説明

押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法及び装置

【課題】本発明は、振動コンベアを用いて切断片を搬送することにより、簡単な構造で耐熱性を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明による押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法及び装置は、ダイバータバルブ(1)の排出口(1a)に設けた切断装置(2)により切断して排出される切断片(3)を振動コンベア(21)上に供給し、振動コンベア(21)上で移送される切断片(3)に対して冷却水供給部(30)から冷却水(4)を供給して冷却する方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法及び装置に関し、特に、ダイバーターバルブからの溶融樹脂を切断した切断片を、振動コンベアで搬送するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成反応により製造された合成樹脂材料は、材料の改質および均質化、後工程の成形装置における取扱いを容易にする等の目的で、先端に大容量の造粒装置である水中切断装置が連結された大型のスクリュ式押出機により溶融混錬され、造粒されている。このようなスクリュ式押出機では、その先端すなわちスクリュ式押出機と水中切断装置との間に、通常、ダイバーターバルブが設けられている。
【0003】
このダイバーターバルブは、スクリュ式押出機により溶融混錬された合成樹脂材料を造粒装置へ流動させるか、外部へ排出させるかの切換えを行う機器である。すなわち、大型のスクリュ式押出機において、溶融混錬された合成樹脂材料の物性あるいは性状が定常状態に安定しない運転開始時、及び連続運転中に樹脂材料のグレードあるいは種類が変更された後の物性および品質が安定するまでの間、すなわち、造粒されても品質不良で製品価値がない場合、あるいは水中切断装置等の関連機器の一時的な停止時等により下流へ供給できない場合、溶融混錬された合成樹脂材料は水中切断装置へ供給されず、ダイバーターバルブから外部へ排出される。排出される高温で溶融状態の合成樹脂材料は、丁度搗きたての餅状で連続的に垂れ下がって排出され、そのままでは、ダイバーターバルブ下方の床上に堆積する。
【0004】
このように排出される合成樹脂材料について、小片に切断して切断片として落下させ、その後の取扱いを容易にする方法および装置が提案されている。すなわち、特許文献1に示される方法および装置では、ダイバーターバルブの排出口に沿って回転往復動する緊張状態の細線が排出口を横断することにより、排出口いっぱいに充満した状態で連続的に排出される合成樹脂材料を、小片に切断して落下させている。
【0005】
また、特許文献2に示される方法および装置では、ダイバーターバルブに2個の排出口を形成し、ダイバーターバルブのそれぞれの排出口を個別に開口すると共に、そのうちの少なくとも1個の排出口の少なくとも一部を常時開口するように配置した2個の穴が形成された開閉板を、ダイバーターバルブの排出口を横断して直線的に往復動させることにより、それぞれの排出口から連続的に排出される合成樹脂材料を、小片に切断して落下させている。
【0006】
このようにして切断された切断片の合成樹脂材料は、ダイバーターバルブを下方の床上に落下した後必要に応じて散水により冷却され、作業者によりかぎ棒等を使用して作業車両あるいはベルトコンベアに乗せて搬送されている。また、切断片の合成樹脂材料は、ダイバーターバルブの排出口の下方に配置した水槽に落下した後、作業者によりかぎ棒等を使用して水槽中を移動し、搬送されている。
【0007】
前述の水槽を用いた従来構成は、図2に示されるように、ダイバーターバルブ1の切断装置2によって切断された溶融樹脂の切断片3は、冷却水4が供給される水槽5内に落とし、流下された後に、吊り上げ装置6によって吊り上げられた後に外部に搬送される。
【0008】
また、図3で示される他の従来構成において、前記切断片3が、冷却水4が散水される傾斜型のコンベア7に送られると、この切断片3はこのコンベア7の頂部から吊り上げ装置6の水槽8のコンテナ9内に供給され、コンテナ9が吊り上げられて外部に切断片3が搬送される。
【0009】
【特許文献1】特開平9−109225号公報
【特許文献2】特開2003−340905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の排出樹脂材料の搬送方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、ダイバーターバルブから排出される合成樹脂材料すなわち排出樹脂材料は高温の溶融状態であり、熱容量が大きくて僅かな散水等では冷却されず、作業者にとって危険なものであるが、図2及び図3で示される従来構成において、まず、図2の構成の場合、水槽内の切断片を人力で移動させると、高温の切断片により発生する高温水蒸気で作業者は危険な雰囲気下での作業となっていた。
【0011】
また、図3のベルトコンベアを用いる構成の場合、切断片が高温のため、ベルトの材質の選定が難しく、ベルトコンベアの駆動部への樹脂の侵入防止などの設計上の難しさから、ベルトコンベアの製作が極めて困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法は、ダイバーターバルブの排出口に設けた切断装置により切断して排出される排出溶融樹脂の切断片を振動コンベア上に供給し、前記振動コンベア上で移送される前記切断片に対して冷却水供給部から冷却水を供給して冷却する方法であり、また、前記振動コンベアが設けられた架台には、安全カバーが設けられ、前記安全カバーは前記振動コンベアを覆っている方法であり、また、本発明による押出機よりの排出溶融樹脂の搬送装置は、ダイバーターバルブの排出口に設けた切断装置と、前記切断装置の下方位置に設けられた振動コンベアと、前記振動コンベアの上方位置に配設された冷却水供給部を備え、前記切断装置により切断して排出される排出溶融樹脂の切断片は前記振動コンベア上に供給され、前記振動コンベア上で移送される前記切断片に対して前記冷却水供給部から冷却水を供給する構成であり、また、前記振動コンベアが設けられた架台には、安全カバーが設けられ、前記安全カバーは前記振動コンベアを覆っている構成であり、また、前記振動コンベアの内側には冷却水ジャケットが設けられ、前記冷却水供給部は前記安全カバーの内側に設けられている構成であり、また、前記架台の下部には車輪が設けられ、前記架台を介して前記振動コンベアは移動できる構成であり、また、前記切断片は、前記安全カバーの上部に形成された受入れ口から前記振動コンベア上に供給され、前記振動コンベア上の前記切断片は前記安全カバーの下部に形成されたカバー排出口から外部に排出される構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法及び装置は、ダイバーターバルブからの溶融樹脂を切断した切断片を、冷却水が供給されている振動コンベアによって搬送しているため、次のような効果を得ることができる。
(1) 振動コンベアは、ベルトコンベアなどと異なりリターンローラや返しベルトがなく、安全カバーによって装置を完全にカバーでき高温樹脂の飛散、蒸気より作業者を保護できる。
(2) 振動コンベアは、高温樹脂と機器が常に同じ箇所に接触していないため、高温に十分耐えることができるため、高温樹脂の搬送でも、機器が特殊になることが無く、機器の損傷の心配がない。
(3) 振動コンベアは、ベルト自体の長手方向への移動が無いため、巻き込みや挟まれ等の危険が無い。
(4) 振動コンベアは、複数の振動コンベアを用いたとしても乗り継ぎに落差が必要ないため乗り継ぎが容易である。
(5) 振動コンベアは、長距離や曲がり、高いところへの輸送も可能である。
(6) 振動コンベアに車輪等を取り付けることにより、高温樹脂排出時のみ押出機の側に必要に応じて設置し、運転中の不要な時には、容易に撤去できる。
(7) 振動コンベアに、冷却水のジャケットを取り付けて、高温樹脂の冷却を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ダイバーターバルブからの溶融樹脂を切断した切断片を、振動コンベアで搬送し、熱や高温水蒸気の影響をなくして高温樹脂の安全な搬送を行うようにした押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を用いて説明する。
図1において符号1で示されるものは、図示しない押出機の先端に設けられた周知のダイバーターバルブであり、このダイバーターバルブ1の排出口1aに装着された切断装置2の出口2aからは溶融樹脂の切断された切断片3が滑落台10を落下する時に冷却水4によって冷却されるように構成されている。
【0016】
前記切断装置2の下方位置には、架台20上に設けられた周知の振動コンベア21が配設されており、この架台20に取付けられた車輪22(ローラの場合もある)を介して移動自在に構成され、溶融樹脂の排出が不要になると、この振動コンベア21を架台20と共に他の場所に移動できるように構成されている。
【0017】
前記振動コンベア21は、他のローラ等を用いて無端状に回転するベルトコンベアとは異なり、例えば、周知の振動モータ又はモータにクランクがカムを組合わせた図示しない振動手段を用いた構成で、矢印Aで示される方向等の振動が付加され、ベルト21a上の切断片3が矢印Bの方向へ搬送されるように構成されている。
尚、前記ベルト21aは、耐熱性の樹脂又は金属等からなる材質で形成されている。
【0018】
前記架台20には、前記振動コンベア21を覆うように断面コ字型で長手形状の耐熱樹脂材料等からなる安全カバー23が着脱自在に設けられ、この安全カバー23の前端23aの上部には前記切断片3を受け入れるための受入れ口24が形成されると共に、その後端23bの下部には前記切断片3を排出するためのカバー排出口25が形成されている。
【0019】
前記振動コンベア21の上方で、かつ、前記安全カバー23の内側位置には、前記冷却水4を供給するための配管からなる冷却水供給部30が設けられ、この冷却水供給部30に形成された図示しない複数の孔から前記冷却水4が振動コンベア21上の切断片3に供給されるように構成されている。
【0020】
次に、動作について述べる。まず、図1の構成において、振動コンベア21の図示しない振動手段をオンとすると、振動コンベア21が矢印A等の往復振動を発生し、この振動によってベルト21aが振動する。
前述の振動状態において、ダイバーターバルブ1から排出された溶融樹脂を切断装置2で切断した切断片3は、冷却水4で冷却されつつ滑落台10を経て受入れ口24から前記振動コンベア21上に供給される。
【0021】
前記振動コンベア21のベルト21a上に順次供給された各切断片3は、このベルト21aの振動によって矢印Bで示されるように、前記カバー排出口25へ向けて搬送され、このカバー排出口25から外部へ排出される。
【0022】
前述の場合、前記振動コンベア21のベルト21aが前記架台20の長手方向の前記前端23aから後端23bまでをカバーして隙間等を有しない状態で配設されているため、ベルト21a上を切断片3が搬送される時に、この切断片3が従来のベルトコンベアのように隙間に落下するようなこともなく、円滑に搬送される。
【0023】
また、前記ベルト21aによって搬送される間に、各切断片3は冷却水供給部30からの冷却水4によって十分に冷却される際に、安全カバー23が設けられているために、各切断片3に当たってはね返った高温水や高温水蒸気は外部に飛散することはなく、作業者は安全な操業を行うことができる。
尚、前述の場合、前記振動コンベア21には、直接冷却手段は設けられていなかったが、前記冷却水を用いた冷却水ジャケット31を振動コンベア21に装着し、振動コンベア21のコンベア21a自体を冷却して用いると、前記切断片3の冷却をより一層向上させることができる。
【0024】
また、前記冷却水供給部30は前記振動コンベア21の下方にも配設されているため、この冷却水供給部30からの冷却水4は、前記振動コンベア21の裏側からベルト21a及び切断片3を冷却しているため、より効率よく切断片3の冷却を行うことができる。
【0025】
また、振動コンベア21のベルト21aは、常時振動しているため、高温の切断片3とベルト21aとは常に同じ位置に接触している状態ではないため、高温に耐えることが容易である。
また、振動コンベア21は、ベルトの長手方向への移動がないため、従来のような巻き込みを防止でき、さらに、複数の振動コンベアを用いる場合、段差を設けることなく乗り継ぎが容易である。
【0026】
また、振動コンベア21は、構造が簡単であるため、長距離、曲折、高所への上り等の搬送設定が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法及び装置を示す構成図である。
【図2】従来の押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法及び装置を示す構成図である。
【図3】従来の他の押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法及び装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ダイバーターバルブ
1a 排出口
2 切断装置
2a 出口
3 切断片
4 冷却水
10 滑落台
21 振動コンベア
21a ベルト
22 車輪
23 安全カバー
23a 前端
23b 後端
24 受入れ口
25 カバー排出口
30 冷却水供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイバーターバルブ(1)の排出口(1a)に設けた切断装置(2)により切断して排出される排出溶融樹脂の切断片(3)を振動コンベア(21)上に供給し、前記振動コンベア(21)上で移送される前記切断片(3)に対して冷却水供給部(30)から冷却水(4)を供給して冷却することを特徴とする押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法。
【請求項2】
前記振動コンベア(21)が設けられた架台(20)には、安全カバー(23)が設けられ、前記安全カバー(23)は前記振動コンベア(21)を覆っていることを特徴とする請求項1記載の押出機よりの排出溶融樹脂の搬送方法。
【請求項3】
ダイバーターバルブ(1)の排出口(1a)に設けた切断装置(2)と、前記切断装置(2)の下方位置に設けられた振動コンベア(21)と、前記振動コンベア(21)の上方位置に配設された冷却水供給部(30)を備え、
前記切断装置(2)により切断して排出される排出溶融樹脂の切断片(3)は前記振動コンベア(21)上に供給され、前記振動コンベア(21)上で移送される前記切断片(3)に対して前記冷却水供給部(30)から冷却水(4)を供給する構成としたことを特徴とする押出機よりの排出溶融樹脂の搬送装置。
【請求項4】
前記振動コンベア(21)が設けられた架台(20)には、安全カバー(23)が設けられ、前記安全カバー(23)は前記振動コンベア(21)を覆っていることを特徴とする請求項3記載の押出機よりの排出溶融樹脂の搬送装置。
【請求項5】
前記振動コンベア(21)の内側には冷却水ジャケット(31)が設けられ、前記冷却水供給部(30)は前記安全カバー(23)の内側に設けられていることを特徴とする請求項4記載の押出機よりの排出溶融樹脂の搬送装置。
【請求項6】
前記架台(20)の下部には車輪(22)が設けられ、前記架台(20)を介して前記振動コンベア(21)は移動できることを特徴とする請求項4又は5記載の押出機よりの排出溶融樹脂の搬送装置。
【請求項7】
前記切断片(3)は、前記安全カバー(23)の上部に形成された受入れ口(24)から前記振動コンベア(21)上に供給され、前記振動コンベア(21)上の前記切断片(3)は前記安全カバー(23)の下部に形成されたカバー排出口(25)から外部に排出されることを特徴とする請求項4ないし6の何れかに記載の押出機よりの排出溶融樹脂の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−296467(P2008−296467A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145402(P2007−145402)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】