振動子、電子部品及び振動子の製造方法
【課題】圧電薄膜の中心部と外縁部との間で周方向に亘って膨張収縮する輪郭振動が互いに同相で起こるように各々構成された2つの振動体を連結部により連結した振動子において、前記輪郭振動が連結部によって阻害されることを抑制すること。
【解決手段】互いに同相で輪郭振動を起こすディスクレゾネータ31、13の間に音叉型振動体11を介在させ、この音叉型振動体11の振動腕部14、14の夫々にディスクレゾネータ31、31を接続する。そして、音叉型振動体11について、ディスクレゾネータ31、31の膨張収縮を吸収するように、これらディスクレゾネータ31、31に対して逆相で振動させる。
【解決手段】互いに同相で輪郭振動を起こすディスクレゾネータ31、13の間に音叉型振動体11を介在させ、この音叉型振動体11の振動腕部14、14の夫々にディスクレゾネータ31、31を接続する。そして、音叉型振動体11について、ディスクレゾネータ31、31の膨張収縮を吸収するように、これらディスクレゾネータ31、31に対して逆相で振動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電薄膜の上下面に励振電極を各々形成した振動子、この振動子を備えた電子部品及び振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば窒化アルミニウム(AlN)などの圧電薄膜の圧電/逆圧電効果を用いた振動子として、圧電薄膜を例えば円板状に形成すると共に、この圧電薄膜の上下面に例えばモリブデン(Mo)などを励振電極として各々形成したディスクレゾネータ(振動体)が知られている。このディスクレゾネータでは、圧電薄膜の中央部を節として、当該圧電薄膜の半径方向に圧電薄膜が伸縮する輪郭振動が周方向に亘って発生する。そこで、輪郭振動の阻害を抑えた状態でディスクレゾネータを例えばシリコン基板上において簡便な構造で支持(固定)するにあたり、2つのディスクレゾネータを水平方向に並べると共に、これらディスクレゾネータの外縁部同士を例えば概略箱型の連結部により連結し、この連結部の下面側をシリコン基板に固定する手法が知られている。
【0003】
即ち、これらディスクレゾネータが同相で振動するように、圧電薄膜の直径寸法や質量などをディスクレゾネータ間において互いに揃えると共に、上方側の励振電極同士及び下方側の励振電極同士が夫々同電位となるように、連結部を介して励振電極に電気信号の入出力を行っている。従って、連結部では前記輪郭振動の節が形成されるので、各々のディスクレゾネータは、輪郭振動の阻害が抑えられた状態で支持されることになる。そして、このようなディスクレゾネータを製造した後、共振周波数を調整する場合には、例えばレーザー加工などを用いて各々のディスクレゾネータの励振電極や圧電薄膜に穴空けを行い、ディスクレゾネータの剛性や質量を変化(減少)させている。
【0004】
ここで、連結部により2つのディスクレゾネータを連結した構成では、後述のシミュレーション結果に示すように、実際には当該連結部によりディスクレゾネータの振動が阻害されるので、理想的な振動モードではなくなってしまう。そのため、理想的な振動モードで振動する場合と比べて、ディスクレゾネータの電気的特性が劣化してしまう。
また、既述のレーザー加工を行う時に、2つのディスクレゾネータ間において加工位置や加工量などがばらつくと、これらディスクレゾネータにおいて振動バランスが崩れるため、連結部を介して弾性エネルギーが漏洩し、Q値が劣化してしまう。
特許文献1には、連結部により連結された2つのディスクレゾネータが記載されており、また特許文献2〜5には輪郭振動型レゾネータについて記載されているが、既述の課題については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−124747
【特許文献2】特開2005−159620
【特許文献3】特表2007−535275
【特許文献4】特開2005−348222
【特許文献5】特開2006−41911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が互いに同相で起こるように各々構成された2つの振動体を連結部により連結した振動子において、前記輪郭振動が連結部によって阻害されることを抑制できる振動子、電子部品及び振動子の製造方法を提供することにある。また、本発明の別の発明は、これら振動体の振動バランスを揃えた状態で共振周波数を調整できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振動子は、
ベース基板と、
このベース基板に支持された基部、この基部から互いに離間して伸び出すと共に各々圧電体により構成された2本の振動腕部及びこれら振動腕部の各々を挟むように形成された一対の励振電極を有する音叉型振動体と、
前記一対の振動腕部のうち一方の振動腕部に外縁部が接続された圧電薄膜及びこの圧電薄膜を板厚方向から挟むように形成された一対の励振電極を有し、前記圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が起こるように構成された第1の振動体と、
前記一対の振動腕部のうち他方の振動腕部に外縁部が接続された圧電薄膜及びこの圧電薄膜を板厚方向から挟むように形成された一対の励振電極を有し、前記第1の振動体と同相で前記輪郭振動が起こるように構成された第2の振動体と、
前記一方の振動腕部に形成され、前記第1の振動体の前記励振電極に接続された第1の引き出し電極と、
前記他方の振動腕部に形成され、前記第2の振動体の前記励振電極に接続された第2の引き出し電極と、
前記基部に形成され、前記第1の引き出し電極、前記第2の引き出し電極及び前記振動腕部の励振電極の夫々に対して電気信号の入出力を行うための入出力ポートと、を備え、
前記音叉型振動体は、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の輪郭振動を吸収するように、これら第1の振動体及び第2の振動体の振動に対して逆相で屈曲振動するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
前記振動子は、以下のように構成しても良い。
前記一方の振動腕部及び前記他方の振動腕部には、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の発振周波数を夫々調整するための電極パターンが形成されている構成。前記電極パターンの各々は、複数の電極膜が互いに隙間領域を介して形成されたものである構成。前記一方の振動腕部における前記電極パターン及び前記他方の振動腕部における前記電極パターンは、前記一方の振動腕部と前記他方の振動腕部との間のラインを介して互いに対称に形成されている構成。
【0009】
前記一方の振動腕部における前記励振電極及び前記他方の振動腕部における前記励振電極は、前記第1の引き出し電極及び前記第2の引き出し電極を夫々兼用している構成。前記基部は、前記振動腕部の一方側及び他方側に各々形成されると共に、各々前記ベース基板に支持され、前記入出力ポートは、前記基部の各々に形成されている構成。
本発明の電子部品は、前記振動子を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の振動子の製造方法は、
ベース基板上に、当該ベース基板に支持される基部、この基部から互いに離間して伸び出すと共に各々圧電体により構成された2本の振動腕部及びこれら振動腕部の各々を挟むように形成された一対の励振電極を有する音叉型振動体を形成する工程と、
前記一対の振動腕部のうち一方の振動腕部に、圧電薄膜の外縁部を接続すると共に、この圧電薄膜を板厚方向から挟むように一対の励振電極を形成して、前記圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が起こるように第1の振動体を構成する工程と、
前記一対の振動腕部のうち他方の振動腕部に、圧電薄膜の外縁部を接続すると共に、この圧電薄膜を板厚方向から挟むように一対の励振電極を形成して、前記第1の振動体と同相で前記輪郭振動が起こるように第1の振動体を構成する工程と、
前記一方の振動腕部に、前記第1の振動体の前記励振電極に接続される第1の引き出し電極を形成する工程と、
前記他方の振動腕部に、前記第2の振動体の前記励振電極に接続される第2の引き出し電極を形成する工程と、
前記基部に、前記第1の引き出し電極、前記第2の引き出し電極及び前記振動腕部の励振電極の夫々に対して電気信号の入出力を行うための入出力ポートを形成する工程と、
前記一方の振動腕部及び前記他方の振動腕部に、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の発振周波数を夫々調整するための電極パターンを形成する工程と、を含み、
前記音叉型振動体は、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の輪郭振動を吸収するように、これら第1の振動体及び第2の振動体の振動に対して逆相で屈曲振動するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
前記電極パターンを形成する工程の後に、前記一方の振動腕部における前記電極パターン及び前記他方の振動腕部における前記電極パターンについて、前記一方の振動腕部と前記他方の振動腕部との間のラインを介して互いに対称となるように、これら電極パターンを除去して、前記第1の振動体及び前記第2の振動体における発振周波数を揃えながらこれら発振周波数の各々を調整する工程と、を行っても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が互いに同相で起こるように各々構成された2つの振動体の間に、ベース基板に基部が支持されると共に一対の振動腕部を備えた音叉型振動体を連結部として介在させ、各々の振動体における圧電薄膜の外縁部に一方の振動腕部及び他方の振動腕部を接続している。そして、この音叉型振動体について、これら振動体の輪郭振動を吸収するように、第1の振動体及び第2の振動体の振動に対して逆相で屈曲振動するように構成している。そのため、各々の振動体における振動が阻害されることを抑制できるので、電気的特性の劣化を抑えることができる。また、各々の振動腕部に振動体の発振周波数を調整するための電極パターンを形成しているので、これら振動体の振動バランスを揃えた状態で各々の発振周波数を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の振動子の一例を示す斜視図である。
【図2】前記振動子を示す平面図である。
【図3】前記振動子を示す縦断面図である。
【図4】前記振動子を示す縦断面図である。
【図5】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図6】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図7】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図8】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図9】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図10】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図11】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図12】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図13】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図14】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図15】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図16】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図17】前記振動子を製造する工程を示す平面図である。
【図18】前記振動子を製造する工程を示す平面図である。
【図19】前記振動子を製造する工程を示す平面図である。
【図20】前記振動子を製造する工程を示す平面図である。
【図21】前記振動子が振動する様子を示す模式図である。
【図22】前記振動子が振動する様子を示す模式図である。
【図23】前記振動子について得られたシミュレーション結果を示す特性図である。
【図24】前記振動子について得られたシミュレーション結果を示す特性図である。
【図25】前記振動子が用いられる電気回路を示す概略図である。
【図26】前記振動子の他の例を示す一部拡大平面図である。
【図27】前記振動子の他の例を示す平面図である。
【図28】前記振動子の他の例を示す平面図である。
【図29】前記振動子の他の例を示す平面図である。
【図30】前記振動子の他の例を示す平面図である。
【図31】前記他の例における振動子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態である振動子の一例について、図1〜図4を参照して説明する。この振動子は、例えばシリコン(Si)などからなるベース基板1上に設けられており、図1及び図2に示すように、当該ベース基板1(詳しくは後述の窒化膜4)に支持された音叉型振動体11と、この音叉型振動体11の左右(図1中X方向)両側に各々接続された概略円板状の振動体であるディスクレゾネータ31、31と、を備えている。これらディスクレゾネータ31、31は、図3に示すように、音叉型振動体11によってベース基板1から浮いた状態となるように支持されている。そして、各々のディスクレゾネータ31、31は、後述するように、中心部と外縁部との間で周方向に亘って伸縮する輪郭振動が起こる時、音叉型振動体11によって当該輪郭振動が阻害されないように、あるいは輪郭振動の阻害が抑えられるように構成されている。以下に、これら音叉型振動体11及びディスクレゾネータ31、31について詳述する。尚、図3及び図4は、図1及び図2におけるA−A線及びB−B線で振動子を各々切断した縦断面を示している。また、図1〜図4では、ベース基板1を切り欠いて描画している。
【0015】
ベース基板1上には、例えばシリコン酸化物などからなる酸化膜2と、シリコン窒化物などからなる窒化膜4とが下側からこの順番で積層されており、既述の音叉型振動体11は、長さ方向(図2中Y方向)における中央部がこれら酸化膜2及び窒化膜4から浮いた状態となるように、当該窒化膜4上に支持(固定)されている。即ち、酸化膜2及び窒化膜4には、振動子よりも概略一回り大きな寸法の凹部3が形成されており、音叉型振動体11は、長さ方向における一端側及び他端側が前記凹部3よりも奥側及び手前側に夫々伸び出して、この伸び出した部分が窒化膜4上に固定されている。音叉型振動体11において窒化膜4上に固定された奥側の領域及び手前側の領域(詳しくはこれら領域に加えて僅かに中央寄りの領域)は、各々左右方向に伸び出して基部12、12をなしている。基部12、12における電極構造については、後で説明する。尚、図2では、音叉型振動体11及びディスクレゾネータ31、31において後述の金属膜16及び励振電極32などが形成された領域にハッチングを付しており、圧電薄膜15が露出した領域と区別して描画している。
【0016】
基部12、12間において窒化膜4から浮いた状態で保持された部位には、音叉型振動体11の長さに伸びる開口部13が当該部位の中央部において音叉型振動体11を上下方向に貫通するように形成されている。従って、開口部13の左右において基部12、12間を接続するように前後方向に伸びる領域は、音叉型振動体11における振動腕部14、14を各々なしている。即ち、振動腕部14、14は、図4に示すように、窒化アルミニウム(AlN)などからなる圧電薄膜15と、この圧電薄膜15を上下方向から挟むように形成されたモリブデン(Mo)などからなる金属膜16、16と、を各々備えており、後述するように、金属膜16、16間に電圧が印加されると、振動腕部14、14が左右方向に屈曲振動するように構成されている。この屈曲振動における発振周波数f1(例えば30〜200MHz)は、ディスクレゾネータ31、31における共振周波数f2と同じ(逆相の)周波数となるように、具体的にはf1≦±f2×1.2となるように、各々の振動腕部14、14の長さ寸法及び幅寸法が調整されている。前記金属膜16、16は、振動腕部14、14の励振電極をなすと共に、後述するように、ディスクレゾネータ31への電気信号の入出力を行うための引き出し電極を兼用している。
【0017】
音叉型振動体11の上面における既述の開口部13の周囲は、金属膜16、16が概略矩形に切り欠かれていて圧電薄膜15が露出している。そして、この圧電薄膜15が露出した部位における振動腕部14、14には、ディスクレゾネータ31、31の発振周波数(共振周波数)を調整するための電極パターン17、17が各々形成されている。この電極パターン17、17の各々は、例えばモリブデンからなる点状の電極膜18が複数箇所に互いに隙間領域を介して一列となるように島状に形成されたものであり、振動腕部14、14間において前後方向に伸びるラインを境界として互いに左右対称となるように配置されている。この例では、電極膜18は、各々同じ寸法(直径寸法及び高さ)となるように形成されている。具体的には、電極膜18の直径寸法は、例えば2〜10μmこの例では5μmであり、互いに隣接する電極膜18、18同士の離間寸法は、例えば5〜30μmこの例では10μmである。
【0018】
基部12、12は、振動腕部14と同様に、圧電薄膜15と、この圧電薄膜15の上下面に形成された金属膜16、16と、を各々備えている。手前側の基部12における上面の金属膜16は、振動腕部14、14の上面の金属膜16と一体的に形成されて互いに接続されている。一方、奥側の基部12における上面の金属膜16は、当該基部12の手前側に形成された隙間領域19により、振動腕部14、14の上面の金属膜16に対して電気的に絶縁されている。尚、基部12の下面側の金属膜16は、下電極の引き出しのために、当該基部12の長さ方向において、基部12と窒化膜4とが接触する部位よりも中央寄りの位置に形成されている。
【0019】
各々の基部12、12の上面側における金属膜16、16には、振動子に対して外部の電子機器などから電気信号を入出力するために、例えばアルミニウム(Al)などからなる入出力ポート20、20が各々形成されている。そして、奥側の基部12の圧電薄膜15には、図4に示すように、下方側の金属膜16に到達するコンタクトホール21が形成されており、奥側の入出力ポート20は、コンタクトホール21の内部を介して下面側の金属膜16に電気的に接続されている。また、手前側の入出力ポート20は、圧電薄膜15の上面側の金属膜16を介して、振動腕部14、14の上面側の金属膜16、16に接続されている。尚、入出力ポート20、20における奥側及び手前側には、例えばシリコン酸化物からなる絶縁膜34が夫々形成されている。
【0020】
ディスクレゾネータ31、31は、直径寸法が例えば50μmの圧電薄膜15と、当該圧電薄膜15を上下方向(板厚方向)から挟むように形成された励振電極32、32と、を各々備えている。これらディスクレゾネータ31、31は、当該ディスクレゾネータ31、31における圧電薄膜15、15が音叉型振動体11(振動腕部14、14)における圧電薄膜15と一体的に形成されている。即ち、2つの振動腕部14、14のうち右側を一方の振動腕部14、左側を他方の振動腕部14と呼ぶと、一方の振動腕部14の右側の側面における長さ方向中央部には、右側のディスクレゾネータ31に向かって水平に伸びる支持部33の一端側が接続されており、この支持部33の他端側は、当該ディスクレゾネータ31の外縁部に接続されている。
【0021】
そして、一方の振動腕部14の金属膜16、16は、支持部33を介して右側のディスクレゾネータ31の励振電極32、32に夫々接続されている。また、他方の振動腕部14についても、同様に当該他方の振動腕部14の長さ方向中央部に設けられた支持部33を介して左側のディスクレゾネータ31に接続されている。この時、2つのディスクレゾネータ31、31及び音叉型振動体11からなる振動子は、平面的に見た時に左右対称となっており、また厚み方向で見た時も窒化膜4から浮いた領域は概略上下方向に対称となっている。尚、金属膜16及び励振電極32は、後述するように、一体的に形成されるが、説明の都合上符号を使い分けている。
【0022】
そして、既述の凹部3がこれらディスクレゾネータ31、31よりも一回り大きな寸法となるように形成されているので、各々のディスクレゾネータ31、31は、図3に示すように、ベース基板1、酸化膜2及び窒化膜4から浮いた状態で音叉型振動体11により支持されている。こうしてディスクレゾネータ31、31は、当該ディスクレゾネータ31、31の中央部を節として、半径方向に圧電薄膜15が伸縮する輪郭振動が周方向に起こるように構成されている。この時、ディスクレゾネータ31、31は、互いに同相で振動するように、即ち一方のディスクレゾネータ31が膨張するときは他方のディスクレゾネータ31についても同様に膨張し、一方のディスクレゾネータ31が収縮する時には他方のディスクレゾネータ31も収縮するように、直径寸法などが互いに揃うように形成されている。
【0023】
続いて、この振動子の製造方法について、図5〜図20を参照して説明する。始めに、ベース基板1に、酸化膜2、窒化膜4及び有機物からなるフォトレジストマスク41を下層側からこの順番で積層し、次いで図5に示すように、フォトリソグラフィー法により凹部3に対応するパターンをフォトレジストマスク41に形成する。続いて、このフォトレジストマスク41を介して酸化膜2及び窒化膜4を例えばフッ酸水溶液などを用いたウエットエッチングによりエッチングして、凹部3を形成する。そして、フォトレジストマスク41を剥離した後、凹部3が埋め込まれるように、例えばシリコン酸化物からなる犠牲膜42をベース基板1に形成した後、図6及び図17に示すように、CMP(Chemical Mechanical Policing)によって窒化膜4及び犠牲膜42を平坦化する。
【0024】
次に、ベース基板1(窒化膜4及び犠牲膜42)上に、例えばモリブデンからなる薄膜43及びフォトレジストマスク44を下側からこの順番で積層し、図7に示すように、同様にフォトリソグラフィー法により薄膜43に対して金属膜16及び励振電極32に対応する形状をパターニングする。続いて、図8に示すように、フォトレジストマスク44を剥離した後、例えば窒化アルミニウムからなる圧電層45、モリブデンからなる薄膜46及びシリコン酸化物からなる絶縁膜34を下側からこの順番でベース基板1上に積層し、図9に示すように、この絶縁膜34に対して、フォトレジストマスク47を用いたフォトリソグラフィー法により金属膜16及び励振電極32に対応するパターンを形成する。
【0025】
そして、フォトレジストマスク47を剥離した後、図10に示すように、絶縁膜34を介して薄膜46、圧電層45及び薄膜43を例えばプラズマを用いてドライエッチングすることにより、図18に示すように、ディスクレゾネータ31、31及び音叉型振動体11に対応する構造体を形成する。こうして励振電極32、32により上下から挟まれた圧電薄膜15からなるディスクレゾネータ31、31及び金属膜16、16により上下から挟まれた圧電薄膜15からなる音叉型振動体11が形成される。また、この音叉型振動体11には開口部13が形成される。この時、前記エッチングにより、絶縁膜34についても膜減りが起こる。
【0026】
次いで、前記構造体を覆うようにベース基板1上にフォトレジストマスク48を形成し、図11に示すように、既述のコンタクトホール21、隙間領域19及び開口部13の周囲における圧電薄膜15の露出面が開口するように、更には当該露出面に電極パターン17が形成されるように、前記フォトレジストマスク48に対してパターニングする。そして、このフォトレジストマスク48を介して絶縁膜34及び薄膜46に対してエッチングを行うと、図11及び図19に示すように、コンタクトホール21の形成される領域及び隙間領域19における圧電薄膜15が露出すると共に、電極パターン17が形成される。尚、図19では、ディスクレゾネータ31、31及び音叉型振動体11において、絶縁膜34及び薄膜46の残っている領域にハッチングを付している。
【0027】
続いて、フォトレジストマスク48を剥離した後、図12に示すように、コンタクトホール21の形成領域だけが開口するようにフォトレジストマスク49をベース基板1上に形成して、当該フォトレジストマスク49をマスクとして圧電薄膜15をエッチングする。次に、このフォトレジストマスク49を剥離して、図13に示すように、入出力ポート20、20の形成される領域だけが開口するようにフォトレジストマスク50を形成すると共に、このフォトレジストマスク50を介して絶縁膜34をエッチングする。そして、ベース基板1上に例えばアルニウムからなる導電膜51をスパッタなどにより形成すると、この導電膜51は、図14に示すように、コンタクトホール21の内部及びフォトレジストマスク50の上面を覆うように成膜される。
【0028】
その後、ベース基板1を例えば有機溶媒などに浸漬すると、図15に示すように、フォトレジストマスク50が当該有機溶媒に溶解して、このフォトレジストマスク50と共に当該フォトレジストマスク50上に形成された余分な導電膜51が除去される。この工程により、入出力ポート20、20が形成される。しかる後、例えば入出力ポート20、20及び窒化膜4を覆うように、且つ例えば開口部13の内部領域が露出するように、図示しないフォトレジストマスクをベース基板1上に形成し、この状態のベース基板1を例えばフッ酸水溶液中に浸漬する。このフッ酸水溶液は、例えば開口部13の内部領域を介して振動子の下層側の犠牲膜42に回り込んで当該犠牲膜42をエッチングする。従って、図16に示すように、音叉型振動体11の中央部(基部12、12以外)がベース基板1から離間すると共に、また既述の図3に示すように、ディスクレゾネータ31、31が全面に亘ってベース基板1から浮いた状態となる。そして、このエッチングにより、電極パターン17の上面及びディスクレゾネータ31、31の上面に残っていた絶縁膜34が除去される。
【0029】
続いて、例えば振動子の発振周波数を調整する場合には、例えばレーザー加工により、電極パターン17の一部を除去(トリム)する。具体的には、図示しないテーブル上にベース基板1を載置すると共に、レーザー光照射部(図示せず)から電極パターン17の電極膜18にレーザー光を照射して、当該電極膜18を溶解及び蒸発させる。次いで、別の電極膜18についても除去する場合には、テーブルに対してレーザー光照射部を相対的に移動させ、同様にレーザー光を照射する。この時、一方の振動腕部14及び他方の振動腕部14について、互いに左右対称となるように電極膜18を除去する。図20には、これら振動腕部14、14の各々の電極パターン17について、奥側から2番目の電極膜18、18と、奥側から6番目の電極膜18、18と、を除去した例を示している。こうして振動腕部14、14における電極パターン17、17が左右対称となっている状態を維持しながら電極膜18、18を除去することにより、これらディスクレゾネータ31、31の振動バランス(発振周波数)が保たれたまま、発振周波数が同じように変化する(高くなる)。
【0030】
ここで、ディスクレゾネータ31、31間を連結する部位が音叉型振動体11ではない場合、即ち音叉型振動体11に代えて例えば後述の図24の連結部90を用いた場合には、この連結部90上の電極膜18をトリミングしても、ディスクレゾネータ31、31の発振周波数は変化しない。一方、ディスクレゾネータ31、31と同様に発振する音叉型振動体11をこれらディスクレゾネータ31、31間に設けた場合には、この音叉型振動体11の電極膜18をトリミングすると、音叉型振動体11の発振周波数が変わると共に、ディスクレゾネータ31、31の発振周波数が変化する。このように音叉型振動体11の発振周波数の変化に伴ってディスクレゾネータ31、31の発振周波数についても変化することは、詳細については省略するが、振動腕部14、14の長さ寸法を種々変えて別途行ったシミュレーションによって確認している。
【0031】
こうして形成された振動子に対して入出力ポート20、20を介して例えば外部から電気信号を入力すると、ディスクレゾネータ31、31及び音叉型振動体11は、各々の共振周波数において発振(振動)して、この発振に基づく電気信号が入出力ポート20、20を介して取り出される。具体的には、例えばディスクレゾネータ31、31では、半径方向に膨張及び収縮する輪郭振動が周方向に亘って起こる。また、音叉型振動体11では、振動腕部14、14同士が互いに近接したり離れたりするように屈曲振動が起こる。
【0032】
この時、ディスクレゾネータ31、31では、圧電薄膜15の直径寸法などを揃えているため、互いに同相で前記輪郭振動が起こる。また、音叉型振動体11では、ディスクレゾネータ31、31と同じ周波数で屈曲振動が起こるように各寸法を調整し、更にディスクレゾネータ31、31の上面側の励振電極32に対して当該音叉型振動体11の上面の金属膜16を接続し、またディスクレゾネータ31、31の下面の励振電極32に対してこの音叉型振動体11の下面の金属膜16を接続している。そのため、音叉型振動体11では、これらディスクレゾネータ31、31とは逆相で屈曲振動が起こる。従って、振動腕部14、14は、図21に示すように、ディスクレゾネータ31、31が収縮する時には、互いに離間するように屈曲振動し、一方ディスクレゾネータ31、31が膨張する時は、図22に示すように、互いに近接するように屈曲振動する。こうして音叉型振動体11では、ディスクレゾネータ31、31の膨張収縮振動が吸収されるように、即ち各々のディスクレゾネータ31、31の中心位置が輪郭振動により位置ずれしないように、屈曲振動が発生する。尚、図21及び図22では、音叉型振動体11及びディスクレゾネータ31、31の振動の様子を誇張して描画している。
【0033】
ここで、図23に本発明の振動子の振動モードをシミュレーションにより解析した結果を示すと、ディスクレゾネータ31、31に加えて音叉型振動体11が振動(変形)することにより、各々のディスクレゾネータ31、31では、各々のディスクレゾネータ31、31の中央部に節(変形量が小さい領域)が形成されると共に、外周側に向かう程変形量が大きくなり、更に周方向に亘って均一な変形量となる理想的な振動モードとなっていた。従って、この構成では、音叉型振動体11を介してディスクレゾネータ31、31の弾性エネルギーの漏洩が起こっていないか、当該漏洩が抑えられていることが分かる。
【0034】
一方、ディスクレゾネータ31、31間に音叉型振動体11に代えて例えば矩形の連結部90を設けた場合には、図24に示すように、ディスクレゾネータ31、31では、概略中央部に節が形成されるものの、変形量が半径方向及び周方向に亘って不均一となっていた。従って、図24では連結部90を介してディスクレゾネータ31、31のエネルギーが漏洩し、図23の場合よりもQ値が劣化していることが分かる。
【0035】
以上説明した本発明の振動子を発振回路に組み込んだ電子部品(発振器)の電気回路の一例について、図25を参照して簡単に説明する。図25は、互いに直列に接続された2つのコンデンサC、Cとトランジスタ101とからなるコルピッツ回路を設けた例を示しており、トランジスタ101のベース端子には、本発明の振動子100と可変コンデンサC1とからなる直列回路が接続されている。これらベース端子と振動子100との間の接続点には、電源部102が接続されており、トランジスタ101のコレクタ端子には、電気信号を取り出すための出力ポート103が接続されている。図25中104は抵抗、105はインダクタンスである。
【0036】
上述の実施の形態によれば、互いに同相で輪郭振動を起こすディスクレゾネータ31、13の間に音叉型振動体11を介在させ、この音叉型振動体11の振動腕部14、14の夫々にディスクレゾネータ31、31を接続している。そして、音叉型振動体11について、ディスクレゾネータ31、31の膨張収縮を吸収するように、これらディスクレゾネータ31、31に対して逆相で振動するようにしている。そのため、各々のディスクレゾネータ31、31における振動が阻害されることを抑制できるので、即ちディスクレゾネータ31、31の弾性エネルギーが音叉型振動体11を介して漏洩することを抑えることができるので、電気的特性の劣化を抑えることができる。
【0037】
このように、本発明では、2つのディスクレゾネータ31、31を連結すると共にベース基板1に支持される役割を持つ連結部について、この役割に加えて、ディスクレゾネータ31、31と逆相で振動する振動体としての役割を持たせている。一方、従来では、連結部について、振動体としての機能に着目していなかったので、当該連結部の形状や寸法などについて検討されていなかった。即ち、既述の背景の項で述べた特許文献1のような構成であれば、連結部はディスクレゾネータよりも極めて寸法が小さいため、当該連結部が振動していたとしても、ディスクレゾネータの発振周波数よりも極めて高い周波数であり、そのためディスクレゾネータから見れば振動していない状態となっていると言える。
【0038】
これに対して本発明では、以上説明したように、ディスクレゾネータ31、31間の連結部について、これらディスクレゾネータ31、31の逆相で振動するように音叉型振動体11として構成している。この時、屈曲振動は、既述の輪郭振動と比べて、振動体(音叉型振動体11やディスクレゾネータ31)が同じ寸法であっても発振周波数が低くなる。言い換えると、音叉型振動体11をディスクレゾネータ31と同じ周波数で発振させる時には、音叉型振動体11は、ディスクレゾネータ31よりも寸法が小さくて済む。そのため、音叉型振動体11について、ディスクレゾネータ31、31と同じ周波数で且つ逆相で発振させる時に、ディスクレゾネータ31と同程度まで寸法を大きくする必要がないので、振動子の寸法を抑えながら、電気的特性の劣化を抑えることができる。
【0039】
また、各々の振動腕部14、14に電極パターン17を形成しているので、ディスクレゾネータ31、31に対して加工しなくても、この電極パターン17を介して振動子の発振周波数を調整できる。この時、電極パターン17を振動腕部14、14間で左右対称に形成しており、また左右対称にトリミングしているので、ディスクレゾネータ31、31間における振動バランスを揃えた状態で発振周波数を調整できる。更に、互いに隣接する電極膜18、18同士を離間させていることから、レーザー加工を行う時の加工位置や加工量(例えば既述のテーブルに対するレーザー光照射部の相対的な移動距離やレーザー光の照射時間)などがばらつく場合であっても、ある電極膜18にレーザー光を照射する時、他の電極膜18にレーザー光が照射されることを防止できる。従って、電極膜18のトリミングを行った時に、ディスクレゾネータ31、31間における発振周波数のばらつきを抑えることができるので、Q値の劣化を防止できる。また、電極パターン17について、金属膜16とは別個に(電気的に絶縁させて)設けているので、この電極パターン17を除去しても、ディスクレゾネータ31や音叉型振動体11の例えば電気抵抗が増大するなどといった悪影響は及ぼさない。
また、振動腕部14、14の両側に基部12、12を設けているので、振動腕部14、14が振動するにあたって当該振動腕部14、14をベース基板1に対して強固に保持できる。
【0040】
既述の例では、各々の電極膜18が互いに同じ寸法となるように形成したが、例えば図26に示すように、各々の電極パターン17、17において、互いに異なる寸法の電極膜18を配置しても良い。図26では、奥側から手前側に向かって各々の電極膜18の直径寸法が例えば2μm〜10μmまでに亘って徐々に小さくなるように形成した例を示している。このように互いの寸法の異なる電極膜18を設けることにより、例えば除去する電極膜18毎にディスクレゾネータ31の発振周波数の調整幅を変えることができるので、周波数の調整をより一層簡便に行うことができる。この例においても、左右の電極パターン17、17は、互いに左右対称となるように形成されている。
【0041】
電極パターン17、17については、振動腕部14、14間で左右対称となるように配置したが、左右非対称に形成しても良い。この場合であっても、電極膜18を除去する時は、左右のディスクレゾネータ31、31間で発振周波数が揃うように調整される。
【0042】
また、音叉型振動体11としては、ディスクレゾネータ31、31と逆相で発振する構成であれば良く、例えば図27に示すように、開口部13を概略楕円形状に形成して、振動腕部14、14が基部12、12側から中央側(支持部33)に向かって徐々に細くなるようにしても良い。更に、図28に示すように、開口部13を概略円状に形成すると共に、振動腕部14、14についてはこの開口部13の周縁に沿うように概略円弧状に形成しても良い。更に、図29に示すように、例えば手前側の基部12を設けずに、振動腕部14、14が奥側の基部12によって各々いわば片持ちで支持される構成を採っても良い。この場合には、奥側の基部12には、例えば左側にコンタクトホール21が形成されると共に、このコンタクトホール21に設けられる入出力ポート20に対して隙間領域を介して右側に隣接するように、音叉型振動体11の上面から伸びる金属膜16に接続される入出力ポート20が配置される。尚、図27及び図28は振動子を簡略化して描画している。
【0043】
更に、ディスクレゾネータ31、31を連結する音叉型振動体11に代えて、ディスクレゾネータ110を設けても良い。図30及び図31は、このような例を示しており、両側のディスクレゾネータ31、31に対して中央のディスクレゾネータ110を逆相で且つ同じ周波数で発振させるように構成されている。具体的には、これら3つのディスクレゾネータ31、31、110は、互いの直径寸法などが揃うように形成されている。また、ディスクレゾネータ110の上面及び下面における中央部には、当該ディスクレゾネータ110を発振させるための概略円形の励振電極(金属膜16)が各々形成されている。そして、ディスクレゾネータ110の上面における外縁部には、左右のディスクレゾネータ31、31の上面の励振電極32、32に各々接続される円弧状の引き回し電極111が前記金属膜16から離間するように形成されている。前記金属膜16及び引き回し電極111は、ディスクレゾネータ110の手前側及び奥側に夫々形成された電極引き出し部113、113に夫々接続されている。
【0044】
そして、ディスクレゾネータ110の下面における周縁部には、左右のディスクレゾネータ31、31の下面側の励振電極32、32に各々接続されると共に当該下面の金属膜16から離間して配置される円弧状の引き回し電極112が形成されている。これら金属膜16及び引き回し電極112は、前記電極引き出し部113、113に夫々接続されている。こうしてディスクレゾネータ110の上面側の金属膜16及び引き回し電極111と、ディスクレゾネータ110の裏面側の金属膜16及び引き回し電極112とは、夫々既述の図1と同様に配線され、ディスクレゾネータ31、31の膨張縮退振動に対してディスクレゾネータ110が逆相で振動するように構成されている。ディスクレゾネータ110における金属膜16、16は、各々入出力ポート20、20をなしている。
【0045】
また、ディスクレゾネータ110は、当該ディスクレゾネータ110の下面中央部の輪郭振動の節となる位置において、ベース基板1によって支持されると共に、既述の引き出し部113を介して電気信号の入出力が行われる。
この例において、ディスクレゾネータ110は、円形状であることに代えて、三角形あるいは四角形などであっても良い。また、左右のディスクレゾネータ31、31についても、同様に三角形や四角形などであっても良い。
【0046】
以上の例では、電極パターン17を形成するにあたり、ディスクレゾネータ31、31及び音叉型振動体11における上面側の金属膜16及び励振電極32を形成する工程(薄膜46の形成工程)を利用したが、その後の入出力ポート20、20を形成する工程(導電膜51の形成工程)において、電極パターン17の形成領域の周囲が開口するようにフォトレジストマスク50をパターニングすることにより、電極パターン17をアルミニウムにより構成しても良い。また、一連の工程が終了した後、電極パターン17用のフォトレジストマスクを用いて当該電極パターン17を個別に形成しても良い。
【0047】
また、音叉型振動体11において、当該音叉型振動体11を振動させるための励振電極と、ディスクレゾネータ31、31の励振電極32と入出力ポート20とを接続する引き出し電極について、金属膜16として共通化したが、これら励振電極と引き出し電極とを別個に配置しても良い。この場合には、振動腕部14、14の上下面に励振電極を形成すると共に、例えば側面側などに引き出し電極を形成しても良い。
以上の例では、本発明の振動子を発振回路に組み込んだ例について説明したが、この振動子をフィルタ(電子部品)として用いても良い。この場合には、入出力ポート20に入力された電気信号は、振動子において不要な電気信号が除去された後、入出力ポート20から取り出される。
【0048】
ここで、以上述べた本発明と既述の背景で説明した公知例である特開2008−124747との差異について改めて説明する。この公知例では、この振動は、「中心を節とするラジアルエクステンションモード(Radial Extensionモード)」になると記載されている。しかしながら、本発明者らは、「概略箱型の連結部」により連結し支持した場合、既述の図24から分かるように、「外周部に複数個所の節が生じる理想的ではない高次の振動モード」となることを数値解析により見出した。この振動モードでは、振動漏れ等により電気的特性の劣化が起こることになる。これに対し、本実施形態では、図23に記載のように、支持部に振動腕部を形成することで「支持部による影響」を無くし、従来の構成では実現できなかった「振動板の中心を節として半径方向に振動板が伸縮する、理想的な振動」を周方向に亘って形成することを可能にしているのである。
【符号の説明】
【0049】
1 ベース基板
11 音叉型振動体
14 振動腕部
15 圧電薄膜
16 金属膜
17 電極パターン
18 電極膜
20 入出力ポート
31 ディスクレゾネータ
32 励振電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電薄膜の上下面に励振電極を各々形成した振動子、この振動子を備えた電子部品及び振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば窒化アルミニウム(AlN)などの圧電薄膜の圧電/逆圧電効果を用いた振動子として、圧電薄膜を例えば円板状に形成すると共に、この圧電薄膜の上下面に例えばモリブデン(Mo)などを励振電極として各々形成したディスクレゾネータ(振動体)が知られている。このディスクレゾネータでは、圧電薄膜の中央部を節として、当該圧電薄膜の半径方向に圧電薄膜が伸縮する輪郭振動が周方向に亘って発生する。そこで、輪郭振動の阻害を抑えた状態でディスクレゾネータを例えばシリコン基板上において簡便な構造で支持(固定)するにあたり、2つのディスクレゾネータを水平方向に並べると共に、これらディスクレゾネータの外縁部同士を例えば概略箱型の連結部により連結し、この連結部の下面側をシリコン基板に固定する手法が知られている。
【0003】
即ち、これらディスクレゾネータが同相で振動するように、圧電薄膜の直径寸法や質量などをディスクレゾネータ間において互いに揃えると共に、上方側の励振電極同士及び下方側の励振電極同士が夫々同電位となるように、連結部を介して励振電極に電気信号の入出力を行っている。従って、連結部では前記輪郭振動の節が形成されるので、各々のディスクレゾネータは、輪郭振動の阻害が抑えられた状態で支持されることになる。そして、このようなディスクレゾネータを製造した後、共振周波数を調整する場合には、例えばレーザー加工などを用いて各々のディスクレゾネータの励振電極や圧電薄膜に穴空けを行い、ディスクレゾネータの剛性や質量を変化(減少)させている。
【0004】
ここで、連結部により2つのディスクレゾネータを連結した構成では、後述のシミュレーション結果に示すように、実際には当該連結部によりディスクレゾネータの振動が阻害されるので、理想的な振動モードではなくなってしまう。そのため、理想的な振動モードで振動する場合と比べて、ディスクレゾネータの電気的特性が劣化してしまう。
また、既述のレーザー加工を行う時に、2つのディスクレゾネータ間において加工位置や加工量などがばらつくと、これらディスクレゾネータにおいて振動バランスが崩れるため、連結部を介して弾性エネルギーが漏洩し、Q値が劣化してしまう。
特許文献1には、連結部により連結された2つのディスクレゾネータが記載されており、また特許文献2〜5には輪郭振動型レゾネータについて記載されているが、既述の課題については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−124747
【特許文献2】特開2005−159620
【特許文献3】特表2007−535275
【特許文献4】特開2005−348222
【特許文献5】特開2006−41911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が互いに同相で起こるように各々構成された2つの振動体を連結部により連結した振動子において、前記輪郭振動が連結部によって阻害されることを抑制できる振動子、電子部品及び振動子の製造方法を提供することにある。また、本発明の別の発明は、これら振動体の振動バランスを揃えた状態で共振周波数を調整できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振動子は、
ベース基板と、
このベース基板に支持された基部、この基部から互いに離間して伸び出すと共に各々圧電体により構成された2本の振動腕部及びこれら振動腕部の各々を挟むように形成された一対の励振電極を有する音叉型振動体と、
前記一対の振動腕部のうち一方の振動腕部に外縁部が接続された圧電薄膜及びこの圧電薄膜を板厚方向から挟むように形成された一対の励振電極を有し、前記圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が起こるように構成された第1の振動体と、
前記一対の振動腕部のうち他方の振動腕部に外縁部が接続された圧電薄膜及びこの圧電薄膜を板厚方向から挟むように形成された一対の励振電極を有し、前記第1の振動体と同相で前記輪郭振動が起こるように構成された第2の振動体と、
前記一方の振動腕部に形成され、前記第1の振動体の前記励振電極に接続された第1の引き出し電極と、
前記他方の振動腕部に形成され、前記第2の振動体の前記励振電極に接続された第2の引き出し電極と、
前記基部に形成され、前記第1の引き出し電極、前記第2の引き出し電極及び前記振動腕部の励振電極の夫々に対して電気信号の入出力を行うための入出力ポートと、を備え、
前記音叉型振動体は、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の輪郭振動を吸収するように、これら第1の振動体及び第2の振動体の振動に対して逆相で屈曲振動するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
前記振動子は、以下のように構成しても良い。
前記一方の振動腕部及び前記他方の振動腕部には、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の発振周波数を夫々調整するための電極パターンが形成されている構成。前記電極パターンの各々は、複数の電極膜が互いに隙間領域を介して形成されたものである構成。前記一方の振動腕部における前記電極パターン及び前記他方の振動腕部における前記電極パターンは、前記一方の振動腕部と前記他方の振動腕部との間のラインを介して互いに対称に形成されている構成。
【0009】
前記一方の振動腕部における前記励振電極及び前記他方の振動腕部における前記励振電極は、前記第1の引き出し電極及び前記第2の引き出し電極を夫々兼用している構成。前記基部は、前記振動腕部の一方側及び他方側に各々形成されると共に、各々前記ベース基板に支持され、前記入出力ポートは、前記基部の各々に形成されている構成。
本発明の電子部品は、前記振動子を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の振動子の製造方法は、
ベース基板上に、当該ベース基板に支持される基部、この基部から互いに離間して伸び出すと共に各々圧電体により構成された2本の振動腕部及びこれら振動腕部の各々を挟むように形成された一対の励振電極を有する音叉型振動体を形成する工程と、
前記一対の振動腕部のうち一方の振動腕部に、圧電薄膜の外縁部を接続すると共に、この圧電薄膜を板厚方向から挟むように一対の励振電極を形成して、前記圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が起こるように第1の振動体を構成する工程と、
前記一対の振動腕部のうち他方の振動腕部に、圧電薄膜の外縁部を接続すると共に、この圧電薄膜を板厚方向から挟むように一対の励振電極を形成して、前記第1の振動体と同相で前記輪郭振動が起こるように第1の振動体を構成する工程と、
前記一方の振動腕部に、前記第1の振動体の前記励振電極に接続される第1の引き出し電極を形成する工程と、
前記他方の振動腕部に、前記第2の振動体の前記励振電極に接続される第2の引き出し電極を形成する工程と、
前記基部に、前記第1の引き出し電極、前記第2の引き出し電極及び前記振動腕部の励振電極の夫々に対して電気信号の入出力を行うための入出力ポートを形成する工程と、
前記一方の振動腕部及び前記他方の振動腕部に、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の発振周波数を夫々調整するための電極パターンを形成する工程と、を含み、
前記音叉型振動体は、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の輪郭振動を吸収するように、これら第1の振動体及び第2の振動体の振動に対して逆相で屈曲振動するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
前記電極パターンを形成する工程の後に、前記一方の振動腕部における前記電極パターン及び前記他方の振動腕部における前記電極パターンについて、前記一方の振動腕部と前記他方の振動腕部との間のラインを介して互いに対称となるように、これら電極パターンを除去して、前記第1の振動体及び前記第2の振動体における発振周波数を揃えながらこれら発振周波数の各々を調整する工程と、を行っても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が互いに同相で起こるように各々構成された2つの振動体の間に、ベース基板に基部が支持されると共に一対の振動腕部を備えた音叉型振動体を連結部として介在させ、各々の振動体における圧電薄膜の外縁部に一方の振動腕部及び他方の振動腕部を接続している。そして、この音叉型振動体について、これら振動体の輪郭振動を吸収するように、第1の振動体及び第2の振動体の振動に対して逆相で屈曲振動するように構成している。そのため、各々の振動体における振動が阻害されることを抑制できるので、電気的特性の劣化を抑えることができる。また、各々の振動腕部に振動体の発振周波数を調整するための電極パターンを形成しているので、これら振動体の振動バランスを揃えた状態で各々の発振周波数を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の振動子の一例を示す斜視図である。
【図2】前記振動子を示す平面図である。
【図3】前記振動子を示す縦断面図である。
【図4】前記振動子を示す縦断面図である。
【図5】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図6】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図7】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図8】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図9】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図10】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図11】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図12】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図13】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図14】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図15】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図16】前記振動子を製造する工程を示す縦断面図である。
【図17】前記振動子を製造する工程を示す平面図である。
【図18】前記振動子を製造する工程を示す平面図である。
【図19】前記振動子を製造する工程を示す平面図である。
【図20】前記振動子を製造する工程を示す平面図である。
【図21】前記振動子が振動する様子を示す模式図である。
【図22】前記振動子が振動する様子を示す模式図である。
【図23】前記振動子について得られたシミュレーション結果を示す特性図である。
【図24】前記振動子について得られたシミュレーション結果を示す特性図である。
【図25】前記振動子が用いられる電気回路を示す概略図である。
【図26】前記振動子の他の例を示す一部拡大平面図である。
【図27】前記振動子の他の例を示す平面図である。
【図28】前記振動子の他の例を示す平面図である。
【図29】前記振動子の他の例を示す平面図である。
【図30】前記振動子の他の例を示す平面図である。
【図31】前記他の例における振動子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態である振動子の一例について、図1〜図4を参照して説明する。この振動子は、例えばシリコン(Si)などからなるベース基板1上に設けられており、図1及び図2に示すように、当該ベース基板1(詳しくは後述の窒化膜4)に支持された音叉型振動体11と、この音叉型振動体11の左右(図1中X方向)両側に各々接続された概略円板状の振動体であるディスクレゾネータ31、31と、を備えている。これらディスクレゾネータ31、31は、図3に示すように、音叉型振動体11によってベース基板1から浮いた状態となるように支持されている。そして、各々のディスクレゾネータ31、31は、後述するように、中心部と外縁部との間で周方向に亘って伸縮する輪郭振動が起こる時、音叉型振動体11によって当該輪郭振動が阻害されないように、あるいは輪郭振動の阻害が抑えられるように構成されている。以下に、これら音叉型振動体11及びディスクレゾネータ31、31について詳述する。尚、図3及び図4は、図1及び図2におけるA−A線及びB−B線で振動子を各々切断した縦断面を示している。また、図1〜図4では、ベース基板1を切り欠いて描画している。
【0015】
ベース基板1上には、例えばシリコン酸化物などからなる酸化膜2と、シリコン窒化物などからなる窒化膜4とが下側からこの順番で積層されており、既述の音叉型振動体11は、長さ方向(図2中Y方向)における中央部がこれら酸化膜2及び窒化膜4から浮いた状態となるように、当該窒化膜4上に支持(固定)されている。即ち、酸化膜2及び窒化膜4には、振動子よりも概略一回り大きな寸法の凹部3が形成されており、音叉型振動体11は、長さ方向における一端側及び他端側が前記凹部3よりも奥側及び手前側に夫々伸び出して、この伸び出した部分が窒化膜4上に固定されている。音叉型振動体11において窒化膜4上に固定された奥側の領域及び手前側の領域(詳しくはこれら領域に加えて僅かに中央寄りの領域)は、各々左右方向に伸び出して基部12、12をなしている。基部12、12における電極構造については、後で説明する。尚、図2では、音叉型振動体11及びディスクレゾネータ31、31において後述の金属膜16及び励振電極32などが形成された領域にハッチングを付しており、圧電薄膜15が露出した領域と区別して描画している。
【0016】
基部12、12間において窒化膜4から浮いた状態で保持された部位には、音叉型振動体11の長さに伸びる開口部13が当該部位の中央部において音叉型振動体11を上下方向に貫通するように形成されている。従って、開口部13の左右において基部12、12間を接続するように前後方向に伸びる領域は、音叉型振動体11における振動腕部14、14を各々なしている。即ち、振動腕部14、14は、図4に示すように、窒化アルミニウム(AlN)などからなる圧電薄膜15と、この圧電薄膜15を上下方向から挟むように形成されたモリブデン(Mo)などからなる金属膜16、16と、を各々備えており、後述するように、金属膜16、16間に電圧が印加されると、振動腕部14、14が左右方向に屈曲振動するように構成されている。この屈曲振動における発振周波数f1(例えば30〜200MHz)は、ディスクレゾネータ31、31における共振周波数f2と同じ(逆相の)周波数となるように、具体的にはf1≦±f2×1.2となるように、各々の振動腕部14、14の長さ寸法及び幅寸法が調整されている。前記金属膜16、16は、振動腕部14、14の励振電極をなすと共に、後述するように、ディスクレゾネータ31への電気信号の入出力を行うための引き出し電極を兼用している。
【0017】
音叉型振動体11の上面における既述の開口部13の周囲は、金属膜16、16が概略矩形に切り欠かれていて圧電薄膜15が露出している。そして、この圧電薄膜15が露出した部位における振動腕部14、14には、ディスクレゾネータ31、31の発振周波数(共振周波数)を調整するための電極パターン17、17が各々形成されている。この電極パターン17、17の各々は、例えばモリブデンからなる点状の電極膜18が複数箇所に互いに隙間領域を介して一列となるように島状に形成されたものであり、振動腕部14、14間において前後方向に伸びるラインを境界として互いに左右対称となるように配置されている。この例では、電極膜18は、各々同じ寸法(直径寸法及び高さ)となるように形成されている。具体的には、電極膜18の直径寸法は、例えば2〜10μmこの例では5μmであり、互いに隣接する電極膜18、18同士の離間寸法は、例えば5〜30μmこの例では10μmである。
【0018】
基部12、12は、振動腕部14と同様に、圧電薄膜15と、この圧電薄膜15の上下面に形成された金属膜16、16と、を各々備えている。手前側の基部12における上面の金属膜16は、振動腕部14、14の上面の金属膜16と一体的に形成されて互いに接続されている。一方、奥側の基部12における上面の金属膜16は、当該基部12の手前側に形成された隙間領域19により、振動腕部14、14の上面の金属膜16に対して電気的に絶縁されている。尚、基部12の下面側の金属膜16は、下電極の引き出しのために、当該基部12の長さ方向において、基部12と窒化膜4とが接触する部位よりも中央寄りの位置に形成されている。
【0019】
各々の基部12、12の上面側における金属膜16、16には、振動子に対して外部の電子機器などから電気信号を入出力するために、例えばアルミニウム(Al)などからなる入出力ポート20、20が各々形成されている。そして、奥側の基部12の圧電薄膜15には、図4に示すように、下方側の金属膜16に到達するコンタクトホール21が形成されており、奥側の入出力ポート20は、コンタクトホール21の内部を介して下面側の金属膜16に電気的に接続されている。また、手前側の入出力ポート20は、圧電薄膜15の上面側の金属膜16を介して、振動腕部14、14の上面側の金属膜16、16に接続されている。尚、入出力ポート20、20における奥側及び手前側には、例えばシリコン酸化物からなる絶縁膜34が夫々形成されている。
【0020】
ディスクレゾネータ31、31は、直径寸法が例えば50μmの圧電薄膜15と、当該圧電薄膜15を上下方向(板厚方向)から挟むように形成された励振電極32、32と、を各々備えている。これらディスクレゾネータ31、31は、当該ディスクレゾネータ31、31における圧電薄膜15、15が音叉型振動体11(振動腕部14、14)における圧電薄膜15と一体的に形成されている。即ち、2つの振動腕部14、14のうち右側を一方の振動腕部14、左側を他方の振動腕部14と呼ぶと、一方の振動腕部14の右側の側面における長さ方向中央部には、右側のディスクレゾネータ31に向かって水平に伸びる支持部33の一端側が接続されており、この支持部33の他端側は、当該ディスクレゾネータ31の外縁部に接続されている。
【0021】
そして、一方の振動腕部14の金属膜16、16は、支持部33を介して右側のディスクレゾネータ31の励振電極32、32に夫々接続されている。また、他方の振動腕部14についても、同様に当該他方の振動腕部14の長さ方向中央部に設けられた支持部33を介して左側のディスクレゾネータ31に接続されている。この時、2つのディスクレゾネータ31、31及び音叉型振動体11からなる振動子は、平面的に見た時に左右対称となっており、また厚み方向で見た時も窒化膜4から浮いた領域は概略上下方向に対称となっている。尚、金属膜16及び励振電極32は、後述するように、一体的に形成されるが、説明の都合上符号を使い分けている。
【0022】
そして、既述の凹部3がこれらディスクレゾネータ31、31よりも一回り大きな寸法となるように形成されているので、各々のディスクレゾネータ31、31は、図3に示すように、ベース基板1、酸化膜2及び窒化膜4から浮いた状態で音叉型振動体11により支持されている。こうしてディスクレゾネータ31、31は、当該ディスクレゾネータ31、31の中央部を節として、半径方向に圧電薄膜15が伸縮する輪郭振動が周方向に起こるように構成されている。この時、ディスクレゾネータ31、31は、互いに同相で振動するように、即ち一方のディスクレゾネータ31が膨張するときは他方のディスクレゾネータ31についても同様に膨張し、一方のディスクレゾネータ31が収縮する時には他方のディスクレゾネータ31も収縮するように、直径寸法などが互いに揃うように形成されている。
【0023】
続いて、この振動子の製造方法について、図5〜図20を参照して説明する。始めに、ベース基板1に、酸化膜2、窒化膜4及び有機物からなるフォトレジストマスク41を下層側からこの順番で積層し、次いで図5に示すように、フォトリソグラフィー法により凹部3に対応するパターンをフォトレジストマスク41に形成する。続いて、このフォトレジストマスク41を介して酸化膜2及び窒化膜4を例えばフッ酸水溶液などを用いたウエットエッチングによりエッチングして、凹部3を形成する。そして、フォトレジストマスク41を剥離した後、凹部3が埋め込まれるように、例えばシリコン酸化物からなる犠牲膜42をベース基板1に形成した後、図6及び図17に示すように、CMP(Chemical Mechanical Policing)によって窒化膜4及び犠牲膜42を平坦化する。
【0024】
次に、ベース基板1(窒化膜4及び犠牲膜42)上に、例えばモリブデンからなる薄膜43及びフォトレジストマスク44を下側からこの順番で積層し、図7に示すように、同様にフォトリソグラフィー法により薄膜43に対して金属膜16及び励振電極32に対応する形状をパターニングする。続いて、図8に示すように、フォトレジストマスク44を剥離した後、例えば窒化アルミニウムからなる圧電層45、モリブデンからなる薄膜46及びシリコン酸化物からなる絶縁膜34を下側からこの順番でベース基板1上に積層し、図9に示すように、この絶縁膜34に対して、フォトレジストマスク47を用いたフォトリソグラフィー法により金属膜16及び励振電極32に対応するパターンを形成する。
【0025】
そして、フォトレジストマスク47を剥離した後、図10に示すように、絶縁膜34を介して薄膜46、圧電層45及び薄膜43を例えばプラズマを用いてドライエッチングすることにより、図18に示すように、ディスクレゾネータ31、31及び音叉型振動体11に対応する構造体を形成する。こうして励振電極32、32により上下から挟まれた圧電薄膜15からなるディスクレゾネータ31、31及び金属膜16、16により上下から挟まれた圧電薄膜15からなる音叉型振動体11が形成される。また、この音叉型振動体11には開口部13が形成される。この時、前記エッチングにより、絶縁膜34についても膜減りが起こる。
【0026】
次いで、前記構造体を覆うようにベース基板1上にフォトレジストマスク48を形成し、図11に示すように、既述のコンタクトホール21、隙間領域19及び開口部13の周囲における圧電薄膜15の露出面が開口するように、更には当該露出面に電極パターン17が形成されるように、前記フォトレジストマスク48に対してパターニングする。そして、このフォトレジストマスク48を介して絶縁膜34及び薄膜46に対してエッチングを行うと、図11及び図19に示すように、コンタクトホール21の形成される領域及び隙間領域19における圧電薄膜15が露出すると共に、電極パターン17が形成される。尚、図19では、ディスクレゾネータ31、31及び音叉型振動体11において、絶縁膜34及び薄膜46の残っている領域にハッチングを付している。
【0027】
続いて、フォトレジストマスク48を剥離した後、図12に示すように、コンタクトホール21の形成領域だけが開口するようにフォトレジストマスク49をベース基板1上に形成して、当該フォトレジストマスク49をマスクとして圧電薄膜15をエッチングする。次に、このフォトレジストマスク49を剥離して、図13に示すように、入出力ポート20、20の形成される領域だけが開口するようにフォトレジストマスク50を形成すると共に、このフォトレジストマスク50を介して絶縁膜34をエッチングする。そして、ベース基板1上に例えばアルニウムからなる導電膜51をスパッタなどにより形成すると、この導電膜51は、図14に示すように、コンタクトホール21の内部及びフォトレジストマスク50の上面を覆うように成膜される。
【0028】
その後、ベース基板1を例えば有機溶媒などに浸漬すると、図15に示すように、フォトレジストマスク50が当該有機溶媒に溶解して、このフォトレジストマスク50と共に当該フォトレジストマスク50上に形成された余分な導電膜51が除去される。この工程により、入出力ポート20、20が形成される。しかる後、例えば入出力ポート20、20及び窒化膜4を覆うように、且つ例えば開口部13の内部領域が露出するように、図示しないフォトレジストマスクをベース基板1上に形成し、この状態のベース基板1を例えばフッ酸水溶液中に浸漬する。このフッ酸水溶液は、例えば開口部13の内部領域を介して振動子の下層側の犠牲膜42に回り込んで当該犠牲膜42をエッチングする。従って、図16に示すように、音叉型振動体11の中央部(基部12、12以外)がベース基板1から離間すると共に、また既述の図3に示すように、ディスクレゾネータ31、31が全面に亘ってベース基板1から浮いた状態となる。そして、このエッチングにより、電極パターン17の上面及びディスクレゾネータ31、31の上面に残っていた絶縁膜34が除去される。
【0029】
続いて、例えば振動子の発振周波数を調整する場合には、例えばレーザー加工により、電極パターン17の一部を除去(トリム)する。具体的には、図示しないテーブル上にベース基板1を載置すると共に、レーザー光照射部(図示せず)から電極パターン17の電極膜18にレーザー光を照射して、当該電極膜18を溶解及び蒸発させる。次いで、別の電極膜18についても除去する場合には、テーブルに対してレーザー光照射部を相対的に移動させ、同様にレーザー光を照射する。この時、一方の振動腕部14及び他方の振動腕部14について、互いに左右対称となるように電極膜18を除去する。図20には、これら振動腕部14、14の各々の電極パターン17について、奥側から2番目の電極膜18、18と、奥側から6番目の電極膜18、18と、を除去した例を示している。こうして振動腕部14、14における電極パターン17、17が左右対称となっている状態を維持しながら電極膜18、18を除去することにより、これらディスクレゾネータ31、31の振動バランス(発振周波数)が保たれたまま、発振周波数が同じように変化する(高くなる)。
【0030】
ここで、ディスクレゾネータ31、31間を連結する部位が音叉型振動体11ではない場合、即ち音叉型振動体11に代えて例えば後述の図24の連結部90を用いた場合には、この連結部90上の電極膜18をトリミングしても、ディスクレゾネータ31、31の発振周波数は変化しない。一方、ディスクレゾネータ31、31と同様に発振する音叉型振動体11をこれらディスクレゾネータ31、31間に設けた場合には、この音叉型振動体11の電極膜18をトリミングすると、音叉型振動体11の発振周波数が変わると共に、ディスクレゾネータ31、31の発振周波数が変化する。このように音叉型振動体11の発振周波数の変化に伴ってディスクレゾネータ31、31の発振周波数についても変化することは、詳細については省略するが、振動腕部14、14の長さ寸法を種々変えて別途行ったシミュレーションによって確認している。
【0031】
こうして形成された振動子に対して入出力ポート20、20を介して例えば外部から電気信号を入力すると、ディスクレゾネータ31、31及び音叉型振動体11は、各々の共振周波数において発振(振動)して、この発振に基づく電気信号が入出力ポート20、20を介して取り出される。具体的には、例えばディスクレゾネータ31、31では、半径方向に膨張及び収縮する輪郭振動が周方向に亘って起こる。また、音叉型振動体11では、振動腕部14、14同士が互いに近接したり離れたりするように屈曲振動が起こる。
【0032】
この時、ディスクレゾネータ31、31では、圧電薄膜15の直径寸法などを揃えているため、互いに同相で前記輪郭振動が起こる。また、音叉型振動体11では、ディスクレゾネータ31、31と同じ周波数で屈曲振動が起こるように各寸法を調整し、更にディスクレゾネータ31、31の上面側の励振電極32に対して当該音叉型振動体11の上面の金属膜16を接続し、またディスクレゾネータ31、31の下面の励振電極32に対してこの音叉型振動体11の下面の金属膜16を接続している。そのため、音叉型振動体11では、これらディスクレゾネータ31、31とは逆相で屈曲振動が起こる。従って、振動腕部14、14は、図21に示すように、ディスクレゾネータ31、31が収縮する時には、互いに離間するように屈曲振動し、一方ディスクレゾネータ31、31が膨張する時は、図22に示すように、互いに近接するように屈曲振動する。こうして音叉型振動体11では、ディスクレゾネータ31、31の膨張収縮振動が吸収されるように、即ち各々のディスクレゾネータ31、31の中心位置が輪郭振動により位置ずれしないように、屈曲振動が発生する。尚、図21及び図22では、音叉型振動体11及びディスクレゾネータ31、31の振動の様子を誇張して描画している。
【0033】
ここで、図23に本発明の振動子の振動モードをシミュレーションにより解析した結果を示すと、ディスクレゾネータ31、31に加えて音叉型振動体11が振動(変形)することにより、各々のディスクレゾネータ31、31では、各々のディスクレゾネータ31、31の中央部に節(変形量が小さい領域)が形成されると共に、外周側に向かう程変形量が大きくなり、更に周方向に亘って均一な変形量となる理想的な振動モードとなっていた。従って、この構成では、音叉型振動体11を介してディスクレゾネータ31、31の弾性エネルギーの漏洩が起こっていないか、当該漏洩が抑えられていることが分かる。
【0034】
一方、ディスクレゾネータ31、31間に音叉型振動体11に代えて例えば矩形の連結部90を設けた場合には、図24に示すように、ディスクレゾネータ31、31では、概略中央部に節が形成されるものの、変形量が半径方向及び周方向に亘って不均一となっていた。従って、図24では連結部90を介してディスクレゾネータ31、31のエネルギーが漏洩し、図23の場合よりもQ値が劣化していることが分かる。
【0035】
以上説明した本発明の振動子を発振回路に組み込んだ電子部品(発振器)の電気回路の一例について、図25を参照して簡単に説明する。図25は、互いに直列に接続された2つのコンデンサC、Cとトランジスタ101とからなるコルピッツ回路を設けた例を示しており、トランジスタ101のベース端子には、本発明の振動子100と可変コンデンサC1とからなる直列回路が接続されている。これらベース端子と振動子100との間の接続点には、電源部102が接続されており、トランジスタ101のコレクタ端子には、電気信号を取り出すための出力ポート103が接続されている。図25中104は抵抗、105はインダクタンスである。
【0036】
上述の実施の形態によれば、互いに同相で輪郭振動を起こすディスクレゾネータ31、13の間に音叉型振動体11を介在させ、この音叉型振動体11の振動腕部14、14の夫々にディスクレゾネータ31、31を接続している。そして、音叉型振動体11について、ディスクレゾネータ31、31の膨張収縮を吸収するように、これらディスクレゾネータ31、31に対して逆相で振動するようにしている。そのため、各々のディスクレゾネータ31、31における振動が阻害されることを抑制できるので、即ちディスクレゾネータ31、31の弾性エネルギーが音叉型振動体11を介して漏洩することを抑えることができるので、電気的特性の劣化を抑えることができる。
【0037】
このように、本発明では、2つのディスクレゾネータ31、31を連結すると共にベース基板1に支持される役割を持つ連結部について、この役割に加えて、ディスクレゾネータ31、31と逆相で振動する振動体としての役割を持たせている。一方、従来では、連結部について、振動体としての機能に着目していなかったので、当該連結部の形状や寸法などについて検討されていなかった。即ち、既述の背景の項で述べた特許文献1のような構成であれば、連結部はディスクレゾネータよりも極めて寸法が小さいため、当該連結部が振動していたとしても、ディスクレゾネータの発振周波数よりも極めて高い周波数であり、そのためディスクレゾネータから見れば振動していない状態となっていると言える。
【0038】
これに対して本発明では、以上説明したように、ディスクレゾネータ31、31間の連結部について、これらディスクレゾネータ31、31の逆相で振動するように音叉型振動体11として構成している。この時、屈曲振動は、既述の輪郭振動と比べて、振動体(音叉型振動体11やディスクレゾネータ31)が同じ寸法であっても発振周波数が低くなる。言い換えると、音叉型振動体11をディスクレゾネータ31と同じ周波数で発振させる時には、音叉型振動体11は、ディスクレゾネータ31よりも寸法が小さくて済む。そのため、音叉型振動体11について、ディスクレゾネータ31、31と同じ周波数で且つ逆相で発振させる時に、ディスクレゾネータ31と同程度まで寸法を大きくする必要がないので、振動子の寸法を抑えながら、電気的特性の劣化を抑えることができる。
【0039】
また、各々の振動腕部14、14に電極パターン17を形成しているので、ディスクレゾネータ31、31に対して加工しなくても、この電極パターン17を介して振動子の発振周波数を調整できる。この時、電極パターン17を振動腕部14、14間で左右対称に形成しており、また左右対称にトリミングしているので、ディスクレゾネータ31、31間における振動バランスを揃えた状態で発振周波数を調整できる。更に、互いに隣接する電極膜18、18同士を離間させていることから、レーザー加工を行う時の加工位置や加工量(例えば既述のテーブルに対するレーザー光照射部の相対的な移動距離やレーザー光の照射時間)などがばらつく場合であっても、ある電極膜18にレーザー光を照射する時、他の電極膜18にレーザー光が照射されることを防止できる。従って、電極膜18のトリミングを行った時に、ディスクレゾネータ31、31間における発振周波数のばらつきを抑えることができるので、Q値の劣化を防止できる。また、電極パターン17について、金属膜16とは別個に(電気的に絶縁させて)設けているので、この電極パターン17を除去しても、ディスクレゾネータ31や音叉型振動体11の例えば電気抵抗が増大するなどといった悪影響は及ぼさない。
また、振動腕部14、14の両側に基部12、12を設けているので、振動腕部14、14が振動するにあたって当該振動腕部14、14をベース基板1に対して強固に保持できる。
【0040】
既述の例では、各々の電極膜18が互いに同じ寸法となるように形成したが、例えば図26に示すように、各々の電極パターン17、17において、互いに異なる寸法の電極膜18を配置しても良い。図26では、奥側から手前側に向かって各々の電極膜18の直径寸法が例えば2μm〜10μmまでに亘って徐々に小さくなるように形成した例を示している。このように互いの寸法の異なる電極膜18を設けることにより、例えば除去する電極膜18毎にディスクレゾネータ31の発振周波数の調整幅を変えることができるので、周波数の調整をより一層簡便に行うことができる。この例においても、左右の電極パターン17、17は、互いに左右対称となるように形成されている。
【0041】
電極パターン17、17については、振動腕部14、14間で左右対称となるように配置したが、左右非対称に形成しても良い。この場合であっても、電極膜18を除去する時は、左右のディスクレゾネータ31、31間で発振周波数が揃うように調整される。
【0042】
また、音叉型振動体11としては、ディスクレゾネータ31、31と逆相で発振する構成であれば良く、例えば図27に示すように、開口部13を概略楕円形状に形成して、振動腕部14、14が基部12、12側から中央側(支持部33)に向かって徐々に細くなるようにしても良い。更に、図28に示すように、開口部13を概略円状に形成すると共に、振動腕部14、14についてはこの開口部13の周縁に沿うように概略円弧状に形成しても良い。更に、図29に示すように、例えば手前側の基部12を設けずに、振動腕部14、14が奥側の基部12によって各々いわば片持ちで支持される構成を採っても良い。この場合には、奥側の基部12には、例えば左側にコンタクトホール21が形成されると共に、このコンタクトホール21に設けられる入出力ポート20に対して隙間領域を介して右側に隣接するように、音叉型振動体11の上面から伸びる金属膜16に接続される入出力ポート20が配置される。尚、図27及び図28は振動子を簡略化して描画している。
【0043】
更に、ディスクレゾネータ31、31を連結する音叉型振動体11に代えて、ディスクレゾネータ110を設けても良い。図30及び図31は、このような例を示しており、両側のディスクレゾネータ31、31に対して中央のディスクレゾネータ110を逆相で且つ同じ周波数で発振させるように構成されている。具体的には、これら3つのディスクレゾネータ31、31、110は、互いの直径寸法などが揃うように形成されている。また、ディスクレゾネータ110の上面及び下面における中央部には、当該ディスクレゾネータ110を発振させるための概略円形の励振電極(金属膜16)が各々形成されている。そして、ディスクレゾネータ110の上面における外縁部には、左右のディスクレゾネータ31、31の上面の励振電極32、32に各々接続される円弧状の引き回し電極111が前記金属膜16から離間するように形成されている。前記金属膜16及び引き回し電極111は、ディスクレゾネータ110の手前側及び奥側に夫々形成された電極引き出し部113、113に夫々接続されている。
【0044】
そして、ディスクレゾネータ110の下面における周縁部には、左右のディスクレゾネータ31、31の下面側の励振電極32、32に各々接続されると共に当該下面の金属膜16から離間して配置される円弧状の引き回し電極112が形成されている。これら金属膜16及び引き回し電極112は、前記電極引き出し部113、113に夫々接続されている。こうしてディスクレゾネータ110の上面側の金属膜16及び引き回し電極111と、ディスクレゾネータ110の裏面側の金属膜16及び引き回し電極112とは、夫々既述の図1と同様に配線され、ディスクレゾネータ31、31の膨張縮退振動に対してディスクレゾネータ110が逆相で振動するように構成されている。ディスクレゾネータ110における金属膜16、16は、各々入出力ポート20、20をなしている。
【0045】
また、ディスクレゾネータ110は、当該ディスクレゾネータ110の下面中央部の輪郭振動の節となる位置において、ベース基板1によって支持されると共に、既述の引き出し部113を介して電気信号の入出力が行われる。
この例において、ディスクレゾネータ110は、円形状であることに代えて、三角形あるいは四角形などであっても良い。また、左右のディスクレゾネータ31、31についても、同様に三角形や四角形などであっても良い。
【0046】
以上の例では、電極パターン17を形成するにあたり、ディスクレゾネータ31、31及び音叉型振動体11における上面側の金属膜16及び励振電極32を形成する工程(薄膜46の形成工程)を利用したが、その後の入出力ポート20、20を形成する工程(導電膜51の形成工程)において、電極パターン17の形成領域の周囲が開口するようにフォトレジストマスク50をパターニングすることにより、電極パターン17をアルミニウムにより構成しても良い。また、一連の工程が終了した後、電極パターン17用のフォトレジストマスクを用いて当該電極パターン17を個別に形成しても良い。
【0047】
また、音叉型振動体11において、当該音叉型振動体11を振動させるための励振電極と、ディスクレゾネータ31、31の励振電極32と入出力ポート20とを接続する引き出し電極について、金属膜16として共通化したが、これら励振電極と引き出し電極とを別個に配置しても良い。この場合には、振動腕部14、14の上下面に励振電極を形成すると共に、例えば側面側などに引き出し電極を形成しても良い。
以上の例では、本発明の振動子を発振回路に組み込んだ例について説明したが、この振動子をフィルタ(電子部品)として用いても良い。この場合には、入出力ポート20に入力された電気信号は、振動子において不要な電気信号が除去された後、入出力ポート20から取り出される。
【0048】
ここで、以上述べた本発明と既述の背景で説明した公知例である特開2008−124747との差異について改めて説明する。この公知例では、この振動は、「中心を節とするラジアルエクステンションモード(Radial Extensionモード)」になると記載されている。しかしながら、本発明者らは、「概略箱型の連結部」により連結し支持した場合、既述の図24から分かるように、「外周部に複数個所の節が生じる理想的ではない高次の振動モード」となることを数値解析により見出した。この振動モードでは、振動漏れ等により電気的特性の劣化が起こることになる。これに対し、本実施形態では、図23に記載のように、支持部に振動腕部を形成することで「支持部による影響」を無くし、従来の構成では実現できなかった「振動板の中心を節として半径方向に振動板が伸縮する、理想的な振動」を周方向に亘って形成することを可能にしているのである。
【符号の説明】
【0049】
1 ベース基板
11 音叉型振動体
14 振動腕部
15 圧電薄膜
16 金属膜
17 電極パターン
18 電極膜
20 入出力ポート
31 ディスクレゾネータ
32 励振電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
このベース基板に支持された基部、この基部から互いに離間して伸び出すと共に各々圧電体により構成された2本の振動腕部及びこれら振動腕部の各々を挟むように形成された一対の励振電極を有する音叉型振動体と、
前記一対の振動腕部のうち一方の振動腕部に外縁部が接続された圧電薄膜及びこの圧電薄膜を板厚方向から挟むように形成された一対の励振電極を有し、前記圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が起こるように構成された第1の振動体と、
前記一対の振動腕部のうち他方の振動腕部に外縁部が接続された圧電薄膜及びこの圧電薄膜を板厚方向から挟むように形成された一対の励振電極を有し、前記第1の振動体と同相で前記輪郭振動が起こるように構成された第2の振動体と、
前記一方の振動腕部に形成され、前記第1の振動体の前記励振電極に接続された第1の引き出し電極と、
前記他方の振動腕部に形成され、前記第2の振動体の前記励振電極に接続された第2の引き出し電極と、
前記基部に形成され、前記第1の引き出し電極、前記第2の引き出し電極及び前記振動腕部の励振電極の夫々に対して電気信号の入出力を行うための入出力ポートと、を備え、
前記音叉型振動体は、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の輪郭振動を吸収するように、これら第1の振動体及び第2の振動体の振動に対して逆相で屈曲振動するように構成されていることを特徴とする振動子。
【請求項2】
前記一方の振動腕部及び前記他方の振動腕部には、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の発振周波数を夫々調整するための電極パターンが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動子。
【請求項3】
前記電極パターンの各々は、複数の電極膜が互いに隙間領域を介して形成されたものであることを特徴とする請求項2に記載の振動子。
【請求項4】
前記一方の振動腕部における前記電極パターン及び前記他方の振動腕部における前記電極パターンは、前記一方の振動腕部と前記他方の振動腕部との間のラインを介して互いに対称に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の振動子。
【請求項5】
前記一方の振動腕部における前記励振電極及び前記他方の振動腕部における前記励振電極は、前記第1の引き出し電極及び前記第2の引き出し電極を夫々兼用していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の振動子。
【請求項6】
前記基部は、前記振動腕部の一方側及び他方側に各々形成されると共に、各々前記ベース基板に支持され、
前記入出力ポートは、前記基部の各々に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の振動子。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載の振動子を備えたことを特徴とする電子部品。
【請求項8】
ベース基板上に、当該ベース基板に支持される基部、この基部から互いに離間して伸び出すと共に各々圧電体により構成された2本の振動腕部及びこれら振動腕部の各々を挟むように形成された一対の励振電極を有する音叉型振動体を形成する工程と、
前記一対の振動腕部のうち一方の振動腕部に、圧電薄膜の外縁部を接続すると共に、この圧電薄膜を板厚方向から挟むように一対の励振電極を形成して、前記圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が起こるように第1の振動体を構成する工程と、
前記一対の振動腕部のうち他方の振動腕部に、圧電薄膜の外縁部を接続すると共に、この圧電薄膜を板厚方向から挟むように一対の励振電極を形成して、前記第1の振動体と同相で前記輪郭振動が起こるように第1の振動体を構成する工程と、
前記一方の振動腕部に、前記第1の振動体の前記励振電極に接続される第1の引き出し電極を形成する工程と、
前記他方の振動腕部に、前記第2の振動体の前記励振電極に接続される第2の引き出し電極を形成する工程と、
前記基部に、前記第1の引き出し電極、前記第2の引き出し電極及び前記振動腕部の励振電極の夫々に対して電気信号の入出力を行うための入出力ポートを形成する工程と、
前記一方の振動腕部及び前記他方の振動腕部に、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の発振周波数を夫々調整するための電極パターンを形成する工程と、を含み、
前記音叉型振動体は、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の輪郭振動を吸収するように、これら第1の振動体及び第2の振動体の振動に対して逆相で屈曲振動するように構成されていることを特徴とする振動子の製造方法。
【請求項9】
前記電極パターンを形成する工程の後に、前記一方の振動腕部における前記電極パターン及び前記他方の振動腕部における前記電極パターンについて、前記一方の振動腕部と前記他方の振動腕部との間のラインを介して互いに対称となるように、これら電極パターンを除去して、前記第1の振動体及び前記第2の振動体における発振周波数を揃えながらこれら発振周波数の各々を調整する工程と、を行うことを特徴とする請求項8に記載の振動子の製造方法。
【請求項1】
ベース基板と、
このベース基板に支持された基部、この基部から互いに離間して伸び出すと共に各々圧電体により構成された2本の振動腕部及びこれら振動腕部の各々を挟むように形成された一対の励振電極を有する音叉型振動体と、
前記一対の振動腕部のうち一方の振動腕部に外縁部が接続された圧電薄膜及びこの圧電薄膜を板厚方向から挟むように形成された一対の励振電極を有し、前記圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が起こるように構成された第1の振動体と、
前記一対の振動腕部のうち他方の振動腕部に外縁部が接続された圧電薄膜及びこの圧電薄膜を板厚方向から挟むように形成された一対の励振電極を有し、前記第1の振動体と同相で前記輪郭振動が起こるように構成された第2の振動体と、
前記一方の振動腕部に形成され、前記第1の振動体の前記励振電極に接続された第1の引き出し電極と、
前記他方の振動腕部に形成され、前記第2の振動体の前記励振電極に接続された第2の引き出し電極と、
前記基部に形成され、前記第1の引き出し電極、前記第2の引き出し電極及び前記振動腕部の励振電極の夫々に対して電気信号の入出力を行うための入出力ポートと、を備え、
前記音叉型振動体は、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の輪郭振動を吸収するように、これら第1の振動体及び第2の振動体の振動に対して逆相で屈曲振動するように構成されていることを特徴とする振動子。
【請求項2】
前記一方の振動腕部及び前記他方の振動腕部には、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の発振周波数を夫々調整するための電極パターンが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動子。
【請求項3】
前記電極パターンの各々は、複数の電極膜が互いに隙間領域を介して形成されたものであることを特徴とする請求項2に記載の振動子。
【請求項4】
前記一方の振動腕部における前記電極パターン及び前記他方の振動腕部における前記電極パターンは、前記一方の振動腕部と前記他方の振動腕部との間のラインを介して互いに対称に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の振動子。
【請求項5】
前記一方の振動腕部における前記励振電極及び前記他方の振動腕部における前記励振電極は、前記第1の引き出し電極及び前記第2の引き出し電極を夫々兼用していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の振動子。
【請求項6】
前記基部は、前記振動腕部の一方側及び他方側に各々形成されると共に、各々前記ベース基板に支持され、
前記入出力ポートは、前記基部の各々に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の振動子。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載の振動子を備えたことを特徴とする電子部品。
【請求項8】
ベース基板上に、当該ベース基板に支持される基部、この基部から互いに離間して伸び出すと共に各々圧電体により構成された2本の振動腕部及びこれら振動腕部の各々を挟むように形成された一対の励振電極を有する音叉型振動体を形成する工程と、
前記一対の振動腕部のうち一方の振動腕部に、圧電薄膜の外縁部を接続すると共に、この圧電薄膜を板厚方向から挟むように一対の励振電極を形成して、前記圧電薄膜の中心部と外縁部との間で膨張収縮する輪郭振動が起こるように第1の振動体を構成する工程と、
前記一対の振動腕部のうち他方の振動腕部に、圧電薄膜の外縁部を接続すると共に、この圧電薄膜を板厚方向から挟むように一対の励振電極を形成して、前記第1の振動体と同相で前記輪郭振動が起こるように第1の振動体を構成する工程と、
前記一方の振動腕部に、前記第1の振動体の前記励振電極に接続される第1の引き出し電極を形成する工程と、
前記他方の振動腕部に、前記第2の振動体の前記励振電極に接続される第2の引き出し電極を形成する工程と、
前記基部に、前記第1の引き出し電極、前記第2の引き出し電極及び前記振動腕部の励振電極の夫々に対して電気信号の入出力を行うための入出力ポートを形成する工程と、
前記一方の振動腕部及び前記他方の振動腕部に、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の発振周波数を夫々調整するための電極パターンを形成する工程と、を含み、
前記音叉型振動体は、前記第1の振動体及び前記第2の振動体の輪郭振動を吸収するように、これら第1の振動体及び第2の振動体の振動に対して逆相で屈曲振動するように構成されていることを特徴とする振動子の製造方法。
【請求項9】
前記電極パターンを形成する工程の後に、前記一方の振動腕部における前記電極パターン及び前記他方の振動腕部における前記電極パターンについて、前記一方の振動腕部と前記他方の振動腕部との間のラインを介して互いに対称となるように、これら電極パターンを除去して、前記第1の振動体及び前記第2の振動体における発振周波数を揃えながらこれら発振周波数の各々を調整する工程と、を行うことを特徴とする請求項8に記載の振動子の製造方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図23】
【図24】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−70367(P2013−70367A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193730(P2012−193730)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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