説明

排ガス処理系配管内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法

【課題】半導体又は液晶パネル製造装置における排ガス処理系配管内における珪フッ化アンモニウムの付着・堆積を抑制して、排気配管または排気設備の清掃周期を短くする珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくともプロセスガスとしてアンモニアガス、クリーニングガスとしてフッ素化合物、及びプロセスガス又はクリーニングガスのいずれかに珪素化合物を含有するガスを使用する薄膜形成装置(A)から、該薄膜形成装置(A)で発生する排ガス(G)を処理する燃焼式排ガス処理装置(B)に該排ガス(G)を移送するための排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法であって、珪フッ化アンモニウムが堆積する可能性のある排ガス処理系配管(C)部を加熱して、該配管内表面温度を120〜160℃に維持することを特徴とする、排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、液晶パネル製造装置、ソーラーパネル製造装置等における、物理蒸着法(PVD法:Physical Vapor Deposition)、化学蒸着法(CVD法:Chemical Vapor Deposition)等を利用する薄膜形成装置と、該薄膜形成装置で発生する排ガスを処理する燃焼式排ガス処理装置とを接続する排ガス処理系配管内における珪フッ化アンモニウム(別名:ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、化学式:(NH(SiF))の堆積抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶パネル等の薄膜形成装置では、物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)等を利用して反応室内で基板等に薄膜を形成するために、SiH、O、TEOS(正珪酸四エチル、化学式:Si(OC)、WF、H、TiCl、NH,NO、NF、F、B等のプロセスガスが使用されるがこれらの添加ガスは反応室内で全て基板等の薄膜形成に有効には使用されず、例えば反応室内壁や電極上に付着する。
従って、上記薄膜形成装置では、通常、半導体や液晶パネルを製造する工程(以下、プロセス工程ということがある)以外に、これら製造装置内に付着するプロセスガスを除去するためにクリーニングを行う工程(以下、クリーニング工程ということがある)が必要となる。
クリーニング工程では、NF、F、又はパーフルオロカーボン(PFCs)等のクリーニングガスを使用して、プロセス工程で製造装置内に付着したプロセスガスが除去される。
【0003】
上記プロセス工程、及びクリーニング工程で前記反応室からそれぞれ排出される排気ガスには、プロセスガス及びクリーニングガスを含み、これらは排ガス処理系で処理される。このようなプロセスガスとクリーニングガスとを排気系の安全性を考慮して、同一でない配管経路を経てそれぞれ別の排ガス処理系により処理することも考えられるが、プロセス工程から排出されるプロセスガスが排ガス処理系配管内において、一般式がSixNyHz(x、y、zはそれぞれ自然数)で示される非常に不安定な可燃性物質が生成、堆積して、メンテナンス等の際に排ガス処理系の真空ポンプ等の機器を開放した際に該可燃性物質が爆発するおそれのあることが知られている。一方、プロセスガスとクリーニングガスとを同一配管経路を経て同一の排ガス処理系で処理することにより、排ガス処理系内でこのような不安定な可燃性物質の生成を回避することができる。
従って、近年では製造装置のチャンバー(炉内)ごとにプロセス/クリーニング排気を同一系統にし排気することが一般的に行われている。
【0004】
プロセス工程からのプロセス排ガスとクリーニング工程からのクリーニング排ガスとを同一配管経路を経て同一の排ガス処理系で処理する場合、プロセスガスとして、例えばアンモニアガス(NH)とシランガス(SiH)、及びクリーニングガスとして、例えばフッ素化合物(SiF等)を含有するガスを使用する場合には、排ガス処理系の配管内等において、プロセス排ガスとクリーニング排ガスとが反応して、安定物質である珪フッ化アンモニウム[(NH(SiF)]が生成する。
半導体製造装置から排出されたプロセス工程からのプロセス排ガスと、クリーニング工程からのクリーニング排ガスは、通常、燃焼式排ガス処理装置で分解または無害化されて、最終的には該排ガス処理装置内の最終スクラバーから大気に排出される。
【0005】
特許文献1には、薄膜形成装置、配管等に付着、堆積した窒化珪素をNF 等でプラズマクリーニングした際、生成する珪フッ化アンモニウムを主成分とする化合物を除去する方法が開示されている。 その実施例においては、プラズマCVD装置にて、SiH とNH を原料ガスとして窒化珪素膜を成膜し、成膜終了後、NF を反応器内部に導入して反応器壁に付着堆積した窒化珪素膜をプラズマクリーニングした後、排気系配管に堆積珪フッ化アンモニウム〔(NH SiF〕〕を主成分とする化合物をClFガス又はFガスとを使用して除去して、配管内を清掃する方法が記載されている。
【0006】
又、特許文献2には、半導体,液晶ディスプレイ製造装置から排出される、珪フッ化アンモニウム(ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム)、微粉末等を含む排気処理装置の微粉末除去部において、製造装置から排出される排気ガスを高温多湿雰囲気下で加湿した後、洗水で微粉末等を含む液滴にし、ドレンとして排水すると共に、微粉末を分離された排気ガスは該処理装置から排出されて燃焼処理する排気ガス処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−80962号公報
【特許文献2】特開平10−165741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示の、クリーニング工程後にClFガス又はFガスを使用して排ガス処理配管内等に残存する珪フッ化アンモニウムを除去する場合、40℃以下の温度では除去に4〜10時間要し、この時間を短縮するためには排ガス処理配管内等の温度を少なくとも80℃に加熱する必要がある。また、ClFガス又はFガスを排ガス処理配管内等の除去に多量使用することは経済上不都合であるばかりでなく、更に排ガス処理の負荷が増大するという問題点がある。
【0009】
又、特許文献2に開示の排気ガス処理装置の微粉末除去部において、製造装置から排出される排気ガスを高温多湿雰囲気下で加湿した後、洗水で微粉末を含む液滴にし、珪フッ化アンモニウムを含むドレンとして排水すると、このドレンは酸性の廃液となり、有害であるために別途適切な廃液処理が必要となる。
実用的には、排ガス処理系配管内堆積した珪フッ化アンモニウムは容易に水へ溶解するため、配管内を大量の水で洗い流して清掃することも可能ではあるが、この酸性の廃液は前述の通り、有害であるためにやはり別途適切な廃液処理が必要となる。
尚、該珪フッ化アンモニウムの性状は白色の粉末で、高温で分解するとSiFやHF、NOx等のガスが発生する。
【0010】
半導体又は液晶パネル製造装置から排ガスを燃焼式排ガス処理装置に移送する排ガス処理系配管において、珪フッ化アンモニウムが生成して、排ガスの移送配管内面に膜状に成長していくと、やがて配管が閉塞する現象に至ることがある。この場合、半導体製造装置を停止せざるをえなく、該装置の稼働率が下げることになる。珪フッ化アンモニウムが排ガスの移送配管内面に堆積して閉塞するまでの時間は、使用するプロセスガスの仕様により様々であるが、製造装置によっては数日経過後に閉塞に至る。
しかしながら、排ガス処理系配管内の珪フッ化アンモニウムの付着・堆積を抑制、防止する実用的な方法は未だ知られていないのが実状である。
本発明は、半導体又は液晶パネル製造装置における排ガス処理系配管内における珪フッ化アンモニウムの付着・堆積を抑制ないし防止して、排ガス配管または排気設備の清掃周期を長くする珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、前記薄膜形成装置から、該薄膜形成装置で発生する排ガスを処理する燃焼式排ガス処理装置へ該排ガスを移送する排ガス処理系配管内の内表面温度を120〜160℃に維持することにより、珪フッ化アンモニウムが排ガス処理配管内等で生成・堆積するのを抑制して、上記課題が実用的な面から解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(4)に記載する発明を要旨とする。
(1)少なくともプロセスガスとしてアンモニアガス、クリーニングガスとしてフッ素化合物、及びプロセスガス又はクリーニングガスのいずれかに珪素化合物を含有するガスを使用する(前記プロセスガス及び/又はクリーニングガスのフッ素化合物がフッ化珪素である場合を含む)薄膜形成装置(A)から、該薄膜形成装置(A)で発生する排ガス(G)を処理する燃焼式排ガス処理装置(B)に該排ガス(G)を移送するための排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法であって、珪フッ化アンモニウムが堆積する可能性のある排ガス処理系配管(C)部を加熱して、該配管内表面温度を120〜160℃に維持することを特徴とする、排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法。
(2)前記プロセスガスにモノシラン(SiH)が含有されているか、又はクリーニングガスに四フッ化珪素(SiF)が含有されていることを特徴とする、前記(1)に記載の排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法。
(3)前記珪フッ化アンモニウムが堆積する可能性のある排ガス処理系配管(C)の前記加熱の手段が、該配管の外表面のジャケットヒータによる加熱、及び/又は少なくとも排ガス処理系配管(C)の一部を二重管構造として、該二重管構造部の内管と外管との間に150〜160℃の加熱窒素ガスを流通させることを特徴とする、前記(1)又は2のいずれかに記載の排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法。
(4)前記燃焼式排ガス処理装置(B)内部にインサートされた排ガス処理系配管(C)の配管部分の外周部が外部から導入される支燃性ガスで冷却されるのを防止するために該配管部分の外周部をラッキングにより保温することを特徴とする、前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法。
【発明の効果】
【0013】
薄膜形成装置(A)から燃焼式排ガス処理装置(B)に排ガス(G)を移送する排ガス処理系配管(C)内において、本発明の珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法を採用することにより、該排ガス処理系配管(C)内において、珪フッ化アンモニウムの生成と、珪フッ化アンモニウムが排ガス処理系配管(C)内に堆積するのを抑制して、薄膜形成装置(A)を連続的に運転できる時間を飛躍的に延ばすことが可能になる。これにより、半導体、液晶パネル製造装置等に使用される薄膜形成装置の安定運転稼働率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、プロセスガス及びクリーニングガスの薄膜形成装置(A)への流れと、薄膜形成装置(A)から燃焼式排ガス処理装置(B)への排ガス(G)の流れを示すフロー図である。
【図2】図2は、本発明の燃焼式排ガス処理装置(B)の一例を示す断面模式図である。
【図3】図3は、本実施例、比較例における排ガス処理系配管(C)の内表面温度と、配管閉塞率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の「排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法」は、
少なくともプロセスガスとしてアンモニアガス、クリーニングガスとしてフッ素化合物、及びプロセスガス又はクリーニングガスのいずれかに珪素化合物を含有するガスを使用する(前記プロセスガス及び/又はクリーニングガスのフッ素化合物がフッ化珪素である場合を含む)薄膜形成装置(A)から、該薄膜形成装置(A)で発生する排ガス(G)を処理する燃焼式排ガス処理装置(B)に該排ガス(G)を移送するための排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法であって、
珪フッ化アンモニウムが堆積する可能性のある排ガス処理系配管(C)部を加熱して、該配管内表面温度を120〜160℃に維持することを特徴とする。
以下、本発明について詳述する。
【0016】
図1は、半導体製造装置、液晶パネル製造装置等の薄膜形成装置(A)で使用されるプロセスガス及びクリーニングガスと、薄膜形成装置(A)から排出されて燃焼式排ガス処理装置(B)に移送される排ガス(G)の流れを示す図であり、薄膜形成装置(A)のプロセス工程で発生するプロセス排ガスとクリーニングプロセスで発生するクリーニング排ガスは排ガス(G)として、薄膜形成装置(A)から排ガス処理系配管(C)を経由して燃焼式排ガス処理装置(B)に移送され、該装置で排ガスは燃焼無害化され、最終的にはスクラバー等で微粉末が除去された排ガスは大気に放出することができる。
以下に本発明について説明する。尚、以下、排ガス処理系配管(C)を排ガス配管(C)ということがある。
【0017】
(1)薄膜形成装置(A)
本発明の薄膜形成装置(A)としては、化学蒸着法(CVD法)、物理蒸着法(PVD法)等を利用して、(イ)電磁気的用途である、半導体工業における集積積回路、液晶ディスプレイ等の表示デバイス、超電導薄膜、磁気記録膜、光ディスク、太陽電池膜、及び(ロ)光学的用途である反射防止膜、フィルタ膜、透明導電膜等の基板等の表面上に薄膜を形成する薄膜形成装置であれば特に制限なく適用可能である。例えば液晶ディスプレイ用の薄膜トランジスタの製造時に、基板は一対の平行平板電極が設置された真空堆積チャンバー内に配置されて下部電極に保持され、他方の上部電極はシャワーヘッドとして機能する。プロセスガスであるモノシランとアンモニアガスは上部電極を通ってチャンバー内に流れ込み、高周波(RF)電圧が電極間に印加されて、反応ガス中にプラズマが形成される。このプラズマは、プロセスガスを分解し、材料の層を基板の表面上に例えば窒化ケイ素(Si)を堆積することができる。
【0018】
半導体、液晶パネル製造装置等における薄膜形成装置(A)では各種のプロセスガスを用いて、CVD法、PVD法等により、基板等の上に種々の金属、金属酸化物等の薄膜が形成される。
窒化酸化シリコン膜を形成する場合には、プロセスガスとして例えばSiH、NH及びNOが用いられ、基板である半導体ウエハタングステン(W)の表面にシリコン窒化膜を形成する場合には、プロセスガスとしてジクロロシラン(SiHCl)とアンモニア(NH)が用いられ、タングステン窒化膜を形成する場合には、プロセスガスとしてWFガスとNHとが用いられる。
前記薄膜形成装置の中で例えば、半導体製造装置で使用するプロセスガス(材料ガス)としては、一般にSiH、O、TEOS、WF、H、TiCl、NH、NO、NF、F、B等が挙げられる。
【0019】
半導体および液晶パネル等の薄膜形成装置においては半導体や液晶パネルを製造するプロセス工程以外に、前述の通り、これら薄膜形成装置内に堆積した生成物をクリーニングガスを用いてクリーニングを行うクリーニング工程が行われる。クリーニング工程では、三フッ化窒素(NF)、フッ素ガス(F)、又はPFCs(Perfluoro Compounds)系に属するガス等を使用して、製造工程で製造装置内に堆積した生成物を除去する。基板をクリーニングする具体的方法としては、例えば、基板の上方から加熱しながら、基板を活性化されたクリーニングガスに曝す方法が挙げられる。
クリーニングガスとして、実用的にはNFガスを使用できるが、高価なクリーニングガスのNF以外にSF、F等を使用することも可能である。
薄膜形成装置においては、一般には、プロセスガスを用いて薄膜を形成するプロセス工程と、薄膜形成装置内に堆積した生成物をクリーニングガスを用いてクリーニングを行うクリーニング工程とが交互に行われる。
【0020】
(2)排ガス処理系配管(C)
薄膜形成装置(A)のプロセス工程で排出されるプロセス排ガス、及びクリーニング工程で排出されるクリーニング排ガスは排ガス(G)として、真空ポンプ等の使用により排ガス配管(C)により燃焼式排ガス処理装置(B)に移送される。
薄膜形成装置(A)から送られてくるプロセス排ガスとクリーニング排ガスは共に同じ排ガス配管(C)内を使用して移送されるが、排ガス(G)は腐食性を有しているので配管材料には耐食性を有する材料、例えばステンレス製配管を使用することが望ましい。排ガス配管(C)は後述するように燃焼式排ガス処理装置(B)内の燃焼部近傍までインサートされる構造とされる。
また、排ガス配管(C)内では、プロセス排ガス成分とクリーニング排ガス成分とのそれぞれの一部が化学反応を起こして、(NH(SiF)等の固形分が堆積する可能性がある。
珪フッ化アンモニウムが排ガス配管(C)内に堆積すると薄膜形成装置の稼働停止を余儀なくされるため、珪フッ化アンモニウムの堆積し易い配管部の前後に、排ガス配管(C)内の圧力を感知できる、少なくとも2つの圧力指示計を設けて、2つの圧力計の圧力損失から、配管内部の閉塞状況をモニタリングすることが可能である。
尚、該圧力指示計の検出部は、珪フッ化アンモニウム等の堆積により閉塞するおそれがあるが、該圧力検出部近傍に150〜160℃程度の加熱窒素ガスを導入することにより、閉塞を回避することが可能である。
図2に本発明の排ガス配管(C)の好ましい態様を示す。図2においては後述する珪フッ化アンモニウムの生成と堆積を抑制する構造が採用されている。
【0021】
(3)焼式排ガス処理装置(B)
本発明において、薄膜形成装置(A)から排出される、NHを含むプロセス排ガス、及びフッ素化合物を含むクリーニング排ガスは、排ガス(G)として同一の排ガス配管(C)を経て燃焼式排ガス処理装置(B)により燃焼無害化された後、スクラバー等から大気に放出される。
燃焼式排ガス処理装置(B)には空気等の支燃性をブロワー等で大気から導入して排ガス(G)の燃焼を支えることができる。また、排ガス(G)の燃焼性が低い(燃焼により発生する熱量が少ない)場合には、低級炭化水素等の可燃性ガスを供給して燃焼を促進することができる。
燃焼式排ガス処理装置(B)において珪フッ化アンモニウム等の排ガスは容易に燃焼されて、最終排ガス(G)中には、SiO、HO、P10、B、HF、CO、CO、NO、NO等が生成される。最終排ガスは例えばスクラバーに送られて、微粉末は洗浄水で捕集され、酸性ガスはアルカリ水による洗浄で捕集されて未捕集ガスは該スクラバーから大気に放出される。
【0022】
(4)排ガス配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積原因
排ガス配管(C)内において珪フッ化アンモニウムが堆積する原因は、例えば、排ガス配管(C)内に、アンモニアガス(NH)、珪素化合物(モノシラン(SiH)、四フッ化珪素(SiF)、ジジラン(Si)等)、フッ素化合物(フッ素ガス(F)、フッ化水素(HF)、三フッ化窒素(NF)、六フッ化イオウ(SF)等)が流入してきて、これらが化学反応により珪フッ化アンモニウムを形成するものと考えられる。
珪フッ化アンモニウムが排ガス配管(C)内等で化学反応により生成、堆積する1つのモデル的なメカニズムは以下の通りに推定される。
〈1〉半導体製造装置からプロセス工程で排出されるNHが排ガス配管(C)内表面に物理的に吸着された状態で配管内に残存する。尚、窒素原子を有する化合物は金属表面に配位結合により吸着し易い性質を有していることは広く知られている。
〈2〉次に、該アンモニアガスと、プロセス排ガスに含有されるモノシラン等の珪素化合物が反応すると、チッ化珪素が生成する。該チッ化珪素は白色無定形物質であり、生成したチッ化珪素は排ガス配管(C)内に堆積すると想定される。
【0023】
〈3〉上記反応で生成したチッ化珪素は、更にフッ素化合物と反応して、フッ化珪素(SiF)が生成する。また、SiFはクリーニング排ガスに含まれることもある。
〈4〉上記反応で生成したフッ化珪素は、更にアンモニアガス、フッ素化合物(HF、NF等)と反応すると、珪フッ化アンモニウムが生成する。
上記〈1〉〜〈4〉の逐次反応はあくまでもモデル的な反応例であり、実際は多数のアンモニアガス、珪素化合物、フッ素化合物等間での競争反応が進行して、結果的に比較的安定な珪フッ化アンモニウムの化合物状態で排ガス配管(C)内に堆積していくものと想定される。
【0024】
(5)本願発明における排ガス配管(C)内表面に珪フッ化アンモニウムが堆積するのを抑制する方法
(イ)基本的考え方
アンモニアガスが排ガス配管(C)内表面を形成する金属面への吸着は通常、発熱反応であることが知られているので、温度が低いほど吸着量は増大する。
従って、アンモニアガスの排ガス配管(C)内表面への吸着性は、温度がより高い方が吸着量は減少することが想定され、又、別の見方をすれば加熱することによりアンモニアの蒸気圧が上昇して他の成分により同伴され易くなることも想定されるので、排ガス配管(C)内表面温度を上昇させることにより、アンモニアガスの吸着量を減少させれば、排ガス配管(C)内での珪フッ化アンモニウムの生成を抑制でき、結果的に排ガス配管(C)内に堆積する珪フッ化アンモニウム量を減少することができると推定される。
【0025】
(ロ)本発明における排ガス配管(C)内表面の珪フッ化アンモニウム堆積抑制方法
上記基本的な考え方を基に、本願発明の「排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法」は、珪フッ化アンモニウムが堆積する可能性のある排ガス処理系配管(C)部を加熱して、該配管内表面温度を120〜160℃、好ましくは150〜160℃の範囲に維持することを特徴とする。
本発明において、排ガス配管(C)内表面温度を120〜160℃以上とすることにより、該配管内表面に蓄積する珪フッ化アンモニウム量を顕著に抑制すること、すなわち、排ガス配管(C)内で生成する珪フッ化アンモニウム量、ひいては排ガス配管(C)に蓄積する珪フッ化アンモニウム量を抑制して、薄膜形成装置(A)の連続運転を飛躍的に延長することが可能になる。尚、排ガス配管(C)内表面温度を90℃程度に加熱しても該配管内表面に蓄積する珪フッ化アンモニウム量をある程度抑制することは可能になるが、その効果は、実用上薄膜形成装置の連続運転可能な日数からみると充分なものとはいえない。
【0026】
一方、排ガス配管(C)は、クリーニング等のメンテナンスの必要性等からある程度の長さの配管をフランジ継手を利用して接続する構造になっている。該フランジ接合面のシール構造は、通常Oリングを嵌め込む溝が形成されていて、該溝にOリングを挿入してシールされている。
例えば、実用性のある高い耐熱性を有するフッ素ゴム(以下、耐熱性フッ素ゴムということがある。このようなフッ素ゴムとして、例えば米国デュポン社製、バイトン(登録商標)等が広く使用されている。)をOリングとして使用した場合、該耐熱性フッ素ゴムの物性上の耐熱温度は190℃程度であるので実用上安全性も考慮すれば該耐熱性フッ素ゴムが使用可能な上限温度は160℃程度である。又、排ガス配管(C)内表面温度を150℃とすると、120℃の場合と対比して更に排ガス配管(C)内に蓄積する珪フッ化アンモニウム量を抑制することが可能になる。
従って、本発明において、排ガス配管(C)内の珪フッ化アンモニウムの生成と堆積を抑制するために、排ガス配管(C)内表面を加熱により、該配管内表面温度を120〜160℃、好ましくは150〜160℃の範囲に維持することを特徴とする。
【0027】
(ハ)以下に、図2を用いて、本発明で該配管内表面温度を120〜160℃、好ましくは150〜160℃の範囲に維持する態様である、(ハ−1)ジャケットヒータによる排ガス配管(C)の加熱、(ハ−2)排ガス配管(C)の一部を二重管構造として、該二重管構造部の内管と外管との間に150〜160℃の加熱窒素ガスを流通させることによる加熱、(ハ−3)燃焼式排ガス処理装置(B)内部にインサートされた排ガス配管(C)の配管部分のラッキングによる保温、について説明する。
【0028】
(ハ−1)ジャケットヒータによる排ガス配管(C)の加熱
図2に示す排ガス(G)は、図1に示す薄膜形成装置(A)から排出される排ガスである。排ガス配管(C)14はその外側がジャケットヒータ11で該配管内表面温度を120〜160℃、好ましくは150〜160℃に維持するように加熱・保温されている。
本発明は、排ガス配管(C)内表面温度を適切な温度に加熱または保温することで配管内に堆積した珪フッ化アンモニウムを昇華させて除去するのではなく、排ガス配管(C)内表面に排ガス(G)中のNHの吸着、残留を抑制することにより、珪フッ化アンモニウムの生成量を減少させて、ひいては排ガス配管(C)内に堆積する珪フッ化アンモニウム量を減少できることに着目したのである。
図2における排ガス配管(C)内表面温度が120℃以上、好ましくは150℃以上になると、アンモニアガスの該配管内表面に吸着(又は残存)する量は極めて少なくなり、配管内に沿って他のガスに同伴されて移送されるために、クリーニングガスが流入してきても珪フッ化アンモニウムの生成が顕著に抑制されると推定される。
【0029】
尚、配管内表面温度の好ましい上限温度は、実用的な点から使用する配管フランジ部のガスケットやOリングの耐熱温度とすることができる。配管のガスケットやOリングには耐熱性フッ素ゴムが用いられており物性上の耐熱温度は190℃程度であるので、長期間の使用や安全性を考慮すると好ましい温度の上限は160℃程度とすることができる。また、ガスケットやOリングは、耐熱、永久歪率が有効かつフッ素系ガスに対する耐腐食性のある材質のものを使用する。
以上の記載から、配管内表面温度の好ましい温度範囲は、配管内表面にNHが残存するのを顕著に抑制できる下限温度の最適化を図ればよいことになる。
尚、配管系統において、ジャケットヒータ加熱により該配管内表面温度を120〜160℃、好ましくは150〜160℃に保つ方法を実施する部分は、薄膜形成装置(A)から、燃焼式排ガス処理装置(B)に至る、配管直線部、エルボ、フランジ、ベローズフレキ等が含まれる。電熱ヒータを利用したジャケットヒータで加熱する場合、配管内表面に熱伝対等を利用した温度センサーにより温度を検出して、該配管内表面温度が前記温度となるように加熱することができる。
【0030】
(ハ−2)排ガス配管(C)の一部を二重管構造として、該二重管構造部の内管と外管との間に加熱窒素ガスを流通させることによる加熱
本発明において、薄膜形成装置(A)から燃焼式排ガス処理装置(B)に至る排ガス配管(C)14をすべて二重管構造として、該二重管構造の内管と外管との間に加熱窒素ガスを流通させて加熱することも可能であるが、実用上、排ガス配管(C)に設けられたフランジ部18、19より下流側には例えばデュアルパイプ15を排ガス配管(C)14内にインサートさせ、かつ加熱窒素ガス配管16から150〜160℃程度に加熱された不活性ガスを排ガス配管(C)14とデュアルパイプ15の間に供給して、デュアルパイプ15の内表面を加熱することにより該二重管構造おける珪フッ化アンモニウムの堆積を抑制することができる。不活性ガスとしては、通常は窒素ガスを使用する。
尚、燃焼式排ガス処理装置(B)近傍と該装置内の配管はヒータ加熱ができない部分である。そこで、この部分に対しては配管を前述の二重管構造として、熱損失を考慮して150〜160℃程度の加熱された窒素ガスを二重管構造が形成する空間に通流させることにより、該内管内表面温度を120℃以上に保つようにしている。加えて、二重管構造を形成して150〜160℃程度の加熱された窒素ガスを通流させることは、二重管構造の下流側先端部近傍の外周部を窒素ガスでシーリングする効果もあると同時に、珪フッ化アンモニウムの堆積を抑制することも可能にもなる。二重管構造部を介して燃焼式排ガス処理装置(B)内に導入された該不活性ガスは該処理装置内で排ガス(G)と混合される。
【0031】
(ハ−3)燃焼式排ガス処理装置(B)内部にインサートされた排ガス配管(C)の配管部分のラッキングによる保温
前記排ガス配管(C)の二重管構造の先端部から更に下流側の燃焼部直前部は、空気等の支燃性ガスにより燃焼部直前部が冷却される結果、珪フッ化アンモニウムが堆積し易い部分である。このような部分は構造上、ヒータ加熱や加熱チッ素ガスの通流による加熱ができない部分であり、このような構造部における珪フッ化アンモニウムの堆積を抑制するために、図2に示すようなラッキングを配設することが好ましい。
このようなラッキングに使用できる断熱材としては、塊状の断熱材が好ましく、例えばグラスウール等が使用できる。
【0032】
(ハ−4)その他
前述した通り、珪フッ化アンモニウムが排ガス配管(C)内に堆積すると薄膜形成装置の稼働停止を余儀なくされるため、珪フッ化アンモニウムの堆積し易い配管部の前後に、排ガス配管(C)内の圧力を感知できる、少なくとも2つの圧力指示計を設けて、2つの圧力計の圧力損失から、配管内部の閉塞状況をモニタリングすることが望ましい。
尚、該圧力指示計の検出部は、珪フッ化アンモニウム等の堆積により閉塞するおそれがあるので、該検出部近傍に150〜160℃程度の加熱窒素ガスを導入することにより、閉塞を回避することが可能である。
【0033】
排ガス配管(C)14として40A(外径48.6mm、肉厚3.5mm)程度のものが使用される場合、排ガス配管(C)の距離にもよるが、経験的に、薄膜形成装置(A)側近傍の排ガス配管(C)内圧力(P1)と、燃焼式排ガス処理装置(B)上流側近傍の排ガス配管(C)内圧力(P2)との差圧(△P)が初期の差圧の16倍に達すると、概略的には配管内の開口径が堆積物により2分の1となり、面積は約4分の1(閉塞面積75%)となる。尚、経験的に配管閉塞率70〜80%が排ガス配管(C)利用の限界であり、配管閉塞率が70〜80%に達したら、配管内を大量の水で洗い流す等のメンテナンス操作により、堆積した珪フッ化アンモニウムを除去する必要がある。
また、薄膜製造装置(A)により製造される薄膜によっては、図2には図示しない真空ポンプを介して、薄膜製造装置(A)から燃焼式排ガス処理装置(B)に排ガスを強制導入する場合もある。この場合、排ガス配管(C)内は負圧に管理される。例えば、−0.5〜−1kPa(ゲージ圧)程度に負圧に管理されていて、該配管内圧力が−0.1kPa(ゲージ圧)程度に達すればメンテナンス操作により、堆積した珪フッ化アンモニウムを除去する。
上記(ハ−1)〜(ハ−3)の加熱手段を採用することにより、排ガス配管(C)から燃焼式排ガス処理装置(B)内の燃焼部に至る装置において優れた珪フッ化アンモニウムの堆積抑制効果が発揮される。
その結果、薄膜形成装置(A)の安定運転稼働率を大幅に向上させることが可能になる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。
本実施例、比較例で使用した薄膜形成装置と燃焼式排ガス処理装置、及び排ガス処理系配管について以下に説明する。
(1)薄膜形成装置と燃焼式排ガス処理装置
長期間ほぼ同じ条件で、それぞれプロセス工程とクリーニング工程を交互に繰り返して連続運転される複数の薄膜形成装置から排出される排ガスが1つの燃焼式排ガス処理装置で処理されている装置を使用して、これらの薄膜形成装置から排出される排ガスを燃焼式排ガス処理装置に移送する排ガス処理系配管において排ガス用配管内を一定温度に加熱することにより、該配管内に珪フッ化アンモニウムが堆積するのを抑制できることを確認するために、以下の実験を行った。
尚、該排ガス中には、プロセス排ガスとしてアンモニアガス(NH)とモノシラン(SiH)、及びクリーニング排ガスとしてフッ素化合物が含有されていて、該薄膜形成装置は複数のそれぞれの装置がプロセス工程とクリーニングを交互に行いながら長期間連続して運転されている装置である。
【0035】
(2)排ガス処理系配管
排ガス処理系配管として、図2に示す構造の配管を使用した。
排ガス配管は、ステンレス製配管で、配管サイズは40A(外径48.6mm、肉厚3.5mm))である。
排ガス配管の外表面は、電熱ヒータで加熱するジャケットヒータを用いて加熱した。尚、排ガス配管の内表面に熱電対を設置して該内表面温度を検出して電熱ヒータにより加熱制御して、排ガス配管の内表面温度を一定の温度に維持した。
また、図2に示すフランジ部から燃焼式排ガス処理装置に至る部分にはデュアルパイプを設けて、図2に示すフランジの下流側のフランジ近傍部における排ガス配管とデュアルパイプとの間に一定温度に加熱された加熱窒素ガスを流入させて、該配管内部の排ガスを加熱可能な構造とした。
【0036】
図2に示すフランジ部のシールには、Oリング(ニチアス(株)製、耐熱性フッ素ゴム(商品名:ブレイザーブラック))を使用した。
排ガス配管の下流側先端部は、図2に示すように燃焼式排ガス処理装置内にインサートされていて、支燃性ガスとして使用した空気により冷却される可能性のある配管部分には、図2に示すようにラッキングとしてグラスウール製断熱材で覆う構造とした。
排ガス配管内において、珪フッ化アンモニウムの堆積により発生する該配管内の圧力損失を測定するために、薄膜形成装置の排ガス配管の最終合流部近傍の排ガス配管内圧力(P1)と、燃焼式排ガス処理装置上流側近傍の排ガス配管内圧力(P2)を検出して、差圧(△P)から該配管内の閉塞状況をモニタリングするためにそれぞれ圧力ゲージを設けた。
尚、該圧力ゲージの圧力検出部に珪フッ化アンモニウムの堆積を抑制するため、該圧力検出部近傍に加熱窒素ガスが流入されていると共に、排ガス配管から圧力を検出する導管の該表面は、ジャケットヒ−タで加熱されている。
【0037】
[実施例1]
実施例1において、排ガス配管の内表面温度を150℃に設定し、二重構造部の内管と外観の間に供給する加熱窒素ガスの温度(Tn)を150℃として、薄膜形成装置側から燃焼式排ガス処理装置側に排ガス配管により排ガスの移送を行った。尚、加熱窒素ガスの供給量は、10L/minとした。上記P1とP2の差圧(圧力損失)(△P)を測定することにより排ガス配管内の珪フッ化アンモニウムの堆積状態をモニタリングした。
排ガス配管内に排ガスを移送開始後、90日後に差圧(△P)は初期の差圧の16倍に達した。
本装置において、差圧が初期の差圧(△P)の16倍に達すると、概略的には配管内の開口径が堆積物により2分の1となり、面積は約4分の1(閉塞面積70〜80%)程度となることはクリーニングの際に確認済である。尚、経験的に配管閉塞率80%が排ガス配管利用の限界であり、配管閉塞率が80%に達したら、配管内を大量の水で洗い流す等のメンテナンス操作により、堆積した珪フッ化アンモニウムを除去する必要がある。
【0038】
[実施例2]
実施例2において、排ガス配管の内表面温度を150℃の代わりに160℃に設定し、加熱窒素ガスの温度(Tn)を150℃の代わりに160℃とした以外は実施例1と同様に、P1とP2の差圧(ΔP)を測定することにより排ガス配管内の珪フッ化アンモニウムの堆積状況をモニタリングした。排ガス配管内に排ガスを移送開始後、90日経過してから、差圧(ΔP)は初期の差圧の16倍に達した。
【0039】
[実施例3]
実施例3において、排ガス配管の内表面温度を150℃の代わりに120℃に設定し、加熱窒素ガスの温度(Tn)を150℃の代わりに120℃とした以外は実施例2と同様に、P1とP2の差圧(△P)を測定することにより排ガス配管内の珪フッ化アンモニウムの堆積状態をモニタリングした。排ガス配管内に排ガスを移送開始後、60日経過してから、差圧(△P)は初期の差圧の16倍に達した。
【0040】
[比較例1]
比較例1において、排ガス配管の加熱、及び加熱窒素ガスの供給を行わなかった以外は実施例1と同様に、P1とP2の差圧(△P)を測定することにより排ガス配管内の珪フッ化アンモニウムの堆積状態をモニタリングした。排ガス配管内に排ガスを移送開始後、差圧(△P)が徐々に増加していき、3日後に差圧(△P)は初期の差圧の16倍に達した。
【0041】
[比較例2]
比較例2において、排ガス配管の内表面温度を150℃の代わりに60℃に設定し、加熱窒素ガスの温度(Tn)を150℃の代わりに60℃とした以外は実施例1と同様に、P1とP2の差圧(△P)を測定することにより排ガス配管内の珪フッ化アンモニウムの堆積状態をモニタリングした。排ガス配管内に排ガスを移送開始後、6日後に差圧は初期の差圧の16倍に達した。
【0042】
[比較例3]
比較例3において、排ガス配管の内表面温度を150℃の代わりに90℃に設定し、加熱窒素ガスの温度(Tn)を150℃の代わりに90℃とした以外は実施例1と同様に、P1とP2の差圧(△P)を測定することにより排ガス配管内の珪フッ化アンモニウムの堆積状態をモニタリングした。排ガス配管内に排ガスを移送開始後、17日後に差圧は初期の差圧の16倍に達した。
【0043】
上記実施例1〜3、及び比較例1〜3で得られた結果を図3にまとめて示す。
図3から、排ガス処理系配管内表面温度を120〜160℃に維持すると該配管内に堆積する珪フッ化アンモニウムの量が顕著に減少して、薄膜形成装置がより長期間安定して運転可能になることが確認される。排ガス処理系配管内表面温度を150〜160℃に維持するとこの効果は一層顕著になる。一方、排ガス処理系配管内表面温度を60〜90℃に加熱しても該配管内に堆積する珪フッ化アンモニウムの減少量が充分ではなかった。
【符号の説明】
【0044】
1 燃焼式排ガス処理装置(B)
11 ジャケットヒータ
13 ラッキング
14 排ガス処理系配管(C)
15 デュアルパイプ
16 加熱窒素ガス用配管
17 Oリング
18 フランジ
19 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともプロセスガスとしてアンモニアガス、クリーニングガスとしてフッ素化合物、及びプロセスガス又はクリーニングガスのいずれかに珪素化合物を含有するガスを使用する(前記プロセスガス及び/又はクリーニングガスのフッ素化合物がフッ化珪素である場合を含む)薄膜形成装置(A)から、該薄膜形成装置(A)で発生する排ガス(G)を処理する燃焼式排ガス処理装置(B)に該排ガス(G)を移送するための排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法であって、
珪フッ化アンモニウムが堆積する可能性のある排ガス処理系配管(C)部を加熱して、該配管内表面温度を120〜160℃に維持することを特徴とする、排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法。
【請求項2】
前記プロセスガスにモノシラン(SiH)が含有されているか、又はクリーニングガスに四フッ化珪素(SiF)が含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法。
【請求項3】
前記珪フッ化アンモニウムが堆積する可能性のある排ガス処理系配管(C)の前記加熱の手段が、該配管の外表面のジャケットヒータによる加熱、及び/又は少なくとも排ガス処理系配管(C)の一部を二重管構造として、該二重管構造部の内管と外管との間に150〜160℃の加熱窒素ガスを流通させることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法。
【請求項4】
前記燃焼式排ガス処理装置(B)内部にインサートされた排ガス処理系配管(C)の配管部分の外周部が外部から導入される支燃性ガスで冷却されるのを防止するために該配管部分の外周部をラッキングにより保温することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の排ガス処理系配管(C)内における珪フッ化アンモニウムの堆積抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−58033(P2011−58033A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206917(P2009−206917)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】