説明

振動片、振動子および圧電デバイス

【課題】厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる振動片、振動子および圧電デバイスを提供すること。
【解決手段】振動片2は、厚みすべり振動する第1の圧電体基板21と、第1の圧電体基板21に積層され、厚みすべり振動する第2の圧電体基板22と、第1の圧電体基板21の第2の圧電体基板22とは反対側の面に接合された励振電極23aと、第2の圧電体基板22の第1の圧電体基板21とは反対側の面に接合された励振電極23cと、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22との間に設けられた励振電極23bと、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22の側面に設けられ、励振電極23aと励振電極23cとを電気的に接続する第1の側面電極と、第2の圧電体基板22の側面に設けられ、励振電極23bに電気的に接続された第2の側面電極とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動片、振動子および圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器等の圧電デバイスに備えられた水晶振動子等の振動子としては、厚み滑り振動を利用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような振動子は、例えば、特許文献1に開示されているように、厚み滑り振動を主振動とする1つの圧電基板を用いて構成された振動片を備えている。そして、この圧電基板にその厚さ方向に電圧を印加することにより厚み滑り振動を励振させる。
【0003】
また、特許文献1の振動子では、いわゆるメサ型構造を有する振動片を用いることにより、厚み滑り振動を閉じ込めて、Q値を改善し、その結果、CI値(クリスタルインピーダンス)を低減している。
しかしながら、上述した従来の構造では、特定の周波数で振動する厚み滑り振動片を製造するには一対の励振電極間の圧電基板に周波数に対応した特定の厚さのものを使用しなければならない為、励振電極間に発生させる事のできる電界の大きさには限界があり、その結果としてCI値を十分に低くすることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−263387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる振動片、振動子および圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本発明の振動片は、厚み滑り振動を励振する第1の基板と、
前記第1の基板に積層され、厚み滑り振動を励振する第2の基板と、
前記第1の基板の前記第2の基板とは反対側の主面上に配置されている第1の励振電極と、
前記第2の基板の前記第1の基板とは反対側の主面上に配置されている第2の励振電極と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されている第3の励振電極と、
前記第1の基板および前記第2の基板の側面に配置され、前記第1の励振電極と前記第2の励振電極とを電気的に接続している第1の側面電極と、
前記第1の基板および前記第2の基板のうちの少なくとも一方の基板の側面に配置され、前記第3の励振電極に電気的に接続されている第2の側面電極と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
このように構成された振動片によれば、第1の側面電極と第2の側面電極との間に電圧を印加することにより、第1の励振電極と第3の励振電極との間、および、第2の励振電極と第3の励振電極との間にそれぞれ電界を生じさせることができる。これにより、第1の基板および第2の基板をそれぞれ厚み滑り振動させることができる。
特に、第1の基板および第2の基板の厚さをそれぞれ薄くして各基板に印加する電圧を抑えつつ、振動片全体の厚み滑り振動の変位量を大きくすることができる。そのため、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる。
【0008】
[適用例2]
本発明の振動片では、前記第1の基板および前記第2の基板は、それぞれ、圧電材料で構成された圧電体基板であることが好ましい。
これにより、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる。
【0009】
[適用例3]
本発明の振動片では、前記第1の基板および前記第2の基板は、前記第3の励振電極を介して互いに接合されていることが好ましい。
これにより、振動片の構成を比較的簡単なものとすることができる。
[適用例4]
本発明の振動片では、前記第3の励振電極に対して離間し、前記第1の側面電極付近における前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されたスペーサー層を備えることが好ましい。
これにより、第1の側面電極を各種成膜法により容易に形成することができる。また、第1の基板と第2の基板との間における第1の側面電極の断線を防止することができる。
【0010】
[適用例5]
本発明の振動片では、前記第1の基板の前記第2の基板とは反対側の主面上に配置され、前記第1の励振電極から前記第1の基板の側面へ向けて延出されている第1の引き出し電極と、
前記第2の基板の前記第1の基板とは反対側の主面上に配置され、前記第2の励振電極から前記第2の基板の側面へ向けて延出されている第2の引き出し電極と、
を備え、
前記第1の引き出し電極および前記第2の引き出し電極は、前記第1の側面電極を介して互いに電気的に接続されていることが好ましい。
これにより、第1の励振電極、第2の励振電極および第1の側面電極の設計が容易となる。
【0011】
[適用例6]
本発明の振動片では、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、前記第3の励振電極から前記第1の基板または前記第2の基板の側面に向けて延出されている第3の引き出し電極を備え、
前記第3の引き出し電極は、前記第2の側面電極に電気的に接続されていることが好ましい。
これにより、第3の励振電極および第2の側面電極の設計が容易となる。
【0012】
[適用例7]
本発明の振動片では、前記第1の基板または前記第2の基板の前記第3の励振電極とは反対側の主面上には、
前記第1の側面電極に電気的に接続されている第1の電極パッドと、
前記第2の側面電極に電気的に接続されている第2の電極パッドと、
が配置されていることが好ましい。
これにより、振動片をベース基板に対して導電性接着剤等によりマウントすることにより、第1の電極パッドおよび第2の電極パッドをベース基板上のマウント電極に電気的に接続することができる。
【0013】
[適用例8]
本発明の振動片では、前記第1の基板および前記第2の基板は、それぞれ、水晶基板であることが好ましい。
これにより、所望の振動特性でより高精度に厚み滑り振動を励振させることができる。
[適用例9]
本発明の振動片では、前記水晶基板は、水晶回転Y板であることが好ましい。
これにより、第1の基板および第2の基板にそれぞれ厚み滑り振動を効率的に励振させることができる。
【0014】
[適用例10]
本発明の振動片では、前記水晶回転Y板は、ATカット水晶基板、BTカット水晶基板、SCカット水晶基板のうちのいずれかであることが好ましい。
これにより、第1の基板および第2の基板にそれぞれ厚み滑り振動を効率的に励振させることができる。
【0015】
[適用例11]
本発明の振動片では、前記第1の基板および前記第2の基板は、互いに同一のカット角の水晶基板であり、
一方の水晶基板の結晶軸が他方の水晶基板をY’軸またはZ’軸まわりに180°回転させた結晶軸と同方向であることが好ましい。
これにより、第1の基板および第2の基板に互いの接合面に同極性となるように電圧を印加することにより、第1の基板および第2の基板に互いに同方向の厚み滑り振動を励振させることができる。
【0016】
[適用例12]
本発明の振動子は、本発明の振動片と、
前記振動片を収納するパッケージと、
を備えることを特徴とする。
これにより、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる振動子を提供できる。
[適用例13]
本発明の圧電デバイスは、本発明の振動子を備えることを特徴とする。
これにより、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる圧電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる圧電デバイス(振動子)を示す上面図である。
【図2】図1に示す圧電デバイスの断面図である。
【図3】図1に示す圧電デバイスに備えられた振動片を示す斜視図である。
【図4】図3に示す振動片の第2の圧電体基板、第2の励振電極および第3の励振電極を示す図である。
【図5】図2に示す圧電デバイスに備えられた振動片の動作を説明するための模式図である。
【図6】図5に示す動作の振動片に備えられた第1の圧電体基板および第2の圧電体基板をATカットの水晶を用いて構成する場合の第1の例を説明するための図である。
【図7】図5に示す動作の振動片に備えられた第1の圧電体基板および第2の圧電体基板をATカットの水晶を用いて構成する場合の第2の例を説明するための図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる圧電デバイスに備えられた振動片の断面図である。
【図9】図8に示す振動片の第2の圧電体基板、第2の励振電極および第3の励振電極を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態にかかる圧電デバイスに備えられた振動片の断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態にかかる圧電デバイスに備えられた振動片の断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態にかかる圧電デバイスに備えられた振動片の断面図である。
【図13】本発明の第6実施形態にかかる圧電デバイスに備えられた振動片の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の圧電デバイスの例として、圧電振動子および電子部品付き圧電デバイスを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる圧電デバイス(振動子)を示す上面図、図2は、図1に示す圧電デバイスの断面図、図3は、図1に示す圧電デバイスに備えられた振動片を示す斜視図、図4は、図3に示す振動片の第2の圧電体基板、第2の励振電極および第3の励振電極を示す図、図5は、図2に示す圧電デバイスに備えられた振動片の動作を説明するための模式図、図6は、図5に示す動作の振動片に備えられた第1の圧電体基板および第2の圧電体基板をATカットの水晶を用いて構成する場合の第1の例を説明するための図、図7は、図5に示す動作の振動片に備えられた第1の圧電体基板および第2の圧電体基板をATカットの水晶を用いて構成する場合の第2の例を説明するための図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図2中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
図1に示す圧電デバイス1は、振動片2と、これを収納するパッケージ(匡体)3とを有している。
【0019】
まず、振動片2について説明する。
振動片(圧電振動片)2は、図1または図2に示すように、長手形状の第1の圧電体基板(第1の基板)21および第2の圧電体基板(第2の基板)22と、第1の圧電体基板21の上面に設けられた励振電極(第1の励振電極)23aおよび接続電極(第1の引き出し電極)24aと、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22との間に設けられた励振電極(第3の励振電極)23bおよび接続電極(第3の引き出し電極)24bと、第2の圧電体基板22の下面に設けられた励振電極(第2の励振電極)23cおよび接続電極(第2の引き出し電極)24cとを有している。
また、振動片2は、図3に示すように、側面電極(第1の側面電極)25aおよび側面電極(第2の側面電極)25bを有する。さらに、振動片2は、図4に示すように、電極パッド(第1の電極パッド)26aおよび電極パッド(第2の電極パッド)26bと、スペーサー層27とを有する。
【0020】
以下、振動片2を構成する各部を順次詳細に説明する。
第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22は、それぞれ、その厚さ方向に電圧(電界)が印加されることにより、厚み滑り振動を主振動として励振するものである。
特に、図5に示すように、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22は、互いに同方向に厚み滑り振動するように構成されている。言い換えると、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22は、互いに対向する側の面(接合面)同士が互いに反対方向に変位するように、厚み滑り振動するように構成されている。なお、図5では、説明の便宜上、側面電極、引き出し電極および電極パッドの図示を省略している。
【0021】
このような振動片2は、厚み滑り振動する圧電体基板が複枚積層された積層体を備えることにより、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22の厚さをそれぞれ薄くすることができるので、各圧電体基板に印加する電圧を抑えても、対をなす励振電極間に必要な電界を発生させて振動片2全体の厚み滑り振動の変位量を大きくすることができる。そのため、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる。
【0022】
より具体的に説明すると、これらの第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22は、後に詳述する電極層である励振電極23bを介して互いに接合されている。すなわち、励振電極23bは、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22とを接合する接合層としての機能をも有する。これにより、振動片2の構成を比較的簡単なものとすることができる。
【0023】
本実施形態では、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22との間には、励振電極23bおよび接続電極24bの他に、スペーサー層27が設けられている(図4参照)。このスペーサー層27は、励振電極23bおよび接続電極24bに対して離間するとともに、側面電極25a付近における第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22との間の隙間を埋めるように設けられている。これにより、後に詳述する側面電極25aを各種成膜法により容易に形成することができる。また、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22との間における側面電極25aの断線を防止することができる。さらに、スペーサー層27も第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22とを接合する接合層として機能させることにより、振動片2の機械的強度を高め、振動片2の信頼性を向上させることができる。
そのため、本実施形態では、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22は、互いの接合面(互いに対向する側の面)が同極性となるような電圧が厚さ方向にそれぞれ印加されることにより、互いに同方向に厚み滑り振動するように構成されている。
【0024】
これにより、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22とを励振電極23b(電極層)を介して接合した比較的簡単な構成で、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22を互いに同方向に厚み滑り振動させることができる。また、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22との間における互いの厚み滑り振動の損失を低減することができる。
このような第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22は、それぞれ、圧電材料で構成されており、かかる圧電材料としては、例えば、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ホウ酸リチウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。中でも、かかる圧電材料としては水晶が好ましい。
【0025】
第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22の少なくとも一方が水晶で構成されていると、所望の振動特性で高精度に厚み滑り振動を励振させることができる。
特に、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22がそれぞれ水晶で構成されていると、所望の振動特性でより高精度に厚み滑り振動を励振させることができる。
第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22をそれぞれ水晶で構成する場合、かかる水晶としては、水晶回転Y板を用いるのが好ましい。これにより、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22にそれぞれ厚み滑り振動を効率的に励振させることができる。
【0026】
また、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22をそれぞれ水晶で構成する場合、かかる水晶のカット角は、ATカット、BTカット、SCカットのいずれかのカット角であるのが好ましい。すなわち、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22を構成する水晶基板は、ATカット水晶基板、BTカット水晶基板、SCカット水晶基板のうちのいずれかであるのが好ましい。これにより、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22にそれぞれ厚み滑り振動を効率的に励振させることができる。
【0027】
また、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22を互いに同一のカット角の圧電結晶板で構成した場合、第1の圧電体基板21に加えられる電界の向きと第2の圧電体基板22に加えられる電界の向きとが逆であっても2つの圧電体基板の厚み滑り振動の位相が同相になるように、第1の圧電体基板21に対して第2の圧電体基板22は、表裏逆または左右逆に配置されていることが望ましい。すなわち、第2の圧電体基板22の結晶軸は、第1の圧電体基板21をY’軸またはZ’軸まわりに180°回転させた結晶軸と同方向であるのが好ましい。さらに言い換えると、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22は、Y’軸またはZ’軸の結晶軸が互いに同方向に平行であるとともに、その結晶軸以外の結晶軸が互いに逆方向に平行である。
【0028】
なお、水晶は、結晶軸として互いに直交するX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)およびZ軸(光学軸)を有するが、「Z’軸」とは、X軸を中心としてZ軸をY軸の−Y軸方向へ所定の角度だけ傾けた軸であり、「Y’軸」とは、X軸を中心としてY軸をZ軸の+Z軸方向へ所定の角度だけ傾けた軸である。また、「水晶回転Y板」とは、X軸およびZ’軸に平行な板面を有し、かつ、Y’軸に平行な方向を厚み方向とする水晶基板である。
【0029】
例えば、カット角がATカットである板状の水晶(以下、AT板と言う)を用いて第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22を構成する場合、図6に示すように、無回転のAT板であるAT板100の下面102と、無回転のAT板をZ’軸まわりに180°回転させたAT板100aの上面101aとを励振電極23bを介して接合することにより、AT板100で構成された第1の圧電体基板21と、AT板100aで構成された第2の圧電体基板22を得ることができる。なお、AT板100は、その厚さ方向(Y’軸方向)に電圧を印加することにより、X軸方向に厚み滑り振動するものである。
【0030】
また、図7に示すように、無回転のAT板であるAT板100の下面102と、無回転のAT板をY’軸まわりに180°回転させたAT板100bの上面101bとを励振電極23bを介して接合することにより、AT板100で構成された第1の圧電体基板21と、AT板100bで構成された第2の圧電体基板22を得ることができる。
このようにして、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22に互いの接合面に同極性となるように電圧を印加することにより、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22に互いに同方向の厚み滑り振動を励振させることができる。
【0031】
また、図6、7に示すように、同一のカット角の水晶を用いて第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22を構成した場合、2枚のAT板を接合した振動片2の厚み滑り振動の周波数は、1枚のAT板を単独で厚み滑り振動させたときのその振動の周波数の半分となる。
言い換えると、振動片2の厚み滑り振動の周波数をF[Hz]としたとき、2F[Hz]で厚み滑り振動するAT板を2枚用いればよい。
【0032】
このような第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22の平均厚さは、それぞれ、振動片2の駆動周波数等に応じて決められるものであり、特に限定されず、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22は、互いに厚さが同じであっても異なっていてもよいが、一方の厚さが他方の厚さの整数倍となるように設定されているのが好ましい。これにより、振動片2全体を所望の周波数で効率的に厚み滑り振動させることができる。
【0033】
図1および図2に示すように、励振電極23aは、第1の圧電体基板21の上面(主面)の中央部を覆うように設けられている。また、第1の圧電体基板21の上面のうち、長手方向の左側端部かつ短手方向の一端部には接続電極24aが設けられており、励振電極23aと接続電極24aとが電気的に接続されている。
また、励振電極23bは、第1の圧電体基板21の下面(主面)および第2の圧電体基板22の上面(主面)の中央部を覆うように設けられている。また、第2の圧電体基板22の上面のうち、長手方向の左側端部かつ短手方向の他端部には接続電極24bが設けられており、励振電極23bと接続電極24bとが電気的に接続されている。
【0034】
また、励振電極23cは、第2の圧電体基板22の下面(主面)の中央部を覆うように設けられている。また、第2の圧電体基板22の下面のうち、長手方向の左側端部かつ短手方向での一端部(接続電極24bと反対側の端部)には接続電極24cが設けられており、励振電極23cと接続電極24cとが電気的に接続されている。
さらに、側面電極(第1の側面電極)25aは、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22の側面(具体的には、図2中の左側側面)に設けられている。そして、側面電極25aは、励振電極23aと励振電極23cとを電気的に接続する。
【0035】
また、側面電極(第2の側面電極)25bは、第2の圧電体基板22の側面(具体的には、図2中の左側側面)に設けられている。そして、側面電極25bは、励振電極23bに電気的に接続されている。
このような側面電極25aと側面電極25bとの間に電圧を印加することにより、励振電極23aと励振電極23bとの間、および、励振電極23bと励振電極23cとの間にそれぞれ電界を生じさせることができる。これにより、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22をそれぞれ厚み滑り振動させることができる。
【0036】
ここで、接続電極(第1の引き出し電極)24aは、第1の圧電体基板21の第2の圧電体基板22とは反対側の面に接合され、励振電極23aから第1の圧電体基板21の側面(図2中の左側側面)へ向けて延出されている。
また、接続電極(第2の引き出し電極)24bは、第2の圧電体基板22の第1の圧電体基板21とは反対側の面に接合され、励振電極23cから第2の圧電体基板22の側面へ向けて延出されている。
【0037】
そして、このような接続電極24aおよび接続電極24bは、側面電極25aを介して互いに電気的に接続されている。これにより、励振電極23a、23cおよび側面電極25aの設計が容易となる。
また、接続電極(第3の接続電極)24bは、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22との間に設けられ、励振電極23bから第2の圧電体基板22の側面に向けて延出されている。
【0038】
そして、このような接続電極24bは、側面電極25bに電気的に接続されている。これにより、励振電極24bおよび側面電極25bの設計が容易となる。
また、電極パッド26a、26bは、それぞれ、第2の圧電体基板22の下面(すなわち励振電極23bとは反対側の面)に接合されている。
そして、電極パッド26aは、側面電極25aに電気的に接続され、一方、電極パッド26bは、側面電極25bに電気的に接続されている。これにより、振動片2を後述するベース基板31に対して導電性接着剤等によりマウントすることにより、電極パッド26a、26bをベース基板31上のマウント電極34a、34bに電気的に接続することができる。
【0039】
したがって、マウント電極34aとマウント電極34bとの間に電圧を印加すると、圧電材料の逆圧電効果により、ある一定の周波数(共鳴周波数)で、前述したように第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22を厚み滑り振動させることができる。また、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22が振動すると、励振電極23a、23bの間および励振電極23b、23c間には、圧電材料の圧電効果により、ある一定の周波数で電圧が発生する。これらの性質を利用して、圧電デバイス1は、共鳴周波数で振動する電気信号を発生させることができる。
【0040】
ここで、励振電極23a、23b、23cは互いに重なり合う領域を有するよう形成されたものである。
本実施形態では、振動片2を平面視したときに、励振電極23a、23b、23cが互いに一致する領域となるように形成されている。そして、第1の圧電体基板21のうち、励振電極23aと励振電極23bとで挟まれた領域において、前述したような厚み滑り振動が励振される。また、第2の圧電体基板22のうち、励振電極23bと励振電極23cとで挟まれた領域において、前述したような厚み滑り振動が励振される。
【0041】
上記のような励振電極23a、23b、23c、接続電極24a、24b、24c、側面電極25a、25b、電極パッド26a、26bおよびスペーサー層27は、それぞれ、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、クロム、クロム合金、金等の導電性に優れた金属材料により形成することができる。
また、これらの電極等の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法等の物理成膜法、CVD等の化学蒸着法、インクジェット法等の各種塗布法等が挙げられる。
【0042】
より具体的には、励振電極23aおよび接続電極24aは、第1の圧電体基板21の上面に対して上記成膜法を用いて一括して形成することができる。また、励振電極23b、接続電極24bおよびスペーサー層27は、第2の圧電体基板22の上面に対して上記成膜法を用いて一括して形成することができる。また、励振電極23c、接続電極24cおよび電極パッド26a、26bは、第2の圧電体基板22の下面に対して上記成膜法を用いて一括して形成することができる。さらに、側面電極25a、25bは、上述したように励振電極23a、23b、23c、接続電極24a、24b、24c、電極パッド26a、26bおよびスペーサー層27を形成した後、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22とを接合し、その後、上記成膜法を用いて一括して形成することができる。
【0043】
また、前述した励振電極23bは、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22とを接合する機能をも有する。例えば、励振電極23bは、前述したような金属材料を第2の圧電体基板22の上面に成膜した後、その膜表面にプラズマ処理等を施して接着性を発現させ、その上に第1の圧電体基板21を圧着することにより、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22とを接合する。また、第1の圧電体基板21の下面および第2の圧電体基板22の上面にそれぞれ前述した金属材料を成膜した後、その膜同士をプラズマ接合してもよい。
【0044】
次いで、振動片2を収容・固定するパッケージ3について説明する。
パッケージ3は、その平面視にて略長方形状をなしている。このようなパッケージ3は、図2に示すように、板状のベース基板31と、枠状の枠部材32と、板状の蓋部材33とを有している。ベース基板31、枠部材32および蓋部材33は、下方からこの順で積層されており、ベース基板31と枠部材32および枠部材32と蓋部材33は、それぞれ接着剤あるいはろう材等により接合されている。そして、パッケージ3は、ベース基板31、枠部材32および蓋部材33で画成された内部空間Sに、振動片2を収納している。なお、図1では、蓋部材33の図示を省略している。
ベース基板31の構成材料としては、絶縁性(非導電性)を有しているものが好ましく、例えば、各種ガラス、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、炭化物系セラミックス等の各種セラミックス材料、ポリイミド等の各種樹脂材料などを用いることができる。
【0045】
また、枠部材32および蓋部材33の構成材料としては、例えば、ベース基板31と同様の構成材料、Al、Cuのような各種金属材料、各種ガラス材料等を用いることができる。特に、蓋部材33の構成材料として、ガラス材料等の光透過性を有するものを用いた場合、第1の圧電体基板21に予め金属被覆部(図示せず)を形成しておくと、振動片2をパッケージ3内に収容した後であっても、蓋部材33を介して前記金属被覆部にレーザーを照射し、前記金属被覆部を除去して第1の圧電体基板21の質量を減少させることにより(質量削減方式により)、振動片2の周波数調整を行うことができる。
【0046】
図1または図2に示すように、ベース基板31の上面には、一対のマウント電極34a、34bが内部空間Sに露出するように形成されている。このマウント電極34a、34bの上には、それぞれ、導電性粒子を含有するエポキシ系、ポリイミド系等の導電性接着剤39a、39bが塗布されて(盛られて)おり、さらに、この導電性接着剤39a、39b上に、前述した振動片2が載置されている。そして、導電性接着剤39a、39bを硬化することにより、振動片2がマウント電極34a、34b(ベース基板31)に確実に固定される。
【0047】
なお、この固定は、導電性接着剤39aが振動片2の電極パッド26aに接触するとともに、導電性接着剤39bが振動片2の電極パッド26bに接触するように、振動片2を導電性接着剤39a、39b上に載置して行う。これにより、導電性接着剤39a、39bを介して、振動片2の左側端部がベース基板31に固定されるとともに、電極パッド26aとマウント電極34aおよび電極パッド26bとマウント電極34bを、それぞれ電気的に接続することができる。また、これにより、振動片2の左側端部は「固定端」となり、右側端部は「自由端」となる。また、振動片2は、CSP(Chip Size Package)構造のようにしてベース基板31に固定されていてもよい。
【0048】
また、図1または図2に示すように、ベース基板31の下面には、その四隅に位置するように4つの外部端子35a、35b、35c、35dが設けられている。
これら4つの外部端子35a〜35dのうち、外部端子35a、35bは、それぞれ、ベース基板31に形成されたビアホールに設けられた導体ポストを介してマウント電極34a、34bに電気的に接続されたホット端子である。また、他の2つの外部端子35c、35dは、それぞれ、パッケージ3を実装用基板に実装するときに、接合強度を高めたり、パッケージ3と実装用基板との間の距離を均一化するためのダミー端子である。
このようなマウント電極34a、34bおよび外部端子35a〜35dは、それぞれ、例えば、タングステンおよびニッケルメッキからなる下地層の上に、金メッキを施すことで形成することができる。
【0049】
なお、パッケージ3の内部空間Sには、振動片2を駆動する機能を有する電子部品が実装(搭載)されていてもよい。この電子部品は、例えば集積回路素子(IC)であり、絶縁性(非導電性)の接着剤や、接着シート等の接着部材によりベース基板31の上面に接合される。この場合、外部端子35a、35bから電子部品を介してマウント電極34a、34bに通電するように、ベース基板31の上面に配線パターンを形成する。このような電子部品に、発振回路を形成することにより圧電デバイス1を圧電発振器として構成したり、角速度検出回路を形成することにより圧電デバイス1を圧電ジャイロとして構成することができる。なお、電子部品は、パッケージ3の外部に設けてもよい。
【0050】
以上説明したような第1実施形態によれば、振動片2が厚み滑り振動する圧電体基板が複枚積層された積層体を備えるので、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22の厚さをそれぞれ薄くして各圧電体基板に印加する電圧を抑えつつ、振動片2全体の厚み滑り振動の変位量を大きくすることができる。そのため、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、本発明の圧電デバイスの第2実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態にかかる圧電デバイスに備えられた振動片の断面図、図9は、図8に示す振動片の第2の圧電体基板、第2の励振電極および第3の励振電極を示す図である。
【0052】
以下、第2実施形態の圧電デバイスについて、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態の圧電デバイスは、第1の圧電体基板と第2の圧電体基板との間の電極層(第3の励振電極)の形成範囲が異なる以外は、第1実施形態とほぼ同様である。なお、図8では、説明の便宜上、側面電極、引き出し電極および電極パッドの図示を省略している。また、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0053】
本実施形態の圧電デバイスの振動片2Aでは、図8に示すように、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22とが励振電極(第3の励振電極)23dを介して接合されている。
この励振電極23dは、図9に示すように、前述した第1実施形態の励振電極23bに比し大面積となるように設けられている。これにより、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22とを励振電極23dを介してより強固に接合することができる。
【0054】
本実施形態では、振動片2Aを平面視したときに、励振電極23dが励振電極23a、23cを含むように形成されている。また、第2の圧電体基板22の短手方向における励振電極23dの長さが同方向における第2の圧電体基板22の長さと等しくなっている。
そして、第1の圧電体基板21のうち、励振電極23aと励振電極23dとで挟まれた領域(すなわち平面視にて励振電極23aの形成領域)において、前述したような厚み滑り振動が励振される。また、第2の圧電体基板22のうち、励振電極23dと励振電極23cとで挟まれた領域(すなわち平面視にて励振電極23cの形成領域)において、前述したような厚み滑り振動が励振される。
【0055】
このような励振電極23dは、その形成が容易であり、平面視において励振電極23a、23cとの位置決めが不要となる。そのため、振動片2Aの振動特性を簡単かつ確実に所望のものとすることができる。
以上説明したような第2実施形態によっても、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる。
【0056】
<第3実施形態>
次に、本発明の圧電デバイスの第3実施形態について説明する。
図10は、本発明の第3実施形態にかかる圧電デバイスに備えられた振動片の断面図である。
以下、第3実施形態の圧電デバイスについて、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0057】
第3実施形態の圧電デバイスは、第1の圧電体基板と第2の圧電体基板との間の電極層の形成範囲が異なるとともに、振動片をメサ構造とした以外は、第1実施形態とほぼ同様である。また、第3実施形態の圧電デバイスは、振動片をメサ構造とした以外は、第2実施形態とほぼ同様である。なお、図10では、側面電極等の図示を省略している。また、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0058】
本実施形態の圧電デバイスの振動片2Bでは、図10に示すように、メサ型構造を有するように形成れた第1の圧電体基板21Bおよび第2の圧電体基板22Bを有する。
第1の圧電体基板21Bの上面には、矩形の凸部211Bが形成され、第2の圧電体基板22Bの下面には、矩形の凸部221Bが形成されている。これらの凸部211B、221Bは、振動片2Bを平面視したときに、矩形状をなし、互いに一致する領域に形成されている。
【0059】
このような第1の圧電体基板21Bおよび第2の圧電体基板22Bは、励振電極23dを介して接合されている。
そして、凸部211B上には、励振電極23aが形成され、凸部221B上には、励振電極23cが形成されている。
本実施形態では、第1の圧電体基板21Bおよび第2の圧電体基板22Bに厚み滑り振動を励振させると、その振動は、凸部211B、221B(メサ構造)の内側に閉じ込められる。そのため、厚み滑り振動のQ値を高め、その結果、CI値を高めることができる。
以上説明したような第3実施形態によっても、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる。
【0060】
<第4実施形態>
次に、本発明の圧電デバイスの第4実施形態について説明する。
図11は、本発明の第4実施形態にかかる圧電デバイスに備えられた振動片の断面図である。
以下、第4実施形態の圧電デバイスについて、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0061】
第4実施形態の圧電デバイスは、第1の圧電体基板と第2の圧電体基板との間の電極層の形成範囲が異なるとともに、振動片を逆メサ構造とした以外は、第1実施形態とほぼ同様である。また、第4実施形態の圧電デバイスは、振動片を逆メサ構造とした以外は、第2実施形態とほぼ同様である。なお、図11では、側面電極等の図示を省略している。また、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0062】
本実施形態の圧電デバイスの振動片2Cは、図11に示すように、逆メサ型構造を有するように形成れた第1の圧電体基板21Cおよび第2の圧電体基板22Cを有する。
第1の圧電体基板21Cの上面には、矩形の凹部211Cが形成され、第2の圧電体基板22Cの下面には、矩形の凹部221Cが形成されている。これらの凹部211C、221Cは、振動片2Cを平面視したときに、矩形状をなし、互いに一致する領域に形成されている。
【0063】
このような第1の圧電体基板21Cおよび第2の圧電体基板22Cは、励振電極23dを介して接合されている。
そして、凹部211C上(底面上)には、励振電極23aが形成され、凹部221C上(底面上)には、励振電極23cが形成されている。
本実施形態では、第1の圧電体基板21Cおよび第2の圧電体基板22Cに厚み滑り振動を励振させると、その振動は、凹部211C、221C(逆メサ構造)の内側に閉じ込められる。そのため、厚み滑り振動のQ値を高め、その結果、CI値を高めることができる。
以上説明したような第4実施形態によっても、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる。
【0064】
<第5実施形態>
次に、本発明の圧電デバイスの第5実施形態について説明する。
図12は、本発明の第5実施形態にかかる圧電デバイスに備えられた振動片の断面図である。
以下、第5実施形態の圧電デバイスについて、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0065】
第5実施形態の圧電デバイスは、第1の圧電体基板と第2の圧電体基板との間に1対の電極層および絶縁層を設けた以外は、第1実施形態とほぼ同様である。なお、図12では、側面電極等の図示を省略している。また、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
本実施形態の圧電デバイスの振動片2Dは、図12に示すように、第1の圧電体基板21の下面に形成された励振電極(第2の励振電極)23eと、第2の圧電体基板22の上面に形成された励振電極(第2の励振電極)23fと、励振電極23eと励振電極23fとの間に設けられた接合層28とを有する。
【0066】
本実施形態では、振動片2Dを平面視したときに、励振電極23e、23fが励振電極23a、23cを含むように形成されている。そして、第1の圧電体基板21のうち、励振電極23aと励振電極23eとで挟まれた領域(すなわち平面視にて励振電極23aの形成領域)において、前述したような厚み滑り振動が励振される。また、第2の圧電体基板22のうち、励振電極23fと励振電極23cとで挟まれた領域(すなわち平面視にて励振電極23cの形成領域)において、前述したような厚み滑り振動が励振される。
【0067】
ここで、励振電極23eおよび励振電極23fは、接合層28を介して接合されている。また、励振電極23eおよび励振電極23fは、互いに逆極性となるように構成されている。
この接合層28の構成材料としては、励振電極23eと励振電極23fとを接合できるものであれば、特に限定されず、導電性材料であっても絶縁性材料であってもよく、公知の接合剤、接着剤等を用いることができる。
【0068】
また、接合層28の厚さは、特に限定されないが、第1の圧電体基板21と第2の圧電体基板22との間の厚み滑り振動の損失を低減するため、できるだけ薄くするのが好ましい。
以上説明したような第5実施形態によっても、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる。
【0069】
<第6実施形態>
次に、本発明の圧電デバイスの第6実施形態について説明する。
図13は、本発明の第6実施形態にかかる圧電デバイスに備えられた振動片の断面図である。
以下、第6実施形態の圧電デバイスについて、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0070】
第6実施形態の圧電デバイスは、第3の圧電体基板とこれに対応する電極層(第4の励振電極)とを設けた以外は、第1実施形態とほぼ同様である。なお、図13では、側面電極等の図示を省略している。また、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
本実施形態の圧電デバイスの振動片2Eは、図13に示すように、第2の圧電体基板22の第1の圧電体基板21とは反対側の面に接合された第3の圧電体基板29を有している。
【0071】
この第3の圧電体基板29の上面には、励振電極(第2の励振電極)23gが形成され、第3の圧電体基板29は、この励振電極23gを介して第2の圧電体基板22に接合されている。
また、第3の圧電体基板29の下面には、励振電極(第3の励振電極)23hが設けられている。この励振電極23hは、振動片2Eを平面視したときに、励振電極23aと一致する領域に形成されている。
【0072】
本実施形態では、第3の圧電体基板29は、励振電極23g、23h間に電圧を印加することにより、第1の圧電体基板21および第2の圧電体基板22と同方向に厚み滑り振動する。
これにより、各圧電体基板の厚さをより抑えて各圧電体基板に印加する電圧をより抑えたり、振動片2E全体の厚み滑り振動の変位量を大きくしたりすることができる。そのため、厚み滑り振動以外の振動をより抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる。
【0073】
ここで、図示しない側面電極(第1の側面電極)を介して励振電極23aと励振電極23gとを電気的に接続するとともに、図示しない側面電極(第2の側面電極)を介して励振電極23dと励振電極23hとを電気的に接続する。これにより、この2つの側面電極間に電圧を印加すると、前述したように3つの圧電体基板を互いに同方向(同相)に厚み滑り振動させることができる。
このように3枚の圧電体基板を用いて振動片2Eを形成する場合、振動片2Eの厚み滑り振動の周波数をF[Hz]としたとき、3F[Hz]で厚み滑り振動するAT板を3枚用いればよい。
以上説明したような第6実施形態によっても、厚み滑り振動以外の振動を抑えつつ、厚み滑り振動を効率的に励振することができる。
【0074】
以上説明したような圧電デバイスは、各種の電子機器に適用することができ、得られる電子機器は、信頼性の高いものとなる。
本発明の圧電デバイス(圧電振動子)および電子部品付き圧電デバイスを備える電子機器としては、特に限定されないが、例えば、パーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラ、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等が挙げられる。
以上、本発明の振動片、振動子および圧電デバイスについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0075】
1…圧電デバイス 2…振動片 2A…振動片 2B…振動片 2C…振動片 2D…振動片 2E…振動片 3…パッケージ 21…第1の圧電体基板 21B…第1の圧電体基板 21C…第1の圧電体基板 22…第2の圧電体基板 22B…第2の圧電体基板 22C…圧第2の電体基板 23a…励振電極 23b…励振電極 23c…励振電極 23d…励振電極 23e…励振電極 23f…励振電極 23g…励振電極 23h…励振電極 24a…接続電極 24b…接続電極 24c…接続電極 25a…側面電極 25b…側面電極 26a…電極パッド 26b…電極パッド 27…スペーサー層 28…接合層 29…第3の圧電体基板 31…ベース基板 32…枠部材 33…蓋部材 34a…マウント電極 34b…マウント電極 35a…外部端子 35b…外部端子 35c…外部端子 35d…外部端子 39a…導電性接着剤 39b…導電性接着剤 100…AT板 100a…AT板 100b…AT板 101a…上面 101b…上面 102…下面 211B…凸部 211C…凹部 221B…凸部 221C…凹部 S…内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み滑り振動を励振する第1の基板と、
前記第1の基板に積層され、厚み滑り振動を励振する第2の基板と、
前記第1の基板の前記第2の基板とは反対側の主面上に配置されている第1の励振電極と、
前記第2の基板の前記第1の基板とは反対側の主面上に配置されている第2の励振電極と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されている第3の励振電極と、
前記第1の基板および前記第2の基板の側面に配置され、前記第1の励振電極と前記第2の励振電極とを電気的に接続している第1の側面電極と、
前記第1の基板および前記第2の基板のうちの少なくとも一方の基板の側面に配置され、前記第3の励振電極に電気的に接続されている第2の側面電極と、
を備えることを特徴とする振動片。
【請求項2】
前記第1の基板および前記第2の基板は、それぞれ、圧電材料で構成された圧電体基板である請求項1に記載の振動片。
【請求項3】
前記第1の基板および前記第2の基板は、前記第3の励振電極を介して互いに接合されている請求項2に記載の振動片。
【請求項4】
前記第3の励振電極に対して離間し、前記第1の側面電極付近における前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されたスペーサー層を備える請求項3に記載の振動片。
【請求項5】
前記第1の基板の前記第2の基板とは反対側の主面上に配置され、前記第1の励振電極から前記第1の基板の側面へ向けて延出されている第1の引き出し電極と、
前記第2の基板の前記第1の基板とは反対側の主面上に配置され、前記第2の励振電極から前記第2の基板の側面へ向けて延出されている第2の引き出し電極と、
を備え、
前記第1の引き出し電極および前記第2の引き出し電極は、前記第1の側面電極を介して互いに電気的に接続されている請求項2ないし4のいずれかに記載の振動片。
【請求項6】
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置され、前記第3の励振電極から前記第1の基板または前記第2の基板の側面に向けて延出されている第3の引き出し電極を備え、
前記第3の引き出し電極は、前記第2の側面電極に電気的に接続されている請求項5に記載の振動片。
【請求項7】
前記第1の基板または前記第2の基板の前記第3の励振電極とは反対側の主面上には、
前記第1の側面電極に電気的に接続されている第1の電極パッドと、
前記第2の側面電極に電気的に接続されている第2の電極パッドと、
が配置されている請求項6に記載の振動片。
【請求項8】
前記第1の基板および前記第2の基板は、それぞれ、水晶基板である請求項2ないし7のいずれかに記載の振動片。
【請求項9】
前記水晶基板は、水晶回転Y板である請求項8に記載の振動片。
【請求項10】
前記水晶回転Y板は、ATカット水晶基板、BTカット水晶基板、SCカット水晶基板のうちのいずれかである請求項9に記載の振動片。
【請求項11】
前記第1の基板および前記第2の基板は、互いに同一のカット角の水晶基板であり、
一方の水晶基板の結晶軸が他方の水晶基板をY’軸またはZ’軸まわりに180°回転させた結晶軸と同方向である請求項10に記載の振動片。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の振動片と、
前記振動片を収納するパッケージと、
を備えることを特徴とする振動子。
【請求項13】
請求項12に記載の振動子を備えることを特徴とする圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−90064(P2013−90064A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227309(P2011−227309)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】