説明

描画装置、カラーフィルタ製造装置、描画方法およびカラーフィルタ製造方法

【課題】あらかじめ隔壁を備えた基材などの吐出位置を規定する撮像対象手段が伸縮する様な寸法精度の低い基材に対しても、吐出位置がずれることなく描画できる吐出位置制御技術を提供することを目的とする。
【解決手段】移動可能なステージに配置された伸縮性の被描画基材上の所定の位置へ複数のインクジェット列のインクジェットから機能液滴を吐出する描画装置において、撮像装置と、撮像装置の撮像画像から吐出位置を決定する吐出位置決定手段と、搬送機能を持つステージと、被描画基材の描画位置にインクジェット列が来た場合に吐出位置決定手段により決定された位置のインクジェットのみが選択的に機能液滴を吐出するインクジェット列とからなる描画装置などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のインクジェットを使用し、各機能液滴を吐出するインクジェット複数のインクジェットから機能液滴を選択的に吐出することにより基材上に描画を行う描画方法、描画装置並びにこれを用いたカラーフィルタの製造装置およびその製造方法に関するものであり、特に基材が伸縮する場合にも位置合わせが的確に行える描画装置、カラーフィルタ製造装置、描画方法およびカラーフィルタ製造方法に係る技術である。
【背景技術】
【0002】
機能液滴の着弾位置にずれを生じることなく、且つ迅速に描画することを目的として、機能液滴の種類に応じたインクジェット毎に、ビットマップ化された吐出パターンデータを記憶する吐出パターンデータ記憶工程と、移動する基板を連続的に位置検出することによって位置検出信号を生成する位置検出信号生成工程と、位置検出信号を分周することにより、吐出信号を生成する吐出信号生成工程と、吐出信号をトリガとして、記憶された吐出パターンデータを転送する吐出パターンデータ転送工程と、転送された吐出パターンデータに基づいて各機能液滴を吐出するインクジェットを駆動する工程とを備えた描画装置や描画方法が公知である。
【0003】
特許文献は以下の通り。
【特許文献1】特開2003−266671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記技術の問題点を解決するためになされたもので、従来、例えば特許文献1では、基板が伸縮する様な場合には吐出すべき領域とは異なった領域に吐出される様な問題点が起きていた。
【0005】
そこで、複数のインクジェットを使用し、各機能液滴を吐出するインクジェット複数のインクジェットから機能液滴を選択的に吐出することにより基材上に描画を行う描画方法、描画装置並びにこれを用いたカラーフィルタの製造装置およびその製造方法に関するものであり、特に基材が伸縮する場合にも位置合わせが的確に行える。描画装置、カラーフィルタ製造装置、描画方法およびカラーフィルタ製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を克服するために考え出されたものであり、請求項1記載の発明は、移動可能なステージに配置された伸縮性の被描画基材上の所定の位置へインクジェット列のインクジェットから機能液滴を吐出する描画装置において、被描画基材の機能液滴の吐出位置を規定する撮像対象が設けられている被描画基材を撮像する撮像装置と、該撮像装置の撮像画像から吐出位置を決定する吐出位置決定手段と、被描画基材を載置しながら移動可能な搬送機能を持つステージと、被描画基材の描画位置にインクジェット列が来た場合に該吐出位置決定手段により決定された位置のインクジェットのみが選択的に機能液滴を吐出するインクジェット列と、からなることを特徴とする描画装置を提供するものである。なおこのステージは、X方向、Y方向、θ方向に移動可能なものが一般的であるが、他のステージの構成でも構わない。
【0007】
また、撮像装置は、基材を読み込むCCDセンサを備え、吐出する前に基材をCCDで
スキャンを行う様なものであるのが一般的であるが、他の撮像装置や撮像手段をとるものでも構わない。さらに、この結果得られる撮像画像をもとに隔壁の間隔情報を得、それに基づいて吐出信号を生成し描画を行うようにしているのが一般的であるが、他の画像処理方法をとるものでも構わない。
【0008】
請求項2記載の発明は、機能液滴の吐出位置を規定する撮像対象が隔壁であることを特徴とする請求項1記載の描画装置を提供するものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の描画装置において、該撮像装置の撮像画像から機能液滴吐出量を決定する機能液滴吐出量決定手段を持ち、インクジェットがその機能液滴吐出量決定手段に応じた量を吐出することを特徴とする請求項1または2記載の描画装置を提供するものである。この場合の吐出量は、画像の濃い部位の間隔の長さを認識して、必要な機能液滴量を求めて、これにより駆動電圧を制御して吐出量を決定する。
【0010】
請求項4記載の発明は、インクジェット列が、色種毎にインクジェット列を備え、各々の列のインクジェットが選択的に機能液滴を吐出するものである請求項1または2または3記載の描画装置から構成されるカラーフィルタ製造装置を提供するものである。
【0011】
請求項5記載の発明は、移動可能なステージに配置された伸縮性の被描画基材上の所定の位置へ順次搬送されながらインクジェット列のインクジェットから機能液滴を吐出する描画方法において、
被描画基材の機能液滴の吐出位置を規定する撮像対象が設けられている被描画基材を撮像して決定した吐出位置の被描画基材にインクジェットの吐出位置が来た場合に選択的に機能液滴を吐出することを特徴とする描画方法を提供するものである。
【0012】
請求項6記載の発明は、機能液滴の吐出位置を規定する撮像対象が隔壁であることを特徴とする請求項5記載の描画方法を提供するものである。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項5または6記載の描画方法において、機能液滴の吐出量を制御することを特徴とする描画方法を提供するものである。
【0014】
請求項8記載の発明は、複数種のインクジェット列を備え、各インクジェット列が選択的に吐出するものである請求項5または6または7記載の描画方法を用いるカラーフィルタ製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本願発明により、複数のインクジェット列から機能液滴を吐出し描画する装置において、あらかじめ隔壁を備えた基材などの吐出位置を規定する撮像対象手段が伸縮する様な寸法精度の低い基材に対しても、吐出位置がずれることなく描画できる吐出位置制御が可能になった。
【0016】
また、あらかじめ隔壁を備えた基材が伸縮し寸法精度の低い基材に対しても、ヘッドを制御して機能液滴をどの隔壁間の描画エリアにおいても着弾された機能液滴の厚みが等しいという所望の量にコントロールすることができることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この描画装置は塗工装置である例である。本発明の実施の形態を図1から図7を用いて説明する。
【0018】
図4は、基材の隔壁が、精度良く配置された結果、吐出位置にずれが生じていないことを示す吐出信号波形とそれに対応する概念断面図である。図5は、基材の隔壁が、精度悪く配置された結果、吐出位置にずれが生じていることを示す吐出信号波形とそれに対応する概念断面図である。図6は、図5の基材をCCDでスキャンして、生成した吐出信号を用いて塗工した場合の吐出信号波形とそれに対応する概念断面図である。を表した例である。図7は、位置信号パルスとトリガー信号と吐出タイミング信号の関係を示す、特定のX軸部分の一定のY軸方向の範囲の波形図である。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る塗工装置の構成例を示す機能ブロック図である。図2は、本発明の実施の形態に係る塗工装置の全体構成例を示す外形斜視図である。図3は、本発明の実施の形態に係る塗工装置の制御例を示すフローチャートである。
【0020】
すなわち、図1に示すように、メインコントローラ1は、ステージコンローラ2およびエンコーダコントローラ4、ファンクションジェネレータ5と連携し、塗工装置の全体を制御する部位である。次に、以上のように構成した本発明の実施の形態に係るインクジェットの動作について図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0021】
なお、図3のフローチャートに示した処理の流れは、あくまで一例であり、この処理の流れの一部を変形または追加した処理についても、特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0022】
まず、本実施の形態の動作を開始する前にステージ上の定められた位置に被描画基材を載置する。次に、本発明の実施の形態に係る塗工装置を動作させるためには、メインコントローラ1からステージの初期化を行う(S1)。これにより初期位置にステージが位置する。次に、CCDで基材の全面のスキャンを行う(S2)。この結果撮像画像が得られる。
【0023】
次に、スキャンした濃淡データの画像処理を行い、任意のスライスレベルで、2値化を行い、隔壁の位置および形状を示す画像を得る(S3)。この場合のスライスレベルは隔壁部と非隔壁部がそれぞれ1と0である様に予め設定されるレベルを用いる。次に、2値化されたデータを基に、隔壁に相当する部分の間隔を計測してデータ変換し、吐出位置信号を生成し、ファンクションジェネレータに格納する(S4)。
【0024】
次に、ステージコントローラに塗工動作パラメータステージの撮像開始位置とスタート位置とステージの実位置を関連付けるためにその位置関係分だけ位置を補正するパラメータ、つまりデータ上の塗工開始位置を定める。次に、エンコーダコントローラにステージの移動速度に応じた吐出周波数と吐出間隔を規定するパラメータを各々セットする(S5,S6)。
【0025】
次に、吐出データ、つまり描画パターンのビットマップデータをヘッドドライバー8に格納する。(S7)。次に、ステージを移動し、塗工開始位置をあわせる(S8)。次に、S8で合わせた、ステージの座標値を読み込む。(S9)。
【0026】
次に、ヘッドをスタート位置になるようにステージを移動する(S10)。次に、ヘッドの状態を良好にするためフラッシングを行う(S11)。次に、ステージをY方向に位置信号パルスを発生しながら移動を行い、ステップS9で読み込んだ位置のY軸値に応じてステージコントローラ2からトリガー信号を発生される。
【0027】
ヘッドドライバー8にある描画パターンのビットマップデータである吐出データは順次
吐出の制御単位であるクロックパルスである吐出タイミング信号と掛け合わされ、吐出信号となる。ステージコントローラ2からエンコーダコントローラ4を経由してヘッドドライバー8で掛け合わされて、さらにこのトリガーコントローラ3から、ヘッドドライバー8に対して、吐出開始を指示する信号であるトリガー信号を出力する(S13)。
【0028】
トリガー信号がエンコーダコントローラ4に入力されるとファンクションジェネレータに格納されていた吐出位置信号を読み出し、吐出タイミング信号を生成する。さらに、ヘッドドライバー8はこのトリガー信号を受信してから吐出タイミング信号と吐出データを同期させて、吐出信号となし、塗工動作パラメータにより信号処理をすることにより吐出位置を決定してインクジェットのヘッド9に対して吐出動作を出力する。
【0029】
これをX軸方向に並行してヘッドユニットの間隔で同様な処理を同時に並行して行う。これを全てのY軸値の位置にインクジェット列が来た状態で全ての描画エリアに対して終了すれば動作は終了する。この場合の吐出量は、吐出タイミングパルスの周期に応じてヘッドの駆動電圧を上下することによって定める。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、複フィルムベースのカラーフィルター製造方法,ガラスベースのカラーフィルター製造方法,薄膜電子回路基板の製造方法など、各種の基材の伸縮の有無に係わらず製造できる手段を提供する制御方法が必要な各種基板の描画装置、カラーフィルタ製造装置、描画方法およびカラーフィルタ製造方法に係る技術である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗工装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る塗工装置の全体構成例を示す外形斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る制御例を示す、フローチャート図である。
【図4】基材の隔壁が精度良く配置された結果、着弾位置にずれが生じていないことを示す吐出信号波形とそれに対応する概念断面図である。
【図5】基材の隔壁が精度悪く配置された結果、着弾位置にずれが生じていることを示す吐出信号波形とそれに対応する概念断面図である。
【図6】図5の基材をCCDでスキャンして、ファンクションジェネレータから生成した吐出信号を基に吐出した結果、着弾位置にずれが生じていないことを示す吐出信号波形とそれに対応する概念断面図である。
【図7】位置信号パルスとトリガー信号と吐出信号の関係を示す、特定のX軸部分の一定のY軸方向の範囲の波形図である。斜線部はHもLもありうる。
【符号の説明】
【0032】
1…メインコントローラ
2…ステージコントローラ
4…エンコーダコントローラ
5…ファンクションジェネレータ
6…CCDセンサ
7…画像処理部
8…ヘッドドライバー
9…インクジェットヘッド
12…基材
13…ステージ
14…隔壁
15…吐出タイミング波形(ステージのエンコーダから得られたデータをもとにした吐出タイミング波形)
16…吐出タイミング波形(ファンクションジェネレータから得られたデータを含めて求めた吐出タイミング波形)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能なステージに配置された伸縮性の被描画基材上の所定の位置へインクジェット列のインクジェットから機能液滴を吐出する描画装置において、被描画基材の機能液滴の吐出位置を規定する撮像対象が設けられている被描画基材を撮像する撮像装置と、該撮像装置の撮像画像から吐出位置を決定する吐出位置決定手段と、被描画基材を載置しながら移動可能な搬送機能を持つステージと、被描画基材の描画位置にインクジェット列が来た場合に該吐出位置決定手段により決定された位置のインクジェットのみが選択的に機能液滴を吐出するインクジェット列と、からなることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
機能液滴の吐出位置を規定する撮像対象が隔壁であることを特徴とする請求項1記載の描画装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の描画装置において、該撮像装置の撮像画像から機能液滴吐出量を決定する機能液滴吐出量決定手段を持ち、インクジェットがその機能液滴吐出量決定手段に応じた量を吐出することを特徴とする請求項1または2記載の描画装置。
【請求項4】
インクジェット列が、色種毎にインクジェット列を備え、各々の列のインクジェットが選択的に機能液滴を吐出するものである請求項1または2または3記載の描画装置から構成されるカラーフィルタ製造装置。
【請求項5】
移動可能なステージに配置された伸縮性の被描画基材上の所定の位置へ順次搬送されながらインクジェット列のインクジェットから機能液滴を吐出する描画方法において、
被描画基材の機能液滴の吐出位置を規定する撮像対象が設けられている被描画基材を撮像して決定した吐出位置の被描画基材にインクジェットの吐出位置が来た場合に選択的に機能液滴を吐出することを特徴とする描画方法。
【請求項6】
機能液滴の吐出位置を規定する撮像対象が隔壁であることを特徴とする請求項5記載の描画方法。
【請求項7】
請求項5または6記載の描画方法において、機能液滴の吐出量を制御することを特徴とする描画方法。
【請求項8】
複数種のインクジェット列を備え、各インクジェット列が選択的に吐出するものである請求項5または6または7記載の描画方法を用いるカラーフィルタ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−691(P2006−691A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176534(P2004−176534)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】