説明

振動機に油圧流体を供給する油圧ユニットのためのサーボ制御システム

【課題】振動機のエネルギー消費を抑制する。
【解決手段】油圧システム7のためのサーボ制御システムは,油圧流体を受ける少なくとも一つの油圧モータによって回転駆動される偏心ウエイトを含む振動機1又は振動システムに,前記流体を供給する,モータ9により駆動されるポンプ8を含む。振動機1により実際に消費されているエネルギーに関連する,油圧ユニット7のモータ9の回転速度の連続的な適応のための適応手段をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,杭,木材ライニング(timber lining)などの対象を地中に打ち込むために使用されるタイプの振動機に,又さらには,本出願人により登録された,例えば商標「Vibrolance」で示されるタイプのスピンドル形状の振動システムに油圧流体を供給するための油圧ユニット用のサーボ制御システムに関する。
【0002】
より厳密には,「Vibrolance」は,振動締固め(vibro-compaction)又は砕石充填(ballast filling)といった地盤改良法に使用されるスピンドル形状の振動機である。これは,1500〜3200rpm程度の速度で回転するカウンターウエイトを含み,その回転軸に直交する平面内で力を得る。
【背景技術】
【0003】
一般に,このタイプの用途向けには,ケーシングの内部に回転可能に取り付けられ,同じ速度ではあるが反対方向に回転する,一又は複数の対の偏心ウエイト(カウンターウエイト)を含む振動機が使用されることが多く,結果として正弦波強度を有する垂直力から成る合力(互いに打ち消しあう力の水平成分)を達成することが既知である。
【0004】
通常,偏心ウエイトは,例えばケーシングに取り付けられた油圧モータによって,1200〜3000rpm程度の速度で回転駆動される。
【0005】
この回転による振動で生成される振幅は,偏心モーメント,振動数(回転速度)及びシステムの合計重量(振動機/マウント/打ち込まれる対象)に関連する。
【0006】
振動機のモーメントは固定又は可変にすることができる。後者の場合,振動機は少なくとも二組の偏心ウエイトを含み,各組は,反対方向に回転する少なくとも一対の偏心ウエイトを含み,一方で二組の偏心ウエイトは,移相器を介して互いに結合される。二つの組を移相させることにより,振動振幅を,ゼロ振幅(位相外)と最大振幅(位相内)との間で変動させることが可能である。
【0007】
あらゆる場合において,油圧モータは油圧エネルギーを受け,それを機械的回転エネルギーに変換する。油圧ユニットは,油圧ホースを介して,振動機モータに油圧エネルギーを供給する。この油圧ユニットは,該油圧ポンプを回転駆動させるモータ(通常は熱機関)を含む。
【0008】
振動機によって吸収される油圧動力は極めて可変的である。打ち込まれる対象の挿入深さ,及び関係する地盤の地質特性(土壌タイプ)に特に依存する。
【0009】
通常,恒久的な電力蓄積(power reserve)を有するように,油圧ユニットのモータを全速で動作させる。これによって燃料の大量消費の増大が生じ,空気への及び騒音の公害も増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は特に,これらの短所を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって,振動機によって実際に消費されたエネルギーに関連して,油圧モータの回転速度の連続的な適応を可能にする手段を含むサーボ制御システムが提案される。
【0012】
利点として,油圧ユニットモータは,その負荷率を測定する装置を含んでもよく,負荷量に関連して,モータの回転速度の連続的な調節を確実にするための手段が備えられる。
【0013】
さらに,モータ速度の変動による流量変動を弱めるために,可変容量型ポンプを使用することができる。このシステムはまた,このポンプの容量を連続的に調節するための手段を含み,所要の流量(設定量)を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
添付図面を参照して,本発明の一つの実施形態が,非限定的な例によって以下に記載される。
【0015】
図1に図示されている例では,従来型の振動機1が概略的に示され,懸架マウント3を介して,昇降装置のフック2から吊り下がっている。この振動機は,木材ライニング4を打ち込むために使用される。振動機1のケーシングと木材ライニング4との間の連結は,油圧クランプ5を介して確実にされる。
【0016】
振動機1の偏心ウエイトは,ポンプ8の容量の連続的な調節を可能にするアクチュエータによって制御される可変流量油圧ポンプと,ポンプ8を回転駆動するモータ9とを使用して,油圧ユニット7によって供給される加圧された油圧流体の供給を受ける少なくとも一つの油圧モータ6によって回転駆動される。ポンプ8と,振動機1の油圧モータ6との間の連結は,二本の可撓性の導管,すなわち高圧供給導管10及び低圧タンク戻り導管11を介して得られる。
【0017】
ここでは,モータ9は,エンジン負荷率(すなわち,使用された動力/利用可能な動力の割合)を測定するための装置が装備された熱機関で構成されている。これには,その回転速度のサーボ制御も装備されていることが必要である。
【0018】
振動機1及び油圧ユニットに関連する制御/指令回路は:
− 振動数を調節するためのボタン13(又は類似物)を含む制御ボックス12(マン/マシンインタフェース)と,
− 熱機関9(双方向リンク15)と,油圧ポンプ8(容量の変動を制御)と,振動機1のケーシングに取り付けられた振動数センサ16とに,電気的に接続された中央計算機14とを使用する。双方向リンク15によって,計算器が,モータ9の回転速度を制御することが可能になり,モータ9が,計算器14にその負荷率についての情報を送ることが可能になる。
【0019】
油圧ユニット7/振動機アセンブリ1のブロック図が,図2に概略的に示される。
【0020】
このアセンブリは,以下の構成から成る二重の制御の対象となる,
第1のサーボ制御ループBは,振動数センサ16によって測定される振動数と,ボタン13上に表示される設定振動数Cとの間の差分を測定するために使用される減算器21を含む第1のサーボ制御ループBであって,減算器21によって送出された差分信号(誤差)が,ポンプ容量を調節するアクチュエータ23(流速アクチュエータ)に適用されるポンプ容量制御信号(流量)を生成する振動数補正器22に伝送され,
第2のサーボ制御ループBは,モータ9に取り付けられた負荷率インジケータITによって測定された,モータ9の負荷率の瞬間値と,設定負荷率Cとの間の差分を測定するために使用される減算器24を含み,前記減算器24によって送出された差分信号(誤差)は,モータ速度制御信号を生成し,この信号をモータ速度アクチュエータ(動力部26)に適用する負荷率補正器25に伝送される第2のサーボ制御ループBとを含む二重のサーボ制御の対象となる。この例では,負荷率補正器25は,振動数補正器27によって与えられる最大容量制御に関する情報を受ける。
【0021】
したがって,前記サーボ制御システムの原理は以下の通りである:
○ まずオペレータは,制御ボックス12の専用ボタン13を使用して,設定振動数を画定する;
○ 振動数センサ16は,振動機1の実際の振動数を連続的に測定する;
○ 計算器14は,所望の振動数(設定振動数C1)と,振動数センサ16によって与えられる測定された振動数との間の差分を比較し,それに応じてポンプ8の流量の補正を(その容量を変動させることにより)制御する;
○ 同時に,計算器14は,設定負荷率Cを,モータ9の測定された負荷率と比較する。計算器14は,それに応じて,熱機関9の回転速度を補正する。(測定された負荷率が設定負荷率Cより低い場合,及びポンプ容量の制御がその最大値にない場合,計算器14は,例えばスロットル制御動作によって,モータ9の減速を起動させる。測定された負荷率が設定負荷率Cよりも高い場合,計算器14は,モータ9の加速を起動させる)。設定負荷率Cが高いほど(100%近く),燃料節約はより良好になる。反対に,設定負荷率Cが低いと,モータ9は全速で作動することになる。この設定負荷率Cは,任意には,調節部材,例えばケーシング12上の調節ボタン28を使用して,ユーザが調節してもよい。それでもなお,この設定負荷率を固定にして,ユーザによる変更を不可能にしてもよい。
【0022】
つまり,本解決策は,二つの別個のパラメータ(振動数及び熱機関の負荷率のそれぞれ)に関連する一つの同じプロセスについて,同時に二つのアクチュエータ(ポンプ流量及び熱機関の回転速度)をサーボ制御することからなる。
【0023】
一方のサーボ制御に対して作用が働くと,他方が補償を実行しなくてはならないのは,各制御が同一のプロセスに作用するためである。
【0024】
当然のことながら,本発明は,前記条件に限定されない。例えば,振動数センサを,ポンプ8と振動機1との間に配置された油圧流量センサに置き換えても良い。振動数は流量に関連するので,結果は実質的に同じである。
【0025】
同様に,センサ(振動数センサ16又は流量用)を省略して,ポンプ容量と,熱機関の回転数との制御に基づき流量の理論的計算を行う手段に置き換えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】油圧流体供給回路を備える振動機及びその制御/指令回路の概略図。
【図2】図1に図示される制御/指令回路中で使用される二重サーボ制御システムのブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧流体を受ける少なくとも一つの油圧モータによって回転駆動される偏心ウエイトを含む振動機(1)又は振動システムに前記流体を供給するモータ(9)によって駆動されるポンプ(8)を含む油圧ユニット(7)のためのサーボ制御システムであって,
前記振動機(1)により実際に消費されているエネルギーに関連する,前記油圧ユニット(7)の前記モータ(9)の回転速度の連続的な適応のための適応手段を含むことを特徴とするサーボ制御システム。
【請求項2】
前記油圧ユニット(7)が,容量の変動による可変流量ポンプ(8)を含み,設定流量に等しい流量を得るために,前記ポンプ(8)の容量の連続的な調節を確実にするための手段を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記油圧ユニットのモータが,その負荷率を測定するための装置を含み,前記負荷率に関連して前記モータの回転速度の連続的な調節を確実にする手段を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のシステム。
【請求項4】
前記振動機(1)が振動数センサ(16)を備え,前記油圧ユニット(7)の前記モータ(9)が,その負荷率を測定するための装置を備えた熱機関であり,前記適応手段が;
− 前記振動数センサ(16)によって測定された振動数と,設定振動数値(C)との間の第1の差分を測定するために使用される減算器(21)と,前記第1の差分に関連して,前記ポンプ(8)の容量調節手段に流量制御信号を適用する振動数補正器(22)とを含む第1のサーボ制御ループ(B)と;
− 前記負荷率測定装置によって測定された,前記モータ(9)の負荷率の瞬間値と,設定負荷率値(C)との間の第2の差分を測定するために使用される減算器(24)と,前記第2の差分に関連して,モータ速度アクチュエータに制御信号を適用する負荷率補正器(25)とを含む第2のサーボ制御ループ(B)と
を含むサーボ制御手段を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記負荷率補正器(25)が,前記振動数補正器(22)から最大容量制御信号を受信することを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記振動数センサ(16)が,前記ポンプと前記振動機との間に配置された油圧流量センサに置き換えられることを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項7】
前記設定負荷率(C)が,ユーザによって調節可能であることを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項8】
前記設定負荷率(C)が固定であることを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項9】
前記設定振動数値が,ユーザによって調節可能であることを特徴とする請求項4〜8いずれか1項記載のシステム。
【請求項10】
前記振動機が,固定又は可変モーメントを有することを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
前記振動システムが,スピンドル形状を有することを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載のシステム。
【請求項12】
前記測定された負荷率が前記設定負荷率(C)よりも低い場合で,ポンプ容量制御がその最大値にない場合,サーボ制御手段(14)が前記モータの減速を開始させ,前記測定された負荷率が前記設定負荷率(C)よりも高い場合,前記サーボ制御手段が前記モータの加速を起動させることを特徴とする請求項5記載のシステム。
【請求項13】
前記振動数センサ(16)が省略され,前記ポンプの容量及び前記熱機関の回転速度の制御に基づき流量の理論的計算を行う手段に置き換えられることを特徴とする請求項4記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−64419(P2009−64419A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−171429(P2008−171429)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(508196852)
【Fターム(参考)】