説明

振幅変調装置の異常診断装置

【課題】レゾルバ20の異常を検出できないおそれがあること。
【解決手段】回転子10aの回転角度θの情報を含む一対の検出信号(A相被変調波Sa,B相被変調波Sb)は、2次側コイル24,26の電圧を差動増幅回路30,32に入力した出力信号として生成される。差動増幅回路30,32は、2次側コイル24,26との接続が途絶えると、出力信号を固定値とする。A/D変換器34,36は、A相被変調波Sa,B相被変調波Sbを、励磁信号Scの周期「2π/ω」とは相違するサンプリング周期Tでサンプリングする。サンプリング信号SA,SBの変動量に基づき異常の有無を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送波の振幅を変調して被変調波を生成する振幅変調装置について、該装置の異常の有無を診断する振幅変調装置の異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の振幅変調装置としては、例えば下記特許文献1に見られるように、ロータとともに回転する第1コイルに励磁信号によって磁束を生じさせ、この磁束によって第2コイルに誘起される電圧に基づき、ロータの第1コイルの回転角度を検出するレゾルバが周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3136937公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ロータとともに回転するコイルと、その電圧を検出する手段との間の電気経路が断線する場合等にあっては、レゾルバの出力は回転角度を表現するものとならない。このため、レゾルバの出力が正常であるか否かを確かめる機能が望まれる。
【0005】
なお、上記レゾルバに限らず、搬送波の振幅を変調して被変調波を生成する振幅変調装置にあっては、その動作が正常になされているか否かを確かめることが望まれるこうした実情の概ね共通したものとなっている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、搬送波の振幅を変調して被変調波を生成する振幅変調装置について、該装置の異常の有無を適切に診断することのできる新たな振幅変調装置の異常診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、搬送波の振幅を変調して被変調波を生成する振幅変調装置について、該装置の異常の有無を診断する振幅変調装置の異常診断装置において、前記搬送波および前記被変調波の少なくとも一方を、前記搬送波の周期とは相違する間隔でサンプリングするサンプリング手段と、該サンプリング手段によるサンプリング値に基づき前記異常の有無を診断する診断手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
搬送波の周期をサンプリング周期として周期的にサンプリングを行なう場合、被変調波の振幅は搬送波の1の位相に対応したものとなる。このため、被変調波の変動が制限されることで、異常と正常との区別が困難となるおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、搬送波の周期とは相違する間隔でサンプリングを行なうことでこうした問題を回避することができ、ひいては異常の有無を好適に診断することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記サンプリング手段は、前記被変調波をサンプリングすることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記振幅変調装置は、前記被変調波を出力する手段と、該手段と前記サンプリング手段との間の信号の伝播経路が断線する場合に前記サンプリング手段に入力される信号を固定値とする固定手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、断線異常が生じた場合にサンプリング手段の入力値が固定されるため、サンプリング値が固定値となる。これに対し、正常である場合には、搬送波の変動に同期してサンプリング値が変動すると考えられる。このため、異常の有無を的確に診断することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記固定値は、前記被変調波の振幅中心値とは相違した値であることを特徴とする。
【0014】
変調波が振幅中心値を取る間、搬送波の変動にかかわらず、被変調波は振幅中心値に固定される。このため、固定値を振幅中心とする場合には、振幅中心に固定された理由が、変調波が振幅中心値を取るためか、断線異常が生じたためかを識別することができない。上記発明では、この点に鑑み、振幅中心を避けて固定値を設定する。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記振幅変調装置は、前記搬送波によって励磁される第1コイルと、該第1コイルによって生成される磁束と磁気結合する第2コイルとを備えて且つ、回転体の回転に応じて前記第1コイルによって生成される磁束のうち前記第2コイルを鎖交する磁束が周期的に変化することで前記第2コイルに誘起される電圧を前記被変調波とするものであることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記サンプリング手段は、前記第2コイルの出力信号を所定範囲の電圧に変換する電圧変換手段と、該電圧変換手段の出力信号を前記間隔でデジタル信号に変換するデジタル変換手段と、該デジタル変換手段によって変換されたデジタルデータに基づき前記異常の有無を診断する処理を行なうデジタル処理手段とを備え、前記電圧変換手段は、前記第2コイルとの接続が切断される場合の出力を固定値とする固定手段を備えることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、断線異常が生じた場合にサンプリング手段の入力値が固定されるため、サンプリング値が固定値となる。これに対し、正常である場合には、搬送波の変動に同期してサンプリング値が変動すると考えられる。このため、異常の有無を的確に診断することができる。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記固定値は、前記被変調波の振幅中心値とは相違した値であることを特徴とする。
【0019】
変調波が振幅中心値を取る間、搬送波の変動にかかわらず、被変調波は振幅中心値に固定される。このため、固定値を振幅中心とする場合には、振幅中心に固定された理由が、変調波が振幅中心値を取るためか、断線異常が生じたためかを識別することができない。上記発明では、この点に鑑み、振幅中心を避けて固定値を設定する。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項3、4、6または7記載の発明において、前記診断手段は、前記サンプリング手段によるサンプリング値と前記固定手段による固定値との乖離に基づき前記異常の有無を診断する乖離着目手段を備えることを特徴とする。
【0021】
上記発明では、断線異常が生じた場合にサンプリング手段の入力値が固定されるため、サンプリング値が固定値となる。これに対し、正常である場合には、搬送波の変動に同期してサンプリング値が変動すると考えられる。そして、サンプリング値が変動する場合、これが固定値から乖離する現象が生じると考えられる。上記発明では、この点に着目して異常の有無を診断する。
【0022】
請求項9記載の発明は、請求項2〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記診断手段は、前記サンプリング手段によるサンプリング値の変動量が小さい場合に異常がある旨診断する変動量着目手段を備えることを特徴とする。
【0023】
上記発明が請求項3、4、6〜8のいずれか1項に記載の発明の発明特定事項を有するなら、断線異常が生じた場合にサンプリング手段の入力値が固定されるため、サンプリング値が固定値となる。また、振幅変調装置のショート故障等の異常時においては、サンプリング手段のサンプリング値が固定値となることがある。これに対し、正常である場合には、搬送波の変動に同期してサンプリング値が変動すると考えられる。さらに、請求項5に記載されるように、振幅変調装置がコイルを備える場合であってそのコイルに断線が生じる場合等にあっては、サンプリング手段のサンプリング値が固定されないまでもその変動量が正常時と比較して小さくなる現象が生じうる。上記発明では、この点に着目して異常の有無を診断する。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項8または9記載の発明において、前記診断手段は、前記サンプリング手段によるサンプリング値をフィルタ処理したものに基づき前記診断を行なうことを特徴とする。
【0025】
上記発明では、フィルタ処理を行なうことで、異常時と正常時との差異を際立たせることができる。
【0026】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記フィルタ処理は、平滑フィルタによる処理であることを特徴とする。
【0027】
上記発明が請求項4、請求項7、または請求項8に記載の発明特定事項を有するなら、前記診断手段は、前記被変調波の振幅中心値よりも前記固定値側に設けられた閾値と前記平滑フィルタの出力値との比較に基づき異常の有無を診断することを特徴としてもよい。なお、上記平滑フィルタは、前記サンプリング手段による複数のサンプリング値の平均値を算出して出力する手段であることを特徴としてもよい。
【0028】
請求項12記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記診断手段は、前記変動量を、前記サンプリング手段によるサンプリング値の変化速度として定量化することを特徴とする。
【0029】
請求項13記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記診断手段は、前記変動量を、前記サンプリング値の所定期間内における複数のサンプリング値の最大値、最小値、標準偏差、分散、とがり度の少なくとも1つに基づき定量化することを特徴とする。
【0030】
請求項14記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記振幅変調装置は、回転機の回転角度を検出するレゾルバであり、前記回転機の電気的な状態量に基づき前記回転角度を推定する回転角度推定手段をさらに備え、前記変動量着目手段は、前記推定手段によって推定される回転角度に基づき前記被変調波の振幅の復調処理を行ったものの変動量に基づき前記診断を行なうことを特徴とする。
【0031】
上記サンプリング手段によるサンプリング値は、搬送波の変動を含むものの、変調波の値が小さいときには、被変調波の変動量が小さくなる。この点、上記発明では、復調処理を行なうことで、変動量を大きくすることができる。
【0032】
請求項15記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記被変調波は、互いに位相が相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、前記サンプリング手段は、前記一対の被変調波のそれぞれの値をサンプリングするものであり、前記診断手段は、前記一対の被変調波同士の差が所定以上とならないことを条件に異常がある旨診断する位相差着目手段を備えることを特徴とする。
【0033】
互いに位相の相違する一対の被変調波は、これらの値に差が生じる現象が生じる。上記発明では、この点に鑑み、この現象が生じないことで異常である旨診断する。
【0034】
請求項16記載の発明は、請求項2〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記被変調波は、互いに位相が相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、前記サンプリング手段は、前記一対の被変調波のそれぞれの値をサンプリングするものであり、前記診断手段は、前記一対の被変調波のサンプリング値を各別の成分とする座標系における前記サンプリング値の座標分布に基づき前記異常の有無の診断を行なうことを特徴とする。
【0035】
上記発明が上記請求項3、4、6または7記載の発明の発明特定事項を有するなら、上記一対の被変調波のいずれか一方に関して上記断線異常が生じる場合、いずれか一方のサンプリング値が固定値となるため、座標分布は直線となる。また、上記一対の被変調波の双方に関して上記断線異常が生じる場合、双方のサンプリング値が固定値となるため、座標分布は点となる。また、振幅変調装置のショート故障等の異常時においては、サンプリング手段のサンプリング値が固定値となることがあり、この場合にあっても座標分布は直線または点となる。これに対し、正常時においては、座標分布は曲線を描く。さらに、請求項5に記載されるように、振幅変調装置がコイルを備える場合であってそのコイルに断線が生じる場合等にあっては、サンプリング手段のサンプリング値が固定されないまでもその変動量が正常時と比較して小さくなる現象が生じうる。上記発明では、この点に鑑み、異常の有無を診断する。
【0036】
請求項17記載の発明は、請求項2〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記被変調波は、互いに位相が相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、前記診断手段は、前記一対の被変調波のサンプリング値同士の加算値と閾値との大小比較に基づき異常の有無を診断する加算値着目手段を備えることを特徴とする。
【0037】
請求項18記載の発明は、請求項2〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記被変調波は、互いに位相が「π/2」だけ相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、前記診断手段は、前記一対の被変調波のサンプリング値それぞれの2乗同士の加算値に基づき異常の有無を診断する加算値着目手段を備えることを特徴とする。
【0038】
正弦関数と余弦関数とのそれぞれの2乗同士の和は、「1」である。このため、正常時であれば、上記加算値は、搬送波の2乗に応じた値となる。これに対し、例えば一対の被変調波の少なくとも一方についての伝播経路等に断線異常が生じる場合には、そのサンプリング値が固定値とされたり、その変動量が小さくなったりするため、上記加算値が搬送波の2乗に応じた値とはならない。上記発明では、この点に着目して異常の有無を診断する。
【0039】
請求項19記載の発明は、請求項17または18記載の発明において、前記サンプリング手段は、前記搬送波の周期とは相違する周期でサンプリングを行なうものであり、前記加算値着目手段は、前記加算値を強調フィルタによってフィルタ処理したものに基づき異常の有無を診断するものであり、前記強調フィルタは、前記搬送波の周期とサンプリング周期との公倍数を周期として変動する値を前記サンプリング手段による各サンプリングタイミングに対応する前記加算値のそれぞれに乗算したものを出力値とすることを特徴とする。
【0040】
上記発明では、正常時と異常時との差異を際立たせることができる。
【0041】
請求項20記載の発明は、請求項19記載の発明において、前記強調フィルタの前記変動する値は、すべて同一符号であることを特徴とする。
【0042】
請求項21記載の発明は、請求項19または20記載の発明において、前記加算値着目手段は、前記強調フィルタの出力をさらに平滑フィルタによってフィルタ処理したものに基づき異常の有無を診断することを特徴とする。
【0043】
上記発明では、正常時と異常時との差異をいっそう際立たせることができる。
【0044】
請求項22記載の発明は、請求項17記載の発明において、前記加算値着目手段は、前記加算値から前記搬送波の振幅変化の影響を除去する除去手段を備えて且つ、該除去手段の出力に基づき異常の有無を診断することを特徴とする。
【0045】
上記発明では、正常時と異常時との差異を際立たせることができる。
【0046】
請求項23記載の発明は、請求項1〜22のいずれか1項に記載の発明において、前記サンプリング手段は、前記サンプリングを所定周期で行なうことを特徴とする。
【0047】
請求項24記載の発明は、請求項3または6記載の発明において、前記被変調波は、互いに位相が「π/2」だけ相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、前記サンプリング手段は、前記サンプリングを第1の周期および該第1の周期とは相違する第2の周期のそれぞれにおいて行うものであり、前記診断手段は、前記第1の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値、および前記第2の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値の双方に基づき異常の有無を診断する加算値着目手段を備えることを特徴とする。
【0048】
振幅変調装置に異常が生じることで上記一対の変調波のサンプリング値の一方が固定値となったりその変動量が小さくなる場合であっても、サンプリング周期と変調波の周期とが一致する場合、上記加算値に基づき異常の有無を診断することが困難となるおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、第1の周期および第2の周期の双方を用いることで、サンプリング周期と変調波の周期とが一致しない状態において異常の有無を診断することができる。
【0049】
請求項25記載の発明は、請求項3または6記載の発明において、前記被変調波は、互いに位相が「π/2」だけ相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、前記サンプリング手段は、前記サンプリングを同一周期であって且つ互いに相違する位相を有する第1の周期および第2の周期のそれぞれにおいて行うものであり、前記診断手段は、前記第1の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値、および前記第2の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値の双方に基づき異常の有無を診断する加算値着目手段を備えることを特徴とする。
【0050】
振幅変調装置に異常が生じることで上記一対の変調波のサンプリング値の一方が固定値となったりその変動量が小さくなる場合であっても、サンプリング周期と変調波の周期とが一致する場合、変調波の位相によっては、上記加算値に基づき異常の有無を診断することが困難となるおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、第1の周期および第2の周期の双方を用いることで、変調波の位相が異常の有無の診断を困難とする値とならない状態を用いて異常の有無を診断することができる。
【0051】
請求項26記載の発明は、請求項24または25記載の発明において、前記固定値は、前記被変調波の振幅の上限値および下限値の間の値に設定され、前記第1の周期は、前記搬送波の周期とは相違するものであり、前記診断手段は、前記第1の周期に関するサンプリング値と前記上限値または前記下限値との差が定常的に規定値以下となることに基づき、前記振幅変調装置のショート異常であると診断することを特徴とする。
【0052】
上記発明の場合、固定値が上限値および下限値の間の値とされるために、ショート異常と断線とを識別することができる。ただしこの場合、サンプリング値と固定値との間の変化が小さい場合には、変調波の位相が固定されている場合と断線異常との識別が困難となるおそれがある。この点、上記発明では、上記第1の周期および第2の周期の双方を用いることで断線異常をも好適に診断することができる。
【0053】
請求項27記載の発明は、搬送波の振幅を変調して被変調波を生成する振幅変調装置について、該装置の異常の有無を診断する振幅変調装置の異常診断装置において、前記被変調波をサンプリングするサンプリング手段と、該サンプリング手段によるサンプリング値に基づき前記異常の有無を診断する診断手段とを備え、前記サンプリング手段は、前記診断手段による診断が前記搬送波を変調する変調波の同一位相におけるサンプリング値のみに基づき行なわれることを回避する回避手段を備えることを特徴とする。
【0054】
サンプリングタイミングが変調波の1の位相に限られる場合、被変調波に変調波の変化に関する情報が含まれないこととなるために、異常の有無の診断を行う際に不都合が生じるおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、回避手段を備えた。
【0055】
請求項28記載の発明は、請求項27記載の発明において、前記サンプリング手段は、前記サンプリングを第1の周期および該第1の周期とは相違する第2の周期のそれぞれにおいて行うものであり、前記回避手段は、前記第1の周期に関するサンプリング値を用いた診断と、前記第2の周期に関するサンプリング値を用いた診断とのそれぞれを前記診断手段に行わせることを特徴とする。
【0056】
上記発明では、第1の周期および第2の周期のそれぞれに関するサンプリング値を用いることで、回避手段を構成することができる。
【0057】
請求項29記載の発明は、請求項27記載の発明において、前記サンプリング手段は、前記サンプリングを同一周期であって且つ互いに相違する位相を有する第1の周期および第2の周期のそれぞれにおいて行うものであり、前記回避手段は、前記第1の周期に関するサンプリング値を用いた診断と、前記第2の周期に関するサンプリング値を用いた診断とのそれぞれを前記診断手段に行わせることを特徴とする。
【0058】
上記発明では、第1の周期および第2の周期のそれぞれに関するサンプリング値を用いることで、回避手段を構成することができる。
【0059】
請求項30記載の発明は、請求項28または29記載の発明において、前記被変調波は、互いに位相が「π/2」だけ相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、前記診断手段は、前記第1の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値、および前記第2の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値の双方に基づき異常の有無を診断する加算値着目手段を備えることを特徴とする。
【0060】
振幅変調装置に異常が生じることで上記一対の変調波のサンプリング値の一方が固定値となる場合であっても、サンプリング周期と変調波の周期とが一致する場合、変調波の位相によっては、上記加算値に基づき異常の有無を診断することが困難となるおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、第1の周期および第2の周期の双方を用いることで、変調波の位相が異常の有無の診断を困難とする値とならない状態を用いて異常の有無を診断することができる。
【0061】
なお、上記請求項27〜30記載の発明においては、以下の特徴を有してもよい。
【0062】
前記振幅変調装置は、前記被変調波を出力する手段と、該手段と前記サンプリング手段との間の信号の伝播経路が断線する場合に前記サンプリング手段に入力される信号を固定値とする固定手段とを備えることを特徴とする。
【0063】
上記発明では、断線異常が生じた場合にサンプリング手段の入力値が固定されるため、サンプリング値が固定値となる。これに対し、正常である場合には、搬送波の変動に同期してサンプリング値が変動すると考えられる。このため、異常の有無を的確に診断することができる。
【0064】
前記振幅変調装置は、前記搬送波によって励磁される第1コイルと、該第1コイルによって生成される磁束と磁気結合する第2コイルとを備えて且つ、回転体の回転に応じて前記第1コイルによって生成される磁束のうち前記第2コイルを鎖交する磁束が周期的に変化することで前記第2コイルに誘起される電圧を前記被変調波とするものであり、前記サンプリング手段は、前記第2コイルの出力信号を所定範囲の電圧に変換する電圧変換手段と、該電圧変換手段の出力信号を前記間隔でデジタル信号に変換するデジタル変換手段と、該デジタル変換手段によって変換されたデジタルデータに基づき前記異常の有無を診断する処理を行なうデジタル処理手段とを備え、前記電圧変換手段は、前記第2コイルとの接続が切断される場合の出力を固定値とする固定手段を備えることを特徴とする。
【0065】
上記発明では、断線異常が生じた場合にサンプリング手段の入力値が固定されるため、サンプリング値が固定値となる。これに対し、正常である場合には、搬送波の変動に同期してサンプリング値が変動すると考えられる。このため、異常の有無を的確に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】正常時と異常時とのレゾルバ出力のサンプリング値を示すタイムチャート。
【図3】上記実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図4】第2の実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図5】第3の実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図6】第4の実施形態の診断原理を示すタイムチャート。
【図7】同実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図8】第5の実施形態にかかる異常診断原理を示すタイムチャート。
【図9】第6の実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図10】第7の実施形態にかかる異常診断原理を示すタイムチャート。
【図11】同実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図12】第8の実施形態にかかる異常診断原理を示す図。
【図13】第9の実施形態にかかる異常診断原理を示すタイムチャート。
【図14】同実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図15】第10の実施形態にかかる異常診断原理を示すタイムチャート。
【図16】同実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図17】第11の実施形態における診断対象となる異常を示す図。
【図18】同実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図19】同実施形態にかかる異常診断処理を示すタイムチャート。
【図20】同実施形態のメリットを示すタイムチャート。
【図21】第12の実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図22】同実施形態の効果を示すタイムチャート。
【図23】第13の実施形態にかかるシステム構成図。
【図24】同実施形態にかかる異常診断処理に関するブロック図。
【図25】第14の実施形態にかかるシステム構成図。
【図26】第15の実施形態が診断対象とする異常を示すタイムチャート。
【図27】同実施形態にかかる異常診断基準を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0067】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる振幅変調装置の異常診断装置をレゾルバの異常診断装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0068】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0069】
図示されるモータジェネレータ10は、車載主機であり、駆動輪に機械的に連結されている。インバータIVは、モータジェネレータ10と図示しないバッテリとの間の電力の授受を仲介する。モータジェネレータ10の回転子10aには、レゾルバ20の1次側コイル22が機械的に連結されている。1次側コイル22は、正弦波状の励磁信号Scによって励磁される。励磁信号Scによって1次側コイル22に生じた磁束は、一対の2次側コイル24,26を鎖交する。この際、1次側コイル22と一対の2次側コイル24,26との相対的な配置関係は、回転子10aの電気角(回転角度θ)に応じて周期的に変化する。これにより、2次側コイル24,26を鎖交する磁束数は、周期的に変化する。特に、一対の2次側コイル24,26と1次側コイル22との幾何学的な配置が相違する設定とされ、これにより、2次側コイル24,26のそれぞれに生じる電圧の位相が互いに「π/2」だけずれるようになっている。これにより、2次側コイル24,26のそれぞれの出力電圧は、励磁信号Scを、変調波sinθ、cosθのそれぞれによって変調した被変調波となる。すなわち、励磁信号Scを「sinωt」とすると、被変調波は、それぞれ「sinθsinωt」と「cosθsinωt」となる。
【0070】
2次側コイル24の出力電圧は、差動増幅回路30によって電圧変換され、A相被変調波Saとされ、2次側コイル26の出力電圧は、差動増幅回路32によって電圧変換され、B相被変調波Sbとされる。これらA相被変調波SaとB相被変調波Sbとのそれぞれは、アナログデジタル変換器(A/D変換器34、36)のそれぞれによってデジタルデータに変換される。このデジタルデータが、サンプリング信号SA,SBである。
【0071】
上記差動増幅回路30は、オペアンプのプラス側入力端子が抵抗体を介してプルダウンされて且つ、マイナス側の入力端子が抵抗体を介してプルアップされている。これは、図中破線の×印にて示す箇所等に断線が生じた場合、A相被変調波Saを固定値とするための設定である。特に本実施形態では、この固定値を、正常時におけるA相被変調波Saの取りうる値の下限値VL以下に設定する。なお、A/D変換器34の変換可能入力範囲の境界は、上限値VHと下限値VLとに一致するように設定されている。このため、固定値を下限値VLよりも小さく設定したとしても、A/D変換器34の出力するサンプリング信号SAは、下限値VLに一致する。
【0072】
上記差動増幅回路32は、オペアンプのプラス側入力端子が抵抗体を介してプルアップされて且つ、マイナス側の入力端子が抵抗体を介してプルダウンされている。これは、図中破線の×印にて示す箇所等に断線が生じた場合、B相被変調波Sbを固定値とするための設定である。特に本実施形態では、この固定値を、正常時におけるB相被変調波Sbの取りうる値の下限値VL以上に設定する。なお、A/D変換器36の変換可能入力範囲の境界は、上限値VHと下限値VLとに一致するように設定されている。このため、固定値を上限値VHよりも大きく設定したとしても、A/D変換器36の出力するサンプリング信号SBは、上限値VHに一致する。
【0073】
制御装置40は、レゾルバ20による回転角度信号(サンプリング信号SA,SB)によってモータジェネレータ10の回転角度θを把握し、また、電流センサ12によって電流値を把握することで、これに基づきインバータIVを操作する。これにより、モータジェネレータ10の制御量が制御される。
【0074】
上記サンプリング信号SA,SBのサンプリング周期Tは、励磁信号Scの周期「2π/ω」とは相違する周期に設定されている。望ましくは、この周期Tは、励磁信号Scの周期「2π/ω」の「90%」以下、または「110%」以上に設定されている。このように、A相被変調波SaとB相被変調波Sbとのそれぞれのサンプリングを励磁信号Scと非同期とすることは、サンプリング信号SA,SBに基づくレゾルバ20の異常の有無の診断を高精度に行なうための設定である。以下、これについて説明する。
【0075】
図2に、回転子10aの停止時におけるレゾルバ20の信号の推移を示す。詳しくは、この図では、B相被変調波Sbが最大値となる位置で回転角度θが固定される例を想定している。この場合、サンプリング周期を「2π/ω」とすることで励磁信号Scの周期に同期させると、図中△印のようにサンプリング信号SBは固定値となり、しかもこの値は、上限値VHに一致しうる。このため、2次側コイル26と差動増幅回路32との間が断線した場合と差異が生じず、正常であるのか異常であるのか識別できない。これに対し、図中□印にて示すように、サンプリング周期Tを励磁信号Scとは非同期とすることで、正常時にはサンプリング信号SAには励磁信号Scの変動が現れる。このため、正常と異常とが識別可能となる。
【0076】
図3に、本実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図3では、特に、2次側コイル24側の異常の有無の診断処理の手順を示している。
【0077】
この一連の処理では、まずステップS10において、複数のサンプリング信号SA[n]、SA[n−1]、…を取得する。続くステップS12においては、サンプリング信号SAの変動量が所定以下であるか否かを判断する。この処理は、レゾルバ20に異常があるか否かを判断するためのものである。すなわち、正常であれば、サンプリング信号SAは、少なくとも励磁信号Scの変動に同期した変化をする一方、2次側コイル24の断線等の異常があればサンプリング信号SAは、下限値VLに固定される。このため、変動量が小さい場合には異常があると判断することができる。
【0078】
ここで、変動量が所定以下であるか否かは、例えば以下の条件によって判断すればよい。
1.サンプリング信号SAの最大値SAmaxと最小値SAminとの差が閾値Δth以下であるとの条件。なお、ここでの最大値SAmaxは、サンプリング信号SAの中から最も大きいもの数点を除いたものとしてもよい。これにより、ノイズによってサンプリング信号SAが最大値を取る場合にその影響を除去することができる。同様に、最小値SAminは、サンプリング信号SAの中から最も小さいもの数点を除いたものとしてもよい。これにより、ノイズによってサンプリング信号SAが最小値を取る場合にその影響を除去することができる。
2.サンプリング信号SAの変化速度(SA[n]−SA[n−1]、SA[n−1]−SA[n−2]、…)の最大値が閾値Vth以下であること。
【0079】
上記変動量が所定以下であると判断される場合、ステップS14において、変動量が所定以下であると判断された回数をカウントする仮異常カウンタCをインクリメントする。続くステップS16においては、仮異常カウンタCが閾値Cth以上であるか否かを判断する。そして、閾値Cth以上であると判断される場合、ステップS18において、異常であるとする。これに対し、上記ステップS12において変動量が所定以下ではないと判断される場合、ステップS20において仮異常カウンタCを初期化する。上記ステップS20の処理が完了する場合や、ステップS16において否定判断される場合には、ステップS22において正常である旨判断する。
【0080】
上記ステップS18,S22の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0081】
なお、サンプリング信号SBについても同様の処理によって異常の有無の診断を行なう。ちなみに、サンプリング信号SAに基づく診断のみで異常がある旨診断される場合には、2次側コイル24の断線と判断し、サンプリング信号SBに基づく診断のみで異常がある旨診断される場合には、2次側コイル26の断線と判断することが望ましい。この場合、サンプリング信号SAに基づく診断とサンプリング信号SBに基づく診断との双方で異常があると判断される場合には、1次側コイル22の断線と判断してもよい。
【0082】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0083】
(1)A相被変調波SaやB相被変調波Sbを、励磁信号Scの周期とは非同期でサンプリングした。これにより、サンプリング信号SA,SBが励磁信号Scの1の位相に対応したものとなることを回避することができ、ひいては励磁信号Scの変動に同期して変化させることが可能となる。このため、変化の有無に基づき異常の有無を診断することができる。
【0084】
(2)2次側コイル24,26と差動増幅回路30,32との接続が切断される場合の差動増幅回路30,32の出力を固定値とした。これにより、異常の有無を的確に診断することができる。
【0085】
(3)固定値を、A相被変調波SaやB相被変調波Sbの振幅中心値とは相違した値とした。これにより、変調波が振幅中心値を取る場合と断線異常との識別が可能となる。
【0086】
(4)サンプリング信号の変動量が小さい場合に異常がある旨診断した。これにより、正常時においてはサンプリング値が励磁信号Scに同期して変動することに鑑み、異常の有無を診断することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0087】
図4に、本実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図4において、先の図3に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0088】
この一連の処理では、ステップS12aの処理に用いる変動量を、統計処理の手法によって定量化する。具体的には、断線異常時には、変動量が理論上ゼロになることに鑑み、標準偏差や分散等によって、サンプリング信号SAの値の広がりを定量化すればよい。また例えば、サンプリング信号SAの値とその値を取るサンプリング数とをグラフにすることで、サンプリング数が最も大きくなる点からサンプリング信号SAの値が変化したときのサンプリング数の変化を定量化したとがり度等を用いてもよい。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0089】
図5に、本実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図5において、先の図3に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0090】
この一連の処理では、ステップS12bにおいて、下限値VLからのサンプリング信号SAの変動量が所定以下であるか否かを判断する。詳しくは、サンプリング信号SAの最大値SAmaxから下限値VLを減算した値が閾値Δth以下であるか否かを判断する。
【0091】
以上説明した本実施形態によれば、上記第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0092】
(5)サンプリング信号SA、SBの値と固定値(VL,VH)との乖離に基づき異常の有無を診断した。これにより、正常時において励磁信号Scの変動に同期してサンプリング信号SA,SBが変動することに鑑み、異常の有無を診断することができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0093】
本実施形態では、固定値(VL,VH)との乖離を検討する信号をサンプリング信号SA,SBとする代わりに、そのフィルタ処理後の値とする。図6に、サンプリング信号SBをローパスフィルタ処理した信号SBLPFを示す。図示されるように、この信号SBLPFは、正常時には、サンプリング信号SBの振幅が低減された正弦波形状のものとなる。このため、固定値(上限値VH)との乖離が顕著となる。
【0094】
図7に、本実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図7において、先の図5に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0095】
この一連の処理では、ステップS10の処理の後、ステップS24において、サンプリング信号SAをローパスフィルタ処理する。ここでは、ローパスフィルタとして、1次遅れフィルタを想定している。そして、ステップS12においては、ローパスフィルタの出力値について、固定値(下限値VL)からの変動量が所定以下であるか否かを判断する。
【0096】
以上説明した本実施形態によれば、上記第3の実施形態に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0097】
(6)サンプリング信号SA,SBをローパスフィルタ処理したものに基づき、固定値(VL,VH)との乖離を定量化した。これにより、ローパスフィルタの出力が異常時と正常時との差異が際立ったものとなるため、異常診断精度を向上させることができる。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0098】
本実施形態では、フィルタ処理として、サンプリング信号SA,SBの平均値を算出する。この場合、図8に示すように、正常時においては、サンプリング信号SA,SBが正弦波となるため、平均値は上限値VHおよび下限値VLの中央値となる。これに対し、異常時においては、上限値VHまたは下限値VLとなる。
【0099】
ここで、平均値を用いた具体的な異常診断手法としては、例えば平均値が第1の閾値よりも大きい場合や平均値が第2の閾値よりも小さい場合に異常がある旨診断するものとすればよい。ここで、閾値は、正常なサンプリング信号SA、SBの中央値と異常時の固定値との間の値(望ましくは中央値)に設定すればよい。すなわち、第1の閾値は、正常なサンプリング信号SA、SBの中央値と異常時の大きい側の固定値(上限値VH)との間の値(望ましくは中央値)とすればよい。また、第2の閾値は、正常なサンプリング信号SA、SBの中央値と異常時の小さい側の固定値(下限値VL)との間の値(望ましくは中央値)とすればよい。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0100】
図9に、本実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図9において、先の図3に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0101】
この一連の処理では、まずステップS30において、電流センサ12による電流の検出値と、インバータIVからモータジェネレータ10に印加する電圧情報とを取得する。続くステップS32においては、上記電流の検出値と電圧情報とに基づき回転角度θを推定する。ここでは、例えばモータジェネレータ10の高回転速度領域においては、モータジェネレータ10に生じる誘起電圧に基づき回転角度を推定すればよい。詳しくは、例えばモータジェネレータ10がIPMSM等である場合、「突極型ブラシレスDCモータのセンサレス制御のための拡張誘起電圧オブザーバ 平成11年電気学会全国大会 No.1026」に記載されている手法を用いてもよい。また、モータジェネレータ10の低回転速度領域においては、例えば特開2009-148017に記載されているように、電気角周波数よ
りも高い高調波信号を重畳した際の電流の応答に基づき回転角度を推定するものとしてもよい。
【0102】
続くステップS36においては、変調波である「sinθ」がほぼゼロか否かを判断する。そして、ステップS36において否定判断される場合、ステップS38において、サンプリング信号SAを変調波で除算することで規格化信号NSAを算出する。ちなみに、上記ステップS36の処理は、変調波がほぼゼロとなることで規格化信号NSAが過度に大きい値となる事態を回避するために設けたものである。続くステップS12cでは、規格化信号NSAの変動量が所定以下であるか否かを判断する。
【0103】
以上説明した本実施形態によれば、上記第1の実施形態に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0104】
(7)規格化信号(NSA等)の変動量に基づき異常の有無を診断した。これにより、変調波の大小にかかわらず、励磁信号Scの変動がサンプリング信号(規格化信号)に反映されているか否かに応じて異常の有無を診断することができる。
【0105】
(8)変調波が小さい場合、異常診断を禁止した。これにより、診断精度を向上させることができる。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0106】
本実施形態では、A相被変調波SaとB相被変調波Sbとの位相差を利用して異常の有無を診断する。すなわち、この場合、例えば図10に示すように、いずれか一方(図中、B相被変調波Sb)の変動量が変動幅Δ1以内の場合に、いずれか他方(図中、A相被変調波Sa)の変動量が変動幅Δ2以上となる現象が生じる。このため、変動幅Δ2以上とならない場合には異常があると考えられる。
【0107】
図11に、本実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0108】
この一連の処理では、まずステップS40において、複数のサンプリング信号SA[n]、SA[n−1]、…と、これらに同期した複数のサンプリング信号SB[n]、SB[n−1]、…とを取得する。続くステップS42においては、サンプリング信号SA、SBのいずれか一方の絶対値が第1閾値以下となる状態が継続している状況下、いずれか他方の絶対値が第2閾値以上となるものが所定割合で存在するか否かを判断する。そして、所定の割合で存在しないなら、ステップS44において異常である旨判断する。これに対し、ステップS42において所定割合で存在すると判断される場合、ステップS46において正常である旨判断する。ここで所定割合は、「0%」と「100%」とを含まないことが望ましい。これは、断線異常によってサンプリング信号SA,SBが固定値となることで正常と判断されることを回避するための設定である。
【0109】
なお、上記ステップS44,S46の処理が完了する場合、この一連の処理を一旦終了する。
【0110】
以上説明した本実施形態によれば、上記第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0111】
(9)サンプリング信号SA,SBの差が所定以上とならないことを条件に異常がある旨診断した。これにより、A相被変調波SaとB相被変調波Sbとの位相差を利用して異常の有無を診断することができる。
<第8の実施形態>
以下、第8の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0112】
本実施形態では、サンプリング信号SAとサンプリング信号SBとを成分とする2次元座標系上でのこれら互いに同期したサンプリング信号SA、SBの分布に基づき異常の有無を診断する。すなわち、正常時においては、これらサンプリング信号SA,SBとも上限値VHおよび下限値VL間で変動するため、図12(a)に示すような分布となる。これに対し、例えば2次側コイル26の断線が生じる場合等にあっては、サンプリング信号SBが固定値(上限値VH)となるため、サンプリング信号SA,SBは直線上に並ぶ。同様に、2次側コイル24の断線が生じる場合等にあっても、サンプリング信号SA,SBは直線上に並ぶ。さらに、1次側コイル22の断線が生じる場合等にあっては、サンプリング信号SA、SBは、固定点となる。
【0113】
このため、サンプリング信号SA,SBの座標分布が、直線SB=VH、SA=VLとの乖離が小さいことを示すものであったり、一点(SA,SB)=(VL,VH)からの乖離が小さいことを示すものであったりする場合、異常である旨判断することができる。<第9の実施形態>
以下、第9の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0114】
本実施形態では、互いに同時刻にサンプリングされたサンプリング信号SAとサンプリング信号SBとの和信号ADに基づき異常の有無を診断する。すなわち、上述したように、励磁信号Scが「sinωt」であって且つ、変調波が「sinθ」と「cosθ」とである場合、A相被変調波SaとB相被変調波Sbとの和は(差動増幅回路30,32の電圧変換を無視すれば)、「(sinθ+cosθ)sinωt=√2sin(θ+π/4)sinωt」となる。これに対し、例えば2次側コイル26が断線する場合、A相被変調波SaとB相被変調波Sbとの和は(差動増幅回路30,32の電圧変換を無視すれば)、「sinθsinωt+VH」となり、これは、正常時の値よりも大きい。
【0115】
図13(a)に、正常時におけるA相被変調波SaとB相被変調波Sbとの推移を示し、図13(b)に、異常時におけるA相被変調波SaとB相被変調波Sbとの推移を示し、図13(c)に、正常時と異常時との上記和信号ADの推移を示す。
【0116】
図示されるように、異常時の和信号ADは、正常時にはとり得ない値をとることがある。このため、正常時にはとり得ない閾値を設定することで、異常の有無を診断することができる。
【0117】
図14に、本実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0118】
この一連の処理では、まずステップS50において、複数のサンプリング信号SA[n]、SA[n−1]、…と、これらに同期した複数のサンプリング信号SB[n]、SB[n−1]、…とを取得する。続くステップS52においては、同時刻同士のサンプリング信号同士の和SA[n]+SB[n]、SA[n−1]+SB[n−1]、…を和信号ADとして算出する。続くステップS54においては、和信号ADが閾値ADMAX以上となるものがあるか否かを判断する。そして、閾値ADMAX以上となるものがある場合、ステップS56において、2次側コイル26の断線異常(B相異常)である旨判断する。これは、先の図13に鑑みたものである。
【0119】
これに対し、上記ステップS54において否定判断される場合、ステップS58において、和信号ADのなかに閾値ADMIN以下のものがあるか否かを判断する。この処理は、2次側コイル24の断線異常の有無を判断するためのものである。すなわち、この場合、A相被変調波SaとB相被変調波Sbとの和は(差動増幅回路30,32の電圧変換を無視すれば)、「cosθsinωt+VL」となり、これは、正常時の値よりも小さくなる。そして、ステップS58において閾値ADMIN以下のものがあると判断される場合、ステップS60において、2次側コイル24の断線異常(A相異常)である旨判断する。
【0120】
一方、上記ステップS58において閾値ADMIN以下のものがないと判断される場合、ステップS62において正常である旨判断する。なお、上記ステップS56,S60,S62の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0121】
以上説明した本実施形態によれば、上記第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0122】
(10)和信号ADに着目することで、異常の有無を適切に診断することができる。
<第10の実施形態>
以下、第10の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0123】
本実施形態では、互いに同時刻にサンプリングされたサンプリング信号SAとサンプリング信号SBとのそれぞれの2乗同士の和(2乗和信号MU)に基づき異常の有無を診断する。すなわち、上述したように、励磁信号Scが「sinωt」であって且つ、変調波が「sinθ」と「cosθ」とである場合、A相被変調波SaとB相被変調波Sbとの2乗同士の和は(差動増幅回路30,32の電圧変換を無視すれば)、「(sinωt)^2」となる。これに対し、例えば2次側コイル26が断線する場合、A相被変調波SaとB相被変調波Sbとの和は(差動増幅回路30,32の電圧変換を無視すれば)、「(sinθsinωt)^2+VH^2」となり、これは、正常時の値よりも大きい。
【0124】
図15(a)に、正常時におけるA相被変調波SaとB相被変調波Sbとの推移を示し、図15(b)に、異常時におけるA相被変調波SaとB相被変調波Sbとの推移を示し、図15(c)に、正常時と異常時との上記2乗和信号MUの推移を示す。
【0125】
図示されるように、異常時の2乗和信号MUは、正常時にはとり得ない値をとることがある。このため、正常時にはとり得ない閾値を設定することで、異常の有無を診断することができる。
【0126】
図16に、本実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0127】
この一連の処理では、まずステップS70において、複数のサンプリング信号SA[n]、SA[n−1]、…と、これらに同期した複数のサンプリング信号SB[n]、SB[n−1]、…とを取得する。続くステップS72においては、同時刻同士のサンプリング信号の2乗同士の和を2乗和信号MUとして算出する。続くステップS74においては、2乗和信号MUが閾値MUMAX以上となるものがあるか否かを判断する。そして、閾値ADMAX以上となるものがある場合、ステップS76において、2次側コイル24、26の断線異常(B相異常)である旨判断する。これに対し、閾値ADMIN以上となるものがないと判断される場合、ステップS78において、正常である旨判断する。
【0128】
なお、上記ステップS76,S78の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0129】
以上説明した本実施形態によれば、上記第1の実施形態の上記(1)〜(3)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0130】
(11)2乗和信号MUに着目することで、異常の有無を適切に診断することができる。
<第11の実施形態>
以下、第11の実施形態について、先の第10の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0131】
本実施形態では、図17(a)に示すように、A相被変調波SaやB相被変調波Sbの振幅が変化するゲイン異常を診断する。この場合、図17(b)に示すように、A相被変調波SaやB相被変調波Sbは、正常時と異常時とで同様の値をとりうるため、これらを切り分けることは困難である。特に、正常時におけるサンプリング信号SA,SBの最大値および最小値がA/D変換器34,36の変換可能範囲の上限値VHおよび下限値VLに一致するために、振幅が大きくなる異常を実際の振幅値の検出によって判断することはできない。
【0132】
そこで本実施形態では、図18に示す処理によって異常の有無を診断する。図18に、本実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図18において、先の図16に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0133】
この一連の処理では、2乗和信号MUを算出した後、ステップS80において、2乗和信号MUを強調フィルタによってフィルタ処理する。ここで、強調フィルタは、励磁信号Scの周期「2π/ω」と、サンプリング周期Tとの積を周期として変動する値を、入力信号(2乗和信号MU)に乗算するものである。強調フィルタの各値は、正常時と異常時との差を強調することができるように設計される。続くステップS82においては、強調フィルタ処理された信号を、さらに平滑フィルタにて処理する。そして、ステップS84では、ステップS82の出力信号(フィルタ処理された2乗和信号MU)が閾値MUth以上であるか否かを判断する。そして、閾値MUth以上であると判断される場合、ステップS86において異常である旨判断し、閾値MUth未満であると判断される場合、ステップS88において正常である旨判断する。
【0134】
図19に、2乗和信号MUと、これを強調フィルタ処理したものと、さらに平滑フィルタ処理したものとを示す。図示されるように、強調フィルタ処理することで、正常時と異常時との差を際出させることができ、さらに、平滑フィルタ処理することで、取りうる値の重複をもほぼ回避することができる。
【0135】
ここで、本実施形態では、上記強調フィルタとして、各値が同一符号となるものを想定した。これは、正常時と異常時との差を際出させる効果を生じさせるためである。図20に、強調フィルタの各値として正、負の双方の値をとりうる場合と、符号が固定される場合(図では、正に固定される場合を示す)とを対比する。図示されるように、強調フィルタの各値が正、負の双方を取りうる場合には、正常時と異常時との差を際立たせることができない。
【0136】
以上説明した本実施形態によれば、上記第11の実施形態の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0137】
(12)2乗和信号MUを、強調フィルタ処理および平滑フィルタ処理した。これにより、正常時と異常時との差異を際立たせることができる。
<第12の実施形態>
以下、第12の実施形態について、先の第10の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0138】
図21に、本実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0139】
この一連の処理では、まずステップS90において、同時刻にサンプリングされたサンプリング信号SA,SBに加えて、これらと同時刻の励磁信号Scのデジタル信号SCを取得する。続くステップS92においては、デジタル信号SCがほぼゼロであるか否かを判断する。そして、ほぼゼロではないと判断される場合、ステップS94において2乗和信号MUを算出し、ステップS96では、2乗和信号MUをデジタル信号SCの2乗で除算することで規格化信号NMUを算出する。これは、2乗和信号が励磁信号Scの大きさに依存することに鑑み、規格化信号MUを一定値にするための設定である。ちなみに、上記ステップS92の処理は、規格化信号NMUが過度に大きい値となることを回避するためのものである。
【0140】
続くステップS98においては、規格化信号NMUが閾値MUth以上であるか否かを判断する。そして、閾値MUth以上であると判断される場合、ステップS100において異常である旨判断する。これに対し、閾値MUth未満である場合、ステップS102において正常である旨判断する。
【0141】
なお、上記ステップS100,S102の処理が完了する場合や、ステップS92において肯定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0142】
図22(a)に、正常時と異常時との2乗和信号MUの推移を示し、図22(b)に、正常時と異常時との規格化信号NMUの推移を示す。
【0143】
図示されるように、規格化信号NMUとすることで、正常時と異常時との相違を際出させることができる。
【0144】
以上説明した本実施形態によれば、上記第11の実施形態の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0145】
(13)2乗和信号MUから励磁信号Scの振幅変化の影響を除去した。これにより、正常時と異常時との差異を際立たせることができる。
<第13の実施形態>
以下、第13の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0146】
図23に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図23において、先の図1に示した部材と対応する部材については便宜上同一の符号を付している。
【0147】
図示されるように、本実施形態では、差動増幅回路30の出力端子側を抵抗体によってプルアップすることで、図中破線の×印にて示す箇所に断線が生じた場合、A相被変調波Saを固定値とする。ここで、固定値は、A相被変調波Saの中央値とする。これにより、A/D変換器34の出力するサンプリング信号SAは、上限値VHと下限値VLとの間の中央値となる。同様に、本実施形態では、差動増幅回路32の出力端子側を抵抗体によってプルアップすることで、図中破線の×印にて示す箇所に断線が生じた場合、B相被変調波Sbを固定値とする。ここで、固定値は、A相被変調波Sbの中央値とする。これにより、A/D変換器36の出力するサンプリング信号SBは、上限値VHと下限値VLとの間の中央値となる。
【0148】
さらに、本実施形態では、異常診断処理に用いるためのサンプリング信号SA,SBのサンプリング周期として、励磁信号Scの周期「2π/ω」とは相違する第1の周期T1に加えて、励磁信号Scの周期に一致する第2の周期T2を用いる。ここで、第2の周期T2を、第1の周期T1の整数倍に対して、第1の周期T1の「10〜50%」の長さの差を有するものとしたり、第1の周期T1を、第2の周期T2の整数倍に対して、第2の周期T2の「10〜50%」の長さの差を有するものとしたりすることが望ましい。
【0149】
図24に、本実施形態にかかる異常診断処理のブロック図を示す。
【0150】
平均値算出部B2では、第1の周期T1によるサンプリング信号SA1を入力とし、その時系列データの平均値を算出する。また、平均値算出部B4では、第1の周期T1によるサンプリング信号SB1を入力とし、その時系列データの平均値を算出する。ショート異常診断部B6では、平均値算出部B2や平均値算出部B4によって算出された平均値に基づき、2次側コイル24,26からA/D変換器34,36までの電気経路のショート異常の有無を診断する。ここでは、上記電気経路が地絡する場合には、サンプリング信号SA1,SB1が下限値VLに固定され、上記電気経路がバッテリ等とショートする場合には、サンプリング信号SA1,SB1が上限値VHに固定されることに着目して、算出される平均値と上限値VHとの差や算出される平均値と下限値VLとの差が規定値以下であることに基づき、ショート異常であると診断する。
【0151】
ちなみに、変調波sinθ、cosθの一方が「1」または「−1」となる位相において回転角度θが固定されている場合であっても、励磁信号Scの振動によってサンプリング信号SA1,SB1は上限値VHから下限値VLまでの様々な値をとるため、平均値は中央値付近の値となる。また、本実施形態では、断線時には、サンプリング信号SA,SBは中央値に固定されるため、断線異常をショート異常と誤診断することはない。
【0152】
一方、規格化信号算出部B8では、上記第12の実施形態(図21)同様、第1の周期T1によるサンプリング信号SA1、SB1を入力として、規格化信号NMUを算出する。そして、断線診断部B10では、規格化信号NMUに基づき断線の有無を診断する。ここでは、規格化信号NMUと「1」との距離が規定値以上となる場合に断線異常と診断する。すなわち、正常時であれば、規格化信号NMUは「1」となる。これに対し、断線が生じる場合、「(sinθ)^2」または「(cosθ)^2」となり、回転角度θによっては規格化信号NMUは「1」よりも小さくなりうる。
【0153】
また、2乗和信号算出部B12では、第2の周期T2によるサンプリング信号SA2,SB2を入力として、2乗和信号MUを算出する。そして、断線診断部B14では、2乗和信号MUを入力として、断線の有無を診断する。ここでは、サンプリングの位相を励磁信号Scが最大値となる位相に同期させて且つ、2乗和信号MUと「1」との距離が規定値以上となる場合に断線異常と診断する。すなわち、正常時であれば、2乗和信号MUは、「(sinωt)^2=1」となる。これに対し、断線が生じる場合、2乗和信号MUは、「(sinωtsinθ)^2」または「(sinωtcosθ)^2」となり、励磁信号Scの位相ωtによっては「1」よりも小さくなりうる。
【0154】
上記第1の周期T1によるサンプリング信号SA1,SB1による断線の有無の診断と、第2の周期T2によるサンプリング信号SA2,SB2による断線の有無の診断との双方を行うのは、サンプリング周期と回転角度θの変化の周期とが同期した場合においても断線の有無を迅速且つ高精度に判断するためである。換言すれば、サンプリング周期と回転角度θの1周期とが略等しくなる場合においても断線の有無を迅速且つ高精度に判断するためである。
【0155】
すなわち、第2の周期T2と変調波sinθ、cosθの周期とが略等しい場合、断線異常が生じていたとしても、第2の周期T2による2乗和信号MUの時系列データは長時間に渡って略同一の値となるおそれがある。そして、この値が「1」に近い場合には、断線がある旨診断することはできない。ただしこの場合であっても、第1の周期T1と変調波sinθ、cosθの周期とは近似しないために、規格化信号NMUについては様々な値に変動する。このため、規格化信号NMUによって断線の有無を診断することができる。一方、第1の周期T1と変調波sinθ、cosθの周期とが近似する場合、断線異常が生じていたとしても、第1の周期T1による規格化信号NMUの時系列データは長時間に渡って「1」に近い値となるおそれがある。ただしこの場合であっても、第2の周期T2と変調波sinθ、cosθの周期とは近似しないために、2乗和信号MUについては様々な値に変動する。このため、規格化信号MUによって断線の有無を診断することができる。
【0156】
ちなみに、レゾルバ20に異常がある場合には、モータジェネレータ10の制御性が低下する。しかしこうした場合であっても、サンプリング周期と変調波sinθ、cosθの周期とが略等しくなる状態が継続する事態は生じうる。すなわち、例えば坂道走行時等においてモータジェネレータ10が回生運転をしている場合、モータジェネレータ10のトルクの制御が不能となっていたとしても、モータジェネレータ10の回転速度(>0)が略一定となる事態は生じうる。
【0157】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0158】
(14)第1の周期T1によるサンプリング信号SA1,SB1を用いた断線の有無の診断と、第2の周期T2によるサンプリング信号SA2、SB2を用いた断線の有無の診断とを行なった。これにより、いずれかのサンプリング周期と変調波の周期とが同期したとしても異常の有無を迅速且つ高精度に診断することができる。
【0159】
(15)2次側コイル24,26と差動増幅回路30,32との接続が切断される場合の差動増幅回路30,32の出力を、上限値VHおよび下限値VL間の中央値に設定して且つ第1の周期T1に関するサンプリング値SA1,SB1が定常的に上限値および下限値側にとどまることに基づき、ショート異常であると診断した。これにより、断線異常との識別をしつつショート異常の有無を診断することができる。
<第14の実施形態>
以下、第14の実施形態について、先の第13の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0160】
図25に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図25において、先の図23に示した部材と対応する部材については便宜上同一の符号を付している。
【0161】
本実施形態では、サンプリング周期Tのサンプリングとして、互いに位相の相違する一対のタイミング(サンプリングタイミング1、サンプリングタイミング2)でサンプリングを行う。そして、第1の位相を有して且つサンプリング周期Tのタイミング(サンプリングタイミング1)によるサンプリング信号SA1,SB1によって、ショート異常の有無と断線異常の有無とを診断する。また、第2の位相を有して且つサンプリング周期Tのタイミング(サンプリングタイミング2)によるサンプリング信号SA2,SB2によって、断線異常の有無を診断する。ここで、サンプリング周期Tは励磁信号Scの周期と相違させ、上記一対の断線異常の有無の診断に際しては、いずれも規格化信号NMUを用いる。
【0162】
この場合であっても、サンプリング周期と回転角度θの変化の周期とが同期した場合においても断線の有無を迅速且つ高精度に判断することができる。ただし、サンプリングタイミング1とサンプリングタイミング2とは、互いの位相を「10〜50%」ずらすことが望ましい。
<第15の実施形態>
以下、第15の実施形態について、先の第13の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
上記第13の実施形態では、差動増幅回路30,32の出力端子側をプルアップした。この場合、先の図23に示すように、2次側コイル24,26と差動増幅回路30,32との間に断線が生じる場合には、差動増幅回路30,32の出力を固定することができるものの、2次側コイル24,26が断線する場合、差動増幅回路30,32の出力は固定されない。これは、この場合、2次側コイル24,26の断線によって2分された2つのコイル同士が寄生容量によって接続された状態となるためである。このため、2次側コイル24,26の両端には、正常時の電圧よりも振幅の小さい電圧が誘起される。
図26(a)に、正常時に2次側コイル24,26の両端に誘起される電圧の推移を示し、図26(b)に、2次側コイル24,26の断線時に2次側コイル24,26の両端に誘起される電圧の推移を示す。図示されるように、2次側コイル24,26の断線時には、両端に誘起される電圧が小さくなっている。
そこで本実施形態では、上記第8の実施形態における異常診断手法において、異常である旨の基準を変更することで、こうした異常をも検出可能とする。
図27に、本実施形態における異常診断の基準を示す。本実施形態では、サンプリング信号SAとサンプリング信号SBとの少なくとも一方が変動しつつも、これらが図27(a)に示す領域ARA,ARBに所定時間内に入らないことと、図27(b)に示す領域ARC,ARDに所定時間内に入らないこととの論理和が真である場合、2次側コイル24,26に断線が生じる異常であると判断する。なお、この判断処理においては、互いに同期したサンプリング信号SA,SBを用いる必要がない。すなわち、サンプリング信号SAとサンプリング信号SBとのそれぞれについて、各別に所定時間内にとり得る値が上記領域ARA,ARB内に入るかや上記領域ARC,ARD内に入るかを判断してもよい。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
「サンプリング手段について」
サンプリング手段によるサンプリング対象は、被変調波に限らず、搬送波(励磁信号Sc)であってもよい。この場合であっても、例えば、レゾルバ20の1次側コイル22と励磁信号Scの伝播経路とが断線した場合に、搬送波の検出値をA/D変換器に出力する手段の値を固定するなら、サンプリング周期を励磁信号Scの周期とは相違させることで診断精度を向上させることができる。
【0163】
上記第1〜第12の実施形態等にかかるサンプリング手段としても、所定周期でサンプリングを行なうものに限らない。例えば不規則的にサンプリングを行ってもよい。これは、予め複数のサンプリング周期を用意して且つこれら各サンプリング周期と乱数発生器の出力値とを対応付けておき、用意されたサンプリング周期の中から1のサンプリング周期を乱数発生器の出力値によって都度選択することで実現することができる。
【0164】
上記第13の実施形態において、第1の周期T1と第2の周期T2との双方とも搬送波(励磁信号Sc)の周期とは相違させてもよい。
【0165】
上記第14の実施形態において、サンプリング周期Tを搬送波(励磁信号Sc)の周期と一致させてもよい。ただしこの場合、サンプリング信号SA1,SB1の2乗和信号MUによる診断と、サンプリング信号SA2,SA2の2乗和信号MUによる診断とによって断線の有無を診断することが望ましい。また、この際には、ショート異常の有無の診断は、モータジェネレータ10が停止していないことを条件に行うことが望ましい。
「固定手段について」
上記第1〜第12の実施形態等にかかる固定手段としても、上記態様にてA/D変換器34,36の入力信号を固定するものに限らない。例えば、A相被変調波SaとB相被変調波Sbとの双方について、上記固定値を同一の電圧信号としてもよい。また、固定値としては、デジタル変換手段による変換可能電圧範囲の上限値以上とするものや下限値以下とするものに限らない。例えば変換可能電圧範囲の上限値と中央値との間の値であってもよい。ただし、中央値(被変調波の振幅中心)を避けることが望ましい。さらに、上限値と中央値との差の「1/2」以上中央値から離間した値とすることが望ましい。もっとも、中央値としたとしても、上記第1〜第12の実施形態等のように位相の相違する一対の被変調波を有する場合には、双方が中央値に固定されることはないため、サンプリング信号SA,SBの双方が中央値に固定される場合に限って異常である旨診断するなどすることはできる。
【0166】
上記第13、第14の実施形態における固定値としては、上限値VHおよび下限値VLの間の中央値に限らない。例えば上記中央値と上限値VHとの間の中央値や、上記中央値と上記下限値VLとの間の中央値であってもよい。この場合であっても、断線異常の有無を上記第13、第14の実施形態において例示したように、サンプリング信号SA1,SB1およびサンプリング信号SA2,SB2の双方において行うことで断線の有無を迅速且つ高精度に診断することはできる。
【0167】
また、固定手段としては、プルアップやプルダウンを行なうものに限らない。例えば2次側コイル24,26からA/D変換器34,36までの電気経路の容量を大きくするなどしてノイズに対する耐性を高めるなら、プルアップやプルダウンを行わなくても断線時にサンプリング信号SA,SBを固定する(A相被変調波SaやB相被変調波Sbの変動量をA/D変換器34,36の分解能以下とする)ことができると考えられる。
「固定手段を備えない構成について」
固定手段を備えるものにも限らない。こうした場合であっても、例えば上記第7の実施形態にて例示した手法や上記12の実施形態にて例示した手法を好適に実施することができる。
【0168】
また、例えば差動増幅回路30、32の入力端子や出力端子が他の部材とショートする場合等にあっては、固定手段を備える場合と同様、サンプリング周期を励磁信号Scの周期とは相違させることの利用価値が大きい。すなわち、サンプリング周期を励磁信号Scの周期とは相違させることで、サンプリング信号SA,SBが変動するか否かに基づき異常の有無を診断することができる。また、このように固定手段の存在と関係なく異常によってサンプリング信号SA,SBが固定される場合、サンプリング周期と励磁信号Scとを同期させるなら、上記2乗和信号MUが正常値に近似した値で固定され、異常がある旨の診断を行なうことができなくなるおそれがある。これに対し、サンプリング周期を励磁信号Scの周期とは相違させるなら、2乗和信号MUとしてとり得ない値をとることで異常である旨診断することができる。
【0169】
また、固定手段の有無とは関係なくサンプリング周期を励磁信号Scの周期とは相違させることには、次のような技術的意義もある。すなわち、サンプリング周期と励磁信号Scとを同期させる場合、これらを完全に同期させるには同期回路が必要であり、回路規模の増大等を招くこととなる。これに対し、同期回路を備えない場合、サンプリング周期と励磁信号Scの周期とが微妙にずれると、サンプリングタイミングが意図した励磁信号Scの位相から大きくずれた状態が長時間継続するおそれがある。そしてこの場合には、異常があるか否かを正確に診断することが特に困難となる。これに対し、サンプリング周期と励磁信号Scの周期とを一致させないことを前提とする診断手法によればこうした問題を回避することもできる。
「2次側コイル24,26の断線等に起因した異常の診断手法について」
上記第15の実施形態において例示したものに限らない。たとえば、先の図26(b)に示す現象がゲイン異常であることに鑑みれば、上記第11の実施形態の手法を採用することは有効である。またたとえば、上記第13,14の実施形態にかかる手法においても、先の図26(b)に示した現象が生じる場合、断線異常と判断することができる。なぜなら、断線が生じる場合、2乗和信号MUは、「0<α<1」を用いると、「(sinωtsinθ)^2+α(sinωtcosθ)^2」または「α(sinωtsinθ)^2+(sinωtcosθ)^2」となるためである。すなわちたとえば、「(sinωtsinθ)^2+α(sinωtcosθ)^2」は、「(sinωt)^2+(α―1)(sinωtcosθ)^2」であるから、「(sinωt)^2」よりも小さい。
さらに、上記第6の実施形態にかかる手法においても、先の図26(b)に示した現象が生じる場合、異常と判断することができる。なぜなら、たとえば変調波sinθがαsinθ(0<α<1)となる場合、規格化信号NSAは、正常時のものと比較してα倍となるため、変動量自体も小さくなるためである。
また、第7の実施形態にかかる手法においても、先の図26(b)に示した現象が生じる場合、異常と判断することができる。
なお、2次側コイル24,26に誘起される電圧が小さくなるものに限らず、2次側コイル24,26に誘起される電圧が大きくなる異常についても同様の実施形態の診断手法によって異常の有無を診断することができる。すなわちたとえば、この場合、上記第13,14の実施形態において、規格化信号NMUが「1」よりも規定値以上大きいことに基づき異常である旨診断することができる。
「乖離着目手段について」
乖離着目手段としては、上記第3の実施形態(図5)や上記第4の実施形態(図7)、第5の実施形態(図8)に例示したものに限らない。例えば、1のサンプリング値と固定値との乖離度合いが小さいと判断される状況下、複数のサンプリング値の変動量が小さいことに基づき異常と診断するものとしてもよい。
「変動量着目手段について」
変動量着目手段としては、上記第1の実施形態(図3)や上記第2の実施形態(図4)、第6の実施形態(図6)に例示したものに限らない。例えば、サンプリング値を強調フィルタによって強調したものに基づき、変動量が小さい場合に異常と判断するものであってもよい。
「平滑フィルタについて」
平滑フィルタとしては、1次遅れフィルタに限らない。例えばバターワース低域フィルタ等であってもよい。
「位相差着目手段について」
位相差着目手段としては、上記第7の実施形態(図11)に例示したものに限らない。例えば、サンプリング信号SBの絶対値が第1閾値以下であって且つサンプリング信号SAの絶対値が第2閾値以上とならないと判断される都度仮異常カウンタをインクリメントするととともに、上記第2閾値以上となると判断される以前に仮異常カウンタが閾値以上となることで異常がある旨診断するものであってもよい。ちなみに、この処理は、固定手段による双方の固定値を同一とするなら、サンプリング信号SA,SBを入れ替えても成立する。
「加算値着目手段について」
加算値着目手段としては、上記第9の実施形態(図14)、第10の実施形態(図16)、第11の実施形態(図18)、第12の実施形態(図21)に例示したものに限らない。例えば、上記第11の実施形態において、強調フィルタの出力値が閾値を越える場合に異常とするものであってもよい。
「回避手段について」
回避手段としては、上記第13,第14の実施形態において例示されるものに限らない。例えば、原則単一のサンプリング周期(2π/ω)を採用して診断を行うに際し、変調波の角速度がゼロではないにもかかわらずサンプリング値の変動が小さい場合にサンプリング間隔を強制的に変更する手段を備えて構成してもよい。ここで、変調波の角速度がゼロではないことは、例えば先の図1等に例示したシステムにおいてモータジェネレータ10がゼロ以外の回転速度に制御されていること等によって把握することができる。
【0170】
なお、回避手段の適用対象となる診断手段としては、2乗和信号MUを用いるものに限らない。例えば、上記第6の実施形態(図9)等においても、変調波が小さくなるときばかりの規格化信号NSAを用いるなら診断精度が低下すると考えられるため、回避手段を用いることは有効である。
「レゾルバについて」
搬送波によって励磁される第1コイルと、該第1コイルによって生成される磁束と磁気結合する第2コイルと、第1コイルによって生成される磁束のうち第2コイルを鎖交する磁束が周期的に変化するように第1コイルおよび第2コイルの少なくとも一方を変位させる変位手段とを備えるものに限らない。たとえば、第1コイルによって生成されて第2コイルを鎖交する磁束の経路にロータが配置され、このロータの変位に応じて第2コイルを鎖交する磁束が周期的に変化するものであってもよい。
「振幅変調装置について」
振幅変調装置としては、レゾルバに限らない。例えばA相被変調波SaとB相被変調波Sbとの位相差が「30°」等、位相差が「π/2」以外のものであってもよい。ただし、位相差はゼロ以外であることが望ましい。もっとも、位相差がゼロであっても、上記第1〜6、8の実施形態等によって異常診断を行なうことはできる。
【0171】
また、回転角度検出手段に限らず、例えばAMラジオ送信機等に搭載されるAM変調器等、被変調波が単一のものであってもよい。もっとも、これに代えて3つ以上の被変調波を生成するものであってもよい。また、回転角度検出手段としても被変調波が2つのものに限らない。
「搬送波の値がゼロに近い場合について」
搬送波の値がゼロに近い場合に異常診断処理を禁止するものとしては、規格化信号を用いるものに限らない。例えば第1の実施形態等においても、搬送波がゼロに近い場合には、正常であっても変動量が小さくなるため、異常診断を禁止してもよい。
(そのほか)
・仮異常診断によって異常と診断される回数が所定の複数回以上となることで異常と診断する手法の適用対象は、上記実施形態にて例示したものに限らない。上記実施形態中、統計処理を利用しないものにあっては、この手法を適用することで診断精度が特に向上しやすいと考えられる。
【0172】
・上記第11の実施形態では、A相被変調波SaやB相被変調波Sbの振幅が大きくなる異常の有無を診断したがこれに限らず、小さくなる異常の有無を診断してもよい。これは、フィルタ処理後の値が閾値以下である場合に異常とすることで行なうことができる。
【0173】
・上記第13、第14の実施形態において、2乗和信号MUや規格化信号NMUに基づき、ショート異常または断線異常のいずれかが生じたか否かの診断を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0174】
10…モータジェネレータ、10a…回転子(変位手段の一実施形態)、20…レゾルバ、22…1次側コイル、24,26…2次側コイル、30,32…差動増幅回路、34,36…A/D変換器、40…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波の振幅を変調して被変調波を生成する振幅変調装置について、該装置の異常の有無を診断する振幅変調装置の異常診断装置において、
前記搬送波および前記被変調波の少なくとも一方を、前記搬送波の周期とは相違する間隔でサンプリングするサンプリング手段と、
該サンプリング手段によるサンプリング値に基づき前記異常の有無を診断する診断手段とを備えることを特徴とする振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項2】
前記サンプリング手段は、前記被変調波をサンプリングすることを特徴とする請求項1記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項3】
前記振幅変調装置は、前記被変調波を出力する手段と、該手段と前記サンプリング手段との間の信号の伝播経路が断線する場合に前記サンプリング手段に入力される信号を固定値とする固定手段とを備えることを特徴とする請求項2記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項4】
前記固定値は、前記被変調波の振幅中心値とは相違した値であることを特徴とする請求項3記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項5】
前記振幅変調装置は、前記搬送波によって励磁される第1コイルと、該第1コイルによって生成される磁束と磁気結合する第2コイルとを備えて且つ、回転体の回転に応じて前記第1コイルによって生成される磁束のうち前記第2コイルを鎖交する磁束が周期的に変化することで前記第2コイルに誘起される電圧を前記被変調波とするものであることを特徴とする請求項2記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項6】
前記サンプリング手段は、前記第2コイルの出力信号を所定範囲の電圧に変換する電圧変換手段と、該電圧変換手段の出力信号を前記間隔でデジタル信号に変換するデジタル変換手段と、該デジタル変換手段によって変換されたデジタルデータに基づき前記異常の有無を診断する処理を行なうデジタル処理手段とを備え、
前記電圧変換手段は、前記第2コイルとの接続が切断される場合の出力を固定値とする固定手段を備えることを特徴とする請求項5記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項7】
前記固定値は、前記被変調波の振幅中心値とは相違した値であることを特徴とする請求項6記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項8】
前記診断手段は、前記サンプリング手段によるサンプリング値と前記固定手段による固定値との乖離に基づき前記異常の有無を診断する乖離着目手段を備えることを特徴とする請求項3、4、6または7記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項9】
前記診断手段は、前記サンプリング手段によるサンプリング値の変動量が小さい場合に異常がある旨診断する変動量着目手段を備えることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項10】
前記診断手段は、前記サンプリング手段によるサンプリング値をフィルタ処理したものに基づき前記診断を行なうことを特徴とする請求項8または9記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項11】
前記フィルタ処理は、平滑フィルタによる処理であることを特徴とする請求項10記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項12】
前記診断手段は、前記変動量を、前記サンプリング手段によるサンプリング値の変化速度として定量化することを特徴とする請求項9記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項13】
前記診断手段は、前記変動量を、前記サンプリング値の所定期間内における複数のサンプリング値の最大値、最小値、標準偏差、分散、とがり度の少なくとも1つに基づき定量化することを特徴とする請求項9記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項14】
前記振幅変調装置は、回転機の回転角度を検出するレゾルバであり、
前記回転機の電気的な状態量に基づき前記回転角度を推定する回転角度推定手段をさらに備え、
前記変動量着目手段は、前記推定手段によって推定される回転角度に基づき前記被変調波の振幅の復調処理を行ったものの変動量に基づき前記診断を行なうことを特徴とする請求項9記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項15】
前記被変調波は、互いに位相が相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、
前記サンプリング手段は、前記一対の被変調波のそれぞれの値をサンプリングするものであり、
前記診断手段は、前記一対の被変調波同士の差が所定以上とならないことを条件に異常がある旨診断する位相差着目手段を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項16】
前記被変調波は、互いに位相が相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、
前記サンプリング手段は、前記一対の被変調波のそれぞれの値をサンプリングするものであり、
前記診断手段は、前記一対の被変調波のサンプリング値を各別の成分とする座標系における前記サンプリング値の座標分布に基づき前記異常の有無の診断を行なうことを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項17】
前記被変調波は、互いに位相が相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、
前記診断手段は、前記一対の被変調波のサンプリング値同士の加算値と閾値との大小比較に基づき異常の有無を診断する加算値着目手段を備えることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項18】
前記被変調波は、互いに位相が「π/2」だけ相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、
前記診断手段は、前記一対の被変調波のサンプリング値それぞれの2乗同士の加算値に基づき異常の有無を診断する加算値着目手段を備えることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項19】
前記サンプリング手段は、前記搬送波の周期とは相違する周期でサンプリングを行なうものであり、
前記加算値着目手段は、前記加算値を強調フィルタによってフィルタ処理したものに基づき異常の有無を診断するものであり、
前記強調フィルタは、前記搬送波の周期とサンプリング周期との公倍数を周期として変動する値を前記サンプリング手段による各サンプリングタイミングに対応する前記加算値のそれぞれに乗算したものを出力値とすることを特徴とする請求項17または18記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項20】
前記強調フィルタの前記変動する値は、すべて同一符号であることを特徴とする請求項19記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項21】
前記加算値着目手段は、前記強調フィルタの出力をさらに平滑フィルタによってフィルタ処理したものに基づき異常の有無を診断することを特徴とする請求項19または20記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項22】
前記加算値着目手段は、前記加算値から前記搬送波の振幅変化の影響を除去する除去手段を備えて且つ、該除去手段の出力に基づき異常の有無を診断することを特徴とする請求項17記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項23】
前記サンプリング手段は、前記サンプリングを所定周期で行なうことを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項24】
前記被変調波は、互いに位相が「π/2」だけ相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、
前記サンプリング手段は、前記サンプリングを第1の周期および該第1の周期とは相違する第2の周期のそれぞれにおいて行うものであり、
前記診断手段は、前記第1の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値、および前記第2の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値の双方に基づき異常の有無を診断する加算値着目手段を備えることを特徴とする請求項3または6記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項25】
前記被変調波は、互いに位相が「π/2」だけ相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、
前記サンプリング手段は、前記サンプリングを同一周期であって且つ互いに相違する位相を有する第1の周期および第2の周期のそれぞれにおいて行うものであり、
前記診断手段は、前記第1の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値、および前記第2の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値の双方に基づき異常の有無を診断する加算値着目手段を備えることを特徴とする請求項3または6記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項26】
前記固定値は、前記被変調波の振幅の上限値および下限値の間の値に設定され、
前記第1の周期は、前記搬送波の周期とは相違するものであり、
前記診断手段は、前記第1の周期に関するサンプリング値と前記上限値または前記下限値との差が定常的に規定値以下となることに基づき、前記振幅変調装置のショート異常であると診断することを特徴とする請求項24または25記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項27】
搬送波の振幅を変調して被変調波を生成する振幅変調装置について、該装置の異常の有無を診断する振幅変調装置の異常診断装置において、
前記被変調波をサンプリングするサンプリング手段と、
該サンプリング手段によるサンプリング値に基づき前記異常の有無を診断する診断手段とを備え、
前記サンプリング手段は、前記診断手段による診断が前記搬送波を変調する変調波の同一位相におけるサンプリング値のみに基づき行なわれることを回避する回避手段を備えることを特徴とする振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項28】
前記サンプリング手段は、前記サンプリングを第1の周期および該第1の周期とは相違する第2の周期のそれぞれにおいて行うものであり、
前記回避手段は、前記第1の周期に関するサンプリング値を用いた診断と、前記第2の周期に関するサンプリング値を用いた診断とのそれぞれを前記診断手段に行わせることを特徴とする請求項27記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項29】
前記サンプリング手段は、前記サンプリングを同一周期であって且つ互いに相違する位相を有する第1の周期および第2の周期のそれぞれにおいて行うものであり、
前記回避手段は、前記第1の周期に関するサンプリング値を用いた診断と、前記第2の周期に関するサンプリング値を用いた診断とのそれぞれを前記診断手段に行わせることを特徴とする請求項27記載の振幅変調装置の異常診断装置。
【請求項30】
前記被変調波は、互いに位相が「π/2」だけ相違する一対の変調波によって前記搬送波が変調された一対の被変調波を含み、
前記診断手段は、前記第1の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値、および前記第2の周期に関する前記一対の被変調波についてのサンプリング値のそれぞれの2乗同士の加算値の双方に基づき異常の有無を診断する加算値着目手段を備えることを特徴とする請求項28または29記載の振幅変調装置の異常診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−108092(P2012−108092A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111840(P2011−111840)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】