説明

排気ガス浄化装置

【課題】アルコールを含む燃料が使用されるエンジン1の排気ガスを浄化する。
【解決手段】エンジン1の排気ガス通路2に、第1触媒3と第2触媒4とを、後者が前者の排気ガス流れ下流側に位置するように配置し、上流側の第1触媒3は、ハニカム担体のセル壁に、CeMg複合酸化物粒子を含有するPt含有層及びRh含有層がPd含有層の上側になるように設けられ、且つPt含有層はハニカム担体の上流側端面から中間部位に亘る範囲に設けられ、下流側の第2触媒4は、ハニカム担体のセル壁に、Pt担持アルミナとRhドープCeZr系複合酸化物、又はRh担持CeZr系複合酸化物とを含有する触媒層が形成されてなる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温暖化ガス排出の削減を目的として、エタノール、とりわけバイオエタノールをエンジンの燃料として利用することが広く検討されている。すなわち、バイオエタノールの場合、燃料として燃焼させたときにはCOが発生するが、その原料となる穀物の生育時に大気中のCOが取り込まれるから、トータルでみると、COの増加が抑制されると見込まれている。
【0003】
ところで、排気ガス浄化用触媒では、エンジン冷間始動時に、排気ガス中に比較的多く含まれるHC(炭化水素)成分の浄化率が低いことが問題の一つになっている。アルコールの場合は、気化する際に周囲から熱を奪うため、エンジン冷間時には筒内温度がそれほど高くならず、排気ガス中の飽和炭化水素が多くなり、また、排気ガス温度も低くなりがちである。さらに、アルコールが酸化されるときの副生成物であるアルデヒドも排気ガス中に含まれ、その排出も抑制する必要がある。
【0004】
これに対して、アルコールを燃料とするエンジンの排気ガス浄化用触媒に関しては、Pt、Pd及びRhのうちの少なくとも1種とAgとを安定化セリウム酸化物に担持させたものが知られている(特許文献1)。その安定化セリウム酸化物は、Mg、Ca、Sr、Ba及びYのうちの少なくとも1種を含有するものであり、そのことによって耐熱性が高められている。
【0005】
また、自動車一般の排気ガス浄化用触媒として、HC、CO及びNOx(窒素酸化物)を同時に浄化する三元触媒は広く知られている。この三元触媒に関し、特許文献2は、ハニカム担体に三層構造の触媒層を形成し、下層には、アルミナ粒子に担持させたRhを配置し、上層には酸化セリウムに担持させたPdを配置し、中間層にはアルミナ粒子に担持させたPtを配置することを開示する。
【0006】
また、特許文献3は、ストイキからリーン・バーン状態まで効率よく窒素酸化物(NOx)を浄化することができる排気ガス浄化用触媒に関し、ハニカム担体に、PtとPdのうち1種以上を含む活性アルミナを主成分とする無機物から成る第1層と、Rhを含む活性アルミナを主成分とする無機物からなる第2層と、さらに金属酸化物上に担持したPtを主成分とする無機物からなる第3層を備えるものを開示する。
【0007】
また、自動車では、エンジンの排気マニホールドに直結した前置き触媒と、該マニホールド触媒よりも排気ガス流れの下流側に位置する床下触媒とによって排気ガスを浄化する構成が採用される場合が多い。前置き触媒は、主としてエンジン冷間時の排気ガス浄化を担い、床下触媒は、主としてエンジン温間時の排気ガス浄化を担う。
【0008】
例えば特許文献4には、前置き触媒は、ハニカム担体のセル壁に上下二層の触媒層を形成した構成として、下層にPdを設け、上層にRhを設けること、そして、床下触媒は、ハニカム担体のセル壁に触媒層を形成した構成として、その触媒層にRhを表面に担持したRhドープCeZrNd複酸化物粒子と、Ptを表面に担持した活性アルミナ粒子とを混在させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−72950号公報
【特許文献2】特開平5−277370号公報
【特許文献3】特開平6−142512号公報
【特許文献4】特開2008−62156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、アルコールを燃料にするにしても、エンジンの高負荷高回転運転時に排気ガス温度が900℃以上に上昇する。特許文献1の触媒の場合、Agは、融点が低く、Pt、Pd又はRhと合金を形成し易いことから、その早期劣化が懸念される。また、特許文献2〜4には、アルコールを含む燃料によるエンジンの排気ガス浄化に触媒を用いることは記載されていないが、仮にそれら文献に記載された触媒をそのような排気ガス浄化に用いたとしても、アルコールを含む燃料の排気ガスは、ガソリンのみを燃料とする場合の排気ガスとは組成が異なることから、必ずしも効果的な浄化を期待することができない。
【0011】
すなわち、アルコールを含む燃料の排気ガスは、ガソリンのみを燃料とする場合とは違って、安定生成物である飽和炭化水素が多く、また、アルデヒド等の酸素含有炭化水素も多い。飽和炭化水素と酸素含有炭化水素との合計量が排気ガス中の総HC量に占める割合は、ガソリンのみを燃料とする場合は20質量%程度であるが、エタノール85質量%とガソリン15質量%との混合燃料の場合、その割合は50質量%程度になる。従って、アルコールを含む燃料の排気ガスの浄化のためには、生成量が多い飽和炭化水素の酸化浄化、部分酸化状態にあるアルデヒド類の酸化浄化、並びにCO及びNOxの浄化を、効率良く行なうことができる触媒が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、排気ガス通路に、第1触媒と第2触媒とを、後者が前者の排気ガス流れ下流側に位置するように配置し、この両触媒によってアルコールを含む燃料の排気ガスを効率良く浄化できるようにした。
【0013】
すなわち、上記課題を解決する手段は、アルコールを含む燃料が使用されるエンジンの排気ガス通路に、第1触媒と、該第1触媒よりも排気ガス流れの下流側に配置された第2触媒とを備える排気ガス浄化装置において、
上記第1触媒は、ハニカム担体のセル壁に、Ptを必須成分として含有するPt含有層と、Pdを必須成分として含有するPd含有層と、Rhを必須成分として含有するRh含有層とが形成されてなり、
上記Pt含有層及びRh含有層は上記Pd含有層の上側に配置され、且つ上記Pd含有層及びRh含有層は上記ハニカム担体全長に亘って設けられている一方、上記Pt含有層は上記ハニカム担体の排気ガス流れ方向の上流側の端面から中間部位に亘る範囲に設けられ、
上記Pt含有層は、さらにCeとMgとを含むCeMg複合酸化物粒子を含有し、
上記第2触媒は、ハニカム担体のセル壁に、アルミナ粒子にPtが担持されてなるPt担持アルミナと、CeZr系複合酸化物粒子にRhがドープされてなるRhドープCeZr系複合酸化物、又はCeZr系複合酸化物粒子にRhが担持されてなるRh担持CeZr系複合酸化物とを含有する触媒層が形成されてなることを特徴とする。
【0014】
ここに、上記RhドープCeZr系複合酸化物は、Ceイオン、Zrイオン及びRhイオンを含有する複合酸化物であり、Rhイオンは、当該複合酸化物粒子の結晶格子点又は格子点間に存在する。
【0015】
当該解決手段によれば、第1触媒では、Pt含有層、Pd含有層及びRh含有層の3層を組み合わせたことにより、ストイキ付近の空燃比において、排気ガス中のHC、CO及びNOxを効率良く浄化することができる。
【0016】
特に、第1触媒がPtを含有することにより、アルコールを含む燃料の排気ガス中に多い飽和炭化水素のクラッキングが図れ、その酸化浄化に有利になるとともに、アルデヒド類の酸化浄化にも有利になる。
【0017】
さらに、Pt含有層が有するCeMg複合酸化物粒子のMgOは、塩基性酸化物であってMgに還元され易い性質を有する一方、アルコールが部分酸化されてなるアルデヒドは還元性が強い(酸化され易い)という性質を有する。このため、Pt含有層では、アルデヒドとMgOとの反応によるアルデヒドの酸化分解が促進される。しかも、CeMg複合酸化物粒子を含むPt含有層を、ハニカム担体全長に亘って設けるのではなく、その上流側に偏在させる配置としたから、ハニカム担体に対するPt含有層の担持量を多くせずとも、ハニカム担体上流側で集中的に飽和炭化水素のクラッキング、アルデヒドの酸化を図ることができる。そして、ハニカム担体上流側でのPt含有層による反応生成物をハニカム担体下流側においてPd含有層及びRh含有層によってさらに浄化することができ、未浄化排気ガスのスリップ量低減に有利になる。
【0018】
また、第1触媒が、酸化触媒能が高いPdを含有することにより、エンジン冷間始動時など排気ガス温度が低いときのHC及びCOの酸化浄化に有利になる。加えて、上側の層が下層のPdを排気ガス熱や、排気ガス中の硫黄、燐から保護するため、該Pdの熱劣化、硫黄被毒、燐被毒が抑制され、さらに、RhとPdとの合金化も各々が上層と下層に離れていることから防止される。
【0019】
また、第2触媒のPt担持アルミナ触媒成分も、上記飽和炭化水素のクラッキング及び酸化浄化、並びにアルデヒド類の酸化浄化に働き、さらにCO及びNOxの浄化に働く。さらに、この第2触媒は、酸素吸蔵放出能が高いRhドープCeZr系複合酸化物を含有するから、エンジンから排出される排気ガスの空燃比がストイキ付近から外れるように変動することがあっても、この空燃比の変動が上記酸素吸蔵放出能によって吸収される。よって、上記飽和酸化水素、その他のHC、アルデヒド類、CO及びNOxの浄化率が空燃比の変動によって低下することが抑制される。
【0020】
上記解決手段の好ましい態様では、第1触媒のPt含有層は、ハニカム担体の上流側に偏在させるために、ハニカム担体全長の1/5以上1/2以下の範囲に設けられる。
【0021】
上記解決手段の好ましい態様は、第1触媒のPt含有層は、アルミナ粒子にPtが担持されてなるPt担持アルミナを含有していることである。これにより、Pt担持アルミナによる飽和炭化水素、アルデヒド類の捕捉が図れ、飽和炭化水素のクラッキング、アルデヒドの酸化分解の促進に有利になる。
【0022】
好ましいのは、第1触媒のPt含有層が、アルミナ粒子にPtが担持されてなるPt担持アルミナと、上記CeMg複合酸化物粒子とを混合状態で含有していることである。これにより、Pt担持アルミナとCeMg複合酸化物粒子との相互作用による、飽和炭化水素のクラッキング、アルデヒドの酸化分解の促進に有利になる。
【0023】
上記CeMg複合酸化物粒子は、CeOとMgOとの合計量に占めるMgOの割合が5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。これにより、MgOによるアルデヒドの酸化分解の促進に有利になる。
【0024】
上記第2触媒に関する好ましい態様は、その触媒層が、上記セル壁上に積み重なった上下2つの層を有し、その下層が上記Pt担持アルミナを含有し、その上層が上記RhドープCeZr系複合酸化物を含有することである。これにより、RhドープCeZr系複合酸化物による空燃比変動の吸収が効率良く行なわれ、Pt担持アルミナによる排気ガスの浄化に有利になる。
【0025】
上記第1触媒及び第2触媒の配置に関する好ましい態様は、上記第1触媒は、自動車のエンジンの排気マニホールドに直結した触媒容器に収容され、上記第2触媒は、上記自動車の床下に配置された触媒容器に収容されていることである。これにより、エンジン冷間始動時のような排気ガス温度が低いときでも、第1触媒の早期活性化が図れ、また、エンジン温間運転時の温度が高くなった排気ガス浄化を第2触媒に担わせることができ、特に温間時にはエンジンの運転状態が様々に変化し空燃比が変動し易いが、RhドープCeZr系複合酸化物によって空燃比の変動を吸収して排気ガスを効率良く浄化することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上流側の第1触媒は、ハニカム担体のセル壁に、CeMg複合酸化物粒子を含有するPt含有層及びRh含有層がPd含有層の上側になるように設けられ、且つPt含有層はハニカム担体の上流側端面から中間部位に亘る範囲に設けられ、下流側の第2触媒は、ハニカム担体のセル壁に、Pt担持アルミナとRhドープCeZr系複合酸化物、又はRh担持CeZr系複合酸化物とを含有する触媒層が形成されてなるから、飽和炭化水素のクラッキング・酸化浄化、アルデヒド類の酸化浄化、並びにCO及びNOxの浄化が図れ、さらに、排気ガスの空燃比の変動があっても、排気ガス浄化率の低下が抑制され、アルコールを含む燃料の排気ガスの浄化に有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る排気ガス浄化装置の構成図である。
【図2】第1触媒の実施例を示す断面図である。
【図3】第2触媒の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1において、1はアルコールを含む燃料が使用される自動車のエンジン、2はエンジン1の排気ガス通路、3は排気ガス通路2に配置された第1触媒、4は第1触媒3よりも排気ガス流れ下流側の排気ガス通路2に配置された第2触媒である。第1触媒3は、エンジン1の排気マニホールドに直結された触媒容器5に収容され、第2触媒4は自動車の床下に配置された触媒容器6に収容されている。
【0030】
図2には第1触媒3の一例が示されている。その第1触媒3は、ハニカム担体のセル壁7に、Ptを必須成分として含有するPt含有層8と、Pdを必須成分として含有するPd含有層9と、Rhを必須成分として含有するRh含有層10とが形成されてなる。Pd含有層9を下層として、その上にPt含有層8及びRh含有層10が積層されている。また、Pd含有層9及びRh含有層10はハニカム担体全長に亘って設けられている一方、Pt含有層8はハニカム担体の排気ガス流れ方向の上流側の端面から中間部位に亘る範囲に設けられている。
【0031】
図2の例では、Pt含有層8は、ハニカム担体の上流側において、Pd含有層9とRh含有層10との間に中間層として設けられ、ハニカム担体の下流側では、Pd含有層9の上にRh含有層10が積層されている。これとは違って、Rh含有層10をPd含有層9の上にハニカム担体全長に亘って積層し、Pt含有層8をハニカム担体の上流側においてRh含有層10の上に積層してもよい。つまり、ハニカム担体上流側では、Rh含有層10が中間層となり、Pt含有層8が上層となる構成を採用してもよい。
【0032】
Pt含有層8は、その必須成分とするPtを、活性アルミナ粒子に担持させて、Pt/アルミナ(Pt担持アルミナ)として含有し、さらにCeとMgとを含むCeMg複合酸化物粒子を含有する。すなわち、Pt含有層8は、Pt/アルミナとCeMg複合酸化物粒子とを混合して含有する。Pd含有層9は、その必須成分とするPdを、活性アルミナ粒子に担持させて、Pd/アルミナ(Pd担持アルミナ)として含有する。Rh含有層10は、その必須成分とするRhを、OSC(酸素吸蔵放出能;Oxygen Storage Capacity)材に担持させて、Rh/OSC(Rh担持OSC材)として含有する。
【0033】
図3には第2触媒4の一例が示されている。その第2触媒4は、ハニカム担体のセル壁7に、活性アルミナ粒子にPtが担持されてなるPt/アルミナ(Pt担持アルミナ)と、酸素吸蔵放出能を有するCeZr系複合酸化物粒子にRhがドープされてなるRhドープOSC(RhドープCeZr系複合酸化物)とを含有する触媒層11が形成されてなる。RhドープOSCに代えて、或いはRhドープOSCと共に、CeZr系複合酸化物粒子にRhが担持されてなるRh/OSC(Rh担持CeZr系複合酸化物)を触媒層11に設けるようにしてもよい。また、触媒層11を上下二層構造とし、下層がPt/アルミナを含有し、上層がRhドープOSC又はRh/OSCを含有する構成としてもよい。
【0034】
RhドープOSCは、Ce、Zr及びRhの各硝酸溶液を混合し、さらに必要に応じてNdなど他の金属の硝酸溶液を添加混合し、この混合溶液にアンモニア水等の塩基性溶液を添加混合してそれら金属成分を共沈させ、得られた沈殿物を脱水処理して焼成するという、共沈法によって得ることができる。Rh/OSCは、CeZr系複合酸化物の粉末にRhの硝酸溶液を含浸させ、乾燥及び焼成をするという、含浸法によって得ることができる。
【0035】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0036】
−実施例1−
第1触媒については、図2に示す例のように、Pd含有層を下層とし、Pt含有層を中間層とし、Rh含有層を上層とした。Pd含有層は、上記Pd/アルミナの他に、OSC材としての酸化セリウム粒子及びCeZr系複合酸化物粒子を混合して含有する構成とした。
【0037】
Pt含有層のPt/アルミナ及びPd含有層のPd/アルミナ各々を構成する活性アルミナ粒子としては、Laを5質量%含有するAlを採用した。Pd含有層のCeZr系複合酸化物粒子及びRh含有層のRhドープOSCを構成するCeZr系複合酸化物粒子の組成は、CeO:ZrO:Nd=67:23:10(質量比)とした。各層ではバインダとして硝酸ジルコニルを採用した。
【0038】
Pt含有層のハニカム担体上流端から長さは、ハニカム担体全長の20%とした。Pt含有層のCeMg複合酸化物のMgO比(MgO/(MgO+CeO))は5質量%とした。
【0039】
各層の組成(各成分の担体1L当たりの担持量)は表1のとおりである。ハニカム担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数600のコージェライト製(長さ91mm,直径118.4mm,容量1L)を採用した。
【0040】
【表1】

【0041】
第2触媒については、図3に示す例のように、ハニカム担体のセル壁に、Pt/アルミナとRhドープOSCとを混合して含有する触媒層を形成した構成した。Pt/アルミナを構成する活性アルミナ粒子としては、Laを4質量%含有するAlを採用した。RhドープOSCとしては、CeO:ZrO:Nd=22:68:10(質量比)のCeZrNd複合酸化物粒子にRhが0.089質量%ドープされているものを採用した。バインダとして硝酸ジルコニルを採用した。当該触媒層の組成は表2のタイプA欄に示すとおりである。ハニカム担体としては、セル壁厚さ4.5mil(11.43×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数400のコージェライト製(長さ103mm,直径129mm,容量1.35L)を採用した。
【0042】
【表2】

【0043】
−実施例2−
第1触媒のCeMg複合酸化物のMgO比を40質量%とする他は実施例1と同じ構成とした。
【0044】
−実施例3−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の30%とし、CeMg複合酸化物のMgO比を20質量%とする他は実施例1と同じ構成とした。
【0045】
−実施例4−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の40%とし、CeMg複合酸化物のMgO比を30質量%とする他は実施例1と同じ構成とした。
【0046】
−実施例5−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の50%とする他は実施例1と同じ構成とした。
【0047】
−実施例6−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の50%とし、CeMg複合酸化物のMgO比を40質量%とする他は実施例1と同じ構成とした。
【0048】
−実施例7−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の60%とする他は実施例1と同じ構成とした。
【0049】
−実施例8−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の60%とし、CeMg複合酸化物のMgO比を40質量%とする他は実施例1と同じ構成とした。
【0050】
−実施例9−
ハニカム担体上流側において、Rh含有層が中間層となり、Pt含有層が上層となる構成を採用する他は実施例1と同じ構成とした。
【0051】
−実施例10−
ハニカム担体上流側において、Rh含有層が中間層となり、Pt含有層が上層となる構成を採用する他は実施例2と同じ構成とした。
【0052】
−実施例11−
ハニカム担体上流側において、Rh含有層が中間層となり、Pt含有層が上層となる構成を採用する他は実施例3と同じ構成とした。
【0053】
−実施例12−
ハニカム担体上流側において、Rh含有層が中間層となり、Pt含有層が上層となる構成を採用する他は実施例4と同じ構成とした。
【0054】
−実施例13−
ハニカム担体上流側において、Rh含有層が中間層となり、Pt含有層が上層となる構成を採用する他は実施例5と同じ構成とした。
【0055】
−実施例14−
ハニカム担体上流側において、Rh含有層が中間層となり、Pt含有層が上層となる構成を採用する他は実施例6と同じ構成とした。
【0056】
−実施例15−
第2触媒に、実施例1のRhドープOSCに代えてRh/OSCを採用する他は実施例1と同じ構成とした。Rh/OSCは、CeO:ZrO:Nd=22:68:10(質量比)のCeZrNd複合酸化物粒子にRhを含浸法によって0.089質量%担持させたものである。第2触媒の触媒層の組成は表2のタイプB欄に示すとおりである。
【0057】
−実施例16−
第1触媒のCeMg複合酸化物のMgO比を40質量%とする他は実施例15と同じ構成とした。この実施例14は、第2触媒に表2のタイプBを採用した他は実施例2と同じ構成になっている。
【0058】
−実施例17−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の50%とする他は実施例15と同じ構成とした。この実施例17は、第2触媒に表2のタイプBを採用した他は実施例5と同じ構成になっている。
【0059】
−実施例18−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の50%とし、CeMg複合酸化物のMgO比を40質量%とする他は実施例15と同じ構成とした。この実施例18は、第2触媒に表2のタイプBを採用した他は実施例6と同じ構成になっている。
【0060】
−実施例19−
ハニカム担体上流側において、Rh含有層が中間層となり、Pt含有層が上層となる構成を採用する他は実施例15と同じ構成とした。この実施例19は、第2触媒に表2のタイプBを採用した他は実施例9と同じ構成になっている。
【0061】
−実施例20−
ハニカム担体上流側において、Rh含有層が中間層となり、Pt含有層が上層となる構成を採用する他は実施例16と同じ構成とした。この実施例20は、第2触媒に表2のタイプBを採用した他は実施例10と同じ構成になっている。
【0062】
−実施例21−
ハニカム担体上流側において、Rh含有層が中間層となり、Pt含有層が上層となる構成を採用する他は実施例17と同じ構成とした。この実施例21は、第2触媒に表2のタイプBを採用した他は実施例13と同じ構成になっている。
【0063】
−実施例22−
ハニカム担体上流側において、Rh含有層が中間層となり、Pt含有層が上層となる構成を採用する他は実施例18と同じ構成とした。この実施例22は、第2触媒に表2のタイプBを採用した他は実施例14と同じ構成になっている。
【0064】
−実施例23−
第2触媒の触媒層を上層及び下層の二層構造とする他は実施例1と同じ構成とした。第2触媒の上層は、Pt/アルミナとRhドープOSCとを混合して含有し、下層はPt/アルミナを含有する。第2触媒の触媒層の組成は表2のタイプC欄に示すとおりである。
【0065】
−実施例24−
第1触媒のCeMg複合酸化物のMgO比を40質量%とする他は実施例23と同じ構成とした。この実施例24は、第2触媒に表2のタイプCを採用した他は実施例2と同じ構成になっている。
【0066】
−実施例25−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の50%とする他は実施例23と同じ構成とした。この実施例25は、第2触媒に表2のタイプCを採用した他は実施例5と同じ構成になっている。
【0067】
−実施例26−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の50%とし、CeMg複合酸化物のMgO比を40質量%とする他は実施例23と同じ構成とした。この実施例26は、第2触媒に表2のタイプCを採用した他は実施例6と同じ構成になっている。
【0068】
−比較例1−
第1触媒にPt含有層を設けない他は実施例1と同じ構成とした。
【0069】
−比較例2−
第1触媒のPt含有層をPt/アルミナ(15g/L)及びバインダ(2g/L)よりなる構成とし(CeMg複合酸化物なし)、且つPt含有層の長さをハニカム担体全長の100%とする他は実施例1と同じ構成にした。つまり、ハニカム担体全長に亘って、Rh含有層、Pt含有層(CeMg複合酸化物なし)及びPd含有層が、それぞれ上層、中間層及び下層構成する三層構造とした。
【0070】
−比較例3−
第1触媒のPt含有層をPt/アルミナ(15g/L)及びバインダ(2g/L)よりなる構成とし(CeMg複合酸化物なし)、且つPt含有層の長さをハニカム担体全長の100%とする他は実施例9と同じ構成にした。つまり、ハニカム担体全長に亘って、Pt含有層(CeMg複合酸化物なし)、Rh含有層及びPd含有層が、それぞれ上層、中間層及び下層構成する三層構造とした。
【0071】
−比較例4−
第1触媒のCeMg複合酸化物のMgO比を0質量%とする(つまり、Mgイオンを含まないCeOとする)他は実施例7と同じ構成とした。
【0072】
−比較例5−
第1触媒のPt含有層を下層に、Pd含有層を中間層に、Rh含有層を上層にする他は実施例2と同じ構成とした。
【0073】
−比較例6−
第1触媒のPt含有層を下層に、Pd含有層を中間層に、Rh含有層を上層にする他は実施例6と同じ構成とした。
【0074】
−比較例7−
第1触媒のPt含有層の長さをハニカム担体全長の100%とする他は比較例6と同じ構成とした。
【0075】
−比較例8−
第2触媒の触媒層を、CeZr系複合酸化物粒子にPtを担持させてなるPt/OSCと、活性アルミナ粒子にRhを担持させてなるRh/アルミナとを混合して含有する単層構造とする他は実施例2と同じ構成にした。CeZr系複合酸化物粒子の組成は、CeO:ZrO:Nd=22:68:10(質量比)であり、活性アルミナ粒子にはLaを4質量%含有するAlを採用した。第2触媒の触媒層の組成は表2のタイプD欄に示すとおりである。比較例8は、第2触媒に表2のタイプDを採用した他は実施例2と同じ構成になっている。
【0076】
−比較例9−
第2触媒に表2のタイプDを採用する他は実施例3と同じ構成にした。
【0077】
−比較例10−
第2触媒に表2のタイプDを採用する他は実施例10と同じ構成にした。
【0078】
−比較例11−
第2触媒に表2のタイプDを採用する他は実施例11と同じ構成にした。
【0079】
<触媒性能の評価>
実施例1〜26及び比較例1〜11の各排気ガス浄化装置について、EUモード試験にて、エンジン始動後100秒間のHC、CO及びNOxの浄化率を測定した。いずれも、第1触媒は排気マニホールドに直結した触媒容器5に収容し、第2触媒4は自動車の床下に配置した触媒容器6に収容した。エンジンは排気量2Lの直列4気筒であり、燃料はエタノール85質量%とガソリン15質量%との混合燃料とした。また、事前にベンチエージング(触媒入口温度が900℃となる運転を100時間)行なった。結果を表3に示す。表3において、「Pd層」はPd含有層のことを、「Pt層」はPt含有層のことを、「Rh層」はRh含有層のことを、「中層」は中間層のことを、「−」はCeMg複合酸化物を含有しないことを、それぞれ意味する。
【0080】
【表3】

【0081】
実施例1〜26は、HC、CO及びNOxいずれも浄化率も概ね高いという結果になっている。
【0082】
まず、第1触媒の構成の異同に着目して実施例及び比較例の触媒性能の評価結果を検討する。実施例1と比較例1との比較により、Pt含有層の存在が排気ガス浄化率を大きく向上させることがわかる。実施例1〜6と実施例9〜14との比較により、Pt含有層を中間層とすることが排気ガス浄化率の向上に有利であることがわかる。実施例1,5,7相互の比較、並びに実施例2,6,8相互の比較により、Pt含有層のハニカム担体上流端からの長さが50%(ハニカム担体全長の1/2長さ)を越えると、排気ガス浄化率の低下が大きくなること、従って、その長さは1/2以下が好ましいことがわかる。
【0083】
実施例7,8及び比較例4相互の比較により、Pt含有層にCeMg複合酸化物を含ませると、MgO比が5%程度と少ない場合でも、CeOを含ませる場合(比較例4)に比べて、排気ガス浄化率が大きく向上することがわかる。実施例1,2相互の比較、実施例5,6相互の比較、実施例9,10相互の比較等により、MgO比が5%から40%になると、排気ガス浄化率が低下する傾向が見られるが、大きな低下ではない。この結果から、MgO比が5%以上40%以下の範囲であるときは、排気ガス浄化率が向上することを確認することができる。
【0084】
また、CeO及びCeMg複合酸化物のいずれも含まないPt含有層をハニカム担体全長に亘って形成した比較例2,3よりも、CeOを含むPt含有層の長さを60%にした比較例4の方が排気ガス浄化率は悪い。従って、Pt含有層をハニカム担体の上流側に偏在させることによる排気ガス浄化率の向上効果は、Pt含有層にCeMg複合酸化物を含ませるケース(実施例)で得られることがわかる。
【0085】
次に、第2触媒の構成の異同に着目して実施例及び比較例の触媒性能の評価結果を検討する。
【0086】
実施例2と比較例8との比較、並びに実施例10と比較例10との比較により、タイプAのようにRhドープOSCとPt/アルミナとを組み合わせた場合は、タイプDのようにRhをアルミナに担持させ、PtをOSC材に担持させるケースよりも、高い排気ガス浄化率が得られることがわかる。実施例16と比較例8との比較、並びに実施例20と比較例10との比較により、タイプBのようにRh/OSCとPt/アルミナとを組み合わせた場合は、タイプDのケースよりも、高い排気ガス浄化率が得られることがわかる。実施例24と比較例8との比較により、タイプCのように第2触媒を二層構造として、上層をRhドープOSCとPt/アルミナとの組み合わせとし、下層をPt/アルミナとした場合でも、タイプDのケースよりも、高い排気ガス浄化率が得られることがわかる。
【0087】
タイプAの実施例1,2,5,6と、タイプBの実施例15〜18との比較により、第2触媒には、Rh/OSCを採用する場合よりも、RhドープOSCを採用した方が排気ガス浄化率の向上に有利であることがわかる。
【符号の説明】
【0088】
1 エンジン
2 排気ガス通路
3 第1触媒
4 第2触媒
5 触媒容器
6 触媒容器
7 セル壁
8 第1触媒のPt含有層
9 第1触媒のPd含有層
10 第1触媒のRh含有層
11 第2触媒の触媒層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールを含む燃料が使用されるエンジンの排気ガス通路に、第1触媒と、該第1触媒よりも排気ガス流れの下流側に配置された第2触媒とを備える排気ガス浄化装置において、
上記第1触媒は、ハニカム担体のセル壁に、Ptを必須成分として含有するPt含有層と、Pdを必須成分として含有するPd含有層と、Rhを必須成分として含有するRh含有層とが形成されてなり、
上記Pt含有層及びRh含有層は上記Pd含有層の上側に配置され、且つ上記Pd含有層及びRh含有層は上記ハニカム担体全長に亘って設けられている一方、上記Pt含有層は上記ハニカム担体の排気ガス流れ方向の上流側の端面から中間部位に亘る範囲に設けられ、
上記Pt含有層は、さらにCeとMgとを含むCeMg複合酸化物粒子を含有し、
上記第2触媒は、ハニカム担体のセル壁に、アルミナ粒子にPtが担持されてなるPt担持アルミナと、CeZr系複合酸化物粒子にRhがドープされてなるRhドープCeZr系複合酸化物、又はCeZr系複合酸化物粒子にRhが担持されてなるRh担持CeZr系複合酸化物とを含有する触媒層が形成されてなることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記第1触媒の上記Pt含有層は、上記ハニカム担体全長の1/5以上1/2以下の範囲に設けられていることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記第1触媒の上記Pt含有層は、アルミナ粒子にPtが担持されてなるPt担持アルミナを含有していることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記第1触媒の上記Pt含有層は、アルミナ粒子にPtが担持されてなるPt担持アルミナと、上記CeMg複合酸化物粒子とを混合状態で含有していることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記CeMg複合酸化物粒子は、CeOとMgOとの合計量に占めるMgOの割合が5質量%以上40質量%以下であることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
上記第1触媒は、自動車のエンジンの排気マニホールドに直結した触媒容器に収容され、上記第2触媒は、上記自動車の床下に配置された触媒容器に収容されていることを特徴とする排気ガス浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−264371(P2010−264371A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117180(P2009−117180)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】