接合方法およびこの方法により作成されるデバイス、接合装置並びにこの方法により接合される基板
【課題】両基板の接合面間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して当該空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる技術を提供する。
【解決手段】蓋基板807およびデバイス基板808に形成された外周接合部831bどうしを加圧して仮接合することで、両基板807,808の接合面間に外周接合部831bによって囲まれる空間に所定の雰囲気を封入できる。したがって、当該空間内の所定の雰囲気中で加圧することにより両基板807,808の内部接合部831aどうしの本接合を確実に行うことができるので、両基板807,808の接合面間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入するとともに、この空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる。
【解決手段】蓋基板807およびデバイス基板808に形成された外周接合部831bどうしを加圧して仮接合することで、両基板807,808の接合面間に外周接合部831bによって囲まれる空間に所定の雰囲気を封入できる。したがって、当該空間内の所定の雰囲気中で加圧することにより両基板807,808の内部接合部831aどうしの本接合を確実に行うことができるので、両基板807,808の接合面間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入するとともに、この空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板本体の表面に形成された金属からなる接合部を有する基板どうしを接合する接合技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイス、またはデバイスの電極等が酸化などの理由で劣化するのを防止するため、これらのデバイスの本体部が形成されたデバイス基板を蓋状部材で被覆して該デバイス基板上のデバイスのデバイス回路の動作部分や振動部分などの本体部を外部の雰囲気から遮蔽する技術が知られている。例えば、特許文献1には、外部の雰囲気から遮蔽すべきデバイスの本体部が設けられたデバイス基板の接合面にデバイスの本体部を囲んで輪郭状に金属接合部を盛上げて形成し、この金属接合部に蓋となる蓋基板を接合することでデバイスの本体部を外部の雰囲気から遮蔽する技術が開示されている。すなわち、不活性ガスや真空といった所定の雰囲気中でデバイス基板と蓋基板とを接合すれば、両基板の接合面間に金属接合部によってデバイスの本体部を輪郭状に囲んで形成された空間に当該所定の雰囲気を封入してデバイスの本体部を外部の雰囲気から遮蔽することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−191556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来技術では、デバイス基板の接合面に形成された金属接合部と、蓋基板の接合面に形成された金属接合部とを、原子ビーム、イオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で表面活性化した後、当該金属接合部どうしを接触させて、両基板どうしを重ね合わせた状態で加圧することで接合している。例えば、デバイス基板上に複数のデバイスの本体部が形成され、該複数のデバイスの本体部のそれぞれを囲むように複数の輪郭状の金属接合部が形成されたデバイス基板と蓋基板とを接合する場合には、重ね合わされた両基板を全面にわたって均一に加圧することで、当該デバイス基板の複数の金属接合部と蓋基板の金属接合部とを接合することができる。
【0005】
このとき、両基板の接合面間に金属接合部によってデバイスの本体部を囲んで形成された空間内部の雰囲気と外部の雰囲気とを確実に遮断するために、両基板の金属接合部どうしを密着させて接合する必要がある。したがって、両基板を全面にわたって均一に加圧できるように、重ね合わされた両基板を弾性材を介して加圧したり、球面軸受けを介して加圧することで当該両基板の平行度を改善するように構成されている。
【0006】
しかしながら、このような構成としても、基板を保持するステージの凹凸や、基板そのものの凹凸等を原因として、重ね合わされた両基板を全面にわたって均一に加圧できないおそれがある。このように、デバイス基板の接合面に複数の輪郭状の金属接合部が形成されている場合、両基板を全面にわたって均一に加圧できなければ、該複数の金属接合部のうちの一部が他方の金属接合部と接合せず、該接合しない金属接合部によって囲まれた空間に所定の雰囲気を封入できないおそれがあった。すなわち、当該接合しない金属接合部に囲まれた空間内のデバイスの本体部を外部の雰囲気から遮蔽できないこととなり、さらなる技術の改善が求められていた。また、パーティクル(ゴミ)の混入により、中央部に大きなボイドが残るという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、両基板の接合面間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して当該空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる接合方法は、基板本体の表面に形成された金属からなる接合部を有する基板どうしを接合する接合方法において、少なくとも一方の前記基板の前記接合部は、前記基板本体の表面の所定領域を囲んで突出形成された少なくとも1つの内部接合部と、前記基板本体の周縁部に前記内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された外周接合部とを有し、前記外周接合部と他方の前記基板の前記接合部とを加圧手段により加圧して接合し、前記両基板の接合面間に前記外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合工程と、前記仮接合工程の後に、前記内部接合部と前記他方の前記接合部とを前記加圧手段により加圧して接合する本接合工程とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【0009】
また、本発明にかかる接合装置は、基板本体の表面に形成された金属からなる接合部を有する基板どうしを接合する接合装置において、少なくとも一方の前記基板の前記接合部として、前記基板本体の表面の所定領域を囲んで少なくとも1つの内部接合部を突出形成するとともに、前記基板本体の周縁部に前記内部接合部すべてを取り囲んで外周接合部を突出形成し、一方の前記基板を保持するヘッドと、他方の前記基板を保持するステージと、前記ヘッドまたは前記ステージの少なくとも一方を前記基板の接合面とほぼ垂直な方向に加圧制御が可能な上下駆動機構と、前記外周接合部と他方の前記基板の前記接合部とを加圧して接合し、前記両基板の接合面間に前記外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して仮接合する仮接合手段と、前記仮接合の後に、前記内部接合部と前記他方の前記接合部とを加圧して接合して本接合する本接合手段とを備えることを特徴としている(請求項12)。
【0010】
このように構成された発明では、少なくとも一方の基板の接合部として、基板本体の表面の所定領域を囲んで少なくとも1つの内部接合部を突出形成するとともに、基板本体の周縁部に内部接合部すべてを取り囲んで外周接合部を突出形成し、外周接合部と他方の基板の接合部とを加圧して仮接合することで、両基板の接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気、すなわち、仮接合が行われる空間の雰囲気を封入できる。ここで、所定領域とは、回路の動作部分や振動部分などが形成される領域のことである。
【0011】
そして、両基板の接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成された空間の内側に形成されている内部接合部と他方の基板の接合部とを加圧して本接合することで、仮接合の際に当該空間に所定の雰囲気が封入されているため、両基板の接合面間に内部接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入できる。このように、最初に外周接合部を仮接合することで、両基板の接合面間に外周接合部によって囲まれた空間、すなわち内部接合部が形成されている空間に所定の雰囲気を封入でき、そして、内部接合部と他方の基板の接合部との本接合を当該所定の雰囲気中で確実に行うことができる。したがって、両基板の接合面間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して当該空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる。
【0012】
また、少なくとも一方の基板に形成された内部接合部および外周接合部と、他方の基板の接合部とを、加圧することにより密着させることができ、確実に仮接合および本接合を行うことができる。また、パーティクルによるボイドが残った場合においても本接合において個別に押圧することでボイドをつぶすことができる。
【0013】
また、前記仮接合工程の前に、原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で前記少なくとも一方の基板の前記接合部を表面活性化する表面活性化工程をさらに備える構成でもよい(請求項2)。また、前記仮接合手段による前記仮接合に先立ち、原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で前記少なくとも一方の基板の前記接合部を表面活性化する表面活性化手段をさらに備える構成でもよい(請求項13)。
【0014】
このような構成とすれば、仮接合に先立ち、原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で両基板の金属からなる外周接合部および内部接合部を表面活性化することで、両基板の仮接合および本接合を確実に行うことができる。
【0015】
なお、エネルギー波による接合部の表面活性化とは、エネルギー波で接合部の接合界面を活性化状態にして、接合部どうしを低温かつ固相で接合するための処理である。すなわち、金属からなる接合部の表面に付着した有機物や酸化膜などの付着物層をエネルギー波を照射することによりエッチングして除去することで、接合部を構成する金属原子のダングリングボンドを接合部の表面に出現させて当該接合部の表面を活性化できる。そして、このように表面が活性化した接合部どうしを接触させることで当該接合部表面のダングリングボンドどうしが結合して接合部どうしを接合することができる。以下、エネルギー波による接合部の表面活性化を接合部の表面活性化処理と称する。
【0016】
また、エネルギー波を生成する反応ガスとして、例えば、不活性なArガスを採用することができる。Ar原子は原子量が大きくエッチング力が高いため、Arビーム、ArイオンビームまたはArプラズマからなるArエネルギー波を採用することで、非常に効率よく接合部の表面活性化処理を行うことができる。また、Arガスは不活性ガスであるため、接合部がどのような金属で構成されていても化学的な反応が発生しないので、接合部に化学的な影響を与えることなく該接合部の表面活性化処理を行うことができる。なお、Arビーム、ArイオンビームまたはArプラズマは、それぞれ周知の装置によって生成することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0017】
さらに、エネルギー波により接合部の表面を表面活性化処理するときは、金属からなる接合部の表面に付着した付着物層を確実に除去するために、少なくとも1nm以上エッチングすることが望ましい。
【0018】
ところで、10−5Torr以下である高真空中でエネルギー波により接合部を表面活性化処理して接合部の表面に付着した酸化膜や有機物などからなる付着物層を除去し、そのまま、大気に暴露することなく、高真空中で接合部どうしを接触させるか、Arガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で接合部どうしを接触させれば、当該接合部に付着物層が再付着するのが防止されるため、当該接合部どうしを接合することができる。一方、エネルギー波による接合部の表面活性化処理後、10−5Torr以上である低真空中や大気中で接合部どうしを接触させたり、大気中で両基板間の位置調整(アライメント)を行った後に接合部どうしを接触させた場合には、接合部表面に酸化膜や有機物のような付着物層が再形成されて接合部表面が不活性な状態となるため、接触させるだけでは接合部どうしを接合することはできない。
【0019】
しかしながら、接合部の表面活性化処理後、すぐであれば付着物層が再付着しても薄いので、接合部どうしを接触させて両基板を加圧することにより該付着物層を押し破れば、接合部表面の接合界面が広がって当該接合部表面に新生面が現れるため、接合部どうしを接合することができる。
【0020】
したがって、基板本体に形成された金属からなる外周接合部および内部接合部をエネルギー波により表面活性化処理した後、両基板を加圧することで外周接合部に再付着した付着物層を押し破って仮接合を行うことができる。仮接合を行うことで、両基板の接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気、すなわち仮接合が行われた空間の雰囲気を封入して、当該空間内部の雰囲気と外部の雰囲気とを遮断することができる。また、仮接合後に両基板をさらに加圧することで、所定の雰囲気が封入された外周接合部で囲まれた空間内で内部接合部の本接合を行うことができ、接合面間に内部接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に当該所定の雰囲気を封入できる。
【0021】
また、エネルギー波により接合部表面を活性化し、該接合部に再付着した付着物層を押し破ることで、接合部を構成する金属の原子間力によって接合部どうしを接合することができるので、真空雰囲気中や不活性ガス雰囲気中でなくとも、室温〜180℃以下である常温で接合部どうしを接合できる。また、150℃程度の加熱を併用すれば接合強度は向上するが、150℃より低温下での接合であっても、従来の加熱拡散による接合と比べて十分な接合強度で接合部どうしを接合できる。また、低温で金属どうしを接合できる従来の鉛錫はんだによる方法と比べても、鉛錫はんだの融点である183℃以下、さらに、150℃以下の低温で接合部どうしの接合を行うことができる。
【0022】
また、接合させる基板の接合部が異種材料により構成されている場合、このような異種材料を溶融して拡散させることで接合部どうし接合させると、脆くなったり、材料的に弱くなったり、線膨張係数の差からそりが発生したり、割れたりするおそれがある。しかしながら、表面活性化処理を併用することで、室温〜180℃以下の低温加熱下で固相の状態で接合部どうしを接合できる。したがって、熱に弱い基板を接合したり、熱膨張により歪みが生じたりして高温での接合に耐えられない異種材料の接合部どうしを接合したりする場合に、室温〜180℃以下の低温加熱下で接合できるため実用的である。
【0023】
また、接合部を溶融させると、溶融した金属が均等に広がらないため、溶融した金属が固化するときに、当該溶融した金属が多い方に基板が引っ張られて位置ずれが生じるという問題があったが、表面活性化処理を併用することで、接合部どうしを固相で接合できるため、さらに実用的である。なお、接合温度は、150℃以下、100℃以下での接合が好ましく、室温であればさらによい。
【0024】
ところで、上記したように、表面活性化処理後、すぐには有機物、酸化膜、塵または埃などの付着物層は再付着しても薄いので、加圧して該付着物層を押し破ることにより、接合部表面の接合界面が広がり該接合部表面に新生面が現れて接合部どうしを接合できる。このように、付着物層を押し破り易くするためには、接合部を構成する金属の硬度が低く変形しやすい方がよい。本発明者は種々の実験の結果、接合部の硬度がビッカース硬度で200Hv以下、好ましくは20Hv〜200Hvであることが、常温接合に特に有効であることを見出した。
【0025】
実験条件として、エネルギー波としてArプラズマを使用し、該Arプラズマを100Wの強度で30秒間照射して接合部の表面活性化処理を行った。そして、Arプラズマによる表面活性化処理後、Arガス雰囲気のまま基板どうしを加圧して接合することを試みた。以上の結果、硬度が300HvのNiメッキや600Hvのクロムメッキからなる接合部どうしの接合は不良であったが、ビッカース硬度が200Hv以下の金属である銅、金、Al、錫(金錫合金を含む)で構成された接合部どうしの接合は良好に行われ、実用的に十分な接合強度が得られた。
【0026】
さらに領域を限定するならば、接合部のビッカース硬度が20Hv〜200Hvの範囲が良好な接合領域であると考えられる。なお、最大強度の80%に相当する30g/bump以上の強度で接合された場合、接合が良好に行われる領域とし、15g/bump以下の強度で接合された場合、接合が不良であると判断した。また、ウエハーなどの基板全面に金属接合部を形成し、当該基板どうしを面接合する場合には、接合後の引っ張り強度で接合強度を表し、接合強度が20MPa以上ならば良好な接合と判断し、接合強度が10MPa以下ならば接合不良と判断する場合もある。
【0027】
また、Arプラズマによる表面活性化処理後、接合部が金または銅で形成されている場合には大気中での接合が可能であった。特に、接合部が金で構成されている場合には、表面活性化処理後、大気に暴露して1時間経過した後であっても、Arガス(不活性ガス)雰囲気中での接合強度とほぼ同一の強度で接合できた。これは、金は酸化しづらいことから、表面活性化処理後、接合部表面に有機物や酸化膜などの付着物層が再付着しにくいためと考えられる。このように、不活性ガス雰囲気中や真空雰囲気中でなく、大気中であっても接合が可能であるため、大気中で仮接合を行うことにより、接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に大気雰囲気を封入することもできる。
【0028】
なお、接合部の表面活性化処理後、該接合部を有する基板どうしのアライメントを大気中で行ったり、該接合部を有する基板を大気下で搬送したときに、接合部に酸化膜や有機物のような付着物層が再付着しやすいと考えられる。しかしながら、上記したように、再付着した付着物層を加圧して押し破ることで基板どうしを接合できる。
【0029】
また、基板どうし接合する際、加圧手段によって該基板どうしを150Mpa以上の加圧力で加圧することで、より強固に基板どうしを接合できた。このとき、接合部を構成する金属が、金、銅、Al、錫(金錫合金を含む)または金属基材に金めっきを施したものである場合に、特に良好に接合することができた。また、表面活性化処理を行うエネルギー波として、Arプラズマを例に挙げて説明したが、Ar原子ビームまたはArイオンビームで表面活性化処理を行っても同様の結果が得られた。
【0030】
なお、エネルギー波による接合部の表面活性化処理と、該表面活性化処理された接合部が形成された基板どうしを仮接合または本接合する処理とを、それぞれ個別の装置で行ってもよい。このような構成とすれば、表面活性化処理を行う装置でエネルギー波により表面活性化処理された後の基板を、大気に暴露して仮接合を行う仮接合装置に搬送しても、該仮接合装置において、搬送中に接合部に再付着した酸化膜や有機物のような付着物層を押し破ることで基板どうしを仮接合することができる。
【0031】
また、接合部の表面活性化処理から仮接合までの処理を、大気に暴露せずに行ってもよい。このような構成とすれば、大気に暴露せず表面活性化処理から仮接合までの処理を行うため、接合部の表面活性化処理の後に該接合部に付着物層が再付着するのを確実に防止できる。
【0032】
また、表面活性化処理から仮接合する処理までを、両処理を実行する機能が組み込まれた1つの装置で行ってもよい。基板に形成された接合部の表面活性化処理から仮接合する処理までを1つの装置で行うことにより、接合部の表面活性化処理が施された基板を仮接合装置まで搬送する必要がなく、浮遊物(塵や埃)、有機物または酸化膜といった付着物が接合部へ再付着して付着物層が再形成されるのをより効果的に防止できる。
【0033】
また、表面活性化処理と仮接合する処理とを同一のチャンバー内で行えば、上記付着物層の接合部への再付着をいっそう有効に防止できる。また、チャンバー内を所定の雰囲気とすることで、表面活性化処理が施された基板どうしの仮接合を、真空雰囲気中、封入ガス雰囲気中または大気雰囲気中の所定の雰囲気中で容易に実行することができ、両基板間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を容易に封入できる。また、1つのチャンバー内で、接合部の表面活性化処理、(必用に応じて)チャンバー内のガス置換処理、接合部に表面活性化処理が施された基板どうしを仮接合して両基板面間に外周接合部によって形成される上記空間に所定の雰囲気を封入する処理を行うことにより、表面活性化処理および仮接合する処理を実行する装置のコンパクト化、コストダウン化を図ることができる。
【0034】
また、エネルギー波として周知のイオンビームや原子ビームを採用してもよいが、当該イオンビームおよび原子ビームを生成するためには、10−8Torr程度の高真空雰囲気が要求されるため、このような高真空を達成するために装置の高コスト化を招来するという問題もあった。そこで、エネルギー波としてプラズマを採用すれば、当該プラズマを生成すための真空度は10−2Torr程度でよいため、簡易な装置でプラズマを生成することができ、その結果、装置のコンパクト化、コストダウン化を図ることができる。また、プラズマを発生させる反応ガスにArガスを採用すれば、Arガスは不活性であるため、表面活性化される接合部表面で化学的な反応が生じず、しかも、エッチング能力が高いので当該接合部の表面活性化処理を効率良く行うことができる。
【0035】
また、基板に形成された接合部の表面活性化処理の後、または表面活性化処理中に、接合部の表面に打ち込まれた反応ガスイオンや、エッチングで生じた塵や埃を取り除くために、10−3Torr以下に減圧するとよい。また、接合部の表面に打ち込まれたArイオンなどの反応ガスイオンを取り除くために100〜180℃程度の加熱を併用しながら表面活性化処理を行うこともできる。
【0036】
なお、プラズマは、交番電源により生じた+−方向が切り替わる電界により生成することができる。このような交番電源としては、周知のRFプラズマ発生電源や、パルス波発生電源を採用することができる。
【0037】
また、前記仮接合工程において前記両基板の周縁部を、該周縁部以外よりも高くしてもよい(請求項3)。
【0038】
このような構成とすれば、仮接合工程において両基板の周縁部の高さを、該周縁部以外よりも高くしているため、基板本体の周縁部に内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された外周接合部と他方の基板の接合部とを接合する仮接合を確実に行うことができる。したがって、両基板の接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して、よりいっそう確実に当該空間の内部の雰囲気と外部の雰囲気とを遮断することができる。
【0039】
また、前記本接合工程における前記加圧手段による前記両基板の加圧の際、加圧位置をずらしながら加圧を行うようにしてもよい(請求項4)。また、前記両基板を加圧する加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段をさらに備え、前記加圧手段により前記本接合を行う構成でもよい(請求項14)。
【0040】
また、前記本接合工程を、前記加圧手段としての高圧プレス手段により前記両基板の全面にわたって一括加圧することにより行うようにしてもよい(請求項5)。また、加圧手段として前記両基板の全面にわたって一括加圧する高圧プレス手段をさらに備え、前記高圧プレス手段により前記本接合を行う構成でもよい(請求項15)。
【0041】
また、前記本接合工程を、前記加圧手段としての加圧ローラ間に前記両基板を通過させて加圧することにより行うようにしてもよい(請求項6)。また、加圧手段として前記両基板を通過させることで加圧する加圧ローラをさらに備え、前記加圧ローラにより前記本接合を行う構成でもよい(請求項16)。
【0042】
このような構成とすれば、本接合において、両基板の全面にわたって余すところなく加圧することができるので、外周接合部の内側に形成されている内部接合部のすべてを他方の基板の接合部と確実に接合できる。特に、ボイドが残る場合において、個別押圧やローラによる方法はボイドをつぶす方法として有効である。
【0043】
ところで、基板に接合部として複数の金属バンプを形成し、当該金属バンプどうしを接合することで基板どうしを電気的に接続して接合する技術が知られている。このような構成であれば、両基板を全面にわたって均一に加圧できないことに起因して、他方の金属バンプと密着せず部分的に接合している金属バンプがあっても、当該金属バンプどうしの電気的な導通状態が確保されていれば実用上の問題はない。ところが、本発明のように、両基板の接合面間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する場合、輪郭状の接合部の全体が他方の接合部と密着して接合していなければ、該接合部の密着していない部分から空間内部の雰囲気が外部に流出して、当該空間に所定の雰囲気を封入できないだけでなく、当該空間を外部の雰囲気から遮断できないこととなる。
【0044】
しかしながら、上記したように、両基板間に外周接合部によって囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合を行った後、両基板を全面にわたって余すところなく加圧して内部接合部の本接合を行うことにより、確実に内部接合部と他方の接合部とを密着して接合でき、当該内部接合部よって囲まれて形成される空間を所定の雰囲気、すなわち、仮接合により外周接合部によって囲まれて形成される空間に封入された雰囲気とすることができる。また、本技術は金属バンプによる電気的な接続と同時にその領域を真空に封止することができる。そうすることで一括で電気接続と封止を行うことができ、効率的であり、かつ、他の方法では、低温接合で両立できる方法はなく、画期的な方法である。
【0045】
また、前記仮接合工程を真空中で実行することにより前記空間を真空雰囲気で封止するようにしてもよい(請求項7)。また、減圧チャンバー内に、前記ヘッドと、前記ステージと、前記上下駆動機構と、前記仮接合手段とを備え、前記基板どうしを真空中で前記仮接合することにより前記空間を真空雰囲気で封止する構成でもよい。
【0046】
このような構成とすれば、仮接合を真空中で行うことにより、外周接合部によって囲まれて形成される空間を容易に真空雰囲気で封止することができる。また、仮接合に先立って表面活性化処理を実行する場合、当該表面活性化処理と仮接合とを同一チャンバー内で行えば、表面活性化処理後、チャンバーから反応ガスを排出して真空引きしてチャンバー内を真空雰囲気とし、そのまま仮接合することで容易に真空中で仮接合を行うことができる。
【0047】
また、前記仮接合工程を封入ガス中で実行することにより前記空間に前記封入ガスを封入するようにしてもよい(請求項8)。また、減圧チャンバー内に、前記ヘッドと、前記ステージと、前記上下駆動機構と前記仮接合手段とを備え、前記減圧チャンバー内を封入ガスに置換し、該封入ガス中で前記基板どうしを前記仮接合することにより前記空間に前記封入ガスを封入する構成でもよい。
【0048】
このような構成とすれば、仮接合を封入ガス中で行うことにより、外周接合部によって囲まれて形成される空間に容易に所定の封入ガスを封入することができる。また、仮接合に先立って表面活性化処理を実行する場合、当該表面活性化処理と仮接合とを同一チャンバー内で行えば、表面活性化処理後、チャンバーから反応ガスを排出して封入ガスに置換してチャンバー内を封入ガス雰囲気とし、そのまま仮接合することで容易に封入ガス中で仮接合を行うことができる。
【0049】
なお、封入ガスがArガス、窒素ガスなどの不活性ガスであれば、基板に腐食などの影響を与えることがなく、当該封入ガスが封入された空間内部の酸化などを理由とした劣化を防止できる。また、封入ガスがArガスであれば、接合部をArガスを反応ガスとするエネルギー波で表面活性化処理した場合に、表面活性化処理のために利用した反応ガス雰囲気をそのまま使用できるので効率がよい。
【0050】
また、前記本接合工程を大気中で実行するようにしてもよい(請求項9)。
【0051】
このような構成とすると、仮接合をチャンバー内の所定の雰囲気中で行った後、本接合を大気中で行っても、両基板間に外周接合部により輪郭状に囲まれて形成される空間には当該所定の雰囲気が封入されているため、本接合後に内部接合部により囲まれて形成される空間に当該所定の雰囲気が封入され、内部接合部に囲まれた空間に大気が混入することはない。したがって、本接合を大気中で行うことで、封入ガスの使用量を削減できコストダウンを図ることができる。なお、仮接合を大気中で行えば、外周接合部によって囲まれて形成される空間に大気雰囲気を封入できる。
【0052】
また、前記仮接合工程および/または前記本接合工程における接合時に、前記両基板を加熱するようにしてもよい(請求項10)。また、前記両基板を加熱する加熱手段をさらに備え、前記仮接合手段および/または前記本接合手段における接合時に、前記両基板を加熱する構成としてもよい(請求項17)。
【0053】
このような構成とすれば、金属からなる接合部どうしを加熱することにより、熱拡散方式で、または当該接合部を溶融させて仮接合および/または本接合を行うことができる。
【0054】
また、表面活性化処理を併用して仮接合および本接合を行う場合、当該接合時に室温〜180℃の低温加熱によるアニーリングを行うことにより、基板の表面粗さやうねりに起因する接合部の残留応力やひずみを除去することでき、接合強度の向上を図ることができる。
【0055】
また、本発明にかかるデバイスは、請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法により形成されたデバイスであって、半導体デバイスまたはMEMSデバイスからなることを特徴としている(請求項11)。
【0056】
このような構成とすれば、少なくとも一方の基板の内部接合部に囲まれた領域に、表面弾性波デバイス、RFデバイスなどの半導体デバイスの本体部、機械的な可動部を有するMEMSデバイスの本体部、またはデバイスの電極等を形成して、当該基板と他方の基板との仮接合および本接合を行った後、当該接合後の基板を、内部接合部によって囲まれた領域ごとにダイシングすることで、デバイスの本体部や電極が内部接合部によって囲まれて外部の雰囲気と遮断されたデバイスを提供できる。特に、内部接合部に囲まれた空間に不活性ガス(Arガス、窒素ガス等)雰囲気や真空雰囲気を封入することで、当該空間内のデバイスの本体部や電極が酸化などの理由により劣化するのを防止できる。
【0057】
また、本発明における仮接合および本接合を、接着剤、高温加熱による拡散接合または超音波振動接合によらず、エネルギー波による接合部の表面活性化処理により行えば、次のような有利な効果を奏することができる。すなわち、上記したデバイスが熱に弱いものであったり、異種材料の組み合わせで構成されているものであり、高温に加熱すると熱膨張によりひずみが生じたり、線膨張係数の差からそりが発生したり、割れたりして、高温での接合に耐えられないという課題がある場合、接合部を表面活性化することにより低温で基板の接合を行うことができる。
【0058】
また、基板を構成する材料に樹脂が含まれている場合、基板どうしを接合するときに高温で加熱すれば、ガスや湿気が生じるおそれがある。上記したデバイスの本体部が、これらのガスや湿気に対して耐性がないものである場合には、接合部の表面活性化処理を併用して基板どうしを低温で接合することにより、基板からガスや湿気が発生するのを防止できる。
【0059】
また、上記したデバイスが、振動する部分や、機械的に動作する部分を有するものであれば、基板どうしの接合に接着剤を利用すると、これらの振動したり動作する部分が固化するおそれがある。しかしながら、接合部の表面活性化処理を併用して基板どうしを接合することにより、当該振動部分や動作部分が固化するのを防止できる。
【0060】
なお、基板どうしの接合に表面活性化処理を併用する場合、本発明者の種々の実験の結果より、接合部の表面活性化処理後の経過時間やエネルギー波の反応ガスの種類、接合を行う際の雰囲気の種類、該雰囲気の水分の含み具合(湿度)等により、接合に必用な加熱温度が異なることが確認されている。その結果によれば、上記したように、接合部の表面が特に酸化しづらい金で構成されていれば、表面活性化処理後、大気に暴露しても1時間以内に接合すれば100℃以内の加熱でも接合が可能であった。また、金属からなる接合部をエネルギー波により表面活性化処理して加圧することにより、接合部を固相で接合できるが、接合部の接合界面は金属分子どうしが直接結合されているので、接合後に高温、例えば350℃に基板が加熱されたとしても、接合部の金属分子が拡散されるのみで接合強度が落ちたり、抵抗値が増大したりすることは無く、表面活性化処理を併用して作成されたデバイスは高温環境下でも信頼性が高い。
【0061】
また、本発明にかかる基板は、請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法によって接合される基板であって、前記接合部は、前記基板本体の表面の所定領域をそれぞれ囲んで突出形成された複数の前記内部接合部と、前記基板本体の周縁部に前記複数の内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された前記外周接合部とを備えることを特徴としている(請求項18)。また、本発明にかかる基板は、請求項12ないし17のいずれかに記載の接合装置によって接合される基板であって、前記接合部は、前記基板本体の表面の所定領域をそれぞれ囲んで突出形成された複数の前記内部接合部と、前記基板本体の周縁部に前記複数の内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された前記外周接合部とを備えることを特徴としている。
【0062】
このような構成とすれば、樹脂製またはSi、SiO2、セラミック、LT(酸化物単結晶)等からなる基板本体に複数の内部接合部が突出形成され、この内部接合部すべてを取り囲んで外周接合部が突出形成されているため、内部接合部に囲まれた複数の領域にデバイス回路等を形成して基板どうしの仮接合および本接合を行うことで、複数のデバイスを同時に形成することができるとともに、当該デバイスのデバイス回路等を上記したように内部接合部に囲まれた空間に封入して外部の雰囲気から確実に遮断することができる。
【0063】
また、前記接合部が金で形成されている、または前記接合部表面に金膜が形成されている構成でもよい(請求項19)。
【0064】
このような構成とすれば、金は硬度も低く、また、他の金属と比べ、大気中でも特に酸化しづらいため、基板どうしの接合に表面活性化処理を併用する場合、当該表面活性化処理の後に大気に暴露しても付着物層は薄く破れやすいものとなる。したがって、接合部の表面活性化処理の後、基板搬送を大気中で行い、その後、所定の雰囲気中で基板どうしの仮接合を行っても、当該表面活性化処理後、数時間以内であれば接合することできる。
【0065】
また、金は腐食せず、また、加熱してもガスを発生しない。したがって、両基板間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入し、当該空間を外部の雰囲気から遮断する封止材として、実用的な接合部を形成できる。また、金の融点は非常に高いため、基板どうしを接合した後、高温下での信頼性が高く実用的である。
【0066】
また、接合部の表面(接合表面)に金膜が形成されていれば、接合に表面活性化処理を併用する場合において、当該表面活性化処理の後、有機物等が再付着しづらいので大気中でも基板どうしを接合できる。また、基板どうしを接合した後、加熱して接合部表面の金膜を当該接合部を構成する金属の中に拡散すれば、拡散後は接合部を構成する金属どうしの接合となるため、接合強度も強くなり、接合界面を同一の金属材料とすることができる。このとき、常温でも金膜を拡散できるが、加熱すればより早く金膜を拡散できる。なお、拡散とは、分子や原子からなる粒子が移動して広がるさまを示し、金属からなる接合部どうしの接合界面において当該接合部内へ粒子が拡散していくさまを示す。
【0067】
また、半導体やMEMSデバイスにおける電気的機能デバイスにおいて、電流容量の関係から、従来のAl電極から銅電極への切り替えが要望されている。しかし、従来の接合方法では、銅どうしの接合は接合温度が高くなるため実用的でなかった。そのため、銅で構成される接合部の表面に金膜を形成し、表面活性化処理を併用することで、接合温度を低温化することができる。さらに、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中でなくとも、任意のガス雰囲気中または大気中で接合できる。また、接合後、金を銅(接合部)中に拡散すれば銅どうしの接合となり、実用的である。
【0068】
このように、接合部を金で形成するか、金属からなる接合部の表面に金膜を形成することにより、真空雰囲気中や不活性ガス雰囲気中でなくとも金は腐食することがなく、酸化膜や有機物等の付着物層も付着しづらいため、特に接合に表面活性化処理を併用すれば、真空雰囲気中や不活性ガス雰囲気中でなくとも確実に接合できる。そのため、不活性なもの以外のガス雰囲気中で基板どうしを仮接合できるので、両基板間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に任意のガスを封入できる。
【0069】
また、前記外周接合部の硬度が、前記内部接合部の硬度よりも低く形成されている構成でもよい(請求項20)。
【0070】
このような構成とすれば、外周接合部の硬度が、内部接合部の硬度よりも低く形成されているため、加圧して基板どうしを仮接合する際、外周接合部が内部接合部よりも先に変形して当該外周接合部と他方の基板の接合部とが密着するため確実に仮接合を行うことができる。
【0071】
また、前記外周接合部の前記基板本体の表面からの高さが、前記内部接合部の前記表面からの高さよりも高く形成されている構成でもよい(請求項21)。
【0072】
このような構成とすれば、外周接合部の基板本体の表面からの高さが、内部接合部の基板本体の表面からの高さよりも高く形成されているため、基板どうしを仮接合する際、外周接合部が内部接合部よりも先に他方の基板の接合部と接触するため確実に仮接合を行うことができる。
【0073】
なお、金属めっき、または蒸着法によって、基板本体の表面に任意の金属材料で任意の高さの接合部を形成することができる。
【0074】
また、前記内部接合部または前記外周接合部の断面が尖形形状に形成されていてもよい(請求項22)。
【0075】
このような構成とすれば、内部接合部または外周接合部の断面が尖形形状に形成されているため、少なくとも当該内部接合部および外周接合部のいずれか一方は加圧されることにより潰れやすい。そのため、断面尖形形状の内部接合部または外周接合部の表面に酸化膜や有機物等の付着物層が付着していたとしても、当該内部接合部または外周接合部が加圧されて押し潰されることにより該付着物層が押し破られ、内部接合部または外周接合部を構成する金属の新生面が確実に出現する。したがって、一方の基板の表面に断面尖形形状の内部接合部または外周接合部を形成し、他方の基板の接合部とを衝合して加圧することで、基板どうしを確実に接合することができる。
【発明の効果】
【0076】
請求項1、12に記載の発明によれば、少なくとも一方の基板に形成された外周接合部と他方の基板の接合部とを加圧して仮接合することで、両基板の接合面間に外周接合部によって囲まれる空間に所定の雰囲気を封入できる。したがって、当該空間内の所定の雰囲気中で、加圧して内部接合部と他方の基板の接合部との本接合を確実に行うことができるので、両基板の接合面間に内部接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入するとともに、この空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる。
【0077】
また、少なくとも一方の基板に形成された内部接合部および外周接合部と、他方の基板の接合部とを、加圧することにより密着させることができ、確実に仮接合および本接合を行うことができる。
【0078】
請求項2、13に記載の発明によれば、仮接合に先立ち、原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で少なくとも一方の基板の金属からなる外周接合部および内部接合部を表面活性化することで、基板どうしの仮接合および本接合を確実に行うことができる。
【0079】
請求項3に記載の発明によれば、仮接合工程において両基板の周縁部を、該周縁部以外よりも高くしているため、基板本体の周縁部に内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された外周接合部と他方の基板の接合部とを接合する仮接合を確実に行うことができ、両基板の接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して、よりいっそう確実に当該空間の内部の雰囲気と外部の雰囲気とを遮断することができる。
【0080】
請求項4、5、6、7、14、15、16に記載の発明によれば、本接合において、両基板の全面にわたって余すところなく加圧することができるので、外周接合部の内側に形成されている内部接合部のすべてを他方の基板の接合部と確実に接合できる。
【0081】
請求項7に記載の発明によれば、仮接合を真空中で行うことにより、外周接合部によって囲まれて形成される空間を容易に真空雰囲気で封止することができる。
【0082】
請求項8に記載の発明によれば、仮接合を封入ガス中で行うことにより、外周接合部によって囲まれて形成される空間に容易に所定の封入ガスを封入することができる。
【0083】
請求項9に記載の発明によれば、本接合を大気中で行うことにより、封入ガスの使用量を削減できコストダウンを図ることができる。
【0084】
請求項10、17に記載の発明によれば、金属からなる接合部どうしを加熱することにより、熱拡散方式で、または当該接合部を溶融させて仮接合または本接合を行うことができる。
【0085】
また、表面活性化処理を併用して仮接合および本接合を行う場合、当該接合時に室温〜180℃の低温加熱によるアニーリングを行うことにより、基板の表面粗さやうねりに起因する接合部の残留応力やひずみを除去することでき、接合強度の向上を図ることができる。
【0086】
請求項11に記載の発明によれば、少なくとも一方の基板の内部接合部に囲まれた領域に、表面弾性波デバイス、RFデバイスなどの半導体デバイスの本体部、機械的な可動部を有するMEMSデバイスの本体部、またはデバイスの電極等を形成して、当該基板と他方の基板との仮接合および本接合を行った後、接合後の基板を、内部接合部によって囲まれた領域ごとにダイシングすることで、デバイスの本体部や電極が内部接合部によって囲まれて外部の雰囲気と遮断されたデバイスを提供できる。
【0087】
請求項18に記載の発明によれば、内部接合部に囲まれた複数の領域にデバイス回路等を形成して基板どうしの仮接合および本接合を行うことで、複数のデバイスを同時に形成することができるとともに、当該デバイスのデバイス回路等を内部接合部に囲まれた空間に封入して外部の雰囲気から確実に遮断ことができる。
【0088】
請求項19に記載の発明によれば、金は腐食せず、また、加熱してもガスを発生しないので、両基板間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入し、当該空間を外部の雰囲気から遮断する封止材として、実用的な接合部を形成できる。
【0089】
請求項20に記載の発明によれば、外周接合部の硬度が、内部接合部の硬度よりも低く形成されているため、外周接合部が内部接合部よりも変形しやすく、当該外周接合部と他方の基板の接合部とが密着するため確実に仮接合を行うことができる。
【0090】
請求項21に記載の発明によれば、外周接合部の基板本体の表面からの高さが、内部接合部の基板本体の表面からの高さよりも高く形成されているため、基板どうしを仮接合する際、外周接合部が内部接合部よりも先に他方の基板の接合部と接触するため確実に仮接合を行うことができる。
【0091】
請求項22に記載の発明によれば、一方の基板の表面に形成された断面尖形形状の内部接合部または外周接合部の表面に、酸化膜や有機物等の付着物層が付着していたとしても、当該内部接合部または外周接合部が加圧されて押し潰されることにより該付着物層が押し破られ、内部接合部または外周接合部を構成する金属の新生面が確実に出現する。したがって、一方の基板表面に形成された断面尖形形状を有する内部接合部または外周接合部と、他方の基板表面に形成された接合部とが加圧されることにより確実に接合されるため、基板どうしを確実に接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0092】
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態について図1〜図7を参照して説明する。
【0093】
1.基板
まず、本発明の接合装置において接合される基板の構造について詳細に述べる。図1は基板の一例を示す図、図2は図1のA−A線矢視断面図、図3は基板の他の例を示す図である。
【0094】
(1)基板(a)
図1を参照して基板の一例について説明する。図1に示すように、デバイス基板808の基板本体808aの表面には、所定領域を囲んだ内部接合部831aと、基板本体808aの周縁部に内部接合部831aを取り囲んだ外周接合部831bとが突出形成されている。また、内部接合部831aに囲まれた領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部829が形成されている。ここで、所定領域とは、回路の動作部分や振動部分などが形成される領域のことである。
【0095】
また、内部接合部831aおよび外周接合部831bは、それぞれ金めっきにより厚膜状に基板本体808aに突出形成されている。また、図2に示すように、この一例では、外周接合部831bの基板本体808aの表面からの高さが約3μmに形成されており、基板本体808aの表面からの高さが約1.5μmに形成されている内部接合部831aの高さよりも高くなるように構成されている。
【0096】
また、蓋基板807の基板本体807aの表面には接合部として金薄膜832がスパッタリングまたはフラッシュめっきにより形成されている。なお、金薄膜832の代わりに、デバイス基板808と同様に内部接合部831aおよび外周接合部831bを形成してもよい。電解メッキに対して、スパッタリングやフラッシュめっきによれば0.数μm程度に薄くメッキすることができる。Siウエハなどのように表面の平坦度が出た材質であれば、薄膜であった方が基材の平坦度を損なわずに平坦度が保持された状態でメッキすることができ好ましい。この場合には、大気にふれる時間を短く(なくする)することで再付着層を薄くすることができ、100MPa以下の低加圧でも接合することができる。表面を金にすることで再付着も鈍くなるため、高真空での接合も不要となり、プラズマレベルの表面活性化処理とその程度(数Pa程度)の低真空レベルでハンドリングして扱うことができる。また、数分程度であれば大気に暴露しても接合に影響しない。量産に適したより好ましい方法である。但し、圧膜のメッキ方法と比べれば押しつぶして新生面を出す効果は少なくなるので大気に暴露できる時間は短くなるため、たくさんのチップを接合する方法よりも一括でウエハレベルで接合する方法には適する。また、圧膜めっきと薄膜の複合として内周部を薄膜とし、外周部を圧膜とする方法が各目的達成のためには好ましいといえる。
【0097】
このような構成とすれば、金は腐食せず、また、加熱してもガスを発生しないので、後述するように、デバイス基板808と蓋基板807との仮接合を行って、両基板807,808間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入し、当該空間を外部の雰囲気から遮断する封止材として、実用的である。
【0098】
また、外周接合部831bの基板本体808aの表面からの高さが、内部接合部831aの基板本体808aの表面からの高さよりも高く形成されているため、後述するように、デバイス基板808と蓋基板807との仮接合を行う際、外周接合部831bが内部接合部831aよりも先に蓋基板807の金薄膜(接合部)832と接触するため確実に仮接合を行うことができる。
【0099】
(2)基板(b)
図3を参照して基板の他の例について説明する。図3に示す基板の他の例が、図1に示す基板の一例を大きく異なる点は、デバイス基板808の基板本体808aの表面に複数の内部接合部831aが形成されている点である。図3に示すように、デバイス基板808の基板本体808aの表面には、所定領域をそれぞれ囲んだ複数の内部接合部831aと、基板本体808aの周縁部に内部接合部831aのすべてを取り囲んだ外周接合部831bとが突出形成されている。また、内部接合部831aに囲まれたぞれぞれの領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部829が形成されている。
【0100】
また、図2に示す基板の一例と同様に、内部接合部831aおよび外周接合部831bは、それぞれ金めっきにより厚膜状に基板本体808aに突出形成されている。また、外周接合部831bの基板本体808aの表面からの高さが約7μmに形成されており、基板本体808aの表面からの高さが約5μmに形成されている内部接合部831aの高さよりも高くなるように構成されている。
【0101】
また、蓋基板807の基板本体807aの表面には金薄膜832がスパッタリングまたはフラッシュめっきにより形成されている。なお、金薄膜832の代わりに、デバイス基板808と同様に内部接合部831aおよび外周接合部831bを形成してもよい。
【0102】
なお、図3に示すように形成されたデバイス基板808と蓋基板807とを後述する接合装置により接合した後、接合されたデバイス基板808および蓋基板807を、内部接合部831に囲まれた領域ごとにダイシングすることで複数のデバイスを効率よく形成することができる。
【0103】
(3)その他
なお、上記した基板の一例および他の例では、金めっきを厚膜状に施すことにより、基板本体808aの表面に内部接合部831aおよび外周接合部831bを突出形成したが、これらの接合部831a,831bを、金属からなる母材の表面に金膜を形成して構成してもよい。その他の構成は上記した基板の一例および他の例と同様であるため、その構成についての説明は省略する。
【0104】
このように、金属からなる母材の表面に金膜を形成して構成された接合部831a,831bとしては、例えば、銅を母材として、該銅母材の表面に金膜を形成することで、内部接合部831aおよび外周接合部831bを形成してもよい。また、Alを母材として、Alの表面に金膜を形成して内部接合部831aおよび外周接合部831bを構成してもよい。
【0105】
また、一例として上記した各数値を挙げたが、接合部の高さはこれらの数値に限定されるものではない。また、内部接合部831aの基板本体808aの表面からの高さが、デバイスの本体部829の基板本体808aの表面からの高さよりも高くなるよう形成するのが望ましい。また、内部接合部831aおよび外周接合部831bの基板本体808aの表面からの高さをほぼ同じ高さとしてもよい。
【0106】
また、内部接合部831aおよび外周接合部831bを構成する金属として金を例に挙げて説明したが、これらの接合部831a,831bを構成する金属としては金に限られず、Al、銅、錫(金錫合金を含む)などで接合部831a,831bを形成してもよい。また、例えば、内部接合部831aを、金の硬度(約100Hv)よりも硬度が高い銅(約140Hv)で形成し、外周接合部831bを金で形成して、外周接合部831bの硬度が内部接合部831aの硬度よりも低くなるように構成してもよい。
【0107】
また、デバイス基板808およびは蓋基板807は、樹脂により構成されたプリント基板、配線層が積み上げられたビルドアップ基板またはSi、SiO2、ガラス、セラミックおよびLT(酸化物単結晶)からなるウエハー等、種々の材料で構成することができる。
【0108】
2.表面活性化・仮接合装置(a)
次に、表面活性化処理(表面活性化工程)および仮接合処理(仮接合工程)を実行する表面活性化・仮接合装置(本発明の「表面活性化手段」、「仮接合手段」に相当)について説明する。図4は表面活性化・仮接合装置を示す図である。また、図5は表面活性化処理および仮接合処理の手順を示す図である。また、図6は図4の装置において2視野認識手段を用いた大気中でのアライメント処理を示す図である。
【0109】
図4に示すように、表面活性化・仮接合装置1において、図示省略したアクチュエータにより昇降可能に構成されたチャンバー壁803と、チャンバー台810とにより減圧チャンバーが構成されている。この表面活性化・接合装置1では、蓋基板807とデバイス基板808とを上下に対向保持した状態でチャンバー壁803を下降して減圧チャンバーを閉じ、真空内でArプラズマにより表面活性化処理(エッチング)を行った後、両基板807,808を仮接合することができる。
【0110】
また、この装置1は、一方の基板を保持し、Z軸801により昇降制御と加圧制御を行うヘッド部と、他方の基板を保持し、この保持されている基板の位置調整が可能に構成されたステージ部とを備えている。また、ヘッド部はピストン型ヘッド802と、上部電極806とを備え、ステージ部は位置調整(アライメント処理)が可能に構成されたアライメントテーブル820と下部電極809とを備えている。なお、本実施形態では、蓋基板807を上部電極806により保持し、デバイスの本体部829が形成されたデバイス基板808を下部電極809により保持している。また、本実施形態では、蓋基板807およびデバイス基板808の両方に、内部接合部831aおよび外周接合部831bが形成されており、これらの両基板807,808どうしを接合する。
【0111】
また、Z軸801には図示省略する圧力検出手段が組み込まれ、この圧力検出手段による検出信号をZ軸サーボモータのトルク制御装置(図示省略)へフィードバックすることで、ピストン型ヘッド802を基板807,808の接合面とほぼ垂直な方向に加圧力制御を行うことができる。このように、本実施形態ではZ軸801が本発明の「上下駆動機構」、「加圧手段」として機能している。なお、ステージ部側のみ、または、ヘッド部側およびステージ部側の両方を加圧制御可能に構成してもよい。
【0112】
そして、摺動パッキン804がZ軸801に摺接しつつ、アクチュエータによりZ軸801と独立して昇降可能なチャンバー壁803が下降し、チャンバー台810に固定パッキン805を介して接地した状態でチャンバー内を外気と遮断することができる。この状態で、排出バルブ814を開放して真空ポンプ815を作動させて排出口812を介してチャンバー内を真空に引きした後、ガス切換弁816をArガス817を導入するように
切換えて吸入バルブ813を開放することで、吸入口811を介して反応ガスとしてArガス817をチャンバー内に導入することができる。
【0113】
また、ガス切換弁816を窒素ガス818を導入するように切換えることで、吸入口811を介して封入ガスとして窒素ガス818をチャンバー内に導入することができる。そして、Arプラズマによる基板807,808の表面活性化処理を行った後、チャンバー内を所定の封入ガス雰囲気に置換してピストン型ヘッド802を下降させることで両基板807,808を仮接合することができる。また、上部電極806および下部電極809は図示省略する加熱ヒータを備えており、基板807,808どうしの接合時に加熱を併用することで、基板807,808どうしの接合強度を向上させることができる。
【0114】
なお、後述するように、表面活性化処理後、チャンバー内を所定の雰囲気(Arガス817、窒素ガス818、真空、大気等)に置換してピストン型ヘッド802を下降させることで、両基板807,808の接合面間に外周接合部831bによって囲まれて形成される空間に当該所定の雰囲気を封入して仮接合することができる。また、チャンバー壁803の摺動パッキン(Oリング)4をZ軸801に摺接させてOリングでチャンバーを気密化しているが、ピストン型ヘッド802の外周面に摺動パッキン(Oリング)を設け当該摺動パッキンをチャンバー壁803に摺接させてチャンバーを気密化してもよい。
【0115】
次に、この表面活性化・仮接合装置1における表面活性化処理(表面活性化工程)および仮接合処理(仮接合工程)の処理手順について図5を参照して説明する。まず、図5(a)に示すようにチャンバー壁803が上昇した状態で蓋基板807を上部電極806により保持し、デバイス基板808を下部電極809により保持する。基板807,808の保持方法は機械的なチャッキング方式でもよいが、静電チャック方式がより好ましい。
【0116】
そして、図5(b)に示すようにチャンバー壁803を下降させ、チャンバー台810に固定パッキン805を介して接地させる。チャンバー壁803は摺動パッキン804がZ軸801に摺接することでにより大気と遮断されているので、吸入バルブ813を閉止した状態で排出バルブ814を開放して真空ポンプ815により真空引きを行うことでチャンバー内の真空度を高めることができる。
【0117】
次に、図5(c)に示すようにチャンバー内に反応ガスを導入する。真空ポンプ815を動作させながら排出バルブ814の排出量と吸入バルブ813のガス吸入量を調整することで、ある一定の真空度に保ちながらチャンバー内を任意の反応ガスで満たすことができる。この実施形態では、反応ガスとして、Arガス817を10−2Torr程度の真空度でチャンバー内に充満させ、同図(d)に示すように、最初に下部電極809に交番電源により電圧印加することでArプラズマを発生させ、デバイス基板808に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bの表面活性化処理を行う。すなわち、デバイス基板808に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bの表面をArプラズマによりエッチングし、両接合部831a,831bに付着した酸化膜や有機物などからなる付着物層を除去して表面活性化(洗浄)する。
【0118】
続いて、図5(e)に示すように、上部電極806に交番電源により電圧印加することで同様にしてArプラズマを発生させ、蓋基板807に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bの表面活性化処理を行う。
【0119】
このように、両基板の両接合部に表面活性化処理を行うと、新生面がより確実に露出するので、接合の強度が大きくなるため好ましい。なお、表面活性化処理はデバイス基板808または蓋基板807のうちの少なくとも一方の基板にのみ行うとしてもよい。例えば、受光素子を備えたデバイス基板808では、受光素子はプラズマ処理によりダメージを受けやすため、デバイス基板808に表面活性化処理を行うことは好ましくない。そこで、接合部が金によって形成され、蓋基板807に形成された接合部のみを表面活性化処理し、デバイス基板808および蓋基板807を加圧して接合部表面を押し破ることにより、接合部表面に形成される酸化膜や有機物等の付着物層は薄い場合には新生面が露出して接合を行うことができる。
【0120】
次に、図5(b)に示すように、吸入バルブ813を閉じた状態でチャンバー内をさらに真空引きしてArガスを排出する。なお、両電極806,809を100℃程度に加熱しながら真空引きを行うことにより基板807,808表面に付着したり、基板807,808内部に打ち込まれたArイオンを排出することもできる。
【0121】
その後、図5(c)に示すように、チャンバー内を所定の封入ガスに置換する。なお、
ガス切替弁816でArガス817と窒素ガス818を選択して吸入口811に導入することで、Arガス817と窒素ガス818の2つのガスを1チャンバーで切り替えることができる。また、このガス切替弁816は大気を吸入可能に構成されているので封入ガスとしてチャンバー内に大気を導入することもできる。また、チャンバー内に大気を導入してチャンバー内を大気圧とした後に、チャンバーを開いて大気解放させることもできる。
【0122】
したがって、本実施形態では、封入ガスとして、Arガス817、窒素ガス818、大気ガス、真空のうちから1つのガスを選択してチャンバー内に導入することができる。なお、封入ガスをArガス817とする場合には上記した表面活性化処理後にチャンバー内を真空引きする処理を省略すれば、Arガス817の消費量を抑制できる。また、封入ガスを真空とする場合には上記した表面活性化処理後にチャンバー内を真空引きする処理を行った後、そのまま後述する仮接合処理を行えばよい。
【0123】
続いて、図5(f)に示すように、真空中または封入ガス中でチャンバー壁803とZ軸801とが摺動パッキン4で接しながらピストン型ヘッド802がZ軸801により下降される。このとき、内部接合部831aおよび外周接合部831bがArプラズマにより表面活性化処理された後、エッチングにより除去された付着物層の浮遊物が当該接合部831a,831bに再付着したり、当該接合部831a,831bが大気に暴露されることで、当該接合部831a,831bに有機物や酸化膜などの付着物層が再付着することがある。
【0124】
しかしながら、両基板807,808に形成された外周接合部831bどうしを真空中または封入ガス中で接触させ、加圧することで外周接合部831bに再付着した付着物層が押し破られて当該外周接合部831bどうしが接合し、接合面間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合処理がおこなわれる。
【0125】
なお、チャンバー内はチャンバー壁803とZ軸801との間の摺動パッキン804により外部雰囲気と遮断され、チャンバー内を真空または封入ガス雰囲気に維持した状態でピストン型ヘッド802を下降させることができる。また、仮接合処理の際に両電極806,809に備えられた加熱ヒータにより180℃程度の温度で加熱して、接合強度を向上させることができる。最後に、図5(g)に示すように、チャンバー内に大気を供給し大気圧に戻した後にヘッド部を上昇させて、接合された両基板807,808をチャンバー内から取り出し、表面活性化処理および仮接合処理が終了する。
【0126】
ところで、基板807,808どうしの接合の際に、蓋基板807およびデバイス基板808の位置調整(アライメント)を行った後、仮接合することもできる。図6に示すように、両基板807,808の間に2視野認識手段825を挿入することで、両基板807,808に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bの位置を当該2視野認識手段825で検出できる。
【0127】
この2視野認識手段825は両基板807,808間に挿入された状態で、上下に位置する両基板807,808の内部接合部831aおよび外周接合部831bの像をプリズム826により、上マーク認識手段827と下マーク認識手段828の方向に屈折させてそれぞれ読み取ることができる。また、2視野認識手段825は両基板807,808の接合面にほぼ平行なXY軸方向と、両基板807,808面にほぼ垂直なZ軸方向とに移動可能に構成されたテーブル(図示省略)により移動可能に構成され、両基板807,808の任意の位置に形成された接合部831a,831bの位置を読み取ることができる。
【0128】
そして、両基板807,808に形成された接合部831a,831bの位置を読み取った後、アライメントテーブル820によりデバイス基板808の位置を、蓋基板807の位置に合わせる位置調整を行う。なお、1回目の位置調整が終了した後、再度、2視野認識手段825を両基板807,808に挿入して繰り返して位置調整を行い、位置精度を向上させることもできる。また、本実施形態では、両基板807,808に形成された接合部831a,831bをアライメントマークとして利用したが、別途、両基板807,808の表面にアライメントマークを設けてもよい。
【0129】
このように、この表面活性化・仮接合装置1において、Arプラズマによる両接合部831a,831bの表面活性化処理後、エッチングにより除去された付着物層の浮遊物が外周接合部831bに再付着しても、加圧することで該再付着した付着物層を押し破って両基板807,808の外周接合部831bどうしを接合することができ、接合面間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合処理を行うことができる。
【0130】
なお、仮接合処理を真空中で行うことにより、外周接合部831bによって囲まれて形成される空間を容易に真空雰囲気で封止することができる。また、仮接合処理をArガス、窒素ガス、大気といった封入ガス中で行うことにより、外周接合部831bによって囲まれて形成される空間に容易にこれらの封入ガスを封入することができる。
【0131】
また、封入ガスは、接合部を金とすれば、不活性なガスでなくとも腐食されないため接合に影響はでない。そのため、不活性なもの以外のガスも採用することができる。
【0132】
また、Arプラズマにより表面活性化処理を行えば、接合部831a,831bの付着物層を除去するエッチング力が高く効率がよい。しかしながら、窒素、酸素など他の反応ガスによるプラズマにより表面活性化処理を行うこともできる。
【0133】
なお、外周接合部831bを接合する仮接合処理時に、内部接合部831aも部分的に接触して接合することがある。このような場合であっても、所定の雰囲気中で内部接合部831aの接合が行われることになるので、仮接合処理後、後述する本接合処理を行うことで、両基板807,808間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を確実に封入することができる。
【0134】
3.本接合装置
次に、本接合工程を実行する本接合装置(本発明の「本接合手段」に相当)について説明する。図7は本接合装置を示す図であり、(a)〜(c)は本接合装置のそれぞれ異なる態様を示す。なお、図7で示すそれぞれの本接合装置21〜23は、上記した表面活性化処理による仮接合が行われた後に、大気中で当該両基板807,808の内部接合部831aどうしを接合して本接合する本接合処理(本接合工程)を行うものである。このように、本実施形態では、表面活性化・仮接合装置1および本接合装置21〜23のいずれかにより本発明の「接合装置」が構成されている。
【0135】
(1)本接合装置(a)
図7(a)を参照して本接合装置21について説明する。同図(a)に示すように、本接合装置21は仮接合が行われた蓋基板807およびデバイス基板808を保持するステージ211と、当該ステージ211に保持された両基板807,808を加圧する際、加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段210とを備えている。したがって、加圧手段210により加圧位置をずらしながら、両基板807,808を加圧することで、外周接合部831bの内側に形成された内部接合部831aのすべてを確実に接合することができる。
【0136】
(2)本接合装置(b)
図7(b)を参照して本接合装置22について説明する。同図(b)に示すように、本接合装置22は仮接合が行われた蓋基板807およびデバイス基板808を保持するステージ221と、当該ステージ221に保持された両基板807,808の全面にわたって一括加圧する高圧プレス手段220とを備えている。したがって、高圧プレス手段220により両基板807,808の全面にわたって一括加圧することで、外周接合部831bの内側に形成された内部接合部831aのすべてを確実に接合することができる。
【0137】
(3)本接合装置(c)
図7(c)を参照して本接合装置23について説明する。同図(c)に示すように、本接合装置23は仮接合が行われた蓋基板807およびデバイス基板808を通過させることで加圧する加圧ローラ230を備えている。したがって、加圧ローラ230間に両基板807,808を通過させて加圧することにより、外周接合部831bの内側に形成された内部接合部831aのすべてを確実に接合することができる。
【0138】
このように、この本接合装置21〜23において、仮接合処理によって両基板807,808の接合面間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気が封入された状態で、両基板807,808を全面にわたって加圧することで当該空間内に形成されているすべての内部接合部831aどうしを接合し、本接合を確実に行うことができる。したがって、両基板807,808の接合面間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を確実に封入できる。
【0139】
すなわち、本接合装置21〜23によれば、本接合処理において、両基板807,808を全面にわたって余すところなく加圧することができるので、外周接合部831bの内側に形成されている両基板807,808の内部接合部831aどうしを確実に接合して本接合を行うことができる。
【0140】
また、本接合を大気中で行うことにより、本接合装置の真空チャンバーが不要となり、さらに封入ガスの使用量を削減できコストダウンを図ることができる。
【0141】
なお、Arプラズマによる両接合部831a,831bの表面活性化処理後、仮接合処理が行われる前に、エッチングにより除去された付着物層の浮遊物が内部接合部831aに再付着しても、加圧することで該再付着した付着物層を押し破って両基板807,808の内部接合部831aどうしを接合することができ、接合面間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気をに封入する本接合を行うことができる。
【0142】
以上のように、この実施形態によれば、蓋基板807およびデバイス基板808に形成された外周接合部831bどうしを加圧して仮接合することで、両基板807,808の接合面間に外周接合部831bによって囲まれる空間に所定の雰囲気を封入できる。したがって、当該空間内の所定の雰囲気中で、加圧することにより両基板807,808の内部接合部831aどうしの本接合を確実に行うことができるので、両基板807,808の接合面間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入するとともに、この空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる。
【0143】
また、本実施形態では、仮接合に先立ち、Arプラズマであるエネルギー波で両基板807,808の金属からなる内部接合部831aおよび外周接合部831bを表面活性化処理することで、基板807,808どうしの仮接合および本接合を確実に行うことができる。
【0144】
また、本実施形態では、蓋基板807に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bと、デバイス基板808に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bとを、加圧することで密着させることができ、それぞれ確実に仮接合および本接合を行うことができる。
【0145】
また、デバイス基板808の内部接合部831aに囲まれた領域に、表面弾性波デバイス、RFデバイスなどの半導体デバイスの本体部、機械的な可動部を有するMEMSデバイスの本体部、またはデバイスの電極等を形成して、デバイス基板808の内部接合部831aおよび外周接合部831bと、蓋基板807の内部接合部831aおよび外周接合部831bとの仮接合および本接合を行った後、接合後の両基板807,808を、内部接合部831aによって囲まれた領域ごとにダイシングすることで、デバイスの本体部や電極が内部接合部831aによって囲まれて外部の雰囲気と遮断された複数のデバイスを提供できる。
【0146】
また、本実施形態では、蓋基板807およびデバイス基板808の両方に、内部接合部831aおよび外周接合部831bが形成されており、これらの両基板807,808どうしを接合しているが、蓋基板807の接合部は金薄膜829等であってももちろんよい。
【0147】
なお、本実施形態では、接合部831a,831bの表面活性化処理後、当該接合部831a,831bに付着物層が再付着することを前提として、付着物層が接合部831a,831bに再付着しても、この付着物層を押し破ることで接合部831a,831bが接合できることを、その接合原理とともに詳細に説明した。しかしながら、接合部831a,831bの表面活性化処理後、両基板807,808を真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中から外部に搬送(大気に暴露)しなければ、接合部831a,831bに付着物層が再付着しないこともある。このような場合であれば、接合部831a,831bをそのまま接触させれば接合できることは言うまでもない。
【0148】
<第2実施形態>
この発明の第2実施形態について図8および図9を参照して説明する。本実施形態が、上記第1実施形態と異なる点は、表面活性化・仮接合装置10の構成が異なる点であり、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。また、本実施形態の表面活性化・仮接合装置10が上記第1実施形態の本接合・仮接合装置1と大きく異なる点は、IR(赤外)光をチャンバー内に導光して両基板807,808の位置調整(アライメント)を行っている点である。その他の構成および動作は上記第1実施形態と同様であるため、以下、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の構成および動作は同一符号を付して、その構成および動作の説明を省略する。
【0149】
4.表面活性化・仮接合装置(b)
表面活性化工程および仮接合工程を実行する表面活性化・仮接合装置10(本発明の「表面活性化手段」、「仮接合手段」に相当)について説明する。図8は表面活性化・仮接合装置を示す図であり、両基板807,808の位置調整を行っている状態を示す図である。また、図9は図8に示す位置調整が終了した後に、仮接合が行われている状態を示す図である。
【0150】
図8に示すように、表面活性化・仮接合装置10は、IR光源823、IR光源823からのIR光を基板807,808方向へ導光する屈折部824aを有する導光部824、導光部824により導光されたIR光を認識するIR認識手段822とを備えている。また、チャンバー壁803にはIR光源823が照射したIR光をチャンバー内に入光するガラス窓803aが設けられている。また、支柱806aにより導光部824に支持された上部電極806と、アライメントテーブル820に支持された下部電極809には、それぞれIR光が通過可能に透過穴806b,819が形成されている。また、チャンバー台の下部には、導光部824により導光されたIR光が通過可能にガラス窓821が設けられている。
【0151】
したがって、図5を参照して説明した処理と同様に表面活性化処理を行いチャンバー内を真空引きした後、またはチャンバー内を真空引きして封入ガスと置換した後、仮接合処理を行う前に両基板807,808のアライメントを行うことができる。すなわち、表面活性化処理後の両基板807,808を近接させた状態でIR光源823からIR光を照射すれば、ガラス窓803aを通過した当該IR光が導光部824によりIR認識手段822の方向へ導光される。そして、透過穴806b,819およびガラス窓821を通過した当該IR光をIR認識手段822により読み取ることで、蓋基板807およびデバイス基板の接合面に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bの位置を同時に検出することができる。
【0152】
そして、IR認識手段822により検出された位置情報に基づいてアライメントテーブル820を移動制御することで、両基板807,808のアライメントを行うことができる。なお、IR認識手段822は、両基板807,808面にほぼ平行なXY軸方向と、両基板807,808面にほぼ垂直なZ軸方向とに移動可能に構成されたテーブル(図示省略)により移動可能に構成されている。また、アライメントテーブル820を移動制御した後、再度、IR認識手段822により両基板807,808のアライメントを繰返すことにより、位置精度を向上させることもできる。また、IR認識手段822の焦点深度を合わせるために、Z軸方向にIR認識手段822を上下に移動させることもできる。
【0153】
また、表面活性化・仮接合装置10におけるIR光の光路である、透過穴806b、819、ガラス窓803a,821、支柱806aの内側の空間およびアライメントテーブル820の内側の空間などは、空間やガラスに限らず、IR光を透過する材質で構成してもよい。また、IR光の透過光を利用したアライメントだけでなく、両基板807,808の下方からIR光を照射して、当該IR光の反射光を利用したアライメントを行ってもよい。
【0154】
次に、図9を参照して、図8を参照して説明した両基板807,808のアライメント処理が終了した後の仮接合処理について説明する。図9に示すように、真空中または封入ガス中でチャンバー壁803とZ軸801とが摺動パッキン4で接しながらピストン型ヘッド802がZ軸801により下降される。そして、両基板807,808に形成された外周接合部831bどうしを真空中または封入ガス中で接触させ、加圧することで外周接合部831bに再付着した付着物層が押し破られて当該外周接合部831bどうしが接合し、接合面間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合処理がおこなわれる。
【0155】
このとき、上部電極806および下部電極809にそれぞれ形成された透過穴806b,819をIR光が通過できるように、上部電極806はその周縁部が支柱806aによって、下部電極809はその周縁部がアライメントテーブル820によって支持されている。このような構成とすれば、図9に示す仮接合処理が行われる際、両基板807,808の周縁部を、該周縁部以外(基板807,807の中央部)よりも高くすることができる。したがって、図9中の一点鎖線で囲まれた部分に示すように、基板807,808はその周縁部が強く押圧されることとなるため、中央部が多少ふくらんで撓んだ状態となる一方、外周接合部831bどうしは確実に密着して接合する。
【0156】
以上のように、この実施形態では、仮接合処理において両基板807,808の周縁部を、該周縁部以外よりも高くしているため、基板807,808の周縁部に内部接合部831aすべてを取り囲んで突出形成された外周接合部831bどうしを接合する仮接合を確実に行うことができ、両基板807,808の接合面間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して、よりいっそう確実に当該空間の内部の雰囲気と外部の雰囲気とを遮断することができる。
【0157】
また、本実施形態では、外周接合部831bの硬度を、内部接合部831aの硬度よりも低く形成すればよい。このような構成とすれば、外周接合部831bの硬度が、内部接合部831aの硬度よりも低く形成されているため、外周接合部831bが内部接合部831aよりも変形しやすく、当該外周接合部831bどうしが密着するため確実に仮接合することができる。
【0158】
一例として、外周接合部831bが潰れやすいように、外周接合部831bの下地を錫または金と錫の合金層などの硬度が低いものを使用することで、より潰れやすくなり好ましい。また、この場合、加圧力は一例として300MPaから100MPaに下げることができた。
【0159】
なお、外周接合部831bの硬度を、内部接合部831aの硬度よりも低く形成するには、例えば、外周接合部831bを金で形成し、内部接合部831aを金よりも硬度が高い銅で形成すればよい。また、両接合部831a,831bを共に金で形成し、外周接合部831bのみを60Hv程度の硬度となるようにアニーリングして柔らかくすることもできる。
【0160】
また、さらに良好な接合を行うためには、外周接合部831bと内部接合部831aの加圧力に差をつけ、外周接合部831bの加圧力を内部接合部831aよりも高くすることが好ましい。
【0161】
ところで、表面活性化・仮接合装置10のように、チャンバー内にIR光を導光して基板807,808どうしのアライメント処理を行う構成の場合、チャンバー内でのIR光の光路を確保するため、図8に示すように、上部電極807および下部電極809の周縁部を支持して中央部に空間を設ける必要が生じることがある。このような構成とすれば、装置の構造上、基板807,808どうしを重ね合わせて加圧するときに、基板807,808の周縁部に、該周縁部以外よりも強い押圧力が加わりやすい。
【0162】
しかしながら、本発明の「基板」に相当する蓋基板807およびデバイス基板808どうしを接合することで、まず、両基板807,807の周縁部に形成された外周接合部831bどうしを密着させて仮接合処理を行って、その後、上記した本接合装置によって、内部接合部831aどうしの本接合を行うことで、両基板807,808の接合面間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して、確実に当該空間の内部の雰囲気と外部の雰囲気とを遮断することができる。
【0163】
また、図6に示すように2視野認識手段825によりアライメントを行う構成であっても、ステージ部またはヘッド部の周縁部を支持することで、ステージ中央部よりも両基板の周縁部に大きな力がかかるようにして、外周接合部831bの仮接合を行いやすい構成としてもよい。
【0164】
<第3実施形態>
この発明の第3実施形態について図10を参照して説明する。本実施形態が、上記第1および第2実施形態と異なる点は、表面活性化・仮接合装置11および本接合装置22がチャンバー30内に収納されて接合装置3が構成されている点であり、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。以下、上記第1および第2実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の構成および動作は同一符号を付して、その構成および動作の説明を省略する。
【0165】
5.接合装置(a)
接合装置3について説明する。図10は接合装置を示す図である。図10に示すように、接合装置3は、表面活性化・仮接合装置11と、本接合装置22と、表面活性化・仮接合室11および本接合装置22が内部に収納されたチャンバー30とを備えている。また、チャンバー30の表面活性化・仮接合室に表面活性化・仮接合装置11が配設され、本接合室に本接合装置22が配設されている。
【0166】
そして、表面活性化・仮接合室の入口には気密シャッター31が設けられ、この気密シャッター31を閉じることで表面活性化・仮接合室を気密化することができる。また、チャンバー30内の表面活性化・仮接合室と本接合室との間には、表面活性化・仮接合装置11から本接合装置22へと基板807,808を搬送可能に搬送機構33が配設されている。なお、搬送装置33については、周知の種々の搬送装置33を採用することができ、その構成および動作は周知のものであるため、その構成および動作の説明は省略する。また、以下の実施形態で説明する搬送装置についても、その構成および動作の説明は省略する。
【0167】
また、本接合室に配設する本接合装置としては本接合装置22に限られず、上記した種々の本接合装置21〜23を配設することができる。これらの本接合装置21〜23による本接合処理以外の方法で本接合処理を行う方法としては、本接合室に所定の気体を導入して超高気圧とすることで、大気圧によって両基板807,808を加圧して本接合処理を行うこともできる。また、図示省略したガス供給手段およびガス排出手段により、チャンバー30内を任意の気圧で所定のガス雰囲気とすることができ、あるいは、チャンバー30内を真空雰囲気とすることができるように構成されている。以上のような構成とすれば、上記した第1および第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0168】
<第4実施形態>
この発明の第4実施形態について図11を参照して説明する。本実施形態が、上記第3実施形態と異なる点は、両基板807,808を加熱することにより仮接合処理および本接合処理を行っている点であり、仮接合装置12のみチャンバー40内に収納されている点である。その他の構成は上記第3実施形態と同様である。以下、上記第1ないし第3実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の構成および動作は同一符号を付して、その構成および動作の説明を省略する。
【0169】
6.接合装置(b)
接合装置4について説明する。図11は接合装置を示す図である。図11に示すように、接合装置4は、チャンバー40内に収納された仮接合装置12と、本接合装置22とを備えている。また、チャンバー40の入口には気密シャッター41が設けられ、この気密シャッター41を閉じることでチャンバー40を気密化して、所定の雰囲気中で仮接合処理を行うことができる。
【0170】
また、チャンバー40内の仮接合装置12と本接合装置22との間には、仮接合装置12から本接合装置22へと基板807,808を搬送可能に搬送機構43が配設されている。このような構成とすれば、仮接合処理および本接合処理において、上部電極806、下部電極809、ピストン型ヘッド220およびステージ221に内蔵され図示省略された加熱ヒータ(本発明の「加熱手段」に相当)により両基板807,808を加熱して、外周接合部831bどうし、内部接合部831aどうしを加熱拡散接合することができる。
【0171】
なお、本接合装置22に限られず、上記した種々の本接合装置21〜23を採用することができる。また、上記した表面活性化処理を併用して加熱拡散接合を行ってもよい。以上のような構成とすれば、上記した第1ないし第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0172】
また、表面活性化処理を併用して仮接合処理および本接合処理を行う場合、当該接合時に室温〜180℃の低温加熱によるアニーリングを行うことにより、基板の表面粗さやうねりに起因する接合部831a,831bの残留応力やひずみを除去することでき、接合強度の向上を図ることができる。
【0173】
<第5実施形態>
この発明の第5実施形態について図12および図13を参照して説明する。本実施形態が、上記した実施形態と異なる点は一方の基板808の基板本体808aの表面にのみ内部接合部831cおよび外周接合部831dが形成されている点であり、しかも、これら内部接合部831cおよび外周接合部831dの断面が尖形形状に形成されている点である。また、エネルギー波(プラズマ)による表面活性化処理が他方の基板807の基板本体807aの表面に形成された接合部としての金薄膜832にのみ行われている。その他の構成は上記第1ないし第3実施形態と同様である。以下、上記第1ないし第3実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の構成および動作は同一符号を付して、その構成および動作の説明を省略する。なお、図12は基板の他の例を示す図、図13は図12に示す基板の接合原理を示す図である。
【0174】
(4)基板(c)
図12を参照して基板の他の例について説明する。図12(a)は基板の斜視図、(b)は(a)のB−B線矢視断面図である。図12に示すように、デバイス基板808の基板本体808aの表面には、所定領域を囲んだ内部接合部831cと、基板本体808aの周縁部に内部接合部831cを取り囲んだ外周接合部831dとが断面が尖形形状に突出形成されている。また、内部接合部831cに囲まれた領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部829が形成されている。ここで、所定領域とは、回路の動作部分や振動部分などが形成される領域のことである。
【0175】
また、内部接合部831cおよび外周接合部831dは、それぞれ金めっきにより厚膜状に基板本体808aに突出形成されている。また、図12(a)に示すように、この一例では、外周接合部831dの基板本体808aの表面からの高さが約7μmに形成されており、基板本体808aの表面からの高さが約5μmに形成されている内部接合部831cの高さよりも高くなるように構成されている。
【0176】
また、蓋基板807の基板本体807aの表面には接合部として金薄膜832がスパッタリングまたはフラッシュめっきにより形成されている。なお、金薄膜832の代わりに、デバイス基板808と同様に内部接合部831aおよび外周接合部831bを形成してもよい。
【0177】
(5)基板(d)
また、上記した「(4)基板(c)」の項で説明したデバイス基板808が有する、断面が尖形形状の内部接合部831cおよび外周接合部831dにより、図3と同様のデバイス基板808を形成してもよい。すなわち、デバイス基板808の基板本体808aの表面に複数の内部接合部831cを突出形成し、基板本体808aの周縁部に内部接合部831cのすべてを取り囲んだ外周接合部831dを突出形成してもよい。なお、内部接合部831aに囲まれたぞれぞれの領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部829が形成されている。
【0178】
その他の構成については、上記した第1実施形態の「(1)基板(a)」、「(2)基板(b)」および「(3)その他」の項で説明した構成と同様であるので、相当符号を付してその構成についての詳細な説明は省略する。なお、本実施形態では、デバイス基板808に内部接合部831cおよび外周接合部831dを形成し、蓋基板807に金薄膜832を形成したが、蓋基板807に内部接合部831cおよび外周接合部831dを形成し、デバイス基板808に当該デバイス基盤808上のデバイスの本体部829を避けるようにして金薄膜832を形成してもよい。
【0179】
次に、本実施形態における基板の接合原理について図13を参照して説明する。図13は図12に示す基板の接合原理を示す図である。通常、デバイス基板808や蓋基板807の表面に形成された接合部831a,831b,832の表面には酸化膜や有機物等の付着物層が形成されているため、180℃以下の低温で固相のまま接合部831a,831b,832どうしを接触させても当該接合部831a,831b,832どうしを接合することはできない。したがって、上記第1ないし第3実施形態で説明したように、プラズマ等のエネルギー波で接合部831a,831b,832の表面に付着した付着物層を除去し、当該接合部831a,831b,832の新生面を露出させて表面活性化した状態で接合部831a,831b,832どうしを接触させることにより当該接合部どうしを接合することができる。
【0180】
また、上記第4実施形態で説明したように、接合部831a,831b,832を加熱することにより、少なくとも接合部831a,831b,832の表面を溶融させることで、当該接合部831a,831b,832どうしの接合を行うことができる。しかしながら、本実施形態では、図13(a)に示すように、デバイス基板に形成された外周接合部831d(内部接合部831c)の断面が尖形形状に形成されている。したがって、デバイス基板808の外周接合部831d(内部接合部831c)と、蓋基板807の金薄膜832とを衝合させて加圧することにより、図4(b)に示すように、断面尖形形状の外周接合部831d(内部接合部831c)が押し潰されて、当該外周接合部831d(内部接合部831c)の表面に付着した酸化膜や有機物等からなる付着物層が押し破られて新生面が露出する。
【0181】
一方、加圧されることにより外周接合部831d(内部接合部831c)が押し潰される際に、外周接合部831d(内部接合部831c)と、金薄膜832との間で”滑り”が生じるため、金薄膜832の表面に付着した酸化膜や有機物等からなる付着物層も押し破られることとなる。すなわち、デバイス基板808の断面尖形形状の外周接合部831d(内部接合部831c)は加圧されて押し潰されることにより、外周接合部831d(内部接合部831c)表面の酸化膜や有機物等の付着物層が押し破られて新生面が露出し、さらに、上記したように金薄膜832の付着物層も押し破られて新生面が露出することから、外周接合部831d(内部接合部831c)と金薄膜832とが原子間力により図13(b)に示すように接合される。
【0182】
なお、蓋基板807に形成された接合部としての金薄膜832にのみプラズマ(エネルギー波)による表面活性化処理を行うことで、金薄膜832表面の酸化膜や有機物等の付着物層を除去して当該金薄膜832の新生面を露出させることができ、より確実に内部接合部831cおよび外周接合部831dと金薄膜832との接合を行うことができる。また、金薄膜832は酸化しづらいため、再酸化による酸化膜が再形成されにくく、酸化膜が形成されたとしても表面活性化処理後、一定時間内であればその厚さは薄いので、内部接合部831cおよび外周接合部831dを金薄膜832に接触させて加圧することにより容易に押し破られて新生面が再露出し、内部接合部831cおよび外周接合部831dと金薄膜832とが接合される。
【0183】
以上のように、この実施形態では、デバイス基板808の基板本体808aの表面に断面が尖形形状の内部接合部831cおよび外周接合部831dを形成したため、加圧して当該内部接合部831cおよび外周接合部831dを押し潰すことにより、両接合部831c、831d表面の酸化膜や有機物等の付着物層を押し破って、新生面を露出させることができる。また、内部接合部831cおよび外周接合部831dと、金薄膜832との接触部分(接合界面)では、内部接合部831cおよび外周接合部831dが押し潰されて該接触部分の面積が広がっていく過程において両接合部831c,831dと金薄膜832との間に大きな”滑り”が生じ、両接合部831c,831dに新生面を露出させるとともに、金薄膜832表面の付着物層も押し破って当該金薄膜832に新生面を露出させることができる。したがって、プラズマ等のエネルギー波で表面活性化処理を行わずとも、露出した新生面の原子間力により内部接合部831cおよび外周接合部831dと、金薄膜832とを接合することが出来る。
【0184】
なお、蓋基板807に形成された接合部としての金薄膜832にのみプラズマ(エネルギー波)による表面活性化処理を行うことで、金薄膜832表面の酸化膜や有機物等の付着物層を除去して当該金薄膜832の新生面を露出させることができ、よりいっそう確実に基板807,808の接合を行うことができる。この場合であっても、内部接合部831cおよび外周接合部831dに対する接合前のプラズマ等のエネルギー波による表面活性化処理を省略することができるので、工程の簡略化を図ることができる。
【0185】
また、本発明者は、内部接合部831cおよび外周接合部831dの基板本体808aの表面から先端までの高さが20〜90%となる範囲で内部接合部831cおよび外周接合部831dをそれぞれ押し潰せば、両接合部831c、831d表面の酸化膜や有機物等の付着層を確実に除去して新生面を露出することができ、電気的信頼性のよい接合が可能であることを実験的に見出した。図14を参照して、外周接合部831dを例にとり、外周接合部831dの基板表面から先端までの高さと接合強度との関係について説明する。
【0186】
図14は外周接合部831dがAu、Al、Cuである場合の、外周接合部831dの高さと接合強度との関係を示した図である。同図において外周接合部831dの高さは、完全につぶれてしまったときを0%、全く潰れていないときを100%としている。同図において、接合が良好であるための接合強度は1つの外周接合部当たり150g以上の場合とし、1つの外周接合部当たりの接合強度が150g以上となり接合強度が十分良好であるためには、加圧し潰れた後の外周接合部831dの高さは基板表面から外周接合部831dの先端までの高さが、潰れる前のおよそ20〜90%となる場合であればよいことが分かる。
【0187】
また、図14では、外周接合部831dの高さが基板表面から外周接合部831dの先端までの高さの0〜20%となるときは、外周接合部831dは大きく潰れているため十分接合していると考えられるが、加圧力が十分過ぎ、デバイス基板808および蓋基板807に余計なダメージが与えられる等、接合されない可能性が含まれると考えられる。また、外周接合部831dの高さが接合面から外周接合部831dの先端までの高さの90〜100%となるときは、外周接合部831dの潰れ方が小さいため、接合されない可能性があると考えられる。以上の点を考慮すると、接合を良好に行うための外周接合部831dの高さは、基板表面から外周接合部831dの先端までの高さの20〜90%の場合とするのがよい。
【0188】
したがって、外周接合部831dの接合面からの高さが加圧前の接合面からの高さの20〜90%の範囲となるように、デバイス基板808や蓋基板807等の被接合物に加圧するのがよい。また、内部接合部831cについても同様であり、内部接合部831c、外周接合部831dともに20〜90%となるように加圧するのがよい。
【0189】
そこで、加圧中は、ヘッド高さ検出手段(図示省略)により基板を保持するヘッドの高さをモニタすることにより、内部接合部831cおよび外周接合部831dの、他方の基板807からの高さを検出し、内部接合部831cおよび外周接合部831dの高さが20〜90%の高さとなるように加圧力の調整を行えばよい。
【0190】
また、本発明者は、一方の基板808に形成された内部接合部831cおよび外周接合部831dへの加圧力が、金属の種類、加圧の速さ等の条件に関わらず、1つの内部接合部831cまたは外周接合部831dあたり100〜700MPaの範囲のときに、内部接合部831cまたは外周接合部831dが20〜90%の範囲の高さに押し潰されることを実験的に見出した。したがって、デバイス基板808および蓋基板807等の基板に、1つの内部接合部831cまたは外周接合部831dあたり100〜700MPaの範囲の加圧力が加えられ、内部接合部831cまたは外周接合部831dの高さが20〜90%の高さとなるように制御を行うとしてもよい。
【0191】
また、本実施形態のように、内部接合部831aおよび外周接合部831bの断面が尖形形状となるように形成することで、以下に説明するような特有な効果を奏することができる。すなわち、デバイス基板808が受光素子であるCMOSイメージセンサを備える場合、基板807,808の接合前にデバイス基板808の表面活性化処理を行うと、プラズマ等のエネルギー波の照射によりデバイス基板808に不要な電荷等が与えられ、CMOSイメージセンサがダメージを受けるおそれがある。
【0192】
しかしながら、本実施形態によれば、プラズマ等のエネルギー波によるダメージを受けやすいCMOSイメージセンサ等の受光素子をデバイス基板808に形成した場合でも、受光素子を備えるデバイス基板808には断面が尖形形状の内部接合部831cおよび外周接合部831dを形成しているため、デバイス基板808の表面活性化処理を行わずともデバイス基板808と蓋基板807との接合を行うことができる。したがって、受光素子を備えるデバイス基板808にプラズマ等のエネルギー波によるダメージを与えることなく、デバイス基板808と蓋基板807とを接合することができる。なお、受光素子はCMOSイメージセンサに限られず、CCD等の受光素子や、また、センシング素子、その他、プラズマ等のエネルギー波によりダメージを被りやすいデバイスであれば同様の効果を奏することができる。
【0193】
<その他>
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、接合する基板807,808の種類、基板上に形成されたデバイスの種類に応じて、上記した種々の接合装置から最適なものを組み合わせることができる。以下、接合装置の変形例について図15を参照して説明する。図15は接合装置の変形例を示す図である。
【0194】
7.接合装置(c)
接合装置5について説明する。図15(a)に示すように、接合装置5は、表面活性化装置が配設された表面活性化室と、仮接合装置が配設された仮接合室と、本接合装置が配設された本接合室とを有するチャンバー50を備えている。また、チャンバー50内には基板807,808を各室の間で搬送する搬送機構53が配設されている。また、各室の入口にはそれぞれの空間を気密化できる気密シャッター(図示省略)が配設されている。このように、各処理はすべて同一のチャンバー50内で実行される。このような構成としても上記した第1ないし第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0195】
8.接合装置(d)
接合装置6について説明する。図15(b)に示すように、接合装置5は、表面活性化装置と、仮接合装置と、本接合装置とを備えている。また、各装置の間で基板807,808を搬送可能に搬送機構63が大気中に配設されている。このような構成としても上記した第1ないし第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0196】
また、内部接合部および外周接合部は、断面尖形形状を有していてもよいし、断面尖形形状を有さない形状としてもよく、これらをどのように組み合わせて構成してもよい。以下、基板の変形例について図16および図17を参照して説明する。図16および図17は基板の変形例を示す図である。
【0197】
(6)基板(e)
基板(e)について説明する。図16に示すように、基板(e)の外周接合部831fは、断面尖形形状を有しており、その他は第1実施形態に示した基板(a)と同様である。このような構成とすることにより、基板(e)の外周接合部831fは加圧により潰れやすい構成となる。また、外周接合部831fと内部接合部831eが同じ金属の場合でも、断面尖形形状を有する外周接合部831fのほうが潰れやすい。したがって、外周接合部831fの仮接合を容易に行うことができる。
【0198】
(7)基板(f)
基板(f)について説明する。図17に示すように、基板(f)の内部接合部831gは断面尖形形状をしており、その他は第1実施形態に示した基板(a)と同様である。このような構成とすることにより、基板(f)の内部接合部831gは潰れやすく、外周接合部831hの仮接合を行った後、内部接合部831gを本接合装置21ないし23により容易に潰して、確実に本接合を行うことができる。
【0199】
なお、外周接合部を高くする場合には、図16のように外周接合部を先鋭とすることで先端を潰れ易く形成すれば、大きな加圧力をかけることなく外周接合部を接合させることができるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】基板の一例を示す図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】基板の他の例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態たる接合装置の表面活性化・仮接合装置を示す図である。
【図5】表面活性化処理および仮接合処理の手順を示す図である。
【図6】図1の装置において2視野認識手段を用いた大気中でのアライメント処理を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態たる接合装置の本接合装置を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態たる接合装置の表面活性化・仮接合装置を示す図である。
【図9】図8の装置おいて仮接合が行われている状態を示す図である。
【図10】本発明の接合装置の第3実施形態を示す図である。
【図11】本発明の接合装置の第4実施形態を示す図である。
【図12】基板の他の例を示す図である。
【図13】図12に示す基板の接合原理を示す図である。
【図14】外周接合部の高さと接合強度との関係を示す図である。
【図15】本発明の接合装置の変形例を示す図である。
【図16】本発明の基板の変形例を示す図である。
【図17】本発明の基板の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0201】
1,10,11…表面活性化・仮接合装置(表面活性化手段、仮接合手段)
12…仮接合装置(仮接合手段)
21,22,23…本接合装置(本接合手段)
210…加圧手段
220…高圧プレス手段
230…加圧ローラ
801…Z軸(上下駆動機構、加圧手段)
807…蓋基板(基板)
807a,808a…基板本体
808…デバイス基板(基板)
831a,831c,831e,831g…内部接合部
831b,831d,831f,831h…外周接合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板本体の表面に形成された金属からなる接合部を有する基板どうしを接合する接合技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイス、またはデバイスの電極等が酸化などの理由で劣化するのを防止するため、これらのデバイスの本体部が形成されたデバイス基板を蓋状部材で被覆して該デバイス基板上のデバイスのデバイス回路の動作部分や振動部分などの本体部を外部の雰囲気から遮蔽する技術が知られている。例えば、特許文献1には、外部の雰囲気から遮蔽すべきデバイスの本体部が設けられたデバイス基板の接合面にデバイスの本体部を囲んで輪郭状に金属接合部を盛上げて形成し、この金属接合部に蓋となる蓋基板を接合することでデバイスの本体部を外部の雰囲気から遮蔽する技術が開示されている。すなわち、不活性ガスや真空といった所定の雰囲気中でデバイス基板と蓋基板とを接合すれば、両基板の接合面間に金属接合部によってデバイスの本体部を輪郭状に囲んで形成された空間に当該所定の雰囲気を封入してデバイスの本体部を外部の雰囲気から遮蔽することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−191556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来技術では、デバイス基板の接合面に形成された金属接合部と、蓋基板の接合面に形成された金属接合部とを、原子ビーム、イオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で表面活性化した後、当該金属接合部どうしを接触させて、両基板どうしを重ね合わせた状態で加圧することで接合している。例えば、デバイス基板上に複数のデバイスの本体部が形成され、該複数のデバイスの本体部のそれぞれを囲むように複数の輪郭状の金属接合部が形成されたデバイス基板と蓋基板とを接合する場合には、重ね合わされた両基板を全面にわたって均一に加圧することで、当該デバイス基板の複数の金属接合部と蓋基板の金属接合部とを接合することができる。
【0005】
このとき、両基板の接合面間に金属接合部によってデバイスの本体部を囲んで形成された空間内部の雰囲気と外部の雰囲気とを確実に遮断するために、両基板の金属接合部どうしを密着させて接合する必要がある。したがって、両基板を全面にわたって均一に加圧できるように、重ね合わされた両基板を弾性材を介して加圧したり、球面軸受けを介して加圧することで当該両基板の平行度を改善するように構成されている。
【0006】
しかしながら、このような構成としても、基板を保持するステージの凹凸や、基板そのものの凹凸等を原因として、重ね合わされた両基板を全面にわたって均一に加圧できないおそれがある。このように、デバイス基板の接合面に複数の輪郭状の金属接合部が形成されている場合、両基板を全面にわたって均一に加圧できなければ、該複数の金属接合部のうちの一部が他方の金属接合部と接合せず、該接合しない金属接合部によって囲まれた空間に所定の雰囲気を封入できないおそれがあった。すなわち、当該接合しない金属接合部に囲まれた空間内のデバイスの本体部を外部の雰囲気から遮蔽できないこととなり、さらなる技術の改善が求められていた。また、パーティクル(ゴミ)の混入により、中央部に大きなボイドが残るという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、両基板の接合面間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して当該空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる接合方法は、基板本体の表面に形成された金属からなる接合部を有する基板どうしを接合する接合方法において、少なくとも一方の前記基板の前記接合部は、前記基板本体の表面の所定領域を囲んで突出形成された少なくとも1つの内部接合部と、前記基板本体の周縁部に前記内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された外周接合部とを有し、前記外周接合部と他方の前記基板の前記接合部とを加圧手段により加圧して接合し、前記両基板の接合面間に前記外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合工程と、前記仮接合工程の後に、前記内部接合部と前記他方の前記接合部とを前記加圧手段により加圧して接合する本接合工程とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【0009】
また、本発明にかかる接合装置は、基板本体の表面に形成された金属からなる接合部を有する基板どうしを接合する接合装置において、少なくとも一方の前記基板の前記接合部として、前記基板本体の表面の所定領域を囲んで少なくとも1つの内部接合部を突出形成するとともに、前記基板本体の周縁部に前記内部接合部すべてを取り囲んで外周接合部を突出形成し、一方の前記基板を保持するヘッドと、他方の前記基板を保持するステージと、前記ヘッドまたは前記ステージの少なくとも一方を前記基板の接合面とほぼ垂直な方向に加圧制御が可能な上下駆動機構と、前記外周接合部と他方の前記基板の前記接合部とを加圧して接合し、前記両基板の接合面間に前記外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して仮接合する仮接合手段と、前記仮接合の後に、前記内部接合部と前記他方の前記接合部とを加圧して接合して本接合する本接合手段とを備えることを特徴としている(請求項12)。
【0010】
このように構成された発明では、少なくとも一方の基板の接合部として、基板本体の表面の所定領域を囲んで少なくとも1つの内部接合部を突出形成するとともに、基板本体の周縁部に内部接合部すべてを取り囲んで外周接合部を突出形成し、外周接合部と他方の基板の接合部とを加圧して仮接合することで、両基板の接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気、すなわち、仮接合が行われる空間の雰囲気を封入できる。ここで、所定領域とは、回路の動作部分や振動部分などが形成される領域のことである。
【0011】
そして、両基板の接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成された空間の内側に形成されている内部接合部と他方の基板の接合部とを加圧して本接合することで、仮接合の際に当該空間に所定の雰囲気が封入されているため、両基板の接合面間に内部接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入できる。このように、最初に外周接合部を仮接合することで、両基板の接合面間に外周接合部によって囲まれた空間、すなわち内部接合部が形成されている空間に所定の雰囲気を封入でき、そして、内部接合部と他方の基板の接合部との本接合を当該所定の雰囲気中で確実に行うことができる。したがって、両基板の接合面間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して当該空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる。
【0012】
また、少なくとも一方の基板に形成された内部接合部および外周接合部と、他方の基板の接合部とを、加圧することにより密着させることができ、確実に仮接合および本接合を行うことができる。また、パーティクルによるボイドが残った場合においても本接合において個別に押圧することでボイドをつぶすことができる。
【0013】
また、前記仮接合工程の前に、原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で前記少なくとも一方の基板の前記接合部を表面活性化する表面活性化工程をさらに備える構成でもよい(請求項2)。また、前記仮接合手段による前記仮接合に先立ち、原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で前記少なくとも一方の基板の前記接合部を表面活性化する表面活性化手段をさらに備える構成でもよい(請求項13)。
【0014】
このような構成とすれば、仮接合に先立ち、原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で両基板の金属からなる外周接合部および内部接合部を表面活性化することで、両基板の仮接合および本接合を確実に行うことができる。
【0015】
なお、エネルギー波による接合部の表面活性化とは、エネルギー波で接合部の接合界面を活性化状態にして、接合部どうしを低温かつ固相で接合するための処理である。すなわち、金属からなる接合部の表面に付着した有機物や酸化膜などの付着物層をエネルギー波を照射することによりエッチングして除去することで、接合部を構成する金属原子のダングリングボンドを接合部の表面に出現させて当該接合部の表面を活性化できる。そして、このように表面が活性化した接合部どうしを接触させることで当該接合部表面のダングリングボンドどうしが結合して接合部どうしを接合することができる。以下、エネルギー波による接合部の表面活性化を接合部の表面活性化処理と称する。
【0016】
また、エネルギー波を生成する反応ガスとして、例えば、不活性なArガスを採用することができる。Ar原子は原子量が大きくエッチング力が高いため、Arビーム、ArイオンビームまたはArプラズマからなるArエネルギー波を採用することで、非常に効率よく接合部の表面活性化処理を行うことができる。また、Arガスは不活性ガスであるため、接合部がどのような金属で構成されていても化学的な反応が発生しないので、接合部に化学的な影響を与えることなく該接合部の表面活性化処理を行うことができる。なお、Arビーム、ArイオンビームまたはArプラズマは、それぞれ周知の装置によって生成することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0017】
さらに、エネルギー波により接合部の表面を表面活性化処理するときは、金属からなる接合部の表面に付着した付着物層を確実に除去するために、少なくとも1nm以上エッチングすることが望ましい。
【0018】
ところで、10−5Torr以下である高真空中でエネルギー波により接合部を表面活性化処理して接合部の表面に付着した酸化膜や有機物などからなる付着物層を除去し、そのまま、大気に暴露することなく、高真空中で接合部どうしを接触させるか、Arガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で接合部どうしを接触させれば、当該接合部に付着物層が再付着するのが防止されるため、当該接合部どうしを接合することができる。一方、エネルギー波による接合部の表面活性化処理後、10−5Torr以上である低真空中や大気中で接合部どうしを接触させたり、大気中で両基板間の位置調整(アライメント)を行った後に接合部どうしを接触させた場合には、接合部表面に酸化膜や有機物のような付着物層が再形成されて接合部表面が不活性な状態となるため、接触させるだけでは接合部どうしを接合することはできない。
【0019】
しかしながら、接合部の表面活性化処理後、すぐであれば付着物層が再付着しても薄いので、接合部どうしを接触させて両基板を加圧することにより該付着物層を押し破れば、接合部表面の接合界面が広がって当該接合部表面に新生面が現れるため、接合部どうしを接合することができる。
【0020】
したがって、基板本体に形成された金属からなる外周接合部および内部接合部をエネルギー波により表面活性化処理した後、両基板を加圧することで外周接合部に再付着した付着物層を押し破って仮接合を行うことができる。仮接合を行うことで、両基板の接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気、すなわち仮接合が行われた空間の雰囲気を封入して、当該空間内部の雰囲気と外部の雰囲気とを遮断することができる。また、仮接合後に両基板をさらに加圧することで、所定の雰囲気が封入された外周接合部で囲まれた空間内で内部接合部の本接合を行うことができ、接合面間に内部接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に当該所定の雰囲気を封入できる。
【0021】
また、エネルギー波により接合部表面を活性化し、該接合部に再付着した付着物層を押し破ることで、接合部を構成する金属の原子間力によって接合部どうしを接合することができるので、真空雰囲気中や不活性ガス雰囲気中でなくとも、室温〜180℃以下である常温で接合部どうしを接合できる。また、150℃程度の加熱を併用すれば接合強度は向上するが、150℃より低温下での接合であっても、従来の加熱拡散による接合と比べて十分な接合強度で接合部どうしを接合できる。また、低温で金属どうしを接合できる従来の鉛錫はんだによる方法と比べても、鉛錫はんだの融点である183℃以下、さらに、150℃以下の低温で接合部どうしの接合を行うことができる。
【0022】
また、接合させる基板の接合部が異種材料により構成されている場合、このような異種材料を溶融して拡散させることで接合部どうし接合させると、脆くなったり、材料的に弱くなったり、線膨張係数の差からそりが発生したり、割れたりするおそれがある。しかしながら、表面活性化処理を併用することで、室温〜180℃以下の低温加熱下で固相の状態で接合部どうしを接合できる。したがって、熱に弱い基板を接合したり、熱膨張により歪みが生じたりして高温での接合に耐えられない異種材料の接合部どうしを接合したりする場合に、室温〜180℃以下の低温加熱下で接合できるため実用的である。
【0023】
また、接合部を溶融させると、溶融した金属が均等に広がらないため、溶融した金属が固化するときに、当該溶融した金属が多い方に基板が引っ張られて位置ずれが生じるという問題があったが、表面活性化処理を併用することで、接合部どうしを固相で接合できるため、さらに実用的である。なお、接合温度は、150℃以下、100℃以下での接合が好ましく、室温であればさらによい。
【0024】
ところで、上記したように、表面活性化処理後、すぐには有機物、酸化膜、塵または埃などの付着物層は再付着しても薄いので、加圧して該付着物層を押し破ることにより、接合部表面の接合界面が広がり該接合部表面に新生面が現れて接合部どうしを接合できる。このように、付着物層を押し破り易くするためには、接合部を構成する金属の硬度が低く変形しやすい方がよい。本発明者は種々の実験の結果、接合部の硬度がビッカース硬度で200Hv以下、好ましくは20Hv〜200Hvであることが、常温接合に特に有効であることを見出した。
【0025】
実験条件として、エネルギー波としてArプラズマを使用し、該Arプラズマを100Wの強度で30秒間照射して接合部の表面活性化処理を行った。そして、Arプラズマによる表面活性化処理後、Arガス雰囲気のまま基板どうしを加圧して接合することを試みた。以上の結果、硬度が300HvのNiメッキや600Hvのクロムメッキからなる接合部どうしの接合は不良であったが、ビッカース硬度が200Hv以下の金属である銅、金、Al、錫(金錫合金を含む)で構成された接合部どうしの接合は良好に行われ、実用的に十分な接合強度が得られた。
【0026】
さらに領域を限定するならば、接合部のビッカース硬度が20Hv〜200Hvの範囲が良好な接合領域であると考えられる。なお、最大強度の80%に相当する30g/bump以上の強度で接合された場合、接合が良好に行われる領域とし、15g/bump以下の強度で接合された場合、接合が不良であると判断した。また、ウエハーなどの基板全面に金属接合部を形成し、当該基板どうしを面接合する場合には、接合後の引っ張り強度で接合強度を表し、接合強度が20MPa以上ならば良好な接合と判断し、接合強度が10MPa以下ならば接合不良と判断する場合もある。
【0027】
また、Arプラズマによる表面活性化処理後、接合部が金または銅で形成されている場合には大気中での接合が可能であった。特に、接合部が金で構成されている場合には、表面活性化処理後、大気に暴露して1時間経過した後であっても、Arガス(不活性ガス)雰囲気中での接合強度とほぼ同一の強度で接合できた。これは、金は酸化しづらいことから、表面活性化処理後、接合部表面に有機物や酸化膜などの付着物層が再付着しにくいためと考えられる。このように、不活性ガス雰囲気中や真空雰囲気中でなく、大気中であっても接合が可能であるため、大気中で仮接合を行うことにより、接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に大気雰囲気を封入することもできる。
【0028】
なお、接合部の表面活性化処理後、該接合部を有する基板どうしのアライメントを大気中で行ったり、該接合部を有する基板を大気下で搬送したときに、接合部に酸化膜や有機物のような付着物層が再付着しやすいと考えられる。しかしながら、上記したように、再付着した付着物層を加圧して押し破ることで基板どうしを接合できる。
【0029】
また、基板どうし接合する際、加圧手段によって該基板どうしを150Mpa以上の加圧力で加圧することで、より強固に基板どうしを接合できた。このとき、接合部を構成する金属が、金、銅、Al、錫(金錫合金を含む)または金属基材に金めっきを施したものである場合に、特に良好に接合することができた。また、表面活性化処理を行うエネルギー波として、Arプラズマを例に挙げて説明したが、Ar原子ビームまたはArイオンビームで表面活性化処理を行っても同様の結果が得られた。
【0030】
なお、エネルギー波による接合部の表面活性化処理と、該表面活性化処理された接合部が形成された基板どうしを仮接合または本接合する処理とを、それぞれ個別の装置で行ってもよい。このような構成とすれば、表面活性化処理を行う装置でエネルギー波により表面活性化処理された後の基板を、大気に暴露して仮接合を行う仮接合装置に搬送しても、該仮接合装置において、搬送中に接合部に再付着した酸化膜や有機物のような付着物層を押し破ることで基板どうしを仮接合することができる。
【0031】
また、接合部の表面活性化処理から仮接合までの処理を、大気に暴露せずに行ってもよい。このような構成とすれば、大気に暴露せず表面活性化処理から仮接合までの処理を行うため、接合部の表面活性化処理の後に該接合部に付着物層が再付着するのを確実に防止できる。
【0032】
また、表面活性化処理から仮接合する処理までを、両処理を実行する機能が組み込まれた1つの装置で行ってもよい。基板に形成された接合部の表面活性化処理から仮接合する処理までを1つの装置で行うことにより、接合部の表面活性化処理が施された基板を仮接合装置まで搬送する必要がなく、浮遊物(塵や埃)、有機物または酸化膜といった付着物が接合部へ再付着して付着物層が再形成されるのをより効果的に防止できる。
【0033】
また、表面活性化処理と仮接合する処理とを同一のチャンバー内で行えば、上記付着物層の接合部への再付着をいっそう有効に防止できる。また、チャンバー内を所定の雰囲気とすることで、表面活性化処理が施された基板どうしの仮接合を、真空雰囲気中、封入ガス雰囲気中または大気雰囲気中の所定の雰囲気中で容易に実行することができ、両基板間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を容易に封入できる。また、1つのチャンバー内で、接合部の表面活性化処理、(必用に応じて)チャンバー内のガス置換処理、接合部に表面活性化処理が施された基板どうしを仮接合して両基板面間に外周接合部によって形成される上記空間に所定の雰囲気を封入する処理を行うことにより、表面活性化処理および仮接合する処理を実行する装置のコンパクト化、コストダウン化を図ることができる。
【0034】
また、エネルギー波として周知のイオンビームや原子ビームを採用してもよいが、当該イオンビームおよび原子ビームを生成するためには、10−8Torr程度の高真空雰囲気が要求されるため、このような高真空を達成するために装置の高コスト化を招来するという問題もあった。そこで、エネルギー波としてプラズマを採用すれば、当該プラズマを生成すための真空度は10−2Torr程度でよいため、簡易な装置でプラズマを生成することができ、その結果、装置のコンパクト化、コストダウン化を図ることができる。また、プラズマを発生させる反応ガスにArガスを採用すれば、Arガスは不活性であるため、表面活性化される接合部表面で化学的な反応が生じず、しかも、エッチング能力が高いので当該接合部の表面活性化処理を効率良く行うことができる。
【0035】
また、基板に形成された接合部の表面活性化処理の後、または表面活性化処理中に、接合部の表面に打ち込まれた反応ガスイオンや、エッチングで生じた塵や埃を取り除くために、10−3Torr以下に減圧するとよい。また、接合部の表面に打ち込まれたArイオンなどの反応ガスイオンを取り除くために100〜180℃程度の加熱を併用しながら表面活性化処理を行うこともできる。
【0036】
なお、プラズマは、交番電源により生じた+−方向が切り替わる電界により生成することができる。このような交番電源としては、周知のRFプラズマ発生電源や、パルス波発生電源を採用することができる。
【0037】
また、前記仮接合工程において前記両基板の周縁部を、該周縁部以外よりも高くしてもよい(請求項3)。
【0038】
このような構成とすれば、仮接合工程において両基板の周縁部の高さを、該周縁部以外よりも高くしているため、基板本体の周縁部に内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された外周接合部と他方の基板の接合部とを接合する仮接合を確実に行うことができる。したがって、両基板の接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して、よりいっそう確実に当該空間の内部の雰囲気と外部の雰囲気とを遮断することができる。
【0039】
また、前記本接合工程における前記加圧手段による前記両基板の加圧の際、加圧位置をずらしながら加圧を行うようにしてもよい(請求項4)。また、前記両基板を加圧する加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段をさらに備え、前記加圧手段により前記本接合を行う構成でもよい(請求項14)。
【0040】
また、前記本接合工程を、前記加圧手段としての高圧プレス手段により前記両基板の全面にわたって一括加圧することにより行うようにしてもよい(請求項5)。また、加圧手段として前記両基板の全面にわたって一括加圧する高圧プレス手段をさらに備え、前記高圧プレス手段により前記本接合を行う構成でもよい(請求項15)。
【0041】
また、前記本接合工程を、前記加圧手段としての加圧ローラ間に前記両基板を通過させて加圧することにより行うようにしてもよい(請求項6)。また、加圧手段として前記両基板を通過させることで加圧する加圧ローラをさらに備え、前記加圧ローラにより前記本接合を行う構成でもよい(請求項16)。
【0042】
このような構成とすれば、本接合において、両基板の全面にわたって余すところなく加圧することができるので、外周接合部の内側に形成されている内部接合部のすべてを他方の基板の接合部と確実に接合できる。特に、ボイドが残る場合において、個別押圧やローラによる方法はボイドをつぶす方法として有効である。
【0043】
ところで、基板に接合部として複数の金属バンプを形成し、当該金属バンプどうしを接合することで基板どうしを電気的に接続して接合する技術が知られている。このような構成であれば、両基板を全面にわたって均一に加圧できないことに起因して、他方の金属バンプと密着せず部分的に接合している金属バンプがあっても、当該金属バンプどうしの電気的な導通状態が確保されていれば実用上の問題はない。ところが、本発明のように、両基板の接合面間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する場合、輪郭状の接合部の全体が他方の接合部と密着して接合していなければ、該接合部の密着していない部分から空間内部の雰囲気が外部に流出して、当該空間に所定の雰囲気を封入できないだけでなく、当該空間を外部の雰囲気から遮断できないこととなる。
【0044】
しかしながら、上記したように、両基板間に外周接合部によって囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合を行った後、両基板を全面にわたって余すところなく加圧して内部接合部の本接合を行うことにより、確実に内部接合部と他方の接合部とを密着して接合でき、当該内部接合部よって囲まれて形成される空間を所定の雰囲気、すなわち、仮接合により外周接合部によって囲まれて形成される空間に封入された雰囲気とすることができる。また、本技術は金属バンプによる電気的な接続と同時にその領域を真空に封止することができる。そうすることで一括で電気接続と封止を行うことができ、効率的であり、かつ、他の方法では、低温接合で両立できる方法はなく、画期的な方法である。
【0045】
また、前記仮接合工程を真空中で実行することにより前記空間を真空雰囲気で封止するようにしてもよい(請求項7)。また、減圧チャンバー内に、前記ヘッドと、前記ステージと、前記上下駆動機構と、前記仮接合手段とを備え、前記基板どうしを真空中で前記仮接合することにより前記空間を真空雰囲気で封止する構成でもよい。
【0046】
このような構成とすれば、仮接合を真空中で行うことにより、外周接合部によって囲まれて形成される空間を容易に真空雰囲気で封止することができる。また、仮接合に先立って表面活性化処理を実行する場合、当該表面活性化処理と仮接合とを同一チャンバー内で行えば、表面活性化処理後、チャンバーから反応ガスを排出して真空引きしてチャンバー内を真空雰囲気とし、そのまま仮接合することで容易に真空中で仮接合を行うことができる。
【0047】
また、前記仮接合工程を封入ガス中で実行することにより前記空間に前記封入ガスを封入するようにしてもよい(請求項8)。また、減圧チャンバー内に、前記ヘッドと、前記ステージと、前記上下駆動機構と前記仮接合手段とを備え、前記減圧チャンバー内を封入ガスに置換し、該封入ガス中で前記基板どうしを前記仮接合することにより前記空間に前記封入ガスを封入する構成でもよい。
【0048】
このような構成とすれば、仮接合を封入ガス中で行うことにより、外周接合部によって囲まれて形成される空間に容易に所定の封入ガスを封入することができる。また、仮接合に先立って表面活性化処理を実行する場合、当該表面活性化処理と仮接合とを同一チャンバー内で行えば、表面活性化処理後、チャンバーから反応ガスを排出して封入ガスに置換してチャンバー内を封入ガス雰囲気とし、そのまま仮接合することで容易に封入ガス中で仮接合を行うことができる。
【0049】
なお、封入ガスがArガス、窒素ガスなどの不活性ガスであれば、基板に腐食などの影響を与えることがなく、当該封入ガスが封入された空間内部の酸化などを理由とした劣化を防止できる。また、封入ガスがArガスであれば、接合部をArガスを反応ガスとするエネルギー波で表面活性化処理した場合に、表面活性化処理のために利用した反応ガス雰囲気をそのまま使用できるので効率がよい。
【0050】
また、前記本接合工程を大気中で実行するようにしてもよい(請求項9)。
【0051】
このような構成とすると、仮接合をチャンバー内の所定の雰囲気中で行った後、本接合を大気中で行っても、両基板間に外周接合部により輪郭状に囲まれて形成される空間には当該所定の雰囲気が封入されているため、本接合後に内部接合部により囲まれて形成される空間に当該所定の雰囲気が封入され、内部接合部に囲まれた空間に大気が混入することはない。したがって、本接合を大気中で行うことで、封入ガスの使用量を削減できコストダウンを図ることができる。なお、仮接合を大気中で行えば、外周接合部によって囲まれて形成される空間に大気雰囲気を封入できる。
【0052】
また、前記仮接合工程および/または前記本接合工程における接合時に、前記両基板を加熱するようにしてもよい(請求項10)。また、前記両基板を加熱する加熱手段をさらに備え、前記仮接合手段および/または前記本接合手段における接合時に、前記両基板を加熱する構成としてもよい(請求項17)。
【0053】
このような構成とすれば、金属からなる接合部どうしを加熱することにより、熱拡散方式で、または当該接合部を溶融させて仮接合および/または本接合を行うことができる。
【0054】
また、表面活性化処理を併用して仮接合および本接合を行う場合、当該接合時に室温〜180℃の低温加熱によるアニーリングを行うことにより、基板の表面粗さやうねりに起因する接合部の残留応力やひずみを除去することでき、接合強度の向上を図ることができる。
【0055】
また、本発明にかかるデバイスは、請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法により形成されたデバイスであって、半導体デバイスまたはMEMSデバイスからなることを特徴としている(請求項11)。
【0056】
このような構成とすれば、少なくとも一方の基板の内部接合部に囲まれた領域に、表面弾性波デバイス、RFデバイスなどの半導体デバイスの本体部、機械的な可動部を有するMEMSデバイスの本体部、またはデバイスの電極等を形成して、当該基板と他方の基板との仮接合および本接合を行った後、当該接合後の基板を、内部接合部によって囲まれた領域ごとにダイシングすることで、デバイスの本体部や電極が内部接合部によって囲まれて外部の雰囲気と遮断されたデバイスを提供できる。特に、内部接合部に囲まれた空間に不活性ガス(Arガス、窒素ガス等)雰囲気や真空雰囲気を封入することで、当該空間内のデバイスの本体部や電極が酸化などの理由により劣化するのを防止できる。
【0057】
また、本発明における仮接合および本接合を、接着剤、高温加熱による拡散接合または超音波振動接合によらず、エネルギー波による接合部の表面活性化処理により行えば、次のような有利な効果を奏することができる。すなわち、上記したデバイスが熱に弱いものであったり、異種材料の組み合わせで構成されているものであり、高温に加熱すると熱膨張によりひずみが生じたり、線膨張係数の差からそりが発生したり、割れたりして、高温での接合に耐えられないという課題がある場合、接合部を表面活性化することにより低温で基板の接合を行うことができる。
【0058】
また、基板を構成する材料に樹脂が含まれている場合、基板どうしを接合するときに高温で加熱すれば、ガスや湿気が生じるおそれがある。上記したデバイスの本体部が、これらのガスや湿気に対して耐性がないものである場合には、接合部の表面活性化処理を併用して基板どうしを低温で接合することにより、基板からガスや湿気が発生するのを防止できる。
【0059】
また、上記したデバイスが、振動する部分や、機械的に動作する部分を有するものであれば、基板どうしの接合に接着剤を利用すると、これらの振動したり動作する部分が固化するおそれがある。しかしながら、接合部の表面活性化処理を併用して基板どうしを接合することにより、当該振動部分や動作部分が固化するのを防止できる。
【0060】
なお、基板どうしの接合に表面活性化処理を併用する場合、本発明者の種々の実験の結果より、接合部の表面活性化処理後の経過時間やエネルギー波の反応ガスの種類、接合を行う際の雰囲気の種類、該雰囲気の水分の含み具合(湿度)等により、接合に必用な加熱温度が異なることが確認されている。その結果によれば、上記したように、接合部の表面が特に酸化しづらい金で構成されていれば、表面活性化処理後、大気に暴露しても1時間以内に接合すれば100℃以内の加熱でも接合が可能であった。また、金属からなる接合部をエネルギー波により表面活性化処理して加圧することにより、接合部を固相で接合できるが、接合部の接合界面は金属分子どうしが直接結合されているので、接合後に高温、例えば350℃に基板が加熱されたとしても、接合部の金属分子が拡散されるのみで接合強度が落ちたり、抵抗値が増大したりすることは無く、表面活性化処理を併用して作成されたデバイスは高温環境下でも信頼性が高い。
【0061】
また、本発明にかかる基板は、請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法によって接合される基板であって、前記接合部は、前記基板本体の表面の所定領域をそれぞれ囲んで突出形成された複数の前記内部接合部と、前記基板本体の周縁部に前記複数の内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された前記外周接合部とを備えることを特徴としている(請求項18)。また、本発明にかかる基板は、請求項12ないし17のいずれかに記載の接合装置によって接合される基板であって、前記接合部は、前記基板本体の表面の所定領域をそれぞれ囲んで突出形成された複数の前記内部接合部と、前記基板本体の周縁部に前記複数の内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された前記外周接合部とを備えることを特徴としている。
【0062】
このような構成とすれば、樹脂製またはSi、SiO2、セラミック、LT(酸化物単結晶)等からなる基板本体に複数の内部接合部が突出形成され、この内部接合部すべてを取り囲んで外周接合部が突出形成されているため、内部接合部に囲まれた複数の領域にデバイス回路等を形成して基板どうしの仮接合および本接合を行うことで、複数のデバイスを同時に形成することができるとともに、当該デバイスのデバイス回路等を上記したように内部接合部に囲まれた空間に封入して外部の雰囲気から確実に遮断することができる。
【0063】
また、前記接合部が金で形成されている、または前記接合部表面に金膜が形成されている構成でもよい(請求項19)。
【0064】
このような構成とすれば、金は硬度も低く、また、他の金属と比べ、大気中でも特に酸化しづらいため、基板どうしの接合に表面活性化処理を併用する場合、当該表面活性化処理の後に大気に暴露しても付着物層は薄く破れやすいものとなる。したがって、接合部の表面活性化処理の後、基板搬送を大気中で行い、その後、所定の雰囲気中で基板どうしの仮接合を行っても、当該表面活性化処理後、数時間以内であれば接合することできる。
【0065】
また、金は腐食せず、また、加熱してもガスを発生しない。したがって、両基板間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入し、当該空間を外部の雰囲気から遮断する封止材として、実用的な接合部を形成できる。また、金の融点は非常に高いため、基板どうしを接合した後、高温下での信頼性が高く実用的である。
【0066】
また、接合部の表面(接合表面)に金膜が形成されていれば、接合に表面活性化処理を併用する場合において、当該表面活性化処理の後、有機物等が再付着しづらいので大気中でも基板どうしを接合できる。また、基板どうしを接合した後、加熱して接合部表面の金膜を当該接合部を構成する金属の中に拡散すれば、拡散後は接合部を構成する金属どうしの接合となるため、接合強度も強くなり、接合界面を同一の金属材料とすることができる。このとき、常温でも金膜を拡散できるが、加熱すればより早く金膜を拡散できる。なお、拡散とは、分子や原子からなる粒子が移動して広がるさまを示し、金属からなる接合部どうしの接合界面において当該接合部内へ粒子が拡散していくさまを示す。
【0067】
また、半導体やMEMSデバイスにおける電気的機能デバイスにおいて、電流容量の関係から、従来のAl電極から銅電極への切り替えが要望されている。しかし、従来の接合方法では、銅どうしの接合は接合温度が高くなるため実用的でなかった。そのため、銅で構成される接合部の表面に金膜を形成し、表面活性化処理を併用することで、接合温度を低温化することができる。さらに、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中でなくとも、任意のガス雰囲気中または大気中で接合できる。また、接合後、金を銅(接合部)中に拡散すれば銅どうしの接合となり、実用的である。
【0068】
このように、接合部を金で形成するか、金属からなる接合部の表面に金膜を形成することにより、真空雰囲気中や不活性ガス雰囲気中でなくとも金は腐食することがなく、酸化膜や有機物等の付着物層も付着しづらいため、特に接合に表面活性化処理を併用すれば、真空雰囲気中や不活性ガス雰囲気中でなくとも確実に接合できる。そのため、不活性なもの以外のガス雰囲気中で基板どうしを仮接合できるので、両基板間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に任意のガスを封入できる。
【0069】
また、前記外周接合部の硬度が、前記内部接合部の硬度よりも低く形成されている構成でもよい(請求項20)。
【0070】
このような構成とすれば、外周接合部の硬度が、内部接合部の硬度よりも低く形成されているため、加圧して基板どうしを仮接合する際、外周接合部が内部接合部よりも先に変形して当該外周接合部と他方の基板の接合部とが密着するため確実に仮接合を行うことができる。
【0071】
また、前記外周接合部の前記基板本体の表面からの高さが、前記内部接合部の前記表面からの高さよりも高く形成されている構成でもよい(請求項21)。
【0072】
このような構成とすれば、外周接合部の基板本体の表面からの高さが、内部接合部の基板本体の表面からの高さよりも高く形成されているため、基板どうしを仮接合する際、外周接合部が内部接合部よりも先に他方の基板の接合部と接触するため確実に仮接合を行うことができる。
【0073】
なお、金属めっき、または蒸着法によって、基板本体の表面に任意の金属材料で任意の高さの接合部を形成することができる。
【0074】
また、前記内部接合部または前記外周接合部の断面が尖形形状に形成されていてもよい(請求項22)。
【0075】
このような構成とすれば、内部接合部または外周接合部の断面が尖形形状に形成されているため、少なくとも当該内部接合部および外周接合部のいずれか一方は加圧されることにより潰れやすい。そのため、断面尖形形状の内部接合部または外周接合部の表面に酸化膜や有機物等の付着物層が付着していたとしても、当該内部接合部または外周接合部が加圧されて押し潰されることにより該付着物層が押し破られ、内部接合部または外周接合部を構成する金属の新生面が確実に出現する。したがって、一方の基板の表面に断面尖形形状の内部接合部または外周接合部を形成し、他方の基板の接合部とを衝合して加圧することで、基板どうしを確実に接合することができる。
【発明の効果】
【0076】
請求項1、12に記載の発明によれば、少なくとも一方の基板に形成された外周接合部と他方の基板の接合部とを加圧して仮接合することで、両基板の接合面間に外周接合部によって囲まれる空間に所定の雰囲気を封入できる。したがって、当該空間内の所定の雰囲気中で、加圧して内部接合部と他方の基板の接合部との本接合を確実に行うことができるので、両基板の接合面間に内部接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入するとともに、この空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる。
【0077】
また、少なくとも一方の基板に形成された内部接合部および外周接合部と、他方の基板の接合部とを、加圧することにより密着させることができ、確実に仮接合および本接合を行うことができる。
【0078】
請求項2、13に記載の発明によれば、仮接合に先立ち、原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で少なくとも一方の基板の金属からなる外周接合部および内部接合部を表面活性化することで、基板どうしの仮接合および本接合を確実に行うことができる。
【0079】
請求項3に記載の発明によれば、仮接合工程において両基板の周縁部を、該周縁部以外よりも高くしているため、基板本体の周縁部に内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された外周接合部と他方の基板の接合部とを接合する仮接合を確実に行うことができ、両基板の接合面間に外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して、よりいっそう確実に当該空間の内部の雰囲気と外部の雰囲気とを遮断することができる。
【0080】
請求項4、5、6、7、14、15、16に記載の発明によれば、本接合において、両基板の全面にわたって余すところなく加圧することができるので、外周接合部の内側に形成されている内部接合部のすべてを他方の基板の接合部と確実に接合できる。
【0081】
請求項7に記載の発明によれば、仮接合を真空中で行うことにより、外周接合部によって囲まれて形成される空間を容易に真空雰囲気で封止することができる。
【0082】
請求項8に記載の発明によれば、仮接合を封入ガス中で行うことにより、外周接合部によって囲まれて形成される空間に容易に所定の封入ガスを封入することができる。
【0083】
請求項9に記載の発明によれば、本接合を大気中で行うことにより、封入ガスの使用量を削減できコストダウンを図ることができる。
【0084】
請求項10、17に記載の発明によれば、金属からなる接合部どうしを加熱することにより、熱拡散方式で、または当該接合部を溶融させて仮接合または本接合を行うことができる。
【0085】
また、表面活性化処理を併用して仮接合および本接合を行う場合、当該接合時に室温〜180℃の低温加熱によるアニーリングを行うことにより、基板の表面粗さやうねりに起因する接合部の残留応力やひずみを除去することでき、接合強度の向上を図ることができる。
【0086】
請求項11に記載の発明によれば、少なくとも一方の基板の内部接合部に囲まれた領域に、表面弾性波デバイス、RFデバイスなどの半導体デバイスの本体部、機械的な可動部を有するMEMSデバイスの本体部、またはデバイスの電極等を形成して、当該基板と他方の基板との仮接合および本接合を行った後、接合後の基板を、内部接合部によって囲まれた領域ごとにダイシングすることで、デバイスの本体部や電極が内部接合部によって囲まれて外部の雰囲気と遮断されたデバイスを提供できる。
【0087】
請求項18に記載の発明によれば、内部接合部に囲まれた複数の領域にデバイス回路等を形成して基板どうしの仮接合および本接合を行うことで、複数のデバイスを同時に形成することができるとともに、当該デバイスのデバイス回路等を内部接合部に囲まれた空間に封入して外部の雰囲気から確実に遮断ことができる。
【0088】
請求項19に記載の発明によれば、金は腐食せず、また、加熱してもガスを発生しないので、両基板間に接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入し、当該空間を外部の雰囲気から遮断する封止材として、実用的な接合部を形成できる。
【0089】
請求項20に記載の発明によれば、外周接合部の硬度が、内部接合部の硬度よりも低く形成されているため、外周接合部が内部接合部よりも変形しやすく、当該外周接合部と他方の基板の接合部とが密着するため確実に仮接合を行うことができる。
【0090】
請求項21に記載の発明によれば、外周接合部の基板本体の表面からの高さが、内部接合部の基板本体の表面からの高さよりも高く形成されているため、基板どうしを仮接合する際、外周接合部が内部接合部よりも先に他方の基板の接合部と接触するため確実に仮接合を行うことができる。
【0091】
請求項22に記載の発明によれば、一方の基板の表面に形成された断面尖形形状の内部接合部または外周接合部の表面に、酸化膜や有機物等の付着物層が付着していたとしても、当該内部接合部または外周接合部が加圧されて押し潰されることにより該付着物層が押し破られ、内部接合部または外周接合部を構成する金属の新生面が確実に出現する。したがって、一方の基板表面に形成された断面尖形形状を有する内部接合部または外周接合部と、他方の基板表面に形成された接合部とが加圧されることにより確実に接合されるため、基板どうしを確実に接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0092】
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態について図1〜図7を参照して説明する。
【0093】
1.基板
まず、本発明の接合装置において接合される基板の構造について詳細に述べる。図1は基板の一例を示す図、図2は図1のA−A線矢視断面図、図3は基板の他の例を示す図である。
【0094】
(1)基板(a)
図1を参照して基板の一例について説明する。図1に示すように、デバイス基板808の基板本体808aの表面には、所定領域を囲んだ内部接合部831aと、基板本体808aの周縁部に内部接合部831aを取り囲んだ外周接合部831bとが突出形成されている。また、内部接合部831aに囲まれた領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部829が形成されている。ここで、所定領域とは、回路の動作部分や振動部分などが形成される領域のことである。
【0095】
また、内部接合部831aおよび外周接合部831bは、それぞれ金めっきにより厚膜状に基板本体808aに突出形成されている。また、図2に示すように、この一例では、外周接合部831bの基板本体808aの表面からの高さが約3μmに形成されており、基板本体808aの表面からの高さが約1.5μmに形成されている内部接合部831aの高さよりも高くなるように構成されている。
【0096】
また、蓋基板807の基板本体807aの表面には接合部として金薄膜832がスパッタリングまたはフラッシュめっきにより形成されている。なお、金薄膜832の代わりに、デバイス基板808と同様に内部接合部831aおよび外周接合部831bを形成してもよい。電解メッキに対して、スパッタリングやフラッシュめっきによれば0.数μm程度に薄くメッキすることができる。Siウエハなどのように表面の平坦度が出た材質であれば、薄膜であった方が基材の平坦度を損なわずに平坦度が保持された状態でメッキすることができ好ましい。この場合には、大気にふれる時間を短く(なくする)することで再付着層を薄くすることができ、100MPa以下の低加圧でも接合することができる。表面を金にすることで再付着も鈍くなるため、高真空での接合も不要となり、プラズマレベルの表面活性化処理とその程度(数Pa程度)の低真空レベルでハンドリングして扱うことができる。また、数分程度であれば大気に暴露しても接合に影響しない。量産に適したより好ましい方法である。但し、圧膜のメッキ方法と比べれば押しつぶして新生面を出す効果は少なくなるので大気に暴露できる時間は短くなるため、たくさんのチップを接合する方法よりも一括でウエハレベルで接合する方法には適する。また、圧膜めっきと薄膜の複合として内周部を薄膜とし、外周部を圧膜とする方法が各目的達成のためには好ましいといえる。
【0097】
このような構成とすれば、金は腐食せず、また、加熱してもガスを発生しないので、後述するように、デバイス基板808と蓋基板807との仮接合を行って、両基板807,808間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入し、当該空間を外部の雰囲気から遮断する封止材として、実用的である。
【0098】
また、外周接合部831bの基板本体808aの表面からの高さが、内部接合部831aの基板本体808aの表面からの高さよりも高く形成されているため、後述するように、デバイス基板808と蓋基板807との仮接合を行う際、外周接合部831bが内部接合部831aよりも先に蓋基板807の金薄膜(接合部)832と接触するため確実に仮接合を行うことができる。
【0099】
(2)基板(b)
図3を参照して基板の他の例について説明する。図3に示す基板の他の例が、図1に示す基板の一例を大きく異なる点は、デバイス基板808の基板本体808aの表面に複数の内部接合部831aが形成されている点である。図3に示すように、デバイス基板808の基板本体808aの表面には、所定領域をそれぞれ囲んだ複数の内部接合部831aと、基板本体808aの周縁部に内部接合部831aのすべてを取り囲んだ外周接合部831bとが突出形成されている。また、内部接合部831aに囲まれたぞれぞれの領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部829が形成されている。
【0100】
また、図2に示す基板の一例と同様に、内部接合部831aおよび外周接合部831bは、それぞれ金めっきにより厚膜状に基板本体808aに突出形成されている。また、外周接合部831bの基板本体808aの表面からの高さが約7μmに形成されており、基板本体808aの表面からの高さが約5μmに形成されている内部接合部831aの高さよりも高くなるように構成されている。
【0101】
また、蓋基板807の基板本体807aの表面には金薄膜832がスパッタリングまたはフラッシュめっきにより形成されている。なお、金薄膜832の代わりに、デバイス基板808と同様に内部接合部831aおよび外周接合部831bを形成してもよい。
【0102】
なお、図3に示すように形成されたデバイス基板808と蓋基板807とを後述する接合装置により接合した後、接合されたデバイス基板808および蓋基板807を、内部接合部831に囲まれた領域ごとにダイシングすることで複数のデバイスを効率よく形成することができる。
【0103】
(3)その他
なお、上記した基板の一例および他の例では、金めっきを厚膜状に施すことにより、基板本体808aの表面に内部接合部831aおよび外周接合部831bを突出形成したが、これらの接合部831a,831bを、金属からなる母材の表面に金膜を形成して構成してもよい。その他の構成は上記した基板の一例および他の例と同様であるため、その構成についての説明は省略する。
【0104】
このように、金属からなる母材の表面に金膜を形成して構成された接合部831a,831bとしては、例えば、銅を母材として、該銅母材の表面に金膜を形成することで、内部接合部831aおよび外周接合部831bを形成してもよい。また、Alを母材として、Alの表面に金膜を形成して内部接合部831aおよび外周接合部831bを構成してもよい。
【0105】
また、一例として上記した各数値を挙げたが、接合部の高さはこれらの数値に限定されるものではない。また、内部接合部831aの基板本体808aの表面からの高さが、デバイスの本体部829の基板本体808aの表面からの高さよりも高くなるよう形成するのが望ましい。また、内部接合部831aおよび外周接合部831bの基板本体808aの表面からの高さをほぼ同じ高さとしてもよい。
【0106】
また、内部接合部831aおよび外周接合部831bを構成する金属として金を例に挙げて説明したが、これらの接合部831a,831bを構成する金属としては金に限られず、Al、銅、錫(金錫合金を含む)などで接合部831a,831bを形成してもよい。また、例えば、内部接合部831aを、金の硬度(約100Hv)よりも硬度が高い銅(約140Hv)で形成し、外周接合部831bを金で形成して、外周接合部831bの硬度が内部接合部831aの硬度よりも低くなるように構成してもよい。
【0107】
また、デバイス基板808およびは蓋基板807は、樹脂により構成されたプリント基板、配線層が積み上げられたビルドアップ基板またはSi、SiO2、ガラス、セラミックおよびLT(酸化物単結晶)からなるウエハー等、種々の材料で構成することができる。
【0108】
2.表面活性化・仮接合装置(a)
次に、表面活性化処理(表面活性化工程)および仮接合処理(仮接合工程)を実行する表面活性化・仮接合装置(本発明の「表面活性化手段」、「仮接合手段」に相当)について説明する。図4は表面活性化・仮接合装置を示す図である。また、図5は表面活性化処理および仮接合処理の手順を示す図である。また、図6は図4の装置において2視野認識手段を用いた大気中でのアライメント処理を示す図である。
【0109】
図4に示すように、表面活性化・仮接合装置1において、図示省略したアクチュエータにより昇降可能に構成されたチャンバー壁803と、チャンバー台810とにより減圧チャンバーが構成されている。この表面活性化・接合装置1では、蓋基板807とデバイス基板808とを上下に対向保持した状態でチャンバー壁803を下降して減圧チャンバーを閉じ、真空内でArプラズマにより表面活性化処理(エッチング)を行った後、両基板807,808を仮接合することができる。
【0110】
また、この装置1は、一方の基板を保持し、Z軸801により昇降制御と加圧制御を行うヘッド部と、他方の基板を保持し、この保持されている基板の位置調整が可能に構成されたステージ部とを備えている。また、ヘッド部はピストン型ヘッド802と、上部電極806とを備え、ステージ部は位置調整(アライメント処理)が可能に構成されたアライメントテーブル820と下部電極809とを備えている。なお、本実施形態では、蓋基板807を上部電極806により保持し、デバイスの本体部829が形成されたデバイス基板808を下部電極809により保持している。また、本実施形態では、蓋基板807およびデバイス基板808の両方に、内部接合部831aおよび外周接合部831bが形成されており、これらの両基板807,808どうしを接合する。
【0111】
また、Z軸801には図示省略する圧力検出手段が組み込まれ、この圧力検出手段による検出信号をZ軸サーボモータのトルク制御装置(図示省略)へフィードバックすることで、ピストン型ヘッド802を基板807,808の接合面とほぼ垂直な方向に加圧力制御を行うことができる。このように、本実施形態ではZ軸801が本発明の「上下駆動機構」、「加圧手段」として機能している。なお、ステージ部側のみ、または、ヘッド部側およびステージ部側の両方を加圧制御可能に構成してもよい。
【0112】
そして、摺動パッキン804がZ軸801に摺接しつつ、アクチュエータによりZ軸801と独立して昇降可能なチャンバー壁803が下降し、チャンバー台810に固定パッキン805を介して接地した状態でチャンバー内を外気と遮断することができる。この状態で、排出バルブ814を開放して真空ポンプ815を作動させて排出口812を介してチャンバー内を真空に引きした後、ガス切換弁816をArガス817を導入するように
切換えて吸入バルブ813を開放することで、吸入口811を介して反応ガスとしてArガス817をチャンバー内に導入することができる。
【0113】
また、ガス切換弁816を窒素ガス818を導入するように切換えることで、吸入口811を介して封入ガスとして窒素ガス818をチャンバー内に導入することができる。そして、Arプラズマによる基板807,808の表面活性化処理を行った後、チャンバー内を所定の封入ガス雰囲気に置換してピストン型ヘッド802を下降させることで両基板807,808を仮接合することができる。また、上部電極806および下部電極809は図示省略する加熱ヒータを備えており、基板807,808どうしの接合時に加熱を併用することで、基板807,808どうしの接合強度を向上させることができる。
【0114】
なお、後述するように、表面活性化処理後、チャンバー内を所定の雰囲気(Arガス817、窒素ガス818、真空、大気等)に置換してピストン型ヘッド802を下降させることで、両基板807,808の接合面間に外周接合部831bによって囲まれて形成される空間に当該所定の雰囲気を封入して仮接合することができる。また、チャンバー壁803の摺動パッキン(Oリング)4をZ軸801に摺接させてOリングでチャンバーを気密化しているが、ピストン型ヘッド802の外周面に摺動パッキン(Oリング)を設け当該摺動パッキンをチャンバー壁803に摺接させてチャンバーを気密化してもよい。
【0115】
次に、この表面活性化・仮接合装置1における表面活性化処理(表面活性化工程)および仮接合処理(仮接合工程)の処理手順について図5を参照して説明する。まず、図5(a)に示すようにチャンバー壁803が上昇した状態で蓋基板807を上部電極806により保持し、デバイス基板808を下部電極809により保持する。基板807,808の保持方法は機械的なチャッキング方式でもよいが、静電チャック方式がより好ましい。
【0116】
そして、図5(b)に示すようにチャンバー壁803を下降させ、チャンバー台810に固定パッキン805を介して接地させる。チャンバー壁803は摺動パッキン804がZ軸801に摺接することでにより大気と遮断されているので、吸入バルブ813を閉止した状態で排出バルブ814を開放して真空ポンプ815により真空引きを行うことでチャンバー内の真空度を高めることができる。
【0117】
次に、図5(c)に示すようにチャンバー内に反応ガスを導入する。真空ポンプ815を動作させながら排出バルブ814の排出量と吸入バルブ813のガス吸入量を調整することで、ある一定の真空度に保ちながらチャンバー内を任意の反応ガスで満たすことができる。この実施形態では、反応ガスとして、Arガス817を10−2Torr程度の真空度でチャンバー内に充満させ、同図(d)に示すように、最初に下部電極809に交番電源により電圧印加することでArプラズマを発生させ、デバイス基板808に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bの表面活性化処理を行う。すなわち、デバイス基板808に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bの表面をArプラズマによりエッチングし、両接合部831a,831bに付着した酸化膜や有機物などからなる付着物層を除去して表面活性化(洗浄)する。
【0118】
続いて、図5(e)に示すように、上部電極806に交番電源により電圧印加することで同様にしてArプラズマを発生させ、蓋基板807に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bの表面活性化処理を行う。
【0119】
このように、両基板の両接合部に表面活性化処理を行うと、新生面がより確実に露出するので、接合の強度が大きくなるため好ましい。なお、表面活性化処理はデバイス基板808または蓋基板807のうちの少なくとも一方の基板にのみ行うとしてもよい。例えば、受光素子を備えたデバイス基板808では、受光素子はプラズマ処理によりダメージを受けやすため、デバイス基板808に表面活性化処理を行うことは好ましくない。そこで、接合部が金によって形成され、蓋基板807に形成された接合部のみを表面活性化処理し、デバイス基板808および蓋基板807を加圧して接合部表面を押し破ることにより、接合部表面に形成される酸化膜や有機物等の付着物層は薄い場合には新生面が露出して接合を行うことができる。
【0120】
次に、図5(b)に示すように、吸入バルブ813を閉じた状態でチャンバー内をさらに真空引きしてArガスを排出する。なお、両電極806,809を100℃程度に加熱しながら真空引きを行うことにより基板807,808表面に付着したり、基板807,808内部に打ち込まれたArイオンを排出することもできる。
【0121】
その後、図5(c)に示すように、チャンバー内を所定の封入ガスに置換する。なお、
ガス切替弁816でArガス817と窒素ガス818を選択して吸入口811に導入することで、Arガス817と窒素ガス818の2つのガスを1チャンバーで切り替えることができる。また、このガス切替弁816は大気を吸入可能に構成されているので封入ガスとしてチャンバー内に大気を導入することもできる。また、チャンバー内に大気を導入してチャンバー内を大気圧とした後に、チャンバーを開いて大気解放させることもできる。
【0122】
したがって、本実施形態では、封入ガスとして、Arガス817、窒素ガス818、大気ガス、真空のうちから1つのガスを選択してチャンバー内に導入することができる。なお、封入ガスをArガス817とする場合には上記した表面活性化処理後にチャンバー内を真空引きする処理を省略すれば、Arガス817の消費量を抑制できる。また、封入ガスを真空とする場合には上記した表面活性化処理後にチャンバー内を真空引きする処理を行った後、そのまま後述する仮接合処理を行えばよい。
【0123】
続いて、図5(f)に示すように、真空中または封入ガス中でチャンバー壁803とZ軸801とが摺動パッキン4で接しながらピストン型ヘッド802がZ軸801により下降される。このとき、内部接合部831aおよび外周接合部831bがArプラズマにより表面活性化処理された後、エッチングにより除去された付着物層の浮遊物が当該接合部831a,831bに再付着したり、当該接合部831a,831bが大気に暴露されることで、当該接合部831a,831bに有機物や酸化膜などの付着物層が再付着することがある。
【0124】
しかしながら、両基板807,808に形成された外周接合部831bどうしを真空中または封入ガス中で接触させ、加圧することで外周接合部831bに再付着した付着物層が押し破られて当該外周接合部831bどうしが接合し、接合面間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合処理がおこなわれる。
【0125】
なお、チャンバー内はチャンバー壁803とZ軸801との間の摺動パッキン804により外部雰囲気と遮断され、チャンバー内を真空または封入ガス雰囲気に維持した状態でピストン型ヘッド802を下降させることができる。また、仮接合処理の際に両電極806,809に備えられた加熱ヒータにより180℃程度の温度で加熱して、接合強度を向上させることができる。最後に、図5(g)に示すように、チャンバー内に大気を供給し大気圧に戻した後にヘッド部を上昇させて、接合された両基板807,808をチャンバー内から取り出し、表面活性化処理および仮接合処理が終了する。
【0126】
ところで、基板807,808どうしの接合の際に、蓋基板807およびデバイス基板808の位置調整(アライメント)を行った後、仮接合することもできる。図6に示すように、両基板807,808の間に2視野認識手段825を挿入することで、両基板807,808に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bの位置を当該2視野認識手段825で検出できる。
【0127】
この2視野認識手段825は両基板807,808間に挿入された状態で、上下に位置する両基板807,808の内部接合部831aおよび外周接合部831bの像をプリズム826により、上マーク認識手段827と下マーク認識手段828の方向に屈折させてそれぞれ読み取ることができる。また、2視野認識手段825は両基板807,808の接合面にほぼ平行なXY軸方向と、両基板807,808面にほぼ垂直なZ軸方向とに移動可能に構成されたテーブル(図示省略)により移動可能に構成され、両基板807,808の任意の位置に形成された接合部831a,831bの位置を読み取ることができる。
【0128】
そして、両基板807,808に形成された接合部831a,831bの位置を読み取った後、アライメントテーブル820によりデバイス基板808の位置を、蓋基板807の位置に合わせる位置調整を行う。なお、1回目の位置調整が終了した後、再度、2視野認識手段825を両基板807,808に挿入して繰り返して位置調整を行い、位置精度を向上させることもできる。また、本実施形態では、両基板807,808に形成された接合部831a,831bをアライメントマークとして利用したが、別途、両基板807,808の表面にアライメントマークを設けてもよい。
【0129】
このように、この表面活性化・仮接合装置1において、Arプラズマによる両接合部831a,831bの表面活性化処理後、エッチングにより除去された付着物層の浮遊物が外周接合部831bに再付着しても、加圧することで該再付着した付着物層を押し破って両基板807,808の外周接合部831bどうしを接合することができ、接合面間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合処理を行うことができる。
【0130】
なお、仮接合処理を真空中で行うことにより、外周接合部831bによって囲まれて形成される空間を容易に真空雰囲気で封止することができる。また、仮接合処理をArガス、窒素ガス、大気といった封入ガス中で行うことにより、外周接合部831bによって囲まれて形成される空間に容易にこれらの封入ガスを封入することができる。
【0131】
また、封入ガスは、接合部を金とすれば、不活性なガスでなくとも腐食されないため接合に影響はでない。そのため、不活性なもの以外のガスも採用することができる。
【0132】
また、Arプラズマにより表面活性化処理を行えば、接合部831a,831bの付着物層を除去するエッチング力が高く効率がよい。しかしながら、窒素、酸素など他の反応ガスによるプラズマにより表面活性化処理を行うこともできる。
【0133】
なお、外周接合部831bを接合する仮接合処理時に、内部接合部831aも部分的に接触して接合することがある。このような場合であっても、所定の雰囲気中で内部接合部831aの接合が行われることになるので、仮接合処理後、後述する本接合処理を行うことで、両基板807,808間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を確実に封入することができる。
【0134】
3.本接合装置
次に、本接合工程を実行する本接合装置(本発明の「本接合手段」に相当)について説明する。図7は本接合装置を示す図であり、(a)〜(c)は本接合装置のそれぞれ異なる態様を示す。なお、図7で示すそれぞれの本接合装置21〜23は、上記した表面活性化処理による仮接合が行われた後に、大気中で当該両基板807,808の内部接合部831aどうしを接合して本接合する本接合処理(本接合工程)を行うものである。このように、本実施形態では、表面活性化・仮接合装置1および本接合装置21〜23のいずれかにより本発明の「接合装置」が構成されている。
【0135】
(1)本接合装置(a)
図7(a)を参照して本接合装置21について説明する。同図(a)に示すように、本接合装置21は仮接合が行われた蓋基板807およびデバイス基板808を保持するステージ211と、当該ステージ211に保持された両基板807,808を加圧する際、加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段210とを備えている。したがって、加圧手段210により加圧位置をずらしながら、両基板807,808を加圧することで、外周接合部831bの内側に形成された内部接合部831aのすべてを確実に接合することができる。
【0136】
(2)本接合装置(b)
図7(b)を参照して本接合装置22について説明する。同図(b)に示すように、本接合装置22は仮接合が行われた蓋基板807およびデバイス基板808を保持するステージ221と、当該ステージ221に保持された両基板807,808の全面にわたって一括加圧する高圧プレス手段220とを備えている。したがって、高圧プレス手段220により両基板807,808の全面にわたって一括加圧することで、外周接合部831bの内側に形成された内部接合部831aのすべてを確実に接合することができる。
【0137】
(3)本接合装置(c)
図7(c)を参照して本接合装置23について説明する。同図(c)に示すように、本接合装置23は仮接合が行われた蓋基板807およびデバイス基板808を通過させることで加圧する加圧ローラ230を備えている。したがって、加圧ローラ230間に両基板807,808を通過させて加圧することにより、外周接合部831bの内側に形成された内部接合部831aのすべてを確実に接合することができる。
【0138】
このように、この本接合装置21〜23において、仮接合処理によって両基板807,808の接合面間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気が封入された状態で、両基板807,808を全面にわたって加圧することで当該空間内に形成されているすべての内部接合部831aどうしを接合し、本接合を確実に行うことができる。したがって、両基板807,808の接合面間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を確実に封入できる。
【0139】
すなわち、本接合装置21〜23によれば、本接合処理において、両基板807,808を全面にわたって余すところなく加圧することができるので、外周接合部831bの内側に形成されている両基板807,808の内部接合部831aどうしを確実に接合して本接合を行うことができる。
【0140】
また、本接合を大気中で行うことにより、本接合装置の真空チャンバーが不要となり、さらに封入ガスの使用量を削減できコストダウンを図ることができる。
【0141】
なお、Arプラズマによる両接合部831a,831bの表面活性化処理後、仮接合処理が行われる前に、エッチングにより除去された付着物層の浮遊物が内部接合部831aに再付着しても、加圧することで該再付着した付着物層を押し破って両基板807,808の内部接合部831aどうしを接合することができ、接合面間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気をに封入する本接合を行うことができる。
【0142】
以上のように、この実施形態によれば、蓋基板807およびデバイス基板808に形成された外周接合部831bどうしを加圧して仮接合することで、両基板807,808の接合面間に外周接合部831bによって囲まれる空間に所定の雰囲気を封入できる。したがって、当該空間内の所定の雰囲気中で、加圧することにより両基板807,808の内部接合部831aどうしの本接合を確実に行うことができるので、両基板807,808の接合面間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入するとともに、この空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる。
【0143】
また、本実施形態では、仮接合に先立ち、Arプラズマであるエネルギー波で両基板807,808の金属からなる内部接合部831aおよび外周接合部831bを表面活性化処理することで、基板807,808どうしの仮接合および本接合を確実に行うことができる。
【0144】
また、本実施形態では、蓋基板807に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bと、デバイス基板808に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bとを、加圧することで密着させることができ、それぞれ確実に仮接合および本接合を行うことができる。
【0145】
また、デバイス基板808の内部接合部831aに囲まれた領域に、表面弾性波デバイス、RFデバイスなどの半導体デバイスの本体部、機械的な可動部を有するMEMSデバイスの本体部、またはデバイスの電極等を形成して、デバイス基板808の内部接合部831aおよび外周接合部831bと、蓋基板807の内部接合部831aおよび外周接合部831bとの仮接合および本接合を行った後、接合後の両基板807,808を、内部接合部831aによって囲まれた領域ごとにダイシングすることで、デバイスの本体部や電極が内部接合部831aによって囲まれて外部の雰囲気と遮断された複数のデバイスを提供できる。
【0146】
また、本実施形態では、蓋基板807およびデバイス基板808の両方に、内部接合部831aおよび外周接合部831bが形成されており、これらの両基板807,808どうしを接合しているが、蓋基板807の接合部は金薄膜829等であってももちろんよい。
【0147】
なお、本実施形態では、接合部831a,831bの表面活性化処理後、当該接合部831a,831bに付着物層が再付着することを前提として、付着物層が接合部831a,831bに再付着しても、この付着物層を押し破ることで接合部831a,831bが接合できることを、その接合原理とともに詳細に説明した。しかしながら、接合部831a,831bの表面活性化処理後、両基板807,808を真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中から外部に搬送(大気に暴露)しなければ、接合部831a,831bに付着物層が再付着しないこともある。このような場合であれば、接合部831a,831bをそのまま接触させれば接合できることは言うまでもない。
【0148】
<第2実施形態>
この発明の第2実施形態について図8および図9を参照して説明する。本実施形態が、上記第1実施形態と異なる点は、表面活性化・仮接合装置10の構成が異なる点であり、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。また、本実施形態の表面活性化・仮接合装置10が上記第1実施形態の本接合・仮接合装置1と大きく異なる点は、IR(赤外)光をチャンバー内に導光して両基板807,808の位置調整(アライメント)を行っている点である。その他の構成および動作は上記第1実施形態と同様であるため、以下、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の構成および動作は同一符号を付して、その構成および動作の説明を省略する。
【0149】
4.表面活性化・仮接合装置(b)
表面活性化工程および仮接合工程を実行する表面活性化・仮接合装置10(本発明の「表面活性化手段」、「仮接合手段」に相当)について説明する。図8は表面活性化・仮接合装置を示す図であり、両基板807,808の位置調整を行っている状態を示す図である。また、図9は図8に示す位置調整が終了した後に、仮接合が行われている状態を示す図である。
【0150】
図8に示すように、表面活性化・仮接合装置10は、IR光源823、IR光源823からのIR光を基板807,808方向へ導光する屈折部824aを有する導光部824、導光部824により導光されたIR光を認識するIR認識手段822とを備えている。また、チャンバー壁803にはIR光源823が照射したIR光をチャンバー内に入光するガラス窓803aが設けられている。また、支柱806aにより導光部824に支持された上部電極806と、アライメントテーブル820に支持された下部電極809には、それぞれIR光が通過可能に透過穴806b,819が形成されている。また、チャンバー台の下部には、導光部824により導光されたIR光が通過可能にガラス窓821が設けられている。
【0151】
したがって、図5を参照して説明した処理と同様に表面活性化処理を行いチャンバー内を真空引きした後、またはチャンバー内を真空引きして封入ガスと置換した後、仮接合処理を行う前に両基板807,808のアライメントを行うことができる。すなわち、表面活性化処理後の両基板807,808を近接させた状態でIR光源823からIR光を照射すれば、ガラス窓803aを通過した当該IR光が導光部824によりIR認識手段822の方向へ導光される。そして、透過穴806b,819およびガラス窓821を通過した当該IR光をIR認識手段822により読み取ることで、蓋基板807およびデバイス基板の接合面に形成された内部接合部831aおよび外周接合部831bの位置を同時に検出することができる。
【0152】
そして、IR認識手段822により検出された位置情報に基づいてアライメントテーブル820を移動制御することで、両基板807,808のアライメントを行うことができる。なお、IR認識手段822は、両基板807,808面にほぼ平行なXY軸方向と、両基板807,808面にほぼ垂直なZ軸方向とに移動可能に構成されたテーブル(図示省略)により移動可能に構成されている。また、アライメントテーブル820を移動制御した後、再度、IR認識手段822により両基板807,808のアライメントを繰返すことにより、位置精度を向上させることもできる。また、IR認識手段822の焦点深度を合わせるために、Z軸方向にIR認識手段822を上下に移動させることもできる。
【0153】
また、表面活性化・仮接合装置10におけるIR光の光路である、透過穴806b、819、ガラス窓803a,821、支柱806aの内側の空間およびアライメントテーブル820の内側の空間などは、空間やガラスに限らず、IR光を透過する材質で構成してもよい。また、IR光の透過光を利用したアライメントだけでなく、両基板807,808の下方からIR光を照射して、当該IR光の反射光を利用したアライメントを行ってもよい。
【0154】
次に、図9を参照して、図8を参照して説明した両基板807,808のアライメント処理が終了した後の仮接合処理について説明する。図9に示すように、真空中または封入ガス中でチャンバー壁803とZ軸801とが摺動パッキン4で接しながらピストン型ヘッド802がZ軸801により下降される。そして、両基板807,808に形成された外周接合部831bどうしを真空中または封入ガス中で接触させ、加圧することで外周接合部831bに再付着した付着物層が押し破られて当該外周接合部831bどうしが接合し、接合面間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合処理がおこなわれる。
【0155】
このとき、上部電極806および下部電極809にそれぞれ形成された透過穴806b,819をIR光が通過できるように、上部電極806はその周縁部が支柱806aによって、下部電極809はその周縁部がアライメントテーブル820によって支持されている。このような構成とすれば、図9に示す仮接合処理が行われる際、両基板807,808の周縁部を、該周縁部以外(基板807,807の中央部)よりも高くすることができる。したがって、図9中の一点鎖線で囲まれた部分に示すように、基板807,808はその周縁部が強く押圧されることとなるため、中央部が多少ふくらんで撓んだ状態となる一方、外周接合部831bどうしは確実に密着して接合する。
【0156】
以上のように、この実施形態では、仮接合処理において両基板807,808の周縁部を、該周縁部以外よりも高くしているため、基板807,808の周縁部に内部接合部831aすべてを取り囲んで突出形成された外周接合部831bどうしを接合する仮接合を確実に行うことができ、両基板807,808の接合面間に外周接合部831bによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して、よりいっそう確実に当該空間の内部の雰囲気と外部の雰囲気とを遮断することができる。
【0157】
また、本実施形態では、外周接合部831bの硬度を、内部接合部831aの硬度よりも低く形成すればよい。このような構成とすれば、外周接合部831bの硬度が、内部接合部831aの硬度よりも低く形成されているため、外周接合部831bが内部接合部831aよりも変形しやすく、当該外周接合部831bどうしが密着するため確実に仮接合することができる。
【0158】
一例として、外周接合部831bが潰れやすいように、外周接合部831bの下地を錫または金と錫の合金層などの硬度が低いものを使用することで、より潰れやすくなり好ましい。また、この場合、加圧力は一例として300MPaから100MPaに下げることができた。
【0159】
なお、外周接合部831bの硬度を、内部接合部831aの硬度よりも低く形成するには、例えば、外周接合部831bを金で形成し、内部接合部831aを金よりも硬度が高い銅で形成すればよい。また、両接合部831a,831bを共に金で形成し、外周接合部831bのみを60Hv程度の硬度となるようにアニーリングして柔らかくすることもできる。
【0160】
また、さらに良好な接合を行うためには、外周接合部831bと内部接合部831aの加圧力に差をつけ、外周接合部831bの加圧力を内部接合部831aよりも高くすることが好ましい。
【0161】
ところで、表面活性化・仮接合装置10のように、チャンバー内にIR光を導光して基板807,808どうしのアライメント処理を行う構成の場合、チャンバー内でのIR光の光路を確保するため、図8に示すように、上部電極807および下部電極809の周縁部を支持して中央部に空間を設ける必要が生じることがある。このような構成とすれば、装置の構造上、基板807,808どうしを重ね合わせて加圧するときに、基板807,808の周縁部に、該周縁部以外よりも強い押圧力が加わりやすい。
【0162】
しかしながら、本発明の「基板」に相当する蓋基板807およびデバイス基板808どうしを接合することで、まず、両基板807,807の周縁部に形成された外周接合部831bどうしを密着させて仮接合処理を行って、その後、上記した本接合装置によって、内部接合部831aどうしの本接合を行うことで、両基板807,808の接合面間に内部接合部831aによって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して、確実に当該空間の内部の雰囲気と外部の雰囲気とを遮断することができる。
【0163】
また、図6に示すように2視野認識手段825によりアライメントを行う構成であっても、ステージ部またはヘッド部の周縁部を支持することで、ステージ中央部よりも両基板の周縁部に大きな力がかかるようにして、外周接合部831bの仮接合を行いやすい構成としてもよい。
【0164】
<第3実施形態>
この発明の第3実施形態について図10を参照して説明する。本実施形態が、上記第1および第2実施形態と異なる点は、表面活性化・仮接合装置11および本接合装置22がチャンバー30内に収納されて接合装置3が構成されている点であり、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。以下、上記第1および第2実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の構成および動作は同一符号を付して、その構成および動作の説明を省略する。
【0165】
5.接合装置(a)
接合装置3について説明する。図10は接合装置を示す図である。図10に示すように、接合装置3は、表面活性化・仮接合装置11と、本接合装置22と、表面活性化・仮接合室11および本接合装置22が内部に収納されたチャンバー30とを備えている。また、チャンバー30の表面活性化・仮接合室に表面活性化・仮接合装置11が配設され、本接合室に本接合装置22が配設されている。
【0166】
そして、表面活性化・仮接合室の入口には気密シャッター31が設けられ、この気密シャッター31を閉じることで表面活性化・仮接合室を気密化することができる。また、チャンバー30内の表面活性化・仮接合室と本接合室との間には、表面活性化・仮接合装置11から本接合装置22へと基板807,808を搬送可能に搬送機構33が配設されている。なお、搬送装置33については、周知の種々の搬送装置33を採用することができ、その構成および動作は周知のものであるため、その構成および動作の説明は省略する。また、以下の実施形態で説明する搬送装置についても、その構成および動作の説明は省略する。
【0167】
また、本接合室に配設する本接合装置としては本接合装置22に限られず、上記した種々の本接合装置21〜23を配設することができる。これらの本接合装置21〜23による本接合処理以外の方法で本接合処理を行う方法としては、本接合室に所定の気体を導入して超高気圧とすることで、大気圧によって両基板807,808を加圧して本接合処理を行うこともできる。また、図示省略したガス供給手段およびガス排出手段により、チャンバー30内を任意の気圧で所定のガス雰囲気とすることができ、あるいは、チャンバー30内を真空雰囲気とすることができるように構成されている。以上のような構成とすれば、上記した第1および第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0168】
<第4実施形態>
この発明の第4実施形態について図11を参照して説明する。本実施形態が、上記第3実施形態と異なる点は、両基板807,808を加熱することにより仮接合処理および本接合処理を行っている点であり、仮接合装置12のみチャンバー40内に収納されている点である。その他の構成は上記第3実施形態と同様である。以下、上記第1ないし第3実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の構成および動作は同一符号を付して、その構成および動作の説明を省略する。
【0169】
6.接合装置(b)
接合装置4について説明する。図11は接合装置を示す図である。図11に示すように、接合装置4は、チャンバー40内に収納された仮接合装置12と、本接合装置22とを備えている。また、チャンバー40の入口には気密シャッター41が設けられ、この気密シャッター41を閉じることでチャンバー40を気密化して、所定の雰囲気中で仮接合処理を行うことができる。
【0170】
また、チャンバー40内の仮接合装置12と本接合装置22との間には、仮接合装置12から本接合装置22へと基板807,808を搬送可能に搬送機構43が配設されている。このような構成とすれば、仮接合処理および本接合処理において、上部電極806、下部電極809、ピストン型ヘッド220およびステージ221に内蔵され図示省略された加熱ヒータ(本発明の「加熱手段」に相当)により両基板807,808を加熱して、外周接合部831bどうし、内部接合部831aどうしを加熱拡散接合することができる。
【0171】
なお、本接合装置22に限られず、上記した種々の本接合装置21〜23を採用することができる。また、上記した表面活性化処理を併用して加熱拡散接合を行ってもよい。以上のような構成とすれば、上記した第1ないし第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0172】
また、表面活性化処理を併用して仮接合処理および本接合処理を行う場合、当該接合時に室温〜180℃の低温加熱によるアニーリングを行うことにより、基板の表面粗さやうねりに起因する接合部831a,831bの残留応力やひずみを除去することでき、接合強度の向上を図ることができる。
【0173】
<第5実施形態>
この発明の第5実施形態について図12および図13を参照して説明する。本実施形態が、上記した実施形態と異なる点は一方の基板808の基板本体808aの表面にのみ内部接合部831cおよび外周接合部831dが形成されている点であり、しかも、これら内部接合部831cおよび外周接合部831dの断面が尖形形状に形成されている点である。また、エネルギー波(プラズマ)による表面活性化処理が他方の基板807の基板本体807aの表面に形成された接合部としての金薄膜832にのみ行われている。その他の構成は上記第1ないし第3実施形態と同様である。以下、上記第1ないし第3実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の構成および動作は同一符号を付して、その構成および動作の説明を省略する。なお、図12は基板の他の例を示す図、図13は図12に示す基板の接合原理を示す図である。
【0174】
(4)基板(c)
図12を参照して基板の他の例について説明する。図12(a)は基板の斜視図、(b)は(a)のB−B線矢視断面図である。図12に示すように、デバイス基板808の基板本体808aの表面には、所定領域を囲んだ内部接合部831cと、基板本体808aの周縁部に内部接合部831cを取り囲んだ外周接合部831dとが断面が尖形形状に突出形成されている。また、内部接合部831cに囲まれた領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部829が形成されている。ここで、所定領域とは、回路の動作部分や振動部分などが形成される領域のことである。
【0175】
また、内部接合部831cおよび外周接合部831dは、それぞれ金めっきにより厚膜状に基板本体808aに突出形成されている。また、図12(a)に示すように、この一例では、外周接合部831dの基板本体808aの表面からの高さが約7μmに形成されており、基板本体808aの表面からの高さが約5μmに形成されている内部接合部831cの高さよりも高くなるように構成されている。
【0176】
また、蓋基板807の基板本体807aの表面には接合部として金薄膜832がスパッタリングまたはフラッシュめっきにより形成されている。なお、金薄膜832の代わりに、デバイス基板808と同様に内部接合部831aおよび外周接合部831bを形成してもよい。
【0177】
(5)基板(d)
また、上記した「(4)基板(c)」の項で説明したデバイス基板808が有する、断面が尖形形状の内部接合部831cおよび外周接合部831dにより、図3と同様のデバイス基板808を形成してもよい。すなわち、デバイス基板808の基板本体808aの表面に複数の内部接合部831cを突出形成し、基板本体808aの周縁部に内部接合部831cのすべてを取り囲んだ外周接合部831dを突出形成してもよい。なお、内部接合部831aに囲まれたぞれぞれの領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部829が形成されている。
【0178】
その他の構成については、上記した第1実施形態の「(1)基板(a)」、「(2)基板(b)」および「(3)その他」の項で説明した構成と同様であるので、相当符号を付してその構成についての詳細な説明は省略する。なお、本実施形態では、デバイス基板808に内部接合部831cおよび外周接合部831dを形成し、蓋基板807に金薄膜832を形成したが、蓋基板807に内部接合部831cおよび外周接合部831dを形成し、デバイス基板808に当該デバイス基盤808上のデバイスの本体部829を避けるようにして金薄膜832を形成してもよい。
【0179】
次に、本実施形態における基板の接合原理について図13を参照して説明する。図13は図12に示す基板の接合原理を示す図である。通常、デバイス基板808や蓋基板807の表面に形成された接合部831a,831b,832の表面には酸化膜や有機物等の付着物層が形成されているため、180℃以下の低温で固相のまま接合部831a,831b,832どうしを接触させても当該接合部831a,831b,832どうしを接合することはできない。したがって、上記第1ないし第3実施形態で説明したように、プラズマ等のエネルギー波で接合部831a,831b,832の表面に付着した付着物層を除去し、当該接合部831a,831b,832の新生面を露出させて表面活性化した状態で接合部831a,831b,832どうしを接触させることにより当該接合部どうしを接合することができる。
【0180】
また、上記第4実施形態で説明したように、接合部831a,831b,832を加熱することにより、少なくとも接合部831a,831b,832の表面を溶融させることで、当該接合部831a,831b,832どうしの接合を行うことができる。しかしながら、本実施形態では、図13(a)に示すように、デバイス基板に形成された外周接合部831d(内部接合部831c)の断面が尖形形状に形成されている。したがって、デバイス基板808の外周接合部831d(内部接合部831c)と、蓋基板807の金薄膜832とを衝合させて加圧することにより、図4(b)に示すように、断面尖形形状の外周接合部831d(内部接合部831c)が押し潰されて、当該外周接合部831d(内部接合部831c)の表面に付着した酸化膜や有機物等からなる付着物層が押し破られて新生面が露出する。
【0181】
一方、加圧されることにより外周接合部831d(内部接合部831c)が押し潰される際に、外周接合部831d(内部接合部831c)と、金薄膜832との間で”滑り”が生じるため、金薄膜832の表面に付着した酸化膜や有機物等からなる付着物層も押し破られることとなる。すなわち、デバイス基板808の断面尖形形状の外周接合部831d(内部接合部831c)は加圧されて押し潰されることにより、外周接合部831d(内部接合部831c)表面の酸化膜や有機物等の付着物層が押し破られて新生面が露出し、さらに、上記したように金薄膜832の付着物層も押し破られて新生面が露出することから、外周接合部831d(内部接合部831c)と金薄膜832とが原子間力により図13(b)に示すように接合される。
【0182】
なお、蓋基板807に形成された接合部としての金薄膜832にのみプラズマ(エネルギー波)による表面活性化処理を行うことで、金薄膜832表面の酸化膜や有機物等の付着物層を除去して当該金薄膜832の新生面を露出させることができ、より確実に内部接合部831cおよび外周接合部831dと金薄膜832との接合を行うことができる。また、金薄膜832は酸化しづらいため、再酸化による酸化膜が再形成されにくく、酸化膜が形成されたとしても表面活性化処理後、一定時間内であればその厚さは薄いので、内部接合部831cおよび外周接合部831dを金薄膜832に接触させて加圧することにより容易に押し破られて新生面が再露出し、内部接合部831cおよび外周接合部831dと金薄膜832とが接合される。
【0183】
以上のように、この実施形態では、デバイス基板808の基板本体808aの表面に断面が尖形形状の内部接合部831cおよび外周接合部831dを形成したため、加圧して当該内部接合部831cおよび外周接合部831dを押し潰すことにより、両接合部831c、831d表面の酸化膜や有機物等の付着物層を押し破って、新生面を露出させることができる。また、内部接合部831cおよび外周接合部831dと、金薄膜832との接触部分(接合界面)では、内部接合部831cおよび外周接合部831dが押し潰されて該接触部分の面積が広がっていく過程において両接合部831c,831dと金薄膜832との間に大きな”滑り”が生じ、両接合部831c,831dに新生面を露出させるとともに、金薄膜832表面の付着物層も押し破って当該金薄膜832に新生面を露出させることができる。したがって、プラズマ等のエネルギー波で表面活性化処理を行わずとも、露出した新生面の原子間力により内部接合部831cおよび外周接合部831dと、金薄膜832とを接合することが出来る。
【0184】
なお、蓋基板807に形成された接合部としての金薄膜832にのみプラズマ(エネルギー波)による表面活性化処理を行うことで、金薄膜832表面の酸化膜や有機物等の付着物層を除去して当該金薄膜832の新生面を露出させることができ、よりいっそう確実に基板807,808の接合を行うことができる。この場合であっても、内部接合部831cおよび外周接合部831dに対する接合前のプラズマ等のエネルギー波による表面活性化処理を省略することができるので、工程の簡略化を図ることができる。
【0185】
また、本発明者は、内部接合部831cおよび外周接合部831dの基板本体808aの表面から先端までの高さが20〜90%となる範囲で内部接合部831cおよび外周接合部831dをそれぞれ押し潰せば、両接合部831c、831d表面の酸化膜や有機物等の付着層を確実に除去して新生面を露出することができ、電気的信頼性のよい接合が可能であることを実験的に見出した。図14を参照して、外周接合部831dを例にとり、外周接合部831dの基板表面から先端までの高さと接合強度との関係について説明する。
【0186】
図14は外周接合部831dがAu、Al、Cuである場合の、外周接合部831dの高さと接合強度との関係を示した図である。同図において外周接合部831dの高さは、完全につぶれてしまったときを0%、全く潰れていないときを100%としている。同図において、接合が良好であるための接合強度は1つの外周接合部当たり150g以上の場合とし、1つの外周接合部当たりの接合強度が150g以上となり接合強度が十分良好であるためには、加圧し潰れた後の外周接合部831dの高さは基板表面から外周接合部831dの先端までの高さが、潰れる前のおよそ20〜90%となる場合であればよいことが分かる。
【0187】
また、図14では、外周接合部831dの高さが基板表面から外周接合部831dの先端までの高さの0〜20%となるときは、外周接合部831dは大きく潰れているため十分接合していると考えられるが、加圧力が十分過ぎ、デバイス基板808および蓋基板807に余計なダメージが与えられる等、接合されない可能性が含まれると考えられる。また、外周接合部831dの高さが接合面から外周接合部831dの先端までの高さの90〜100%となるときは、外周接合部831dの潰れ方が小さいため、接合されない可能性があると考えられる。以上の点を考慮すると、接合を良好に行うための外周接合部831dの高さは、基板表面から外周接合部831dの先端までの高さの20〜90%の場合とするのがよい。
【0188】
したがって、外周接合部831dの接合面からの高さが加圧前の接合面からの高さの20〜90%の範囲となるように、デバイス基板808や蓋基板807等の被接合物に加圧するのがよい。また、内部接合部831cについても同様であり、内部接合部831c、外周接合部831dともに20〜90%となるように加圧するのがよい。
【0189】
そこで、加圧中は、ヘッド高さ検出手段(図示省略)により基板を保持するヘッドの高さをモニタすることにより、内部接合部831cおよび外周接合部831dの、他方の基板807からの高さを検出し、内部接合部831cおよび外周接合部831dの高さが20〜90%の高さとなるように加圧力の調整を行えばよい。
【0190】
また、本発明者は、一方の基板808に形成された内部接合部831cおよび外周接合部831dへの加圧力が、金属の種類、加圧の速さ等の条件に関わらず、1つの内部接合部831cまたは外周接合部831dあたり100〜700MPaの範囲のときに、内部接合部831cまたは外周接合部831dが20〜90%の範囲の高さに押し潰されることを実験的に見出した。したがって、デバイス基板808および蓋基板807等の基板に、1つの内部接合部831cまたは外周接合部831dあたり100〜700MPaの範囲の加圧力が加えられ、内部接合部831cまたは外周接合部831dの高さが20〜90%の高さとなるように制御を行うとしてもよい。
【0191】
また、本実施形態のように、内部接合部831aおよび外周接合部831bの断面が尖形形状となるように形成することで、以下に説明するような特有な効果を奏することができる。すなわち、デバイス基板808が受光素子であるCMOSイメージセンサを備える場合、基板807,808の接合前にデバイス基板808の表面活性化処理を行うと、プラズマ等のエネルギー波の照射によりデバイス基板808に不要な電荷等が与えられ、CMOSイメージセンサがダメージを受けるおそれがある。
【0192】
しかしながら、本実施形態によれば、プラズマ等のエネルギー波によるダメージを受けやすいCMOSイメージセンサ等の受光素子をデバイス基板808に形成した場合でも、受光素子を備えるデバイス基板808には断面が尖形形状の内部接合部831cおよび外周接合部831dを形成しているため、デバイス基板808の表面活性化処理を行わずともデバイス基板808と蓋基板807との接合を行うことができる。したがって、受光素子を備えるデバイス基板808にプラズマ等のエネルギー波によるダメージを与えることなく、デバイス基板808と蓋基板807とを接合することができる。なお、受光素子はCMOSイメージセンサに限られず、CCD等の受光素子や、また、センシング素子、その他、プラズマ等のエネルギー波によりダメージを被りやすいデバイスであれば同様の効果を奏することができる。
【0193】
<その他>
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、接合する基板807,808の種類、基板上に形成されたデバイスの種類に応じて、上記した種々の接合装置から最適なものを組み合わせることができる。以下、接合装置の変形例について図15を参照して説明する。図15は接合装置の変形例を示す図である。
【0194】
7.接合装置(c)
接合装置5について説明する。図15(a)に示すように、接合装置5は、表面活性化装置が配設された表面活性化室と、仮接合装置が配設された仮接合室と、本接合装置が配設された本接合室とを有するチャンバー50を備えている。また、チャンバー50内には基板807,808を各室の間で搬送する搬送機構53が配設されている。また、各室の入口にはそれぞれの空間を気密化できる気密シャッター(図示省略)が配設されている。このように、各処理はすべて同一のチャンバー50内で実行される。このような構成としても上記した第1ないし第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0195】
8.接合装置(d)
接合装置6について説明する。図15(b)に示すように、接合装置5は、表面活性化装置と、仮接合装置と、本接合装置とを備えている。また、各装置の間で基板807,808を搬送可能に搬送機構63が大気中に配設されている。このような構成としても上記した第1ないし第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0196】
また、内部接合部および外周接合部は、断面尖形形状を有していてもよいし、断面尖形形状を有さない形状としてもよく、これらをどのように組み合わせて構成してもよい。以下、基板の変形例について図16および図17を参照して説明する。図16および図17は基板の変形例を示す図である。
【0197】
(6)基板(e)
基板(e)について説明する。図16に示すように、基板(e)の外周接合部831fは、断面尖形形状を有しており、その他は第1実施形態に示した基板(a)と同様である。このような構成とすることにより、基板(e)の外周接合部831fは加圧により潰れやすい構成となる。また、外周接合部831fと内部接合部831eが同じ金属の場合でも、断面尖形形状を有する外周接合部831fのほうが潰れやすい。したがって、外周接合部831fの仮接合を容易に行うことができる。
【0198】
(7)基板(f)
基板(f)について説明する。図17に示すように、基板(f)の内部接合部831gは断面尖形形状をしており、その他は第1実施形態に示した基板(a)と同様である。このような構成とすることにより、基板(f)の内部接合部831gは潰れやすく、外周接合部831hの仮接合を行った後、内部接合部831gを本接合装置21ないし23により容易に潰して、確実に本接合を行うことができる。
【0199】
なお、外周接合部を高くする場合には、図16のように外周接合部を先鋭とすることで先端を潰れ易く形成すれば、大きな加圧力をかけることなく外周接合部を接合させることができるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】基板の一例を示す図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】基板の他の例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態たる接合装置の表面活性化・仮接合装置を示す図である。
【図5】表面活性化処理および仮接合処理の手順を示す図である。
【図6】図1の装置において2視野認識手段を用いた大気中でのアライメント処理を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態たる接合装置の本接合装置を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態たる接合装置の表面活性化・仮接合装置を示す図である。
【図9】図8の装置おいて仮接合が行われている状態を示す図である。
【図10】本発明の接合装置の第3実施形態を示す図である。
【図11】本発明の接合装置の第4実施形態を示す図である。
【図12】基板の他の例を示す図である。
【図13】図12に示す基板の接合原理を示す図である。
【図14】外周接合部の高さと接合強度との関係を示す図である。
【図15】本発明の接合装置の変形例を示す図である。
【図16】本発明の基板の変形例を示す図である。
【図17】本発明の基板の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0201】
1,10,11…表面活性化・仮接合装置(表面活性化手段、仮接合手段)
12…仮接合装置(仮接合手段)
21,22,23…本接合装置(本接合手段)
210…加圧手段
220…高圧プレス手段
230…加圧ローラ
801…Z軸(上下駆動機構、加圧手段)
807…蓋基板(基板)
807a,808a…基板本体
808…デバイス基板(基板)
831a,831c,831e,831g…内部接合部
831b,831d,831f,831h…外周接合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体の表面に形成された金属からなる接合部を有する基板どうしを接合する接合方法において、
少なくとも一方の前記基板の前記接合部は、前記基板本体の表面の所定領域を囲んで突出形成された少なくとも1つの内部接合部と、前記基板本体の周縁部に前記内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された外周接合部とを有し、
前記外周接合部と他方の前記基板の前記接合部とを加圧手段により加圧して接合し、前記両基板の接合面間に前記外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合工程と、
前記仮接合工程の後に、前記内部接合部と前記他方の前記接合部とを前記加圧手段により加圧して接合する本接合工程と
を備えることを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記仮接合工程の前に、原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で前記少なくとも一方の基板の前記接合部を表面活性化する表面活性化工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記仮接合工程において前記両基板の周縁部を、該周縁部以外よりも高くすることを特徴とする請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記本接合工程における前記加圧手段による前記両基板の加圧の際、加圧位置をずらしながら加圧を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記本接合工程を、前記加圧手段としての高圧プレス手段により前記両基板の全面にわたって一括加圧することにより行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項6】
前記本接合工程を、前記加圧手段としての加圧ローラ間に前記両基板を通過させて加圧することにより行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項7】
前記仮接合工程を真空中で実行することにより前記空間を真空雰囲気で封止することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記仮接合工程を封入ガス中で実行することにより前記空間に前記封入ガスを封入することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記本接合工程を大気中で実行することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
前記仮接合工程および/または前記本接合工程における接合時に、前記両基板を加熱することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法により形成されたデバイスであって、半導体デバイスまたはMEMSデバイスからなることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
基板本体の表面に形成された金属からなる接合部を有する基板どうしを接合する接合装置において、
少なくとも一方の前記基板の前記接合部として、前記基板本体の表面の所定領域を囲んで少なくとも1つの内部接合部を突出形成するとともに、前記基板本体の周縁部に前記内部接合部すべてを取り囲んで外周接合部を突出形成し、
一方の前記基板を保持するヘッドと、
他方の前記基板を保持するステージと、
前記ヘッドまたは前記ステージの少なくとも一方を前記基板の接合面とほぼ垂直な方向に加圧制御が可能な上下駆動機構と、
前記外周接合部と他方の前記基板の前記接合部とを加圧して接合し、前記両基板の接合面間に前記外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して仮接合する仮接合手段と、
前記仮接合の後に、前記内部接合部と前記他方の前記接合部とを加圧して接合して本接合する本接合手段と
を備えることを特徴とする接合装置。
【請求項13】
前記仮接合手段による前記仮接合に先立ち、
原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で前記少なくとも一方の基板の前記接合部を表面活性化する表面活性化手段をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の接合装置。
【請求項14】
前記両基板を加圧する加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段をさらに備え、
前記加圧手段により前記本接合を行うことを特徴とする請求項12または13に記載の接合装置。
【請求項15】
加圧手段として前記両基板の全面にわたって一括加圧する高圧プレス手段をさらに備え、
前記高圧プレス手段により前記本接合を行うことを特徴とする請求項12または13に記載の接合装置。
【請求項16】
加圧手段として前記両基板を通過させることで加圧する加圧ローラをさらに備え、
前記加圧ローラにより前記本接合を行うことを特徴とする請求項12または13に記載の接合装置。
【請求項17】
前記両基板を加熱する加熱手段をさらに備え、
前記仮接合手段および/または前記本接合手段における接合時に、前記両基板を加熱することを特徴とする請求項12ないし16のいずれかに記載の接合装置。
【請求項18】
請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法によって接合される基板であって、
前記接合部は、
前記基板本体の表面の所定領域をそれぞれ囲んで突出形成された複数の前記内部接合部と、
前記基板本体の周縁部に前記複数の内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された前記外周接合部と
を備えることを特徴とする基板。
【請求項19】
前記接合部が金で形成されている、または前記接合部表面に金膜が形成されていることを特徴とする請求項18に記載の基板。
【請求項20】
前記外周接合部の硬度が、前記内部接合部の硬度よりも低く形成されていることを特徴とする請求項18または19に記載の基板。
【請求項21】
前記外周接合部の前記基板本体の表面からの高さが、前記内部接合部の前記表面からの高さよりも高く形成されていることを特徴とする請求項18ないし20のいずれかに記載の基板。
【請求項22】
前記内部接合部または前記外周接合部の断面が尖形形状に形成されていることを特徴とする請求項18ないし21のいずれかに記載の基板。
【請求項1】
基板本体の表面に形成された金属からなる接合部を有する基板どうしを接合する接合方法において、
少なくとも一方の前記基板の前記接合部は、前記基板本体の表面の所定領域を囲んで突出形成された少なくとも1つの内部接合部と、前記基板本体の周縁部に前記内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された外周接合部とを有し、
前記外周接合部と他方の前記基板の前記接合部とを加圧手段により加圧して接合し、前記両基板の接合面間に前記外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合工程と、
前記仮接合工程の後に、前記内部接合部と前記他方の前記接合部とを前記加圧手段により加圧して接合する本接合工程と
を備えることを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記仮接合工程の前に、原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で前記少なくとも一方の基板の前記接合部を表面活性化する表面活性化工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記仮接合工程において前記両基板の周縁部を、該周縁部以外よりも高くすることを特徴とする請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記本接合工程における前記加圧手段による前記両基板の加圧の際、加圧位置をずらしながら加圧を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記本接合工程を、前記加圧手段としての高圧プレス手段により前記両基板の全面にわたって一括加圧することにより行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項6】
前記本接合工程を、前記加圧手段としての加圧ローラ間に前記両基板を通過させて加圧することにより行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項7】
前記仮接合工程を真空中で実行することにより前記空間を真空雰囲気で封止することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記仮接合工程を封入ガス中で実行することにより前記空間に前記封入ガスを封入することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記本接合工程を大気中で実行することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
前記仮接合工程および/または前記本接合工程における接合時に、前記両基板を加熱することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法により形成されたデバイスであって、半導体デバイスまたはMEMSデバイスからなることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
基板本体の表面に形成された金属からなる接合部を有する基板どうしを接合する接合装置において、
少なくとも一方の前記基板の前記接合部として、前記基板本体の表面の所定領域を囲んで少なくとも1つの内部接合部を突出形成するとともに、前記基板本体の周縁部に前記内部接合部すべてを取り囲んで外周接合部を突出形成し、
一方の前記基板を保持するヘッドと、
他方の前記基板を保持するステージと、
前記ヘッドまたは前記ステージの少なくとも一方を前記基板の接合面とほぼ垂直な方向に加圧制御が可能な上下駆動機構と、
前記外周接合部と他方の前記基板の前記接合部とを加圧して接合し、前記両基板の接合面間に前記外周接合部によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入して仮接合する仮接合手段と、
前記仮接合の後に、前記内部接合部と前記他方の前記接合部とを加圧して接合して本接合する本接合手段と
を備えることを特徴とする接合装置。
【請求項13】
前記仮接合手段による前記仮接合に先立ち、
原子ビームまたはイオンビームまたはプラズマであるエネルギー波で前記少なくとも一方の基板の前記接合部を表面活性化する表面活性化手段をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の接合装置。
【請求項14】
前記両基板を加圧する加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段をさらに備え、
前記加圧手段により前記本接合を行うことを特徴とする請求項12または13に記載の接合装置。
【請求項15】
加圧手段として前記両基板の全面にわたって一括加圧する高圧プレス手段をさらに備え、
前記高圧プレス手段により前記本接合を行うことを特徴とする請求項12または13に記載の接合装置。
【請求項16】
加圧手段として前記両基板を通過させることで加圧する加圧ローラをさらに備え、
前記加圧ローラにより前記本接合を行うことを特徴とする請求項12または13に記載の接合装置。
【請求項17】
前記両基板を加熱する加熱手段をさらに備え、
前記仮接合手段および/または前記本接合手段における接合時に、前記両基板を加熱することを特徴とする請求項12ないし16のいずれかに記載の接合装置。
【請求項18】
請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法によって接合される基板であって、
前記接合部は、
前記基板本体の表面の所定領域をそれぞれ囲んで突出形成された複数の前記内部接合部と、
前記基板本体の周縁部に前記複数の内部接合部すべてを取り囲んで突出形成された前記外周接合部と
を備えることを特徴とする基板。
【請求項19】
前記接合部が金で形成されている、または前記接合部表面に金膜が形成されていることを特徴とする請求項18に記載の基板。
【請求項20】
前記外周接合部の硬度が、前記内部接合部の硬度よりも低く形成されていることを特徴とする請求項18または19に記載の基板。
【請求項21】
前記外周接合部の前記基板本体の表面からの高さが、前記内部接合部の前記表面からの高さよりも高く形成されていることを特徴とする請求項18ないし20のいずれかに記載の基板。
【請求項22】
前記内部接合部または前記外周接合部の断面が尖形形状に形成されていることを特徴とする請求項18ないし21のいずれかに記載の基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−220151(P2009−220151A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68032(P2008−68032)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(304019355)ボンドテック株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(304019355)ボンドテック株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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