説明

振動計および、物体の光学的測定方法

【課題】最大可測振動周波数を改善したレーザドップラー振動測定技術を提案する。
【解決手段】物体12によって反射された測定ビーム9と参照ビーム10とを干渉させるための光学干渉装置と、測定ビームと参照ビームとの間の周波数差からビート周波数を生成する光学周波数シフタとを備えたヘテロダイン振動計。ビームスプリッタと前記光学周波数シフタとは元ビーム8を回折させるための音響光学変調器2として1つの光学素子によって構成されている。音響光学変調器は進入する元ビームが少なくとも2つの回折ビームとして回折次数1の第1の回折ビーム及び回折次数−1の第2の回折ビームに分割するように構成され、この2つの回折ビームの一方が測定ビームとなり、他方の回折ビームが参照ビーム10となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元ビームを放射するビーム源と、元ビームを測定ビームと参照ビームとに分割するためのビームスプリッタと、参照ビームを物体によって少なくとも部分的に反射された測定ビームとを検出器上で干渉させるための光学干渉装置とを備えた、物体の光学振動測定を行うための振動計であって、特に、測定ビームと参照ビームとの間の周波数差からビート周波数を生成する光学周波数シフタを備えたヘテロダイン振動計として構成されたものに関する。さらに、本発明は、発生した元ビームを参照ビームと測定ビームとに分割し、参照ビームと測定ビームとの間の周波数差を取り出し、参照ビームと、物体によって反射された測定ビームとを検出器上で干渉させ、検出器の測定信号を評価する物体の光学的測定方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
物体の振動をレーザドップラー振動計によって無接触で測定することは公知である。この種の代表的な振動計は、ビーム源、ビームスプリッタ、光学干渉装置および検出器を備えている。
【0003】
ビーム源によって発生させられた元ビームはビームスプリッタによって測定ビームと参照ビームとに分割される。複数の光学素子からなっていてよい光学干渉装置によって測定ビームは物体上に導かれ、測定さるべき物体により少なくとも部分的に反射された測定ビームは再び光学干渉装置によって参照ビームと検出器上で干渉させられることから、検出器によって測定ビームと参照ビームとの間の重畳信号または干渉信号の測定が可能である。
【0004】
物体表面の運動ないし振動によって測定ビームの周波数は影響を受けるため、測定ビームと参照ビームとの重畳(干渉)信号から物体の運動、特に物体表面の運動速度または振動周波数を推測することが可能である。
【0005】
この場合、ビーム源は単色ビームを発生するか、または少なくとも、十分に大きなコヒーレンス長を持ったビームを発生しなければならない。一般にレーザがビーム源として使用される。
【0006】
さらに、振動計をヘテロダイン振動計として構成することも知られている。その際、光学周波数シフタによって測定ビームと参照ビームとの間の周波数差が取り出される。この検出器測定信号において、測定ビームと参照ビームとの重なり合い(干渉)から、測定ビームと参照ビームとの間の周波数差に相当するビート周波数をもった測定信号が生成される。
【0007】
ヘテロダイン振動計により、測定さるべき物体の運動速度のみならず運動方向も決定することができる。さらに、ヘテロダイン振動計の使用により、測定信号の評価に際する利点、特には低周波域における技術的な雑音を低減することができる。
【0008】
マイクロシステム技術の技術的進展に伴い、高い振動周波数ないし運動速度をもった小さな物体の測定が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の目的は、従来の振動計ないし方法に比較して最大可測振動周波数ないし最大可測運動速度の向上を実現する、物体の光学振動測定を行うためのレーザドップラー振動計と物体の光学的測定方法とを提案することである。さらに、前記振動計ないし前記方法はコスト経済的な実現可能性とエラー不感性に優れたものでなければならない。同じく、元ビームと測定ビームないし参照ビームとの間の輝度損失も少なくなることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の重要な基礎的事項は、ヘテロダイン振動計において最大可測振動周波数はビート周波数すなわち測定ビームと参照ビームとの間の周波数差に依存しているということである。ビート周波数が高ければ高いほど、最大可測振動周波数もそれだけいっそう高くなる。
本発明による振動計では、前記ビーム源によって発生させられた元ビームは前記ビームスプリッタに当たり、前記ビームスプリッタによって測定ビームと参照ビームとに分割され、光学干渉装置は、測定さるべき物体によって少なくとも部分的に反射された測定ビームと前記参照ビームとを検出器上で干渉させるように構成されていることで、前記検出器によって測定ビームと参照ビームから生ずる干渉信号が測定可能となっている。
さらに、本発明による振動計は、光学周波数シフタを備えたヘテロダイン振動計として構成されている。前記光学周波数シフタは振動計の光路に配置されているため、測定ビームと参照ビームとの間に周波数差が生成され、これに応じて、重ね合わされた測定ビームと参照ビームの前記干渉信号に前記周波数差に相当するビート周波数が生ずる。
ここで重要な点は、ビームスプリッタと光学周波数シフタとが音響光学変調器として1つの光学素子によって構成されていることである。前記音響光学変調器によって前記元ビームの回折が行われ、こうして、前記音響光学変調器から少なくとも2つの回折ビーム、すなわち回折次数1の第1の回折ビームならびに回折次数−1の第2の回折ビームが出る。
前記回折ビームの一方が測定ビームとなり、他方の回折ビームが前記参照ビームとなるように、振動計の光路に前記音響光学変調器が配置されている。したがって、前記測定ビームは回折次数1の回折ビームであり、前記参照ビームは回折次数−1の回折ビームとなるか、またはその逆でとなる。
【0011】
本発明の根底をなしているのは、回折次数1と−1との回折ビームを使用することにより、従来のように単に1本のビーム、例えば参照ビームの光路にその周波数を遷移させるべく配置された音響光学変調器を使用する場合に比較して、測定ビームと参照ビームとの間に2倍の高さの周波数差を取り出すことができるという本願出願人の知見である。
【0012】
それゆえ、本発明による振動計は従来よりも高いビート周波数と従来よりも高い最大可測振動周波数とを可能にする。同時に本発明による振動計は、ビームスプリッタならびに光学周波数シフタとしての単一の音響光学変調器の使用によって、コスト的に優れ、かつエラーのない製造が可能となる。
【0013】
より高い回折次数を使用することも基本的には可能であるが、ただし、回折次数2と−2との回折ビームを使用した場合には、回折次数1と−1との回折ビームを使用する場合に比較して、元ビームの輝度に比して遥かに高い輝度損失がもたらされる。
【0014】
好ましくは、前記音響光学変調器はブラッグセル、特にスローシェア-モードブラッグセル(slow-shear-mode Bragg cell)として構成されるとよい。つまり、ブラッグセルへの音波の入射により、所定の周波数差を有した回折次数1と−1との所望の回折ビームの送り出す所望の回折格子が生成される。
【0015】
回折次数1と−1との回折ビームの生成を目的とした音響光学変調器の使用はそれ自体として公知であり、たとえば“Acoustooptic TeO2 tunable filter using far−off−axis anisotropic bragg difraction”,T.Yano and A.Watanabe,appied optics,vol.15,no.9,September 1976”および“AOTF−bases system for image cytometry”,Bartec Rajwa et.al.,Proc.SPIE volume 5694−spectral imaging; instrumentation,application and analysis III(2005)”に記載されている。とりわけ、音響光学変調器の材料としてのTeO2の使用は好適である。
【0016】
さらに、前記音響光学変調器を“スローシェア-モード(slow-shear-mode)で動作するように構成するのが好適である。音響光学変調器のそれ自体公知のこうした使用は、音響光学変調器の結晶構造の周期的圧縮ではなく、ずれを生ずる音波が音響光学変調器に入射されることを予定している。これにより、相対的に低出力の音波の入射によって音響光学変調器に所望の回折格子を生成することが可能であるため、よりコスト的に有利であると共に、より強固な構造を実現することができる。
【0017】
前記ビーム源は所定の出力波長の単色ビームを発生するか、または所定の最小コヒーレンス長の少なくとも1つのビームを生ずるように構成されていると好適である。特に好ましくは、前記ビーム源はレーザ、特に、さらに好ましくはは波長532nmのDPSSレーザ(Diode Pumped Solid State Laser)[ダイオードポンピング固体レーザ]として構成されている。特に、発生した光線の標準波長1064nmが二倍波結晶(Verdopplungskristall)によって532nmに減少させられるDPSS−Nd:Yagレーザの使用が適している。
【0018】
測定ビームと参照ビームにとっての最適な輝度を達成すべく、前記音響光学変調器は、好ましくは、回折次数1の回折ビームの最大輝度にとって最適な元ビーム入射角が、回折次数−1の回折ビームの最大輝度にとって最適な元ビーム入射角と同じであり、この最適化が少なくとも入射元ビームの波長に当てはまるように構成されている。こうして、測定ビームと参照ビームの最適化された輝度が保証されている。
【0019】
前記振動計は前記検出器の測定信号を評価するための評価ユニットを備えていることが好ましい。
【0020】
本発明による振動計により、高い振動周波数の測定が可能であるが、それには、前記検出器の測定信号のディジタル評価に際して、相応した高いサンプリング周波数が必要である。
したがって、前記検出器の測定信号の評価は同期して行われるのではなく、前記検出器の測定信号がディジタル化されて、記憶媒体に書き込まれるようにするのが特に好適である。これにより、所定のサンプリング周波数と共に相応した評価速度も実時間処理における制限を受けることがなくなる。
【0021】
ディジタル化デバイスは、前記検出器の測定信号のサンプリングと所定のサンプリング時間によるディジタルデータの相応したディジタル化と記憶とが保証されるように構成されていなければならない。特に、前記検出器の測定信号を蓄積型オシロスコープによってディジタル化および/または記憶するのが好適である。
【0022】
ディジタル化された測定信号の本来の評価は“オフライン”で、つまりサンプリングとは時間的に独立して行われるとよい。
したがって、本発明による好適な振動計は、評価ユニット、記憶デバイス、およびディジタル化デバイスを備えており、前記ディジタル化デバイスは前記検出器と連係して、前記検出器の測定信号が所定のサンプリング時間で前記ディジタル化デバイスによってディジタル化可能であると共に、ディジタル化された形で前記記憶デバイスに記憶するように構成されている。
【0023】
本願出願人の研究の結果、前記ビート周波数の少なくとも2倍、特に少なくとも4倍、好ましくは前記ビート周波数の6倍のサンプリング周波数が好適であることが判明した。本発明による装置ならびに本発明による方法の通例のビート周波数は600MHzであることから、前記サンプリング周波数は1.2GHz以上、特に2.4GHz以上、好ましくは3.6GHz以上とすることが好適である。
【0024】
本発明による振動計は、好適には前記検出器の測定信号を復調するための評価ユニットを備え、さらに、前記記憶デバイスは記憶されたディジタルデータを出力するためのデータ出力部を有し、前記評価ユニットは前記ディジタルデータを読込むためのデータ入力部を有している。前記評価ユニットは前記記憶デバイスと連係して、前記記憶されたディジタル測定信号の上述したようなオフライン復調が実施されるように構成されている。
【0025】
音響光学変調器の使用時には通例、回折次数1と−1の所望の回折ビームの他に、その他の回折ビーム、特に回折次数0の回折ビームも前記音響光学変調器から送り出す。したがって、本発明による好適な振動計の1つは少なくとも1つのビームトラップを備え、このビームトラップは回折次数1と−1の回折ビームを除く1または複数の回折ビーム、特に回折次数0の回折ビームを吸収するように、前記音響光学変調器の光路に配置されている。
それゆえ、本発明は、最大可測振動周波数の向上は元ビームの、回折次数1と−1の回折ビームの使用によって達成されるとの知見を基礎としている。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明による物体の光学的測定方法は以下のステップを備えている、まず
方法ステップAにおいて元ビームが発生させられ、方法ステップBにおいて前記元ビームは参照ビームと測定ビームとに分割されて、参照ビームと測定ビームとの間の周波数差が取り出され、方法ステップCにおいて、前記参照ビームと、物体によって少なくとも部分的に反射された測定ビームとを検出器上で干渉させ最後に、方法ステップDにおいて、前記検出器の測定信号の評価が行われる。この発明にとって重要な点は、方法ステップBにおいて元ビームの分割と周波数差の取り出しとが音響光学変調器によって実施され、元ビームが前記音響光学変調器によって少なくとも2つの回折ビームに、すなわち回折次数1の回折ビームと回折次数−1の回折ビームとに分割されることである。その際、前記2つの回折ビームの一方は参照ビームとなり、他方の回折ビームは測定ビームとなる。
さらにステップBにおいて、前記音響光学変調器により、参照ビームと測定ビームとの間の周波数差が求められる。
【0027】
本発明による方法の好適な実施態様の1つでは、ステップDにて、前記検出器の測定信号はディジタル化され、ディジタル化された形で記憶媒体に記憶される。特に、ステップDにおいて、前記測定信号の評価は、ディジタル化された形で記憶された前記測定信号が評価ユニットによって読み出されて評価されることが好適である。
【0028】
最大可測振動周波数のさらなる向上を可能にする物体の光学的測定方法は、元ビームを発生させるステップAと、前記元ビームを参照ビームと測定ビームとに分割し、所定のビート周波数fに相当する、参照ビームと測定ビームとの間の周波数差を取り出すステップBと、前記参照ビームと、物体によって少なくとも部分的に反射された前記測定ビームとを検出器上で干渉させるステップCと、前記検出器の前記測定信号を評価するステップDとを備え、
前記ステップBにおいて、前記元ビームの分割と前記周波数差の取り出しとは1つの音響光学変調器により、前記元ビーム)が少なくとも2つの回折ビームとして回折次数1の回折ビームと回折次数−1の回折ビームとに分割されて、前記2つの回折ビームの一方は前記参照ビームとされ、他方の回折ビームは前記測定ビーム(9)とされ、さらに、前記ステップBにおいて、前記音響光学変調器によって参照ビームと測定ビーム(9)との間の周波数差が取り出される。そして、前記ステップDは以下のステップ、
所定のサンプリング周波数fで前記検出器の前記測定信号をサンプリングして、所定の数n個の測定値が得られるステップD1と、
前記検出器の前記測定信号の各々の測定値A[i](i=1,2…,n)を各々の測定値につきディジタル化された形で記憶するステップD2と、
記憶された前記測定値A[i](i=1,2…,n)から離散フーリエ変換または高速フーリエ変換によって複素スペクトルF[i](i=1,2…,n)を決定するステップD3と、
所定の数m>0につき総計n+2m個の値を有する拡張複素スペクトルFerw[j](Ferw[j];j=1,2…,n+2m)を決定するステップD4とを備えている。
さらに前記決定するステップは以下のサブステップ、
周波数分解能としての離散スペクトルの周波数線間の距離ΔFを決定するサブステップiと、
生じ得る丸め誤差を許容した上でのf=F[i]の成立である、複素スペクトル中のビート周波数fの指数iを決定するサブステップiiと、
指数ic,erw=i+m: Ferw[ic,erw]=F[i]での拡張スペクトル中のビート周波数を確定するサブステップiiiと、
erw[i+m]=F[i](式中、iは奇数nについてはすべての指数2…(n+1)/2を表し、偶数nについては2…n/2+1を表す)に対する値Ferw[i]を決定するサブステップivと、
−CC(x)は複素数xの負の複素共役を表しているところの式、Ferw[ic,erw−i]=−CC(Ferw[ic,erw+i])を通じて、指数i=(1,2,…,ic,erw−2)に関する値であるFerw[ic,erw−i]を決定するサブステップvと、
条件として、偶数n+2mについてはFerw[iH,erw]=Ferw[iL,max+m−iL,erw+1]、奇数n+2mについてはFerw[iH,erw]=Ferw[iL,max+m−iL,erw+2]、その際、指数に関しては、iL,erw=2,3,…iL,max+m
H,erw=iL,max+m+1,…,n+2mとなっているところの、
値Ferw[iH,erw]を決定するサブステップviと、
拡張複素スペクトルFerwを時間域に逆変換するサブステップviiと、
逆変換された拡張複素スペクトルFerwを拡張ビート周波数fc,erw=f+mΔFを使用して復調するサブステップviiiと、
を備えている。
本発明によるこの方法は最大可測振動周波数の向上をもたらし、この方法だけで使用できるだけでなく、または先述した方法とのコンビネーションによって使用可能である。双方の方法がコンビネーションされる場合には最大可測振動周波数のさらなる向上が達成される。
この本発明による方法は、前記検出器の測定信号の評価手順の改良によって最大可測振動周波数のさらなる向上がもたらされるとの本願出願人の知見を基礎としている。
【0029】
この本発明による方法は、すでに先述した方法ステップA〜Dを含んでいる。
重要な点は、ステップDが以下のステップを含んでいることである;つまり、
ステップD1において、前記検出器の測定信号が所定のサンプリング周波数fで所定のサンプリング時間Tにわたってサンプリングされる。これによって、所定の数n=rd[f]+1のサンプリング動作が生ずるが、ここでrd[x]は丸めによって決定された、xに最も近い整数であることから、前記所定の数nは自然数である。したがって、ステップD1において、前記検出器の測定信号の時間的離散化が行われる。
ステップD2において、前記サンプリング動作で得られた測定値は各々の測定動作につきディジタル化された形の測定値A[i]として記憶される。この記憶はステップB1に述べられたサンプリング動作と同時かまたはバッファ記憶デバイスを経て時間的にずらされて行われることができる。それゆえ、総計n個の測定値がディジタル化された形で記憶される。
【0030】
ステップD3において、前記記憶された測定値から、それ自体公知の周波数変換、例えば離散フーリエ変換(DFT)、高速フーリエ変換(FFT)または離散ハートレー変換(DHT)によって、複素スペクトルF[i]が決定される。この複素スペクトルはn個の値F[i](i=1,2,...,n)を含んでいる。前記離散測定値からのこの複素スペクトルの決定はそれ自体公知であり、特に離散フーリエ変換を使用することが好適である。離散測定値の総数が2乗に一致していれば、高速フーリエ変換が使用される。離散フーリエ変換の使用は、例えば以下の書籍、E.Oran Brigham,“FFT Schnell Fourier−Transformation”,4.R.Oldenbourg Verlag 1989,ISBN 3−486−21332−6、p113〜135に述べられており、高速フーリエ変換は同書、p181〜207に述べられている。
【0031】
重要な点は今や、ステップD4において拡張複素スペクトルが決定されることである。この拡張スペクトルの決定は以下の知見を基礎としている。以下の式では、数学において通例のように、乗算演算子は基本的には明示されていないが、特別な場合だけは「・」で示されている。
【0032】
基本的に離散DFTまたはFFTスペクトルは信号オフセットにつき常に1個のエントリのみを有しており、つまり周波数0に関するリスト中の第1のエントリを有している。実際の時間信号につき前記スペクトルは、偶数nについては指数F[i]=F[iL,max−i+1]を経て、奇数nについてはF[i]=F[iL,max−i+2]を経て再反射されて見出されるが、ここでiは奇数nについてはすべての指数2…(n+1)/2であり、偶数nについては2…n/2+1である。iに属する最大の指数はiL,maxと称される。iはiに属さないiの1以上のすべての指数である。すなわち、偶数nの場合には、最高周波数値F[iL,max]はリスト中に1回だけ現れる。双方のケースにおいて、i=i=1の場合にオフセットエントリが1回だけ生ずる。個々の離散周波数線はΔF=F[i+1]−F[i]=1/Tだけ互いに離間しており、ここでTはステップD1におけるサンプリング動作の総サンプリング時間である。
【0033】
重要な点は、ステップD4において2m個以上のエントリを有する拡張複素スペクトルFerwが決定されることであり、ここでm∈Nである。
【0034】
先ず、複素スペクトル中のビート周波数fの指数i、つまりf=F[i]が成立する指数が決定される。したがって、指数iは複素スペクトル中のいずれの離散変数F[i]がビート周波数fに一致しているかを表している(iの決定に際する、場合によって生じ得る丸め誤差を除く)。
【0035】
前記拡張スペクトルの作成に際する基本思想は、ビート周波数はiの領域でm位だけ大きい指数の方向にずらされ、f=F[i]→Ferw=f+mΔF=f[ic,erw=i+m]、これにより、前記ずらされたビート周波数よりも大きな指数を有する周波数エントリ(i>i)は、エントリの等価ずらしによって、ビート周波数に対して同じ距離のままである(Ferw[i+m]=F[i])、ということである。これにより、iにつき総計m個以上のエントリを要する、したがって、Number(iL,erw)=m+Number(i)の、新しい離散スペクトルFerwが生ずる。ここで、Number(ix)は指数ixの数を表している。ic,erwよりも小さい指数を有するエントリはiよりも大きな指数を有するF[i]のエントリから構成される(これらのエントリは今や、ic,erwよりも大きな指数を有するエントリFerw[i]に一致している)。これらのエントリのうち負の複素共役値が取り去られる。つまり、ic,erwよりも小さな指数を有するFerwのエントリがFerw[ic,erw−j]=−CC(Ferw[ic,erw+j])=CC(F[i+j])によって計算される。ここでj=1,2,…,ic,erw−2である。つまり、指数i<iを有する本来の周波数エントリは使用されず、したがって、抹消される。このようにして、本来のビート周波数よりも小さい周波数時の外乱効果が抑止される、mΔFだけずらされたビート周波数を有したスペクトルが構成される。時間域への逆変換のための逆離散または逆高速フーリエ変換の標準アルゴリズムを適用し得るようにすべく、さらにiH,erwに関するエントリが決定されなければならない。これらのエントリはエントリiL,erwと同様にして計算可能であるかまたは、各々の時間の偶数nおよび奇数nにつきそれぞれ以下の式F[i]=F[iL,max−i+]及びF[i]=f[iL,max−i+2]によって、インデックスiLerwを有するエントリから決定することが可能である。ハートレー変換による同様な評価も同じく可能である。
【0036】
帯域幅の拡張による上述した評価にとって十分な情報が測定値から得られるようにするには、測定値が測定されるサンプリング周波数は十分高く選択されなければならない。基本的に、iL,maxは前記拡張スペクトルの構成前に少なくとも2i+m−1でなければならない。さらに、iL,maxはサンプリング周波数が高まると共に同じく増大するとの関係が当てはまる。したがって、サンプリング周波数は、n+2mが奇数である限り、iL,maxは2i+m−1以上であり、n+2mが偶数である限り、iL,maxは2i+m−2に以上であるように、十分高く選択されなければならない。例えば、ビート周波数が600MHzであって、評価に際して、帯域幅を2倍(1.2GHz)に引上げようとすれば(m=i)、サンプリング周波数は少なくともビート周波数の6倍、つまり少なくとも3.6GHzでなければならない。
【0037】
ヘテロダイン干渉計において小さな振動は位相変調された搬送波(信号波)を生じ、この搬送波の右および左の側波帯は互いに定まった位相関係にあるとのことは一般的な特性であり、すなわち、搬送波の右のベッセル線がJsin(2π(f−fmod)t)に達していれば、搬送波の左のベッセル線には−Jsin(2π(f−fmod)t)が当てはまる。信号処理の目標はまさにこの特性を利用することであり、それゆえ、周波数成分f(ここでf>f)から拡張スペクトルを構成するあらゆる別法は同等である。
【0038】
本発明による好適な方法において、サンプリング時間はビート周波数の周期Tcの整数倍つまりT=N・Tc=N/f(ここでNは自然数である)であるように選択されている。これにより、拡張スペクトルの計算に際するエラーは、ビート周波数が正確に離散スペクトルの線上にあるため、回避される。
【0039】
本発明による方法の好適な実施形態の1つでは、はステップD4に以下のステップを含んでいる。つまり、ステップD4において、所定の数m>0につき総計n+2m個の値を有する拡張複素スペクトルFerw[j]が決定される。すなわち、指数j=(1,2,…,n+2m)につきFerw[j]の値が決定されるが、この決定はさらに以下の方法ステップを含んでいる。
ステップiにおいて、前記離散スペクトルの周波数線間の距離ΔFが決定される。ΔFは周波数分解能としても知られている。これは好ましくは差ΔF=F[i+1]−F[i]の形成によって行なわれるが、ここでiは以下のように、すなわち、iは奇数nについてはすべての指数2…(n+1)/2を表し、偶数nについては2…n/2+1を表す、と定義されている。iに属する最大指数はiL,maxと称される。
ステップiiにおいて、複素スペクトル中のビート周波数fの指数i、つまり、f=F[i]が成立する指数が決定される。
この決定は好ましくはi=rd[(f/ΔF)+1]を経て行われるが、ここでrd[x]は丸めによって決定された、xに最も近い整数である。したがって、指数iは複素スペクトル中のいずれの離散変数F[i]がビート周波数fに一致しているかを表している(丸めによって場合により生じ得る誤差を除く)。
周波数分解能を総サンプリング時間を経て決定すること、つまりΔF=1/T、も同じく本発明の範囲内にある。
ステップiiiにおいて、指数ic,erw=i+mでの拡張スペクトル中のビート周波数がFerw[ic,erw]=F[i]を経て確定される。
ステップivにおいて、値Ferwは以下のように定義される:Ferw[i+m]=F[i]。
ステップvにおいて、指数i=(1,2,…,ic,erw−2)に対する値Ferw[ic,erw−i]がFerw[ic,erw−i]=−CC(Ferw[ic,erw+i]を経て決定されるが、ここで−CC(x)は複素数xの負の複素共役を表している。
ステップviにおいて、値F[iH,erw]が以下の計算規則つまり
偶数n+2mについてはFerw[iH,erw]=Ferw[iL,max+m−iL,erw+1]、奇数n+2mについてはFerw[iH,erw]=Ferw[iL,max+m−iL,erw+2]を経て決定されるが、ここで指数にはiL,erw=2,3,…iL,max+mおよびiH,erw=iL,max+1,…,n+2mが当てはまる。
ステップviiにおいて、拡張複素スペクトルFerw[j](j=1,2,…,n+m)は時間域に逆変換される。この変換は好ましくは逆離散フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を経て行われる。
ステップviiiにおいて、逆変換された拡張複素スペクトルFerwの復調が拡張ビート周波数fc,erw=f+mΔFを使用して行われる。
特に、拡張スペクトルにおいて2倍のビート周波数を選択すること、つまりmをm=rd[f/ΔF](ここで、rd[x]は丸めによって決定された、xに最も近い整数である)のように選択するのが好適である。これにより、fc,erw=f+mΔFはおおよそ(mの丸めに基づく誤差を除き)ビート周波数fの2倍に相当することが保証される。
先述した変数において、f,fおよびfc,erwは単位[1/s]を有し、変数Tは単位[s]を有している。
【0040】
好適な実施態様において、検出器からディジタル化デバイスまでの信号伝達路での複素周波数応答Gch(ω)はディジタルフィルタによって補償される。この場合、前記信号伝達路は信号への影響を引き起こし得る一切の装置要素、特に光学素子、検出器ならびに電気ケーブルおよびプラグを含んでいる。前記補償は離散スペクトルの場合、複素離散スペクトルGch[i]による要素ごとの増倍がエントリとして1を有するベクトルGch[i]Gkomp[i]=1を生ずるように選択された複素離散周波数応答Gkomp(ω[i])=Gkomp[i]によって行われることができる。別法として、(たとえば逆離散フーリエ変換、逆高速フーリエ変換または逆離散ハートレー変換を経て)逆変換された周波数応答Gkomp[i]を記憶された検出器信号の時間信号で畳み込むことも可能である。
【0041】
Gkomp[i]はGch[i]の逆離散伝達関数である(Gkomp[i]=Gch−1[i])。逆伝達関数による伝達路の上記フィルタリングはそれ自体公知であり、例えば、Otto Follinger,Regelungstechnik,8.uberarbeitete Auflage,Huttig Buch Verlag,Heidelberg,1994,p74に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による振動計を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図1に示した本発明による振動計の一例を参照して、好適な実施態様を記述し、説明する。
【0044】
図1に示した本発明による振動計は、レーザ1として構成されたビーム源1と、ブラッグセル2として構成された、ビームスプリッタと光学周波数シフタとの機能を一体化した音響変調器ならびに、2個のフォトダイオード3a,3bを有する検出器とを備えている。検出器を1個のフォトダイオードのみで形成することも同じく本発明の範囲内にある。
【0045】
振動計はさらに、複数の光学素子、つまりミラー(方向転換鏡)4a,4b、ビームスプリッタ5a,5b、光学レンズ6a,6bならびにλ/4波長板7を有する光学干渉装置を備えている。
【0046】
レーザ1は元ビーム8を発生し、この元ビームはブラッグセル2で回折されて、回折次数1の回折ビームと回折次数−1の回折ビームを生ずる。ブラッグセル2は光学干渉装置の光路に、回折次数−1の回折ビームが測定ビーム9となり、回折次数1の回折ビームが参照ビーム10となるようにして配置されている。さらにブラッグセルから生ずる回折次数0のビームはビームトラップ11によって吸収される。
測定ビーム9は、ミラー4b、ビームスプリッタ5b、レンズ6a,6bならびにλ/4波長板7によって、振動している測定さるべき物体12上に導かれる。
【0047】
物体12によって少なくとも部分的に反射された測定ビーム9は再び振動計の、特に光学干渉装置の光路に進入し、λ/4波長板7、レンズ6b,6a、ビームスプリッタ5bおよびビームスプリッタ5aを経てフォトダイオード3a上に導かれる。
参照ビーム10はミラー4aとビームスプリッタ5aとを経て同じくフォトダイオード3a上に導かれるため、フォトダイオード3aの検出面上で測定ビームと参照ビームとは重ね合わされ、こうして、フォトダイオード3aによって測定ビームと参照ビームの干渉信号が測定可能である。
【0048】
ブラッグセル2はさらに音響光学変調器として構成されており、不図示の音響励起装置により測定ビーム9と参照ビーム10との間に周波数差を生じさせるように音波が与えられる。
【0049】
レーザ1は周波数二倍化されたNd:Yagレーザとして構成されており、波長532nmの単色光を発生する。ブラッグセルは測定ビームと参照ビームが約612MHzの周波数差を有するように構成されている。
したがって、図1に示した振動計はビート周波数が612MHzのヘテロダイン振動計である。
【0050】
ここでは、ブラッグセル2は、ブラッグセル2への元ビーム8の入射角につき、同時に回折次数1の回折光の最大輝度も回折次数−1の回折光の最大輝度も生じているため、測定ビームと参照ビームの輝度に関する輝度最適化が達成されるように構成されている。
【0051】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元ビームを放射するビーム源(1)と、前記元ビームを測定ビーム(9)と参照ビーム(10)とに分割するためのビームスプリッタと、前記参照ビームを物体(12)によって少なくとも部分的に反射された測定ビーム(9)と干渉させるための光学干渉装置と、検出器とを備え、光学干渉装置と検出器とは連係して、前記測定ビーム(9)と前記参照ビーム(10)とを前記検出器上で干渉させるように構成されている物体(12)の光学振動測定を行うための振動計であって、前記振動計は、前記振動計の光路に配置された、測定ビームと参照ビーム(10)との間の周波数差からビート周波数を生成する光学周波数シフタを備えたヘテロダイン振動計として構成されており、
前記ビームスプリッタと前記光学周波数シフタとは前記元ビームを回折させるための音響光学変調器として1つの光学素子によって構成され、
前記音響光学変調器は前記音響光学変調器に進入する元ビーム(8)が少なくとも2つの回折ビームとして回折次数1の第1の回折ビーム及び回折次数−1の第2の回折ビームに分割するように構成され、
前記2つの回折ビームの一方が前記測定ビーム(9)となり、他方の回折ビームが前記参照ビーム(10)となるようにして前記音響光学変調器が前記振動計の光路に配置されていることを特徴とする振動計。
【請求項2】
前記音響光学変調器がスローシェア-モードブラッグセル(2)として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動計。
【請求項3】
前記ビーム源が所定の波長の単色ビームを発生するように構成され、前記音響光学変調器が少なくとも前記所定の波長の入射ビームにつき、回折次数1の回折ビームの最大輝度にとっての最適入射角が回折次数−1の回折ビームの最大輝度にとっての最適入射角と同じであるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の振動計。
【請求項4】
前記振動計が前記検出器の測定信号を評価するための評価ユニットを備え、前記評価ユニットが記憶デバイスとディジタル化デバイスとを含み、前記ディジタル化デバイスが前記検出器と連係して前記検出器の測定信号を所定のサンプリング周波数でディジタル化するとともにディジタル化された形で前記記憶デバイスに記憶するように構成され、前記サンプリング周波数は前記ビート周波数の少なくとも2倍であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の振動計。
【請求項5】
前記振動計が前記検出器の前記測定信号を復調するための評価ユニットを備え、前記記憶デバイスが前記記憶されたディジタルデータを出力するためのデータ出力部を有し、前記評価ユニットがディジタルデータを読込むためのデータ入力部を有し、前記評価ユニットが前記記憶されたディジタル測定信号をオフライン復調するために前記記憶デバイスと連係するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の振動計。
【請求項6】
前記振動計が少なくとも1つの光学ビームトラップ(11)を備え、前記光学ビームトラップは回折次数1および−1の回折ビームを除く1または複数の回折ビームである、主に回折次数0の回折ビームを吸収するようにして前記音響光学変調器の光路に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の振動計。
【請求項7】
元ビームを発生させるステップAと、
前記元ビームを参照ビームと測定ビーム(9)とに分割し、参照ビームと測定ビームとの間の周波数差を取り出すステップBと、
前記参照ビームと、物体(12)によって少なくとも部分的に反射された前記測定ビームとを検出器上で干渉させるステップCと、
前記検出器の前記測定信号を評価するステップDと、
からなる物体の光学的測定方法であって、
ステップBにおいて、前記元ビームの分割と前記周波数差の取り出しとは1つの音響光学変調器により、前記元ビーム(8)が少なくとも2つの回折ビームとして回折次数1の回折ビームと回折次数−1の回折ビームとに分割されて、前記2つの回折ビームの一方は前記参照ビーム(10)とされ、他方の回折ビームは前記測定ビーム(9)とされ、
ステップBにおいて、さらに、前記音響光学変調器によって参照ビームと測定ビーム(9)との間の周波数差が取り出されることを特徴とする方法。
【請求項8】
ステップDにおいて、前記検出器の測定信号はディジタル化され、ディジタル化された形で記憶媒体に記憶され、ステップDにおいて、前記測定信号の評価は、ディジタル化された形で記憶された前記測定信号が評価ユニットによって読み出されて評価されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
元ビームを発生させるステップAと、
前記元ビームを参照ビームと測定ビーム(9)とに分割し、所定のビート周波数fに相当する、参照ビームと測定ビームとの間の周波数差を取り出すステップBと、
前記参照ビームと、物体(12)によって少なくとも部分的に反射された前記測定ビームとを検出器上で干渉させるステップCと、
前記検出器の前記測定信号を評価するステップDとからなる光学的測定を行うための方法であって、
前記ステップBにおいて、前記元ビームの分割と前記周波数差の取り出しとは1つの音響光学変調器により、前記元ビーム(8)が少なくとも2つの回折ビームとして回折次数1の回折ビームと回折次数−1の回折ビームとに分割されて、前記2つの回折ビームの一方は前記参照ビーム(10)とされ、他方の回折ビームは前記測定ビーム(9)とされ、
前記ステップBにおいて、さらに、前記音響光学変調器によって参照ビームと測定ビーム(9)との間の周波数差が取り出され、
前記ステップDは以下のステップ、
所定のサンプリング周波数fで前記検出器の前記測定信号をサンプリングして、所定の数n個の測定値が得られるステップD1と、
前記検出器の前記測定信号の各々の測定値A[i](i=1,2…,n)を各々の測定値につきディジタル化された形で記憶するステップD2と、
記憶された前記測定値A[i](i=1,2…,n)から離散フーリエ変換または高速フーリエ変換によって複素スペクトルF[i](i=1,2…,n)を決定するステップD3と、
所定の数m>0につき総計n+2m個の値を有する拡張複素スペクトルFerw[j]、ここでj=1,2…,n+2m、を決定するステップD4とを備え、
さらに前記決定するステップは以下のサブステップ、
周波数分解能としての離散スペクトルの周波数線間の距離ΔFを決定するサブステップiと、
生じ得る丸め誤差を許容した上でのf=F[i]の成立である、複素スペクトル中のビート周波数fの指数iを決定するサブステップiiと、
指数ic,erw=i+m: Ferw[ic,erw]=F[i]での拡張スペクトル中のビート周波数を確定するサブステップiiiと、
erw[i+m]=F[i](式中、iは奇数nについてはすべての指数2…(n+1)/2を表し、偶数nについては2…n/2+1を表す)に対する値Ferw[i]を決定するサブステップivと、
−CC(x)は複素数xの負の複素共役を表しているところの式、Ferw[ic,erw−i]=−CC(Ferw[ic,erw+i])を通じて、指数i=(1,2,…,ic,erw−2)に関する値であるFerw[ic,erw−i]を決定するサブステップvと、
条件として、偶数n+2mについてはFerw[iH,erw]=Ferw[iL,max+m−iL,erw+1]、奇数n+2mについてはFerw[iH,erw]=Ferw[iL,max+m−iL,erw+2]、その際、指数に関しては、iL,erw=2,3,…iL,max+m
H,erw=iL,max+m+1,…,n+2mとなっているところの、
値Ferw[iH,erw]を決定するサブステップviと、
拡張複素スペクトルFerwを時間域に逆変換するサブステップviiと、
逆変換された拡張複素スペクトルFerwを拡張ビート周波数fc,erw=f+mΔFを使用して復調するサブステップviiiと、
を備えていることを特徴とする物体の光学的測定方法。
【請求項10】
前記所定の数mとして、m=rd[f/ΔF]、
ここで、rd[x]は丸めによって決定された、xに最も近い整数である、
が選択されることを特徴とする請求項9に記載の物体の光学的測定方法。
【請求項11】
サンプリング時間が前記ビート周波数の周期Tcの整数倍、すなわちT=N・Tc=N/f(ここで、Nは自然数である)であるように選択されることを特徴とする請求項9または10に記載の物体の光学的測定方法。
【請求項12】
検出器からディジタル化デバイスまでの信号伝達路での複素周波数応答Gch(ω)がディジタルフィルタによって補償され、前記補償は、離散スペクトルの場合、複素離散スペクトルGch[i]による要素ごとの増倍がエントリとして1を有するベクトルGch[i]Gkomp[i]=1を生ずるように選択された複素離散周波数応答Gkomp(ω[i])=Gkomp[i]によって行われるか、または逆変換された周波数応答Gkomp[i]が記憶された検出器信号の時間信号で畳み込まれることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の物体の光学的測定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−250983(P2009−250983A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90146(P2009−90146)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(598126324)ポリテック・ゲー・エム・ベー・ハー (8)
【氏名又は名称原語表記】POLYTEC GMBH
【住所又は居所原語表記】POLYTECPLATZ 1‐7, D‐76337 WALDBRONN, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】