説明

振動片、振動子、発振器、電子機器

【課題】二次モードを抑制した振動片を実現する。
【解決手段】振動片10は、基部11と、基部11の基端部11aから延在された振動腕12,13と、振動腕12,13の第1主面10aと第2主面10bに、基端部11aから振動腕長さLaの約50%の範囲内に設けられる励振電極30,31,40,41と、励振電極30,31,40,41に接続され、かつ振動腕12,13の先端部に設けられた容量部32a,32b,42a,42bと、を有する。このことによって、二次モードのインピーダンスを増加させ、並列容量Cdを容量部32a,32b,42a,42bがない場合よりも大きくすることにより、二次モードの電気機械結合係数K2には影響を与えずに、一次モードのインピーダンスが高くなりすぎることを抑制し、安定した一次モードの励振を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動片と、この振動片を有する振動子、発振器、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
音叉形振動子において、基本振動モードとして、屈曲一次モードを利用するもの、屈曲
二次モードを利用するもの、さらに高次モードを利用するものがある。特に屈曲二次モー
ドにおいて十分な励振を行えるようするために、2本の振動腕寄りの主面上で隣接する逆
極性の励振電極の境界を振動腕長手方向に対して斜めに形成し、かつ振動腕基部の主面上
の各励振電極間に補助電極を設け、有効な励振電極長を長くした振動子が知られている(
例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−218024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1では、有効な励振電極長を長くしてCI値(インピーダンス)を
低減することによって、屈曲二次モードの励振効率を高めることが可能となる。しかし、
屈曲一次モードを基本モードとする場合においては、例えば、屈曲二次モードのCI値が
低いと、同じ二次モードでスプリアス発振を起こすことがあり、スプリアスとしての屈曲
二次モードは抑制されなければならないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る振動片は、基部と、前記基部の基端部から第1方向に延在
されている振動腕と、前記振動腕の主面に設けられている励振電極と、を有し、前記励振
電極は、前記基端部から前記振動腕の前記第1方向の長さの50%までの範囲内に設けら
れ、前記励振電極には、容量部が接続されることを有することを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、励振電極を、基端部から振動腕の長さの約50%の範囲内に設ける
ことにより、振動の一次モードの等価直列容量よりも二次モードにおける等価直列容量を
小さくすることができる。その結果、二次モードのインピーダンスを高くすること、二次
モードの電気機械結合係数K2を小さくすることで、二次モードの励振強度を抑制するこ
とができる。
【0008】
二次モードにおける等価直列容量を小さくすると、一次モードのインピーダンスが高く
なり、一次モードの励振強度が低下する。インピーダンスは、等価回路における並列容量
の逆数に比例する。よって、励振電極に接続される容量部を設けることにより、等価回路
における並列容量を増加させ、二次モードの電気機械結合係数K2には影響を与えずに、
一次モードのインピーダンスが高くなりすぎることを抑制し、安定した一次モードの励振
強度を実現できる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る振動片において、前記振動腕の前記第1方向の長さLa
に対する前記基端部から前記励振電極の前記基端部と反対側の端部までの長さLbの比L
b/Laが、0.34≦Lb/La≦0.46の範囲にあること、が好ましい。
【0010】
振動腕長さLaと励振電極長さLbの比を、0.34≦Lb/La≦0.46とするこ
とで、二次モードの等価直列容量を一次モードの等価直列容量に対して5%以下にするこ
とができ、一次モードに対して、二次モードの励振をさらに抑制することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る振動片において、前記振動腕の前記第1方向の長さLa
に対する前記基端部から前記励振電極の前記基端部と反対側の端部までの長さLbの比L
b/Laが、0.38≦Lb/La≦0.42の範囲にあること、
前記振動腕の長さLaに対する、前記基端部からの前記励振電極の長さLbの比Lb/L
aが、0.38≦Lb/La≦0.42の範囲にあることが、より一層好ましい。
【0012】
振動腕長さLaと励振電極の長さLbの比を、0.38≦Lb/La≦0.42とする
ことで、二次モードの等価直列容量を一次モードの等価直列容量に対して1%以下にする
ことができ、一次モードに対して、二次モードの励振をほぼ除去することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る振動片は、前記容量部は、前記励振電極の前記基端部と
反対側の端部から前記振動腕の先端までの領域の少なくとも一部に設けられている、こと
が好ましい。
【0014】
容量部の配置は、振動腕の振動に影響を与えない位置であれば特に限定されず、振動腕
の先端部や基部に設けることが可能である。そこで、容量部を振動腕の先端部に設ければ
、容量部を共振周波数の調整や、質量バランスをとるためのトリミング電極として用いる
ことができるという効果を有する。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る振動片において、前記励振電極は、前記振動腕の側面に
設けられた側面電極を含み、前記容量部と前記側面電極との間で浮遊容量が生じているこ
とが好ましい。
【0016】
前述したように、等価回路における並列容量を増加させることで安定した一次モードの
励振強度を実現できる。そこで、容量部と側面電極との間に生ずる浮遊容量によって、並
列容量を増加させることが可能であって、詳しくは実施の形態で説明するが、容量部と側
面電極との距離、並行する長さによって浮遊容量を適切な大きさに決定することができる

【0017】
[適用例6]本適用例に係る振動子は、上記適用例のいずれかに記載の振動片と、前記
振動片が格納されたパッケージと、を有することを特徴とする。
【0018】
振動片は、例えば、セラミック等で形成されたパッケージ内に実装される。パッケージ
内は真空状態にあることが好ましく、真空環境で振動片が振動することで、より一層安定
した振動を長期間にわたって維持することができる。
また、振動片がパッケージに収納されることで、扱いやすいうえ、湿度など外部環境か
ら振動片を保護することができる。
【0019】
[適用例7]本適用例に係る発振器は、上記適用例のいずれかに記載の振動片と、前記
振動片と接続された発振回路と、を有することを特徴とする。
【0020】
このようにすれば、スプリアスである二次モードの励振を抑制しつつ発振器の小型化を
実現できる。
【0021】
[適用例8]本適用例に係る電子機器は、上記適用例のいずれかに記載の振動片を有す
る、ことを特徴とする。
【0022】
上記の振動片を用いることにより、二次モードの励振を抑制できることから、基本モー
ドである一次モードの安定化を実現できる。従って、タイミングデバイス等として、デジ
タル携帯電話、パーソナルコンピューター、電子時計、ビデオレコーダー、テレビなどの
電子機器に広く用いることができる。そして、振動片をパッケージ化した振動子や、発振
器も安定した正確な振動が可能であり、搭載される電子機器の品質向上に貢献することが
できる。
【0023】
なお、上述した振動片10はZ板を例示しているが、温度変化に対する共振周波数の変
化が少なくなるように、各軸、特にX軸の周りに基板を回転させたものなどでも、振動腕
長さLaに対する励振電極長さLbの比を上述した範囲に設定することで同様な効果が得
られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】振動片を模式的に表し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図。
【図2】振動片の等価回路。
【図3】共振周波数‐インピーダンス特性。
【図4】Lb/Laと等価直列容量の関係を示すグラフであり、(a)は溝部の深さt1=5μm、(b)はt1=35μm、(c)はt1=45μmの場合。
【図5】Lb/Laと電気機械結合係数K2の関係を示すグラフ。
【図6】振動子の概略構成を示す断面図。
【図7】発振器の構成例を示す説明図。
【図8】電子機器の一例として示す携帯電話機の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材ない
し部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(振動片)
【0026】
図1は、本実施例の振動片を模式的に表し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A
切断面を示す断面図である。なお、本実施例は、振動腕に溝部を設けた場合の振動片を例
示している。
振動片10は、X軸と、X軸に対して垂直なY軸で構成される平面に展開されており、
Z軸は厚さを表す。また、振動片10の材質は、水晶や、水晶以外の圧電材料、または、
それ以外の材料であってもよく、本実施例では、水晶振動片を例示しており、X軸が電気
軸、Y軸が機械軸、Z軸が光軸となるように、水晶の単結晶から切り出されたZ板であっ
て、音叉形水晶振動片である。また、振動片10の一方の面を第1主面10a、第1主面
10aに向かい合う面を第2主面10bとする。
【0027】
振動片10は、基部11と、基部11の基端部11aからY軸方向に互いに平行に延在
された2本の振動腕12,13と、基部11のX軸方向両側に突設された支持腕部14,
15とから構成されている。なお、基端部11aからの振動腕12,13の長さをLaと
する。
【0028】
振動腕12,13それぞれの第1主面10aと、第2主面10bには、基端部11aか
ら振動腕先端方向に向かって励振電極30,31,40,41が設けられている。また、
励振電極30,31,40,41の形成範囲に溝部21a,22a,21b,22bが形
成されている。ここで、基端部11aからの励振電極30,31,40,41の長さをL
bとする。また、第1主面10aからの溝部21a,22aの深さと、第2主面10bか
らの溝部21b,22bの深さを共にt1とする。
【0029】
図1(a),(b)に示すように、励振電極30,31,40,41は、溝部21a,
21b,22a,22bそれぞれの内壁面に設けられている。従って、基端部11aから
の各励振電極の長さLbは、溝部長さと同じである。
【0030】
続いて、振動片10の電極構成を図1(a),(b)を参照して説明する。なお、図1
において、同じ方向の斜線(ハッチング)で表す電極は、同じ電位となるように表してい
る。励振電極30は、振動腕12の第1主面10aに、基端部11aから長さLbで形成
されており、リード電極33を介して容量部32aに接続されている。さらに、励振電極
30は、リード電極34を経由して支持腕部15の第1主面10aの端部に設けられる接
続電極37に接続されている。
【0031】
リード電極34は基部11上で分岐されて振動腕13の側面に形成された側面電極35
,36を介して、振動腕12の第2主面10bに延長されて励振電極31に接続されてい
る。励振電極31は、第1主面10aに対して励振電極30と面対称である。なお、励振
電極31に接続されるリード電極(図示せず)および接続電極38、容量部32bもそれ
ぞれ、リード電極34、接続電極37、及び容量部32aに対して面対称となるように第
2主面10bに設けられている。
【0032】
励振電極40は、振動腕13の第1主面10aに、基端部11aから長さLbで形成さ
れており、リード電極43を介して容量部42aに接続されている。さらに、励振電極4
0は、リード電極44、振動腕12の側面に形成される側面電極45,46と、リード電
極47を経由して支持腕部14の第1主面10aの端部に設けられる接続電極48に接続
されている。励振電極41は、第1主面10aに対して励振電極40と面対称であって第
2主面10b側に設けられる。なお、励振電極41に接続されるリード電極(図示せず)
および接続電極49、容量部42bもそれぞれ、リード電極47と接続電極48、及び容
量部42aに対して面対称となるように第2主面10bに設けられている。
【0033】
ここで、励振電極30,31と、励振電極40,41とに、それぞれの接続電極37(
38)と、接続電極48(49)を介して逆極性となる交流電圧を印加すると、振動腕1
2,13は、基端部11a付近を振動の節としてX軸方向に屈曲振動する。この際、容量
部32a,32b,42a,42bにも同電位の交流電圧が印加されるが、振動腕12,
13の振動には影響しない。
【0034】
振動片10の基本振動モードは一次モードの屈曲振動であるが、二次モードの屈曲振動
が含まれ、発振回路を構成したときに二次モードでスプリアス発振を起こす場合がある。
従って、基本モード(一次モード)の励振を安定的に行わせるためには、二次モードの屈
曲振動の励振強度を抑制することが求められる。
そのことについて振動片10の等価回路を参照して説明する。
【0035】
図2は、本実施例に係る振動片の等価回路を示している。ここで、Cdは並列容量、L
1は等価直列インダクタンス、C1は等価直列容量、R1は等価直列抵抗であって、等価
直列インダクタンスL1と、等価直列容量C1と、等価直列抵抗R1は、一次モードの等
価直列成分51である。同様に、L2は等価直列インダクタンス、C2は等価直列容量、
R2は等価直列抵抗であって、等価直列インダクタンスL2と、等価直列容量C2と、等
価直列抵抗R2は、二次モードの等価直列成分52である。なお、図示しないが、三次以
上の高次モードが存在する場合の等価直列成分も同様に表すことが可能である。
【0036】
ここで、容量部32a,32b,42a,42bを設けない従来の並列容量をC0とし
、これら容量部を設けることにより増加する並列容量をCFとすると、図2に示す振動片
10の等価回路における並列容量Cdは、Cd=C0+CFとなる。励振電極30,31,
40,41の長さLbを振動腕長さLaの約50%の範囲内にすることによって、二次モ
ードのインピーダンスが上昇し、二次モードの励振強度を抑制することが可能であるが、
一次モードのインピーダンスも上昇し、基本モードである一次モードの励振強度が低下す
ることが考えられる。そこで、一次モードのインピーダンスの上昇を押さえることが必要
になる。
【0037】
図3は、振動片の共振周波数(f)‐インピーダンス特性を模式的に示している。図3
に示すように共振周波数(f)が高くなるに従いインピーダンスは低下する傾向を示す。
一次モードの周波数帯において、一次モードのインピーダンスの極値、二次モードの周波
数帯において二次モードのインピーダンスの極値が存在する。図3において、二点差線は
Lb/Laを50%より大きく、容量部がない場合を表し、破線はLb/Laを50%以
下、容量部がない場合、実線はLb/Laを50%以下、容量部を設けた場合を表してい
る。
【0038】
(1)Lb/Laが50%より大きく、容量部がない場合:二次モードのインピーダン
スが低く、二次モードが出現しやすい状態である。
(2)Lb/Laが50%以下で、容量部がない場合:二次モードのインピーダンスを
上昇させることができるが、一次モードのインピーダンスも高くなり、一次モードの励振
強度が低下してしまう。
(3)Lb/Laを50%以下で、容量部を設けた場合:インピーダンスは、等価回路
における並列容量の逆数に比例することから、二次モードのインピーダンスを高い位置に
維持しながら(図示、破線で表す)一次モードのインピーダンスの増加を抑え、一次モー
ドの励振強度を維持できる。
【0039】
ここで、インピーダンスは、CI値(Crystal Impedannce)で表さ
れる場合があり、振動片10内部の等価抵抗成分であって、振動損失に相当し、発振しや
すさの目安とされ、等価回路の等価直列抵抗R1,R2である。容量部32a,32b,
42a,42bを設けることによる増加分の並列容量CFは、容量部と励振電極(側面電
極)との間に発生する。並列容量CFは、第1主面10a側では、容量部32aと側面電
極45,46との間、容量部42aと側面電極35,36との間に発生する浮遊容量、第
2主面10b側では、容量部32bと側面電極45,46との間、容量部42bと側面電
極35,36との間に発生する浮遊容量が支配的である。
【0040】
従って、所望の一次モードにおけるインピーダンスを得るための並列容量CFは、容量
部32a,32bの長さと、側面電極45,46との距離と、側面電極45,46と並行
する容量部42a,42bの長さと、側面電極35,36との距離を適宜設定すればよい

【0041】
続いて、等価直列容量C1,C2が、振動腕長さLaに対する励振電極長さLbの比(
Lb/La)に依存すことについてシミュレーション結果を参照して説明する。なお、こ
こでは、溝部21a,21b,22a,22bを設けた場合について説明する。
【0042】
図4は、図1の音叉構造におけるLb/Laと等価直列容量の関係を示すグラフである
。(a)は溝部の深さt1=5μm、(b)はt1=35μm、(c)はt1=45μm
の場合を表している。縦軸に等価直列容量(F)、横軸にLb/Laを表し、一次モード
の等価直列容量C1と、二次モードの等価直列容量C2とを比較している。なお、振動腕
12,13の長さLaを1600μm、振動腕の幅Wを115μm、振動腕の厚さtを1
00μmとしてシミュレーションした。
【0043】
図4(a),(b),(c)を俯瞰すると、一次モードの等価直列容量C1は、Lb/
Laが大きくなっても若干の上昇傾向を示すが、ほぼフラットである。また、Lb/La
が0.4の付近で二次モードの等価直列容量C2には最小値があることを示している。
【0044】
そこで、二次モードの等価直列容量C2を、一次モードの等価直列容量C1の10%以
下にすれば、二次モードのインピーダンスを一次モードのインピーダンスよりも高くする
ことができることが推察できる。
これをLb/Laを変化させることで検証する。
(1)振動腕長さLaと溝部長さLbの比を、0.28≦Lb/La≦0.5とするこ
とで、二次モードの等価直列容量C2を一次モードの等価直列容量に対して10%以下に
抑えることができる。
(2)振動腕長さLaと溝部長さLbの比を、0.34≦Lb/La≦0.46とする
ことで、二次モードの等価直列容量C2を一次モードの等価直列容量C1に対して5%以
下にすることができ、一次モードに対して、二次モードの励振をさらに抑制することがで
きる。
(3)振動腕長さLaと溝部長さLbの比を、0.38≦Lb/La≦0.42とする
ことで、二次モードの等価直列容量C2を一次モードの等価直列容量C1に対して1%以
下にすることができ、一次モードに対して、二次モードの励振をほぼ除去することができ
る。溝部の深さt1が45μmの場合には、二次モードの等価直列容量C2を0.1%以
下と極めて小さくできる。
【0045】
続いて、振動片10の励振しやすさの目安である電気機械結合係数K2について説明す
る。
図5は、Lb/Laと電気機械結合係数K2の関係を示すグラフである。(a)は溝部
の深さt1=5μm、(b)はt1=35μm、(c)はt1=45μmの場合を表して
いる。縦軸に電気機械結合係数K2(%)、横軸にLb/Laを表し、一次モードの電気
機械結合係数K12と、二次モードの電気機械結合係数K22とを比較している。図5(a)
,(b),(c)を俯瞰すると、一次モードにおける電気機械結合係数K12は、Lb/L
aの変化に対してほぼフラットであって、二次モードにおける電気機械結合係数K22は、
図4で示した等価直列容量の変化と同様に、Lb/Laが0.4の付近で最小の極値があ
ることを示している。つまり、励振しにくい領域があることを示している。
【0046】
そこで、電気機械結合係数K2を、Lb/Laの変化させることで検証する。
(1)振動腕長さLaと溝部長さLbの比を、0.28≦Lb/La≦0.5とするこ
とで、二次モードの電気機械結合係数K22を一次モードの電気機械結合係数K12に対して
1%以下に抑えることができる。
(2)振動腕長さLaと溝部長さLbの比を、0.34≦Lb/La≦0.46とする
ことで、二次モードの電気機械結合係数K22を一次モードの電気機械結合係数K12に対し
て0.5%以下にすることができ、一次モードに対して、二次モードの励振をさらに抑制
することができる。
(3)振動腕長さLaと溝部長さLbの比を、0.38≦Lb/La≦0.42とする
ことで、二次モードの電気機械結合係数K22を一次モードの電気機械結合係数K12に対し
て0.1%以下にすることができ、一次モードに対して、二次モードの励振をほぼ除去す
ることができる。溝部の深さt1が45μmの場合には、ほとんど無視できるほどに二次
モードの電気機械結合係数K22を小さくできることが分かる。
【0047】
以上説明した実施例に係る振動片10は、励振電極30,31,40,41のそれぞれ
から分割された容量部32a,32b,42a,42bを設けることにより、等価回路に
おける並列容量CdがCF分大きくなり、二次モードの電気機械結合係数K2には影響を与
えずに、一次モードのインピーダンスが高くなりすぎることを抑制し、安定した一次モー
ドを実現できる。
【0048】
また、振動腕長さLaに対する、基端部11aからの励振電極長さLbの比Lb/La
を、0.28≦Lb/La≦0.5の範囲に設定することで、二次モードの等価直列容量
C2を一次モードの等価直列容量に対して10%以下に、抑えることができ、二次モード
の電気機械結合係数K22を一次モードの電気機械結合係数K12に対して1%以下に抑える
ことができる。よって、二次モードの励振強度を抑制することができる。
【0049】
また、振動腕長さLaに対する、基端部11aからの励振電極長さLbの比Lb/La
を、0.34≦Lb/La≦0.46の範囲に設定することで、二次モードの等価直列容
量を一次モードの等価直列容量に対して5%以下にすることができ、二次モードの電気機
械結合係数K22を一次モードの電気機械結合係数K12に対して1%以下に抑えることがで
きる。よって、一次モードに対して、二次モードの励振強度をさらに抑制することができ
る。
【0050】
さらに、振動腕長さLaに対する、基端部11aからの励振電極長さLbの比Lb/L
aを、0.38≦Lb/La≦0.42の範囲に設定すれば、二次モードの等価直列容量
C2を一次モードの等価直列容量Cdに対して1%以下にすることができ、二次モードの
電気機械結合係数K22を一次モードの電気機械結合係数K12に対して0.1%以下にする
ことができる。このことから、二次モードの励振をほぼ除去することができる。
【0051】
また、容量部32a,32b,42a,42bを、振動腕12,13の先端側に設けて
いることから、容量部32a,32b,42a,42bを共振周波数(f)の調整や、質
量バランスをとるためのトリミング電極として用いることができるという効果がある。
【0052】
また、振動腕12,13には、励振電極30,31,40,41のそれぞれの形成範囲
に溝部21a,21b,22a,22bを設けている。このことにより、同じ共振周波数
であれば、振動片10を小型化することができる。また、上述したように、Lb/Laの
比を適切な範囲に設定すること、容量部を設けること、により二次モードの励振を抑制し
、一次モードのインピーダンスの増加を抑制し、安定した一次モードの励振強度を得るこ
とができる。
【0053】
なお、以上説明した実施例に係る振動片10には、溝部21a,21b,22a,22
bが設けられているが、溝部はなくても励振電極を前述したように構成すれば、溝付の場
合と同様な効果が得られる。
【0054】
また、容量部32a,32b,42a,42bは、振動腕12,13の先端側に設けら
れているが、振動に影響がない位置に配置すれば配置場所は限定されず、例えば、基部1
1の第1主面10a、または第2主面10bに設けることができる。
(振動子)
【0055】
続いて、前述した振動片10を用いた振動子の1例について図面を参照して説明する。
図6は、振動子の概略構成を示す断面図である。振動子100は、前述した振動片10
と、この振動片10を収容するパッケージベース101、及びパッケージベース101の
開口部を封止するリッド102とを主な構成要素としている。
【0056】
パッケージベース101は、セラミックグリーンシート等を積層して焼成した箱体であ
り、凹状に形成されたキャビティ内部には、振動片10を実装するための台座103と内
部実装電極106,107が形成されている。内部実装電極106は、振動片10の接続
電極38と電気的に接続され、内部実装電極107は、振動片10の接続電極49と電気
的に接続されている。パッケージベース101の外部底面には、外部実装端子104,1
05が形成されている。外部実装端子104,105は、図示しないスルーホール等を介
して内部実装電極106、または内部実装電極107と電気的に接続されている。
【0057】
リッド102は、本実施形態の場合には平板状であって、金属またはガラスが採用され
ることが多い。いずれの材質を採用する場合であっても、線膨張係数がパッケージベース
101と近似したものを採用することが望ましい。
【0058】
振動片10を収容するパッケージとしてのパッケージベース101の開口部を封止する
際、リッド102は接合材(図示せず)を介して接合される。接合材は、リッド102を
構成する材質により異なる。例えばリッド102が金属であった場合、接合材には低融点
金属で構成されたシールリングを用いる。一方、リッド102がガラスであった場合、接
合部材には低融点ガラスを採用することが好ましい。
【0059】
パッケージベース101とリッド102で構成される空間は、減圧状態または真空状態
を保持できるように気密封止されている。
【0060】
このように構成される振動子100は、外部実装端子104,105を介した外部から
の駆動信号により振動片10が励振され、所定の周波数(例えば、32kHz)で発振す
る。
【0061】
振動片10は、パッケージ内に収納され、パッケージ内において、真空環境で振動され
ることで、より一層安定した振動を長期間にわたって維持することができる。また、パッ
ケージ内に収納されることで、扱いやすいうえ、湿度など外部環境から振動片10を保護
することができる。
(発振器)
【0062】
次に、前述した振動片10を有する発振器について図面を参照して説明する。
図7は、発振器の構成例を示す説明図である。発振器200は、振動片10と、この振
動片10と並列に接続された発振回路201(例えば、インバーター)と、を含む。発振
回路201の一方端が前述した接続電極38と接続され、他方端が前述した接続電極49
と接続される。また、図示するように、振動片10と発振回路201との一方の接続点と
接地端との間に接続された容量素子(コンデンサー)202と、振動片10と発振回路2
01との他方の接続点と接地端との間に接続された容量素子(コンデンサー)203と、
を更に備えてもよい。
【0063】
以上に説明した発振器200は、従来と同等の性能を保ちつつ小型化された発振器を提
供することが可能となる。また、振動片10のLb/Laを前述したような適切な範囲に
設定することで、二次モードのインピーダンスを高くし、二次モードの励振を抑制し、基
本モードである一次モードの励振を安定させることができ、信頼性の高い発振器を実現で
きる。
(電子機器)
【0064】
次に、前述した振動片10を有する発振器200を適用した電子機器について説明する

図8は、電子機器の一例として示す携帯電話機の斜視図である。携帯電話機1000は
表示部1001と、複数の操作ボタン1002と、受話口1003と、送話口1004と
を備え、内部回路構成要素のタイミングデバイスなどとして上述した振動子100または
発振器200を備えて構成されている。従って、前述したような振動子100または発振
器200を備えた信頼性の高い携帯電話機1000を実現できる。
【0065】
なお、本発明を適用した電子機器としては、上述したような携帯電話機1000に限ら
ず、例えば、電子ブック、パーソナルコンピューター、ディジタルスチルカメラ、液晶テ
レビ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓
、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末などを挙げること
ができる。
【符号の説明】
【0066】
10…振動片、10a…第1主面、10b…第2主面、11…基部、11a…基部の基
端部、12,13…振動腕、30,31,40,41…励振電極、32a,32b,42
a,42b…容量部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部の基端部から第1方向に延在されている振動腕と、
前記振動腕の主面に設けられている励振電極と、を有し、
前記励振電極は、前記基端部から前記振動腕の前記第1方向の長さの50%までの範囲
内に設けられ、
前記励振電極には、容量部が接続されることを特徴とする振動片。
【請求項2】
前記振動腕の前記第1方向の長さLaに対する前記基端部から前記励振電極の前記基端
部と反対側の端部までの長さLbの比Lb/Laが、0.34≦Lb/La≦0.46の
範囲にあること、
を特徴とする請求項1に記載の振動片。
【請求項3】
前記振動腕の前記第1方向の長さLaに対する前記基端部から前記励振電極の前記基端
部と反対側の端部までの長さLbの比Lb/Laが、0.38≦Lb/La≦0.42の
範囲にあること、
を特徴とする請求項1に記載の振動片。
【請求項4】
前記容量部は、前記励振電極の前記基端部と反対側の端部から前記振動腕の先端までの
領域の少なくとも一部に設けられている、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の振動片。
【請求項5】
前記励振電極は、前記振動腕の側面に設けられた側面電極を含み、
前記容量部と前記側面電極との間で浮遊容量が生じている、
ことを特徴とする請求項4に記載の振動片。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の振動片と、
前記振動片が格納されたパッケージと、
を有することを特徴とする振動子。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の振動片と、
前記振動片に接続された発振回路と、
を有することを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の振動片を有する、
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−5424(P2013−5424A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138228(P2011−138228)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】