説明

捲回式二次電池およびその製造方法

【課題】電池に応じた専用の軸芯、軸芯に応じた捲回装置の捲回軸、軸芯と捲回物の固定冶具等が無くとも捲回操作で軸芯機能の発現を可能として、生産効率を向上させた捲回式二次電池を提供する。
【解決手段】電極と、セパレータと、軸芯と、を有する電極群からなる捲回式二次電池において、電極は、電極合剤層および集電体を有し、電極および前記セパレータは前記軸芯の周りに捲回され、集電体は、前記電極合剤層が塗工されていない電極合剤未塗工部を有し、電極合剤未塗工部は、前記軸芯への前記電極の捲き始めに設けられ、軸芯は、前記電極合剤未塗工部が捲回された構造である捲回式二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は捲回式の電池に係り、特に正極と負極とがセパレータを介して捲回された電極群から成る捲回式電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池容器の形状が規格化された電池あるいは容積が決められた電池において、高容量化や高出力化を図るための一手段としては、電極面積をできるだけ大きくなるように限られた容積内に配置することが有効である。できるだけ大きな電極面積となるように配置するには、フィルム状のセパレータを介し、帯状の正極と負極とを渦巻状に捲回した電極群とするのが一般的である。
【0003】
この捲回式電極群は、捲回装置に具備された捲回軸の周りに直接セパレータを数周分捲回した後、正極と負極とがセパレータを介して対向するように捲回し、最後にセパレータのみ数周分捲回して終端部を保護テープ等で接着固定し、捲回軸が引き抜かれて作製される。また、専用の軸芯を捲回装置に取り付け、この軸芯にセパレータの先端を熱融着やテープ止めして数回分捲回後、正極と負極を挿入して捲回群を作製する方法や、捲回装置に具備された捲回軸に互いに嵌合した1対の部材で構成された軸芯を取り付け、この軸芯の外周にセパレータを介して正極と負極とを捲回して繁雑な熱圧着やテープ貼り操作を排除して電極群を作製する方法もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−226500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、捲回装置の捲回軸に直接巻き付けて作成した電極群では、電池容器内で電極面積を大きくとれるものの捲回軸を抜いた部分が中空となっており、しかもセパレータが数周分捲回された後に電極が捲回された構成のため、充放電サイクル経過時の電極の膨張と収縮により電極群の捲き始め部分で変形することが知られている。この電極の変形を防止するには、電極群の中心に軸芯を設けることで回避することが可能である。しかし、軸芯を設けるには、それぞれの電池に応じた専用の軸芯、軸芯に応じた捲回装置の捲回軸、軸芯と捲回物の固定冶具等が必要となるとともに捲回操作工程が増え、生産効率が低下するという問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するため、特許文献1では、互いに嵌合した1対の部材で軸芯を構成し、その嵌合部分にセパレータを挟み込んで固定し、捲回する方式を提案して生産性の向上を図っている。しかしながら、この方式では、1対の嵌合部材がリング状と半割円筒体が一体化された複雑な形状であること、また捲回操作時には半割れの1対の捲回軸にそれぞれ半割れの軸芯を装荷しなければならないことなどから、さらなる作業性の効率向上が必要であった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、専用の軸芯部材を捲回装置に装着しなくとも具備された捲回軸による通常の捲回操作で軸芯機能を発現させることにあり、軸芯機能を備えた捲回式電池の生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)電極と、セパレータと、軸芯と、を有する電極群からなる捲回式二次電池において、電極は、電極合剤層および集電体を有し、電極およびセパレータは軸芯の周りに捲回され、集電体は、電極合剤層が塗工されていない電極合剤未塗工部を有し、電極合剤未塗工部は、軸芯への電極の捲き始めに設けられ、軸芯は、電極合剤未塗工部が捲回された構造である捲回式二次電池。
(2)上記において、電極は、正極または負極の少なくともいずれか一方である捲回式二次電池。
(3)上記において、軸芯は、電極合剤未塗工部とセパレータとが一緒に捲回して形成された構造である捲回式二次電池。
(4)上記において、軸芯は、電極合剤未塗工部のみを捲回して形成された構造であり、
軸芯の外表面にセパレータが接合される捲回式二次電池。
(5)上記において、電極合剤未塗工部に補強板が取り付けられている捲回式二次電池。
(6)上記において、補強板が電極の導電リードを兼ねている捲回式二次電池。
(7)上記において、補強板の厚みは集電体の厚みより大きい捲回式二次電池。
(8)上記において、電極合剤未塗工部の捲き始め先端部と補強板の捲き始め先端部の位置がずれている捲回式二次電池。
(9)上記において、正極合剤未塗工部の捲き始め先端部に補強板が設けられ、集電体と補強板とが保護テープで貼り付けされ、保護テープによって集電体と補強板とが絶縁されている捲回式電池。
(10)上記において、電極合剤層に電極活物質が含まれ、電極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出する捲回式電池。
(11)電極と、セパレータと、軸芯と、を有する電極群からなる捲回式電池の製造方法であって、電極は、電極合剤層および集電体を有し、電極およびセパレータは軸芯の周りに捲回され、集電体は、電極合剤層が塗工されていない電極合剤未塗工部を有し、軸芯は、電極合剤未塗工部が捲回された構造であり、以下の工程を含む捲回式電池の製造方法。
(A)捲回軸の半割れ部分にセパレータを挟み込み、セパレータを捲回軸の周りに捲回する工程、(B)(A)の工程後に、電極合剤未塗工部をセパレータと一緒に捲回軸の周りに捲回する工程、(C)(B)の工程後に、電極をセパレータと一緒に捲回軸の周りに捲回する工程、(D)(C)の工程後に、セパレータの端部を電極群に貼り付ける工程、(E)(D)の工程後に、捲回軸を引き抜く工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極部材の集電体を捲回することによって電極群の捲き始め部分に軸芯機能が発現できるため、専用の軸芯と捲回軸を装荷しなくとも捲回式電池の生産性を大幅に向上できる効果が得られる。上記した以外の課題,構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】円筒型リチウムイオン二次電池の長手方向断面図。
【図2】図1のA−A水平断面図。
【図3】捲回装置で電極群を作製する時の構成材配置を説明する模式図。
【図4】捲回軸を中心にセパレータ、正極および負極の捲回状態を説明する正面図。
【図5】軸芯を形成するための変形例を示す図。
【図6】軸芯を形成するための他の変形例を示す図。
【図7】図6で軸芯形成用の補強板が導電リードを兼ねていることを示す図。
【図8】軸芯を形成するための他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0012】
本発明の一実施形態は、捲回装置の捲回作業によって電極群の捲き始め部に軸芯機能を発現させることにある。具体的には、正極あるいは負極の少なくともどちらか一方の電極群捲き始め部分において、捲回によって軸芯機能の発現に必要な長さの電極合剤未塗工の集電体を設け、この集電体の部分をセパレータと一緒に捲回することで軸芯機能を発現させた後、電極群を捲回するものである。
【0013】
捲回操作による軸心機能を発現させるには、正極あるいは負極の捲き始め部に設けた集電体を複数回先巻きすることも可能であり、集電体のみ捲回軸に先巻きして軸芯機能を発現させた後、この軸芯にセパレータを接着あるいは融着させて数回捲回し、さらに電極合剤が塗工された部分を捲回することによって電極群を形成すれば、セパレータの融着または接着工程が増えるものの、集電体のみで形成したより強固な軸芯機能を発現できる。
【0014】
また、強固な軸芯機能を発現するには前記集電体の厚みを増す手段、集電体に補強板を取り付ける手段、あるいは前記補強板と導電リードを兼ねる手段も適用可能であり、いずれも専用の軸芯と捲回冶具を用いなくとも既存の捲回装置による捲回操作で軸芯機能を有する捲回式電池を効率良く生産することが可能となる。
【0015】
図1の縦断面図と図2の水平断面図に示すように、本実施形態の円筒型リチウムイオン電池1は、正極と負極とがセパレータを介して対向するように捲回された電極群3と電解液が電池缶4の内部に収納された捲回式の電池である。電極群3の捲き始め部には軸芯2、上端と下端には電気絶縁板5が備えられており、正極の導電リード7は電池蓋6、また負極の導電リード8は電池缶4の底部に接合され、除湿雰囲気あるいは不活性雰囲気に制御されたところで電解液が注入され、電池缶4と電池蓋6の間に電気絶縁とガスシールを兼ねたガスケット9が施されて密閉されている。正極活物質および負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵、放出して膨張・収縮を繰り返すもの以外に、マグネシウムイオンやナトリウムイオンを吸蔵、放出して膨張・収縮を繰り返すものを用いても良い。
【0016】
軸芯2は、電極群3の捲回時に形成したもので、軸芯2の形成方法を図3および図4により説明する。図3は、正極33、負極34およびセパレータ32の捲回装置への配置例(真上から見たもの)を示したもので、図4は捲回操作を正面から見たように示したものである。
【0017】
図3の捲回軸31は長手方向に半割れになっており、矢印の方向にスライドでき開いた状態でセパレータ32を間に通し、閉じることにより半割れの間に挟み込めるようになっている。同図は捲回軸31にセパレータ32を挟み込んだ状態を示している。
【0018】
一方、図4に示す電極である正極33はセパレータ32より上に配置し、負極34は下に配置されている。正極33は、正極合剤層133および集電体35で構成される。正極合剤層133には正極活物質が含まれている。負極34は、負極合剤層134および集電体35で構成される。負極合剤層134には負極活物質が含まれている。正極33の集電体35には、合剤層を形成した正極合剤塗工部135および塗工していない正極合剤未塗工部235を有する。
【0019】
捲回軸31を矢印方向に回転させ、捲回軸31にセパレータ32を数回巻いた後、正極33の捲き始めに設けた正極合剤未塗工部235を巻いて軸芯を形成する。軸芯51を形成するための集電体35の正極合剤未塗工部235と集電体35の正極合剤塗工部135をカプトンテープ等で接続し、電気的に絶縁してもよい。
【0020】
次に、正極33が捲き始まる前に負極34を捲き始め、正極33と負極34とがセパレータ32を介して対向するように捲回する。電極群3は、所定の長さの正極33と負極34を捲回後、さらにセパレータ32を巻いて電極を覆い、セパレータ32を切断して端部を電極群3に重ね、保護テープで止めて作製される。作製した電極群3は、捲回装置の捲回軸31を半割れ部分で開くようにスライドして引き抜き、捲回装置から取り出される。軸芯2の内部には、捲回軸31の形状に応じた中空部分が形成されている。軸芯2の中空部分には捲回軸31に挟み込んだセパレータ32が残っている。
【0021】
本発明の捲回式電池は、電池の充放電によって可逆的にリチウムイオンを吸蔵、放出して膨張・収縮を繰り返す正極および負極の捲回体内側に、正極合剤層133あるいは負極合剤層134の塗工されていない集電体等の捲回体を設けて軸芯を形成しているため、電極群3の内側の変形を防止できるという作用がある。
【0022】
軸芯2として負極34の集電体を用いてもよい。一般的に、正極33の集電体35には板厚15〜20μmのAl箔、負極34の集電体には板厚10μm程度のCu箔が用いられる。正極33の合剤密度が負極34の合剤密度より大きく、塗工した正極33の合剤の重さも負極34より重くなる。このため、負極34の集電体の厚みより正極33の集電体35の厚みを大きくして、機械的な強度を確保している。従って、Cu製の負極34の集電体よりAl製の正極33の集電体35で軸芯を形成するほうが機械的な強度を確保できる。また、AlはCuに比べコストの面でも有利である。
【0023】
軸芯2として正極33の集電体35および負極34の集電体を用いる場合は、正極33および負極34の電気的な短絡が発生する可能性があるので、正極33の集電体35および負極34の集電体の間にセパレータなどの絶縁材をはさむ必要がある。
【0024】
本発明による捲回式二次電池の用途は、特に限定されない。例えば、パーソナルコンピュータ、ワープロ、コードレス電話子機、電子ブックプレーヤ、携帯電話、自動車電話、ハンディターミナル、トランシーバ、携帯無線機等の携帯情報通信機器の電源として使用することができる。また、携帯コピー機、電子手帳、電卓、液晶テレビ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ポータブルCDプレーヤ、ビデオムービー、電気シェーバー、電子翻訳機、音声入力機器、メモリーカード等の各種携帯機器の電源として使用できる。その他、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、オーブン電子レンジ、食器洗い機、乾燥器、洗濯機、照明器具、玩具等の家庭用電気機器として使用できる。また、家庭用、業務用を問わずに、電動工具や介護用機器(電動式車いす、電動式ベッド、電動式入浴設備など)の用電池としても利用可能である。さらに、産業用途として、医療機器、建設機械、電力貯蔵システム、エレベータ、無人移動車両などの電源として、さらには電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、ゴルフカート、ターレット車などの移動体用電源として、本発明を適用することができる。さらには、太陽電池や燃料電池から発生させた電力を本発明の電池モジュールに充電し、宇宙ステーション、宇宙船、宇宙基地などの地上以外で利用可能な蓄電システムとして用いることも可能である。
【実施例1】
【0025】
上記した図1から図4を用いて本発明の実施例1を以下に説明する。
【0026】
まず、図3で示した正極33は、アルミニウム箔製の集電体35の両面に正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極合剤がほぼ均等に塗工されたものを帯状に切断して用いた。正極33の長手方向のほぼ半分の位置には電流が流れる正極の導電リード7を設けてある(図では省略)。
【0027】
一方、負極34は銅箔製の集電体の両面に負極活物質としてリチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出可能な黒鉛等からなる炭素粉末材料を含む負極合剤をほぼ均等に塗工したものを帯状に切断して用いた。負極34の長手両端には、電流が流れる負極の導電リード8を設けてある(図では省略)。これら帯状電極の幅は、正極33の幅より負極34の幅を大きめとし、捲回時に多少巻ずれが生じても対向するようにした。
【0028】
また、セパレータ32は、ポリエチレン製の微多孔性で、厚さが15〜50μm程度の範囲から30μmのもの、捲回時に電極がはみ出さないように負極34の幅よりさらに大きなものを選定した。セパレータとして、ポリエチレン以外にポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミドイミドなどを用いてもよい。
【0029】
捲回装置の捲回軸31は直径が約4mmで、半割れ構造のものを用いた。捲回軸31としてセパレータを仮止めできる機能が備わっていれば良く、切り欠き溝に引っ掛けるタイプや、間に挟んで仮止めする半割れタイプでもよい。
【0030】
次に、図4を用いて電極群3の作製手順を説明する。捲回軸31の半割れ部分に2本のセパレータ32を挟み込み、矢印の方向に数回回転させた後、正極33の集電体35を挿入して捲回した。セパレータ32を挟み込むことにより、捲回操作で軸芯を形成した後のセパレータの貼り付けが不要になる。集電体35の長さは捲回軸31の外周をセパレータ32と一緒に何周させるかで決まるが、今回は10周程度と定め、肉厚約1mmの軸芯2を形成した。その後、負極34をセパレータ32の間に挿入して捲き始め、直後に正極33がセパレータ32の間に挿入して所定の長さ分を捲回後、さらにセパレータ32を複数回巻いて切断し、端部を保護テープで止めて電極群3を作製した。なお、正極33、負極34およびセパレータ32には、捲回軸31と反対方向に所定の張力が加えられ、捲回中の巻きずれや緩み発生を防止した。
【0031】
作製した電極群3は、図1に示したように負極34側を下に、正極33側を上にして上下に電気絶縁板5を取り付け、表面がニッケルメッキされた電池缶4内に収納し、以下の手順で組立てた。電極群3の中央の中空を利用して溶接棒を挿入し、電池缶4の缶底に負極の導電リード8を溶接した。次に、電池缶4の上部に電池蓋6を取り付けるための溝を付け、その溝の上側にガスケット9を入れた後、正極の導電リード7と電池蓋6を溶接した。組立てたものを真空乾燥器に入れ、60℃の真空雰囲気で約16時間保持し、電極群3や電池缶4に付着している水分を除去した。次に、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内に写し、電解液を注入した。電解液には、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の混合溶媒中に六フッ化燐酸リチウムを1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。電解液を注入後、電池缶4上部のガスケット9に電池蓋6を軽く入れ、かしめ機に装着して電池缶4をかしめて密封した。
【0032】
本実施例では、直径18mmで長さ65mmのいわゆる円筒18650型リチウムイオン電池を取り上げたが、これに限定されるものでは無く、例えば、多角形状や大型の捲回式リチウム電池にも適用可能である。多角形状の捲回式リチウム電池に適用する場合、円筒型捲回軸に所望の多角形状パーツを取り付け、そのパーツ形状に軸芯2を形成して電極群を作製する。電極群作製後に捲回軸を引き抜き、パーツを電極群から取り外す。これにより、電極群形状に応じた専用の軸芯と、それを取り付けるための捲回装置を改造することなく、軸芯形成用の1個のパーツをそろえるだけで、円筒形状から多角形状の電極群が容易に作製できる。
【0033】
また、本実施例の電池では、捲回張力と充放電時の電極の膨張・圧縮で発生する面圧に応じて電極群3の捲き始めに設ける集電体長さを適切に選択し、これを通常の捲回操作で捲回することにより電極群3の内側に最適な強度を有する軸芯を発現できるという効果があった。
【実施例2】
【0034】
以下、図5を用いて本発明の第2の実施例を説明する。実施例2では、電極群3の作製を対象に、実施例1と同一部材には同一番号を付して説明する。
【0035】
捲回装置の捲回軸31の半割れ部分にセパレータでは無く、正極33の集電体35の先端を挟み込み、まず集電体35のみ捲回して軸芯51を形成した。正極33の集電体35には、肉厚20μmのアルミニウム箔を使用し、正極合剤の未塗工長さを約270mmとした。この正極33の集電体35部を捲回軸31で巻き、ノギスで厚みを測定したところ約0.5mmで、軸芯51として良好な圧縮強度が得られた。集電体35を巻いて軸芯51を形成したところで、その外表面の2ヶ所にセパレータ52を接着してさらに捲回し、正極合剤を塗工した正極33の捲回が始まる前に、負極34をセパレータ32とセパレータ32の間に挿入して捲回した。その後、所定の長さの正極33と負極34とをセパレータを介して捲回し、さらにセパレータ32のみ数回巻いた後に切断し、端部をポリイミド製の保護テープで止めて電極群3を作製した。
【0036】
実施例2では、捲回操作で軸芯を形成した後、セパレータの貼り付けが伴うもののアルミニウムだけで軸芯が形成できるため、より圧縮強度の高い軸芯が得られるという効果があった。
【実施例3】
【0037】
図6を用いて第3の実施例を示す。実施例3では、電極群3の作製を対象に、実施例1と同一部材には同一番号を付して説明する。
【0038】
実施例3は、電極の集電体をそのまま利用して捲回操作により軸芯機能を発現させると、集電体長さが長くなることから、短くする手段を開示するものである。捲回操作で形成する軸芯は、集電体35の長さを長くして捲回数を多くすることにより強度が増す。捲回数を多くすることは、集電体35の厚みを厚くすることによって達成できる。局所的に厚い集電体を採用することも可能であるが、現実的で無い。
【0039】
そこで、集電体35に補強板61を貼り付けて集電体35の長さを短くするとともに、図7のように、正極の導電リード7を兼ねた構成とした。補強板61が、正極の導電リード7ではなく、負極の導電リード8を兼ねた構成としてもよい。図7では、正極の導電リード7を設けた補強板61を集電体35の正極合剤未塗工部235に接合している。集電体35の正極合剤未塗工部235および補強板61の表面を電気絶縁性の保護テープ70で覆っている。円筒捲回型の場合、一般に負極34を電池缶4と接続し、正極33を電池蓋6と接続することから、正極の導電リード7は電池缶4から離れた捲き始め部分に設けている。このため、軸芯51形成のための導電リードを兼ねた補強板61は、負極34よりも正極33側に適用しやすい。
【0040】
集電体35の長さを短くするための補強板61は、必ずしも導電リードを兼ねる必要はない。導電リードの製作方法として、正負極の集電体に合剤の未塗工部を設け導電リード形状に加工する方法と、専用の導電リードを別に製作して電極に接合する方法がある。前者は電極加工用の複雑な裁断機が必要となるが、後者の方法では通常の電池製作機器である溶接機で対応できる。上記のように導電リードを兼ねる方法の場合、従来の製作法を変えずに本発明を適用できる。
【0041】
補強板61の捲き始め先端部をテーパ状にすることで、滑らかな曲線を描いて捲回集電体35を捲回できる。図6のように、集電体35の正極合剤未塗工部235の捲き始め先端部と補強板61の捲き始め先端部の位置をずらすことで、補強板61の捲き始め先端部をテーパ状にしなくても、滑らかな曲線を描いて集電体35を捲回できる。
【0042】
補強板61の厚みを正極合剤層133の厚みと略同じにすることで、正極合剤塗工部135および正極合剤未塗工部235で生じる段差の数を抑えることができる。補強板61の厚みを集電体35の厚みより大きくすることで、正極合剤未塗工部235を短くできる。補強板61の厚みを集電体35の厚みより小さくすることで、捲回時の段差が小さくなり電気的な短絡を防止できる。
【0043】
厚み20μmのアルミニウム集電体35に、厚み100μmで長さ約27mmのアルミニウム製補強板61を超音波溶接機で接合した。集電体35への補強板61の接合面は、捲回内側面とし、肉厚の違いによって生じる段差をできるだけ緩和するようにして電極群3を作製した。
【0044】
実施例3の補強板61は、集電体35と同じアルミニウムや銅の他に、ニッケル、ステンレス鋼などの剛性の強いものでも捲回装置の捲回軸で捲回可能であれば適用可能である。ニッケル、ステンレス鋼は集電体35に用いられるアルミニウムや銅よりも剛性が強いので、薄い肉厚の軸芯を形成できる。また、導電リードを兼ねない補強板であればポリプロピレン製やポリエチレン製などでも良く、かつ実施例1および実施例2のどちらにも適用可能であり、短い集電体を捲回することにより所望の圧縮強度を有する軸芯を形成することができるという効果がある。
【0045】
図6の変形例として、図8のように、集電体35の正極合剤未塗工部235の捲き始め先端部に補強板61を電気絶縁性の保護テープ70で貼り付けた構造とし、捲回時に補強板61を先巻きして軸芯を形成し、その後、電極群3を形成してもよい。図8の構造により、軸芯2部分が電気的に絶縁された構成となるため、内部短絡等の発生を緩和できる。
【符号の説明】
【0046】
1 円筒型リチウムイオン電池
2,51 軸芯
3 電極群
4 電池缶
5 電気絶縁板
6 電池蓋
7 正極の導電リード
8 負極の導電リード
9 ガスケット
31 捲回軸
32,52 セパレータ
33 正極
34 負極
35 集電体
61 補強板
70 保護テープ
133 正極合剤層
134 負極合剤層
135 正極合剤塗工部
235 正極合剤未塗工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、セパレータと、軸芯と、を有する電極群からなる捲回式二次電池において、
前記電極は、電極合剤層および集電体を有し、
前記電極および前記セパレータは前記軸芯の周りに捲回され、
前記集電体は、前記電極合剤層が塗工されていない電極合剤未塗工部を有し、
前記電極合剤未塗工部は、前記軸芯への前記電極の捲き始めに設けられ、
前記軸芯は、前記電極合剤未塗工部が捲回された構造である捲回式二次電池。
【請求項2】
請求項1において、
前記電極は正極または負極の少なくともいずれか一方である捲回式二次電池。
【請求項3】
請求項1において、
前記軸芯は、前記電極合剤未塗工部と前記セパレータとが一緒に捲回して形成された構造である捲回式二次電池。
【請求項4】
請求項1において、
前記軸芯は、前記電極合剤未塗工部のみを捲回して形成された構造であり、
前記軸芯の外表面に前記セパレータが接合される捲回式二次電池。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記電極合剤未塗工部に補強板が取り付けられている捲回式二次電池。
【請求項6】
請求項5において、
前記補強板が前記電極の導電リードを兼ねている捲回式二次電池。
【請求項7】
請求項5において、
前記補強板の厚みは前記集電体の厚みより大きい捲回式二次電池。
【請求項8】
請求項5において、
前記電極合剤未塗工部の捲き始め先端部と前記補強板の捲き始め先端部の位置がずれている捲回式二次電池。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記正極合剤未塗工部の捲き始め先端部に補強板が設けられ、
前記集電体と前記補強板とが保護テープで貼り付けされ、
前記保護テープによって前記集電体と前記補強板とが絶縁されている捲回式電池。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかにおいて、
前記電極合剤層に電極活物質が含まれ、
前記電極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出する捲回式電池。
【請求項11】
電極と、セパレータと、軸芯と、を有する電極群からなる捲回式電池の製造方法であって、
前記電極は、電極合剤層および集電体を有し、
前記電極および前記セパレータは前記軸芯の周りに捲回され、
前記集電体は、前記電極合剤層が塗工されていない電極合剤未塗工部を有し、
前記軸芯は、前記電極合剤未塗工部が捲回された構造であり、
以下の工程を含む捲回式電池の製造方法。
(1)捲回軸の半割れ部分に前記セパレータを挟み込み、前記セパレータを前記捲回軸の周りに捲回する工程、
(2)(1)の工程後に、前記電極合剤未塗工部を前記セパレータと一緒に前記捲回軸の周りに捲回する工程、
(3)(2)の工程後に、前記電極を前記セパレータと一緒に前記捲回軸の周りに捲回する工程、
(4)(3)の工程後に、前記セパレータの端部を前記電極群に貼り付ける工程、
(5)(4)の工程後に、前記捲回軸を引き抜く工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−25912(P2013−25912A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157414(P2011−157414)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】