説明

拡散スペクトラムクロック生成装置

【課題】回路規模を大きくせずにEMIを十分に低減できる拡散スペクトラムクロック生成装置を提供する。
【解決手段】拡散スペクトラムクロック生成装置は、クロック信号を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路1と、クロック信号の周波数変調を行う周波数変調回路2とを備え、周波数変調回路2は、カウンタ11と、設定レジスタ12,13と、マルチプレクサ14と、1/P分周器15と、ラッチレジスタ16と、アップダウンカウンタ17と、設定レジスタ18と、加算器19とを有する。Hershey-kiss変調プロファイルの1周期分を8等分した各相対時刻ごとの変調ポイントを直線でつないだ変調プロファイルを用いて、1/N分周器8の分周比を1周期に8回変化させるため、Hershey-kiss変調プロファイル用の特性テーブルを設けなくても、Hershey-kiss変調プロファイルと同様の周波数変調を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック信号の周波数を変調する拡散スペクトラムクロック生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PLL回路のフィードバックループ内の1/N分周器の分周比を動作中に切り替えて周波数変調をかける方式が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、電圧制御型発振器(VCO)の入力電圧に変調電圧を印加して周波数変調をかける方式が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1の方式では、Hershey-kissと呼ばれる変調プロファイルを利用して周波数変調をかけており、これにより、生成したクロック信号のEMI(Electromagnetic Interference)の低減を図っている。
【0005】
しかしながら、Hershey-kiss変調プロファイルを利用するには、この変調プロファイルの特性テーブルをROM等に予め記憶しておき、随時この特定テーブルを参照しなければならず、回路規模が増大するという問題がある。
【0006】
Hershey-kiss変調プロファイルの代わりに、三角波による変調プロファイルを利用して周波数変調をかける手法も考えられる。この場合、特性テーブルが不要となり、回路規模を削減できる。しかしながら、三角波の変調プロファイルでは、クロック信号の周波数変調が不十分になり、EMIをそれほど低減できないという問題がある。
【特許文献1】米国特許公報No. 5,631,920
【特許文献2】米国特許公報No. 6,294,936
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、回路規模を大きくせずにEMIを十分に低減できる拡散スペクトラムクロック生成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、クロック信号を生成するPLL回路と、前記クロック信号の周波数を変調する周波数変調回路と、を備え、前記PLL回路は、基準周波数信号をM(Mは正の実数)分周する第1の分周器と、制御電圧に応じてクロック信号の周波数を可変制御可能な電圧制御型発振器と、前記電圧制御型発振器で生成されたクロック信号をN(Nは正の実数)分周する第2の分周器と、前記第1の分周器で生成された分周信号と前記第2の分周器で生成された分周信号との位相差を検出する位相検出器と、前記位相検出器で検出された位相差に応じた電圧を発生するチャージポンプと、前記チャージポンプで生成された電圧に含まれる不要周波数成分を除去して前記制御電圧を生成するフィルタと、を有し、前記周波数変調回路は、Hershey-kiss変調プロファイルの1周期分を2n+1(nは2以上の整数)等分した各相対時刻における変調ポイントの値を順に直線で結んで直線近似した変調プロファイルに基づいて、前記第1の分周器または前記第2の分周器の分周比を設定することを特徴とする拡散スペクトラムクロック生成装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路規模を大きくすることなく、EMIを十分に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態による拡散スペクトラムクロック生成装置の概略構成を示すブロック図である。図1の拡散スペクトラムクロック生成装置は、クロック信号を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路1と、クロック信号の周波数変調を行う周波数変調回路2とを備えている。
【0012】
PLL回路1は、1/M分周器(第1の分周器)3と、位相検出器4と、チャージポンプ5と、フィルタ6と、電圧制御型発振器(以下、VCO)7と、1/N分周器(第2の分周器)8とを有する。
【0013】
1/M分周器3は、基準周波数信号fRefをM(Mは正の実数)分周する。1/M分周器3の分周比は常に固定である。位相検出器4は、1/M分周器3で生成された分周信号と1/N分周器8で生成された分周信号との位相差を検出する。
【0014】
チャージポンプ5は、位相検出器4で検出された位相差に応じた電圧を発生する。より具体的には、位相検出器4で検出される位相差が小さくなるような電圧を発生する。
【0015】
フィルタ6は、チャージポンプ5で生成された電圧に含まれる高周波成分を除去して、VCO7の制御電圧を生成する。VCO7は、制御電圧に応じた周波数のクロック信号fVCO7を生成する。このクロック信号fVCO7は外部に出力されるとともに、1/N分周器8に入力されて帰還動作が行われる。1/N分周器8は、VCO7で生成されたクロック信号fVCO7をN(Nは正の実数)分周する。1/N分周器8の分周比は、周波数変調回路2により可変制御され、これによりクロック信号fVCO7は周波数変調される。
【0016】
周波数変調回路2は、EMIの低減を図るために、Hershey-kiss変調プロファイルを直線近似した変調プロファイルを利用する。図2はHershey-kiss変調プロファイルの曲線を示す図である。図2の横軸は相対時間、縦軸は変調度を表しており、図2の変調プロファイルは1周期分を表している。
【0017】
図2に示すHershey-kiss変調プロファイルは、時間軸の中心位置(相対時刻T4)を挟んで左右対称であり、さらに、変調度がゼロの時刻(T2,T6)を挟んで、曲線の形状が対称になっている。
【0018】
本実施形態では、図2に示すHershey-kiss変調プロファイルの1周期分を8等分し、T0=0/8、T1=1/8、T2=2/8、T3=3/8、T4=4/8、T5=5/8、T6=6/8、T7=7/8、T8=8/8の各周期に対応する各変調ポイント(図2の黒丸)を直線で結んで直線近似した変調プロファイルを利用する。この場合の変調プロファイルは、図3のような折れ線で表される。
【0019】
図3において、T0=0/8〜T1=1/8周期とT3=3/8〜T4=4/8周期は同一の傾きの直線であり、T1=1/8〜T2=2/8周期とT2=2/8〜T3=3/8周期は同一の傾きの直線である。T4=4/8周期を挟んでT0=0/8〜T4=4/8周期とT4=4/8〜T8=8/8周期は左右対称である。
【0020】
図3のように分割された各期間における変調プロファイルは、以下の(1)〜(8)式で表される。tは1周期内の相対時刻である。
変調度={1-(0.45/23+0.55/2)}(8t-0)-1 (周期内の相対時刻:0/8〜1/8) …(1)
変調度=(0.45/23+0.55/2)(8t-2) (周期内の相対時刻:1/8〜2/8) …(2)
変調度=(0.45/23+0.55/2)(8t-2) (周期内の相対時刻:2/8〜3/8) …(3)
変調度={1-(0.45/23+0.55/2)}(8t-4)+1 (周期内の相対時刻:3/8〜4/8) …(4)
変調度=-{1-(0.45/23+0.55/2)}(8t-4)+1 (周期内の相対時刻:4/8〜5/8) …(5)
変調度=-(0.45/23+0.55/2)(8t-6) (周期内の相対時刻:5/8〜6/8) …(6)
変調度=-(0.45/23+0.55/2)(8t-6) (周期内の相対時刻:6/8〜7/8) …(7)
変調度=-{1-(0.45/23+0.55/2)}(8t-8)-1 (周期内の相対時刻:7/8〜8/8) …(8)
【0021】
(1)〜(8)式からわかるように、(1)(4)(5)(8)の各式の傾きの絶対値は等しく、(2)(3)(6)(7)の各式の傾きの絶対値は等しい。
【0022】
図4は図2に示すHershey-kiss変調プロファイルと図3の変調プロファイルとを重ね合わせた図である。図4からわかるように、図3の折れ線近似した変調プロファイルは、図2のHershey-kiss変調プロファイルに対して、変調度の誤差が最大で±6%程度の近似波形になる。このように、図3の直線近似した変調プロファイルは、図1に示す元のHershey-kiss変調プロファイルに極めて近い特性を持っている。
【0023】
図1のPLL回路1内のVCO7の発振周波数fVCO7は、基準周波数信号fRefを用いると、以下の(9)式で表される。
fVCO7=N/M×fRef …(9)
【0024】
したがって、PLL回路1が帰還動作を行っている最中に、PLL回路1内の1/N分周器8の分周比Nを変化させることにより、VCO7の発振周波数に変調をかけることができる。
【0025】
図1の周波数変調回路2は、上記(1)〜(8)の直線の傾きに応じた分周比を順次1/N分周器8に設定して、VCO7の発振周波数に変調をかける。
【0026】
周波数変調回路2は、カウンタ(第1の計測器)11と、設定レジスタ(分周比設定部)12,13と、マルチプレクサ(選択器)14と、1/P分周器(第3の分周器)15と、ラッチレジスタ16と、アップダウンカウンタ(第2の計測器)17と、設定レジスタ18と、加算器19とを有する。
【0027】
カウンタ11は、Hershey-kiss変調プロファイルを8等分した8つの相対時刻を順に計測する。
【0028】
設定レジスタ12には、0/8〜1/8周期、3/8〜4/8周期、4/8〜5/8周期および7/8〜8/8周期における1/P分周器15の分周比が予め設定される。設定レジスタ13には、1/8〜2/8周期、2/8〜3/8周期、5/8〜6/8周期および6/8〜7/8周期における1/P分周器15の分周比が予め設定される。設定レジスタ18には、1/N分周器8の変調度ゼロにおける分周比が予め設定される。
【0029】
マルチプレクサ14は、カウンタ11の計測値に応じて、設定レジスタ12の分周比と設定レジスタ13の分周比のいずれか一方を選択する。
【0030】
1/P分周器15は、マルチプレクサ14が選択した分周比で、1/N分周器8で生成された分周信号を分周する。1/P分周器15で生成された分周信号は、アップダウンカウンタ17のクロック信号となる。
【0031】
アップダウンカウンタ17は、カウンタ11の桁上がり信号(キャリー信号)をラッチレジスタ16でいったんラッチした信号の論理に応じて、カウントアップとカウントダウンの切換を行う。より具体的には、カウンタ11の計測値が4になるまでは、アップダウンカウンタ17はカウントアップ動作を行い、カウンタ11の計測値が4を超えると、ハイレベルのキャリー信号が出力されて、アップダウンカウンタ17はカウントダウン動作を行う。
【0032】
加算器19は、アップダウンカウンタ17の計測値に、設定レジスタ18に設定された変調度ゼロの分周比の値を加算し、加算結果を1/N分周器8の分周比とする。
【0033】
以下、図1の拡張スペクトラムクロック生成装置の動作を説明する。PLL回路1が帰還動作を開始すると、1/N分周器8で生成された分周信号に同期して、カウンタ11は計測動作を開始する。カウンタ11の計測値により、図3の相対時刻T0〜T8が順に選択される。カウンタ11の計測値が1になるまでは、図3のT0=0/8〜T1=1/8までの傾きに応じた分周比がマルチプレクサ14により選択される。マルチプレクサ14が選択した分周比にて1/P分周器15は分周信号を生成し、この分周信号に同期して、アップダウンカウンタ17は計測動作を行う。
【0034】
この時点では、カウンタ11の計測値は4未満であるため、アップダウンカウンタ17はカウントアップ動作を行う。加算器19は、アップダウンカウンタ17の計測値と変調度ゼロの分周比とを加算して、1/N分周器8に分周比を設定する。
【0035】
以後、同様の動作を繰り返して、マルチプレクサ14は、図3の直線近似した変調プロファイルに沿って、各直線の傾きの絶対値に対応する分周比を順に選択して、1/P分周器15の分周比を設定する。アップダウンカウンタ17は、T4=4/8周期まではカウントアップ動作を行い、徐々に分周比を高くしていく。
【0036】
カウンタ11の計測値が4になると、カウンタ11からキャリー信号が出力され、以後アップダウンカウンタ17は、図3の変調プロファイルに従ってカウントダウン動作を行う。これにより、1/N分周器8の分周比は徐々に減少し、クロック信号fVCOの周波数変調が行われる。
【0037】
このように、第1の実施形態では、Hershey-kiss変調プロファイルの1周期分を8等分した各相対時刻ごとの変調ポイントを直線で結んだ変調プロファイルを用いて、1/N分周器8の分周比を1周期に8回変化させるため、Hershey-kiss変調プロファイル用の特性テーブルを設けなくても、Hershey-kiss変調プロファイルと同様の周波数変調を行うことができる。したがって、Hershey-kiss変調プロファイルについての特性テーブルが不要となり、回路規模の削減が図れる。
【0038】
また、第1の実施形態では、Hershey-kiss変調プロファイルを8等分して直線近似した変調プロファイルを用いるため、元のHershey-kiss変調プロファイルとの誤差が非常に小さくなり、EMIの低減効果が劣ることもない。
【0039】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態を一般化したものであり、Hershey-kiss変調プロファイルを2n+1(nは2以上の整数)等分して直線近似する点に特徴がある。
【0040】
図5は本発明の第2の実施形態による拡散スペクトラムクロック生成装置の概略構成を示すブロック図である。図5では、図1と共通する構成部分には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0041】
図6は第2の実施形態における変調プロファイルを説明する図である。図6に示すように、図5の拡散スペクトラムクロック生成装置は、Hershey-kiss変調プロファイルの1周期分を2n+1個に等分し、0/2n+1、1/2n+1、2/2n+1、…、(2n+1−1)/2n+1、2n+1/2n+1の各相対時刻での変調ポイントの値を互いに直線で結んだ変調プロファイルを用いる。このような直線近似された変調プロファイルは、nの値が大きい程、元のHershey-kiss変調プロファイルとの誤差が小さくなるが、回路規模は増大する。nの値は、2以上の整数であればよく、具体的な数値に特に制限はない。
【0042】
図6の変調プロファイルは、相対時刻2/2n+1を挟んで左右対称である。また、0/2n+1〜2n−1/2n+1の期間内の変調度のカーブは2n−1/2n+1〜2/2n+1の期間内の変調度のカーブと対称的である。したがって、2n+1個に等分した各プロット位置を順に直線で結んで直線近似した変調プロファイルにおいて、これら直線の傾きの絶対値は2n−1通り存在する。
【0043】
そこで、図5では、これら2n−1個の直線の傾きの絶対値に対応する分周比を、2n−1個の設定レジスタ20−0、…、20−2n−1−1にそれぞれ予め設定しておく。
【0044】
図5のカウンタ11は、1/N分周器8で生成された分周信号に同期して、nビットの計測値を出力する。マルチプレクサ14は、カウンタ11の計測値に基づいて、2n−1個の設定レジスタ20−0、…、20−2n−1−1のいずれかの設定値を選択する。マルチプレクサ14が選択した設定値は、1/P分周器15の分周比となる。
【0045】
アップダウンカウンタ17は、カウンタ11からキャリー信号が出力されない場合には、1/P分周器15で生成された分周信号に同期してカウントアップし、キャリー信号が出力された場合にはカウントダウンする。
【0046】
これにより、各周期ごとに、0/2n+1〜2/2n+1の間は図6のHershy-kiss曲線を近似した直線に沿って1/N分周器8の分周比を徐々に増大させ、2/2n+1〜2+1/2n+1の間は図6の近似直線に沿って1/N分周器8の分周比を徐々に減少させる。
【0047】
このように、第2の実施形態では、Hershey-kiss変調プロファイルの1周期分を2n+1個に等分して直線近似した変調プロファイルに従って1/N分周器8の分周比を変化させるため、nの値を大きくすることで、第1の実施形態よりもHershey-kiss変調プロファイルに近似させることができ、EMIのよりいっそうの低減が図れる。また、第2の実施形態においても、Hershey-kiss変調プロファイル用の特性テーブルは不要となり、回路規模を縮小できる。
【0048】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、PLL回路1内の1/N分周器8の分周比を、直線近似した変調プロファイルに基づいて変化させる例を説明したが、1/M分周器3の分周比を変化させてもよい。
【0049】
図7は本発明の第3の実施形態による拡散スペクトラムクロック生成装置の概略構成を示すブロック図である。図7では図1と共通する構成部分には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0050】
図7の拡散スペクトラムクロック生成装置では、周波数変調回路2の出力信号が1/M分周器3に供給されており、この出力信号により1/M分周器3の分周比が制御される。また、1/N分周器8の分周比は常に固定である。
【0051】
周波数変調回路2内の回路構成は、図1とほぼ同じであるが、カウンタ11は、1/M分周器3で生成された分周信号に同期して計測動作を行う。
【0052】
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、Hershey-kiss変調プロファイルの1周期分を8等分した相対時刻0/8、1/8、2/8、3/8、4/8、5/8、6/8、7/8、8/8での変調度を順に直線で結んで直線近似した変調プロファイルを用いて、1/M分周器3の分周比を設定する。
【0053】
PLL回路1は、上述した(9)式と同様の周波数fVCO7のクロック信号をVCO7が出力するようにPLL制御を行う。
【0054】
これにより、第3の実施形態においても、Hershey-kiss変調プロファイルに関する特性テーブルを設ける必要がなくなり、回路規模を削減できるとともに、EMIを効率的に低減できる。
【0055】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第3の実施形態を一般化したものであり、第2の実施形態と同様に、Hershey-kiss変調プロファイルの1周期分を2n+1個に等分して直線近似した変調プロファイルを用いて、1/M分周器3の分周比を設定する。
【0056】
図8は本発明の第4の実施形態による拡散スペクトラムクロック生成装置の概略構成を示すブロック図である。図8では図5と共通する構成する部分には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0057】
図8の1/N分周器8の分周比は常に固定であり、周波数変調回路2は1/M分周器3の分周比を可変制御する。より具体的には、Hershey-kiss変調プロファイルの1周期分を2n+1等分した各相対時刻ごとの変調ポイントを直線で結んで直線近似した変調プロファイルを利用する。この場合の変調プロファイルは、図6と同様であり、nは2以上の任意の整数である。
【0058】
図6の変調プロファイルに合わせて、2n−1個の設定レジスタ20−0、…、20−2n−1−1が設けられている。マルチプレクサ14は、カウンタ11の値に対応する設定レジスタを選択して、選択した設定レジスタ内の値により1/P分周器15の分周比を設定する。
【0059】
アップダウンカウンタ17は、1/P分周器15で生成された分周信号に同期して計測動作を行う。アップダウンカウンタ17は、カウンタ11からキャリー信号が出力されるまではカウントアップを行い、キャリー信号が出力されるとカウントダウンを行う。
【0060】
加算器19は、設定レジスタ18に設定された変調度ゼロの分周比とアップダウンカウンタ17の計測値とを加算して、1/N分周器8の分周比を設定する。
【0061】
このように、第4の実施形態では、nの値を大きくすることにより、第3の実施形態よりも、よりいっそうEMIを低減することができる。
【0062】
上述した第1〜第4の実施形態による拡張スペクトラムクロック生成装置で生成したクロック信号は種々の用途に利用可能であり、特に利用目的は問わない。例えば、プリンタのノズル制御用、あるいは表示装置の表示制御用、あるいは画像信号伝送用のクロック信号として利用可能である。第1〜第4の実施形態による拡張スペクトラムクロック生成装置は、EMIを十分に低減できるため、他の電子機器に悪影響を及ぼすおそれが少ない。
【0063】
上述した第1〜第4の実施形態では、アップダウンカウンタ17の計測値と設定レジスタ18に設定された変調度ゼロの分周比とを加算器19で加算しているが、加算器19を設ける代わりに、アップダウンカウンタ17に直接初期値として設定してもよい。
【0064】
上述した第1〜第4の実施形態では、1/M分周器3と1/N分周器8のうち一方は分周比が常に固定の例を説明したが、分周比を可変させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態による拡散スペクトラムクロック生成装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】Hershey-kiss変調プロファイルの曲線を示す図。
【図3】直線近似した変調プロファイルを示す図。
【図4】図2に示すHershey-kiss変調プロファイルと図3の変調プロファイルとを重ね合わせた図。
【図5】本発明の第2の実施形態による拡散スペクトラムクロック生成装置の概略構成を示すブロック図。
【図6】第2の実施形態における変調プロファイルを説明する図。
【図7】本発明の第3の実施形態による拡散スペクトラムクロック生成装置の概略構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第4の実施形態による拡散スペクトラムクロック生成装置の概略構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0066】
1 PLL回路
2 周波数変調回路
3 1/M分周器
4 位相検出器
5 チャージポンプ
6 フィルタ
7 電圧制御型発振器
8 1/N分周器
11 カウンタ
12,13 設定レジスタ
14 マルチプレクサ
15 1/P分周器
16 ラッチレジスタ
17 アップダウンカウンタ
18 設定レジスタ
19 加算器
20−0、…、20−2n−1−1 設定レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を生成するPLL回路と、
前記クロック信号の周波数を変調する周波数変調回路と、を備え、
前記PLL回路は、
基準周波数信号をM(Mは正の実数)分周する第1の分周器と、
制御電圧に応じてクロック信号の周波数を可変制御可能な電圧制御型発振器と、
前記電圧制御型発振器で生成されたクロック信号をN(Nは正の実数)分周する第2の分周器と、
前記第1の分周器で生成された分周信号と前記第2の分周器で生成された分周信号との位相差を検出する位相検出器と、
前記位相検出器で検出された位相差に応じた電圧を発生するチャージポンプと、
前記チャージポンプで生成された電圧に含まれる不要周波数成分を除去して前記制御電圧を生成するフィルタと、を有し、
前記周波数変調回路は、Hershey-kiss変調プロファイルの1周期分を2n+1(nは2以上の整数)等分した各相対時刻における変調ポイントの値を順に直線で結んで直線近似した変調プロファイルに基づいて、前記第1の分周器または前記第2の分周器の分周比を設定することを特徴とする拡散スペクトラムクロック生成装置。
【請求項2】
前記周波数変調回路は、
互いに異なる分周比を設定する2n−1個の分周比設定部と、
前記Hershey-kiss曲線を2n+1等分した各相対時刻を順に選択するために計測を行う第1の計測器と、
前記第1の計測器の計測値に基づいて、前記2n−1個の分周比設定部の中から一つを選択する選択器と、
前記第2の分周器で生成された分周信号を、前記選択器で選択された分周比で分周する第3の分周器と、
前記第3の分周器で生成された分周信号に同期して、計測値を増減する第2の計測器と、を有し、
前記第1の分周器または前記第2の分周器の分周比は、前記第2の計測器の計測値に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の拡散スペクトラムクロック生成装置。
【請求項3】
前記第2の計測器は、前記第1の計測器の計測値が所定値未満であればカウントアップ動作を行い、前記第1の計測器の計測値が前記所定値以上であればカウントダウン動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の拡散スペクトラムクロック生成装置。
【請求項4】
前記第2の計測器の計測値と前記Hershey-kiss曲線上の変調度ゼロの変調ポイントの値とを加算する加算器を備え、
前記第1の分周器または前記第2の分周器の分周比は、前記加算器の加算結果に基づいて設定されることを特徴とする請求項2または3に記載の拡散スペクトラムクロック生成装置。
【請求項5】
前記選択器は、変調度ゼロのプロット位置を挟んで両側のプロット位置では、前記変調度ゼロの変調ポイントからの距離に応じて対称的に分周比を選択することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の拡散スペクトラムクロック生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−4868(P2009−4868A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161417(P2007−161417)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】