説明

排気浄化方法及び装置

【課題】排気温度の低い運転条件下でも性能低下を招くことなく高いNOx低減率を維持し得る排気浄化方法及び装置を提供する。
【解決手段】排気空燃比がリーンの時に排気管4途中のNOx吸蔵還元触媒5により排気ガス3中のNOxを硝酸塩の状態で一時的に吸蔵し、前記NOx吸蔵還元触媒5の入側に燃料8を添加することで排気空燃比をリッチとしてNOxを分解放出せしめ且つその放出NOxを添加燃料から生じた還元成分により還元浄化して前記NOx吸蔵還元触媒5の再生を図るに際し、前記NOx吸蔵還元触媒5の入側で添加した燃料8に点火して排気空燃比がリッチの状態で燃焼を行い、その燃焼位置における雰囲気温度を燃料改質温度以上に上げてH2とCOを生成し、これらH2とCOを還元剤として用いてNOx吸蔵還元触媒5を再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルエンジンにおいては、排気空燃比がリーンの時に排気ガス中のNOxを酸化して硝酸塩の状態で一時的に吸蔵し且つ排気ガス中のO2濃度が低下した時に未燃HCやCO等の介在によりNOxを分解放出して還元浄化する性質を備えたNOx吸蔵還元触媒を排気管の途中に装備し、このNOx吸蔵還元触媒によりNOxの排出濃度を低減することが行われている。
【0003】
ただし、NOx吸蔵還元触媒においては、NOxの吸蔵量が増大して飽和量に達してしまうと、それ以上のNOxを吸蔵できなくなるため、NOxの吸蔵量が飽和量に達する前にNOx吸蔵還元触媒に流入する排気ガスのO2濃度をHC等の還元剤により低下させてNOxを分解放出させる必要がある。
【0004】
例えば、ガソリンエンジンに使用した場合であれば、機関の運転空燃比を低下(機関をリッチ空燃比で運転)することにより、排気ガス中のO2濃度を低下し且つ排気ガス中の未燃HCやCO等の還元成分を増加してNOxの分解放出を促すことができるが、NOx吸蔵還元触媒をディーゼルエンジンの排気浄化装置として使用した場合には機関をリッチ空燃比で運転することが困難である。
【0005】
このため、NOx吸蔵還元触媒をディーゼルエンジンの排気浄化装置として使用する場合には、NOx吸蔵還元触媒の上流側で排気ガス中に燃料を添加することにより、この添加燃料から生じたHCを還元剤としてNOx吸蔵還元触媒上でO2と反応させて排気ガス中のO2濃度を低下させる必要がある。
【0006】
尚、この種の排気浄化装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−9718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の如くNOx吸蔵還元触媒の上流側で燃料添加を行う方式では、その添加燃料から生じたHCの一部がNOx吸蔵還元触媒の表面上で排気ガス中のO2と反応(燃焼)し、NOx吸蔵還元触媒の周囲の雰囲気中におけるO2濃度がほぼ零となってからNOxの分解放出が開始されることになるため、排気温度の低い運転条件下(例えば、渋滞の多い都市内での徐行運転等)では、NOx吸蔵還元触媒の触媒活性が低いためにNOx吸蔵還元触媒からNOxを効率良く分解放出させることができず、NOx吸蔵還元触媒の再生が効率良く進まないことで触媒の容積中に占めるNOx吸蔵サイトの回復割合が小さくなって吸蔵能力が落ちるという問題があった。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、排気温度の低い運転条件下でも性能低下を招くことなく高いNOx低減率を維持し得る排気浄化方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、排気空燃比がリーンの時に排気管途中のNOx吸蔵還元触媒により排気ガス中のNOxを硝酸塩の状態で一時的に吸蔵し、前記NOx吸蔵還元触媒の入側に燃料を添加することで排気空燃比をリッチとしてNOxを分解放出せしめ且つその放出NOxを添加燃料から生じた還元成分により還元浄化して前記NOx吸蔵還元触媒の再生を図る排気浄化方法であって、前記NOx吸蔵還元触媒の入側で添加燃料に点火して排気空燃比がリッチの状態で燃焼を行い、その燃焼位置における雰囲気温度を燃料改質温度以上に上げてH2とCOを生成し、これらH2とCOを還元剤として用いてNOx吸蔵還元触媒を再生することを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにNOx吸蔵還元触媒の入側で添加燃料に点火して排気空燃比をリッチの状態として燃焼を行うと、その燃焼位置における雰囲気温度が燃料改質温度(約1000℃程度)以上となった時に、雰囲気中に残存する未燃の燃料が分解してH2とCOが生成され、これらH2とCOが還元剤としてNOx吸蔵還元触媒に供給されることになる。
【0012】
この際、燃焼により消費される燃料分は、排気ガス中のO2を消費してO2濃度を下げることに寄与しているため、H2とCOが還元剤としてNOx吸蔵還元触媒に供給された直後から雰囲気中のO2濃度が零となってNOxの分解放出が直ちに開始され、そのままNOx吸蔵還元触媒の表面上で反応性の高いH2及びCOにより、HCを還元剤とした場合よりも低い温度からNOxが効率良くN2に還元処理されることになる。
【0013】
また、本発明は、排気管の途中にNOx吸蔵還元触媒を装備すると共に、該NOx吸蔵還元触媒を再生させるための還元剤として前記NOx吸蔵還元触媒の入側に燃料を添加する燃料添加装置を配設した排気浄化装置であって、前記燃料添加装置からの添加燃料に点火する点火装置と、該点火装置により点火した燃料の燃焼位置における雰囲気温度を計測する温度センサと、該温度センサからの検出信号を入力して燃料改質温度以上の温度域で排気空燃比がリッチの状態となるように前記燃料添加装置の燃料添加量を制御し且つ燃料改質温度未満の温度域では前記燃料添加装置の燃料添加量を相対的に抑制するように制御する制御装置とを備えたことを特徴とするものでもある。
【0014】
このようにすれば、温度センサにより計測される雰囲気温度が燃料改質温度以上の場合に、制御装置により排気空燃比がリッチの状態となるように燃料添加装置の燃料添加量が制御されるので、確実に燃料改質温度以上の条件下で排気空燃比をリッチ状態とした燃焼が行われてH2及びCOが効率良く生成されることになる。
【0015】
一方、温度センサにより計測される雰囲気温度が燃料改質温度未満の場合には、制御装置により前記燃料添加装置の燃料添加量が相対的に抑制されるので、H2及びCOの生成に寄与しない無駄な燃料添加が削減されると共に、少ない燃料添加量で効率良く雰囲気温度を燃料改質温度まで上げることが可能となり、燃料添加の開始段階から一律に多く燃料添加量を添加して燃焼を行う場合よりもH2及びCOの生成量を増やすことが可能となる。
【0016】
即ち、燃料添加の開始段階から一律に多く燃料添加量を添加してしまうと、その燃焼の初期段階で燃料が過剰となり、その蒸発潜熱による温度低下が影響して雰囲気温度が効率良く燃料改質温度まで上がり難くなってしまうが、燃料改質温度に到達するまで燃料添加量を抑制して過不足のない燃料添加を行えば、少ない燃料添加量でも効率良く雰囲気温度を燃料改質温度まで上げることが可能となり、より早く雰囲気温度を燃料改質温度まで上げられることで燃料改質反応が早期に起こる結果、H2及びCOの生成量が増えることになる。
【0017】
また、本発明においては、燃料添加装置とNOx吸蔵還元触媒との間にパティキュレートフィルタを介装しても良く、このようにすれば、燃料の燃焼で発生する熱をパティキュレートフィルタで吸収してNOx吸蔵還元触媒における触媒床温度の上昇を抑制することが可能となり、NOx吸蔵還元触媒の触媒床温度の上昇により吸蔵NOxの放出が促されてNOx低減率が低下してしまうことが防止される。
【0018】
即ち、NOx吸蔵還元触媒の飽和吸蔵量は、所定のピーク温度に到達するまで触媒床温度の上昇に応じて増加するものの、ピーク温度を超えて更に触媒床温度が上昇すると逆に低下してしまう性質となっており、NOx吸蔵還元触媒の触媒床温度がピーク温度を超えて高まり過ぎてしまうと、NOxの放出量が増えてNOx低減率が低下してしまう虞れがあるため、NOx吸蔵還元触媒の触媒床温度が燃料の燃焼で発生する熱により高まり過ぎないよう考慮することが重要である。
【0019】
また、このように燃料添加装置の直後にパティキュレートフィルタが配置されていれば、燃料添加装置からの燃料に添加して燃焼を行うことで前記パティキュレートフィルタの再生を図ることも可能であり、しかも、その再生にあたっての温度上昇も速やかに行うことが可能である。
【0020】
更に、パティキュレートフィルタとNOx吸蔵還元触媒との間に通気構造の蓄熱材を介装するようにしても良く、このようにすれば、前記蓄熱材で更なる熱の吸収を行わせることでNOx吸蔵還元触媒における触媒床温度の上昇をより一層抑制することが可能となる。
【0021】
また、本発明においては、NOx吸蔵還元触媒の後段に酸素共存下でも選択的にNOxをNH3と反応させ得る選択還元型触媒を備えることが好ましく、このようにすれば、NOx吸蔵還元触媒にてH2とNOxとが反応してNH3が生成されたとしても、このNH3を更なる還元剤として後段の選択還元型触媒でNOxを還元浄化することが可能となる。
【0022】
即ち、H2を還元剤として用いた場合、排気空燃比が深いリッチの状態にある条件下では、NOx吸蔵還元触媒におけるH2とNOxとの反応で一部がNH3を生成してしまうが、このNH3を還元剤として後段の選択還元型触媒で用いれば、更なるNOxの低減化を図ることが可能となると共に、リークアンモニア対策にもなる。
【発明の効果】
【0023】
上記した本発明の排気浄化方法及び装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0024】
(I)本発明の請求項1、2に記載の発明によれば、NOx吸蔵還元触媒の入側で添加燃料に点火して排気空燃比がリッチの状態で燃焼を行い、その燃焼位置における雰囲気温度を燃料改質温度以上に上げてH2とCOを生成し、これらH2とCOを還元剤としてNOx吸蔵還元触媒に導くことで、HCを還元剤とした場合よりも低い温度からNOxを効率良くN2に還元処理することができるので、排気温度の低い運転条件下でも性能低下を招くことなく高いNOx低減率を維持することができる。
【0025】
(II)本発明の請求項3に記載の発明によれば、燃料の燃焼で発生する熱をパティキュレートフィルタで吸収してNOx吸蔵還元触媒における触媒床温度の上昇を抑制することができるので、NOx吸蔵還元触媒の触媒床温度の上昇により吸蔵NOxが放出されてNOx低減率が低下してしまう事態を防止することができ、しかも、燃料の燃焼で発生する熱でパティキュレートフィルタの再生を図ることもでき、その再生にあたっての温度上昇も速やかに行うことができる。
【0026】
(III)本発明の請求項4に記載の発明によれば、蓄熱材で更なる熱の吸収を行わせることでNOx吸蔵還元触媒における触媒床温度の上昇をより一層抑制することができるので、NOx吸蔵還元触媒の触媒床温度の上昇によるNOx低減率の低下を更に確実に防止することができる。
【0027】
(IV)本発明の請求項5に記載の発明によれば、NOx吸蔵還元触媒にてH2とNOxとが反応してNH3が生成されたとしても、このNH3を更なる還元剤として後段の選択還元型触媒でNOxを還元浄化することができるので、NOxの更なる低減化を図ることができると共に、NH3を還元剤として消費することでNH3の車外への排出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【図2】従来の燃料添加パターンを示すグラフである。
【図3】センサ温度の変化を示すグラフである。
【図4】本形態例の燃料添加パターンを示すグラフである。
【図5】H2濃度の変化を示すグラフである。
【図6】本発明の別の形態例を示す概略図である。
【図7】本発明の更に別の形態例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例においては、ディーゼルエンジン1から排気マニホールド2を介して排出される排気ガス3が流通する排気管4の途中に、排気空燃比がリーンの時に排気ガス3中のNOxを酸化して硝酸塩の状態で一時的に吸蔵し且つ排気ガス3中のO2濃度が低下した時に還元剤の介在によりNOxを分解放出して還元浄化するNOx吸蔵還元触媒5が触媒ケース6に抱持されて装備されている。
【0031】
また、前記触媒ケース6の入口部分には、軽油タンク7内の燃料8(軽油)を軽油ポンプ9を介し導いて噴射する燃料添加ノズル10が設けられており、これら軽油タンク7、軽油ポンプ9、燃料添加ノズル10により燃料添加装置11が構成されるようになっている。
【0032】
更に、前記燃料添加装置11の燃料添加ノズル10による燃料8の噴射位置近傍には、該燃料8に点火するイグナイタ12(点火装置)と、該イグナイタ12により点火した燃料8の燃焼位置における雰囲気温度を計測する温度センサ13とが装備されており、該温度センサ13からの検出信号13aが制御装置14に入力されるようになっている。
【0033】
そして、この制御装置14においては、前記温度センサ13からの検出信号13aに基づき燃料8からH2及びCOへの燃料改質の反応が起こり得る燃料改質温度(約1000℃程度)以上の温度域で排気空燃比がリッチの状態となるように前記燃料添加装置11の燃料添加量を制御信号11aにより制御し且つ燃料改質温度未満の温度域では前記燃料添加装置11の燃料添加量を相対的に抑制するように制御信号11aにより制御するようになっている。
【0034】
また、図1に示している例においては、燃料添加装置11とNOx吸蔵還元触媒5との間に、酸化触媒を担持して成る触媒担持型のパティキュレートフィルタ15を介装した場合を例示しており、このパティキュレートフィルタ15は、排気ガス3中のパティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集し得るようコージェライト等のセラミックから成る多孔質のハニカム構造としてある。
【0035】
而して、このようにした場合、排気空燃比がリーンの時にNOx吸蔵還元触媒5により排気ガス3中のNOxが硝酸塩の状態で一時的に吸蔵されるので、前記NOx吸蔵還元触媒5の入側に燃料8を添加することで排気空燃比をリッチとしてNOxを分解放出せしめ且つその放出NOxを前記燃料8から生じた還元成分により還元浄化して前記NOx吸蔵還元触媒5の再生を図る必要があるが、この際に、前記NOx吸蔵還元触媒5の入側でイグナイタ12により前記燃料8に点火して排気空燃比をリッチの状態として燃焼を行うと、その燃焼位置における雰囲気温度が燃料改質温度(約1000℃程度)以上となった時に、雰囲気中に残存する未燃の燃料8が分解してH2とCOが生成され、これらH2とCOが還元剤としてNOx吸蔵還元触媒5に供給されることになる。
【0036】
この際、燃焼により消費される燃料分は、排気ガス3中のO2を消費してO2濃度を下げることに寄与しているため、H2とCOが還元剤としてNOx吸蔵還元触媒5に供給された直後から雰囲気中のO2濃度が零となってNOxの分解放出が直ちに開始され、そのままNOx吸蔵還元触媒5の表面上で反応性の高いH2及びCOにより、HCを還元剤とした場合よりも低い温度からNOxが効率良くN2に還元処理されることになる。
【0037】
尚、図1に示している例では、燃料添加装置11とNOx吸蔵還元触媒5との間に、酸化触媒を担持したパティキュレートフィルタ15が介装されているが、H2及びCOが生成される段階では、排気ガス3中のO2が消費されて酸欠状態となっているため、H2及びCOは、パティキュレートフィルタ15で酸化処理されることなくNOx吸蔵還元触媒5まで到達することになる。
【0038】
また、特に本形態例の排気浄化装置では、温度センサ13により計測される雰囲気温度が燃料改質温度以上の場合に、制御装置14により排気空燃比がリッチの状態となるように燃料添加装置11の燃料添加量が制御されるので、確実に燃料改質温度以上の条件下で排気空燃比をリッチ状態とした燃焼が行われてH2及びCOが効率良く生成されることになる。
【0039】
一方、温度センサ13により計測される雰囲気温度が燃料改質温度未満の場合には、制御装置14により前記燃料添加装置11の燃料添加量が相対的に抑制されるので、H2及びCOの生成に寄与しない無駄な燃料8の添加が削減されると共に、少ない燃料添加量で効率良く雰囲気温度を燃料改質温度まで上げることが可能となり、燃料8の添加の開始段階から一律に多く燃料添加量を添加して燃焼を行う場合よりもH2及びCOの生成量を増やすことが可能となる。
【0040】
即ち、図2に示す如く、燃料添加の開始段階から一律に多く燃料添加量を添加してしまうと、その燃焼の初期段階で燃料8が過剰となり、図3のグラフ中に鎖線で示すように、その蒸発潜熱による温度低下が影響して雰囲気温度が効率良く燃料改質温度まで上がり難くなってしまうが、図4に示す如く、燃料改質温度に到達するまで燃料添加量を抑制して過不足のない燃料添加を行えば、少ない燃料添加量でも効率良く雰囲気温度を燃料改質温度まで上げることが可能となり、先の図3のグラフ中に実線で示すように、より早く雰囲気温度を燃料改質温度まで上げることが可能となる。
【0041】
この結果、図2の如き燃料添加の開始段階から一律に多く燃料添加を実施する燃料添加パターンよりも、図4の如き制御を加えて燃料添加を実施する燃料添加パターンとした方が、より早く雰囲気温度が燃料改質温度まで上がって燃料改質反応が早期に起こるので、H2及びCOの生成量が増えることになり、特にH2濃度に着目すれば、図5にグラフで示す如く、図2の燃料添加で鎖線のようなH2濃度であったものが、図4の燃料添加で実線のようなH2濃度まで上げられることが確認されている。
【0042】
従って、上記形態例によれば、NOx吸蔵還元触媒5の入側で添加した燃料8に点火して排気空燃比がリッチの状態で燃焼を行い、その燃焼位置における雰囲気温度を燃料改質温度以上に上げてH2とCOを生成し、これらH2とCOを還元剤としてNOx吸蔵還元触媒5に導くことで、HCを還元剤とした場合よりも低い温度からNOxを効率良くN2に還元処理することができるので、排気温度の低い運転条件下でも性能低下を招くことなく高いNOx低減率を維持することができる。
【0043】
事実、本発明者による検証実験によれば、燃料8への点火を行わずにHCを還元剤として用いた場合に50%程度のNOx低減率であったものが、同じ運転モードで燃料8に点火して排気空燃比がリッチの状態で燃焼を行った場合に65%程度までNOx低減率を向上することができた。
【0044】
また、本形態例においては、燃料添加装置11とNOx吸蔵還元触媒5との間にパティキュレートフィルタ15を介装しているので、燃料8の燃焼で発生する熱をパティキュレートフィルタ15で吸収してNOx吸蔵還元触媒5における触媒床温度の上昇を抑制することができ、NOx吸蔵還元触媒5の触媒床温度の上昇により吸蔵NOxの放出が促されてNOx低減率が低下してしまう事態を防止することができる。
【0045】
即ち、NOx吸蔵還元触媒5の飽和吸蔵量は、所定のピーク温度に到達するまで触媒床温度の上昇に応じて増加するものの、ピーク温度を超えて更に触媒床温度が上昇すると逆に低下してしまう性質となっており、NOx吸蔵還元触媒5の触媒床温度がピーク温度を超えて高まり過ぎてしまうと、NOxの放出量が増えてNOx低減率が低下してしまう虞れがあるため、NOx吸蔵還元触媒5の触媒床温度が燃料8の燃焼で発生する熱により高まり過ぎないよう考慮することが重要である。
【0046】
また、このように燃料添加装置11の直後にパティキュレートフィルタ15が配置されていれば、燃料添加装置11からの燃料8に添加して燃焼を行うことで前記パティキュレートフィルタ15の再生を図ることもでき、しかも、その再生にあたっての温度上昇も速やかに行うことができる。
【0047】
図6は本発明の別の形態例を示すもので、パティキュレートフィルタ15とNOx吸蔵還元触媒5との間に通気構造の蓄熱材16を更に介装した構成となっている。このようにすれば、前記蓄熱材16で更なる熱の吸収を行わせることでNOx吸蔵還元触媒5における触媒床温度の上昇をより一層抑制することができるので、NOx吸蔵還元触媒5の触媒床温度の上昇によるNOx低減率の低下を更に確実に防止することができる。
【0048】
図7は本発明の更に別の形態例を示すもので、NOx吸蔵還元触媒5の後段に酸素共存下でも選択的にNOxをNH3と反応させ得る選択還元型触媒17を備えた構成となっている。
【0049】
このようにすれば、NOx吸蔵還元触媒5にてH2とNOxとが反応してNH3が生成されたとしても、このNH3を更なる還元剤として後段の選択還元型触媒17でNOxを還元浄化することができるので、NOxの更なる低減化を図ることができると共に、NH3を還元剤として消費することでNH3の車外への排出を防止することができる。
【0050】
即ち、H2を還元剤として用いた場合、排気空燃比が深いリッチの状態にある条件下では、NOx吸蔵還元触媒5におけるH2とNOxとの反応で一部がNH3を生成してしまうが、このNH3を還元剤として後段の選択還元型触媒17で用いれば、更なるNOxの低減化を図ることが可能となると共に、リークアンモニア対策にもなるのである。
【0051】
尚、本発明の排気浄化方法及び装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
3 排気ガス
4 排気管
5 NOx吸蔵還元触媒
8 燃料
11 燃料添加装置
11a 制御信号
12 イグナイタ(点火装置)
13 温度センサ
13a 検出信号
14 制御装置
15 パティキュレートフィルタ
16 蓄熱材
17 選択還元型触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気空燃比がリーンの時に排気管途中のNOx吸蔵還元触媒により排気ガス中のNOxを硝酸塩の状態で一時的に吸蔵し、前記NOx吸蔵還元触媒の入側に燃料を添加することで排気空燃比をリッチとしてNOxを分解放出せしめ且つその放出NOxを添加燃料から生じた還元成分により還元浄化して前記NOx吸蔵還元触媒の再生を図る排気浄化方法であって、前記NOx吸蔵還元触媒の入側で添加燃料に点火して排気空燃比がリッチの状態で燃焼を行い、その燃焼位置における雰囲気温度を燃料改質温度以上に上げてH2とCOを生成し、これらH2とCOを還元剤として用いてNOx吸蔵還元触媒を再生することを特徴とする排気浄化方法。
【請求項2】
排気管の途中にNOx吸蔵還元触媒を装備すると共に、該NOx吸蔵還元触媒を再生させるための還元剤として前記NOx吸蔵還元触媒の入側に燃料を添加する燃料添加装置を配設した排気浄化装置であって、前記燃料添加装置からの添加燃料に点火する点火装置と、該点火装置により点火した燃料の燃焼位置における雰囲気温度を計測する温度センサと、該温度センサからの検出信号を入力して燃料改質温度以上の温度域で排気空燃比がリッチの状態となるように前記燃料添加装置の燃料添加量を制御し且つ燃料改質温度未満の温度域では前記燃料添加装置の燃料添加量を相対的に抑制するように制御する制御装置とを備えたことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項3】
燃料添加装置とNOx吸蔵還元触媒との間にパティキュレートフィルタを介装したことを特徴とする請求項2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
パティキュレートフィルタとNOx吸蔵還元触媒との間に通気構造の蓄熱材を介装したことを特徴とする請求項3に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
NOx吸蔵還元触媒の後段に酸素共存下でも選択的にNOxをNH3と反応させ得る選択還元型触媒を備えたことを特徴とする請求項2、3又は4に記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−87662(P2012−87662A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234211(P2010−234211)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】