説明

排気浄化触媒のSOx被毒再生方法

【課題】 SOx被毒再生における吸蔵還元型NOx触媒の温度の変動を抑制してSOx被毒再生効率の悪化を抑制するとともに、SOx被毒再生における燃費の悪化を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】 SOx被毒再生を行う際に、吸蔵還元型NOx触媒10において、SOx被毒再生場所を決定し(S102)、決定されたSOx被毒再生場所の位置に応じて(S104)、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量を設定する(S105、S106)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気浄化触媒のSOx被毒再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガス中には、通常有害なNOxなどが含まれている。このため、排気中のNOxを浄化するために、内燃機関の排気系にNOx触媒を設けることが行われている。しかし、例えば吸蔵還元型NOx触媒の場合には、吸蔵還元型NOx触媒に排気中のSOxが吸蔵されることにより、浄化性能が劣化するいわゆるSOx被毒が発生することが知られている。このSOx被毒を解消するために、吸蔵還元型NOx触媒の温度を硫黄分離脱温度以上に上昇させるとともに、還元剤を供給することによって、吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵されたSOxを還元放出する処理が行われている(以下、この処理を「SOx被毒再生」という。)。
【0003】
ここで、上記のSOx被毒再生としては、吸蔵還元型NOx触媒の温度を硫黄分離脱温度以上の予め定めた温度範囲内の温度に調整する温度調整工程と、排気ガスの空燃比をリッチに制御して吸蔵還元型NOx触媒から硫黄分を離脱させる硫黄分離脱工程とを繰り返すことにより、より幅広い機関運転状態において過昇温することなく、SOx被毒再生を行う方法などが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上記のような従来のSOx被毒再生方法においては、内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比がリーンの状態で硫黄分離脱工程を実施し、排気の空燃比をリッチに制御した場合、特に比較的多量の還元剤を間欠的に排気に供給することによって排気の空燃比をリッチに制御した場合には、吸蔵還元型NOx触媒における上流側の部分などにおいて温度の変動が大きくなり、一部の期間において吸蔵還元型NOx触媒の温度が硫黄分離脱温度を下回ることが考えられた。その結果、吸蔵還元型NOx触媒におけるSOxの還元効率が低下することが考えられた。
【0005】
一方、上述した吸蔵還元型NOx触媒における温度の変動を抑えるために、内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比がリッチの状態で硫黄分離脱工程を実施し、比較的少量の還元剤を間欠的に排気に供給することによって排気の空燃比をリッチに制御した場合には、SOx被毒再生における燃費が悪化することが考えられ、また、スモークの発生などによりエミッションが悪化することが考えられた。
【特許文献1】特開2004−068700号公報
【特許文献2】特開2002−303176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、SOx被毒再生における吸蔵還元型NOx触媒の温度の変動を抑制してSOx被毒再生効率の悪化を抑制するとともに、SOx被毒再生における燃費の悪化を抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、SOx被毒再生を行う際に、前記吸蔵還元型NOx触媒において、SOx被毒再生すべき部分を決定し、決定されたSOx被毒再生すべき部分の位置に応じて、前記内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比及び、前記吸蔵還元型NOx触媒へ供給する還元剤量を制御することを最大の特徴とする。
【0008】
より詳しくは、内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を制御するとともに、前記内燃機関の排気通路に設けられた吸蔵還元型NOx触媒に上流から還元剤を供給することにより、前記吸蔵還元型NOx触媒における硫黄分を除去する排気浄化触媒のSOx被毒再生方法であって、
前記吸蔵還元型NOx触媒において、SOx被毒再生すべき部分を決定するSOx被毒再生部分決定工程と、
前記内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を目標空燃比に制御するとともに、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定された前記SOx被毒再生すべき部分に対し、単位時間当たり目標還元剤量の還元剤を間欠的に供給する還元剤供給工程と、を有し、
前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の位置に応じて、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比及び前記目標還元剤量の値が設定されることを特徴とする。
【0009】
ここで、SOx被毒再生においては、内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を制御するとともに、前記内燃機関の排気通路に設けられた吸蔵還元型NOx触媒に上流から還元剤を供給することにより、前記吸蔵還元型NOx触媒の温度を硫黄分離脱温度以上に上昇させる(実際には、前記吸蔵還元型NOx触媒上に担持された、あるいは別に設けられた酸化触媒における還元剤の反応熱により温度上昇させることが多い)とともに、還元剤濃度の高い雰囲気とし、前記吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵または吸着されている硫黄分を還元除去させている。
【0010】
この際、前記吸蔵還元型NOx触媒において、SOxが還元される時の反応熱によって前記吸蔵還元型NOx触媒の温度が過剰に上昇しないように、前記還元剤を、前記吸蔵還元型NOx触媒に間欠的に供給することが一般的に行われている(以下、これを「リッチスパイク」という。)。
【0011】
このリッチスパイクの実施にあたって、前記内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を、比較的リーンな状態とし、リッチスパイクによって供給される還元剤の量を多くした場合には、還元剤供給時と還元剤供給休止時における還元剤供給量の差が大きくなるため、特に前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側部分においては、リッチスパイクの実施に伴う温度の変動が大きくなる。そうすると、一部の期間において前記吸蔵還元型NOx触媒の温度がSOxの浄化可能な閾値の温度としての硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回り、結果としてSOx被毒再生効率が低下するおそれがある。
【0012】
一方、前記内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を、比較的リッチな状態とし、リッチスパイクによって供給される還元剤の量を少なくした場合には、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側部分の温度の変動は小さくすることができるが、SOx被毒再生時の燃費が悪化するおそれがあるとともに、前記内燃機関の気筒内における空燃比がリッチ状態となることから、エミッションが悪化するなどの不具合が生じるおそれがある。
【0013】
これに対し、本発明では、前記SOx被毒再生部分決定工程において、前記吸蔵還元型NOx触媒においてSOx被毒再生すべき部分を決定し、
前記還元剤供給工程においては、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の位置に応じた前記目標空燃比及び前記目標還元剤量の値が設定されるようにした。
【0014】
ここで、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の位置によって、該SOx被毒再生すべき部分の熱容量が異なる場合について説明する。例えば、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の熱容量が小さい場合には、前記内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を比較的リー
ンな状態とし、リッチスパイクによって供給される還元剤の量を多く設定すると、リッチスパイクの実施に伴う温度の変動が大きくなる。その結果、一部の期間において、前記吸蔵還元型NOx触媒の温度がSOxの浄化可能な閾値の温度としての硫黄離脱温度(または再生下限温度)を下回り、SOx被毒再生効率が低下するおそれが生じる。
【0015】
それに対し、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の熱容量が大きい場合には、前記内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を比較的リーンな状態とし、リッチスパイクによって供給される還元剤の量を多く設定しても、リッチスパイクの実施に伴う温度の変動は比較的小さい。
【0016】
従って、例えば、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の熱容量が小さい場合には、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比を低く設定し、前記目標還元剤量の値を少なく設定するとよい。一方、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の熱容量が大きい場合には、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比を高く設定し、前記目標還元剤量の値を多く設定するとよい。
【0017】
次に、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の位置によって、該SOx被毒再生すべき部分の床温が異なる場合について説明する。例えば、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の床温が低い場合には、前記内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を比較的リーンな状態とし、リッチスパイクによって供給される還元剤の量を多く設定すると、一部の期間において前記吸蔵還元型NOx触媒の温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回り、SOx被毒再生効率が低下する可能性が高くなる。
【0018】
一方、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の床温が充分に高い場合には、前記内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を比較的リーンな状態とし、リッチスパイクによって供給される還元剤の量を多く設定しても、前記吸蔵還元型NOx触媒の温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回り、SOx被毒再生効率が低下する可能性は低い。
【0019】
従って、例えば、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の床温が低い場合には、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比を低く設定し、前記目標還元剤量の値を少なく設定するとよい。一方、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の床温が高い場合には、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比を高く設定し、前記目標還元剤量の値を多く設定するとよい。
【0020】
このように、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の位置に応じて、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比及び前記目標還元剤量の値を設定することにより、前記吸蔵還元型NOx触媒におけるSOx被毒再生中の部分の温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回るおそれがある場合には、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比を低く設定し、前記目標還元剤量の値を少なく設定することによって、前記吸蔵還元型NOx触媒におけるSOx被毒再生中の部分の温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回ることを抑制することができ、前記NOx触媒におけるSOx被毒再生中の部分の温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回る危険性が少ない場合には、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比を高く設定し、前記目標還元剤量の値を多く設定することによって、SOx被毒再生における燃費の悪化を抑制し、さらにはエミッションの悪化を抑制することができる。
【0021】
また、本発明においては、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側の所定上流領域内である場合と比較し、前記SOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒における下流側の所定下流領域内である場合は、前記目標空燃比は高く設定されるとともに、前記目標還元剤量は多く設定されるようにしてもよい。
【0022】
ここで、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側にある場合には、SOx被毒再生すべき部分の熱容量が小さく、また、リッチスパイク実施時における還元剤の供給量の変化が、前記SOx被毒再生すべき部分の温度の変化に直接影響を及ぼす。従って、この場合には、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比は低く設定され、前記目標還元剤量は少なく設定されることが望ましい。一方、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒における下流側にある場合には、熱容量も比較的大きく、また、リッチスパイク実施時における還元剤の供給量の変化も、前記還元剤が前記吸蔵還元型NOx触媒の上流側を通過する間になまされるので、前記SOx被毒再生すべき部分の温度の変化にあまり影響を及ぼさない。従って、この場合には、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比は高く設定され、前記目標還元剤量は多く設定されてもよい。
【0023】
ここで、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側の所定上流領域及び、前記吸蔵還元型NOx触媒における下流側の所定下流領域とは、それぞれ、前記吸蔵還元型NOx触媒において、前記還元剤の供給量の変化の、前記SOx被毒再生すべき部分の温度の変化に対する影響が、互いに有意差がある上流側及び下流側の領域としてもよい。
【0024】
すなわち、前記吸蔵還元型NOx触媒の上流側と下流側との間で、前記還元剤の供給量の変化の、前記SOx被毒再生すべき部分の温度の変化に対する影響に殆ど差がない場合には、例えば、前記吸蔵還元型NOx触媒の上流側半分を前記所定上流領域とし、前記吸蔵還元型NOx触媒の下流側半分を前記所定下流領域としてもよい。
【0025】
また、前記吸蔵還元型NOx触媒の上流側と下流側との間で、前記還元剤の供給量の変化の、前記SOx被毒再生すべき部分の温度の変化に対する影響の差が大きい場合には、前記吸蔵還元型NOx触媒において相対的に上流側であれば、全て所定上流領域、相対的に下流側であれば、全て所定下流領域としてもよい。この場合は、結果として、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒において相対的に下流側にある場合は、相対的に上流側にある場合と比較し、前記目標空燃比は高く設定されるとともに、前記目標還元剤量は多く設定されるようにしてもよい。
【0026】
より具体的には、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒において下流側にある程、前記目標空燃比はより高く設定されるとともに、前記目標還元剤量はより多く設定されるようにしてもよい。
【0027】
こうすれば、より簡単な制御で、より確実に前記SOx被毒再生すべき部分の温度の変化を抑制でき、SOx被毒再生効率の悪化を抑制することができるとともに、SOx被毒再生における燃費の悪化を抑制できる。
【0028】
また、本発明においては、前記SOx被毒再生部分決定工程においては、前記吸蔵還元型NOx触媒における硫黄分の量が所定硫黄量以上となった部分を、前記SOx被毒再生すべき部分と決定するようにしてもよい。
【0029】
ここで、前記所定硫黄量とは、前記吸蔵還元型NOx触媒における硫黄分の量がこの値以上となった部分においては、NOx吸蔵能力の劣化が大きくなると予想される閾値としてのSOx吸蔵量である。従って、本発明によれば、NOx吸蔵能力の劣化が大きくなる部分に対して選択的にSOx被毒再生することができるので、より効率よく、前記吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸蔵能力を維持することができる。
【0030】
また、本発明においては、前記目標空燃比の値に上限を設けるようにしてもよい。ここで、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒の下流側の所定下流領域である場合について説明する。この場合は、本発明においては前述のように、前記目標空燃比の値を高く設定し、前記目標還元剤量を多く設定してもよい。これは、この場合には、前記吸蔵還元型NOx触媒に供給される還元剤の量の変化の、前記SOx被毒再生すべき部分の温度の変化に及ぼす影響は小さいからである。
【0031】
しかし、この場合には、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側部分においては、逆に大きな温度の変化が生じていると考えられる。そうすると、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側の部分の温度が、一部の期間において過剰に高くなり、前記吸蔵還元型NOx触媒が熱劣化を引き起こすおそれがある。従って、前記吸蔵還元型NOx触媒の各部に対して、上流側の部分において過昇温が生じない閾値としての昇温限界空燃比を設定しておき、前記目標空燃比が、昇温限界空燃比より高くなる場合には、目標空燃比を、昇温限界空燃比に設定するようにしてもよい。そうすれば、吸蔵還元型NOx触媒における上流側部分における過昇温を抑制することができる。
【0032】
上記の説明においては、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒の下流側の所定下流領域であるときに、前記吸蔵還元型NOx触媒の下流側の部分における過昇温を抑制する場合について説明したが、本発明を、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒における熱容量が大きい部分であるときに、前記吸蔵還元型NOx触媒における熱容量が小さい部分における過昇温を抑制する場合や、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒における床温が低い部分であるときに、前記吸蔵還元型NOx触媒における床温が高い部分における過昇温を抑制する場合に適用することも可能である。
【0033】
また、本発明においては、前記SOx被毒再生部分決定工程においてSOx被毒再生すべき部分と決定された部分が複数箇所ある場合には、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比及び前記目標還元剤量の値は、前記複数のSOx被毒再生すべき部分のうち、最も上流側に位置する部分に対して設定されるべき値とされるようにしてもよい。
【0034】
ここで、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側の部分と下流側の部分とを比較すると、上記した理由により、リッチスパイク実施時における還元剤の供給量の変化に伴う上流側の部分の温度の変化は、同様の場合における下流側の部分の温度の変化より大きくなる。換言すると、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側の部分の方が、下流側の部分とを比較すると、前記目標空燃比及び前記目標還元剤量に対する制限が厳しいと言える。
【0035】
従って、前記SOx被毒再生部分決定工程においてSOx被毒再生すべき部分と決定された部分が複数箇所ある場合に、前記還元剤供給工程における目標空燃比及び目標還元剤量の値は、前記複数のSOx被毒再生すべき部分のうち、最も上流側に位置する部分に対して設定されるべき値とすれば、下流側に位置する前記SOx被毒再生すべき部分において、温度の変化が過度に大きくなることを抑制でき、下流側に位置する前記SOx被毒再生すべき部分の温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回ることによりSOx被
毒再生効率が低下したり、過昇温したりすることを抑制することができる。その結果、前記SOx被毒再生部分決定工程においてSOx被毒再生すべき部分と決定された部分の数に係らず、前記SOx被毒再生処理をより確実に行うことができる。
【0036】
また、本発明においては、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定される前記SOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側から下流側に順次変更されるとともに、前記SOx被毒再生部分決定工程及び、前記還元剤供給工程が繰り返し実行されるようにしてもよい。
【0037】
すなわち、前記SOx被毒再生すべき部分を、前記吸蔵還元型NOx触媒の上流側から下流側へ移動させながら、それぞれのSOx被毒再生すべき部分に対して、前記目標空燃比及び前記目標還元剤量を設定し、前記還元剤供給工程を順次実施していく。このようにすれば、常に、上記した、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比及び前記目標還元剤量の値が、前記複数のSOx被毒再生すべき部分のうち、最も上流側に位置する部分に対して設定されるべき値とされるという条件を自動的に満たしつつ、前記吸蔵還元型NOx触媒の全体に対して、SOx被毒再生を行うことができる。加えて、前記吸蔵還元型NOx触媒の上流側から順次SOx被毒再生を行うため、下流側におけるSOxの再被毒を抑制することができる。
【0038】
また、本発明においては、前記吸蔵還元型NOx触媒は、前記排気通路に直列に設けられた複数の吸蔵還元型NOx触媒からなる吸蔵還元型NOx触媒群であり、
前記SOx被毒再生部分決定工程においては、前記SOx被毒再生すべき部分として、前記複数の吸蔵還元型NOx触媒のうち、SOx被毒再生すべき吸蔵還元型NOx触媒が決定されるようにしてもよい。
【0039】
すなわち、内燃機関の排気通路に複数個の吸蔵還元型NOx触媒が直列に設けられた場合には、複数個の吸蔵還元型NOx触媒からなる吸蔵還元型NOx触媒群を上記の吸蔵還元型NOx触媒と考え、前記複数個の吸蔵還元型NOx触媒のうち、SOx被毒再生をすべき吸蔵還元型NOx触媒を、前記SOx被毒再生すべき部分と考えることにより、上述した、1個の吸蔵還元型NOx触媒に対して行う制御と同様の制御を、前記複数の吸蔵還元型NOx触媒全体に適用することができる。
【0040】
こうすれば、前記排気通路に直列に設けられた複数個の吸蔵還元型NOx触媒のうち、一部の吸蔵還元型NOx触媒において、温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回ることを抑制でき、さらに、SOx被毒再生における燃費及びエミッションの向上を図りつつ、前記排気通路に設けられた全ての吸蔵還元型NOx触媒に対してSOx被毒再生を行うことができる。
【0041】
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明にあっては、SOx被毒再生における吸蔵還元型NOx触媒の温度の変動を抑制してSOx被毒再生効率の悪化を抑制することができるとともに、SOx被毒再生における燃費の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。
【実施例1】
【0044】
図1は、本実施例に係る内燃機関と、その排気系及び制御系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、ディーゼル機関である。なお、図1においては、内燃機関1の内部及びその吸気系は省略されている。
【0045】
図1において、内燃機関1には、内燃機関1から排出される排気が流通する排気管5が接続され、この排気管5は下流にて図示しないマフラーに接続されている。また、排気管5の途中には、排気中のNOxを浄化する吸蔵還元型NOx触媒(以下、単にNOx触媒という。)10が配置されている。
【0046】
なお、排気管5におけるNOx触媒10の上流側には、NOx触媒10のNOx還元処理及び、SOx被毒再生の際に、NOx触媒10に還元剤としての燃料を供給する燃料添加弁13が配置されている。燃料添加弁13から噴射された燃料は、内燃機関1からの排気とともにNOx触媒10に導入される。
【0047】
本実施例におけるNOx触媒10は、例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とから成る。NOx触媒10は該NOx触媒10を通過する排気の空燃比がリーンのときにはNOxを吸蔵し、NOx触媒10を通過する排気の空燃比がリッチになり、かつ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを離脱させて還元浄化する作用を有する。また、NOx触媒10には、還元剤としての燃料が導入された際に酸化反応を起こし、その反応熱によってNOx触媒10自体の温度を上昇させるための酸化触媒が担持されている。
【0048】
また、内燃機関1には、内燃機関1及び排気系を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)20が併設されている。このECU20は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態等を制御する他、内燃機関1のNOx触媒10に係る制御を行うユニットである。
【0049】
ECU20には、図示しないエアフローメータ、クランクポジションセンサや、アクセルポジションセンサなどの内燃機関1の運転状態の制御に係るセンサ類が電気配線を介して接続され、出力信号がECU20に入力されるようになっている。一方、ECU20には、内燃機関1内の図示しない燃料噴射弁等が電気配線を介して接続される他、本実施例における燃料添加弁13などが電気配線を介して接続され、ECU20によって制御されるようになっている。
【0050】
また、ECU20には、CPU、ROM、RAM等が備えられており、ROMには、内燃機関1の種々の制御を行うためのプログラムや、データを格納したマップが記憶されている。NOx触媒10に吸蔵されたNOxを還元放出するNOx還元処理ルーチン(説明は省略)や、後述する、本実施例におけるSOx被毒再生ルーチンも、ECU20のROMに記憶されているプログラムの一つである。
【0051】
図1に示されるようなディーゼル機関では、通常時の排気の空燃比はリーンでありNOx触媒10においては、排気中のNOxが吸蔵されることにより、排気中のNOxの浄化を行うことができる。しかし、NOx触媒10中に吸蔵されたNOxの量が増加すると、NOx触媒10におけるNOxの浄化能力が悪化する。従って、NOx触媒10中に吸蔵されたNOxの量が所定量を超える場合には、燃料添加弁13からNOx触媒10上流側の排気管5に還元剤としての燃料が供給されるNOx還元処理を行う。このことによりNOx触媒10を通過する排気の空燃比が小さくなると共に還元剤の存在する状態とされ、NO
x触媒10に吸蔵されたNOxが還元放出される。
【0052】
また、これとは別に、排気中にSOx成分が含まれていると、NOx触媒10はNOxの吸蔵と同じメカニズムで排気中のSOxを吸蔵する。排気ガスの空燃比がリーンのとき、排気ガス中のSOx(例えばSO)は例えば白金Pt上で酸化されてSO、SOとなり、例えば酸化バリウムBaOと結合してBaSOを形成する。この場合のBaSOは比較的安定であり、また、結晶が粗大化しやすいため一旦生成されると分解されにくく離脱されにくい。このため、NOx触媒10中のBaSOの生成量が増大するとNOxの吸蔵に関与できるBaOの量が減少してしまいNOxの吸蔵能力が低下してしまう。
【0053】
このSOx被毒を解消するためには、NOx触媒10に生成されたBaSOを高温で分解するとともに、これにより生成されるSO、SOの硫酸イオンをリッチ雰囲気下で還元し、気体状のSOに転換してNOx触媒10から離脱させる必要がある。従ってSOx被毒再生を行うためには、NOx触媒10を高温且つリッチ雰囲気の状態にすることが必要とされる。
【0054】
このようなSOx被毒再生を実施する方法として、NOx触媒10の上流において燃料添加弁13から排気管5へ還元剤としての燃料を添加し、その燃料の酸化触媒における反応熱によってNOx触媒10を昇温すると共にリッチ雰囲気を作り出す方法がある。しかし、この方法では、NOx触媒10を通過する排気の空燃比をリッチの状態に維持し続けようとすると、NOx触媒10における燃料等の反応によりNOx触媒10の温度が上昇し、機関の運転状態によっては過昇温されてしまうおそれがある。
【0055】
そこで、SOx被毒再生の際には、内燃機関1の図示しない気筒から排出される排気の空燃比を目標空燃比に制御するとともに、リッチスパイクによって燃料添加弁13から排気管5に還元剤を間欠的に供給し、NOx触媒10において、短期間に多量の還元剤が反応を起さないようにし、過昇温しないようにしている。
【0056】
ここで、内燃機関1における燃焼は通常リーン空燃比で行われるので、通常時に、内燃機関1の気筒から排出される排気の空燃比はリーンである。その場合、NOx触媒10に充分な還元剤を供給するためには、燃料添加弁13から間欠的に添加される還元剤の量を比較的多くする必要がある。そうすると、NOx触媒10において、燃料添加弁13から添加された燃料が反応する期間の温度と、そうでない期間の温度との差が大きくなるので、NOx触媒10における温度の変動が大きくなる。
【0057】
その結果、NOx触媒10の温度が低い期間中は、NOx触媒10の温度が、最低限、SOxの還元反応に必要な硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回る場合があり、SOx被毒再生効率が低下する場合がある。そこで、現実には、NOx触媒10のSOx被毒再生の際には、内燃機関1の気筒から排出される排気の空燃比をリッチ側に制御し、リッチスパイクにおいて燃料添加弁13から燃料が添加されている間の単位時間あたりの燃料添加量を抑えることによって、NOx触媒10における温度の変動を抑制し、SOx被毒再生効率が低下することを抑制している。
【0058】
しかし、この場合、内燃機関1では、リッチ空燃比において燃焼が起きることとなるので、SOx被毒再生処理の全体に関わる燃費が悪化し、さらに、この間の排気のエミッションが悪化する可能性があった。
【0059】
そこで、本実施例においては、NOx触媒10における下流側の部分においては、上述のように比較的多くの燃料を間欠的に供給したとしても、その影響がなまされることによ
り、また、NOx触媒10における下流側の部分においては、熱容量が、NOx触媒10における上流側端部と比較して大きいことにより、温度の変化が、NOx触媒10における上流側の部分に比較して少なくなることに着目した。そして、NOx触媒10における下流側の部分をSOx被毒再生する場合には、内燃機関1から排出される排気の空燃比をリーン側に制御するとともに、燃料添加弁13から間欠的に添加される燃料の単位時間あたりの添加量を増加させるようにした。一方、NOx触媒10における上流側の部分をSOx被毒再生する場合には、内燃機関1から排出される排気の空燃比をリッチ側に制御するとともに、燃料添加弁13から間欠的に添加される燃料の単位時間あたりの添加量を減少させるようにした。
【0060】
このことについて図2を用いて説明する。図2は、NOx触媒10における上流側端部AをSOx被毒再生する場合と、NOx触媒10における下流側の部分BをSOx被毒再生する場合とにおける、NOx触媒10に導入される排気の空燃比と、燃料添加弁13にECU20の指令によって送られる添加パルス、上流側端部Aにおける温度、下流側の部分Bにおける温度と示したタイムチャートである。ここで、図2の左列は、内燃機関1の気筒から排出される排気の空燃比をリッチ側に制御(目標燃焼A/F=リッチ)し、燃料添加弁13から間欠的に添加される燃料の単位時間あたりの添加量を減少させた(目標還元剤添加量=少)場合のタイムチャート、右列は、内燃機関1の気筒から排出される排気の空燃比をリーン側に制御(目標燃焼A/F=リーン)し、燃料添加弁13から間欠的に添加される燃料の単位時間あたりの添加量を増加させた(目標還元剤添加量=多)場合のタイムチャートである。なお、ここで、目標燃焼A/Fは本実施例における目標空燃比であり、目標還元剤添加量は本実施例における目標還元剤量である。
【0061】
本実施例においては、NOx触媒10の下流側の部分BについてSOx被毒再生を行う場合には、図2の右列に示したように、内燃機関1の気筒から排出される排気の空燃比をリーン側に制御し、燃料添加弁13から間欠的に添加される燃料の単位時間あたりの添加量を増加させる。この場合は、NOx触媒10に導入される排気の空燃比の変動の振幅が大きくなる。そうすると、NOx触媒10の上流側端部A点における温度の変動は大きくなり、一部の期間において、硫黄分離脱温度(または再生限界温度)を下回っている。しかし、NOx触媒10の下流側の部分であるB点においては、NOx触媒10に導入される排気の空燃比の変動がなまされているとともに、熱容量も大きいので、温度の変動は比較的小さくなっている。
【0062】
従って、実際にSOx被毒再生を行う場所においてはNOx触媒10の温度が硫黄分離脱温度(または再生限界温度)を下回らないので、SOx被毒再生効率の悪化を抑制することができる。
【0063】
一方、NOx触媒10における上流側端部A点に対してSOx被毒再生を行う場合には、内燃機関1から排出される排気の空燃比をリッチ側に制御するとともに、燃料添加弁13から間欠的に添加される燃料の単位時間あたりの添加量を減少させる。そうすることにより、NOx触媒10に導入される排気の空燃比の変動の振幅が小さくなり、Aにおける温度変化も小さくなる。その結果、AにおいてもNOx触媒10の温度が硫黄分離脱温度(または再生限界温度)を下回ることがなくなり、SOx被毒再生効率の低下を抑制することができる。
【0064】
次に、本実施例におけるSOx被毒再生ルーチンについて説明する。図3は、本実施例におけるSOx被毒再生ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンはECU20のROMに記憶されたプログラムであり、内燃機関1の稼動中は所定期間毎に実行される。
【0065】
本実施例におけるSOx被毒再生ルーチンが実行されると、まずS101において、NOx触媒10の各場所におけるSOx吸蔵量が算出される。具体的には、NOx触媒10の中で検出点を複数箇所定義し、定義された複数の検出点に関し、前回のSOx被毒再生開始時のSOx吸蔵量及びNOx触媒の温度分布から、前回のSOx被毒再生終了時の残存SOx量を推定し、各検出点における残存SOx量と、前回のSOx被毒再生終了時以降の内燃機関1における消費燃料量とより、現時点での、各検出点におけるSOx吸蔵量を推定するようにしてもよい。S101の処理が終了するとS102に進む。
【0066】
S102においては、S101において算出された各検出点におけるSOx吸蔵量より、SOx被毒再生場所を決定する。具体的にはSOx吸蔵量が、NOx触媒10におけるNOx浄化性能に影響を及ぼすと考えられる閾値である限界SOx吸蔵量以上であると判断された検出点について、SOx被毒再生を行うと判断する。S102の処理が終了するとS103に進む。なお、ここで、上述の限界SOx吸蔵量は、本実施例における所定硫黄量に相当する。
【0067】
S103においては、S102においてSOx被毒再生場所があったかどうかが判定される。ここで、SOx被毒再生場所がなかった。すなわち、SOx吸蔵量が限界SOx吸蔵量以上である場所がなかったと判定された場合には、そのまま本ルーチンを終了する。一方、SOx被毒再生場所があった場合にはS104に進む。
【0068】
S104においては、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が導出される。具体的には、SOx被毒再生場所の位置と、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量との関係が格納されたマップから、S102で決定されたSOx被毒再生場所の位置に対応する目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量の値を読み出すことによって導出する。
【0069】
ここで、前述のように、目標燃焼A/Fとは、本実施例における目標空燃比であり、内燃機関1の気筒から排出される排気の空燃比に相当する。目標還元剤添加量とは、本実施例における目標還元剤量であり、リッチスパイクにおいて燃料添加弁13から間欠的に燃料が添加される場合の、燃料を添加している期間中に単位時間当たりに添加される燃料量に相当する。
【0070】
ここで、上記のSOx被毒再生場所の位置と、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量との関係は予め実験的に求められる。図4を用いて、SOx被毒再生場所の位置と、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量との関係の求め方について説明する。図4は、NOx触媒10における軸方向の位置と、その位置で確保が可能な温度及び、目標燃焼A/Fを示すグラフである。
【0071】
図4の上側のグラフには、NOx触媒10における軸方向の位置と、確保可能温度との関係を示している。この図に描かれた曲線によれば、例えば、燃焼A/F=25とした場合は、SOx被毒再生するのに充分な還元剤をNOx触媒10に供給するためには、燃料添加弁13から間欠的に供給される還元剤の量を増加させる必要がある。そうすると、NOx触媒10の上流側端部Aにおいて温度の変動が大きくなるので、確保可能温度は低くなってしまう。逆に燃焼A/F=18の場合、燃料添加弁13から間欠的に供給すべき還元剤量は少なくてもよいため、上流側端部Aにおける温度の変動は小さくなる。その結果、確保可能温度は、燃焼A/F=25の場合と比較して高くなる。
【0072】
図4の下側に示すのは上記のような状態において、NOx触媒10の温度を硫黄分離脱温度(または再生下限温度)以上とするために必要な燃焼A/Fを示したグラフである。すなわち、上流側端部Aにおいては、図4の上側のグラフにおいて硫黄分離脱温度(または再生下限温度)以上の温度を確保するためには、燃焼A/Fを18以下にする必要があ
る。それに対して下流側の部分Bにおいては、温度の変動は小さくなるので、燃焼A/F=25としても、硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を確保することができる。
【0073】
このように、図4の下側のグラフから、NOx触媒10における軸方向の位置と、目標燃焼A/Fとの関係を得ることができる。また、目標燃焼A/Fの値が決まると、SOx被毒再生のために必要な還元剤量の値との差分より、燃料添加弁13から単位時間あたりに添加すべき目標還元剤添加量を得ることができる。
【0074】
説明を図3に戻す。S104において、上記のような考え方に基いて作成されたマップから目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が導出されると、S105において燃焼A/Fが目標燃焼A/Fとなるべく制御される。具体的には、図示しない吸気絞り弁または、図示しないEGR弁の開度を制御することによって、内燃機関1の気筒に導入される吸気の量を制御することによって、燃焼A/Fを制御する。
【0075】
次に、S106に進み、燃料添加弁13より、単位時間当たりに目標還元剤添加量に相当する還元剤を、間欠的に添加する。S106の処理が終了すると本ルーチンを一旦終了する。
【0076】
以上、説明したように、本実施例においては、NOx触媒10の各検出部に吸蔵されたSOxの量から、SOx被毒再生が必要である場所を決定し、SOx被毒再生が必要である場所において、NOx触媒の温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)以上を確保できる最低の目標燃焼A/Fを求め、実際の燃焼A/Fを当該目標A/Fとなるべく制御し、さらにSOx再生処理可能な最低の量の還元剤を目標還元剤添加量として、燃料添加弁13から添加している。
【0077】
従って、NOx触媒10のSOx被毒再生場所において、温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回ることを抑制し、SOx被毒再生効率の低下を抑制することができる。それと同時に、内燃機関1の気筒から排出される排気の空燃比を無駄に低い燃焼A/Fに制御することを抑制できるので、SOx被毒再生における燃費の悪化及び、エミッションの悪化を抑制することができる。
【0078】
なお、図3に示すフローチャートにおいて、S101及びS102の処理は、本実施例におけるSOx被毒再生部分決定工程に相当する。また、S104からS106の処理は、本実施例における還元剤供給工程に相当する。
【0079】
また、図3におけるS102において、SOx被毒再生場所が複数箇所あった場合には、最も上流側に位置するSOx被毒再生場所に対して得られる目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量の値を採用するようにしてもよい。これは、SOx被毒再生場所がNOx触媒10の上流に位置するほど、SOx被毒再生場所の温度を硫黄分離脱温度(または再生下限温度)以上に維持できる燃焼A/Fの値が小さい、換言すると燃焼A/Fに対する条件が厳しいので、最も上流側に位置するSOx被毒再生場所に対して得られる目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量の値を採用することにより、複数のSOx被毒再生場所に対してSOx被毒再生効率の低下を抑制しつつ、同時にSOx被毒再生を行うことができる。
【0080】
次に、本実施例における別の態様について説明する。この態様は、図3のS104において、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量を導出したマップについての考え方が異なる。すなわち、目標燃焼A/Fを導出する際には、NOx触媒10におけるSOx被毒再生場所の温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)以上となることを確保するとともに、NOx触媒10の温度が過昇温しないことを考慮に入れた態様である。
【0081】
図5は、本態様における、NOx触媒10におけるSOx被毒再生場所の位置と、目標燃焼A/Fとの関係を示すマップについての考え方を示したグラフである。
【0082】
図5において、上から2番目に書かれたグラフは、NOx触媒10におけるSOx被毒再生場所の位置と、触媒最高温度との関係を示している。すなわち、前述のように、燃焼A/Fが同じであれば、NOx触媒10におけるSOx被毒再生場所の位置が上流側であるほど、SOx被毒再生場所における温度の変動が大きくなる。そうすると、SOx被毒再生場所における最高温度も高くなることを示している。図5の、上から2番目のグラフによれば、NOx触媒10におけるSOx被毒再生場所が同じであれば、燃焼A/Fが高いほど、最高温度も高くなることが分かる。ここに示す触媒限界温度とは、NOx触媒10の温度がこの温度以上になると、NOx触媒10の過昇温によって熱劣化が生じる可能性があると判断される閾値としての触媒温度である。
【0083】
図5における上から3番目に示されたグラフは、図4における下側のグラフに対して、NOx触媒10の触媒最高温度が触媒限界温度を超えない、すなわちNOx触媒10が過昇温しない制限を考慮して、目標燃焼A/Fを求めたグラフである。例えば、NOx触媒10の上流側端部Aについて考えると、NOx触媒10の温度が硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を下回らないという条件から求められる燃焼A/Fの条件は、燃焼A/F≦18である。一方、NOx触媒10の触媒最高温度が触媒限界温度を超えないという条件から求められる燃焼A/Fの条件は、燃焼A/F≦16である。従って、この場合の目標燃焼A/Fは16となる。ここで、燃焼A/F=16という値は、前述の昇温限界空燃比に相当する。
【0084】
以上、説明したように、本実施例における本態様においては、目標燃焼A/Fを導出する際に、NOx触媒10が過昇温しないことをも考慮に入れて、目標燃料A/Fに上限を設けているので、SOx被毒再生において、SOx被毒再生効率の低下及び、燃費とエミッションの悪化を抑制できるとともに、さらにNOx触媒10が過昇温することも抑制することができる。
【0085】
なお、本実施例においては、NOx触媒10におけるSOx被毒再生場所によって、熱容量及び、リッチスパイク実施時における還元剤の供給量の変化の影響度合いが異なることに基いて、SOx被毒再生場所に応じて目標燃料A/F及び、目標還元剤添加量を設定したが、NOx触媒10におけるSOx被毒再生場所によって、熱容量のみが異なる場合や、NOx触媒10におけるSOx被毒再生場所によって、NOx触媒10の床温が異なる場合に対して同様の制御を適用してもよい。
【実施例2】
【0086】
次に、本発明における実施例2について説明する。実施例2においては、実施例1のように、NOx触媒10における特定のSOx被毒再生場所に対して適当な条件でSOx被毒再生を行うのではなく、NOx触媒10の上流側の端部から下流側の端部までの各位置を順次SOx被毒再生場所とし、順次決められたSOx被毒再生場所に対して適当な条件で順次SOx被毒再生を行う例について説明する。
【0087】
本実施例が適用される内燃機関及び、その排気系及び制御系は、図1に示したものと同じであるので、それについての説明は省略する。図6には、本実施例におけるSOx被毒再生ルーチンを示す。
【0088】
本実施例におけるSOx被毒再生ルーチンが実行されると、まずS201においてNOx触媒全体のSOx吸蔵量が算出される。図3のS101との相違点は、本ルーチンにおいては、NOx触媒10の所定の検出点におけるSOx吸蔵量を個別に算出するのではなく、
NOx触媒10全体としてのSOx吸蔵量を算出する点である。具体的には、前回のSOx被毒再生の終了時以降の消費燃料量から算出してもよい。S201の処理が終了するとS202に進む。
【0089】
S202においては、SOx被毒再生が必要かどうかが判定される。具体的には、S201において算出されたNOx触媒10全体としてのSOx吸蔵量が触媒限界SOx吸蔵量以上であるかどうかが判定される。ここで触媒限界SOx吸蔵量は、NOx触媒10全体にこれ以上のSOxが吸蔵された場合には、NOx触媒10のNOx浄化性能の劣化が大きくなると判断される閾値としてのSOx吸蔵量である。
【0090】
S202において、SOx被毒再生が必要ない、すなわちNOx触媒10全体としてのSOx吸蔵量が触媒限界SOx吸蔵量未満であると判定された場合にはそのまま本ルーチンを終了する。一方、SOx被毒再生が必要である、すなわちNOx触媒10全体としてのSOx吸蔵量が触媒限界SOx吸蔵量以上であると判定された場合にはS203に進む。
【0091】
S203においては、NOx触媒10全体のSOx被毒再生を行うにあたってまず、NOx触媒10の上流側端部における目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が導出される。ここでは、SOx被毒再生場所の位置と、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量との関係が格納されたマップから、NOx触媒10の上流側端部に対応する目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量の値を読み出すことによって導出する。このマップに関しては、図3のS104において用いられたものと同じマップを用いても良い。
【0092】
次に、S204に進んで、燃焼A/FをS203で導出された目標燃焼A/Fに制御し、S205に進んで燃料添加弁13から、S203で導出された目標還元剤添加量の還元剤を添加する。この処理の内容については、図3に示したS105及びS106の処理と同様である。ここで、S205において還元剤が添加された後、S206の処理に進むまでの間には所定の待ち時間が設定されている。この待ち時間は、NOx触媒10の所定のSOx被毒再生場所に対してSOx被毒再生を行った後、次のSOx被毒再生場所に対してSOx被毒を行うまでのインターバルと考えることができる。この待ち時間については、燃焼A/Fの制御速度や燃料添加弁13の応答速度などを考慮の上、最も効率よくSOx被毒再生が行われるインターバルを実験的に求めるようにしてもよい。
【0093】
そして、S206においては、S203で導出された目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が、NOx触媒10の下流側端部に対するものかどうかが判定される。すなわち、本ルーチンでは、NOx触媒10の上流側の端部から下流側の端部まで位置に対して順次SOx被毒再生を行うので、ここで、NOx触媒10の上流側の端部から下流側の端部までの位置に対してSOx被毒再生が終わったかどうかが判定される。ここで、S203で導出された目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が、NOx触媒10の下流側端部に対するものであると判定された場合には、NOx触媒10の上流側の端部から下流側の端部までに対してSOx被毒再生が終わったと判断されるので、本ルーチンを一旦終了する。一方、S203で導出された目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が、NOx触媒10の下流側端部に対するものではないと判定された場合には、NOx触媒10の上流側の端部から下流側の端部までに対してSOx被毒再生が終了していないと判断されるので、S207に進む。
【0094】
S207においては、現在設定されている目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量に対応するNOx触媒における位置よりも、所定量下流側の位置について目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が前述のマップから導出される。ここで所定量とは、予め設定された長さであり、例えばNOx触媒10の軸方向の長さの1/nの長さとしてもよい。ここで、nが多い程、NOx触媒10をきめ細かく分割し、それぞれの場所に適当な目標燃焼A
/Fと目標還元剤添加量でSOx被毒再生が行われるので、より確実にSOx被毒再生を完了できる。
【0095】
S207の処理が終了すると、再度S204〜S206の処理を実行し、S206において、目標燃焼A/F及び目標還元剤添加量が、NOx触媒10の下流側端部に対するものと判定されるまで、これらの処理が繰り返される。そして、S206において、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が、NOx触媒10の下流側端部に対するものと判定された場合には、NOx触媒10の上流側の端部から下流側の端部までについて、適当な目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量でSOx被毒再生が行われたと判断されるので、本ルーチンを一旦終了する。
【0096】
以上説明したように、本実施例においては、NOx触媒10の上流側端部から下流側端部までを適宜分割し、それぞれの場所に対して、硫黄分離脱温度(または再生下限温度)以上が確保できる適当な目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量によってSOx被毒再生を行う。従って、より確実にNOx触媒10全体に対してSOx被毒再生を完了させることができる。なお、簡単にはNOx触媒10を2分割、すなわち上流側と下流側の2箇所に対して適当な目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量によってSOx被毒再生を行うようにしてもよい。
【0097】
また、本実施例においては、NOx触媒10の上流側端部から下流にむけて順次SOx被毒再生を進めるため、常に、燃焼A/Fに対する条件が厳しい最も上流側に位置するSOx被毒再生場所に対して得られる目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量の値を採用することになる。従って、全てのSOx被毒再生場所に対してSOx被毒再生効率の低下を抑制しつつ、SOx被毒再生を行うことができる。加えて、NOx触媒10の下流側において、SOx再被毒が生じることを抑制できる。
【実施例3】
【0098】
次に、本発明における実施例3について説明する。実施例3においては、実施例1のように、内燃機関1の排気管5に1個のNOx触媒10が配置されているのではなく、複数個のNOx触媒が直列に配置された例について説明する。
【0099】
図7は本実施例における内燃機関1とその排気系及び制御系について示した図である。図7においては、上流側NOx触媒11の下流側に下流側NOx触媒12が備えられている。また、上流側NOx触媒11の上流側の排気管5には、上流側NOx触媒11の上流側のNOx濃度を検出する第1NOxセンサ14が備えられている。同様に、上流側NOx触媒11と下流側NOx触媒12との間の排気管5には第2NOxセンサ15が、下流側NOx触媒12の下流側の排気管5には第3NOxセンサ16が備えられている。
【0100】
次に、本実施例におけるSOx被毒再生について説明する。図8には本実施例におけるSOx被毒再生ルーチンである。本ルーチンが実行されると、まずS301において、上流側NOx触媒11及び下流側NOx触媒12におけるSOx吸蔵量が算出される。具体的には、第1NOxセンサ14と第2NOxセンサ15の出力の差から、上流側NOx触媒11におけるSOx吸蔵量を検出する。すなわち、第1NOxセンサ14と第2NOxセンサ15の出力の差から上流側NOx触媒11におけるNOx浄化性能を検出し、さらにNOx浄化性能と相関の高いSOx吸蔵量を検出する。また、同様にして第2NOxセンサ15の出力と、第3NOxセンサ16の出力の差から、下流側NOx触媒12におけるSOx吸蔵量を検出する。S301の処理が終了するとS302に進む。
【0101】
S302においては、SOx被毒再生対象NOx触媒が決定される。具体的にはSOx吸蔵量が、NOx触媒におけるNOx浄化性能の劣化が激しくなると考えられる閾値としての
限界SOx吸蔵量以上であると判断されたNOx触媒について、SOx被毒再生を行うと判断する。例えば、上流側NOx触媒11におけるSOx吸蔵量のみが限界SOx吸蔵量以上であった場合には、上流側NOx触媒11のみが、SOx被毒再生対象NOx触媒となる。S302の処理が終了するとS303に進む。
【0102】
S303においては、S302においてSOx被毒再生対象NOx触媒があったかどうかが判定される。ここで、SOx被毒再生対象NOx触媒がなかった。すなわち、SOx吸蔵量が限界SOx吸蔵量以上であるNOx触媒がなかったと判定された場合には、そのまま本ルーチンを終了する。一方、SOx被毒対象NOx触媒があった場合にはS304に進む。
【0103】
S304においては、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が導出される。すなわち、SOx被毒再生対象NOx触媒と、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量との関係が格納されたマップから、S302で決定されたSOx被毒再生対象NOx触媒に対応する目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量の値を読み出すことによって導出する。換言すると、SOx被毒再生対象NOx触媒が上流側NOx触媒11か、下流側NOx触媒12かによって、各々の場合に適当な目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が導出される。
【0104】
ここで、上記のSOx被毒再生対象NOx触媒と、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量との関係は予め実験的に求められる。この関係については、図4に示した考え方と同様の考え方が適用される。
【0105】
図9は、排気管5に直列に配置された2個のNOx触媒と、それらのNOx触媒において確保が可能な温度及び、目標A/Fを示すグラフである。
【0106】
図9の上側のグラフには、排気管5に直列に配置された2個のNOx触媒と、確保可能温度との関係が示されている。このグラフにおいて、例えば、上流側NOx触媒11については、図4で説明したのと同じ理由により、燃焼A/F=25とした場合は、SOx被毒再生するのに充分な還元剤をNOx触媒10に供給するために、燃料添加弁13から間欠的に供給される還元剤の量を増加させる必要がある。その結果、上流側NOx触媒11において温度の変動が大きくなるので、確保可能温度は低くなってしまう。逆に燃焼A/F=18の場合、燃料添加弁13から間欠的に供給すべき還元剤量は少なくてもすむため、上流側NOx触媒11における温度の変動は小さくなる。その結果、確保可能温度は、燃焼A/F=25の場合と比較して高くなる。
【0107】
一方、下流側NOx触媒12においては、リッチスパイク実行時に燃料添加弁13から間欠的に供給される還元剤の、下流側NOx触媒12の温度の変化に対する影響が上流側NOx触媒11に比較して小さいので、各燃焼A/Fの値について、確保可能温度は高くなり、燃焼A/F=25の場合でも硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を確保することができる。
【0108】
図9の下側に示すグラフは上記のような状態において、上流側NOx触媒11及び下流側NOx触媒12の温度を硫黄分離脱温度(または再生下限温度)以上とするために必要な燃焼A/Fを示した図である。すなわち、上流側NOx触媒11においては、図9の上側のグラフにおいて硫黄分離脱温度(または再生下限温度)以上の温度を確保するためには、燃焼A/Fを18以下にする必要がある。それに対して下流側NOx触媒12においては、温度の変動は小さくなるので、燃焼A/F=25としても、硫黄分離脱温度(または再生下限温度)を確保することができる。
【0109】
このように、図9の下側の図から、SOx被毒再生対象NOx触媒が上流側NOx触媒11である場合、及び下流側NOx触媒12である場合について、それぞれ目標燃焼A/F
を得ることができる。また、目標燃焼A/Fの値が決まると、SOx被毒再生のために必要な還元剤量の値との差分より、燃料添加弁13から単位時間あたりに添加すべき目標還元剤添加量を得ることができる。
【0110】
なお、この説明においては、上流側NOx触媒11と下流側NOx触媒12との熱容量はほぼ同じという前提で説明しているが、これらの熱容量が異なる場合は、その点を考慮に入れて目標燃焼A/Fを導出する必要がある。例えば、下流側NOx触媒12の熱容量が極端に小さい場合には、燃料添加弁13から間欠的に供給される還元剤の、下流側NOx触媒12の温度の変化に対する影響が、必ずしも上流側NOx触媒11の温度の変化に対する影響が小さくならないからである。
【0111】
ここで、説明を図8に戻す。S304において、目標燃焼A/F及び、目標還元剤添加量が導出されると、S305において燃焼A/Fが目標燃焼A/Fとなるべく制御され、S306に進み、燃料添加弁13より、単位時間当たりに目標還元剤添加量に相当する還元剤を、間欠的に添加する。S306の処理が終了すると本ルーチンを一旦終了する。
【0112】
以上、説明したように、本実施例においては、第1NOxセンサ14、第2NOxセンサ15及び、第3NOxセンサ16の出力から、上流側NOx触媒11及び下流側NOx触媒12に吸蔵されたSOxの量を検出し、そこから、SOx被毒再生の対象となるNOx触媒を決定する。そして、SOx被毒再生の対象となるNOx触媒について、その温度が硫黄分離脱温度(または再生限界温度)以上となることを確保できる最低の目標燃焼A/Fを求め、実際の燃焼A/Fが当該目標燃焼A/Fとなるべく制御する。さらにSOx被毒再生可能な最低の量の還元剤を、燃料添加弁13から添加する。
【0113】
従って、複数のNOx触媒を備える内燃機関の排気系において、SOx被毒再生の対象となるNOx触媒の温度が硫黄分離脱温度(または再生限界温度)を下回ることを抑制し、SOx被毒再生効率の低下を抑制することができる。それと同時に、無駄に低い燃焼A/Fに制御することを抑制できるので、SOx被毒再生における燃費の悪化及び、エミッションの悪化を抑制することができる。
【0114】
なお、上記で説明した実施例においては、SOx被毒再生時には、NOx触媒10に対して還元剤としての燃料を供給する例について説明したが、還元剤として燃料以外の例えば尿素などを用いる排気浄化触媒に対して、上記実施例と同様の制御を適用してもよい。また、上記実施例においては、内燃機関1がディーゼル機関である場合について説明したが、内燃機関1がディーゼル機関以外、例えばガソリン機関である場合に、上記実施例と同様の制御を適用してもよい。さらに、上記実施例においては、還元剤は内燃機関1の排気管5に設けられた燃料添加弁13から供給される例について説明したが、還元剤としての燃料がポスト噴射、ビゴム噴射などの副噴射によって供給される場合に対して上記実施例と同様の制御を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施例1における内燃機関と、その排気系及び制御系の概略構成を示す図である。
【図2】NOx触媒における上流側端部をSOx被毒再生する場合と、NOx触媒における下流側の部分をSOx被毒再生する場合とにおける、NOx触媒に導入される排気の空燃比と、燃料添加弁にECUの指令によって送られる添加パルス、上流側端部における温度、下流側の部分における温度とを示したタイムチャートである。
【図3】本発明の実施例1におけるSOx被毒再生ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例1におけるNOx触媒でのSOx被毒再生場所の位置と、その位置で確保が可能な温度及び、目標燃焼A/Fとを示すグラフである。
【図5】本発明の実施例1の別の態様におけるNOx触媒でのSOx被毒再生場所の位置と、その位置で確保が可能な温度、触媒最高温度及び、目標燃焼A/Fとを示すグラフである。
【図6】本発明の実施例2におけるSOx被毒再生ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例3におけるにおける内燃機関と、その排気系及び制御系の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施例3におけるSOx被毒再生ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例3における、SOx被毒再生の対象となるNOx触媒と、そのNOx触媒で確保が可能な温度及び、目標燃焼A/Fとを示すグラフである
【符号の説明】
【0116】
1・・・内燃機関
5・・・排気管
10・・・NOx触媒
11・・・上流側NOx触媒
12・・・下流側NOx触媒
13・・・燃料添加弁
14・・・第1NOxセンサ
15・・・第2NOxセンサ
16・・・第3NOxセンサ
20・・・ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を制御するとともに、前記内燃機関の排気通路に設けられた吸蔵還元型NOx触媒に上流から還元剤を供給することにより、前記吸蔵還元型NOx触媒における硫黄分を除去する排気浄化触媒のSOx被毒再生方法であって、
前記吸蔵還元型NOx触媒において、SOx被毒再生すべき部分を決定するSOx被毒再生部分決定工程と、
前記内燃機関の気筒から排出される排気の空燃比を目標空燃比に制御するとともに、前記SOx被毒再生部分決定工程において決定された前記SOx被毒再生すべき部分に対し、単位時間当たり目標還元剤量の還元剤を間欠的に供給する還元剤供給工程と、を有し、
前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分の位置に応じて、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比及び前記目標還元剤量の値が設定されることを特徴とする排気浄化触媒のSOx被毒再生方法。
【請求項2】
前記SOx被毒再生部分決定工程において決定されたSOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側の所定上流領域内である場合と比較し、前記SOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒における下流側の所定下流領域内である場合は、前記目標空燃比は高く設定されるとともに、前記目標還元剤量は多く設定されることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化触媒のSOx被毒再生方法。
【請求項3】
前記SOx被毒再生部分決定工程においては、前記吸蔵還元型NOx触媒における硫黄分の量が所定硫黄量以上となった部分を、前記SOx被毒再生すべき部分と決定することを特徴とする請求項1または2に記載の排気浄化触媒のSOx被毒再生方法。
【請求項4】
前記目標空燃比の値には上限が設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の排気浄化触媒のSOx被毒再生方法。
【請求項5】
前記SOx被毒再生部分決定工程においてSOx被毒再生すべき部分と決定された部分が複数箇所ある場合には、前記還元剤供給工程における前記目標空燃比及び前記目標還元剤量の値は、前記複数のSOx被毒再生すべき部分のうち、最も上流側に位置する部分に対して設定されるべき値とされることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の排気浄化触媒のSOx被毒再生方法。
【請求項6】
前記SOx被毒再生部分決定工程において決定される前記SOx被毒再生すべき部分が、前記吸蔵還元型NOx触媒における上流側から下流側に順次変更されるとともに、前記SOx被毒再生部分決定工程及び、前記還元剤供給工程が繰り返し実行されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の排気浄化触媒のSOx被毒再生方法。
【請求項7】
前記吸蔵還元型NOx触媒は、前記排気通路に直列に設けられた複数の吸蔵還元型NOx触媒からなる吸蔵還元型NOx触媒群であり、
前記SOx被毒再生部分決定工程においては、前記SOx被毒再生すべき部分として、前記複数の吸蔵還元型NOx触媒のうち、SOx被毒再生すべき吸蔵還元型NOx触媒が決定されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の排気浄化触媒のSOx被毒再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−161789(P2006−161789A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358829(P2004−358829)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】