接着剤付半導体チップの製造方法及び半導体装置の製造方法
【課題】接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップを製造することができる接着剤付半導体チップの製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】上記課題を解決するために、粘着シート上に、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、をこの順に備える積層体を準備し、積層体の粘着シート側からポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させてポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得る、接着剤付半導体チップの製造方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、粘着シート上に、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、をこの順に備える積層体を準備し、積層体の粘着シート側からポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させてポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得る、接着剤付半導体チップの製造方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤付半導体チップの製造方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の半導体チップを積層するスタックパッケージ型の半導体がメモリーなどの用途に使用されている。このスタックパッケージ型パッケージは年々薄型化の方向にあり、近年では厚さが50μm以下のチップが使用されるようになってきた。このような半導体装置を製造する場合、半導体ウェハを50μm程度に薄厚化し、この半導体ウェハの回路裏面にフィルム状の接着剤を貼付けた後、ダイシングブレードによって半導体ウェハを接着剤とともに切断する方法が用いられている。
【0003】
しかし、上記の方法では、接着剤フィルムの切断面にバリが発生し易く、このような接着剤のはみ出しが半導体装置製造の歩留まり低下の原因となる場合があった。
【0004】
上記の方法以外にも半導体チップに接着剤層を設ける技術は知られている。例えば、下記特許文献1には、先ダイシング法を用いて薄厚のチップを作成した後に、インクジェット法や印刷法などで該チップ裏面に液状の接着剤を塗布する方法が開示されている。また、下記特許文献2には、粘着シート上に、エネルギー線硬化型の接着剤層及び空隙部を持って配列されたチップ集合体が積層されたものに対して、チップ集合体側から空隙部に対応する接着剤層の部分にエネルギー線を照射することにより、当該部分の接着剤層を硬化させ、この硬化部分を粘着シート上に残して接着剤付半導体チップをピックアップする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−14913号公報
【特許文献2】特開2005−322853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、チップとチップとの間に液状の接着剤が充填されてしまい、各チップを分離するためには接着剤層を切断する工程が必要となり、製造工程が複雑化する問題がある。上記特許文献2に記載の方法では、硬化させた部分が接着剤付半導体チップの接着剤に付随してくることが多いという問題がある。
【0007】
本発明は、接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップを容易に製造することができる接着剤付半導体チップの製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、粘着シート上に、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、をこの順に備える積層体を準備し、積層体の粘着シート側からポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させてポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得ることを特徴とする第1の接着剤付半導体チップの製造方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、粘着シート上に、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、をこの順に備える積層体を準備し、積層体の複数の半導体チップ側からポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させてポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得ることを特徴とする第2の接着剤付半導体チップの製造方法を提供する。
【0010】
本発明の第1及び第2の接着剤付半導体チップの製造方法によれば、上記ポジ型感光性接着剤層に対して上記のエネルギー線照射及び現像処理が施されることにより、半導体チップ間及び周囲に対応する接着剤層は除去されるため、余分な接着剤層が同伴されずに半導体チップと同形状の接着剤を備える接着剤付半導体チップを容易に得ることができる。
【0011】
本発明の第1又は第2の接着剤付半導体チップの製造方法において、パターン形成性の点で、上記ポジ型の感光性接着剤組成物が、アルカリ可溶性ポリマー、及びエネルギー線を照射することにより酸を発生する光酸発生剤を含有することが好ましい。
【0012】
また、取扱い性及び組成物の安定性の点で、上記光酸発生剤がナフトキノンジアジド構造を有する化合物であることが好ましい。
【0013】
更に、アルカリ現像液への溶解性向上の点で、上記アルカリ可溶性ポリマーが、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有することが好ましい。
【0014】
また、低温貼付性の点で、上記アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度が150℃以下であることが好ましい。
【0015】
更に、硬化後の耐熱性の点で、上記アルカリ可溶性ポリマーがポリイミドであることが好ましい。
【0016】
また、硬化後の耐熱性及び接着性の点で、上記ポジ型の感光性接着剤組成物が、熱硬化性樹脂を更に含有することが好ましい。
【0017】
本発明はまた、上記本発明の第1又は第2の接着剤付半導体チップの製造方法により得られる接着剤付半導体チップを、接着剤付半導体チップの接着剤を介して半導体搭載用支持部材上に接着する工程を備える、半導体装置の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップを用いることにより、歩留まり良く半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップを製造することができる接着剤付半導体チップの製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る半導体チップの作製の一工程を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る半導体チップの作製の一工程を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る半導体チップの作製の一工程を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る半導体チップの作製の一工程を示す模式断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法において好適に用いられる積層体を示す模式断面図である。
【図6】第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図7】第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図8】第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法において好適に用いられる積層体を示す模式断面図である。
【図10】第2の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図11】第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図12】本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図13】本発明に係る半導体装置の他の実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法は、粘着シート上に、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、をこの順に備える積層体を準備し、積層体の粘着シート側からポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させてポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得ることを特徴とする。ポジ型の感光性接着剤組成物については後述する。
【0023】
まず、上記積層体を準備するために、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップを作製する方法について説明する。図1は、本発明に係る半導体チップを作製する工程を示す模式断面図である。この工程では、半導体集積回路を形成した半導体ウェハ1の回路面S1側をダイシングブレード2でハーフカットし、溝を形成する。
【0024】
上記の溝は、半導体ウェハ1をダイシング装置のステージに固定し、ダイシングブレード2によって半導体ウェハをダイシングラインに沿ってダイシングすることで形成され、最終的に得られるチップの厚さよりもやや深めに形成されることが好ましい。
【0025】
半導体ウェハとしては、ロジックIC、メモリーIC、イメージセンサなどが挙げられる。本発明においては、周知の製造方法で半導体ウェハの表面に種々の半導体素子を集積して回路を形成したものを用いることができる。
【0026】
次に、図2に示されるように、溝を形成した半導体ウェハ1の回路面側に、粘着性を有しはく離可能な粘着シート3を貼付ける。
【0027】
粘着シート3としては、基材に粘着剤を塗布して粘着層を設けたフィルムなどを用いることができる。基材としては、エネルギー線を透過するものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)などが挙げられる。透明性の点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0028】
粘着剤としては、感圧型の粘着剤や光硬化型の粘着剤を用いることができる。本実施形態においては、粘着層が、加熱及びエネルギー線の照射のうちの少なくともいずれか一方により粘着力が低下するものが好ましい。エネルギー線としては取扱い性の点で紫外線が好適である。
【0029】
粘着シート3としては、表面保護テープやバックグラインドテープなどを用いることができる。また、BGE−122V、BGE−194U(電気化学工業製)などの市販品をバックグラインドテープとして用いることができる。粘着シート3は、エネルギー線を透過するものであることが好ましい。粘着シート3は、ラミネータなどを用いて半導体ウェハ1に貼り付けられることが好ましい。
【0030】
次に、図3に示されるように、粘着シート3に貼り付けられた半導体ウェハ1の裏面を研削することにより、半導体ウェハを所定の厚みにする。本実施形態では、半導体ウェハの裏面をバックグラインダー4を用いることによって機械的に研削している。このとき、研削面が溝の底部に達するように研磨し、これにより、図4に示されるように、半導体ウェハが個片化された半導体チップ1aが形成される。
【0031】
次に、上記で作製された複数の半導体チップ1a上に、ポジ型感光性接着剤層5を形成する。こうして、図5に示されるように、粘着シート3上に、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップ1aと、ポジ型感光性接着剤層5と、をこの順に備える積層体100が得られる。
【0032】
ポジ型感光性接着剤層は、例えば、ポジ型の感光性接着剤組成物を、上記複数の半導体チップ1a上に、インクジェット法や、スプレーコート法、スピンコート法により塗布することにより形成することができる。また、上記の印刷法によってポジ型の感光性接着剤組成物のワニスを塗布した後、乾燥することによって形成されてもよい。また、他の形成方法として、フィルム状のポジ型感光性接着剤(接着剤フィルム)をロールラミネータや真空ラミネータを用いて半導体チップ上に貼り付けることによって形成されてもよい。作業性の観点から、接着剤フィルムを用いて形成することが好ましい。このとき、半導体チップの接着剤層が形成される面は鏡面加工されていることが好ましい。鏡面加工する場合は、半導体ウェハを個片化した後、裏面をエッチングや、CMPによって鏡面加工することが好ましい。鏡面加工が行われていると接着剤層のぬれ性が向上し、密着性が向上する傾向がある。
【0033】
接着剤フィルムは、離型処理されたPETフィルムなどの支持フィルム上に、ポジ型の感光性接着剤組成物のワニスを塗布した後、乾燥することによって形成することができる。この場合、支持フィルムは、接着剤層を形成した後にはく離されることが好ましい。
【0034】
次に、上記で得られた積層体に対して、粘着シート3側からポジ型感光性接着剤層5にエネルギー線Lを照射し(図6を参照)、その後、ポジ型感光性接着剤層5に現像液を接触させることにより、ポジ型感光性接着剤層をパターニングする工程が行われる。こうして、粘着シート3上に、半導体チップと同形状の接着剤5aが積層された複数の半導体チップ1aが得られる(図7を参照)。
【0035】
上記のエネルギー照射は半導体チップ1a越しに行われるため、半導体チップ1aがマスクとなって、チップに対応する部分の照射が行われないようになっている。粘着シート3側すなわち個片化された半導体チップ1a側からエネルギー線を照射することで、チップとチップの間の空隙部分やチップの周囲に対応するポジ型感光性接着剤層5が露光され、露光された部分が現像液に対して可溶な性質を有することとなり除去される。その結果、チップ1aと同形状の接着剤5aが形成される。
【0036】
粘着シート3を通してポジ型感光性接着剤層5にエネルギー線を十分に露光させるために、粘着シート3は使用するエネルギー線に対して十分な透過性を有することが好ましい。
【0037】
現像液としては、アルカリ現像液や有機溶剤が挙げられる。アルカリ性現像液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38%が挙げられる。また、有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などが挙げられる。ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させる方法としては、現像液に浸漬させる方法や、現像液をスプレーによって吹き付ける方法などが挙げられる。残渣低減の点から、ポジ型感光性接着剤層側から現像液をスプレーによって吹き付ける方法が好ましい。現像液を接触させた後、水で洗浄することが好ましい。水での洗浄は、水に浸漬する方法やスプレーによって吹き付ける方法などが挙げられる。残渣低減の点から、ポジ型感光性接着剤層側から水をスプレーによって吹き付ける方法が好ましい。
【0038】
次に、粘着シート3上に設けられているチップ1a及び接着剤5aの接着剤5a側に別の粘着シート6を貼り付け、その後粘着シート3をはく離することにより、チップ1a及び接着剤5aを粘着シート6上に移動させる(図8を参照)。そして、粘着シート6からチップ1a及び接着剤5aをピックアップすることにより、接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップ10を得る(図11を参照)。接着剤付半導体チップ10のピックアップは、フレキシブルダイボンダなどのピックアップ装置を用いることで行うことができる。
【0039】
粘着シート6としては、常時はく離可能な粘着性を有する粘着シートなどを用いることができる。粘着シート6は、エネルギー線を透過するものであることが好ましい。粘着シート6は、ラミネータなどを用いて接着剤5a上に貼り付けられることが好ましい。
【0040】
本実施形態においては、ピックアップ時の歩留り低下を抑制できる観点から、上記粘着シート6が、上記接着剤5aと積層される側に、エネルギー線の照射によって硬化して粘着力が低下する粘着層を有するものであり、接着剤付半導体チップ10のピックアップ前に、粘着シート6側からエネルギー線を照射して上記粘着層を硬化させる工程を更に備えることが好ましい。
【0041】
また、本実施形態においては、半導体チップをピックアップする前に接着剤5aに対してエネルギー線を照射することが好ましい。これによって、エネルギー線照射されていなかった部分のポジ型感光性接着剤を変性させ、予め接着剤5aから窒素を除去することができ、チップ積層時の発泡を抑えることが可能となる。
【0042】
次に、本発明に係る接着剤付半導体チップの製造方法の第2実施形態について説明する。
【0043】
第2の実施形態の接着剤付半導体チップの製造方法は、粘着シート上に、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、をこの順に備える積層体を準備し、積層体の複数の半導体チップ側からポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させてポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得ることを特徴とする。
【0044】
第2の実施形態における上記積層体は、第1の実施形態における積層体100を作製した後、この積層体100のポジ型感光性接着剤層5側に別の粘着シート7を貼り付け、その後接着シート3をはく離することにより得ることができる。
【0045】
粘着シート7としては、常時はく離可能な粘着性を有する粘着シートなどを用いることができる。粘着シート7は、エネルギー線を透過するものであることが好ましい。粘着シート7は、ラミネータなどを用いて接着剤5a上に貼り付けられることが好ましい。
【0046】
こうして得られる積層体110に対して、複数の半導体チップ1a側からポジ型感光性接着剤層5にエネルギー線Lを照射する(図9を参照)。その後、ポジ型感光性接着剤層5に現像液を接触させることにより、ポジ型感光性接着剤層をパターニングする工程が行われる。こうして、粘着シート7上に、半導体チップと同形状の接着剤5aが積層された複数の半導体チップ1aが得られる(図10を参照)。
【0047】
上記のエネルギー照射は半導体チップ1a越しに行われるため、半導体チップ1aがマスクとなって、チップに対応する部分の照射が行われないようになっている。半導体チップ1a側からエネルギー線を照射することで、チップとチップの間の空隙部分やチップの周囲に対応するポジ型感光性接着剤層5が露光され、露光された部分が現像液に対して可溶な性質を有することとなり除去される。その結果、チップ1aと同形状の接着剤5aが形成される。
【0048】
本実施形態においては、上記の露光に加えて、半導体チップ1aの並びと同型状のフォトマスクを用意し、半導体チップとの位置が合うようにフォトマスクを粘着シート7側に設けて、粘着シート7側からエネルギー照射を行ってもよい。
【0049】
第2の実施形態においては、粘着シート7からチップ1a及び接着剤5aをピックアップすることにより、接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップ10を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態においては、半導体チップをピックアップする前に接着剤5aに対してエネルギー線を照射することが好ましい。これによって、エネルギー線照射されていなかった部分のポジ型感光性接着剤を変性させ、予め接着剤5aから窒素を除去することができ、チップ積層時の発泡を抑えることが可能となる。
【0051】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記本発明に係る接着剤付半導体チップの製造方法で得られた接着剤付半導体チップを、接着剤付半導体チップの接着剤を介して半導体搭載用支持部材上に接着する工程を備える。
【0052】
半導体チップ搭載用支持部材としては、例えば、他の半導体チップ、42アロイリードフレーム及び銅リードフレーム等のリードフレーム、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂及びマレイミド系樹脂等から形成された樹脂フィルム、ガラス不織布又はガラス織布にエポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂及びマレイミド系樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸しこれを硬化させて得られる基板、並びに、ガラス基板及びアルミナ等のセラミックス基板が挙げられる。
【0053】
半導体チップと支持部材との接着は、例えば、接着剤付半導体チップと支持部材とを、40〜150℃で0.1〜10秒間加熱する条件で行われることが好ましい。
【0054】
図12は、本発明に係る方法により製造される半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図12に示される半導体装置200は、半導体チップ搭載用支持部材8と、半導体チップ搭載用支持部材8に接着剤5bを介して接着された半導体チップ1aとを備える。半導体チップ1aは、ボンディングワイヤ9によって半導体チップ搭載用支持部材10の配線と接続されている。また、半導体チップ1aは、これらが埋設される封止樹脂12によって封止されている。
【0055】
図13は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。図13に示す半導体装置300において、一段目の半導体チップ1aは接着剤5bを介して、半導体チップ搭載用支持部材8に接着され、一段目の半導体チップ1aの上に更に接着剤5bを介して二段目の半導体チップ1aが接着されている。一段目の半導体チップ1a及び二段目の半導体チップ1aの接続端子(図示せず)は、ワイヤ9を介して外部接続端子と電気的に接続され、封止材によって封止されている。このように、本発明の接着剤付半導体チップは、半導体チップを複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0056】
次に、本発明の接着剤付半導体チップの製造方法において好適に用いられるポジ型感光性接着剤組成物について説明する。
【0057】
本実施形態に係るポジ型感光性接着剤組成物は、(A)アルカリ可溶性ポリマーと、(B)エネルギー線を照射することにより酸を発生する光酸発生剤とを含有するものが好ましい。
【0058】
アルカリ可溶性ポリマーは、アルカリ現像液に可溶であればよく、テトラメチルアンモニウムハイドライド水溶液に可溶であることが好ましい。より具体的には、2.38質量%のテトラアンモニウムハイドライド水溶液に対して、25℃で溶解性を有するアルカリ可溶性ポリマーが好ましい。例えば、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリマーは、アルカリ現像液への良好な溶解性を有する場合が多く、好ましい。
【0059】
露光後の良好な接着性を確保するために、アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、30〜150℃であることが好ましく、低温で圧着できる低温圧着性の点において30〜100℃であることがより好ましい。アルカリ可溶性ポリマーのTgが30℃未満であると、露光後の熱圧着時にボイドが生成しやすくなる傾向にある。Tgが150℃を超えると、露光前の被着体への貼付け温度及び露光後の圧着温度が高くなり周辺部材にダメージを与えやすくなる傾向にある。なお、上記Tgは粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を用いて感光性接着剤をフィルム状にした場合の粘弾性の温度変化を測定したときのtanδのピーク温度である。
【0060】
アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量は、ウェハ上で膜を形成する点から5000〜150000であることが好ましく、接着性の点から10000〜50000がより好ましく、現像性と接着性の両立の点から10000〜30000が更に好ましい。アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量が5000より小さいと、感光性接着剤のフィルム形成性が低下する傾向にあり、150000を超えると、アルカリ現像液への溶解性が低下して、現像時間が長くなる傾向にある。アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量を5000〜150000とすることにより、露光後の再接着のための加熱温度を低くすることができるという効果も得られる。なお、上記の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(例えば、島津製作所製「C−R4A」(商品名))を用いて測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0061】
アルカリ可溶性ポリマーは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、ポリベンゾオキサゾール、アクリルポリマー、スチレン−マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂及びポリノルボルネン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを含むことが好ましい。これらの中でも、硬化後の接着性の点から、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール及びアクリルポリマーが好ましく、硬化後の信頼性の点から、ポリイミドがさらに好ましい。
【0062】
アルカリ可溶性ポリマーとしてのポリイミドは、主鎖中にイミド骨格を有する1種又は2種以上の重合体から構成されるものを用いることができる。ポリイミドは、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有することが更に好ましい。
【0063】
カルボキシル基を有するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基及びアミノ基を有するジアミンとの反応により、得ることが好ましい。フェノール性水酸基を有するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、フェノール性水酸基及びアミノ基を有するジアミンとの反応により、得ることが好ましい。これら反応により、ポリイミドにはジアミンに由来するカルボキシル基又はフェノール性水酸基が導入される。ジアミンの種類及びその仕込み比、反応条件等を適宜調整することにより、ポリイミドの酸価を所望の範囲に制御することができる。
【0064】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応(縮合反応)は、公知の方法により行うことができる。例えば、まず、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、等モル又はほぼ等モルの比率で、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。各成分の添加順序は任意である。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。生成したポリアミド酸を50〜80℃の温度に加熱して解重合させることによって、その分子量を調整することもできる。生成したポリアミド酸を脱水閉環させることにより、ポリイミドが生成する。脱水閉環は、加熱による熱閉環法、又は脱水剤を使用する化学閉環法により行うことができる。
【0065】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの仕込み比については、例えば、テトラカルボン酸二無水物の合計量1.0molに対して、ジアミンの合計量を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲内とすることができる。ジアミンの比率が2.0molを超えると、末端がアミノ基であるポリイミドオリゴマーが多く生成し、0.5molを下回ると、末端がカルボキシル基であるポリイミドオリゴマーが多く生成する傾向にある。ポリイミドオリゴマーの量が多くなると、ポリイミドの重量平均分子量が低下して、感光性接着剤の耐熱性等の種々の特性の低下が生じ易くなる。上記仕込み比を調整することによって、ポリイミドの重量平均分子量を5000〜150000の範囲内となるように調製することができる。
【0066】
ポリイミドの合成に使用されるジアミンとしては、アルカリ現像液への溶解性を特に良好なものとするために、下記一般式(I)で表される芳香族ジアミンが好ましい。
【0067】
【化1】
式(I)中、R1は、2価の有機基を示し、R2はヒドロキシル基またはカルボキシル基を示す。R2がヒドロキシル基であると、吸湿後の接着力低下抑制の点で好ましく、カルボキシル基であると、現像性向上の点で好ましい。2価の有機基としては、−CH2−、−C(CF3)−、−SO2−が挙げられる。
【0068】
ポリイミドのTgを低下させて熱応力を低減するため、ジアミンは、更に、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンを含むことが好ましい。
【0069】
【化2】
式(III)中、Q1、Q2及びQ3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、n1は1〜80の整数を示す。
【0070】
式(III)の脂肪族エーテルジアミンとしては、より具体的には、下記化学式(IIIa)、(IIIb)又は(IIIc)で表されるものが挙げられる。これらの中でも、露光前の低温での貼付け性及び露光後の被着体に対する良好な接着性を確保できる点で、式(IIIa)の脂肪族エーテルジアミンが好ましい。
【0071】
【化3】
式(IIIa)、(IIIb)及び(IIIc)中、n1は、1〜80の整数を示す。
【0072】
脂肪族エーテルジアミンの市販品としては、例えば、サン テクノケミカル(株)製のジェファーミン「D−230」、「D−400」、「D−2000」、「D−4000」、「ED−600」、「ED−900」、「ED−2001」、「EDR−148」(以上商品名)、BASF(製)のポリエーテルアミン「D−230」、「D−400」、「D−2000」(以上商品名)が挙げられる。
【0073】
更に、露光後の再接着性を更に高めるために、下記一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンを使用することが好ましい。
【0074】
【化4】
式(IV)中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、n2は1〜5の整数を示す。
【0075】
化学式(IV)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、式中のn2が1のとき、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサンが挙げられる。n2が2のとき、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサンが挙げられる。
【0076】
ジアミンは、上記以外のジアミンを更に含んでいてもよい。例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0077】
ポリイミドを合成する際の原料として用いるテトラカルボン酸二無水物は、接着剤の諸特性の低下を抑えるため、無水酢酸からの再結晶により精製されていることが好ましい。あるいは、テトラカルボン酸二無水物は、その融点よりも10〜20℃低い温度で12時間以上加熱することにより乾燥されていてもよい。テトラカルボン酸二無水物の純度は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される吸熱開始温度と吸熱ピーク温度との差によって評価することができ、再結晶や乾燥等によりこの差が20℃以内、より好ましくは10℃以内となるように精製されたカルボン酸二無水物をポリイミドの合成のために用いることが好ましい。吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度は、DSC(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、サンプル量:5mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:窒素の条件で測定される。
【0078】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、及びテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0079】
特に、溶剤への良好な溶解性を付与するため、下記化学式(V)又は(VI)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。この場合、これらの式で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合を、全テトラカルボン酸二無水物100モル%に対して50モル%以上とすることが好ましい。この割合が50モル%未満であると、溶解性向上効果が低下する傾向にある。
【0080】
【化5】
【0081】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
ポジ型感光性接着剤組成物におけるアルカリ可溶性ポリマーの配合量は、組成物全量基準で10〜80質量部が好ましく、また、アルカリ可溶性及び接着性のバランスの観点から20〜70質量部がより好ましい。
【0083】
本発明に係るポジ型感光性接着剤組成物に含まれる光酸発生剤としては、感光性ジアゾキノン化合物、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、などを用いることができる。これらのうち、取扱い性の点で、感光性ジアゾキノン化合物が好ましい。
【0084】
上記オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホシホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、及びジアゾニウム塩などが挙げられ、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、及びトリアルキルスルホニウム塩からなる群から選ばれるオニウム塩が好ましい。
【0085】
上記ハロゲン含有化合物としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物などがあり、トリクロロメチルトリアジンが好ましい。
【0086】
上記感光性ジアゾキノン化合物としては、1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する化合物が挙げられ、このような化合物は米国特許第2,772,972号明細書、米国特許第2,797,213号明細書、及び米国特許第3,669,658号明細書等に記載されており、具体例としては、下記のナフトキノンジアジド構造を有する化合物が挙げられる。
【0087】
【化6】
各式中、Dは、水素原子またはナフトキノンジアジドスルホン酸エステル基を示す。ただし、各式中のDがすべて水素原子である場合は除く。)
【0088】
ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル基としては、例えば、下記に示す基が挙げられる。
【0089】
【化7】
【0090】
ポジ型感光性接着剤組成物における光酸発生剤の配合量は、(A)アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して、現像性の点から1〜50質量部が好ましく、現像性と圧着後の発泡抑制の点から5〜30質量部がより好ましい。光酸発生剤の配合量を上記範囲とすることにより、ポジ型感光性接着剤層のパターニング性を良好にすることができるとともに、硬化後の接着剤の引張り伸び率を良好なものにすることができ、なおかつ露光部の現像残さ(スカム)を少なくすることができる。なお、光酸発生剤の配合量が50質量部を超えると、圧着した後の発泡を抑制することが困難となる。
【0091】
本発明に係るポジ型感光性接着剤組成物は、熱硬化性樹脂を更に含有することが好ましい。本明細書において熱硬化性樹脂とは、熱により架橋反応を起こしうる反応性化合物をいう。このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、取り扱い性及びポリイミドとの相溶性の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。これら熱硬化性樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物が好ましい。硬化性や硬化物特性の点からは、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が極めて好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、AD、S又はFのグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
シアネート樹脂としては、例えば、2,2’−ビス(4−シアネートフェニル)イソプロピリデン、1,1’−ビス(4−シアネートフェニル)エタン、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス[4−シアネートフェニル−1−(1−メチルエチリデン)]ベンゼン、シアネーテッドフェノール−ジシクロペンタンジエンアダクト、シアネーテッドノボラック、ビス(4−シアナートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナートフェニル)エーテル、レゾルシノールジシアネート、1,1,1−トリス(4−シアネートフェニル)エタン、2−フェニル−2−(4−シアネートフェニル)イソプロピリデンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
ビスマレイミド樹脂としては、例えば、o−、m−又はp−ビスマレイミドベンゼン、4−ビス(p−マレイミドクミル)ベンゼン、1,4−ビス(m−マレイミドクミル)ベンゼン、及び下記一般式(40)、(41)、(42)又は(43)で表されるマレイミド化合物が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0095】
【化8】
【0096】
一般式(40)において、R40は−O−、−CH2−、−CF2−、−SO2−、−S−、−CO−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−を示し、4つのR41はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、2つのZ1はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0097】
一般式(41)において、R42は−O−、−CH2−、−CF2−、−SO2−、−S−、−CO−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−を示し、4つのR43はそれぞれ独立に水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、2つのZ2はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0098】
一般式(42)において、xは0〜4の整数を示し、複数のZ3はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0099】
一般式(43)において、2つのR44はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示し、複数のR45はそれぞれ独立に1価の炭化水素基を示し、2つのZ4はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示し、yは1以上の整数を示す。
【0100】
一般式(40)〜(43)におけるZ1、Z2、Z3及びZ4としては、マレイン酸残基、シトラコン酸残基などが挙げられる。
【0101】
一般式式(41)で表されるビスマレイミド樹脂としては、例えば、4,4−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミド−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルフィド、4,4−ビスマレイミドジフェニルケトン、2’−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、4−ビスマレイミドジフェニルフルオロメタン、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパンが挙げられる。
【0102】
一般式式(42)で表されるビスマレイミド樹脂としては、例えば、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]フルオロメタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。
【0103】
熱硬化性樹脂を用いる場合、これを硬化させるために、硬化剤、硬化促進剤、触媒等の添加剤を感光性接着剤組成物中に適宜加えることができる。触媒を添加する場合は助触媒を必要に応じて使用することができる。
【0104】
エポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤を使用することが好ましく、これらを併用することがより好ましい。硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ現像液への溶解性に優れる点から、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物が好ましい。
【0105】
上記分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0106】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化を促進するものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0107】
エポキシ樹脂の硬化剤の量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0〜200質量部が好ましく、エポキシ樹脂100質量部に対して1〜200質量部がより好ましい。またエポキシ樹脂の硬化促進剤の量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0〜50質量部が好ましく、エポキシ樹脂100質量部に対して1〜50質量部がより好ましい。
【0108】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を使用する場合、触媒及び必要に応じて助触媒を使用することが好ましい。触媒としては、例えば、コバルト、亜鉛、銅等の金属塩や金属錯体などが挙げられ、助触媒としてはアルキルフェノール、ビスフェノール化合物、フェノールノボラック等のフェノール系化合物などが好ましい。
【0109】
熱硬化性樹脂としてビスマレイミド樹脂を使用する場合、その硬化剤としてラジカル重合剤を使用することが好ましい。ラジカル重合剤としては、例えば、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。このとき、ラジカル重合剤の使用量は、ビスマレイミド樹脂100質量部に対して0.01〜1.0質量部が好ましい。
【0110】
本発明に係るポジ型感光性接着剤組成物は、接着強度を上げる等の目的で、適宜カップリング剤を含有していてもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられるが、中でもシランカップリング剤が高い接着力を付与できる点で好ましい。
【0111】
カップリング剤を用いる場合、その使用量は、アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して、0〜50質量部が好ましく、0.01〜20質量部がより好ましく、0.1〜20質量部が特に好ましい。50質量部を超えると感光性接着剤組成物の保存安定性が低下する傾向にある。
【0112】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3―ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N’―ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、及びポリエトキシジメチルシロキサンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0113】
本発明に係るポジ型感光性接着剤組成物は、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラー、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、ほう酸アルミ、セラミック等の非金属無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラーなどが挙げられる。
【0114】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、フィルム状の接着剤に導電性又はチキソ性を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、フィルム状の接着剤に低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加され、有機フィラーはフィルム状の接着剤に靭性を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、非金属無機フィラー及び有機フィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。フィラーを用いた場合の混合、混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0115】
フィラーを用いる場合、その量は、アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対し、1000質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましい。下限は特に制限はないが、一般に1質量部である。フィラーの量が1000質量部を超えると接着性が低下する傾向がある。
【0116】
本発明の接着剤付半導体チップの製造方法で特に好適に用いられるポジ型感光性接着剤組成物は、上述した(A)アルカリ可溶性ポリマー、(B)エネルギー線の照射により酸を発生する光酸発生剤、及び(C)熱硬化性樹脂を混合することにより得られるものである。
【0117】
ポジ型感光性接着剤層をスピンコート法で形成する場合は、上記構成成分が含まれるポジ型感光性接着剤組成物に、(D)加熱することにより除去することが可能な有機溶剤を加えることが好ましい。
【0118】
有機溶剤としては、上記構成成分を均一に溶解又は分散できるものであれば特に制限はなく、例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0119】
このとき、薄膜形成の点から、有機溶剤を含有させたポジ型感光性接着剤組成物の25℃における粘度が10〜10000mPa・sであることが好ましく、薄膜化と膜の均一性の両立の点から100〜1000mPa・sであることがより好ましい。
【0120】
また、ラミネート法で接着剤層を形成する場合は、例えば、アルカリ可溶性ポリマー、光酸発生剤、熱硬化性樹脂、及び必要に応じて他の成分を有機溶剤中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、支持フィルム上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に支持フィルムを必要により除去する方法で得ることができる。
【0121】
使用される有機溶剤としては、上記構成成分を均一に溶解又は分散できるものであれば特に制限はなく、例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0122】
上記の混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。熱硬化性樹脂を用いる場合には、乾燥中に熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が充分に揮散する条件で乾燥する。具体的には、60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する条件が挙げられる。
【0123】
熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量10mg、昇温速度5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度を指す。
【0124】
ワニス層の厚みは好ましくは1〜100μmである。この厚みが1μm未満であると被着体を固定する機能が低下する傾向にあり、100μmを超えると得られる接着剤フィルム中の残存揮発分が多くなる傾向にある。
【0125】
接着剤フィルムの残存揮発分は好ましくは10質量%以下である。この残存揮発分が10%を超えると組立のための加熱の際に溶媒の揮発による発泡に起因して接着剤フィルム内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が低下し易くなる傾向にある。また、加熱の際に発生する揮発成分による周辺材料又は部材を汚染する可能性も高くなる。この残存揮発成分は、50mm×50mmサイズに切断した接着剤フィルムの初期の質量をM1とし、この接着剤フィルムを160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2としたときに、残存揮発分(質量%)={(M2−M1)/M1}×100により算出される。
【0126】
接着剤フィルムを形成するために用いられる支持フィルムは、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを用いることができる。支持フィルムとしてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0127】
本発明に係るポジ型感光性接着剤組成物は、現像後の接着剤層の40℃でのフィルム表面タック強度が200gf以下となるものが好ましい。より好ましくは100gf以下であり、さらにより好ましくは50gf以下である。タック強度とは、フィルムの塗工した上面について、レスカ製プローブタッキング試験機を用いて、JISZ0237−1991に記載の方法(プローブ直径5.1mm、引き剥がし速度10mm/s、接触荷重100gf/cm2、接触時間1s)により、40℃におけるタック強度(粘着力)を測定したときの値である。タック強度が200gfを超えると、得られるポジ型感光性接着剤層の室温における表面の粘着性が強くなり、取扱い性が悪くなる傾向にある。
【符号の説明】
【0128】
1…半導体ウェハ、1a…半導体チップ、2…ダイシングブレード、3…粘着シート、4…バックグラインダー、5…ポジ型感光性接着剤層、5a,5b…接着剤、6…粘着シート、7…粘着シート、8…半導体搭載用支持部材、9…ボンディングワイヤ、10…接着剤付半導体チップ、12…封止樹脂、100,110…積層体、200,300…半導体装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤付半導体チップの製造方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の半導体チップを積層するスタックパッケージ型の半導体がメモリーなどの用途に使用されている。このスタックパッケージ型パッケージは年々薄型化の方向にあり、近年では厚さが50μm以下のチップが使用されるようになってきた。このような半導体装置を製造する場合、半導体ウェハを50μm程度に薄厚化し、この半導体ウェハの回路裏面にフィルム状の接着剤を貼付けた後、ダイシングブレードによって半導体ウェハを接着剤とともに切断する方法が用いられている。
【0003】
しかし、上記の方法では、接着剤フィルムの切断面にバリが発生し易く、このような接着剤のはみ出しが半導体装置製造の歩留まり低下の原因となる場合があった。
【0004】
上記の方法以外にも半導体チップに接着剤層を設ける技術は知られている。例えば、下記特許文献1には、先ダイシング法を用いて薄厚のチップを作成した後に、インクジェット法や印刷法などで該チップ裏面に液状の接着剤を塗布する方法が開示されている。また、下記特許文献2には、粘着シート上に、エネルギー線硬化型の接着剤層及び空隙部を持って配列されたチップ集合体が積層されたものに対して、チップ集合体側から空隙部に対応する接着剤層の部分にエネルギー線を照射することにより、当該部分の接着剤層を硬化させ、この硬化部分を粘着シート上に残して接着剤付半導体チップをピックアップする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−14913号公報
【特許文献2】特開2005−322853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、チップとチップとの間に液状の接着剤が充填されてしまい、各チップを分離するためには接着剤層を切断する工程が必要となり、製造工程が複雑化する問題がある。上記特許文献2に記載の方法では、硬化させた部分が接着剤付半導体チップの接着剤に付随してくることが多いという問題がある。
【0007】
本発明は、接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップを容易に製造することができる接着剤付半導体チップの製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、粘着シート上に、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、をこの順に備える積層体を準備し、積層体の粘着シート側からポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させてポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得ることを特徴とする第1の接着剤付半導体チップの製造方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、粘着シート上に、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、をこの順に備える積層体を準備し、積層体の複数の半導体チップ側からポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させてポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得ることを特徴とする第2の接着剤付半導体チップの製造方法を提供する。
【0010】
本発明の第1及び第2の接着剤付半導体チップの製造方法によれば、上記ポジ型感光性接着剤層に対して上記のエネルギー線照射及び現像処理が施されることにより、半導体チップ間及び周囲に対応する接着剤層は除去されるため、余分な接着剤層が同伴されずに半導体チップと同形状の接着剤を備える接着剤付半導体チップを容易に得ることができる。
【0011】
本発明の第1又は第2の接着剤付半導体チップの製造方法において、パターン形成性の点で、上記ポジ型の感光性接着剤組成物が、アルカリ可溶性ポリマー、及びエネルギー線を照射することにより酸を発生する光酸発生剤を含有することが好ましい。
【0012】
また、取扱い性及び組成物の安定性の点で、上記光酸発生剤がナフトキノンジアジド構造を有する化合物であることが好ましい。
【0013】
更に、アルカリ現像液への溶解性向上の点で、上記アルカリ可溶性ポリマーが、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有することが好ましい。
【0014】
また、低温貼付性の点で、上記アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度が150℃以下であることが好ましい。
【0015】
更に、硬化後の耐熱性の点で、上記アルカリ可溶性ポリマーがポリイミドであることが好ましい。
【0016】
また、硬化後の耐熱性及び接着性の点で、上記ポジ型の感光性接着剤組成物が、熱硬化性樹脂を更に含有することが好ましい。
【0017】
本発明はまた、上記本発明の第1又は第2の接着剤付半導体チップの製造方法により得られる接着剤付半導体チップを、接着剤付半導体チップの接着剤を介して半導体搭載用支持部材上に接着する工程を備える、半導体装置の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップを用いることにより、歩留まり良く半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップを製造することができる接着剤付半導体チップの製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る半導体チップの作製の一工程を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る半導体チップの作製の一工程を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る半導体チップの作製の一工程を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る半導体チップの作製の一工程を示す模式断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法において好適に用いられる積層体を示す模式断面図である。
【図6】第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図7】第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図8】第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法において好適に用いられる積層体を示す模式断面図である。
【図10】第2の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図11】第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【図12】本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図13】本発明に係る半導体装置の他の実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
第1の実施形態に係る接着剤付半導体チップの製造方法は、粘着シート上に、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、をこの順に備える積層体を準備し、積層体の粘着シート側からポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させてポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得ることを特徴とする。ポジ型の感光性接着剤組成物については後述する。
【0023】
まず、上記積層体を準備するために、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップを作製する方法について説明する。図1は、本発明に係る半導体チップを作製する工程を示す模式断面図である。この工程では、半導体集積回路を形成した半導体ウェハ1の回路面S1側をダイシングブレード2でハーフカットし、溝を形成する。
【0024】
上記の溝は、半導体ウェハ1をダイシング装置のステージに固定し、ダイシングブレード2によって半導体ウェハをダイシングラインに沿ってダイシングすることで形成され、最終的に得られるチップの厚さよりもやや深めに形成されることが好ましい。
【0025】
半導体ウェハとしては、ロジックIC、メモリーIC、イメージセンサなどが挙げられる。本発明においては、周知の製造方法で半導体ウェハの表面に種々の半導体素子を集積して回路を形成したものを用いることができる。
【0026】
次に、図2に示されるように、溝を形成した半導体ウェハ1の回路面側に、粘着性を有しはく離可能な粘着シート3を貼付ける。
【0027】
粘着シート3としては、基材に粘着剤を塗布して粘着層を設けたフィルムなどを用いることができる。基材としては、エネルギー線を透過するものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)などが挙げられる。透明性の点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0028】
粘着剤としては、感圧型の粘着剤や光硬化型の粘着剤を用いることができる。本実施形態においては、粘着層が、加熱及びエネルギー線の照射のうちの少なくともいずれか一方により粘着力が低下するものが好ましい。エネルギー線としては取扱い性の点で紫外線が好適である。
【0029】
粘着シート3としては、表面保護テープやバックグラインドテープなどを用いることができる。また、BGE−122V、BGE−194U(電気化学工業製)などの市販品をバックグラインドテープとして用いることができる。粘着シート3は、エネルギー線を透過するものであることが好ましい。粘着シート3は、ラミネータなどを用いて半導体ウェハ1に貼り付けられることが好ましい。
【0030】
次に、図3に示されるように、粘着シート3に貼り付けられた半導体ウェハ1の裏面を研削することにより、半導体ウェハを所定の厚みにする。本実施形態では、半導体ウェハの裏面をバックグラインダー4を用いることによって機械的に研削している。このとき、研削面が溝の底部に達するように研磨し、これにより、図4に示されるように、半導体ウェハが個片化された半導体チップ1aが形成される。
【0031】
次に、上記で作製された複数の半導体チップ1a上に、ポジ型感光性接着剤層5を形成する。こうして、図5に示されるように、粘着シート3上に、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップ1aと、ポジ型感光性接着剤層5と、をこの順に備える積層体100が得られる。
【0032】
ポジ型感光性接着剤層は、例えば、ポジ型の感光性接着剤組成物を、上記複数の半導体チップ1a上に、インクジェット法や、スプレーコート法、スピンコート法により塗布することにより形成することができる。また、上記の印刷法によってポジ型の感光性接着剤組成物のワニスを塗布した後、乾燥することによって形成されてもよい。また、他の形成方法として、フィルム状のポジ型感光性接着剤(接着剤フィルム)をロールラミネータや真空ラミネータを用いて半導体チップ上に貼り付けることによって形成されてもよい。作業性の観点から、接着剤フィルムを用いて形成することが好ましい。このとき、半導体チップの接着剤層が形成される面は鏡面加工されていることが好ましい。鏡面加工する場合は、半導体ウェハを個片化した後、裏面をエッチングや、CMPによって鏡面加工することが好ましい。鏡面加工が行われていると接着剤層のぬれ性が向上し、密着性が向上する傾向がある。
【0033】
接着剤フィルムは、離型処理されたPETフィルムなどの支持フィルム上に、ポジ型の感光性接着剤組成物のワニスを塗布した後、乾燥することによって形成することができる。この場合、支持フィルムは、接着剤層を形成した後にはく離されることが好ましい。
【0034】
次に、上記で得られた積層体に対して、粘着シート3側からポジ型感光性接着剤層5にエネルギー線Lを照射し(図6を参照)、その後、ポジ型感光性接着剤層5に現像液を接触させることにより、ポジ型感光性接着剤層をパターニングする工程が行われる。こうして、粘着シート3上に、半導体チップと同形状の接着剤5aが積層された複数の半導体チップ1aが得られる(図7を参照)。
【0035】
上記のエネルギー照射は半導体チップ1a越しに行われるため、半導体チップ1aがマスクとなって、チップに対応する部分の照射が行われないようになっている。粘着シート3側すなわち個片化された半導体チップ1a側からエネルギー線を照射することで、チップとチップの間の空隙部分やチップの周囲に対応するポジ型感光性接着剤層5が露光され、露光された部分が現像液に対して可溶な性質を有することとなり除去される。その結果、チップ1aと同形状の接着剤5aが形成される。
【0036】
粘着シート3を通してポジ型感光性接着剤層5にエネルギー線を十分に露光させるために、粘着シート3は使用するエネルギー線に対して十分な透過性を有することが好ましい。
【0037】
現像液としては、アルカリ現像液や有機溶剤が挙げられる。アルカリ性現像液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38%が挙げられる。また、有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などが挙げられる。ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させる方法としては、現像液に浸漬させる方法や、現像液をスプレーによって吹き付ける方法などが挙げられる。残渣低減の点から、ポジ型感光性接着剤層側から現像液をスプレーによって吹き付ける方法が好ましい。現像液を接触させた後、水で洗浄することが好ましい。水での洗浄は、水に浸漬する方法やスプレーによって吹き付ける方法などが挙げられる。残渣低減の点から、ポジ型感光性接着剤層側から水をスプレーによって吹き付ける方法が好ましい。
【0038】
次に、粘着シート3上に設けられているチップ1a及び接着剤5aの接着剤5a側に別の粘着シート6を貼り付け、その後粘着シート3をはく離することにより、チップ1a及び接着剤5aを粘着シート6上に移動させる(図8を参照)。そして、粘着シート6からチップ1a及び接着剤5aをピックアップすることにより、接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップ10を得る(図11を参照)。接着剤付半導体チップ10のピックアップは、フレキシブルダイボンダなどのピックアップ装置を用いることで行うことができる。
【0039】
粘着シート6としては、常時はく離可能な粘着性を有する粘着シートなどを用いることができる。粘着シート6は、エネルギー線を透過するものであることが好ましい。粘着シート6は、ラミネータなどを用いて接着剤5a上に貼り付けられることが好ましい。
【0040】
本実施形態においては、ピックアップ時の歩留り低下を抑制できる観点から、上記粘着シート6が、上記接着剤5aと積層される側に、エネルギー線の照射によって硬化して粘着力が低下する粘着層を有するものであり、接着剤付半導体チップ10のピックアップ前に、粘着シート6側からエネルギー線を照射して上記粘着層を硬化させる工程を更に備えることが好ましい。
【0041】
また、本実施形態においては、半導体チップをピックアップする前に接着剤5aに対してエネルギー線を照射することが好ましい。これによって、エネルギー線照射されていなかった部分のポジ型感光性接着剤を変性させ、予め接着剤5aから窒素を除去することができ、チップ積層時の発泡を抑えることが可能となる。
【0042】
次に、本発明に係る接着剤付半導体チップの製造方法の第2実施形態について説明する。
【0043】
第2の実施形態の接着剤付半導体チップの製造方法は、粘着シート上に、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、をこの順に備える積層体を準備し、積層体の複数の半導体チップ側からポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させてポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得ることを特徴とする。
【0044】
第2の実施形態における上記積層体は、第1の実施形態における積層体100を作製した後、この積層体100のポジ型感光性接着剤層5側に別の粘着シート7を貼り付け、その後接着シート3をはく離することにより得ることができる。
【0045】
粘着シート7としては、常時はく離可能な粘着性を有する粘着シートなどを用いることができる。粘着シート7は、エネルギー線を透過するものであることが好ましい。粘着シート7は、ラミネータなどを用いて接着剤5a上に貼り付けられることが好ましい。
【0046】
こうして得られる積層体110に対して、複数の半導体チップ1a側からポジ型感光性接着剤層5にエネルギー線Lを照射する(図9を参照)。その後、ポジ型感光性接着剤層5に現像液を接触させることにより、ポジ型感光性接着剤層をパターニングする工程が行われる。こうして、粘着シート7上に、半導体チップと同形状の接着剤5aが積層された複数の半導体チップ1aが得られる(図10を参照)。
【0047】
上記のエネルギー照射は半導体チップ1a越しに行われるため、半導体チップ1aがマスクとなって、チップに対応する部分の照射が行われないようになっている。半導体チップ1a側からエネルギー線を照射することで、チップとチップの間の空隙部分やチップの周囲に対応するポジ型感光性接着剤層5が露光され、露光された部分が現像液に対して可溶な性質を有することとなり除去される。その結果、チップ1aと同形状の接着剤5aが形成される。
【0048】
本実施形態においては、上記の露光に加えて、半導体チップ1aの並びと同型状のフォトマスクを用意し、半導体チップとの位置が合うようにフォトマスクを粘着シート7側に設けて、粘着シート7側からエネルギー照射を行ってもよい。
【0049】
第2の実施形態においては、粘着シート7からチップ1a及び接着剤5aをピックアップすることにより、接着剤のはみ出しが十分低減された接着剤付半導体チップ10を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態においては、半導体チップをピックアップする前に接着剤5aに対してエネルギー線を照射することが好ましい。これによって、エネルギー線照射されていなかった部分のポジ型感光性接着剤を変性させ、予め接着剤5aから窒素を除去することができ、チップ積層時の発泡を抑えることが可能となる。
【0051】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記本発明に係る接着剤付半導体チップの製造方法で得られた接着剤付半導体チップを、接着剤付半導体チップの接着剤を介して半導体搭載用支持部材上に接着する工程を備える。
【0052】
半導体チップ搭載用支持部材としては、例えば、他の半導体チップ、42アロイリードフレーム及び銅リードフレーム等のリードフレーム、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂及びマレイミド系樹脂等から形成された樹脂フィルム、ガラス不織布又はガラス織布にエポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂及びマレイミド系樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸しこれを硬化させて得られる基板、並びに、ガラス基板及びアルミナ等のセラミックス基板が挙げられる。
【0053】
半導体チップと支持部材との接着は、例えば、接着剤付半導体チップと支持部材とを、40〜150℃で0.1〜10秒間加熱する条件で行われることが好ましい。
【0054】
図12は、本発明に係る方法により製造される半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図12に示される半導体装置200は、半導体チップ搭載用支持部材8と、半導体チップ搭載用支持部材8に接着剤5bを介して接着された半導体チップ1aとを備える。半導体チップ1aは、ボンディングワイヤ9によって半導体チップ搭載用支持部材10の配線と接続されている。また、半導体チップ1aは、これらが埋設される封止樹脂12によって封止されている。
【0055】
図13は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。図13に示す半導体装置300において、一段目の半導体チップ1aは接着剤5bを介して、半導体チップ搭載用支持部材8に接着され、一段目の半導体チップ1aの上に更に接着剤5bを介して二段目の半導体チップ1aが接着されている。一段目の半導体チップ1a及び二段目の半導体チップ1aの接続端子(図示せず)は、ワイヤ9を介して外部接続端子と電気的に接続され、封止材によって封止されている。このように、本発明の接着剤付半導体チップは、半導体チップを複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0056】
次に、本発明の接着剤付半導体チップの製造方法において好適に用いられるポジ型感光性接着剤組成物について説明する。
【0057】
本実施形態に係るポジ型感光性接着剤組成物は、(A)アルカリ可溶性ポリマーと、(B)エネルギー線を照射することにより酸を発生する光酸発生剤とを含有するものが好ましい。
【0058】
アルカリ可溶性ポリマーは、アルカリ現像液に可溶であればよく、テトラメチルアンモニウムハイドライド水溶液に可溶であることが好ましい。より具体的には、2.38質量%のテトラアンモニウムハイドライド水溶液に対して、25℃で溶解性を有するアルカリ可溶性ポリマーが好ましい。例えば、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリマーは、アルカリ現像液への良好な溶解性を有する場合が多く、好ましい。
【0059】
露光後の良好な接着性を確保するために、アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、30〜150℃であることが好ましく、低温で圧着できる低温圧着性の点において30〜100℃であることがより好ましい。アルカリ可溶性ポリマーのTgが30℃未満であると、露光後の熱圧着時にボイドが生成しやすくなる傾向にある。Tgが150℃を超えると、露光前の被着体への貼付け温度及び露光後の圧着温度が高くなり周辺部材にダメージを与えやすくなる傾向にある。なお、上記Tgは粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を用いて感光性接着剤をフィルム状にした場合の粘弾性の温度変化を測定したときのtanδのピーク温度である。
【0060】
アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量は、ウェハ上で膜を形成する点から5000〜150000であることが好ましく、接着性の点から10000〜50000がより好ましく、現像性と接着性の両立の点から10000〜30000が更に好ましい。アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量が5000より小さいと、感光性接着剤のフィルム形成性が低下する傾向にあり、150000を超えると、アルカリ現像液への溶解性が低下して、現像時間が長くなる傾向にある。アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量を5000〜150000とすることにより、露光後の再接着のための加熱温度を低くすることができるという効果も得られる。なお、上記の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(例えば、島津製作所製「C−R4A」(商品名))を用いて測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0061】
アルカリ可溶性ポリマーは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、ポリベンゾオキサゾール、アクリルポリマー、スチレン−マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂及びポリノルボルネン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを含むことが好ましい。これらの中でも、硬化後の接着性の点から、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール及びアクリルポリマーが好ましく、硬化後の信頼性の点から、ポリイミドがさらに好ましい。
【0062】
アルカリ可溶性ポリマーとしてのポリイミドは、主鎖中にイミド骨格を有する1種又は2種以上の重合体から構成されるものを用いることができる。ポリイミドは、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有することが更に好ましい。
【0063】
カルボキシル基を有するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基及びアミノ基を有するジアミンとの反応により、得ることが好ましい。フェノール性水酸基を有するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、フェノール性水酸基及びアミノ基を有するジアミンとの反応により、得ることが好ましい。これら反応により、ポリイミドにはジアミンに由来するカルボキシル基又はフェノール性水酸基が導入される。ジアミンの種類及びその仕込み比、反応条件等を適宜調整することにより、ポリイミドの酸価を所望の範囲に制御することができる。
【0064】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応(縮合反応)は、公知の方法により行うことができる。例えば、まず、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、等モル又はほぼ等モルの比率で、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。各成分の添加順序は任意である。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。生成したポリアミド酸を50〜80℃の温度に加熱して解重合させることによって、その分子量を調整することもできる。生成したポリアミド酸を脱水閉環させることにより、ポリイミドが生成する。脱水閉環は、加熱による熱閉環法、又は脱水剤を使用する化学閉環法により行うことができる。
【0065】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの仕込み比については、例えば、テトラカルボン酸二無水物の合計量1.0molに対して、ジアミンの合計量を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲内とすることができる。ジアミンの比率が2.0molを超えると、末端がアミノ基であるポリイミドオリゴマーが多く生成し、0.5molを下回ると、末端がカルボキシル基であるポリイミドオリゴマーが多く生成する傾向にある。ポリイミドオリゴマーの量が多くなると、ポリイミドの重量平均分子量が低下して、感光性接着剤の耐熱性等の種々の特性の低下が生じ易くなる。上記仕込み比を調整することによって、ポリイミドの重量平均分子量を5000〜150000の範囲内となるように調製することができる。
【0066】
ポリイミドの合成に使用されるジアミンとしては、アルカリ現像液への溶解性を特に良好なものとするために、下記一般式(I)で表される芳香族ジアミンが好ましい。
【0067】
【化1】
式(I)中、R1は、2価の有機基を示し、R2はヒドロキシル基またはカルボキシル基を示す。R2がヒドロキシル基であると、吸湿後の接着力低下抑制の点で好ましく、カルボキシル基であると、現像性向上の点で好ましい。2価の有機基としては、−CH2−、−C(CF3)−、−SO2−が挙げられる。
【0068】
ポリイミドのTgを低下させて熱応力を低減するため、ジアミンは、更に、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンを含むことが好ましい。
【0069】
【化2】
式(III)中、Q1、Q2及びQ3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、n1は1〜80の整数を示す。
【0070】
式(III)の脂肪族エーテルジアミンとしては、より具体的には、下記化学式(IIIa)、(IIIb)又は(IIIc)で表されるものが挙げられる。これらの中でも、露光前の低温での貼付け性及び露光後の被着体に対する良好な接着性を確保できる点で、式(IIIa)の脂肪族エーテルジアミンが好ましい。
【0071】
【化3】
式(IIIa)、(IIIb)及び(IIIc)中、n1は、1〜80の整数を示す。
【0072】
脂肪族エーテルジアミンの市販品としては、例えば、サン テクノケミカル(株)製のジェファーミン「D−230」、「D−400」、「D−2000」、「D−4000」、「ED−600」、「ED−900」、「ED−2001」、「EDR−148」(以上商品名)、BASF(製)のポリエーテルアミン「D−230」、「D−400」、「D−2000」(以上商品名)が挙げられる。
【0073】
更に、露光後の再接着性を更に高めるために、下記一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンを使用することが好ましい。
【0074】
【化4】
式(IV)中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、n2は1〜5の整数を示す。
【0075】
化学式(IV)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、式中のn2が1のとき、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサンが挙げられる。n2が2のとき、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサンが挙げられる。
【0076】
ジアミンは、上記以外のジアミンを更に含んでいてもよい。例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0077】
ポリイミドを合成する際の原料として用いるテトラカルボン酸二無水物は、接着剤の諸特性の低下を抑えるため、無水酢酸からの再結晶により精製されていることが好ましい。あるいは、テトラカルボン酸二無水物は、その融点よりも10〜20℃低い温度で12時間以上加熱することにより乾燥されていてもよい。テトラカルボン酸二無水物の純度は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される吸熱開始温度と吸熱ピーク温度との差によって評価することができ、再結晶や乾燥等によりこの差が20℃以内、より好ましくは10℃以内となるように精製されたカルボン酸二無水物をポリイミドの合成のために用いることが好ましい。吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度は、DSC(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、サンプル量:5mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:窒素の条件で測定される。
【0078】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、及びテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0079】
特に、溶剤への良好な溶解性を付与するため、下記化学式(V)又は(VI)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。この場合、これらの式で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合を、全テトラカルボン酸二無水物100モル%に対して50モル%以上とすることが好ましい。この割合が50モル%未満であると、溶解性向上効果が低下する傾向にある。
【0080】
【化5】
【0081】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
ポジ型感光性接着剤組成物におけるアルカリ可溶性ポリマーの配合量は、組成物全量基準で10〜80質量部が好ましく、また、アルカリ可溶性及び接着性のバランスの観点から20〜70質量部がより好ましい。
【0083】
本発明に係るポジ型感光性接着剤組成物に含まれる光酸発生剤としては、感光性ジアゾキノン化合物、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、などを用いることができる。これらのうち、取扱い性の点で、感光性ジアゾキノン化合物が好ましい。
【0084】
上記オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホシホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、及びジアゾニウム塩などが挙げられ、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、及びトリアルキルスルホニウム塩からなる群から選ばれるオニウム塩が好ましい。
【0085】
上記ハロゲン含有化合物としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物などがあり、トリクロロメチルトリアジンが好ましい。
【0086】
上記感光性ジアゾキノン化合物としては、1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する化合物が挙げられ、このような化合物は米国特許第2,772,972号明細書、米国特許第2,797,213号明細書、及び米国特許第3,669,658号明細書等に記載されており、具体例としては、下記のナフトキノンジアジド構造を有する化合物が挙げられる。
【0087】
【化6】
各式中、Dは、水素原子またはナフトキノンジアジドスルホン酸エステル基を示す。ただし、各式中のDがすべて水素原子である場合は除く。)
【0088】
ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル基としては、例えば、下記に示す基が挙げられる。
【0089】
【化7】
【0090】
ポジ型感光性接着剤組成物における光酸発生剤の配合量は、(A)アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して、現像性の点から1〜50質量部が好ましく、現像性と圧着後の発泡抑制の点から5〜30質量部がより好ましい。光酸発生剤の配合量を上記範囲とすることにより、ポジ型感光性接着剤層のパターニング性を良好にすることができるとともに、硬化後の接着剤の引張り伸び率を良好なものにすることができ、なおかつ露光部の現像残さ(スカム)を少なくすることができる。なお、光酸発生剤の配合量が50質量部を超えると、圧着した後の発泡を抑制することが困難となる。
【0091】
本発明に係るポジ型感光性接着剤組成物は、熱硬化性樹脂を更に含有することが好ましい。本明細書において熱硬化性樹脂とは、熱により架橋反応を起こしうる反応性化合物をいう。このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、取り扱い性及びポリイミドとの相溶性の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。これら熱硬化性樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物が好ましい。硬化性や硬化物特性の点からは、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が極めて好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、AD、S又はFのグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
シアネート樹脂としては、例えば、2,2’−ビス(4−シアネートフェニル)イソプロピリデン、1,1’−ビス(4−シアネートフェニル)エタン、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス[4−シアネートフェニル−1−(1−メチルエチリデン)]ベンゼン、シアネーテッドフェノール−ジシクロペンタンジエンアダクト、シアネーテッドノボラック、ビス(4−シアナートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナートフェニル)エーテル、レゾルシノールジシアネート、1,1,1−トリス(4−シアネートフェニル)エタン、2−フェニル−2−(4−シアネートフェニル)イソプロピリデンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
ビスマレイミド樹脂としては、例えば、o−、m−又はp−ビスマレイミドベンゼン、4−ビス(p−マレイミドクミル)ベンゼン、1,4−ビス(m−マレイミドクミル)ベンゼン、及び下記一般式(40)、(41)、(42)又は(43)で表されるマレイミド化合物が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0095】
【化8】
【0096】
一般式(40)において、R40は−O−、−CH2−、−CF2−、−SO2−、−S−、−CO−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−を示し、4つのR41はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、2つのZ1はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0097】
一般式(41)において、R42は−O−、−CH2−、−CF2−、−SO2−、−S−、−CO−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−を示し、4つのR43はそれぞれ独立に水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、2つのZ2はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0098】
一般式(42)において、xは0〜4の整数を示し、複数のZ3はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0099】
一般式(43)において、2つのR44はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示し、複数のR45はそれぞれ独立に1価の炭化水素基を示し、2つのZ4はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示し、yは1以上の整数を示す。
【0100】
一般式(40)〜(43)におけるZ1、Z2、Z3及びZ4としては、マレイン酸残基、シトラコン酸残基などが挙げられる。
【0101】
一般式式(41)で表されるビスマレイミド樹脂としては、例えば、4,4−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミド−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルフィド、4,4−ビスマレイミドジフェニルケトン、2’−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、4−ビスマレイミドジフェニルフルオロメタン、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパンが挙げられる。
【0102】
一般式式(42)で表されるビスマレイミド樹脂としては、例えば、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]フルオロメタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。
【0103】
熱硬化性樹脂を用いる場合、これを硬化させるために、硬化剤、硬化促進剤、触媒等の添加剤を感光性接着剤組成物中に適宜加えることができる。触媒を添加する場合は助触媒を必要に応じて使用することができる。
【0104】
エポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤を使用することが好ましく、これらを併用することがより好ましい。硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ現像液への溶解性に優れる点から、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物が好ましい。
【0105】
上記分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0106】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化を促進するものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0107】
エポキシ樹脂の硬化剤の量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0〜200質量部が好ましく、エポキシ樹脂100質量部に対して1〜200質量部がより好ましい。またエポキシ樹脂の硬化促進剤の量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0〜50質量部が好ましく、エポキシ樹脂100質量部に対して1〜50質量部がより好ましい。
【0108】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を使用する場合、触媒及び必要に応じて助触媒を使用することが好ましい。触媒としては、例えば、コバルト、亜鉛、銅等の金属塩や金属錯体などが挙げられ、助触媒としてはアルキルフェノール、ビスフェノール化合物、フェノールノボラック等のフェノール系化合物などが好ましい。
【0109】
熱硬化性樹脂としてビスマレイミド樹脂を使用する場合、その硬化剤としてラジカル重合剤を使用することが好ましい。ラジカル重合剤としては、例えば、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。このとき、ラジカル重合剤の使用量は、ビスマレイミド樹脂100質量部に対して0.01〜1.0質量部が好ましい。
【0110】
本発明に係るポジ型感光性接着剤組成物は、接着強度を上げる等の目的で、適宜カップリング剤を含有していてもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられるが、中でもシランカップリング剤が高い接着力を付与できる点で好ましい。
【0111】
カップリング剤を用いる場合、その使用量は、アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して、0〜50質量部が好ましく、0.01〜20質量部がより好ましく、0.1〜20質量部が特に好ましい。50質量部を超えると感光性接着剤組成物の保存安定性が低下する傾向にある。
【0112】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3―ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N’―ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、及びポリエトキシジメチルシロキサンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0113】
本発明に係るポジ型感光性接着剤組成物は、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラー、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、ほう酸アルミ、セラミック等の非金属無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラーなどが挙げられる。
【0114】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、フィルム状の接着剤に導電性又はチキソ性を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、フィルム状の接着剤に低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加され、有機フィラーはフィルム状の接着剤に靭性を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、非金属無機フィラー及び有機フィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。フィラーを用いた場合の混合、混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0115】
フィラーを用いる場合、その量は、アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対し、1000質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましい。下限は特に制限はないが、一般に1質量部である。フィラーの量が1000質量部を超えると接着性が低下する傾向がある。
【0116】
本発明の接着剤付半導体チップの製造方法で特に好適に用いられるポジ型感光性接着剤組成物は、上述した(A)アルカリ可溶性ポリマー、(B)エネルギー線の照射により酸を発生する光酸発生剤、及び(C)熱硬化性樹脂を混合することにより得られるものである。
【0117】
ポジ型感光性接着剤層をスピンコート法で形成する場合は、上記構成成分が含まれるポジ型感光性接着剤組成物に、(D)加熱することにより除去することが可能な有機溶剤を加えることが好ましい。
【0118】
有機溶剤としては、上記構成成分を均一に溶解又は分散できるものであれば特に制限はなく、例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0119】
このとき、薄膜形成の点から、有機溶剤を含有させたポジ型感光性接着剤組成物の25℃における粘度が10〜10000mPa・sであることが好ましく、薄膜化と膜の均一性の両立の点から100〜1000mPa・sであることがより好ましい。
【0120】
また、ラミネート法で接着剤層を形成する場合は、例えば、アルカリ可溶性ポリマー、光酸発生剤、熱硬化性樹脂、及び必要に応じて他の成分を有機溶剤中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、支持フィルム上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に支持フィルムを必要により除去する方法で得ることができる。
【0121】
使用される有機溶剤としては、上記構成成分を均一に溶解又は分散できるものであれば特に制限はなく、例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0122】
上記の混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。熱硬化性樹脂を用いる場合には、乾燥中に熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が充分に揮散する条件で乾燥する。具体的には、60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する条件が挙げられる。
【0123】
熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量10mg、昇温速度5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度を指す。
【0124】
ワニス層の厚みは好ましくは1〜100μmである。この厚みが1μm未満であると被着体を固定する機能が低下する傾向にあり、100μmを超えると得られる接着剤フィルム中の残存揮発分が多くなる傾向にある。
【0125】
接着剤フィルムの残存揮発分は好ましくは10質量%以下である。この残存揮発分が10%を超えると組立のための加熱の際に溶媒の揮発による発泡に起因して接着剤フィルム内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が低下し易くなる傾向にある。また、加熱の際に発生する揮発成分による周辺材料又は部材を汚染する可能性も高くなる。この残存揮発成分は、50mm×50mmサイズに切断した接着剤フィルムの初期の質量をM1とし、この接着剤フィルムを160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2としたときに、残存揮発分(質量%)={(M2−M1)/M1}×100により算出される。
【0126】
接着剤フィルムを形成するために用いられる支持フィルムは、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを用いることができる。支持フィルムとしてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0127】
本発明に係るポジ型感光性接着剤組成物は、現像後の接着剤層の40℃でのフィルム表面タック強度が200gf以下となるものが好ましい。より好ましくは100gf以下であり、さらにより好ましくは50gf以下である。タック強度とは、フィルムの塗工した上面について、レスカ製プローブタッキング試験機を用いて、JISZ0237−1991に記載の方法(プローブ直径5.1mm、引き剥がし速度10mm/s、接触荷重100gf/cm2、接触時間1s)により、40℃におけるタック強度(粘着力)を測定したときの値である。タック強度が200gfを超えると、得られるポジ型感光性接着剤層の室温における表面の粘着性が強くなり、取扱い性が悪くなる傾向にある。
【符号の説明】
【0128】
1…半導体ウェハ、1a…半導体チップ、2…ダイシングブレード、3…粘着シート、4…バックグラインダー、5…ポジ型感光性接着剤層、5a,5b…接着剤、6…粘着シート、7…粘着シート、8…半導体搭載用支持部材、9…ボンディングワイヤ、10…接着剤付半導体チップ、12…封止樹脂、100,110…積層体、200,300…半導体装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シート上に、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、をこの順に備える積層体を準備し、前記積層体の前記粘着シート側から前記ポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後前記ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させて前記ポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得る、接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項2】
粘着シート上に、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、をこの順に備える積層体を準備し、前記積層体の前記複数の半導体チップ側から前記ポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後前記ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させて前記ポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得る、接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項3】
前記ポジ型の感光性接着剤組成物が、アルカリ可溶性ポリマー、及び、エネルギー線を照射することにより酸を発生する光酸発生剤、を含有する、請求項1又は2に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項4】
前記光酸発生剤が、ナフトキノンジアジド構造を有する化合物である、請求項3に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ可溶性ポリマーが、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する、請求項3又は4に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度が150℃以下である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性ポリマーがポリイミドである、請求項3〜6のいずれか一項に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項8】
前記ポジ型の感光性接着剤組成物が、熱硬化性樹脂を更に含有する、請求項3〜7のいずれか一項に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法により得られる接着剤付半導体チップを、前記接着剤付半導体チップの接着剤を介して半導体搭載用支持部材上に接着する工程を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項1】
粘着シート上に、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、をこの順に備える積層体を準備し、前記積層体の前記粘着シート側から前記ポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後前記ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させて前記ポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得る、接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項2】
粘着シート上に、ポジ型の感光性接着剤組成物からなるポジ型感光性接着剤層と、それぞれが間隔をあけて配置された複数の半導体チップと、をこの順に備える積層体を準備し、前記積層体の前記複数の半導体チップ側から前記ポジ型感光性接着剤層にエネルギー線を照射し、その後前記ポジ型感光性接着剤層に現像液を接触させて前記ポジ型感光性接着剤層をパターニングすることにより、接着剤付半導体チップを得る、接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項3】
前記ポジ型の感光性接着剤組成物が、アルカリ可溶性ポリマー、及び、エネルギー線を照射することにより酸を発生する光酸発生剤、を含有する、請求項1又は2に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項4】
前記光酸発生剤が、ナフトキノンジアジド構造を有する化合物である、請求項3に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ可溶性ポリマーが、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する、請求項3又は4に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度が150℃以下である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性ポリマーがポリイミドである、請求項3〜6のいずれか一項に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項8】
前記ポジ型の感光性接着剤組成物が、熱硬化性樹脂を更に含有する、請求項3〜7のいずれか一項に記載の接着剤付半導体チップの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法により得られる接着剤付半導体チップを、前記接着剤付半導体チップの接着剤を介して半導体搭載用支持部材上に接着する工程を備える、半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−155195(P2011−155195A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16800(P2010−16800)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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