説明

排水処理装置

【課題】乳脂肪分および牛糞尿を含んだ排水を適切に浄化処理できる排水処理装置を提供する。
【解決手段】排水処理装置1は、浮上乳脂肪分を排水とともに吸込口部17から吸い込んでセラミック18と接触させて乳化水溶液にして吐出口部19から吐き出す水中ポンプ手段21を配置した第1処理槽11を備える。曝気手段26を配置した第2処理槽12は、第1処理槽11からの排水を好気性微生物にて処理する。第3処理槽13は、第2処理槽12からの排水を藍藻類にて処理する。曝気手段35および活性化石炭33,34を配置した第4処理槽14は、第3処理槽13からの排水を活性化石炭33,34にて処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳脂肪分および牛糞尿を含んだ排水を適切に浄化処理できる排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば牛等の家畜の畜舎からの尿を含む排水が流入される反応槽と、この反応槽に流入された排水を35℃〜65℃に加温して排水中に含まれる微生物により醗酵させて有機物を分解するための加温手段と、活性炭等の吸着剤が配置され反応槽から流入された排水中の有機物を吸着除去する吸着槽とを備える排水処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−15296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような排水処理装置では、牧場等においてミルキングパーラー等から排出される乳脂肪分および牛糞尿等を含んだ排水(パーラー排水等)の浄化処理が不十分となる問題がある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、乳脂肪分および牛糞尿を含んだ排水を適切に浄化処理できる排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の排水処理装置は、乳脂肪分および牛糞尿を含んだ排水を浄化処理する排水処理装置であって、水中ポンプの作動により浮上乳脂肪分を排水とともに吸込口部から吸い込んで界面活性機能を有するセラミックと接触させて乳化水溶液にしてこの乳化水溶液を吐出口部から吐き出す水中ポンプ手段が配置された第1処理槽と、曝気手段が配置され、前記第1処理槽からの排水を好気性微生物にて処理する第2処理槽と、この第2処理槽からの排水を藍藻類にて処理する第3処理槽と、曝気手段および活性化石炭が配置され、前記第3処理槽からの排水を活性化石炭にて処理する第4処理槽とを備えるものである。
【0006】
請求項2記載の排水処理装置は、請求項1記載の排水処理装置において、第2処理槽には、好気性微生物を活性化する活性液を供給する活性液供給手段が配置されているものである。
【0007】
請求項3記載の排水処理装置は、請求項1または2記載の排水処理装置において、少なくとも第3処理槽を覆う透明ハウスを備えるものである。
【0008】
請求項4記載の排水処理装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の排水処理装置において、第2処理槽内の曝気手段および第4処理槽内の曝気手段は、いずれも間欠曝気を行うものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、浮上乳脂肪分を乳化水溶液にして吐き出す水中ポンプ手段が配置された第1処理槽と、曝気手段が配置され第1処理槽からの排水を好気性微生物にて処理する第2処理槽と、第2処理槽からの排水を藍藻類にて処理する第3処理槽と、曝気手段および活性化石炭が配置され第3処理槽からの排水を活性化石炭にて処理する第4処理槽とを備えるため、乳脂肪分および牛糞尿を含んだ排水を適切に浄化処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の排水処理装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1において、1は排水処理装置で、この排水処理装置1は、牧場等においてミルキングパーラー等から排出される乳脂肪分および牛糞尿を含んだ排水(パーラー排水等)を浄化処理するものである。
【0012】
排水処理装置1は、流入管2から流入される排水(乳脂肪分および牛糞尿等を含んだもの)を一旦貯留し、浄化処理後の排水を処理済水として流出管3から流出する槽本体4を備えている。
【0013】
槽本体4は、例えば3枚の仕切板5,6,7にて仕切られて形成された4つの槽、すなわち上流から下流に向って順に、第1処理槽(セラミック接触循環槽)11、第2処理槽(曝気槽)12、第3処理槽(沈殿槽)13および第4処理槽(活性化石炭接触曝気槽)14を有している。第1処理槽11と第2処理槽12とは連通管8にて連通され、第2処理槽12と第3処理槽13とは連通管9にて連通され、第3処理槽13と第4処理槽14とは連通管10にて連通されている。
【0014】
第1処理槽11は、流入管2からの排水を受け入れて貯留し、排水中の乳脂肪分を浮上分離するものである。第1処理槽11には、水中ポンプ16の作動により浮上乳脂肪分を排水とともに吸込口部17から吸い込んで界面活性機能を有するセラミック18と接触させて乳化水溶液にしてこの乳化水溶液を吐出口部19から吐き出す水中ポンプ手段21が配置されている。
【0015】
水中ポンプ手段21は、第1処理槽11に貯留された排水中に位置する水中ポンプ16と、水中ポンプ16に接続され吸込口部17を有する吸込側配管22と、水中ポンプ16に接続され吐出口部19を有する吐出側配管23と、吐出側配管23の途中に設けられ浮上乳脂肪分および排水と接触してこれら浮上乳脂肪分および排水を乳化水溶液にする界面活性機能を有するセラミック18とを備えている。セラミック18は、例えば活性化石炭等を利用してつくったもので、吐出側配管23の途中に脱着可能に装着された収容体(カーロリッジ)内に収容されている。
【0016】
第2処理槽12は、第1処理槽11からの排水を受け入れて貯留し、この貯留した排水を好気性微生物にて生物学的に処理するものである。第2処理槽12には、第2処理槽12に貯留された排水に空気を供給する曝気手段26、すなわち例えば多数の孔が形成されたエアー散気管27が配置されており、このエアー散気管27にエアー配管28が接続され、このエアー配管28にエアーポンプ29が接続されている。エアー配管28の途中にエアー調整用のエアーバルブ30が設けられている。また、第2処理槽12には、第2処理槽12に貯留された排水に好気性微生物を活性化する活性液(pH調整剤等)を供給する液タンク等の活性液供給手段31が配置されている。
【0017】
第3処理槽13は、第2処理槽12からの排水を受け入れて貯留し、この貯留した排水を第3処理槽13内で繁殖する藍藻類にて生物学的に処理するものである。
【0018】
第4処理槽14は、第3処理槽13からの排水を受け入れて貯留し、この貯留した排水を活性化石炭33,34にて吸着処理するものである。第4処理槽14には、第4処理槽14に貯留された排水に空気を供給する曝気手段35、すなわち例えば多数の孔が形成されたエアー散気管36が配置されており、このエアー散気管36にエアー配管37が接続され、このエアー配管37が第2処理槽12内のエアー散気管27に接続したエアー配管28の途中に接続され、このエアー配管37の途中にエアー調整用のエアーバルブ38が設けられている。また、第4処理槽14には、粒子径3〜5cmの大粒状の活性化石炭33がエアー散気管36の上方に配置され、この大粒状の活性化石炭33の上方に粒子径0.5〜1cmの小粒状の活性化石炭34が配置されている。
【0019】
なお、図示しないタイマ機能等を有する制御手段によってエアーポンプ29が制御されることにより、第2処理槽12内の曝気手段26および第4処理槽14内の曝気手段35はいずれも間欠曝気を行う。すなわち例えばエアーポンプ29は、予め設定された設定時間(例えば2時間〜16時間)が経過する度にオン・オフする。
【0020】
また、排水処理装置1は、図2に示すように、少なくとも第3処理槽13を覆う透明ハウス、すなわち例えば槽本体4全体を覆う透明ハウス41を備えている。このため、第3処理槽13では、四季の変化に拘わらず、水温調整および太陽光により藍藻類の成育に適した状態に設定され、高濃度の有機物(BOD、COD、SS、リン、窒素等)が有効に除去される。なお、図示しないが、上面開口状の第3処理槽13のみを透明ハウスで覆うようにしてもよい。
【0021】
次に、上記一実施の形態の作用等を説明する。
【0022】
乳脂肪分および牛糞尿を含んだ排水(パーラー排水等)が流入管2を流れて第1処理槽11に流入すると、この第1処理槽11では、排水中の乳脂肪分が水面に浮上して分離される。
【0023】
水中ポンプ手段21の水中ポンプ16の作動時には、浮上乳脂肪分が排水とともに吸込口部17から吸い込まれ、セラミック18と接触して乳化水溶液になり、この乳化水溶液が吐出口部19から吐き出される。このため、水面上の浮上乳脂肪分の腐敗が防止されるとともに、次工程で微生物分解され易い状態になる。
【0024】
そして、排水が連通管8を流れて第2処理槽12に流入すると、この第2処理槽12では、排水中の有機物が好気性微生物にて生物学的に分解処理される。エアー散気管27による空気供給と、活性液供給手段31による活性液供給とにより、好気性微生物の活性化が促進される。
【0025】
次いで、排水が連通管9を流れて第3処理槽13に流入すると、この第3処理槽13では、排水中の有機物が藍藻類にて生物学的に分解処理される。第3処理槽13では、藍藻類に属する藻類の成育条件がつくられるので、日中太陽光が差し込むにより、藻類が育ち、この藻類による分解が排水基準に近い状態まで行われる。
【0026】
続いて、排水が連通管10を流れて第4処理槽14に流入すると、この第4処理槽14では、活性化石炭33,34にて吸着処理される。すなわち、第3処理槽13で排水基準に近い状態まで浄化処理されるが、リンおよび窒素が残存量が高いので、粒子径の異なる活性化石炭33,34を備え、全水接触曝気を行うことにより、BOD、COD、SS、リンおよび窒素等の排水基準内の排水放流が可能となる。なお、活性化石炭33,34は、微生物培養基で、定期的に活性化石炭33,34に培養されたバイオフレームに吸着されたリンを容易に回収可能である。
【0027】
そして、この排水処理装置1によれば、浮上乳脂肪分を乳化水溶液にして吐き出す水中ポンプ手段21が配置された第1処理槽11と、曝気手段26および活性液供給手段31が配置され第1処理槽11からの排水を好気性微生物にて処理する第2処理槽12と、第2処理槽12からの排水を藍藻類にて処理する第3処理槽13と、曝気手段35および活性化石炭33,34が配置され第3処理槽13からの排水を活性化石炭33,34にて処理する第4処理槽14とを備えるため、大型の排水設備を必要とすることなく、乳脂肪分および牛糞尿を含んだ排水を適切に浄化処理できる。
【0028】
なお、排水処理装置1の流入管2から槽本体4内に流入する生牛乳、掬取ミルク等の含有物濃度は、一般排水とは比べものにならないほど高濃度である。その他流入する洗浄水および牛糞尿が混入し、その対比は全乳1:他の排水20〜30である。そして、例えば排水処理装置1を使用して排水処理した場合、第1処理槽11での水質がBOD2800mg/L、窒素170mg/L、リン49mg/Lで、第2処理槽12での水質がBOD660mg/L、窒素130mg/L、リン46mg/Lで、第3処理槽13での水質がBOD80mg/L、窒素23mg/L、リン22mg/Lで、第4処理槽14での水質がBOD8.2mg/L、窒素17mg/L、リン17mg/Lであった。
【0029】
なお、図1において2点鎖線で示すように、活性化石炭33,34による処理後の排水を消毒する消毒器50を第4処理槽14内に配置してもよい。また、例えば第4処理槽14の下流に、活性化石炭33,34による処理後の排水を消毒する第5処理槽(消毒槽)を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係る排水処理装置の概略断面図である。
【図2】同上排水処理装置の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 排水処理装置
11 第1処理槽
12 第2処理槽
13 第3処理槽
14 第4処理槽
16 水中ポンプ
17 吸込口部
18 セラミック
19 吐出口部
21 水中ポンプ手段
26 曝気手段
31 活性液供給手段
33,34 活性化石炭
35 曝気手段
41 透明ハウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳脂肪分および牛糞尿を含んだ排水を浄化処理する排水処理装置であって、
水中ポンプの作動により浮上乳脂肪分を排水とともに吸込口部から吸い込んで界面活性機能を有するセラミックと接触させて乳化水溶液にしてこの乳化水溶液を吐出口部から吐き出す水中ポンプ手段が配置された第1処理槽と、
曝気手段が配置され、前記第1処理槽からの排水を好気性微生物にて処理する第2処理槽と、
この第2処理槽からの排水を藍藻類にて処理する第3処理槽と、
曝気手段および活性化石炭が配置され、前記第3処理槽からの排水を活性化石炭にて処理する第4処理槽と
を備えることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
第2処理槽には、好気性微生物を活性化する活性液を供給する活性液供給手段が配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
少なくとも第3処理槽を覆う透明ハウスを備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の排水処理装置。
【請求項4】
第2処理槽内の曝気手段および第4処理槽内の曝気手段は、いずれも間欠曝気を行う
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の排水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−93650(P2008−93650A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311868(P2006−311868)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(304012415)株式会社ピートラップ (3)
【出願人】(506310050)株式会社アクト (16)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】