説明

排水処理システムおよび排水処理方法

【課題】原水から上澄水を引き抜く場合にも膜ろ過される原水の水量を減らさず、かつ、膜の目詰まりを防止することが可能な排水処理システムおよび排水処理方法を提供する。
【解決手段】上澄水引抜きポンプ150が駆動され、無酸素槽10内の原水のうち上澄水が引き抜かれる。当該上澄水は配管154を流れ、配管154の注入口156から凝集剤が添加された後、ラインミキサ90で混合され、さらに配管154を流れて、最初沈殿池70に返送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理システムおよび排水処理方法に係り、特に膜ろ過により処理水を得る膜分離活性汚泥法を利用した排水処理システムおよび排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業排水や下水等の処理システムでは膜分離活性汚泥法が用いられている。膜分離活性汚泥法とは、生物反応槽内で活性汚泥を利用した生物反応処理によって原水を処理し、生物反応槽内に浸漬した膜エレメントで、処理した原水をろ過することにより処理水(膜ろ過水)を得るものである。この方法は、固液分離の手法として膜ろ過を採用しているため、処理水への濁質分の流出を防ぐことができ、かつ大腸菌も完全に除去できることから、衛生的でかつ透明度の高い処理水を安定して得ることができるという特徴を持っている。また、活性汚泥の高濃度保持が可能であるため、処理時間の短縮および処理施設のコンパクト化を図ることができる。
【0003】
このように、膜分離活性汚泥法は非常に利点の多い処理法であるが、膜の目詰まりという大きな問題を抱えている。特にフロックを形成していない微細な汚泥、生物の代謝物などの高分子有機物が目詰まりを起こす原因となる。この目詰まりが膜の運転の安定性の維持を損ない、また、単位面積当たりのろ過量(Flux)を限定する要因となっている。
【0004】
この問題を解決するため、間欠的/一時的に生物反応槽内で活性汚泥を沈殿させ、微細な汚泥等が含まれる上澄水を引き抜くことで、ろ過処理の向上を図り、膜の運転の安定性を確保し、また、膜の単位面積あたりのろ過流量(Flux)を向上させ、または低下させない方法が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
生物反応槽から引き抜いた上澄水には、沈降速度の遅い微細な汚泥、フロックを形成していない微生物および/または微生物群、および汚泥に取り込まれていない、微生物代謝物である有機性高分子が含まれている。これらが再び生物反応槽に流入して膜に到達することによる膜ろ過への悪影響を鑑みて、特許文献1においては、生物反応槽から引き抜いた上澄水は排水処理システムの系外へ排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−141874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、原水流量の一部を上澄水として引き抜いて排水処理システムの系外に排出すると、上澄水として引き抜いた水量だけ膜ろ過される水量は減少することとなる。したがって、膜分離活性汚泥法を適用する目的が処理水の再利用にある場合、再利用できる水量が減少してしまうという問題があった。
【0008】
すなわち、膜分離活性汚泥法による膜ろ過の目的が排水の浄化処理のみであり、処理水を河川、海洋などの環境中に放流するため処理水の用途が特段にないというのであれば、膜ろ過の水量の減少は特に問題とならない。また、引き抜いた上澄水は生物処理を施した後の上澄水であるため、環境中に放流することに水質上の問題も特に生じない。しかしながら、通常の活性汚泥法よりも処理水の水質が非常によいという膜分離活性汚泥法の特徴を生かして、膜ろ過した処理水を再利用する場合、特に再利用のためにNF膜(Nanofiltration Membrane)やRO膜(Reverse Osmosis Membrane)による膜ろ過を行う場合には、膜ろ過水量が減少することはそのまま再利用水量が減少することとなる。
【0009】
引き抜いた上澄水を系外の環境中に放流せずに、排水処理システム内に返送すれば膜ろ過水量の減少は防ぐことができる。しかし、上澄水の中に含まれて排出された、沈降速度の遅い微細な汚泥、フロックを形成していない微生物および/または微生物群、および汚泥に取り込まれていない、微生物代謝物である有機性高分子が、再び生物反応槽に流入してしまうため、膜に到達してしまうこととなり、膜ろ過への悪影響が生じる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、原水から上澄水を引き抜く場合にも膜ろ過される原水の水量を減らさず、かつ、膜の目詰まりを防止することが可能な排水処理システムおよび排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る排水処理システムは、活性汚泥を利用して原水を処理し膜ろ過により処理水を分離する生物反応槽と、該生物反応槽の前段に設けられ該生物反応槽に原水を直接または間接に供給する1または複数の最初沈殿池とを備えた排水処理システムであって、前記生物反応槽内の上澄水を引き抜く上澄水引抜き手段と、前記上澄水引抜き手段により引き抜かれた上澄水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、前記凝集剤添加手段により凝集剤が添加された上澄水を混合する混合手段と、前記混合手段により混合された上澄水を前記1または複数の最初沈殿池のうち少なくとも1つに返送する上澄水返送手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、排水処理システムは、生物反応槽内の上澄水を引き抜き、該引き抜かれた上澄水に凝集剤を添加して混合し、該混合された上澄水を、生物反応槽の前段に設けられた1または複数の最初沈殿池のうち少なくとも1つに返送するため、原水から上澄水を引き抜く場合にも膜ろ過される原水の水量を減らさず、かつ、膜の目詰まりを防止することができる。
【0013】
また、前記排水処理システムにおいて、前記上澄水返送手段は、前記生物反応槽と前記上澄液の返送先となる最初沈殿池とを連結する配管を含み、前記凝集剤添加手段および前記凝集剤混合手段は、前記配管の途中に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、配管内で簡易に上澄水に凝集剤を添加して混合することができる。
【0014】
本発明に係る排水処理方法は、活性汚泥を利用して原水を処理し膜ろ過により処理水を分離する生物反応槽と、該生物反応槽の前段に設けられ該生物反応槽に原水を直接または間接に供給する1または複数の最初沈殿池とを備えた汚水処理システムが行う汚水処理方法であって、前記生物反応槽内の上澄水を引き抜く上澄水引抜きステップと、前記上澄水引抜きステップにおいて引き抜かれた上澄水に凝集剤を添加する凝集剤添加ステップと、前記凝集剤添加ステップにおいて凝集剤が添加された上澄水を混合する混合ステップと、前記混合ステップにおいて混合された上澄水を前記1または複数の最初沈殿池のうち少なくとも1つに返送する上澄水返送ステップとを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る排水処理方法は、前記上澄水返送ステップにおいて、前記生物反応槽内の上澄水は、前記生物反応槽と前記上澄液の返送先となる最初沈殿池とを連結する配管によって返送され、前記凝集剤添加ステップにおいて、前記凝集剤は前記配管の途中に設けられた注入口から注入され、前記凝集剤混合ステップにおいて、前記配管の前記注入口の下流に設けられたミキサが前記凝集剤が添加された上澄水を混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排水処理システムは、生物反応槽内の上澄水を引き抜き、該引き抜かれた上澄水に凝集剤を添加して混合し、該混合された上澄水を、前記生物反応槽の前段に設けられた1または複数の最初沈殿池のうち少なくとも1つに返送するため、原水の上澄水を引き抜く場合にも、膜ろ過処理により再利用される処理水の量を減らすことなく、かつ、膜の目詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の一実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。
【図2】同実施形態に係る排水処理システムが行う膜分離活性汚泥法による上澄水引抜き工程を示すフロー図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。
【図4】同実施形態に係る排水処理システムが行う上澄水引抜き工程を示すフロー図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。
【図6】同実施形態に係る排水処理システムが行う上澄水引抜き工程を示すフロー図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の一実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。同図に示すように、排水処理システムは、流量調整槽80と最初沈殿池70と生物反応槽100とを備え、工場や家庭から排出された産業排水や下水が、有機性の原水としてこの順序で通水される。
【0019】
生物反応槽100は、無酸素槽10と好気槽20と膜分離槽30とで構成される。無酸素槽10は、無酸素条件下で原水に含まれる活性汚泥中の脱窒菌によって脱窒処理が行われ、硝酸や亜硝酸は窒素ガスと水とに分解される。無酸素槽10の底部には、原水を撹拌して生物反応を促進する無酸素槽撹拌装置120が設置されている。
【0020】
好気槽20は、好気条件下で活性汚泥にリンが取り込まれるとともに、活性汚泥中の硝化菌によって硝化処理が行われる。好気槽20の底部には、原水に空気を供給するために気泡を発生させる好気槽曝気装置170が設けられている。
【0021】
膜分離槽30の内部には、固液分離用の膜40が設置されている。膜40は、膜ろ過水(処理水)と汚泥とを分離し、分離した膜ろ過水を回収して再利用する。この膜40の形状は、平膜、中空糸、チューブラー、モノリスのいずれでもよく、またその材質もPVDFやPAN、CAなどの有機素材でも、またセラミック、金属などの無機素材でもよい。
【0022】
膜分離槽30の底部には、気泡を発生させて膜40を洗浄する膜洗浄散気装置110と、余剰汚泥180を引き抜くための不図示のバルブ等の開閉装置を含む配管とが設けられている。
【0023】
膜分離槽30と無酸素槽10とは汚泥循環のための配管130で接続されており、当該配管には汚泥循環ポンプ145が設けられている。膜分離槽30内の原水は、当該配管を介して膜分離槽30から無酸素槽10へ返送され、再処理される。
【0024】
無酸素槽10と最初沈殿池70とは配管154で連結されている。無酸素槽10の内側に突出している配管154の先端部分には、上澄水を流入させるポート152が設けられている。配管154の無酸素槽10外側部分には、上澄水引抜きバルブ160と、上澄水引抜きポンプ150と、ラインミキサ90と、凝集剤60を配管154内に注入する注入口156とが設けられている。上澄水引抜きポンプ150は、ポート152および配管154を介して、無酸素槽10内の上澄水を吸引し、最初沈殿池70に送水する。上澄水引抜きバルブ160は、開閉されることにより、無酸素槽10から最初沈殿池70への上澄水流入の開始および停止を制御する。注入口156は、上澄水が配管154を流れている時に凝集剤60を注入する開口である。ラインミキサ90は、注入口156の下流に設けられており、配管154を流れる無酸素槽10からの上澄水と注入口156から注入された凝集剤60とを混合する。
【0025】
また、排水処理システムには、膜40、汚泥循環ポンプ145、上澄水引抜きポンプ150、ラインミキサ90、無酸素槽撹拌装置120、好気槽曝気装置170、膜洗浄散気装置110等の運転やバルブ開閉を制御するための制御部200も設けられている。
【0026】
ここで、ポート152と上澄水引抜きポンプ150と上澄水引抜きバルブ160とが、上澄水引抜き手段を構成する。なお、上澄水引抜きポンプ150を設置または使用せずに、上澄水引抜きバルブ160のみで上澄水引抜き手段を構成してもよい。この場合には、水位差を利用して、上澄水引抜きバルブ160の開閉のみで上澄水を引き抜くこととなる。また、凝集剤60の注入口156は凝集剤添加手段を構成し、ラインミキサ90は混合手段を構成する。
【0027】
添加する凝集剤60は、特に制限はなく、塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、ポリ硫酸第二鉄などの無機系凝集剤、ポリアクリルアミド系などの有機高分子系の凝集剤、キトサン、ポリグルタミン酸などを用いた生分解性の凝集剤などの中から当該施設の上澄水中に含まれる物質に適合したものを選定すればよい。また、凝集剤60を添加する前または同時にpH調整を行うための酸、アルカリなどの薬剤を同時に添加してもよい。
【0028】
なお、上澄水の引抜きは、粘度、粒度分布、ろ過比抵抗、上澄水透視度、上澄水濁度、処理水色度、TOCなどの汚泥性状を、汚泥性状測定装置を用いてモニタリングし、その汚泥性状の値がある値となった際に行ってもよく、またタイマー設定により定期的に行ってもよい。
【0029】
上記構成の排水処理システムにおいて、通常運転時には、工場や家庭から排出された産業排水や下水としての有機性の原水が、流量調整槽80に流入する。流量調整槽80では、最初沈殿池70に流入させる原水の流量が調整され、流量調整槽80から最初沈殿池70に原水が流入する。最初沈殿池70からオーバーフローした原水140は、無酸素槽10に流入する。
【0030】
無酸素槽10では無酸素条件下で脱窒処理が行われる。無酸素槽10から汚泥は好気槽20に流れ、好気槽20では好気条件下で硝化処理が行われる。好気槽20から汚泥は膜分離槽30に流れ、膜分離槽30では膜40で固液が分離される。分離された膜ろ過水は回収され再利用される。一方、分離された汚泥は循環汚泥として配管130を通じて無酸素槽10に戻され、排水処理システムの系内を循環する。また、余剰汚泥180の引抜きが行われる。
【0031】
図2は、本実施形態に係る排水処理システムが行う膜分離活性汚泥法による上澄水引抜き工程を示すフロー図である。上述した通常のろ過運転(ステップS101)中に上澄水引抜き工程を開始する場合、制御部200により、原水140の流入停止、無酸素槽10の無酸素槽撹拌装置120による撹拌停止、および汚泥循環停止を行い(ステップS102)、無酸素槽10中の原水を静置して汚泥を沈殿させる(ステップS103)。
【0032】
一定期間、無酸素槽10を静置して汚泥を沈殿させた後、上澄水引抜きポンプ150を駆動させて、ポート152を介して配管154へ上澄水を引き抜く(ステップS104)。引き抜く上澄水は上澄水の全量でなくてもよく、また、場合によっては、一部沈殿した汚泥の上部の汚泥を含んでいてもよい。
【0033】
次に、この引き抜かれて配管154中を流れる上澄水に、配管154の注入口156から凝集剤60を添加し(ステップS105)、凝集剤60が添加された上澄水をラインミキサ90で混合し(ステップS106)、これを最初沈殿池70に返送する(ステップS107)。
【0034】
上澄水の返送終了後、原水140の流入、無酸素槽撹拌装置120による撹拌および汚泥循環を再開することにより(ステップS108)、上澄水引抜き工程を終了し、通常運転に戻る(ステップS109)。
【0035】
このように、無酸素槽10から引き抜いた上澄水を排水処理システムの系外に排出せずに最初沈殿池70に返送することによって、引き抜いた上澄水を膜分離槽30で膜ろ過することができる。このため、排水処理システムから回収される膜ろ過水の量を減じることなく、上澄水の引抜きが可能となる。また、凝集剤60を添加された上澄水中に含まれる、膜ろ過の安定性を損なう沈降速度の遅い微細な汚泥、フロックを形成していない微生物および/または微生物群、および汚泥に取り込まれていない、微生物代謝物である有機性高分子は、粗大化して最初沈殿池70に沈殿することで、最初沈殿池70にて除去される。また、最初沈殿池70で除去しきれなかったものは無酸素槽10中の活性汚泥に取り込まれるため、これらが膜40に接触することによって膜40が目詰まりすることがなく、安定運転が損なわれることがない。
【0036】
なお、凝集剤添加手段および混合手段として、撹拌機構のある凝集剤混和槽を用いてもよいが、最初沈殿池70でフロックが完全に沈降せずとも、無酸素槽10、好気槽20または膜分離槽30中の活性汚泥に取り込まれればよいため、フロックを最初沈殿池70で完全に沈殿するほど粗大化する必要がない。そのため、凝集剤60は配管154中に注入し、ラインミキサ90で十分に混和さえすればよく、粗大フロック化する必要はない。また、上澄水にのみ凝集剤60を添加するため、凝集対象は上澄水に含まれる数10〜数100mg/Lのわずかな量の沈降速度の遅い微細な汚泥、フロックを形成していない微生物および/または微生物群、および汚泥に取り込まれていない、微生物代謝物である有機性高分子となり、凝集剤60の添加量は、生物反応槽100へ直接添加する場合よりも大幅に少なくてよい。
【0037】
また、上澄水の返送先は、最初沈殿池70の容量によっては流量調整槽80でもよく、流量調整槽80を沈殿池の代替として使用することも可能である。また、最初沈殿池70と流量調整槽80との両方に上澄水を返送することも可能である。
【0038】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、無酸素槽10からではなく、好気槽20から上澄水を引き抜いている点である。したがって、本実施形態では、上澄水を引き抜くための配管154およびポート152が、無酸素槽10ではなく、好気槽20に設けられている。
【0039】
図4は、本実施形態に係る排水処理システムが行う上澄水引抜き工程を示すフロー図である。通常運転(ステップS101)中に上澄水引抜き工程を開始する場合、制御部200により、原水140の流入、汚泥循環および好気槽20の好気槽曝気装置170を停止し(ステップS202)、好気槽20内の原水を静置して汚泥を沈殿させる(ステップS203)。ステップS104からステップS107までの処理は、第1の実施形態と同様である。ステップS208においては、原水140の流入、汚泥循環、および好気槽曝気装置170による曝気を再開することにより、上澄水引抜き工程を終了し、通常運転に戻る(ステップS109)。
【0040】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、無酸素槽10からではなく、膜分離槽30から上澄水を引き抜いている点である。したがって、本実施形態では、上澄水を引き抜くための配管154およびポート152が膜分離槽30に設けられている。
【0041】
図6は、本実施形態に係る排水処理システムが行う上澄水引抜き工程を示すフロー図である。通常運転(ステップS101)中に上澄水引抜き工程を開始する場合、制御部200により、原水140の流入、汚泥循環、余剰汚泥180の引抜き、膜分離槽30の膜洗浄散気装置110および膜分離槽30の膜40によるろ過を停止し(ステップS302)、膜分離槽30内の原水を静置して汚泥を沈殿させる(ステップS303)。ステップS104からステップS107までの処理は第1の実施形態と同様である。ステップS308においては、原水140の流入、汚泥循環、余剰汚泥180の引抜き、膜分離槽30の膜洗浄散気装置110および膜分離槽30の膜40によるろ過を再開することにより、上澄水引抜き工程を終了し、通常運転に戻る(ステップS109)。
【0042】
以上の第2の実施形態および第3の実施形態に示したように、上澄水引抜き手段を構成する配管154およびポート152は、生物反応槽100を構成する無酸素槽10、好気槽20および膜分離槽30のどの槽でも設けることができる。
【0043】
(第4の実施形態)
図7は、第4の実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、好気槽20が構成要素となっておらず、本実施形態に係る膜分離槽30が第1及び第3の実施形態に係る好気槽20および膜分離槽30の役割を果たしている点である。その他の装置構成及び上澄水引抜き工程は第1の実施形態と同様である。
【0044】
(第5の実施形態)
図8は、第5の実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、膜分離槽30が構成要素となっておらず、膜40がケーシングに収められて、好気槽20外に設置されているサイドストリーム型となっている点である。その他の装置構成及び上澄水引抜き工程は第1及び第3の実施形態と同様である。
【0045】
(第6の実施形態)
図9は、第6の実施形態に係る排水処理システムの装置系統図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、上澄み水引抜き手段が、水上に浮かべたフロート型の引抜きポンプ158で構成されている点である。その他の装置構成及び上澄水引抜き工程は第1の実施形態と同様である。
なお、上澄み水引抜き手段は、1または複数のポート152と、1または複数のフロート型の引抜きポンプ158とを組み合わせたもので構成されていてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、生物反応槽100の前段には流量調整槽80および最初沈殿池70が設けられているとして説明したが、これに限定されることはなく、生物反応槽100の前段に2つ以上の沈殿池70が設けられていてもよい。この場合には、2つ以上の沈殿池70のうち、少なくとも1つの沈殿池70に上澄水を返送するようにすればよい。
【符号の説明】
【0047】
10………無酸素槽、20………好気槽、30………膜分離槽、40………膜、60………凝集剤、70………最初沈殿池、80………流量調整槽、90………ラインミキサ、100………生物反応槽、110………膜洗浄散気装置、120………無酸素槽撹拌装置、130………配管、140………原水、145………汚泥循環ポンプ、150………上澄水引抜きポンプ、152………ポート、154………配管、156………注入口、158………フロート型の引抜きポンプ、160………上澄水引抜きバルブ、170………好気槽曝気装置、180………余剰汚泥、200………制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥を利用して原水を処理し膜ろ過により処理水を分離する生物反応槽と、該生物反応槽の前段に設けられ該生物反応槽に原水を直接または間接に供給する1または複数の最初沈殿池とを備えた排水処理システムであって、
前記生物反応槽内の上澄水を引き抜く上澄水引抜き手段と、
前記上澄水引抜き手段により引き抜かれた上澄水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、
前記凝集剤添加手段により凝集剤が添加された上澄水を混合する混合手段と、
前記混合手段により混合された上澄水を前記1または複数の最初沈殿池のうち少なくとも1つに返送する上澄水返送手段と
を備えたことを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
前記上澄水返送手段は、前記生物反応槽と前記上澄液の返送先となる最初沈殿池とを連結する配管を含み、
前記凝集剤添加手段および前記凝集剤混合手段は、前記配管の途中に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
活性汚泥を利用して原水を処理し膜ろ過により処理水を分離する生物反応槽と、該生物反応槽の前段に設けられ該生物反応槽に原水を直接または間接に供給する1または複数の最初沈殿池とを備えた汚水処理システムが行う汚水処理方法であって、
前記生物反応槽内の上澄水を引き抜く上澄水引抜きステップと、
前記上澄水引抜きステップにおいて引き抜かれた上澄水に凝集剤を添加する凝集剤添加ステップと、
前記凝集剤添加ステップにおいて凝集剤が添加された上澄水を混合する混合ステップと、
前記混合ステップにおいて混合された上澄水を前記1または複数の最初沈殿池のうち少なくとも1つに返送する上澄水返送ステップと
を備えたことを特徴とする排水処理方法。
【請求項4】
前記上澄水返送ステップにおいて、前記生物反応槽内の上澄水は、前記生物反応槽と前記上澄液の返送先となる最初沈殿池とを連結する配管によって返送され、
前記凝集剤添加ステップにおいて、前記凝集剤は前記配管の途中に設けられた注入口から注入され、
前記凝集剤混合ステップにおいて、前記配管の前記注入口の下流に設けられたミキサが前記凝集剤が添加された上澄水を混合することを特徴とする請求項3に記載の排水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−20236(P2012−20236A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160336(P2010−160336)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】