説明

排ガスターボチャージャ用排ガスタービン

本発明は、案内装置(13、17)を包囲し、接線方向流入の入口筒(41)を有する板金から製造されたスクロール形状を有するハウジング(11)を有する排ガスターボチャージャ用の排ガスタービン(10)であって、板金外部シェル(21)が空隙(22)を持ってスクロール形状を有するハウジング(11)を包囲する排ガスタービンに関する。本発明は、スクロール形状を有するハウジング(11)及び外部シェル(21)がポットの形状で提供され、案内装置(13、17)に向かって配向された面が、スクロール形状を有するハウジング(11)が少なくとも1つの軸方向伸縮可能な要素(32)を介して隣接する案内装置(13、17)の一部で区切られるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載のターボチャージャ用の排ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
板金から製造されたスクロール形状を有するハウジングが両方とも、成形ケーシングに固定して接続され、さらにクランプストリップによって中間リングを介してタービンの中央軸受ハウジングにクランプ止めされる、ターボチャージャ用の排ガスタービンは、特許文献1に記載されている。中間リングは、排ガスタービンの一例によれば、成形ケーシングを備えた単一部品として設計されるか又は別の構成要素を形成できる。スクロール形状を有するハウジングは、2つの板金シェルから構成され、それらの一方のシェルは、案内装置に面するスクロールダクト壁を形成するが、他方のシェルは、外側に面するスクロールダクト壁を形成する。外向シェルは、断熱を目的とする空隙を持ってもう1つのシェルによって包囲できる。スクロール形状を有するハウジングは、複雑な構造のものであるので、製造及び組み立てが複雑となる。さらに、それはかなりの重量のものとなり、特に著しい熱応力も発生させずに互いに対する個々のハウジング部分の異なる熱膨張を均等化できない。このような熱膨張は、故障につながり、早期磨耗となり得る。ガイドベーン用調整機構、ガイドベーン用軸受リング、成形ケーシング及びガイドベーン自体は、事前組み立てのできるモジュラーユニットを形成できる。
【0003】
スクロール形状を有するハウジングが二重壁の構造のものである、ターボチャージャ用タービンハウジングは、特許文献2に記載されている。スクロールダクトを形成する内壁は、スクロール形状を有するハウジング内に接線方向に開口する入口筒によって吸気フランジに取り付けられる。外壁は吸気フランジに溶接されるが、内壁は、外壁に対し摺動シート及び摺動シートを備えた吸気フランジを有するので、内壁と外壁との間での入口筒の方向の熱膨張は熱応力を発生しない。しかしながら、基本的には、スクロール形状を有するハウジングの内壁と外壁との均等化は、排ガスタービンの軸方向では提供されないので、特に内部シェルと外部シェルとの間の高温度差の際に、強い応力のため、十分な耐久性を確保しにくい。
【0004】
【特許文献1】国際公開第02/06637号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願公開第100 22 052 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、部品が単純且つ軽量であり、温度影響下でも最小限の応力しか発生しない板金から製造された2シェル形タービンハウジングを有する排ガスタービンを設計することである。この目的は請求項1の特徴によって本発明により達成される。他の有利な改良形態は従属項で開示される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、スクロール形状を有するハウジング及び外部シェルは、ポット状構造のものである。外部シェルは、この場合、大体円筒状構造のものであるが、スクロール形状を有するハウジングは、その流路断面が案内装置に向かって減少する、所望流量の要件に対応するスクロールダクトを形成する。スクロール形状を有するハウジング及び外部シェルは、成形ケーシング、軸受リング及び中間リングを有する案内装置の部分によって案内装置に面する端部側で区切られる。V状断面のクランプリングは、外部シェルをターボチャージャの中央軸受ハウジングに中間リングを介してクランプ止めするが、内部スクロール形状を有するハウジングは、少なくとも1つの軸方向伸縮可能な要素によって、案内装置の一部、例えば、中間リング又は軸受リングと隣接する。その結果、スクロール形状を有するハウジングは、著しい応力が案内装置又は外部シェルの隣接部分に加わることなく温度影響下で軸方向及び半径方向に膨張できる。
【0007】
伸縮可能な要素は、スクロール形状を有するハウジングの製造時にスクロール形状を有するハウジングに直接一体的に形成され、都合よくスクロール形状を有するハウジングの他の部分よりも薄い肉厚を有するスクロール形状を有するハウジングの波形管状部分によって簡単に形成できる。本発明の改良形態によれば、他の可能性は、伸縮可能な要素が案内装置の一部とスクロール形状を有するハウジングとの間に提供される摺動シートを有することである。この目的のため、案内装置の中間リング又は軸受リングは、スクロール形状を有するハウジングの好ましくは円筒状の取り付け部が当接し、摺動シートを形成する肩状部を有すると好都合である。円筒状取り付け部とスクロールダクトの半径方向区画との間の直径の差が半径方向に向き、一体的に形成された遷移部によって埋められる。
【0008】
さらに、耐熱シール要素によって摺動シートに加えて接続点を、例えば、スクロール形状を有するハウジングの接続部に一体的に形成され、肩状部に当接するシームの形で封止すると好都合である。
【0009】
特徴的な構成により、案内装置が成形ケーシングと、スペーサによって互いに接続され、スクロール形状を有するハウジングによって形成されたスクロールダクトに接続されるフローダクトを形成する調整可能なガイドベーン用の軸受構造とを有する排ガスタービンをもたらす。軸受リングは、外部シェルのフランジと共に外向外部フランジでクランプリングによってターボチャージャの隣接ハウジング部分にクランプ止めされる中間リングに締結される。この場合、軸受リング又は軸受リング及び中間リングはスクロールダクトの端部区画を形成するので、必要な構成要素数、材料費及び重量が極めて低く抑えられる。非常に軽量なタービン構造は、タービンハウジングに低質量及び低熱容量をもたらすので、始動後きわめて迅速に最適動作温度に達せられる。さらに、中間リングが弾性伸縮可能な支持板金リングによって軸受リングに接続されると有利である。その結果、案内装置の熱膨張は、ガイドベーンの調整機構や軸受ハウジングに熱応力の影響を与えない。
【0010】
スクロール形状を有するハウジングの半径方向内方部分は、基板によって成形ケーシングに都合よく接続される。スクロール形状を有するハウジングに直接一体的に形成又は別のシールによって封止できる基板は、同時に成形ケーシングからスクロール形状を有するハウジングを封止する働きをする。このことは、半径及び軸方向に基板を成形ケーシングに当接させる対応的に作用するクランプリングによって対応する軸方向又は半径方向のいずれでも行うことができる。このように、追加的なシールは、基板と成形ハウジングとの間に提供できる。
【0011】
他の利点は、図面の以下の説明で開示される。本発明の例示的な実施形態は図面に示される。図面、説明及び請求項は、組み合わされた多数の特徴を有する。当業者はまた、便宜上、これらの特徴を個別に検討し、それらを組み合わせて他の重要な組み合わせを形成することになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
排ガスタービン10の、本発明に関連する部分だけが示されている。排ガスタービン10は、調整可能なガイドベーン(図示省略)用の軸受リング17にスペーサ14によって接続される成形ケーシング13を有する。周囲に設けられる複数のスペーサ14には、成形ケーシング13及び軸受リング17が当接し、スペーサ14の端部におけるリベット頭部16によって保持されるストッパ15を有する。フローダクト30は、成形ケーシング13と軸受リング17との間に形成され、そのダクトは、図示されない半径内方ロータに至り、そのダクト内にはガイドベーンが周囲に設けられている。
【0013】
軸受リング17は、中間リング18に締結され、その外部円錐状フランジ19は、排ガスタービン(図示せず)の中央軸受ハウジングに対し、V状断面である、クランプリング24によってよく知られている方法でクランプ止めされる。図1の実施形態における中間リング18は軸受リング17に直接締結された内部半径方向フランジ20を有するが、図2の実施形態における軸受リング17は、部分的に図示されている軸受ハウジング37のフランジ輪郭38に支持板金リング25を介して接続されており、支持板金リング25の内部フランジ26は、軸受リング17に取り付けられ、支持板金リング25の外部フランジ27は軸受ハウジング37の適当なフランジ輪郭38にクランプリング24によってクランプ止めされている。支持板金リング25は、弾性伸縮可能であるので、13、14、17を含む案内装置及びターボチャージャのハウジングの間の熱膨張を均等化できる。
【0014】
フローダクト30は、排ガスがそれを通して供給されるスクロールダクト12によって外側で半径方向に包囲される。排ガス流を加速するために、スクロールダクト12内のフロー断面は、接線方向に開口する入口筒41から、フローダクト30まで連続的に狭くなり、このことにより、事実上スクロールダクト12を形成する、スクロール形状を有するハウジング11の渦巻状構造となる。スクロールダクト12の断面の狭小は、互いに対し角度をなし、図1及び図2の図の面で回転されたスクロール形状を有するハウジングの複数の破線部分で示される。
【0015】
外部シェル21はスクロール形状を有するハウジング11を包囲し、スクロール形状を有するハウジング11で耐熱目的の空隙22を形成する。外部シェル21はスパイラル形状である必要はない。製造上の理由で、円筒状ポットとして設計されると好都合であり、その円錐状フランジ23は中間リング18に向き、クランプリング24によって中間リング18に、適当であれば支持板金リング25(図2)にクランプ止めされる。
【0016】
スクロール形状を有するハウジング11も同様にリング状断面を備えたポットの形状を有し、半径方向外部ハウジング壁は、軸受リング17に面するその自由端に接続部34を有し、その接続部で半径方向外部ハウジング壁が中間リング18(図1)又は軸受リング17(図2)の肩状部33に寄り掛かり、摺動シート32を形成する。摺動シート32は、スクロール形状を有するハウジング11の接続部34での、例えばシーム36の形の、追加シールによって都合よく封止される。他の耐熱シール要素が提供されても良い。
【0017】
摺動シート32は、動作中きわめて高温になる、スクロール形状を有するハウジング11を案内装置13、17又は外部シェル21に熱応力を発生させることなく半径方向及び軸方向の両方に自在に膨張させる。接続部34は渦巻き状のスクロール形状を有するハウジング11の外部輪郭に従うことができ、肩状部33が中間リング18及び/又は軸受リング17の端面の溝によって対応するように部分的に形成されることが可能である。示されるように、肩状部は都合よく円筒の形であるので、遷移部35が、接続部34とスクロール形状を有するハウジング11の渦巻状断面輪郭との間の距離を埋める。
【0018】
スクロール形状を有するハウジング11の半径方向内部渦巻状ハウジング壁は、基板28で終わり、その外部輪郭は、半径方向内部渦巻状ハウジング壁に適合され、例えば溶接によって、都合よく半径方向内部渦巻状ハウジング壁に接続され、その結果、封止もスクロール形状を有するハウジング11と基板28との間で達成される。
【0019】
基板28は、しかしながら、外部領域が円筒状構造のものであることもあるがゆえに、スクロール形状を有するハウジング11の半径方向内部ハウジング壁を受け入れるスパイラル溝31を有する。基板28は、しかしながら、フランジの形式で、スクロール形状を有するハウジング11を備えた単一部品で直接一体的に形成されても良い。基板28のあらゆる種類の実施形態において、基板28は成形ケーシング13に密封接続される。
【0020】
基板28と成形ケーシング13との間の封止は軸方向または半径方向のいずれかであり、基板28が、ばねトング39とツールラグ40とを備えたクランプリング方式のクランプ要素29によって成形ケーシング13に押圧される。示された封止は軸方向の封止を実施している。しかしながら、基板28を包囲するクランプリングが基板28を成形ケーシングに押圧する半径方向の封止も考えられる。封止作用を高めるために、耐熱封止手段が構成要素13、28、11の間に導入されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ロータ無しの排ガスタービンについての半分割縦断面図を示す。
【図2】図1の変形の図を示す。
【図3】外部シェル無しの図1による排ガスタービンの縮小端面図を示す。
【図4】図3の矢印IV方向から見た図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内装置(13、17、18)を包囲し、接線方向に開口する入口筒(41)を有する板金から製造されたスクロール形状を有するハウジング(11)を有するターボチャージャ用の排ガスタービン(10)であって、板金から製造された外部シェル(21)が空隙(22)を持って前記スクロール形状を有するハウジング(11)を包囲する排ガスタービンにおいて、
前記スクロール形状を有するハウジング(11)及び前記外部シェル(21)がポット状構造のものであり、前記案内装置(13、17)に面する端部側が前記案内装置(13、17、18)の部分によって区切られ、前記スクロール形状を有するハウジング(11)が少なくとも1つの軸方向伸縮可能な要素(32)によって前記部分に隣接することを特徴とする排ガスタービン。
【請求項2】
前記伸縮可能な要素が前記スクロール形状を有するハウジング(11)の波形管状部品によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の排ガスタービン。
【請求項3】
前記伸縮可能な要素が前記案内装置(13、17,18)の一部と前記スクロール形状を有するハウジング(11)との間の摺動シート(32)であることを特徴とする請求項1に記載の排ガスタービン。
【請求項4】
前記スクロール形状を有するハウジング(11)が、前記案内装置(13、17、18)に面するその端面に、前記案内装置(13、17、18)の一部の対応して設計された肩状部(33)に当接し、前記摺動シート(32)を形成する好ましくは円筒状接続部(34)を有することを特徴とする請求項3に記載の排ガスタービン。
【請求項5】
シール要素(36)が前記摺動シート(32)に提供されることを特徴とする請求項4に記載の排ガスタービン。
【請求項6】
前記シール要素(36)が、前記接続部(34)に一体的に形成され、前記肩状部(33)に当接するシームであることを特徴とする請求項5に記載の排ガスタービン。
【請求項7】
前記案内装置が、成形ケーシング(13)と、スペーサ(14)によって互いに接続され、前記スクロール形状を有するハウジング(11)によって形成されたスクロールダクト(12)に接続されるフローダクト(30)を形成する調整可能なガイドベーン用の軸受リング(17)とを有し、前記軸受リング(17)が、前記外部シェル(21)のフランジ(23)と共に外向外部フランジ(19)でクランプリング(24)によって前記ターボチャージャの隣接ハウジング部分にクランプ止めされる中間リング(18)に締結されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の排ガスタービン。
【請求項8】
前記中間リング(18)が前記接続部(34)用の前記肩状部(33)を有することを特徴とする請求項7に記載の排ガスタービン。
【請求項9】
前記接続部(34)用の前記肩状部(33)を有し前記摺動シート(32)を形成する前記軸受リング(17)に、前記軸受ハウジング(37)が、支持板金リング(25)を介して接続されることを特徴とする請求項7に記載の排ガスタービン。
【請求項10】
前記スクロール形状を有するハウジング(11)の半径方向内方部分が前記成形ケーシング(13)に基板(28)によって接続されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の排ガスタービン。
【請求項11】
前記基板(28)が前記成形ケーシング(13)に一体的に形成されることを特徴とする請求項10に記載の排ガスタービン。
【請求項12】
前記基板(28)が前記スクロール形状を有するハウジング(11)を前記成形ケーシング(13)から封止するように働くことを特徴とする請求項10あるいは11に記載の排ガスタービン。
【請求項13】
前記基板(28)がクランプ要素(29)によって前記成形ケーシング(13)にクランプ止めされることを特徴とする請求項12に記載の排ガスタービン。
【請求項14】
前記クランプ要素(29)が、前記基板(28)に軸方向に作用し、前記成形ケーシング(13)の溝に嵌るクランプリングであることを特徴とする請求項13に記載の排ガスタービン。
【請求項15】
前記基板(28)が前記成形ケーシング(13)から半径方向に封止され、同心クランプリングが前記基板(28)を前記成形ケーシング(13)に対し半径方向に押圧することを特徴とする請求項13に記載の排ガスタービン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2006−527322(P2006−527322A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508156(P2006−508156)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004452
【国際公開番号】WO2004/109062
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505448822)アイ・エイチ・アイ チャージング システムズ インターナショナル ゲーエムベーハー (7)
【Fターム(参考)】