説明

折り曲げ罫線入りプラスチックシート及びプラスチックシート用罫線刃

【課題】良好な折り曲げ特性及び柔軟性が得られ、反りや波打ち等が発生するのを抑えることができると共に、折り曲げる作業が機械的に行える折り曲げ罫線入りプラスチックシート及びそのプラスチックシート用罫線刃を提供する。
【解決手段】プラスチックシート1の折り曲げ部分に付設される折り曲げ罫線2を、その折り曲げ罫線2の底面部2bに沿って浅い溝部3を長手方向に対して所定間隔に隔てて形成すると共に、浅い溝部3よりも深い溝部4を、浅い溝部3,3間の底面部2bに沿って長手方向に対して複数形成している。その折り曲げ罫線2を付設するプラスチックシート用罫線刃6を、その罫線刃6の頂面部6bに沿って食込み量が浅い刃部7を長手方向に対して所定間隔に隔てて形成すると共に、その浅い刃部7よりも食込み量が深い刃部8を、浅い刃部7,7間の頂面部6bに沿って長手方向に対して複数形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば化粧品や文具、玩具、食品等の物品が収容される包装容器を組立てるときに用いられる折り曲げ罫線入りプラスチックシートと、そのプラスチックシートの折り曲げ部分に折り曲げ罫線を付設するときに用いられるプラスチックシート用罫線刃とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の折り曲げ罫線が付設されたプラスチックシートとしては、例えば図14、図15に示すように、凹状刃部10aと凸状刃部10bとが刃先頂面部に形成された罫線刃10を押し付けて、浅い溝部12aと深い溝部12bとからなる折り曲げ罫線12を折り曲げ部分に形成した折り曲げ罫線入りプラスチックシート11(特許文献1)と、図16、図17に示すように、側面から見て略半円形状の凹状刃部13aと、略真っ直ぐな凸状刃部13bとが刃先頂面部に形成された罫線刃13を押し付けて、側面から見て略半円形状の浅い溝部15aと、略真っ直ぐな深い溝部15bとからなる折り曲げ罫線15を折り曲げ部分に形成した折り曲げ罫線入りプラスチックシート14(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4−9346号公報
【特許文献2】特開2001-293777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の罫線刃10,13により形成される深い溝部12b,15bの底部肉厚を薄くすると、プラスチックシート11,14の折り曲げ特性が向上するが、肉厚の薄い部分が長手方向に対して連続しているので、プラスチックシート11,14を折り曲げたとき、例えば裂け目や大きな孔等が深い溝部12b,15bの底部に発生しやすく、例えばゴミや水滴等の異物が侵入することがあり、包装容器に収容される物品の商品価値や衛生度が損なわれる。また、浅い溝部12aの角部が鋭角であり、浅い溝部15aの間隔が広いため、折り曲げ部分の手触り感が悪く、布や皮等が接触しても引っ掛かったりすることがある。
【0005】
一方、深い溝部12b,15bの底部肉厚を薄くするために、罫線刃10,13を深く食込ませると、プラスチックシート11,14が面方向に対して押し広げられ、折り曲げ部分に反りや波打ち等が発生するため、見栄えが悪くなる。且つ、そのプラスチックシート11,14を製函機により容器形態に組立てる場合、停滞したり、詰まったりするため、組立て作業を機械的に行うことが困難であるという問題点を有している。
【0006】
この発明は上記問題に鑑み、各浅い溝部間の底面部に深い溝部が複数形成された折り曲げ罫線をプラスチックシートに付設することにより、良好な折り曲げ特性及び柔軟性が得られ、反りや波打ち等が発生するのを抑えることができると共に、折り曲げ作業が機械的に行える折り曲げ罫線入りプラスチックシート及びそのプラスチックシート用罫線刃の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、所定角度で傾斜し相互に対峙する一対の側面部と、該側面部の一端側と連続する幅狭の底面部とからなる凹状の折り曲げ罫線が付設されたプラスチックシートであって、上記折り曲げ罫線の底面部に沿って浅い溝部を長手方向に対して所定間隔に隔てて形成すると共に、上記浅い溝部よりも深い溝部を、上記各浅い溝部間の底面部に沿って長手方向に対して複数形成した折り曲げ罫線入りプラスチックシートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、浅い溝部間に深い溝部が複数形成された折り曲げ罫線をプラスチックシートに付設するので、肉厚の薄い部分が連続するよりも、プラスチックシートに対して付与される面方向の応力が小さく、反りや波打ち等が発生するのを抑えることができると共に、プラスチックシートを折り曲げる作業及び容器形態に組立てる作業が機械的に行える。且つ、折り曲げ罫線をプラスチックシートに対して付設するときの加圧力が小さくて済み、加工性が向上する。
【0009】
且つ、肉厚が薄く、深い溝部を浅い溝部間に複数形成するので、分子密度の高い部分が分散され、良好な折り曲げ特性及び柔軟性が得られると共に、プラスチックシートを鋭角に折り曲げても裂け目や大きな孔等が発生せず、若し、孔が発生しても径が小さいため異物が侵入しにくいため、商品価値や衛生度が損なわれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】折り曲げ罫線入りプラスチックシートを示す展開図。
【図2】プラスチックシートを容器形態に組立てた状態を示す斜視図。
【図3】プラスチックシートに形成された折り曲げ罫線を示す斜視図。
【図4】折り曲げ罫線の溝形状を示す縦断側面図。
【図5】折り曲げ罫線の溝形状を示す縦断正面図。
【図6】折り曲げ罫線の他の溝形状を示す縦断側面図。
【図7】折り曲げ罫線のその他の溝形状を示す縦断側面図。
【図8】折り曲げ罫線を付設する罫線刃を示す斜視図。
【図9】罫線刃の刃部形状を示す側面図。
【図10】罫線刃の刃部形状を示す縦断端面図。
【図11】プラスチックシート用罫線刃の他の刃形状を示す側面図。
【図12】プラスチックシート用罫線刃のその他の刃形状を示す側面図。
【図13】折り曲げ罫線のその他の溝形状を示す平面図。
【図14】従来例の折り曲げ罫線を付設する罫線刃を示す斜視図。
【図15】図14の罫線刃により付設された折り曲げ罫線を示す斜視図。
【図16】従来例の折り曲げ罫線を付設する罫線刃を示す斜視図。
【図17】図16の罫線刃により付設された折り曲げ罫線を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述のプラスチックシートは、例えばポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)、生分解性プラスチック等の単体又は複合したプラスチックで形成され、且つ、例えば約0.1mm〜約1mmの範囲に含まれる所定の厚さに形成した透明又は半透明のシートが用いられる。
【0012】
この発明の実施形態として、上記各深い溝部を異なる深さに形成したり、上記浅い溝部間の底面部に、該浅い溝部よりも深く、深い溝部よりも浅い略中程度の溝部を形成することができる。
【0013】
一方、上述の折り曲げ罫線と略対応する形状を有するプラスチックシート用罫線刃の各浅い刃部を異なる食込み量に設定したり、上記浅い刃部間の頂面部に、該浅い刃部よりも食込み量が深く、上記深い刃部よりも食込み量が浅い略中程度の刃部を形成することができる。また、上記深い溝部及び深い刃部を、上記浅い溝部及び浅い刃部に対して所定の割合だけ深くなる寸法に設定することができる。つまり、浅い溝部の深さE1及び浅い刃部の高さE2を、例えば略100%とした場合、深い溝部の深さF1及び深い刃部の高さF2を、例えば略30%〜略70%程度の深さに設定する。
【0014】
上述の折り曲げ罫線を構成する浅い溝部及び深い溝部のA1,B1,B1a,C1,D1,E1,F1,G1と、その折り曲げ罫線を付設するときに用いられるプラスチックシート用罫線刃を構成する浅い刃部及び深い刃部のA2,B2,B2a,C2,D2,E2,F2,G2とを下記の寸法に設定することができる。
【0015】
つまり、浅い溝部のピッチ間隔A1及び浅い刃部のピッチ間隔A2を、例えば略0.3mm〜略10.0mmの範囲に含まれる間隔(例えば略1.1mm)に設定し、深い溝部のピッチ間隔B1及び深い刃部のピッチ間隔B2を、例えば略0.05mm〜略1.0mmの範囲に含まれる間隔に設定(例えば略0.2mm)し、浅い溝部と深い溝部との間のピッチ間隔B1a及び浅い刃部と深い刃部との間のピッチ間隔B2aを、ピッチ間隔A1,A2よりも狭く、ピッチ間隔B1,B2よりも広い間隔に設定(例えば略0.25mm)し、浅い溝部の幅C1及び浅い刃部の幅C2を、例えば略0.2mm〜略1.0mmの範囲に含まれる幅に設定し、深い溝部の幅D1及び深い刃部の幅D2を、例えば略0.01mm〜略1.0mmの範囲に含まれる幅に設定し、浅い溝部の深さE1及び浅い刃部の高さE2を、例えば略0.07mm〜略0.25mmの範囲に含まれる数値に設定(例えば略0.13mm)し、深い溝部の深さF1及び深い刃部の高さF2を、例えば略0.01mm〜略0.1mmの範囲に含まれる数値に設定(例えば略0.05mm)する。
【0016】
且つ、折り曲げ罫線の底面部の幅G1及び罫線刃の頂面部の幅G2を、例えば略0mm〜略0.15mmの範囲に含まれる所定の幅に設定し、折り曲げ罫線の角度θ1及び罫線刃の食込み角度θ2を、例えば略15度〜110度の範囲に含まれる角度、つまり、前面部1aと、側面部1bと、後面部1cと、接合部1dとの折り曲げ部分に形成される折り曲げ罫線の角度θ1及び罫線刃の食込み角度θ2を略43度に設定し、折込み部1eと、上面部1f及び下面部1gとの折り曲げ部分に形成される折り曲げ罫線の角度θ1及び罫線刃の食込み角度θ2を略75度に設定する。且つ、罫線刃の厚みHを、略0.5mm〜略2.0mmの範囲に含まれる所定の厚さに設定する。
【0017】
上述の浅い刃部のピッチ間隔A2及び深い刃部のピッチ間隔B2を設定値よりも大きくすると、深い刃部の強度が低下し、プラスチックシートの折り曲げ特性が悪くなる。また、ピッチ間隔A2,B2を設定値よりも小さくすると、刃先の強度が低下し、折り曲げ罫線2を付設するのに充分な効果が得られなくなるので、上述の範囲に含まれる数値に設定するのが好ましい。
【0018】
且つ、幅C2,D2や高さE2,F2を設定値よりも大きくすると、プラスチックシートに付設される折り曲げ罫線2の手触り感及び折り曲げ特性が悪くなる。また、幅C2,D2や高さE2,F2を設定値よりも小さくすると、刃先の強度が低下し、折り曲げ罫線2を付設するのに充分な効果が得られなくなるので、上述の範囲に含まれる数値に設定するのが好ましい。
【0019】
且つ、罫線刃の食込み角度θ2を大きくすると、折り曲げ罫線を付設するときに大きな加圧力が必要となり、加工が難しい。プラスチックシートに反りや波打ち等が発生し、機械的に折り曲げることが困難となる。プラスチックシートの折り曲げ特性が悪くなる。また、角度θ2及び幅G2を設定値よりも小さくすると、刃先の強度が低下し、寿命が短くなるので、上述の範囲に含まれる数値に設定するのが好ましい。
【0020】
且つ、折り曲げ罫線の浅い溝部及び深い溝部と、罫線刃の浅い刃部及び深い刃部とを、例えば側面から見て滑らかな曲面を有する略半円形状や略円弧形状、略台形状、略四角形状、略三角形状等の何れか特定の断面形状又は複数組み合わせた溝形状に形成することができる。
【実施例】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。図面は、物品が収容される包装容器を組立てるときに用いられる折り曲げ罫線入りプラスチックシートを示し、図1に於いて、このプラスチックシート1は、例えばポリプロピレン(PP)又はポリエチレンテレフタレート(PET)により約0.1mm〜約1mm程度の厚さに形成した透明又は半透明のシートで構成され、包装容器(図2参照)が展開された形状にシートを打抜くとき又は打抜いた後、正面から見て略矩形を有する前面部1aの両側縁部に連設した左右側面部1bと、一方の側面部1bの右側縁部に連設した後面部1cと、後面部1cの右側縁部に連設した接合部1dと、側面部1bの上下縁部に連設した折込み部1e…と、前面部1aの上縁部に連設した上面部1f及び下縁部に連設した下面部1gと、上面部1f及び下面部1gに連設した折込み部1hとの折り曲げ部分に、後述する罫線刃6により凹状の折り曲げ罫線2を形成する。且つ、容器形態に組立てられたプラスチックシート1を吊設するための孔部1jを、後面部1cの上縁部に連設した支持部1iに開口している。
【0022】
つまり、図2に示す側面から見て略矩形の容器形態に組立てる場合、前面部1aと、側面部1bと、後面部1cと、接合部1dと、折込み部1e…と、上面部1f及び下面部1gとを折り曲げ罫線2に沿って所定の方向及び角度に折り曲げ、一方の側面部に連設した接合部1dと、他方の側面部1bとを接着剤で接着固定し、下縁側の折込み部1eと、上面部1f及び下面部1gとを内側に折り曲げて閉塞する。
【0023】
且つ、物品を収容するとき、上縁側の折込み部1eと、上面部1f及び下面部1gとを一旦外側に折り曲げて開放し、物品を収容してから閉塞するので、自動製函機(図示省略)による組立て作業及び自動収容機(図示省略)による物品の収容作業が容易に行える。また、接合部1dを、例えば溶着や高周波溶着等により接合固定してもよい。
【0024】
上述のプラスチックシート1の折り曲げ部分に付設される折り曲げ罫線2は、図3、図4、図5に示すように、所定角度で傾斜し相互に対峙する一対の側面部2aと、側面部2a,2aの一端側と連続する底面部2bとで略V字状に形成され、折り曲げ罫線2の最大深さよりも所定の割合だけ浅い溝部3を、折り曲げ罫線2の底面部2bに沿って長手方向に対して所定間隔に隔てて形成すると共に、浅い溝部3よりも所定の割合だけ深い溝部4を、浅い溝部3,3間の底面部2bに沿って長手方向に対して複数形成(実施例では4個)している。且つ、底面部2bの肉厚を、例えば略0.3mm〜略0.08mmの範囲に含まれる所定の厚さに形成する。また、深い溝部4の溝数を、例えば4個以下又は4個以上に変更してもよい。
【0025】
且つ、浅い溝部3及び深い溝部4を、側面から見て滑らかな曲面を有する略半円形状や略円弧形状となる断面形状に形成すると共に、浅い溝部3のピッチ間隔A1を、略1.1mmに設定し、深い溝部4のピッチ間隔B1を、略0.2mmに設定し、浅い溝部3と深い溝部4との間のピッチ間隔B1aを、略0.25mmに設定し、浅い溝部3の幅C1を、深い溝部4よりも広い幅に設定し、深い溝部4の幅D1を、浅い溝部3よりも狭い幅に設定し、浅い溝部3の深さE1を、略0.13mmに設定し、深い溝部4の深さF1を、略0.05mmに設定している。
【0026】
且つ、折り曲げ罫線2の底面部2bの幅G1を、例えば略0mm〜略0.15mmの範囲に含まれる所定の幅に設定し、前面部1aと、側面部1bと、後面部1cと、接合部1dとの折り曲げ部分に形成される折り曲げ罫線2の角度θ1を、所定の方向に対して折り曲げが許容される角度(例えば略43度)に設定し、折込み部1eと、上面部1f及び下面部1gとの折り曲げ部分に形成される折り曲げ罫線2の角度θ1を、内側及び外側に対して折り曲げが許容される角度(例えば略75度)に設定している。なお、プラスチックシート1の材質や厚み、強度、硬度等に応じた折り曲げ罫線2を後述する罫線刃6で付設したり、その折り曲げ罫線2を、罫線刃6の浅い刃部7及び深い刃部8の組合せや深さ、刃数等で変えることができる。
【0027】
また、浅い溝部3及び深い溝部4を、例えば略半円形状及び略円弧形状に加えて、略台形状や略四角形状、略三角形状等の何れか特定の断面形状又は複数組み合わせた溝形状に形成してもよい。
【0028】
図6は、折り曲げ罫線2の他の断面形状を示し、浅い溝部3,3の間に、浅い溝部3よりも深く、深い溝部4よりも浅い略中程度の溝部5を、浅い溝部3,3間の略中間部に一つ又は複数形成すると共に、溝部4,5を異なる深さに形成している。且つ、その溝形状と略対応する刃形状の罫線刃6(図11参照)を用いて、折り曲げ罫線2をプラスチックシート1の折り曲げ部分に付設するので、上述の実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。また、溝部5の深さを、浅い溝部3と深い溝部4との間であれば任意の深さに変更することができる。
【0029】
図7は、折り曲げ罫線2のその他の断面形状を示し、浅い溝部3を、側面から見て略台形状に形成し、深い溝部4を、側面から見て略四角形状及び略三角形状に形成している。且つ、その溝形状と略対応する刃形状の罫線刃6(図12参照)を用いて、折り曲げ罫線2をプラスチックシート1の折り曲げ部分に付設するので、上述の実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0030】
一方、上述のプラスチックシート1に対して折り曲げ罫線2を付設するときに用いられるプラスチックシート用罫線刃6は、図8、図9、図10示すように、所定角度で傾斜し相互に対峙する一対の側面部6aと、側面部6a,6aの一端側と連続する幅狭の頂面部6bとで略V字状に形成され、食込み量が浅い刃部7を、罫線刃6の頂面部6bに沿って長手方向に対して所定間隔に隔てて形成すると共に、その浅い刃部7よりも食込み量が深い刃部8を、浅い刃部7,7間の頂面部6bに沿って長手方向に対して複数形成(実施例では4枚)している。また、深い刃部8の刃数を、例えば4枚以下又は4枚以上に変更してもよい。
【0031】
且つ、浅い刃部7及び深い刃部8を、例えば円柱ヤスリやワイヤー等の切削手段により側面から見て滑らかな曲面を有する略半円形状や略円弧形状となる断面形状に加工すると共に、食込み量の浅い刃部7のピッチ間隔A2を、略1.1mmに設定し、深い刃部8のピッチ間隔B2を、略0.2mmに設定し、浅い刃部7と深い刃部8との間のピッチ間隔B2aを、略0.25mmに設定している。
【0032】
且つ、浅い刃部7の幅C2を、深い刃部8よりも広い幅に設定し、深い刃部8の幅D2を、浅い刃部7よりも狭い幅に設定し、浅い刃部7の高さE2を、略0.13mmに設定し、深い刃部8の高さF2を、略0.05mmに設定している。
【0033】
且つ、罫線刃6の頂面部6bの幅G2を、略0mm〜略0.15mmの範囲に含まれる所定の幅に設定し、罫線刃6の厚みHを、略0.5mm〜略2.0mmの範囲に含まれる所定の厚さに設定し、刃先の食込み角度θを、略43度に設定している。
【0034】
また、浅い刃部7及び深い刃部8を、例えば略半円形状及び略円弧形状に加えて、略台形状や略四角形状、略三角形状等の何れか特定の断面形状又は複数組み合わせた溝形状に形成してもよい。
【0035】
図11は、プラスチックシート用罫線刃6の他の刃形状を示し、浅い刃部7,7の間に、浅い刃部7よりも食込み量が所定の割合だけ深く、深い刃部8よりも食込み量が所定の割合だけ浅い略中程度の刃部9を形成して、その異なる食込み量の刃部8,9が形成された罫線刃6を用いて、図6参照の折り曲げ罫線2をプラスチックシート1の折り曲げ部分に付設するので、上述の実施形態と略同等の作用及び効果を奏することができる。また、刃部9の食込み量を、浅い刃部7と深い刃部8との間であれば任意の食込み量に変更することができる。
【0036】
図12は、プラスチックシート用罫線刃6のその他の刃形状を示し、浅い刃部7を、側面から見て略台形状に形成し、深い刃部8を、側面から見て略四角形状及び略三角形状に形成した罫線刃6を用いて、図7参照の折り曲げ罫線2をプラスチックシート1の折り曲げ部分に付設するので、上述の実施形態と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0037】
図13は、浅い溝部3及び深い溝部4…を長手方向に対して所定角度に交差する状態に配列した折り曲げ罫線2のその他の溝形状を示し、その配列と略対応する角度に交差する浅い刃部7及び深い刃部8が形成された罫線刃6(図示省略)を用いて、折り曲げ罫線2をプラスチックシート1の折り曲げ部分に付設するので、上述の実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。また、浅い溝部3及び深い溝部4と、浅い刃部7及び深い刃部8との配列を鋭角又は鈍角に変更してもよい。
【0038】
以上のように、上述の罫線刃6を所定枚数用いて、浅い溝部3,3間に深い溝部4が複数形成された折り曲げ罫線2をプラスチックシート1の折り曲げ部分に付設するので、肉厚の薄い部分が連続するよりも、プラスチックシート1に対して付与される面方向の応力が小さく、反りや波打ち等が発生するのを抑えることができると共に、プラスチックシート1を折り曲げる作業及び容器形態に組立てる作業が機械的に行え、作業の省力化及び能率アップを図ることができる。且つ、折り曲げ罫線2をプラスチックシート1に対して付設するときの加圧力が小さくて済み、加工性が向上する。
【0039】
且つ、肉厚が厚く、浅い溝部3を所定間隔に隔てて形成するので、折り曲げに必要な強度が保持され、折り曲げ罫線2に沿ってプラスチックシート1が裂けるのを防止することができる。且つ、肉厚が薄く、深い溝部4を浅い溝部3,3間に複数形成するので、分子密度の高い部分が分散され、良好な折り曲げ特性及び柔軟性が得られると共に、プラスチックシート1を鋭角に折り曲げても裂け目や大きな孔等が発生せず、若し、孔が発生しても径が小さいため異物が侵入しにくいため、商品価値や衛生度が損なわれるのを防止することができる。
【0040】
且つ、浅い溝部3及び深い溝部4を滑らかな曲面に形成しているので、手触り感が良く、布や皮等が接触しても引っ掛かったりせず、折り曲げ部分の外観が美しく、目立たないため、意匠的に優れている。
【0041】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0042】
上述の折り曲げ罫線2を、例えばプラスチックシート1の折り曲げ部分に対して複数条平行して形成してもよい。
【0043】
また、折り曲げ罫線2を、例えばピロー型包装容器や略三角形状、略楕円形状等の様々な容器を構成するプラスチックシートに付設してもよく、実施例の容器形態に組立てられるプラスチックシートのみに用途が限定されるものではない。
【符号の説明】
【0044】
1…プラスチックシート
2…折り曲げ罫線
2b…底面部
3…浅い溝部
4…深い溝部
5…溝部
6…罫線刃
6b…頂面部
7…浅い刃部
8…深い刃部
9…溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度で傾斜し相互に対峙する一対の側面部と底面部とを有する凹状の折り曲げ罫線が付設された折り曲げ罫線入りプラスチックシートであって、
前記折り曲げ罫線の底面部の一部を、罫線の長手方向に間隔を隔てて浅い溝部とし、前記浅い溝部よりも深い溝部を、前記浅い溝部間に、罫線の長手方向に連続して複数形成し、折り曲げ罫線の底面部を浅い溝部と深い溝部とから構成してなる構成を備えた折り曲げ罫線入りプラスチックシート。
【請求項2】
浅い溝部と深い溝部との間のピッチ間隔B1aを、浅い溝部のピッチ間隔A1よりも狭く、深い溝部のピッチ間隔B1よりも広い間隔に設定してなる請求項1に記載の折り曲げ罫線入りプラスチックシート。
【請求項3】
浅い溝部の幅C1を、深い溝部の幅D1よりも広い幅に設定してなる請求項1に記載の折り曲げ罫線入りプラスチックシート。
【請求項4】
浅い溝部及び深い溝部を、半円形状、円弧形状、台形状、四角形状、三角形状の何れかの断面形状に形成してなる請求項1〜3の何れかに記載の折り曲げ罫線入りプラスチックシート。
【請求項5】
浅い溝部及び深い溝部を、上面からみて楕円形状に形成すると共に、当該楕円形状を、罫線の長手方向に対して斜めに交差する状態に配列してなる構成を備えた請求項1〜4の何れかに記載の折り曲げ罫線入りプラスチックシート。
【請求項6】
浅い溝部よりも深く、深い溝部よりも浅い略中程度の溝部を、浅い溝部間に一つ又は複数形成してなる請求項1〜5のいずれかに記載の折り曲げ罫線入りプラスチックシート。
【請求項7】
プラスチックシートの折り曲げ部分に対して折り曲げ罫線を付設するときに用いられ、所定角度で傾斜し相互に対峙する一対の側面部とを有するプラスチックシート用罫線刃であって、
前記罫線刃の頂面部に沿って長手方向に間隔を隔てて、食込み量が浅い刃部を形成すると共に、前記浅い刃部よりも食込み量が深い刃部を、前記浅い刃部間に長手方向に連続して複数形成し、前記頂面部を浅い刃部と深い刃部とから構成してなる構成を備えたプラスチックシート用罫線刃。
【請求項8】
浅い刃部と深い刃部との間のピッチ間隔B2aを、浅い刃部のピッチ間隔A2よりも狭く、深い刃部のピッチ間隔B2よりも広い間隔に設定してなる請求項7に記載のプラスチックシート用罫線刃。
【請求項9】
浅い刃部の幅C2を、深い刃部の幅D2よりも広い幅に設定してなる請求項7又は8に記載のプラスチックシート用罫線刃。
【請求項10】
浅い刃部と深い刃部を、半円形状、円弧形状、台形状、四角形状、三角形状の何れかの断面形状に形成してなる請求項7〜9の何れかに記載のプラスチックシート用罫線刃。
【請求項11】
浅い刃部よりも食込み量が深く、深い刃部よりも食込み量が浅い中程度の刃部を、浅い刃部間に一つ又は複数形成してなる請求項7〜10の何れかに記載のプラスチックシート用罫線刃。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−30684(P2010−30684A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211729(P2009−211729)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2002−74208(P2002−74208)の分割
【原出願日】平成14年3月18日(2002.3.18)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】