代または分割は、少数の細胞を新しい容器に移すことを伴う。細胞を定期的に分割するのであれば、長期の高い細胞密度に関連した老化が避けられるので、細胞を長期間培養することができる。少数の細胞を含有する少量の培養物を大量の新鮮な培地で希釈すると、懸濁培養物は容易に継代される。付着培養の場合、最初に、細胞を剥離する必要がある。これは、典型的には、トリプシン-EDTAの混合物を用いて行われる。次いで、少数の剥離した細胞を用いて、新たな培養物を播種することができる。
【0076】
薬剤または薬物:
単独で、または別の治療剤もしくは薬学的に許容される担体と組み合わせて対象に適切に投与された時に、望ましい治療効果または予防効果(例えば、血管新生の阻害)を誘導することができる化合物または組成物。薬剤には、血管新生因子、例えば、bFGFおよびVEGF、ならびに抗血管新生因子、例えば、bFGF阻害剤またはVEGF阻害剤が含まれるが、これに限定されない。例えば、適切な抗血管新生因子には、特異的なVEGF-RアンタゴニストであるSU5416、VEGF、bFGF、およびPDGFの受容体を遮断するSU6668、ならびにAvastin(登録商標)が含まれるが、これに限定されない。例えば、Liu et al., Seminars in Oncology 29 (Suppl 11): 96-103, 2002; Shepherd et al., Lung Cancer 34:S81-S89, 2001を参照されたい。薬剤という用語は、具体的には、表1に列挙した抗血管新生化合物および表10において特徴付けられた抗血管新生化合物を含めて、本明細書において議論される生理活性化合物にも適用することができる。
【0077】
薬学的に許容される担体:
有用な薬学的に許容される担体は従来のものである。Remington 's Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition, 1975は、本明細書において開示された組成物の薬学的送達に適した組成物および製剤について述べている。
【0078】
一般的に、担体の内容は、使用されている特定の投与方法によって決まるだろう。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして薬学的および生理学的に許容される液体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどを含む注射液を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル型)の場合、従来の無毒の固体担体は、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含んでもよい。生物学的に中性の担体に加えて、投与しようとする薬学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートなどの少量の無毒の補助物質を含有してもよい。
【0079】
初代細胞:
対象から直接培養した細胞。腫瘍に由来する初代細胞を除き、ほとんどの初代細胞培養は寿命が限られている。ある特定の集団倍加数の後に、細胞は一般的に生存能力を保持しながら、老化プロセスを経て、分裂を止める。
【0080】
シグナル:
情報を提供する物理的性質の検出可能な変化または衝動。開示された方法の文脈では、例には、電磁気シグナル、例えば、光、例えば、ある特定の量または波長の光、例えば、蛍光タンパク質が発した光の波長の光が含まれる。
【0081】
低分子阻害剤(例えば、血管新生阻害剤):
分子、典型的には、1000ダルトン未満、またはある態様では、約500ダルトン未満の分子量を有する分子であって、測定可能な程度まで、ある標的分子の活性を阻害することができる分子。特定の態様において、低分子阻害剤は血管新生阻害剤であり、この活性は、当技術分野において公知の方法および/または本明細書に記載の方法を用いて試験、検出、確認、および/または測定することができる。
【0082】
試験剤:
作用、例えば、細胞に対する作用が試験される任意の剤。ある態様において、試験剤は、抗血管新生剤、さらには生物学的特性が未知の剤などの化合物である。
【0083】
治療的有効量/用量:
治療的効果を有するのに十分な、例えば、進行をある程度まで阻害するのに十分な、または疾患を後退させるのに十分な用量、または疾患によって引き起こされる症状を緩和することができる用量。例えば、治療的有効量の血管新生阻害剤は、約0.1nM/キログラム(kg)体重〜約1μM/kg体重、例えば、約1nM〜約500nM/kg体重、または約5nM〜約50nM/kg体重でもよい。ある特定の治療/生理活性化合物の正確な用量は、化合物の効力、対象の年齢、体重、性別、および生理学的状態、治療されている疾患などに基づいて当業者によって容易に決定される。
【0084】
治療する:
例えば、癌などの疾患のリスクのある対象において、疾患または状態の完全発症を阻害すること。「治療」とは、疾患または病理学的状態が発症し始めた後に、疾患または病理学的状態の徴候または症状を寛解させる治療介入を指す。疾患または病理学的状態に関して「寛解させる」という用語は、治療の観察可能な有益効果を指す。有益効果は、例えば、感受性のある対象において疾患の臨床症状の開始が遅れることによって、疾患の一部もしくは全ての臨床症状の重篤度が低下することによって、疾患の進行が遅くなることによって、対象の全体の健康状態もしくは幸福が改善することによって、または特定の疾患に特異的な当技術分野において周知の他のパラメータによって立証することができる。「予防的」処置は、疾患の徴候を示さない対象または初期徴候しか示さない対象に、病気を発症するリスクを小さくする目的で投与される処置である。
【0085】
細管形成能:
細胞株がインビトロで管様構造、例えば、毛細血管などの血管に似た構造を形成する能力。細管形成能は、細管を形成するように誘導された細胞が示すパターンを求めることによって、例えば、本明細書において開示された細胞株などの蛍光タンパク質発現細胞からの蛍光パターンを求めることによって確かめることができる。
【0086】
III.いくつかの態様の説明
新たな一組の抗血管新生性低分子を特定するために、高度なバイオインフォマティクスマイニングツールと共に用いられた厳格なHTS戦略が本明細書において説明される。この戦略は以下を含んだ。
【0087】
血管新生プロセスの主な段階である内皮細胞増殖および管形成をブロックする低分子を特定するために、2つの細胞ベースHTSがデザインされた。両アッセイとも、偽陽性を避けるために低い最終濃度(1μM)の化合物を試験した。これらのアッセイにおいて、以下の生理活性SMクラス:48個の増殖阻害剤、35個の管形成阻害剤を特定した。11個のSMが増殖および管形成を両方ともブロックする。3個のSMが特異的な腫瘍成長阻害剤と特定された。これらの化合物は抗血管新生性ではないが、抗腫瘍性であった。HTS結果の概略については表10を参照されたい。
【0088】
全ての生理活性化合物を、内皮細胞において細胞傷害性およびアポトーシスを誘導する能力について試験した。77個の低分子のうち3個が細胞傷害性であった。これらの細胞傷害性SMはインビボ実験の対象としなかった。さらに3個のSMが5〜8倍のアポトーシス能増加を示し、11個が2〜3倍の増加を示した(表10を参照されたい)。
【0089】
構造類似性分析から、生理活性SMのほとんど(68)は、既存のFDA marketed抗血管新生性SMとも、現在、臨床試験されているSMとも、PubChem、DrugBank、LeadScopeなどにおいて血管新生モジュレーターとアノテートされたSMとも構造上関連しないことが明らかになった。従って、構造活性相関(SAR)に基づいて本明細書において特定された化合物(表1を参照されたい)は、既知の抗血管新生性SMと機能的に関連しない新たな一組の抗血管新生化合物である。さらなるSAR分析から、内皮細胞増殖および内皮細胞管形成の阻害活性と相関する多数の骨格が特定された(表2〜9を参照されたい)。
【0090】
構造活性相関(SAR)研究から、関心対象のSMの一部(14)の潜在的な作用機序が明らかになった。例えば、増殖阻害剤の一部の構造はトポイソメラーゼII阻害活性と一致するのに対して、管形成阻害剤の中には、既知のチューブリン結合剤と一致する構造を示すものもある。表10を参照されたい。
【0091】
内皮細胞および腫瘍細胞における、これらの化合物の増殖阻害活性を比較することによって、これらの化合物を、1)内皮細胞および腫瘍細胞の増殖を阻害することができるSM(化合物1〜73);ならびに2)腫瘍細胞の増殖を阻害するが、内皮細胞を阻害しないSM(化合物74〜77)を含む、いくつかのグループに分類することができた。
【0092】
従って、望ましくない血管新生の阻害を示す化合物、およびこれらの化合物を使用して血管新生依存性の疾患または新生物(例えば、固形腫瘍)を治療する方法が本明細書において説明される。特に、本明細書において開示される方法は、望ましくない血管新生を有するヒトまたは動物に、有効量の本明細書に記載の化合物の少なくとも1つ、例えば、具体的には、表1に示したような化合物1〜77の1つまたは複数を含む組成物を投与することによってヒトまたは動物における望まれない血管新生の阻害を提供する。このような方法の例は、望ましくない血管新生を有する組織または細胞塊を、血管新生阻害量の1種類もしくは複数の種類の化合物またはこのような化合物の薬学的に許容される塩もしくは誘導体に曝露することによって血管新生を阻害することを伴う。ここで、このような化合物は、表1に示したように化合物1〜77の化合物より選択される。
【0093】
本明細書において開示された化合物は抗血管新生性を示すが、これらの化合物による特異的な作用のための機構は抗血管新生機構に限定されるとは限らないことが認識されるだろう。例えば、化合物は、新生物の治療に有用な(どの抗血管新生性とも関係しなくてもよい)細胞傷害性も示してよい。
【0094】
癌および子宮内膜症などの他の血管新生関連疾患の臨床管理のための最も有望な剤の中に抗血管新生薬がある。抗血管新生性SMの開発途中にある、または抗血管新生性SMを開発しようとしている無数の製薬会社が関与して、過去数十年にわたって数十億ドルの市場が発展してきた。
【0095】
最近、血管新生プロセスの理解が進んだことは、抗血管新生性SMの新たなグループの開発を促した。現在、病院において考慮に入れられている抗血管新生性SMのほとんどはチューブリン結合剤であるか、VEGF受容体などの血管新生プロセスに関与する細胞表面受容体のチロシンキナーゼ活性を標的とする。これらの化合物の一部(例えば、VEGF経路阻害剤)は、血管新生関連疾患、主に、癌の管理における臨床成果が乏しいことが既に分かっている。
【0096】
以前に特定された抗血管新生性SMとは対照的に、本明細書に記載の抗血管新生化合物を特定する革新的なアプローチは細胞下標的によって制限されず、それどころか、血管新生に関与する主要な細胞プロセスを標的とする。従って、この方法によって、チロシンキナーゼ阻害剤、チューブリン結合剤、または現在、開発途中にある他の任意の公知の抗血管新生性SMに関連しない新規のSMの発見が可能になった。さらに、この極めて厳格なスクリーニングデザインは「偽陽性」が存在しないことを保証する。「偽陽性」は、一般的に、HTSにおける主な障害である。
【0097】
従って、本明細書において提供される新たに特定されたSM(例えば、化合物1〜77)は高品質化合物リードの新たなグループであり、新たな抗血管新生性の細胞下標的を規定し、現在、学術機関および民間の製薬産業が考えているものとは別の作用機序に基づく薬物を開発する可能性を開く。
【0098】
さらに、本明細書において用いられるスクリーニングによって、一部の生理活性SMの増殖阻害活性の特異性についての情報が得られた。例えば、腫瘍細胞の増殖を阻害するが、内皮細胞に対して実質的な作用のない分子が見出された。これにより、高度な併用薬物療法が可能になる。例えば、血管新生依存性腫瘍の治療では、薬物は腫瘍脈管構造を通って送達され、薬物送達には機能的な脈管構造が必要とされるので、腫瘍成長を阻害するが、内皮細胞(脈管構造の主成分)に影響を及ぼさない第1の薬物を送達することが時として重要な場合がある。従って、腫瘍成長を特異的に阻害するが、内皮細胞増殖を阻害しない能力を有する本研究において発見されたような薬物(例えば、化合物74〜77)は、このような治療に大きな価値があるだろう。腫瘍が大幅に小さくなったら、腫瘍細胞および内皮細胞を両方とも標的とする必要があるので、腫瘍細胞および内皮細胞の両方において阻害活性を有する薬物が好ましい場合がある。このような多くの薬物(例えば、化合物1〜37および63〜73)が本研究においても発見された。従って、本研究において得られたSM特異性情報は抗癌SM療法の開発において非常に有用であろう。
【0099】
本明細書において特定された生理活性SMは、癌、子宮内膜症、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性などを含む(が、これに限定されない)様々な血管新生関連疾患の臨床管理に適用される候補である。
【0100】
従って、塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む血管新生依存性疾患を治療するための薬学的組成物が本明細書において開示される。特定の例では、薬学的組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。他の例では、血管新生依存性疾患は、癌、網膜症、子宮内膜症、関節炎、または乾癬を含む。さらなる例において、組成物は、局部投与されるか、静脈内投与されるか、経口投与されるか、非経口投与されるか、または移植片として投与される。さらに他の例において、薬学的組成物は、追加の血管新生阻害剤をさらに含む。
【0101】
塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む、異常な血管新生を阻害するための薬学的組成物も本明細書において開示される。ある例では、薬学的組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。ある例では、異常な血管新生は腫瘍によって刺激され、腫瘍は良性でもよく、悪性でもよい。
【0102】
塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む、新生物組織の成長を阻害するための薬学的組成物も本明細書において開示される。特定の例では、薬学的組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。
【0103】
さらに、血管新生依存性疾患を治療する方法が開示される。この方法は、塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む治療的有効量の組成物を、血管新生依存性疾患を有する対象または血管新生依存性疾患の素因を有する対象に投与する工程を含む。特定の例では、組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。さらなる例において、血管新生依存性疾患は、癌、網膜症、子宮内膜症、関節炎、または乾癬を含む。ある例では、組成物は、局部投与されるか、静脈内投与されるか、経口投与されるか、非経口投与されるか、または移植片として投与される。さらに他の例において、前記方法は、bFGF阻害剤、FGF阻害剤、またはVEGF阻害剤などの追加の血管新生阻害剤を対象に投与する工程をさらに含む。
【0104】
対象における望ましくない血管新生を阻害する方法も本明細書において開示される。前記方法は、血管新生が望ましくない対象を特定する工程、および塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む治療的有効量の組成物を対象に投与する工程を含む。特定の例では、組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。他の例では、前記方法は、bFGF阻害剤、FGF阻害剤、またはVEGF阻害剤などの追加の血管新生阻害剤を投与する工程をさらに含む。ある例では、望ましくない血管新生は腫瘍血管新生を含み、腫瘍は良性でもよく、悪性でもよい。
【0105】
さらに、対象における新生物を阻害する方法が本明細書において開示される。前記方法は、塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む治療的有効量の組成物を対象に投与する工程を含む。特定の例では、組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。
【0106】
最後に、新たな血管の形成が望ましくない対象の組織または標的領域における血管新生を阻害する方法が本明細書において開示される。この方法は、新たな血管の形成が望ましくない対象の組織または標的領域を特定する工程;および塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む有効量の組成物を組織または標的領域に直接的または間接的に導入し、それによって、組織または標的領域における血管新生を阻害する工程を含む。特定の例では、組成物は、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。ある例では、標的領域は、皮膚、腫瘍、網膜、関節、または子宮内膜組織を含む。他の例では、対象は、腫瘍、網膜症、子宮内膜症、関節炎、または乾癬を有するか、腫瘍、網膜症、子宮内膜症、関節炎、または乾癬を発症する素因を有する。
【0107】
IV.生理活性分子
一組の多様な化合物(Diversity Set I)をNCI/DTP Open Chemical Repository(dtp.cancer.govにおいてオンラインで入手可能)から入手した。Diversity Set Iは1990個の化合物を含み、これらはそれぞれ、Chem-Xプログラム(Oxford Molecular Group, Oxford, UK)によって求められた、少なくとも5つの新たなファーマコフォアおよび5つ以下の回転可能な結合を含有する。Diversity Set Iはセットとしてもはや入手することができないが、個々の化合物はNIC/DTP Open Chemical Repositoryから入手することができる(だが、多量のNSC675865、NSC18877、NSC176327、NSC521777、NSC166687、およびNSC119889は入手できない)。Diversity Set Iの各メンバーは大きな分子ファミリーであり、これに関する情報は公的データベースを通じてアクセス可能なことが当業者に理解されるだろう。代表的な化合物1〜77の抗血管新生活性が本明細書において特定されたことで、それぞれの関連する分子クラスを抗血管新生活性について試験する方法が今や可能であり、同様に、このようなスクリーニングによって特定された全ての分子を抗血管新生剤として使用することができる。抗血管新生活性を潜在的に示し得るさらなる化合物を特定するために、下記のセクションVに記載のように構造活性相関分析を含む構造類似性分析が用いられる。このような分析があると、Diversity Set Iファミリーに関連しないが、公的データベースを介して入手可能な化合物をスクリーニングすることができる。
【0108】
本明細書において示されたように、Diversity Set Iの中にある化合物を潜在的な抗血管新生活性についてスクリーニングした。表1は、(1)内皮細胞増殖を阻害する、(2)管形成を阻害する、(3)内皮細胞増殖および管形成を阻害する、または(4)同時に内皮細胞増殖を阻害することなく特異的な腫瘍細胞増殖を阻害することが発見されたDiversity Set Iに由来する77個の化合物を含む。具体的には、化合物1〜37は内皮細胞増殖阻害剤であり、化合物38〜62は管形成阻害剤であり、化合物63〜73は内皮細胞増殖阻害剤および管形成阻害剤であり、化合物74〜77は特異的な腫瘍細胞増殖阻害剤である。スクリーニングアッセイにおいて生理活性があると見出された77個の化合物のうち、化合物63、64、67、69、および71は特に興味深いとみなされた。これらの化合物はそれぞれ、細胞を傷つけることなく内皮細胞増殖および管形成を両方とも阻害した(10%未満の細胞傷害性は基底値とみなされた)。
【0109】
(表1)生理活性低分子




















【0110】
V.潜在的に活性のある関連構造
化合物1〜77のいずれかの構造と他の公知の化合物(または新たに得られた化合物)の構造を比較し、構造活性相関(SAR)または定量的構造活性相関(QSAR)分析によって類似性を求めることによって、さらなる潜在的に活性のある化合物を予測することができる。Tanimotoアルゴリズム(Dogra,「Script for computing Tanimoto coefficient」, QSARWorld, qsarworld.com/virtual-workshop.phpにおいてオンラインで入手可能, July 5, 2007)およびLeadScopeクラスタリングアルゴリズム(Leadscope Inc., Columbus, OH)を含めて、SAR分析およびQSAR分析のための公知の方法がいくつかある。SAR法およびQSAR法では分子構造を比較し、分子が共有する構造特徴を決定する。
【0111】
(表1に示した)化合物1〜77は多様な一組の低分子から得られたので、Tanimotoアルゴリズムを用いて、活性化合物のほとんどは構造上関連しないことが確かめられている。しかしながら、表1の化合物の一部とおよび他の公知の化合物との構造類似性を確かめるために、LeadScopeアルゴリズムを用いたクラスタリングが首尾良く用いられた。例えば、Diversity Set Iの多くの化合物には、Diversity Set Iには含まれない(構造が関連する)ファミリーメンバーがある。LeadScopeアルゴリズムを用いて、このようなファミリーメンバーおよび他の化合物を評価することができる。LeadScopeアルゴリズムは、(1)大きな、よく現われる下部構造;(2)生物学的応答を区別する下部構造;または(3)一組の化合物におけるメンバーシップを区別する下部構造について検索する(Cross et al., J. Med. Chem., 46:4770-4775, 2003)。
【0112】
生理活性化合物1〜77に基づいて2つの予測モデルを構築した。1つは内皮細胞増殖を阻害する化合物を対象とし、もう1つは管形成を阻害する化合物を対象とした。これらのモデルはLeadScopeソフトウェアを用いて構築され、ロジスティック回帰分析をベースとした。内皮細胞増殖を阻害する低分子の予測モデルを作るために、増殖阻害活性が既知である合計70個の化合物および阻害作用のない76個の化合物を使用した。予測モデルは70/70の正の化合物を正確に予測し、76/77の負の化合物を正確に予測して、98.6%の感度および100.0%の特異性で99.3%の一致が得られた。一致はモデルの全正確度の尺度であり、すなわち、76/77=99.3%である。感度は、モデルが真の陽性をどのくらい予測するかの尺度である。感度は、以下の式:感度=TP/(TP+FN)を用いて計算される。式中、TPは真の陽性の数であり、FNは偽陰性の数である。特異性は、モデルが真の陰性をどのくらい予測するかの尺度である。特異性は、以下の式:特異性=TN/(TN+FP)を用いて計算される。式中、TNは真の陰性の数であり、FPは偽陽性の数である。試験分子セットの一致は98.0%であり、69個が真の陽性、1個が偽陽性、75個が真の陰性、2個が偽陰性であった。感度は97.2%であり、特異性は98.7%であった。予測の正確度を評価するために、トレーニングセットおよび試験セットにある各分子を内皮細胞増殖アッセイにおいて試験した。
【0113】
管形成を阻害する低分子の予測モデルも作った。トレーニングセットの一致は100.0%であり、感度および特異性は100.0%であった。試験分子セットは一致が71.0%であり、12個が真の陽性、8個が偽陽性、32個が真の陰性、10個が偽陰性であった。感度は54.5%であり、特異性は80.0%であった。予測の正確度を評価するために、トレーニングセットおよび試験セットにある各分子を管形成アッセイにおいて試験した。
【0114】
これらの予測モデルを、NCI低分子データベース(dtp.nci.nih.gov/)、DrugBank(drugbank.ca)、LeadScope(leadscope.com)、およびPubChem(pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/)を含む様々なデータベースに適用した。モデルに基づいて、数百個の低分子が内皮細胞増殖および管形成を阻害すると予測された。例えば、内皮細胞増殖を阻害するまたは管形成阻害すると予測された化合物1〜77の中に、いくつかの下部構造(「骨格」)が特定された。
【0115】
LeadScopeソフトウェアを用いて骨格が特定された。このソフトウェアは、それぞれの化合物および活性の「zスコア」を計算する。zスコアは、サブセットの平均活性とその推定値:

を比較する(Cross et al., J. Med. Chem., 46:4770-4775, 2003)。クラスタリング分析を行った後に、各クラスターは、共通の骨格を有する複数の低分子を含有し、各分子はzスコア値を有する。低いzスコア値は、規定された活性、例えば、増殖または管形成について低い値を有する。従って、増殖について低いzスコア値を有する低分子は、高いzスコアを有する分子より増殖を抑える。低分子の個々のzスコア値に基づく平均zスコア値はクラスターと関連する。zスコア値が低いクラスターは、個々の低いzスコア値を有する低分子を含有する可能性が高い。本態様では、平均zスコアが-2未満のクラスターに含まれる骨格だけが考慮される。例えば、平均増殖zスコアが-2未満のクラスターにある分子は潜在的な増殖阻害剤と予測される。これらの特定された骨格は、増殖阻害および/または管形成阻害の両方について予測値を有する。
【0116】
内皮細胞増殖を阻害すると予測された骨格を有する分子のいくつかの代表的なクラスターを以下の表2〜6に示した。管形成を阻害すると予測された骨格を有する、さらなる分子クラスターを表7〜9に示した。
【0117】
(表2)クラスター368

【0118】
(表3)クラスター71


【0119】
(表4)クラスター358


【0120】
(表5)クラスター337

【0121】
(表6)クラスター479

【0122】
(表7)

【0123】
(表8)

【0124】
(表9)

【0125】
VI.生理活性試験
化合物1〜77、表2〜9のいずれかにおいてさらに列挙された化合物、またはその任意の誘導体の1つとの比較に基づいて、潜在的な抗血管新生化合物として新たな化合物が特定されたら、特定された潜在的な治療用化合物の生理活性を試験することができる。例として、本明細書に記載の任意の方法を使用することができる。以下のリストは、代表的であるが、非限定的な例となる生理活性アッセイを説明している。さらなるアッセイが当業者に公知であろう。例えば、さらなるアッセイが、(2009年4月2日にUS2009/0088341として公開され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)米国特許出願第12/060,752号に記載されている。
【0126】
i.蛍光ベース増殖アッセイ
単一の細胞培養物または複数の細胞培養物(共培養)にリアルタイム増殖アッセイが適用された。開示された蛍光細胞株の培養物が発する蛍光シグナルは、培養物に存在する蛍光細胞の数に比例する。言い換えると、培養物中のあるタイプの蛍光細胞の数が倍になった時に、培養物中のそのタイプの蛍光細胞の集団からの蛍光シグナル、例えば、発光最大の強度として測定された蛍光シグナルは倍になる。逆に、培養物中のあるタイプの細胞の数が半分に分けられれば、培養物中のそのタイプの細胞の集団からの蛍光シグナル、例えば、発光最大の強度として測定された蛍光シグナルは半分になる。これらの特性は、培養蛍光細胞に対する外因性作用物質、例えば、1種類または複数の種類のさらなる細胞株または試験剤(例えば、生理活性SM)の作用を測定するのに使用することができる。ある時点で、培養物の全蛍光は、シグナルが細胞数の関数としてプラトーに達するようにシグナル飽和に達することがある。第1の蛍光細胞株に対して、さらなる細胞株(例えば、異なる細胞株)の作用を確かめることができる(これは、例えば、多重アッセイまたは3次元共培養において、複数の種類の細胞株、さらには1種類もしくは複数の種類の蛍光細胞株、またはその組み合わせにも展開することができる)。
【0127】
対照と比較した、1種類または複数の種類のさらなる細胞株と共培養して増殖させた関心対象の蛍光細胞株に起因する蛍光シグナル(例えば、ある特定の波長における蛍光シグナルの強度、例えば、蛍光シグナルの発光最大の強度)の差は、場合によっては、少なくとも約10%になるだろう。このことは、関心対象の細胞株の増殖速度が、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または500%超低下または増加することを意味する。この差は統計的に有意な差でもよい。従って、1種類または複数の種類のさらなる細胞株の存在下または非存在下で生理活性SMが存在すると、対照、例えば、蛍光細胞株の基底増殖速度を示す値、またはSMおよび/もしくは他の細胞または細胞株の非存在下で増殖させた、例えば、単培養で増殖させた関心対象の蛍光細胞株と比較して、関心対象の蛍光細胞株の増殖速度の統計的に有意な差を誘導することができる。場合によっては、少なくとも1種類のSMおよび/または1種類のさらなる細胞株(もしくは複数の種類のさらなる細胞株)は、第1の蛍光細胞株の細胞の数が対照と比較して時間の関数として減少するように第1の蛍光細胞株に対して悪い影響を及ぼす。他の例では、少なくとも1種類のSMおよび/または1種類のさらなる細胞株(もしくは複数の種類のさらなる細胞株)は、細胞培養物に存在する第1の蛍光細胞株の細胞の数が対照と比較して時間の関数として増加するように第1の蛍光細胞株に対して良い影響を及ぼす。関心対象の蛍光細胞株は、初代細胞、例えば、対象から得られた初代細胞、例えば、腫瘍細胞と共培養し、関心対象の蛍光細胞株の増殖速度に対する初代細胞の影響を確かめることができることも意図される。このような共培養は2次元で確立されてもよく、3次元で確立されてもよい。
【0128】
共培養物に存在する他の蛍光細胞株に対する、それぞれの蛍光細胞株の作用を、例えば、多重アッセイにおいて確かめることができる。例えば、他の技法の中で適切なフィルターまたはFACS分析を用いると、赤色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質などの異なる蛍光タンパク質を発現する蛍光細胞株を区別し、異なる細胞株に起因する蛍光シグナルを確かめることができる。従って、単培養および/または2種類の蛍光細胞株からなる共培養から個々の蛍光細胞株の増殖速度を確かめることができる。このような分析によって、個々の蛍光細胞株について得ることができる情報が大幅に向上する。
【0129】
本明細書に記載のように、関心対象の蛍光細胞株に対する細胞株の作用を確かめることに加えて、増殖アッセイを用いて、外因性作用物質、例えば、試験剤、例えば、化学剤(例えば、化合物1〜77の1つの誘導体または構造関連化合物)が関心対象の蛍光細胞株の増殖に影響を及ぼすかどうか確かめることができる。これは、複数の種類の細胞株(蛍光細胞、または共培養、例えば、多重アッセイにおいて増殖させていない細胞)にも展開することができる。例えば、増殖アッセイを用いて、外因性作用物質、例えば、試験剤(例えば、潜在的な血管新生モジュレーター、例えば、潜在的な血管新生阻害剤、例えば、化合物1〜77の1つまたはその誘導体)、増殖因子、患者試料などが関心対象の蛍光細胞株、例えば、本明細書において開示された蛍光細胞株の1つまたは複数の増殖速度に影響を及ぼすかどうか確かめることができる。さらに、異なる細胞株に対する外因性作用物質の作用の差を確かめることができ、同様に、関心対象の細胞株に対する外因性作用物質および細胞の組み合わせ作用を確かめることができる。
【0130】
関心対象の蛍光細胞株を外因性作用物質と接触させ、関心対象の蛍光細胞株の増殖に対する外因性作用物質の影響を確かめることができる。例えば、関心対象の蛍光細胞株の蛍光シグナルと対照との差は、外因性作用物質、例えば、試験剤(例えば、潜在的な血管新生モジュレーター、例えば、潜在的な血管新生阻害剤)、増殖因子、患者試料、様々な細胞株などが血管新生モジュレーター(例えば、血管新生阻害剤)であることを示している。従って、いくつかの態様では、試験剤が血管新生モジュレーターであることを確かめるために、培養増殖している開示された蛍光細胞株の1つまたは複数が1種類の試験剤(または複数の種類の試験剤)と接触される。例示的な試験剤には、化合物1〜77のいずれか1つと構造上関連する化合物(表1)、表2〜9のいずれか1つに示される骨格と構造上関連する化合物、本明細書に記載の化合物のいずれかの誘導体または断片などが含まれる。試験剤と接触させた後に、培養物に存在する1種類または複数の種類の蛍光細胞株に対する外因性作用物質の影響を確かめるために、時間および/または濃度に対して培養物の蛍光を測定することができる。例えば、関心対象の蛍光細胞株に起因する蛍光シグナル(例えば、ある特定の波長における蛍光シグナルの強度、例えば、蛍光シグナルの発光最大の強度)が、外因性作用物質の濃度、時間、またはその両方の関数として増加しているかどうか確かめるために、例えば、対照、例えば、関心対象の蛍光細胞株または外因性作用物質と接触していない関心対象の蛍光細胞株の基底増殖速度を示す値と比較することによって、関心対象の蛍光細胞株が発した蛍光シグナル(例えば、ある特定の波長における蛍光シグナルの強度、例えば、蛍光シグナルの発光最大の強度)を測定することができる。いくつかの態様において、対照は、関心対象の蛍光細胞株の正常増殖を示す既知の値、例えば、細胞数の倍加時間である。ある態様において、対照は、外因性作用物質と接触していない細胞培養物(典型的には、関心対象の蛍光細胞株の培養物であるが、必ずしも関心対象の蛍光細胞株の培養物とは限らない)の蛍光シグナルである。
【0131】
ある態様において、試験剤などの外因性作用物質は、関心対象の蛍光細胞株の増殖速度を低下させる。このような活性を示す試験剤は、潜在的な血管新生阻害剤(すなわち、抗血管新生活性を有する)と特定され、正常な血管新生が増大している疾患または状態、例えば、癌の治療において有用だろう。ある態様において、対照と比較して、関心対象の蛍光細胞株の増殖速度の減少は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%の減少である。関心対象の蛍光細胞株に起因する蛍光シグナルは、存在する関心対象の細胞株の細胞の数に比例するので、パーセント減少は、関心対象の細胞株に起因する蛍光シグナル、例えば、ある特定の波長における蛍光強度、例えば、発光最大における蛍光強度のパーセント減少として測定することができる。さらなる態様において、減少は、対照と比較して統計的に有意な減少である。
【0132】
ii.蛍光ベース細管形成アッセイ
様々な蛍光タンパク質を発現する蛍光細胞株、例えば、本明細書および(2009年4月2日にUS2009/0088341として公開され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)米国特許出願第12/060,752号において開示された蛍光細胞株の培養物を細管形成アッセイに適用することができる。新血管新生は血管新生の根底をなし、多くの薬物スクリーニングおよび細胞シグナル伝達研究の焦点である。血管の発達は固形腫瘍の発達および成長における重大な事象であり、創傷治癒、網膜症、および黄斑変性に関与する。蛍光細胞株、特に、開示された内皮蛍光細胞株は、インビトロ細胞培養アッセイを用いた血管新生の程度を評価するアッセイにおいて使用するのに理想的である(例えば、Auerbach et al. Clinical Chemistry 49:1, 32-40, 2003; Taraboletti and Giavazzi, EJC 40, 881-889, 2004を参照されたい)。蛍光/比色染色は必要とされないので、細管形成アッセイは経時的に追跡することができ、BD Pathway(商標)Bioimager(BD Bioscience, San Jose, CA)などの既存の計測装置において直接視覚化することができる。これは、この血管新生インビトロアッセイにおける、異なる細胞タイプ間の相互作用の研究あるいは関心対象のSMおよび/または1種類もしくは複数の種類の細胞タイプの間の相互作用の研究を可能にする。さらに、細管形成能に対するSMの作用は、関心対象の蛍光細胞株と、初代細胞、例えば、対象から得られた初代細胞、例えば、腫瘍細胞との共培養物についても確かめることができる。このような共培養物は、2次元共培養または3次元共培養、例えば、米国特許出願第12/802,666号に記載の共培養として樹立することができる。
【0133】
細管形成アッセイは、典型的には、内皮細胞、例えば、蛍光内皮細胞(蛍光タンパク質を発現するように安定にトランスフェクトされている)が細胞外マトリックス(例えば、BD Bioscienceから入手可能なBD Matrigel(商標)マトリックス、Trevigenから入手可能なBME、またはInvitrogen(登録商標)から入手可能なGELTREX(商標)など)の中で特異な血管様細管を形成する能力に基づく。細胞は、顕微鏡観察、例えば、蛍光細胞の場合は蛍光顕微鏡によって視覚化され、1種類または複数の種類の関心対象の化合物が関心対象の蛍光細胞株の細管形成能力(細管形成能とも呼ばれる)に影響を及ぼす能力が確かめられる。細管形成は、手作業による追跡によって、または自動共焦点イメージングシステムによって、例えば、BD Pathway(商標)BioimagerとAngioApplication(商標)を用いて確かめることができる。蛍光細胞株を用いると、例えば、細胞の固定、例えば、細管の破裂から生じることがある人工物を避けるために、生細胞に対して細管形成アッセイを行うことができる。細管形成アッセイでは、細管の総面積、細管の総数、結節の数、分岐点の数、結節あたりの管の数、および/または結節面積などのいくつかのパラメータを測定することができる。ある態様では、細管形成能は、コンピュータにより実行される方法によって、例えば、プログラムAngioApplication(商標)によって確かめられる。
【0134】
蛍光細胞株を用いると、細管形成に対する外因性作用物質、例えば、細胞株および試験剤の作用を確かめることができる。特定の例では、試験剤は、化合物1〜77のいずれか1つと構造上関連する1種類または複数の化合物(表1)、表2〜9のいずれか1つに示される骨格と構造上関連する1種類または複数の種類の化合物、本明細書に記載の化合物のいずれかの誘導体または断片などである。ある態様では、複数の種類の蛍光細胞株を共培養において増殖させる。従って、存在する他の蛍光細胞株に対する、それぞれの蛍光細胞株の作用を確かめることができる。または、様々な細胞株に対する外因性作用物質、例えば、試験剤、または患者試料の作用の差を多重アッセイにおいて評価することができる。例えば、適切なフィルターを用いると、赤色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質などの異なる蛍光タンパク質を発現する蛍光細胞株からの蛍光シグナルを区別し、異なる蛍光細胞株に起因する蛍光シグナルを確かめることができる。従って、細管形成能から、単培養さらには共培養物、例えば、複数の種類の蛍光細胞株の共培養物からでも個々の細胞株の細管形成能を確かめることができる。
【0135】
共培養において増殖させた時に、関心対象の蛍光細胞株の細管形成能と、対照、例えば、関心対象の蛍光細胞株の単培養物の細管形成能との間の差は、細管形成能の差によって実証されたように他の細胞株が血管新生モジュレーターであることを示している。ある態様において、対照と比較した細管形成能の差、例えば、関心対象の蛍光細胞株の共培養において形成される細管の総面積、細管の総数、結節の数、分岐点の数、結節あたりの管の数、または結節面積の少なくとも1つの数によって測定される細管形成能の差は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または500%超である。ある態様では、差は統計的に有意な差である。従って、細胞株は、関心対象の蛍光細胞株、例えば、開示された蛍光細胞株の1つの細管形成能における統計的に有意な差を誘導することができる。組み合わせ手法をとると、関心対象の蛍光細胞株の細管形成能に対する複数の種類の細胞株の単独または組み合わせの影響を確かめることができる。ある例では、1種類または複数の種類のさらなる細胞株が存在すると、例えば、関心対象の蛍光細胞株によって形成される細管の総面積、細管の総数、結節の数、分岐点の数、結節あたりの管の数、または結節面積によって測定されるように、関心対象の蛍光細胞株の細管形成能が減少する。これらの細胞株は血管新生の負の制御因子として特定されるだろう。
【0136】
蛍光細胞株を利用すると、細管形成アッセイを用いて、試験剤の生物学的作用、例えば、潜在的な血管新生モジュレーター、例えば、化合物1〜77のいずれか1つと構造上関連する化合物(表1)、表2〜9のいずれか1つに示される骨格と構造上関連する化合物、本明細書に記載の化合物のいずれかの誘導体または断片などの作用をスクリーニングすることもできる。ある態様では、関心対象の蛍光細胞株(または多重アッセイにおける複数の種類の関心対象の細胞株)を外因性作用物質、例えば、細胞株または試験剤と接触させ、細管形成能に対する外因性作用物質の影響を確かめることができる。例示的な試験剤が本明細書において提供される。例えば、関心対象の蛍光細胞株と対照との間の細管の総面積、細管の総数、結節の数、分岐点の数、結節あたりの管の数、および/または結節面積の差を用いると、外因性作用物質、例えば、試験剤は、関心対象の蛍光細胞株が細管を形成する能力に影響を及ぼすかどうか確かめられる。外因性作用物質と接触させた関心対象の蛍光細胞株の細管形成能と対照(例えば、外因性作用物質に曝露された対照培養物)の細管形成能との差は、外因性作用物質が血管新生モジュレーターであることを示す。ある態様において、外因性作用物質と接触させた蛍光細胞株の細管形成能と対照の差は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または500%超である。ある態様において、差は統計的に有意な差である。従って、対照、例えば、外因性作用物質と接触していない関心対象の蛍光細胞株と比較して、外因性作用物質は、試験剤と接触させた関心対象の蛍光細胞株の細管形成能において統計的に有意な差を誘導することができる。
【0137】
1つの態様において、外因性作用物質は、関心対象の蛍光細胞株が細管を形成する能力を減少させる。このような活性を示した試験剤は潜在的な血管新生阻害剤と特定され、正常な血管新生が増大している疾患または状態、例えば、癌の治療において有用だろう。このような剤は単独で、または類似機構もしくは補完機構によって(例えば、血管新生経路における異なる工程において)血管新生を阻害することが知られている他の剤(SM、ペプチド、もしくは抗体などがあるが、これに限定されない)と組み合わせて使用することができるだろう。ある態様において、関心対象の蛍光細胞株の細管形成能の減少は、対照と比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%の減少である。さらなる態様において、減少は、対照と比較して統計的に有意な減少である。
【0138】
iii.蛍光ベース遊走アッセイ
使用可能な別のアッセイは細胞遊走アッセイである。これらのアッセイは、管理された環境における細胞遊走、例えば、細胞株(または多重アッセイでは複数の種類の細胞株)の遊走の差を評価する。細胞遊走は、ある特定の場所への遊走に関連した場所における蛍光シグナル(例えば、ある特定の色の蛍光シグナルまたはある特定の波長における蛍光シグナルの強度、例えば、ある特定の蛍光タンパク質の発光最大の強度)によって確かめられる。
【0139】
細胞遊走アッセイを用いると、細胞が化学勾配の上方に、または化学勾配の下方に遊走する能力を確かめることができる。化学勾配の「上方」に遊走するとは、低い化学濃度の化学物質の領域から高い化学濃度の領域に遊走する(例えば、高濃度の化学誘引物質の方へ遊走する、または低濃度の化学誘引物質から離れて遊走する)ことを指すのに対して、化学勾配の「下方」に遊走するとは、高い化学濃度の領域から低い化学濃度の領域に遊走する(例えば、高濃度の化学忌避剤から離れて低濃度の化学忌避剤に向かって遊走する)ことを指す。このような遊走は典型的には走化性と呼ばれる。蛍光細胞株などの細胞は、化学誘引物質に向かう、または化学忌避剤から離れる一致した移動を刺激することによって、環境の中にある化学シグナルに応答する。蛍光細胞株などの哺乳動物細胞において、代表的な化学誘引物質は、細胞が放出した因子、例えば、血清中に見られる因子、例えば、増殖因子などを含む。
【0140】
蛍光細胞(例えば、米国特許出願第12/060,752号に記載の(2009年4月2日にUS2009/0088341として公開された)蛍光細胞)は、任意の細胞遊走アッセイ形式、例えば、ChemoTx(商標)システム(NeuroProbe, Rockville, MD)、トランスウェルシステム、または他の任意の他の適切な装置もしくはシステムにおいて使用することができる。ある例では、細胞遊走アッセイが以下の通りに行われる。関心対象の蛍光細胞株の培養物を細胞遊走器具の第1のチャンバーに入れ、外因性作用物質(例えば、化学誘引物質)を、細胞遊走器具の第1のチャンバーに隣接し、第1のチャンバーと連絡する第2のチャンバーに入れる。その結果、第1のチャンバーから第2のチャンバーへの細胞遊走を検出することができる。チャンバーは、あるチャンバーから他のチャンバーへの細胞の通過を可能にする膜またはフィルターによって分離されてもよい。膜またはフィルターは、膜またはフィルターを通過する細胞の受動的拡散が最小限になるような構成をしている。一例では、第1のチャンバーは器具の上部チャンバーであり、第2のチャンバーは器具の下部チャンバーである。ある例では、上部チャンバーは省かれ、細胞は、下部チャンバーと連絡する膜またはフィルターの上に直接置かれる。蛍光細胞株、例えば、本明細書に記載のアッセイにおいて用いられる蛍光細胞株を刺激して遊走する能力を確かめることができる。代表的な遊走アッセイには、「未知」部位(細胞懸濁液がフィルターの上にあり、走化性因子を含有する溶液がフィルターの下にある)および「陰性対照」部位(細胞懸濁液がフィルターおよび懸濁培地の上にあるが、走化性因子が下にない)がある。未刺激細胞がランダムに遊走することは、細胞の一部がフィルターを通過することを説明している。陰性対照部位にある遊走細胞は未刺激ランダム遊走の程度を示し、これは、走化性遊走すなわち走化性と区別することができる。蛍光タンパク質、例えば、開示された蛍光細胞を安定して発現する細胞は、蛍光マイクロプレートリーダーを用いてマイクロプレートの中で読み取ることができる。従って、上部チャンバー、下部チャンバー、または両チャンバーに存在する蛍光細胞の数を、例えば、時間の関数として求めることができる。
【0141】
遊走アッセイは、外因性作用物質、例えば、試験剤が、関心対象の蛍光細胞株の1つまたは複数の遊走に影響を及ぼす、または異なる影響を及ぼすかどうか確かめるために使用することができる。関心対象の蛍光細胞株と外因性作用物質を接触させ、関心対象の蛍光細胞株の遊走に対する外因性作用物質の影響を確かめることができる。例えば、外因性作用物質と接触した関心対象の蛍光細胞株と対照との間の遊走細胞の数の差は、外因性作用物質、例えば、試験剤、細胞株、増殖因子などが細胞遊走モジュレーターであることを示している。他の態様において、遊走アッセイにおける異なる細胞株間の遊走の差は、外因性作用物質に応答した異なる細胞株の遊走に差があることを示している。ある態様において、(例えば、細胞が安定かつ構成的に発現する蛍光タンパク質の蛍光強度によって測定される)対照と比較した、外因性作用物質と接触した蛍光細胞株の遊走細胞の数の差は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または500%超である。ある態様において、差は統計的に有意な差である。従って、外因性作用物質は、対照、例えば、外因性作用物質と接触していない関心対象の蛍光細胞株または関心対象の細胞株と混合されている異なる細胞株と比較して、外因性作用物質と接触した関心対象の蛍光細胞株の遊走の統計的に有意な差を誘導することができる。
【0142】
1つの態様において、外因性作用物質、例えば、試験剤は、関心対象の蛍光細胞株が遊走する能力を減少させる。このような活性を有する試験剤は潜在的な血管新生阻害剤と特定され、正常な血管新生が増大している疾患または状態、例えば、癌の治療において有用だろう。ある態様において、関心対象の蛍光細胞株の遊走の減少は、対照と比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%の減少である。さらなる態様において、減少は、対照と比較して統計的に有意な減少である。
【0143】
iv.蛍光ベース細胞生存率アッセイ
アッセイの別の例は細胞生存率アッセイである。このようなアッセイは、細胞の細胞膜の完全性が損なわれた時に起こる、例えば、細胞が、細胞傷害剤、例えば、細胞に対して細胞傷害性の試験剤に曝露された時など細胞が死滅した時に起こる、蛍光タンパク質を構成的に発現する蛍光細胞株の細胞質からの蛍光タンパク質の放出をベースとしている。蛍光タンパク質が細胞傷害剤に曝露されると培地に遊離し、例えば、蛍光計を用いて測定することができる。培養物に存在する、細胞から遊離した蛍光タンパク質の量が多いほど、培地に存在する蛍光の強度は大きくなる。培地中の蛍光の測定値は死細胞の数に対応する。
【0144】
ある態様において、細胞生存率アッセイは、試験剤などの外因性作用物質が、関心対象の蛍光細胞株の1つまたは複数、例えば、本明細書において開示された蛍光細胞株の1つまたは複数に対して細胞傷害性であるかどうか確かめるために用いられる。関心対象の蛍光細胞株を外因性作用物質と接触させ、関心対象の蛍光細胞株の死に対する外因性作用物質の影響を確かめることができる。例えば、外因性作用物質と接触させた関心対象の蛍光細胞株と対照との培地に存在する相対蛍光の増加は、外因性作用物質、例えば、試験剤、細胞株、増殖因子などが関心対象の細胞株に対して細胞傷害性であることを示している。他の態様において、細胞生存率アッセイにおいて様々な細胞株に対する細胞傷害剤の細胞傷害性の差は、特定の外因性作用物質がある細胞株を優先的に傷つけるが、培養物に存在する他の細胞株は傷つけないことを示している。このような情報は、例えば、他の細胞タイプを除き、特定の細胞タイプを優先的にまたは異なって傷つける剤をスクリーニングするのに有用である。例えば、混合細胞集団の中で、試験剤には、混合細胞集団に存在する罹患細胞(例えば、腫瘍細胞)に対して細胞傷害性がある(例えば、異なる細胞傷害性がある)が、混合細胞集団に存在する正常細胞に対して細胞傷害性が無いかどうか確かめるために、試験剤をスクリーニングすることができる。
【0145】
ある態様において、外因性作用物質と接触させた蛍光細胞株の培地蛍光と対照との差(例えば、細胞株から培地に遊離した蛍光タンパク質の蛍光強度によって測定した)は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または500%超である。ある態様において、差は統計的に有意な差である。従って、外因性作用物質、例えば、試験剤は、対照、例えば、外因性作用物質と接触していない関心対象の蛍光細胞株または関心対象の細胞株と混合されている異なる細胞株と比較して、外因性作用物質と接触した関心対象の蛍光細胞株の遊走として死細胞数の統計的に有意な差を誘導することができる。
【0146】
v.さらなる血管新生アッセイ
以下の説明は血管新生アッセイのさらなる例を提供する。この血管新生アッセイは、試験化合物、例えば、化合物1〜77の1つと構造上関連する化合物(表1)、または表2〜9のいずれかに示される骨格と構造上関連する化合物、およびその誘導体の血管新生(抗血管新生)活性の測定において有用であり得る。特定の例では、これらのアッセイはまた、化合物1〜77からの少なくとも2つのSMの組み合わせ、または化合物1〜77からの少なくとも1つのSMとさらなる公知のまたは潜在的な血管新生阻害剤との組み合わせの抗血管新生活性を測定するのに使用することもできる。当業者であれば、他の血管新生アッセイも使用できることを認めるだろう。
【0147】
角膜ポケットアッセイ:
これは、通常は無血管の角膜の新血管新生を促進する規定された物質の作用を追跡するための「最も基準となる」方法である。このアッセイには、新しい血管が容易に検出され、通常は無血管の角膜において新たに形成された血管であるのに本質的に違いないという利点がある。血管新生活性または抗血管新生活性について試験しようとする剤を、徐放される形で約1〜2μl体積の不活性のハイドロン(hydron)ペレットの中に固定する。このペレットを、麻酔をかけたC57BLマウス(またはウサギ)の角膜上皮にある、顕微解剖で作られたポケットの中に移植した。5〜7日間にわたって、血管新生因子は、血管のある隣接した角膜輪部から血管の成長を刺激する。細隙灯写真撮影(slit lamp photography)によって写真記録を行う。これらの血管の出現、密度、および程度を評価し、スコア付けした。場合によっては、麻酔をかけた動物において進行の時間経過を追跡した後に、屠殺する。血管を、長さ、密度、および血管が出ている輪部の放射状表面(文字盤の時間として表す)について評価した。
【0148】
皮内スポンジ血管新生アッセイ:
規定された量の試験試薬を含浸した不活性生体高分子スポンジを、経皮的切開を介して、皮下組織に作ったポケットの中に皮下移植する。次いで、5日〜15日間の規定された期間の後に、スポンジを取り除き、新たな血管新生を、多くの生化学的パラメータおよび組織形態計測的パラメータによって定量する。スポンジの一部を抽出し、内皮に限定された遺伝子産物、例えば、VEカドヘリン、FLK-1受容体、およびその他についてウエスタンブロットによって分析することができる。発現レベルが、スポンジに侵入した新血管の中に含まれる内皮細胞タンパク質を反映していることを確かめるために、同じ試料の凍結切片部分を免疫組織化学によって類似抗原について評価する。マウス角膜ポケットアッセイと共に、腹腔内経路または静脈内経路によって推定血管新生阻害剤を全身投与すると、様々な微小血管床における血管新生刺激に対する、これらの阻害剤の局所作用を評価および比較することができる。
【0149】
ニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイ:
別のアッセイではニワトリ絨毛尿膜が用いられる(CAMアッセイ;Wilting et al., Anat. Embryol. 183: 259, 1991を参照されたい)。CAMアッセイを用いると、ニワトリ胚絨毛尿膜(CAM)において血管新生および抗血管新生を定量することが可能になる。簡単に述べると、孵卵して2日目または3日目にニワトリ卵に窓をあけ、窓を、テープ、ろう、ガラススライド、またはPARAFILM(登録商標)ラッパーで密封する。孵卵して8日目に、窓をあけ、小さなスポンジまたは数個のゼラチン小片を、成長しているCAMの上に置く。
【0150】
移植後に、スポンジを、血管新生の少なくとも1種類の刺激剤または阻害剤(例えば、化合物1〜77のいずれか)によって処理する。12日目に、スポンジの中に、およびスポンジと周囲のCAM間葉の境界において垂直に成長している血管が形態計測法によって数えられる。スポンジの中に成長している血管の数を増やす因子は血管新生性とみなされるのに対して、スポンジの中への血管成長を阻害する因子は抗血管新生性とみなされる。新血管の数を定量すると血管新生性の尺度が得られる。従って、この技法を用いると、血管新生アゴニストまたは血管新生アンタゴニストの特徴付けが容易になる(さらなる情報については、Ribatti et al., J. Vase. Res. 1997, 34:455-463を参照されたい)。
【0151】
定方向インビボ血管新生アッセイ(Directed in vivo Angiogenesis Assay)(DIVAA):
さらに別の血管新生アッセイは、定方向インビボ血管新生アッセイ(DIVAA; Guedez et al., American Journal of Pathology 162(5):1431-9, 2003)と呼ばれる。シリコーンチューブ(0.15mm外径、New Age Industries, Southampton, PA)を長さ1cmに切断し、各チューブの一端を液体シリコーンで閉じ、24時間乾燥させ、次いで、オートクレーブする。試験物質の希釈液を、滅菌した冷エッペンドルフチューブの中でマトリゲルに溶解して調製する。チューブをハミルトンシリンジで塞ぐ。ヌードマウスに麻酔をかけ、各動物の背側皮膚の中にポケットを作る。次いで、チューブを移植し、最初に開口端を密封し、創傷を密封する。
【0152】
9〜11日後に、血管を視覚化するために、尾静脈にFITC-デキストランを注射し、約20分間、色素が脈管構造全体に分布するようにする。次いで、マウスをCO2で安楽死させ、皮膚ポケットを取り出す。
【0153】
次いで、血管をチューブの口の近くに保ちながら、皮膚を解剖する。次いで、マトリゲルをチューブから外し、ディスパーゼの存在下で37℃でインキュベートし、次いで、ボルテックスし、遠心分離し、蛍光を発生させるためにマトリゲルアリコートを96ウェルプレートに移す。蛍光を蛍光計において読み取る。
【0154】
VII.薬学的組成物および投与方法
本明細書に記載の化合物(例えば、化合物1〜77)およびその誘導体は、対象、例えば、血管新生の調節解除が伴う疾患または状態に罹患している対象における血管新生を阻害または低下するのに特に有用である。血管新生を阻害または低下させる方法は、血管新生を阻害または低下させる剤と特定された治療的有効量の少なくとも1種類の剤(例えば、本明細書に記載の化合物1〜77のいずれか)を対象に投与する工程を含む。従って、ある態様において、血管新生を減少させる生理活性化合物を含有する薬学的組成物は、対象、例えば、血管新生を低下させることによって治療される癌または別の疾患もしくは状態を有する対象に投与される。ある態様において、対象はヒト対象である。血管新生を減少させる少なくとも1種類の生理活性化合物を含有する薬学的組成物は、公知の従来の治療、例えば、癌治療と共に、例えば、治療的有効量の化学療法剤と共に投与することができる。
【0155】
特定の態様において、薬学的組成物は、塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む。組成物はまた、これらの化合物の2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの任意の組み合わせを含んでもよい。他の特定の態様において、記載の組成物はいずれも、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。実施例5にさらに詳述されるように、組み合わせの中にあるそれぞれのSMの、血管新生遺伝子発現に対する作用の差に一部基づいて、化合物の組み合わせを決定することができる。
【0156】
治療用化合物は、対象、例えば、ヒト対象に直接投与することができる。投与は、治療しようとする組織との最終接点に化合物を導入するのに通常使用される任意の経路による投与である。化合物は、任意の適切なやり方で、任意で、薬学的に許容される担体を用いて投与される。治療用化合物を投与するのに適した方法が利用可能であり、当業者に周知である。ある特定の組成物を投与するのに複数の経路を使用することができるが、多くの場合、ある特定の経路は、別の経路より速やかかつ有効な反応をもたらすことができる。
【0157】
抗血管新生化合物が薬として用いられる時には、治療投与に適した形の中に入れられる。試験剤(抗血管新生化合物)は、例えば、賦形剤および添加物または補助剤などの薬学的に許容される担体の中に含まれ、対象に投与されてもよい。頻繁に用いられる担体または補助剤には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖、タルク、ミルクプロテイン、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物および植物油、ポリエチレングリコールおよび溶媒、例えば、滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールが含まれる。静脈内ビヒクルには、液体および栄養補充剤(nutrient replenisher)が含まれる。防腐剤には、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および希ガスが含まれる。他の薬学的に許容される担体には、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed., Easton: Mack Publishing Co., 1405-1412, 1461-1487, 1975、およびThe National Formulary XIV., 14th ed., Washington: American Pharmaceutical Association, 1975)に記載のような、水溶液、塩を含む無毒の賦形剤、防腐剤、緩衝液などが含まれる。薬学的組成物の様々な成分のpHおよび正確な濃度は、当技術分野における日常的な技術に従って調節される。Goodman and Gilman The Pharmacological Basis for Therapeutics, 7th edを参照されたい。
【0158】
薬学的組成物は、一般的に、局部投与されるか、静脈内投与されるか、経口投与されるか、または非経口投与されるか、または移植片として投与される。適切な固体製剤または液体製剤の形は、例えば、顆粒、散剤、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、エアゾール剤、ドロップ、またはアンプルの形をした注射液であり、活性化合物を遅延放出する調製物でもある。これらの調製の中には、賦形剤ならびに添加物および/または補助剤、例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、潤滑剤、芳香剤、甘味剤、または可溶化剤が前記のように一般的に用いられる。薬学的組成物は様々な薬物送達系における使用に適している。薬物送達方法の簡潔な総説にいては、参照により本明細書に組み入れられる、Langer, Science, 249:1527-1533, 1990を参照されたい。
【0159】
患者の治療のために、化合物の活性、投与方法、障害の内容および重篤度、患者の年齢および体重に応じて、様々な一日量が必要である。しかしながら、ある特定の条件下では、これより多いまたは少ない一日量が適切な場合がある。一日量は、個々の投与単位の形で、またはさらに少ないいくつかの投与単位の形で単回投与によって行われてもよく、細分された用量を特定の間隔で複数回投与することによって行われてもよい。
【0160】
治療的に有効な用量は、疾患の症状およびその合併症を予防するのに、治癒するのに、または少なくとも部分的に寛解させるのに必要な本開示による化合物の量である。この使用に有効な量は、もちろん、疾患の重篤度ならびに患者の体重および全身状態によって決まるだろう。典型的に、インビトロで用いられる投与量は、薬学的組成物のインサイチュー投与に有用な量の有用なガイダンスとなることがあり、特定の障害を治療するのに有効な投与量を求めるために動物モデルが用いられることがある。様々な考慮すべき事項が、例えば、Gilman et al., eds., Goodman and Gilman: the Pharmacological Bases of Therapeutics, 8th ed., Pergamon Press, 1990;およびRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990に記載されている。投与量の有効性は任意の方法によってモニタリングすることができる。
【0161】
本明細書に記載の抗血管新生化合物は、治療または予防しようとする疾患の場所およびタイプに応じて様々なやり方で処方することができる。従って、患部に、または患部の近くにおいて局所使用するための薬学的組成物ならびに全身に使用するための(この場合、剤は心臓血管系を介して広範囲に散らばるように投与される)薬学的組成物が提供される。本開示は、本開示の範囲の中に、ヒトまたは獣医学において使用するために処方された少なくとも1種類の抗血管新生化合物を含む薬学的組成物を含む。
【0162】
活性成分として本明細書に記載の少なくとも1種類の抗血管新生化合物を含む薬学的組成物、または抗血管新生化合物および追加の抗血管新生剤の両方を含む薬学的組成物は、選択された特定の投与方法に応じて適切な固体担体または液体担体を用いて処方することができる。さらなる活性成分には、例えば、抗血管新生剤、例えば、bFGF阻害剤またはVEGF阻害剤が含まれる。
【0163】
適切な投与形式は、対象者一人一人について医師が最も良く決めることができる。様々な薬学的に許容される担体およびその製剤は、標準的な製剤専門書、例えば、E. W. Martin によるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。Wang and Hanson, J. Parenteral Sci. Technol, Technical Report No. 10, Supp. 42: 2S, 1988も参照されたい。
【0164】
薬学的組成物の剤形は選択された投与方法によって決まる。例えば、注射液に加えて、吸入用、局部用、眼用、腹腔用、および経口用の製剤を使用することができる。吸入用調製物はエアゾール剤、粒子などを含んでもよい。一般的に、吸入の場合の粒径の目標は、薬が吸収のために肺の肺胞領域に到達するために約1μm以下である。経口用製剤は液体(例えば、シロップ、溶液、または懸濁液)でもよく、固体(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル)でもよい。固体組成物の場合、従来の無毒の固体担体は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含んでもよい。このような剤形を調製する実際に方法は公知であり、当業者に明らかであろう。
【0165】
組成物または薬学的組成物は、非経口投与、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、胸骨内投与を含む任意の経路によって、または関節内の注射もしくは注入によって、または舌下投与、経口投与、局部投与、鼻内投与、眼投与、もしくは経粘膜投与によって、または肺吸入によって投与することができる。抗血管新生化合物が、例えば、注射または注入のために非経口組成物として提供される場合、一般的に、水性担体、例えば、約3.0〜約8.0ののpH、好ましくは、約3.5〜約7.4、3.5〜6.0、または3.5〜約5.0のpHの等張性緩衝溶液に懸濁される。有用な緩衝液には、クエン酸ナトリウム-クエン酸およびリン酸ナトリウム-リン酸、および酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液が含まれる。治療的有効量の調製物が経皮的に注射または送達された後に何時間または何日間もわたって血流に送達されるように、持続性調製物の一形態すなわち「デポー」徐放性調製を使用することができる。
【0166】
抗血管新生化合物はまた持効性システムによって適切に投与される。持効性製剤の適切な例には、適切なポリマー材料(例えば、成型物品、例えば、フィルムもしくはマイクロカプセルの形をした半透性ポリマーマトリックス)、適切な疎水性材料(例えば、許容される油に溶解したエマルジョン)またはイオン交換樹脂、およびやや溶けにくい誘導体(例えば、やや溶けにくい塩)が含まれる。持効性の抗血管新生化合物は、血管内注射、静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、心膜内注射、または冠内注射によって投与されてもよい。投与はまた、経口投与、直腸投与、非経口投与、槽内投与、腟内投与、腹腔内投与、局部投与(散剤、軟膏、ゲル、ドロップ、もしくは経皮パッチによる)でもよく、頬投与、または経口噴霧剤もしくは点鼻薬でもよい。
【0167】
投与のための調製物は、抗血管新生化合物が徐放されるように適切に処方することができる。例えば、薬学的組成物は、生分解性ポリマーおよび/または多糖ゼリー化(polysaccharide jellifying)および/または生体接着性ポリマー、両親媒性ポリマー、粒子の界面特性を改変する剤、ならびに薬理活性のある物質を含む粒子の形をとってもよい。これらの組成物は、活性物質を徐放する、ある特定の生体適合特徴を示す。例えば、米国特許第5,700,486号を参照されたい。
【0168】
ある態様において、抗血管新生化合物は、ポンプ(Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201, 1987; Buchwald et al., Surgery 88:507, 1980; Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321:574, 1989を参照されたい)によって、または連続皮下注入、例えば、ミニポンプを用いた連続皮下注入によって送達される。静脈内バッグ溶液も用いられることがある。適切な用量の選択における重要な要因は、血管新生の増加もしくは減少によって測定されるような得られた結果であるか、または医師が適切だと考えているような疾患の管理または予防を測定するための他の基準によるものである。他の徐放系が、Langer (Science 249:1527-1533, 1990)による総説において議論されている。
【0169】
本開示の別の局面において、抗血管新生化合物は、例えば、米国特許第6,436,091号;米国特許第5,939,380号;および米国特許第5,993,414号に記載の埋込みポンプによって送達される。対象に薬物または他の任意の治療剤を一定してかつ長期間、投与または注入するために、埋込み可能な薬物注入装置が用いられる。本質的に、このような装置は能動型または受動型と分類することができる。
【0170】
活性薬物またはプログラム可能な注入装置は、薬物を患者の系に送達するためのポンプまたは計量装置を特徴とする。現在利用可能な、このような活性薬物注入装置の一例は、Medtronic SynchroMed(商標)プログラム可能なポンプである。このようなポンプは、典型的には、薬物リザーバー、リザーバーから薬物をポンプで送るための蠕動ポンプ、およびポンプによってリザーバーから送られた薬物を患者の解剖学的構造に移送するためのカテーテルポートを備える。このような装置は、典型的には、ポンプに動力を供給するバッテリーならびにポンプの流速を制御する電子モジュールも備える。Medtronic SynchroMed(商標)ポンプは、ポンプのリモートプログラミングを可能にするアンテナをさらに備える。
【0171】
対照的に、受動的な薬物注入装置はポンプを特徴とせず、薬物を送達するために加圧薬物リザーバーに頼る。従って、このような装置は、能動的装置と比較して小さくかつ安価になる傾向がある。このような装置の一例には、Medtronic IsoMed(商標)が含まれる。この装置は、流量制御ユニット全体にわたって印加される、加圧リザーバーが生じた力を介して患者に薬物を送達する。
【0172】
埋込みポンプを対象の皮膚の下に完全に埋込むことができ、それによって、経皮カテーテルが不要になる。これらの埋込みポンプは、一定のまたはプログラムされた送達速度で患者に抗血管新生化合物を供給することができる。定速またはプログラム可能な速度のポンプは相変化または蠕動技術のいずれかに基づいている。一定で代わらない送達速度が必要とされる場合、定速ポンプが長期の埋込み薬物送達に適している。注入速度への変化が予想されれば、定速ポンプシステムの代わりに、プログラム可能なポンプを使用することができる。浸透圧ポンプは注入速度を非常に遅くすることができるので、他の定速ポンプまたはプログラム可能なポンプよりかなり小さくなり得る。このようなポンプの一例は米国特許第5,728,396号に記載および列挙されている。
【0173】
経口投与の場合、薬学的組成物は、例えば、薬学的に許容される賦形剤、例えば、結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、結晶セルロース、もしくはリン酸一水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、もしくはシリカ);崩壊剤(例えば、バレイショデンプンもしくはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて従来手段によって調製された錠剤またはカプセルの形をとってもよい。錠剤は、当技術分野において周知の方法によってコーティングすることができる。経口投与用の液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液の形をとってもよく、使用前に水または他の適切なビヒクルを用いて構築するために乾燥製品として示されてもよい。このような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または食用硬化脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、扁桃油、油性エステル、エチルアルコール、または分画された植物油);および防腐剤(例えば、メチル-p-ヒドロキシベンゾエートもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加物を用いて従来手段によって調製されてもよい。調製物はまた、適宜、緩衝塩、芳香剤、着色剤、および甘味剤を含有してもよい。
【0174】
吸入による投与のために、本開示による使用のための化合物は、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体を用いて加圧型パックからのエアゾール剤スプレー提示またはネブライザーの形で都合よく送達される。加圧型エアゾール剤の場合、投与単位は、一定量を送達する弁を設けることによって決定することができる。吸入器または注入器において使用するためのカプセルおよびカートリッジは、化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤の粉末混合物を含有して処方することができる。
【0175】
局部投与の場合、使用するための化合物は、例えば、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、またはジメチルスルホキシドと混合される。これらは、対象の身体の標的領域、例えば、創傷または褥瘡性潰瘍への化合物の均一な分布を容易にするビヒクルとして作用する。
【0176】
活性成分として本明細書に記載の抗血管新生化合物を含む薬学的組成物は、通常、選択された特定の投与方法に応じて、適切な固体担体または液体担体を用いて処方される。本開示において有用な薬学的に許容される担体および賦形剤は従来のものである。例えば、非経口製剤は、通常、薬学的および生理学的に許容される液体ビヒクル、例えば、水、生理食塩水、他の平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどである注射液を含む。含むことができる賦形剤は、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿製剤などのタンパク質である。所望であれば、投与しようとする薬学的組成物はまた、少量の無毒の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートも含有してよい。このような剤形を調製するための実際の方法は公知であるか、または当業者に明らかであろう。
【0177】
例えば、非経口投与の場合、抗血管新生化合物は、一般的に、単位投与注射の形で(溶液、懸濁液、またはエマルジョンの形で)、薬学的に許容される担体、例えば、使用される投与量および濃度においてレシピエントに対して無毒であり、製剤の他の成分と適合する担体と望ましい純度で混合することによって処方することができる。薬学的に許容される担体は、無毒の固体、半固体、または液体の増量剤、希釈剤、カプセル材料、または任意のタイプの処方補助剤である。
【0178】
一般的に、製剤は、抗血管新生化合物をそれぞれ均一かつ密接に、液体の担体もしくは超微粒子状の固体担体またはその両方と接触させることによって調製される。次いで、必要に応じて、生成物は望ましい製剤に成型される。任意で、担体は非経口担体であり、ある態様では、レシピエントの血液と等張の溶液である。このような担体ビヒクルの例には、水、食塩水、リンガー液、およびデキストロース液が含まれる。不揮発性油およびオレイン酸エチルなどの非水性ビヒクルならびにリポソームも本明細書において有用である。
【0179】
ある態様において、抗血管新生化合物を含む薬学的組成物は、正確な投与量を個々に投与するのに適した単位剤形で処方される。投与される活性化合物の量は、治療されている対象、病気の重篤度、および投与方法に左右され、処方を行っている医師の判断に最もよく任される。これらの範囲内で、投与しようとする製剤は、治療されている対象において望ましい効果を実現するのに有効な量のある量の活性成分を含有する。
【0180】
抗血管新生化合物の治療的有効量は、利用される特定の化合物、治療されている対象、病気の重篤度およびタイプ、ならびに投与方法に左右されるだろう。
【0181】
VII.治療的使用
例えば、腫瘍(悪性でも良性でも)、網膜症、乾癬、子宮内膜症、関節炎、もしくは血管新生の阻害が有益な他の任意の疾患を有する、または腫瘍(悪性でも良性でも)、網膜症、乾癬、子宮内膜症、関節炎、もしくは血管新生の阻害が有益な他の任意の疾患を発症するリスクのある対象(または対象のある領域)における血管新生を阻害するための方法が本明細書において開示される。この方法は、この領域に(または全身に)治療的有効量の抗血管新生化合物(例えば、化合物1〜77のうちの1つ)を導入し、それによって対象における血管新生を阻害する工程を含む。
【0182】
1つの態様において、血管新生阻害化合物は局所投与される。腫瘍を有する対象の場合、投与は、例えば、腫瘍の動脈供給への動脈内注射によるものでもよく、腫瘍への直接注射によるものでもよい。腫瘍の場所によって他の投与経路が決まる。卵巣腫瘍は、例えば、阻害剤を用いた腹腔内洗浄によって治療される。脳腫瘍は、例えば、動脈内注射もしくはくも膜下腔内注射、鼻腔内投与、脳患部への直接注射、または血液脳関門の浸透圧破壊後の静脈内注射もしくは動脈内注射によって治療される(例えば、米国特許第5,124,146号を参照されたい)。肺癌は、例えば、腫瘍への直接注射、吸入、または罹患した肺葉の肺葉循環への注入によって治療される。治療の効力は、例えば、腫瘍量のモニタリングによって確かめられるか、例えば、疼痛などの症状の緩和によって示される。
【0183】
網膜症の対象の場合、投与は、例えば、眼内注射(例えば、後眼房への眼内注射)または局部眼投与によるものである。または、剤は、血管内に、例えば、網膜動脈のための血管供給に投与されてもよい。治療の効力は、例えば、視力の改善、視力の安定化、網膜における新血管新生の欠如、または疾患が進行しないことによって確かめられる。
【0184】
乾癬の対象の場合、投与は、例えば、皮下注射もしくは静脈内注射または局所適用によるものである。治療の効力は、例えば、乾癬症状の寛解によって確かめられる。関節炎の対象の場合、投与は、例えば、関節内注射によるものである。治療の効力は、例えば、移動性の改善または関節疼痛の緩和を検出することによてモニタリングされる。子宮内膜症の対象の場合、投与は、例えば、子宮内膜増殖への直接注射または抗血管新生化合物を用いた腹腔内洗浄によるものである。治療の効力は、例えば、移動性の改善または骨盤痛の緩和によって示される。
【0185】
血管新生阻害剤の投与は、対象が腫瘍、網膜症、乾癬、もしくは子宮内膜症を発症している時でも、対象が腫瘍、網膜症、乾癬、もしくは子宮内膜症を発症するリスクがある時でも常に、または不適切な新血管新生の症状が存在する時に開始することができる。
【0186】
対象における望ましくない血管新生および血管新生に依存する疾患または血管新生に関連する疾患を治療するための方法も開示される。この方法は、本明細書に記載の化合物の1つもしくは複数または化合物の1つもしくは複数と他の1種類または複数の種類の薬の組み合わせを薬学的に適合する担体に入れて対象に投与する工程を含む。投与は、血管新生およびこれに関連した疾患の発症または進行を阻害するのに有効な量で行われる。治療は、このような疾患の有意なリスクのある人口統計学上のグループの任意の患者において予防的に使用することができるが、さらに具体的な基準、例えば、状態の確定診断を用いて対象を選択することもできる。
【0187】
薬物を送達することができるビヒクルは、当業者に周知の方法を用いて、薬学的に許容される薬物組成物を含むことができる。任意の一般的な担体、例えば、滅菌した食塩水またはグルコース溶液を、本明細書において開示された薬物と共に利用することができる。投与経路には、経口経路および非経口経路、例えば、静脈内(iv)経路、腹腔内(ip)経路、直腸経路、局部経路、眼経路、鼻経路、および経皮経路が含まれるが、これに限定されない。
【0188】
薬物は、現在公知の、または後に開発される適切なやり方で、例えば、経口でまたは静脈内に、任意の従来の媒体に入れて投与することができる。例えば、静脈内注射は食塩水媒体によるものでもよい。媒体はまた、従来の薬学的な補助材料、例えば、浸透圧を調節する薬学的に許容される塩、脂質担体、例えば、シクロデキストリン、タンパク質、例えば、血清アルブミン、親水性剤、例えば、メチルセルロース、界面活性剤、緩衝液、防腐剤などを含有してもよい。非経口の薬学的担体のさらに完璧な説明は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (19th Edition, 1995) 95章において見られる。
【0189】
当業者に公知なように、従来の薬学的に許容される担体、佐剤、および対イオンを用いて、他の薬学的組成物の例を調製することができる。組成物は、好ましくは、固体、半固体、および液体の剤形、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液体溶液、または懸濁液の単位用量の形をとる。
【0190】
本明細書において例示された化合物は、理想的には、望まれない血管新生が検出された後できる限り速やかに投与される。例えば、望まれない血管新生が確認され、腫瘍の存在が特定されたら、治療的有効量の薬物が投与される。化合物は単一用量で投与されてもよく、複数用量で、例えば、治療の間に毎日、毎週、2週間毎、または毎月、投与されてもよい。
【0191】
前記の例に示されたように、望ましいレベルの抗血管新生を実現することを目標にして、当業者によって、本明細書に記載の化合物の治療的に有効な用量を決定することができる。1つの態様において、抗血管新生の有効量は、対照と比較して統計的に有意な血管新生阻害を実現するのに十分な量である。血管新生は、アッセイ、例えば、本明細書に記載の任意のアッセイを用いて容易に評価することができる。または、血管新生は、別のアッセイにおいて、または患者における血管新生の直接的もしくは間接的な徴候によって確かめることができる。
【0192】
化合物の相対毒性があることで、様々な投与量範囲で投与することが可能になる。このような投与量範囲の一例は、経口、単一用量または分割量で約0.5〜約50mg/kg体重である。投与量範囲の別の例は、経口、単一用量または分割量で約1.0〜約25mg/kg体重である。経口投与の場合、組成物は、例えば、治療されている対象への投与量を症状に応じて調節するために、約25〜約500mgの活性成分、特に、100mgの活性成分を含有する錠剤の形で提供される。
【0193】
特定の対象に対する特定の用量レベルおよび投与頻度は変動する可能性があり、特定の化合物の活性、既存の血管新生活性の程度、年齢、体重、身体全体の健康、性別、食事、投与方法および投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、ならびに療法を受けている宿主の状態の重症度を含む種々の要因によって決まるであろう。
【0194】
本明細書に記載の抗血管新生性SMの少なくとも1つを含有する薬学的組成物は、血管新生によって媒介される様々な疾患の治療において使用することができる。このような血管新生依存性疾患の例には、全てのタイプの癌、角膜血管新生疾患、腫瘍形成および腫瘍の転移、例えば、骨髄腫、横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、結腸、前立腺、頭頸部、乳房、膀胱、肝臓、膵臓、肺、CNSの腫瘍、および血液由来腫瘍、例えば、白血病、また、血管腫、潰瘍性大腸炎、クローン病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、鎌状赤血球性貧血、サルコイド、梅毒、弾力線維性仮性黄色腫、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頸動脈閉塞疾患、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染症、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎の原因となる感染症、推定眼ヒストプラスマ症、ベスト病、近視、オプティックピット(optic pits)、シュタルガルト病、扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラズマ症、外傷およびレーザー後合併症などの疾患が含まれる。他の疾患には、ルベオーシス(隅角の血管新生)に関連する疾患、およびあらゆる形の増殖性硝子体網膜症を含む血管結合組織または線維組織の異常増殖によって引き起こされる疾患が含まれるが、これに限定されない。
【0195】
本明細書に記載の化合物の1つまたは複数と、他の様々な血管新生阻害剤化合物の1つまたは複数との組み合わせも本明細書において開示される。例えば、本明細書に記載の化合物は有効量の他の抗血管新生剤と組み合わせて投与することができる。「併用投与」という用語は、活性剤の同時投与および連続投与(どちらの順番でもよい)の両方を指す。本明細書において特定された化合物と併用することができる抗血管新生剤の非限定的な例は、TNP-470、炭酸脱水酵素阻害剤、エンドスタチン、アンジオスタチン、2-メトキシエストラジオール、IMiD(免疫調整阻害薬)CC5013、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、およびCOL-3、ならびにbFGF阻害剤またはVEGF阻害剤、例えば、特異的なVEGF-RアンタゴニストであるSU5416、ならびにVEGF受容体、bFGF受容体、およびPDGF受容体を遮断するSU6668(例えば、Liu et al., Seminars in Oncology 29 (Suppl 11): 96-103, 2002; Shepherd et al., Lung Cancer 34:S81-S89, 2001を参照されたい)である。さらに、本明細書に記載の化合物は、他の形の癌療法(例えば、化学療法、放射線療法、ホルモン療法)または血管新生に関連する障害および疾患との使用で知られている他の療法と併用されてもよい。
【0196】
さらなる参考文献:

【実施例】
【0197】
実施例1:抗血管新生性低分子の特徴
本実施例は、細胞ベースのHTS法を用いた抗血管新生性低分子の特定および最初の特徴付けについて述べる。
【0198】
本開示は、新たな一組の抗血管新生性低分子の発見に関する。抗血管新生性低分子は、細胞ベースのハイスループットスクリーニング(HTS)とケモインフォマティクスツールの組み合わせによって特定された。このアプローチは、HTSが1種類の細胞下分子を標的とせず、代わりに細胞プロセス全体を標的とする点で、以前の研究および製薬会社が採用したアプローチとは異なる。特に、血管新生の最も重要な2つの段階:内皮細胞増殖および管形成である2つの細胞ベースアッセイが開発された。
【0199】
細胞ベースのHTSスクリーニングを用いて、新たな一組の抗血管新生性低分子が発見された。構造活性相関(SAR)研究から、これらの新たな生理活性SMの大部分は公知の抗血管新生性SM(FDA marketed;現在、臨床試験されているSM;LeadScope、DrugBank、PubChemなどの化学物質データベースにおいて抗血管新生であるとアノテートされたSM)に関連しないことが分かっている。
【0200】
ハイスループットスクリーニングの概要
スクリーニングされた低分子ライブラリーはNCI Diversity Set I(dtp.nci.nih.gov/branches/dscb/diversity_explanation.htmlにおいてオンラインで入手可能)であった。このライブラリーはDTP/NCIから入手した(dtp.nci.nih.gov/においてオンラインで入手可能)。このライブラリーは、同じ数の構造ファミリーの代表メンバーである1974個の低分子(SM)を含有する。構造ファミリーはそれぞれ様々な数のメンバーを含有する。NCI Diversity Set Iに含まれるSMは、約72,000個のSMからなるライブラリーの中に見られる構造多様性の概要を示すように選択された。96ウェルプレートの中に入っているライブラリーを入手し、プレートごとのDMSO希釈液を200μMのストック濃度で調製した。
【0201】
血管新生プロセスの2つの主な段階:(1)増殖アッセイおよび(2)管形成アッセイを模倣する2種類の異なる細胞ベースHTSアッセイを開発した(アッセイプロトコールに関する、さらなる詳細については以下を参照されたい)。2つのHTSの主な目的は、内皮細胞の増殖または管形成のいずれかをブロックするSMを発見することであった。これらの2つのアッセイは、第1の「生理活性化合物」グループを規定する一次スクリーニングを含み、次いで、第1の「生理活性化合物」グループを二次スクリーニングによって評価した。図1を参照されたい。
【0202】
二次スクリーニングは、2つの段階:(1)細胞傷害性化合物の区別を目的としてデザインされた細胞傷害アッセイ(下記)および(2)一次スクリーニングにおいて特定された各化合物のIC50の計算からなった。この二次スクリーニングはまた、一次スクリーニングにおいて発見された推定偽陽性の排除および生理活性化合物の効力の評価を目的としてデザインされた。図1を参照されたい。
【0203】
次いで、二次スクリーニング後に得られた一組の生物学的に活性な化合物の作用機序の部分的な特徴付け、ならびにこれらの化合物と、FDAによって現在認可されている、または製薬会社が開発途中にある既存の抗血管新生性低分子との比較を目的として、これらの化合物を多くのケモインフォマティクス研究ならびにインビトロ研究において使用した。
【0204】
HTSおよび他のインビトロアッセイの編集された結果に基づいて、インビボ研究のために小さな一組の化合物を選択した。これらの研究は主に異種移植片実験(実施例2を参照されたい)からなり、関心対象の化合物の抗血管新生活性の確認ならびに革新的な抗腫瘍/抗血管新生薬の併用療法の試験を目的としてデザインされた。
【0205】
HTSの実験デザイン
図2は、全てのHTSアッセイの基本的な実験デザインを示す。増殖アッセイおよび管形成アッセイの両方に同じスキームを適用した。底が透明な黒色96ウェルプレートにおいて全てのアッセイを行った。プレートは、常に、陰性対照の縦列(縦列1)、陽性対照の縦列(縦列12)、および80個の化合物を評価するための10個の縦列を含むように並べられた。HTSアッセイにおけるストリンジェンシーを高め、偽陽性を避けるために、1μMという低い最終濃度で全ての化合物を試験した。
【0206】
いずれのHTSアッセイ(増殖および管形成)も、本質的に、(2009年4月2日にUS2009/0088341として公開され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)米国特許出願第12/060,752号に記載のような蛍光レポーター細胞株の使用に基づいた。要約すると、特に、細胞株であるブタ大動脈内皮細胞(PAE)、BEC(ヒト微小血管内皮細胞株)、HMEC-1(ヒト微小血管内皮細胞株)、A549(肺に由来するヒト腺癌)、およびMCF7(乳癌細胞株)を、様々な蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質-GFP-、黄色蛍光タンパク質-YFP-、赤色蛍光タンパク質-RFP-、および青色蛍光タンパク質-BFP-)によって安定にトランスフェクトした。これらの細胞株の作製に関する詳細は、2009年4月2日にUS2009/0088341として公開された米国特許出願第12/060,752号に記載されている。
【0207】
増殖HTS:
以前に、本発明者らは、レポーター細胞株の蛍光発光と培養されているレポーター細胞株の数との間には直線的な相関関係があると証明した。要約すると、1,000個の細胞/ウェルを前記の96ウェルプレートに播種した。縦列2〜12には細胞を10%FBSの中に播種し、縦列1(陰性対照)には細胞を0%FBSの中に播種した。縦列2〜11には、低分子(プレート1個あたり80個)を最終濃度1μMで添加した(陽性対照および陰性対照を、試験化合物を含有するウェルの中で同じパーセントのDMSOに曝露した)。各ウェルが発する蛍光を、5〜7日間、24時間ごとに、分光光度計(Infinite M200, TECAN(登録商標), Mannedorf, Switzerland)によって測定した。アッセイの質は、プレートごとにZ'スコア(Zhang et al., J. Biomol. Screen 4(2):67-73, 1999)を計算することによって評価した(Z'>0.5のプレートのみを考慮した)。
【0208】
管形成HTS:
要約すると、20,000個の細胞/ウェルを、予めゲル化したGELTREX(登録商標)ゲルマトリックス(Invitrogen, Carlsbad, CA)50μlの上に播種した。全ての細胞を10%FBSの中に播種した。縦列1の細胞(陰性対照)には、25μMのスラミン(suramine)(内皮管形成阻害剤と知られている抗血管新生因子)を曝露した。縦列2〜11には1μMの最終濃度の低分子(80個/プレート)を添加した(陽性対照および陰性対照は、試験化合物を含有するウェルの中で同じパーセントのDMSOに曝露した)。プレートを5〜7時間インキュベートし、モーター駆動ステージを備えた落射蛍光顕微鏡(Axiovert(登録商標)200M, Zeiss)およびAxio Vision(登録商標)(Zeiss)ソフトウェアの助けを借りて自動画像化した。Angio Application(登録商標)ソフトウェア(下記を参照されたい)を用いて画像を解析した。
【0209】
ヒット検出:
増殖HTSおよび管形成HTSから得られたデータを、HTS Correctorソフトウェア(Makarenkov et al., Bioinformatics 23(11):1408-0409, 2007)を用いて処理した。データは、「ウェル補正(well correction)」(Makarenkov et al., Bioinformatics 23(13):1648-1657, 2007)を用いて基準化し、「平均二乗クラスター内距離の合計(sum of the average squared inside-cluster distances)」(Gagarin et al., J. Biomol. Screen 11(8):903-914, 2006)によるクラスタリングを用いてヒットが特定された。ヒット検出のために、偽陽性を避けるために厳格な閾値(σ3.5)が適用された。
【0210】
HTS増殖アッセイの結果
図3は、PAE細胞を用いた増殖HTSに含まれた1個のプレート(4143-11)における結果を示す。プロットは、7日間にわたる96ウェル全ての蛍光発光を示す。予想したとおり、蛍光値は経時的に増加するが、様々なウェルが様々な蛍光値を示す。96ウェル全ての合成画像も示した(増殖4日目)。陽性対照を右端のウェル縦列に示した。予想したとおり、これらの対照は(プロットの中で)蛍光最大値を示し、ウェルの中で高い細胞密度を示した。陰性対照を左のウェル縦列に示した。これらはプロットの中で低い蛍光値を示し、ウェルの中で低い細胞密度を示した。さらに、PAE増殖をブロックする化合物の一例を1番目の横列、左から4番目の縦列に示した。蛍光値は低く、ウェルの中に細胞はほとんどなかった。さらに、PAE増殖を阻害しない化合物の一例を7番目の横列、4番目の縦列に示した。この場合、高い蛍光値がプロットの中に示され、ウェルの中に多数の細胞があった。
【0211】
増殖HTSの概略
同じプロトコールに従って、PAE細胞、BEC細胞、A549細胞、およびMCF7細胞に対するHTS増殖実験を行った。これらの実験は、異なる解剖学的起源からの腫瘍細胞と比較して、内皮細胞における阻害活性を有するSMの特異性を探索するためにデザインされた。
【0212】
図4は、得られた結果をまとめたヒートマップを示す。R統計ソフトウェアのパッケージgplotsのfunction heatmap.2を用いてヒートマップを作成した。ユークリッド距離行列を用いてクラスタリングを行った。X軸は、試験した1974個のSMを示し、Y軸は、実施した増殖HTS実験の一部を示す。全ての実験について、異なる日に得られた測定値が含められており、予想したとおり高度の一致性を示す。ヒートマップの中の濃い青色の細胞は、増殖阻害活性が最も高いSMであり、緑色および黄色のSMは増殖に対する活性がない。
【0213】
予想したとおり、ライブラリーの中の少ないパーセントのSMが様々な細胞株に対して阻害作用を有した。興味深いことに、内皮細胞増殖をブロックすることが示されたSMの大半は腫瘍細胞増殖も阻害した。これらのデータの統計解析によって、内皮細胞増殖を一貫して阻害する48個のSMが特定された(表10を参照されたい)。
【0214】
内皮細胞における増殖阻害活性と腫瘍細胞における増殖阻害活性の比較
図4に示したヒートマップでは、内皮細胞または腫瘍細胞の増殖を優先的に阻害するSMを区別することは難しい。この可能性を研究するために、内皮細胞および腫瘍細胞の平均増殖活性値を二変量散乱プロットにおいて比較した。SMのほとんどは、試験したどの細胞株にも増殖に影響を及ぼさず、散乱プロットの中心部に集まる(プロットの中心にある中間サイズの楕円の中に示される)。また、増殖阻害活性を有するほとんどのSMは腫瘍細胞および内皮細胞に対して似た効力で影響を及ぼし、左下の四分円に集まる(最も大きな楕円の中に示される)。興味深いことに、数個のSMが腫瘍細胞において増殖阻害活性を示し、内皮細胞において増殖阻害活性を示さなかった(小さな楕円;表10も参照されたい)。これらの低分子の増殖活性を横のプロットに示した(低分子はプレートの中の位置によって特定される;表10はプレート位置とNSC番号を互いに関係づけている)。内皮細胞に対して特異的な阻害活性をもつSMは発見されなかった。
【0215】
SMの増殖阻害活性の特異性は併用薬物療法の状況において重要な特徴である。血管新生依存性腫瘍の治療では、腫瘍に効果的に到達するための薬物送達用導管として働く脈管構造を傷つけないようにするために、腫瘍成長を阻害するが、内皮細胞に影響を及ぼさない薬物を最初に送達することが重要である可能性が高い。従って、腫瘍成長を特異的に阻害するが、内皮細胞増殖を阻害しない能力を有する本研究において発見された薬物のような薬物は大いに価値があるであろう。腫瘍が大幅に縮小したら、腫瘍細胞および内皮細胞を両方とも標的化する必要があるので、腫瘍細胞および内皮細胞の両方において阻害活性を有する薬物が好ましいであろう。多くのこのような薬物も本研究において発見されている(表10を参照されたい)。
【0216】
PAEにおける最大半量阻害濃度(IC50)
PAE細胞を用いて関心対象のSM全てについて用量反応曲線を作成した。GraphPad Prism (GraphPad software, Inc.)を用いて、データを非直線シグモイド曲線にフィッティングした。このアッセイは、(1)関心対象のSMの生理活性の確認、(2)増殖阻害活性の用量反応の確認、および(3)最大半量阻害濃度(IC50)の計算を目的とした多目的実験としてデザインした。初回スクリーニングが1μMの最終SM濃度を用いて行われたので、ほとんどの化合物のIC50が10-12〜10-9Mの範囲内であると確かめられた(図6)。このことは、本プロジェクトにおいて発見された全てのSMが内皮細胞において高い増殖阻害効力を示すことを裏付けている(表10を参照されたい)。
【0217】
細胞傷害アッセイ
HTS増殖アッセイにおいて得られた結果の評価からは、特定された生理活性化合物が細胞毒性によって増殖を阻害するかどうかに関する情報が得られない。細胞傷害性は、非ペプチド性低分子薬物に関連する一般的な問題である。関心対象のSMの細胞傷害能を探索するために、新規のハイスループット細胞傷害アッセイが以前に開発された(米国特許出願第12/060,752号;2009年4月2日にUS2009/0088341として公開された)。このアッセイは、細胞傷害性が細胞膜への損傷を伴い、細胞膜が損傷すると細胞質内容物が細胞環境に放出されるという事実に基づいている。本明細書において用いられたレポーター蛍光細胞は、細胞質に存在する蛍光タンパク質を構成的に合成するので、培地への蛍光の遊離は細胞傷害性の評価として使用することができる。
【0218】
図7は、仮説に基づいた2種類の細胞傷害アッセイ結果を示す。この図の下の部分では、蛍光細胞を細胞傷害性物質に曝露し、その結果、蛍光が細胞培地に遊離する。培地中の蛍光および細胞内の残りの蛍光を両方とも定量し、この図の下の部分にある式を用いて細胞傷害性パーセントを求めるのに使用することができる。プロットは、PAE細胞に対してTritonXを細胞傷害剤として使用した時に予想される用量反応曲線を示す。
【0219】
図8は、増殖阻害活性を有する4つの化合物の例を示す。このうち2つは、それぞれ、強い細胞傷害活性および中等度の細胞傷害活性を示す。この細胞傷害アッセイを用いて、4つの化合物は細胞傷害性であると特定された(表10を参照されたい)。これらの細胞傷害性化合物は臨床的に興味の対象となるかもしれないが、後のインビボ実験の考慮から外した。
【0220】
管形成
抗血管新生化合物を評価するためにHTS管形成アッセイも使用した。内皮細胞を播種した後に、マトリゲル上に均一に分布させる。だんだんと細胞は遊走し、他の内皮細胞と相互作用して、インビボの脈管構造によく似た管様構造を形成する。管形成は、血管新生プロセスのいくつかの重要な段階:内皮細胞活性化、細胞遊走、マトリックス分解、細胞分極、細胞間相互作用、および(特に)管形成を再現する。
【0221】
AngioApplication(商標)を用いたデータ分析
管形成アッセイのHTS形式への適合において遭遇する主な障害は、管形成の形態学的定量分析の実施である。このために、AngioApplication(商標)と呼ばれる画像分析プログラムを開発した(米国特許出願第12/060,752号において詳述され;2009年4月2日にUS2009/0088341として公開された)。このソフトウェア(図9)は、管の長さ、結節の面積、分岐点、フラクタル次元、および空隙性を含む(が、これに限定されない)管形成画像にある様々な測定項目を迅速に評価することができる。
【0222】
これらの測定項目のどれがHTS管形成アッセイデータのばらつきをよく説明するのか理解するために、主成分分析(PCA)を行った。PCAから、分岐指数(各結節に集まっている分岐の数)および空隙性(画像の中の管を除いた空間の平均面積)は、それぞれ、データのばらつきの53.8%および45.0%を説明し(下記のプロットにおける成分C1およびC2)(図10を参照されたい)、管形成を測定するのに最も適した測定項目であることが分かった。
【0223】
試験した全てのSMについて、空隙性(C1)および分岐指数(C2)を両方とも二変量散乱プロットにおいてプロットした。抗管形成活性を規定するために、陽性対照の平均とSMごとの平均とのユークリッド距離を測定項目として使用した(計算はプレートごとに別々に行った)。本質的には、陽性対照とかなり離れている化合物は抗血管新生性である可能性が高い。図11は、1個の試験プレートにある全てのSMからの結果を示す。予想したとおり、化合物のほとんど(グラフの中心に集まっている小さな四角)が陽性対照(グラフの中心に集まっている大きな四角)と近い位置にある。このクラスターは、ほとんどの低分子が管形成に影響を及ぼさず、従って、類似した分岐指数および空隙性の値を示したという事実によるものである。対照的に、陰性対照(グラフの右下の隅に集まっている大きな四角)は陽性対照からかなり離れた位置にある。陽性対照および陰性対照の代表的な画像を示した。管形成阻害化合物は、陽性対照と陰性対照との中間の距離に位置することが検出された。活性SMの代表的な画像を示した(図11)。
【0224】
ライブラリーの1974個の化合物のうち35個(1.75%)が、管形成を統計学的に有意に阻害すると見出された(表10を参照されたい)。
【0225】
管形成アッセイにおけるNSC119889の用量反応
全ての管形成阻害剤SMについてIC50を計算した。予想したとおり、ほとんどのIC50は10-9〜10-12Mの範囲にあるので、これらの化合物は極めて効果的な管形成阻害剤であった。図12は、化合物NSC119889を用いて作成した用量反応の一例を示す。
【0226】
スクリーニング結果および分析
図13は、内皮細胞の増殖HTSおよび管形成HTSにおいて得られた結果をまとめたものである(特定の化合物に関する情報については、表10を参照されたい)。化合物の2.4%(48)は増殖阻害剤であり、1.75%(35)は管形成阻害剤であった。興味深いことに、化合物の0.5%(11)が増殖阻害活性および管形成阻害活性を両方とも示した。これらのSMはネットワーク薬理学の目から見ると特に興味深い。非常に選択性の高い化合物は多標的薬物と比較して、望ましい臨床的有効性より低い臨床的有効性を示すことがあることが示唆されている(Hopkins, Nat. Chem. Biol. 4(11):682-690, 2008)。しかしながら、薬物のような特性を維持しながら多標的薬物をデザインすることは難しい。ここでは、本発明者らは、増殖阻害活性および管形成阻害活性を両方とも示す11個のSMを特定した(表10を参照されたい)。
【0227】
構造ベースの分析
本明細書において特定された抗血管新生性SMの構造を、アノテートされた利用可能なSMデータベース、例えば、特に、PubChem、DrugBank、LeadScope、およびFDA Marketed Drugsの中にあるアノテートされた化合物と比較した。LeadScopeソフトウェアを用いて構造分類を行った。本発明者らのSMのうちごくわずかしか、他のデータベースの中にあるアノテートされた化合物と構造上関連しなかった(図14の括弧の中にある数字)。これは、本プロジェクトにおいて用いられた新規の創薬法によって説明することができ、予想したとおり、新規のSARが発見された。本明細書において発見された抗血管新生性SMはどれも公知の抗血管新生性SMと構造上関連しないことは特に興味深い。これは、これらの新たに発見された抗血管新生性SMの新規性を裏付けており、新たなSARによって新たな細胞抗血管新生経路が活用されることを強調している。
【0228】
本プロジェクトにおける将来の研究領域の1つは、新たに発見された抗血管新生性SMの特異的な作用機序の特定である。Tanimotoの類似性アルゴリズム(40〜80%類似性)を適用して、本明細書に記載のSMと公知の作用機序を有するSMを比較することによって、既にある程度の進展がなされている(Fligner et al., Technomet, 110-19, 2002)。12の化合物の構造は潜在的な作用機序と適合すると見出された(表10の「作用機序」にある括弧内に示した)。
【0229】
(表10)生理活性低分子


生理活性
1 内皮細胞増殖阻害剤
2 管形成阻害剤
3 増殖阻害剤+管形成阻害剤
4 特異的な腫瘍細胞増殖阻害剤
****増殖阻害活性と管形成阻害活性を有し、有意な細胞傷害性の無い化合物
【0230】
実施例2:異種移植片腫瘍における血管新生のインビボ阻害
本実施例は、本明細書に記載の選択された低分子の投与による、腫瘍異種移植片における血管新生のインビボ阻害を示す。
【0231】
方法
マウス異種移植片を作製するために、雌無胸腺ヌードマウスの左後半身に、5x106個のA549細胞またはSK-ML-1細胞(100μl/マウス)を注射した。結果として生じた腫瘍を週3回測定し、体重を週2回測定した。腫瘍細胞を注射した14日後に、腫瘍量が100mm3より大きいマウスまたは50mm3より小さいマウスを研究から除いた。残りのマウスを無作為化して群(10匹の動物/群)に分け、100μlの10μM滅菌薬物溶液(4℃で保管)を用いて4週間にわたって週3回(月曜日/水曜日/金曜日)処置した。滅菌薬物溶液はIP注射を介して投与した。さらに4週間にわたって週3回(月曜日/水曜日/金曜日)腫瘍を測定し、さらに4週間にわたってマウスの体重を週2回(火曜日/木曜日)測定した。6週目または腫瘍が2cmを超えた時に、マウスを安楽死させた。全身剖検を行い、異常組織を瞬間凍結した(-80℃)。腫瘍を摘出し、4つの部分に分けた。2つの部分を2%ホルマリンに入れて4℃で一晩固定し、冷PBSでリンスし、パラフィン包埋のために調製した。他の2つの部分をドライアイスまたは液体窒素で瞬間凍結し、-80℃で保管した。
【0232】
結果
インビボ異種移植片実験のために前記の77個のSMのうち7個を選択した。SMは、阻害のタイプ(管形成-NSC19630、NSC292222、NSC259969;または管形成+増殖-NSC122657、NSC150117、NSC48300、NSC292596)、阻害パーセント、低い細胞傷害性レベル、および入手可能性に基づいて選択した。腫瘍異種移植片のために、2種類の異なるヒト癌モデルを選択した。A549は、皮下腫瘍において、ほとんど腫瘍周囲脈管構造だけを誘導する肺癌腫である。対照的に、SK-ML-1は、高レベルの腫瘍内血管新生を誘導する平滑筋肉腫である。全ての実験に負の対照PBSならびに陽性対照として公知の抗血管新生薬AVASTIN(登録商標)を含めた。AVASTIN(登録商標)は、A549ならびにSK-ML-1の両方の増殖を有意に阻害することが以前に示された。
【0233】
図15に示したように、全ての低分子が様々な程度で腫瘍成長を阻害した。一般的に、および予想したとおり、低分子は、血管新生性の低い腫瘍A549(上パネル)と比較して血管新生性腫瘍SK-ML-1(下パネル)の成長を強く阻害した。試験したSMのうち最も強い腫瘍成長阻害剤は、NSC48300、NSC150117、およびNSC259969であった。これらは全て、SK-ML-1モデルにおいてAVASTIN(登録商標)に似た効力を示した。
【0234】
実施例3:抗血管新生性低分子のチューブリン結合能
多くの公知の抗血管新生薬はチューブリンに結合し、その重合を妨害する。同様に、チューブリン重合を妨害する分子は潜在的に抗血管新生性であることも示されている。対照的に、前記のSAR分析から、実施例2において異種移植片アッセイにおいて抗血管新生性であることが示された7つの低分子はどれもチューブリン重合を阻害しないと予測された。本実施例はこの予測を裏付けている。
【0235】
インビボで研究された低分子のチューブリン結合活性を、Cytoskeletonの蛍光ベースチューブリン重合アッセイ(Denver, CO; カタログ番号BK011P)を用いて、製造業者の説明書に従って特徴付けた。SAR分析により予想されたように、研究された低分子はどれもチューブリン重合を妨害しなかった(図16)。
【0236】
実施例4:受容体型チロシンキナーゼ活性に対するSMの作用
現在、FDAによって認可されている抗血管新生療法のほとんど(例えば、AVASTIN(登録商標)またはスニチニブ)は受容体型チロシンキナーゼ(RTK)活性を標的とする。最近、独立したグループ(Paez-Ribes et al., Cancer Cell, 15: 220-231, 2009; Ebos et al., Cancer Cell, 15: 232-239, 2009)によって、RTK阻害剤は、転移刺激および薬物により阻害される血管新生経路以外の別の血管新生経路を含む二次的な有害作用を有することが提案されている。本実施例は、本明細書に記載の低分子のサブセットのRTK阻害活性の特徴付けを示す。
【0237】
本明細書に記載の抗血管新生性SMのRTK阻害活性を特徴付けるために、36個の化合物を選択し、InvitrogenのSelectScreen(登録商標)キナーゼ活性プロファイリングサービス(tool.invitrogen.com/content.cfm?pageid=10413#selectionにおいてオンラインで述べられている)を用いてスクリーニングした。VEGFR1およびFGFR2 RTK阻害活性を研究した。スクリーニングの結果を表11において詳述した。2回の独立した試験からのRTK活性の%阻害(および平均%阻害)を示した。実施例2においてインビボで試験した7個のSMのうち、NSC19630およびNSC48300だけがRTK阻害活性を示し、VEGFR2受容体に対する阻害活性しか示さなかった。全体的に見て、試験したごく少数のSMが実質的なキナーゼ阻害活性を示した。この観察は、本明細書に記載のSMのほとんどの抗血管新生作用機序はRTK阻害以外であることを裏付けている。
【0238】
(表11)キナーゼ阻害
キナーゼ活性を40%以上阻害したSMを太字で示した。
インビボ活性も特徴付けたSMをイタリック体で示した。


【0239】
実施例5:内皮管形成中の遺伝子発現に対する抗血管新生性SMの作用
本実施例は、血管新生経路にある遺伝子の発現に対する本明細書に記載の抗血管新生性低分子の作用を示す。
【0240】
方法
遺伝子発現研究のために、試験した各SMについて3回の独立した実験を行った。90,000個の細胞/ウェル(6個のウェル/処理)の皮膚微小血管内皮細胞(Lonza, Walkersville, MD)を、24ウェルプレートの中にある、重合させたGELTREX(登録商標)ゲルマトリックス(Invitrogen, Carlsbad, CA)の上に播種した。直ぐに、ウェルを等量の1μM SMまたはPBSで処理した。37℃および5%CO2で24時間のインキュベーション後に、Cell Recovery Solution(BD Biosciences, San Jose, CA, カタログ番号354253)を用いて細胞を抽出した。総RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen, Valencia, カタログ番号74104)を用いて抽出し、SUPERSCRIPT(登録商標)First-Strand逆転写酵素(Invitrogen, Carlsbad, CA, カタログ番号11904-018)を用いて逆転写した。Opticon 2サイクラー(MJ Research, Waltham, MA)においてリアルタイムPCR反応を行った。増幅は、2μlのcDNA(逆転写反応からの1:10希釈液)ならびに2μlのプライマー混合物(それぞれ10μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー)を含有する最終体積25μlにおいて行った。試料を以下の通り増幅した。95℃2分の初回変性の後に、95℃30秒、60℃30秒、および72℃45秒で46サイクルの反応を行った。サイクルごとに蛍光を測定し、PCR後に、50〜96℃まで(0.5℃刻み)温度を上昇させることによって融解曲線を作成した。全てのアンプリコンについて規定されたシングルピークが得られ、従って、増幅の特異性が確かめられた。
【0241】
結果
実施例2において示されたインビボ研究において使用した7つの低分子の作用機序をさらによく理解するために、管形成中の初代内皮細胞における血管新生遺伝子発現に対する、これらの分子の作用を研究した。モニタリングする遺伝子は、血管新生プロセスとの関連性に基づいて選択した。リアルタイムPCRにおいてアッセイした遺伝子および使用したプライマーを表12および表13に示した。全ての実験を3回繰り返して行った。結果を図17のボルケイノプロットに示した。X軸にLog2変化倍率を示し、Y軸にはlog10 P値を示した。これらの結果を下記の表14にもまとめた。
【0242】
(表12)リアルタイムPCRアレイの中にある遺伝子





【0243】
(表13)リアルタイムPCRプライマー








【0244】
(表14)血管新生遺伝子発現に対する抗血管新生性SMの作用
遺伝子発現のLog2変化倍率。P<0.001の変化倍率には下線を引いた。





【0245】
遺伝子発現データのクラスタリング分析
腫瘍が抗血管新生療法に対して耐性になることは周知である(Bergers and Hanahan, Nature Reviews: Cancer, 8:592-603, 2008)。腫瘍血管新生には複数の経路が関与する。現行の抗血管新生薬(例えば、AVASTIN(登録商標))はある経路をうまく阻害した後に、腫瘍内の血管新生プロセスを再開する別の経路が活性化される。薬物耐性をさらにうまく避けるために、複数の血管新生経路を阻害する多標的戦略が期待される。
【0246】
このために、異なる遺伝子セット、従って、異なる血管新生経路を標的とすることによって血管新生ひいては腫瘍成長を阻害する薬物を特定することを目的として、遺伝子発現データを用いてクラスタリング分析を行った。
【0247】
クラスタリング分析において遠く離れた遺伝子セットに影響を及ぼす薬物の組み合わせは、潜在的に、異なる血管新生経路を標的とする可能性があり、従って、より効率的な抗血管新生レジメンになる可能性がある。このクラスタリング分析から、NSC259969+NSC150117などの、いくつかの潜在的な薬物の組み合わせが浮かび上がっている。
【0248】
本発明者らの発明の原理が適用され得る、可能性のある多くの態様を考慮すれば、例示された態様は例にすぎないことが認められるはずであり、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。そうではなく、本発明の範囲は以下のクレームによって定義される。従って、本発明者らは、これらのクレームの範囲および精神の内にある全てを本発明者らの発明として主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む、血管新生依存性疾患を治療するための、薬学的組成物。
【請求項2】
[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
血管新生依存性疾患が、癌、網膜症、子宮内膜症、関節炎、または乾癬を含む、請求項1または請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
局部投与されるか、静脈内投与されるか、経口投与されるか、非経口投与されるか、または移植片として投与される、請求項1〜3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項5】
追加の血管新生阻害剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項6】
塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む、異常な血管新生を阻害するための、薬学的組成物。
【請求項7】
[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
異常な血管新生が腫瘍によって刺激される、請求項6または請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
腫瘍が良性または悪性である、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む、新生物組織の成長を阻害するための、薬学的組成物。
【請求項11】
[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む、請求項10記載の薬学的組成物。
【請求項12】
血管新生依存性疾患を治療する方法であって、以下の工程を含む方法:
血管新生依存性疾患を有するか、血管新生依存性疾患の素因がある対象に、塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む治療的有効量の組成物を投与する工程。
【請求項13】
前記組成物が、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
血管新生依存性疾患が、癌、網膜症、子宮内膜症、関節炎、または乾癬を含む、請求項12または請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、局部投与されるか、静脈内投与されるか、経口投与されるか、非経口投与されるか、または移植片として投与される、請求項12〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
追加の血管新生阻害剤を対象に投与する工程をさらに含む、請求項12〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
追加の血管新生阻害剤が、bFGF阻害剤、FGF阻害剤、またはVEGF阻害剤である、請求項 16記載の方法。
【請求項18】
対象における望ましくない血管新生を阻害する方法であって、以下の工程を含む方法:
血管新生が望まれない対象を特定する工程;および
塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む治療的有効量の組成物を対象に投与する工程。
【請求項19】
前記組成物が、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
追加の血管新生阻害剤を投与する工程をさらに含む、請求項18または請求項19記載の方法。
【請求項21】
追加の血管新生阻害剤がbFGF阻害剤、FGF阻害剤、またはVEGF阻害剤である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
望ましくない血管新生が腫瘍血管新生を含む、請求項18〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
腫瘍が良性または悪性である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
対象における新生物を阻害する方法であって、以下の工程を含む方法:
塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む治療的有効量の組成物を対象に投与する工程。
【請求項25】
前記組成物が、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
新たな血管の形成が望まれない対象の組織または標的領域における血管新生を阻害する方法であって、以下の工程を含む方法:
新たな血管の形成が望まれない対象の組織または標的領域を特定する工程;および
塩化2-ベンジリデン-3-(シクロヘキシルアミノ)-3H-インデン-1-オン(NSC150117)、デオキシボウバルジン(NSC259969)、プロパン酸(2,5-ジオキソピロール-1-イル)メチル(NSC19630)、1-ベンジルスルホニル-2,4-ジニトロベンゼン(NSC122657)、イソ酪酸マイタンシノール(NSC292222)、クロロ白金(1+);2-(4-メチルピペリジン-1-イル)エタンチオラート;脱水和物(NSC292596)、またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つを含む有効量の組成物を組織または標的領域に直接的または間接的に導入し、それによって、組織または標的領域における血管新生を阻害する工程。
【請求項27】
前記組成物が、[4-[(4-アルソノフェニル)メチル]フェニル]アルソン酸(NSC48300)またはその薬学的に許容される塩をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
標的領域が、皮膚、腫瘍、網膜、関節、または子宮内膜組織を含む、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
対象が、腫瘍、網膜症、子宮内膜症、関節炎、または乾癬を有するか、腫瘍、網膜症、子宮内膜症、関節炎、または乾癬を発症する素因を有する、請求項26〜28のいずれか一項記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15−1】
image rotate

【図15−2】
image rotate

【図15−3】
image rotate

【図16−1】
image rotate

【図16−2】
image rotate

【図16−3】
image rotate

【図16−4】
image rotate

【図17−1】
image rotate

【図17−2】
image rotate

【図17−3】
image rotate

【図17−4】
image rotate

【図17−5】
image rotate

【図17−6】
image rotate


【公表番号】特表2013−501004(P2013−501004A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523106(P2012−523106)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/043998
【国際公開番号】WO2011/014825
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512024037)アメリカ合衆国 (2)
【Fターム(参考)】