説明

描画装置、及び描画方法

【課題】一面を描画する際に、先端側から順次描画を実施して、後端の描画においては、必ずしも描画ヘッドにおける全ての吐出ノズルが使用可能ではないことに起因して描画ヘッドの使用効率が低下することを抑制できる描画装置、及び描画方法を提供する。
【解決手段】描画装置は、連続媒体を描画位置に供給する供給手段と、連続媒体における描画位置に位置する被描画領域を吸着保持する保持手段と、液状体を吐出する複数の吐出ノズルを備える吐出ヘッドを備えるヘッドユニットと、ヘッドユニットを、副走査方向に、保持手段に対して相対移動させる副走査手段と、ヘッドユニットを、副走査方向に交差する主走査方向に走査させる主走査手段と、を備え、被描画領域の副走査方向の被描画領域幅WEが、ヘッドユニットの副走査方向の描画時改行幅WMIに対して、(n−1)WMI+(1/2)WMI≦WE≦(n)WMI(nは整数)を満たす関係を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺フィルムなどの長尺の描画対象物に、描画対象物の長さ方向に当該描画対象物を供給すると共に描画を実施することで画像などを描画する描画装置、及び描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような描画装置としては、供給リールに巻かれた長尺フィルムなどの長尺の描画対象物を描画実施位置に供給し、描画実施位置に供給された部分に対して描画用ヘッドを相対移動させながら描画を実施し、描画された部分を巻き取りリールに巻き取る描画装置が知られている。しかし、描画対象物が、例えば樹脂製の薄いフィルムである場合などには、描画対象物が張力によって変形させられたり、張力に交差する方向に皺が形成されたりする場合があった。変形や皺が発生すると、描画形状が不正確になったり、描画の実施が困難になったりする場合があった。
【0003】
特許文献1には、インクジェットヘッドを主走査方向及び副走査方向に走査させる走査機構と、インクジェットヘッドの走査範囲に対峙すると共に連続紙の送り経路上に配設され、印刷に供する連続紙をエアー吸引する吸着テーブルと、吸着テーブルに吸着させた状態で連続紙をその長さ方向に送る紙送り機構とを備え、吸着テーブルにおける吸引穴の位置を工夫することで、紙送りおよび印刷に支障を生ずることなく、連続紙の幅方向両端部の浮き上がりを適切に防止することができるインクジェットプリンタの紙送り装置およびこれを備えたインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−118902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された装置は、一面を印刷する工程と、当該一面分の紙送りをする工程とを繰り返すため、一面を印刷するごとに紙送り方向の先端及び後端の両端の処理が必要である。先端側から順次印刷を実施して、後端の印刷においては、必ずしも印刷ヘッドにおける全ての吐出ノズルが使用可能ではないため、印刷ヘッドの使用効率が低下すると共に、印刷時間が増大するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる描画装置は、連続媒体を描画位置に順次供給する供給手段と、前記連続媒体における前記描画位置に位置する被描画領域を吸着保持する保持手段と、液状体を吐出する複数の吐出ノズルを備え前記被描画領域に向けて前記液状体を吐出する吐出ヘッドを備えるヘッドユニットと、前記ヘッドユニットを、前記連続媒体の前記保持手段に吸着保持された部分における前記連続媒体の長さ方向に略平行な副走査方向に、前記保持手段に対して相対移動させる副走査手段と、前記ヘッドユニットを、前記連続媒体の前記保持手段に吸着保持された部分における前記連続媒体の面に略平行な方向であって、前記副走査方向に交差する主走査方向に走査させる主走査手段と、を備え、前記被描画領域の前記副走査方向の被描画領域幅WEが、前記ヘッドユニットの前記副走査方向の描画時改行幅WMIに対して、(n−1)WMI+(1/2)WMI≦WE≦(n)WMI(nは整数)を満たす関係を有することを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかる描画装置によれば、供給手段から連続媒体が供給されて描画位置に位置した被描画領域は保持手段に吸着保持されて、平坦に保持されており、描画される被描画領域を平坦な状態に維持することができる。
被描画領域への描画は、吐出ヘッドからの吐出を伴う主走査を実施して、副走査方向の幅が例えば描画時改行幅WEの領域に描画し、副走査方向に被描画領域幅WEの改行を実施して次の主走査を実施する位置にヘッドユニットを保持手段に吸着保持されている被描画領域に対して相対移動することを繰り返すことで、実施する。被描画領域幅WEが、ヘッドユニットの副走査方向の描画時改行幅WMIに対して、(n−1)WMI+(1/2)WMI≦WE≦(n)WMI(nは整数)を満たす関係を有するため、(n−1)回の主走査は描画時改行幅WMIで描画し、1回だけ描画時改行幅WMIに満たない幅を描画する主走査を実施する。このときの描画幅は(1/2)WMI以上であり、主走査時に描画に寄与しない部分を描画時改行幅WMIの(1/2)以下にすることができる。例えば、描画時改行幅WMがヘッドユニットの副走査方向における描画幅であれば、最後の1回の主走査において、ヘッドユニットにおける主走査時に描画に寄与しない部分を、ヘッドユニットの描画幅の(1/2)以下にすることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる描画装置は、前記被描画領域幅WEが、前記描画時改行幅WMIの整数倍であることが好ましい。
【0010】
この描画装置によれば、被描画領域幅WEが、描画時改行幅WMIの整数倍である。したがって、描画幅が描画時改行幅WMIである主走査を実施することで、被描画領域幅WEの範囲を過不足なく描画することができる。例えば、描画時改行幅WMがヘッドユニットの副走査方向における描画幅であれば、ヘッドユニットにおける全ての吐出ノズルが描画に寄与する主走査を実施して、被描画領域全面に描画することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる描画装置は、前記描画時改行幅WMIが、前記ヘッドユニットによる前記副走査方向における描画幅であることが好ましい。
【0012】
この描画装置によれば、(n−1)回の主走査は、ヘッドユニットによる描画幅で実施し、最後の1回の主走査において、ヘッドユニットにおける主走査時に描画に寄与しない部分を、ヘッドユニットの描画幅の(1/2)未満にすることができる。
または、ヘッドユニットにおける全ての吐出ノズルが描画に寄与する主走査のみを実施して、被描画領域全面に描画することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる描画装置は、前記描画時改行幅WMIが、前記吐出ヘッドによる前記副走査方向における描画幅であることが好ましい。
【0014】
この描画装置によれば、(n−1)回の主走査は、吐出を実施している吐出ヘッドは当該吐出ヘッドにおける全ての吐出ノズルが描画に寄与する状態で描画を実施し、最後の1回の主走査において、一部の吐出ノズルのみが描画に寄与する状態で描画を実施する。当該最後の1回の主走査において、吐出ヘッドにおける描画に寄与しない吐出ノズルを、吐出ヘッドにおける全ての吐出ノズルの(1/2)未満にすることができる。
または、吐出を実施している吐出ヘッドは当該吐出ヘッドにおける全ての吐出ノズルが描画に寄与する状態で描画を実施する主走査のみを実施して、被描画領域全面に描画することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる描画装置は、前記被描画領域の描画部分1個所あたり、前記吐出ヘッドからの前記液状体の吐出を伴う走査を、m回(mは整数)実施して画像を描画し、前記描画時改行幅WMIが、前記ヘッドユニットによる前記副走査方向における描画幅、又は前記吐出ヘッドによる前記副走査方向における描画幅の(1/m)倍であることが好ましい。
【0016】
この描画装置によれば、被描画領域幅WEをヘッドユニットによる描画幅の(1/m)倍の幅の区画に区切ると、最後の区画は、ヘッドユニットによる描画幅の(1/m)倍の1/2以上の幅となる。当該区画を描画する位置にあるヘッドユニットの描画幅の(1/m)倍の幅に存在する吐出ノズルの中で、描画に寄与しない吐出ノズルを1/2未満にすることができる。または、被描画領域幅WEをヘッドユニットによる描画幅の(1/m)倍の幅の区画に区切ると、過不足なく区切ることができる。最後端の区画を描画する位置にあるヘッドユニットの描画幅の(1/m)倍の幅に存在する吐出ノズルの中で、描画に寄与しない吐出ノズルをなくすることができる。
または、被描画領域幅WEを吐出ヘッドによる描画幅の(1/m)倍の幅の区画に区切ると、最後の区画は、吐出ヘッドによる描画幅の(1/m)倍の1/2以上の幅となる。当該区画を描画する位置にある吐出ヘッドの描画幅の(1/m)倍の幅に存在する吐出ノズルの中で、描画に寄与しない吐出ノズルを1/2未満にすることができる。または、被描画領域幅WEを吐出ヘッドによる描画幅の(1/m)倍の幅の区画に区切ると、過不足なく区切ることができる。最後端の区画を描画する位置にある吐出ヘッドの描画幅の(1/m)倍の幅に存在する吐出ノズルの中で、描画に寄与しない吐出ノズルをなくすることができる。
【0017】
[適用例6]本適用例にかかる描画方法は、連続媒体における描画装置の描画位置に位置する部分である被描画領域に、液状体を吐出する複数の吐出ノズルを備え前記被描画領域に向けて前記液状体を吐出する吐出ヘッドを備えるヘッドユニットを用いて描画する描画方法であって、前記連続媒体を、前記連続媒体の前記描画位置に位置する部分における前記連続媒体の長尺方向に略平行な副走査方向に、前記副走査方向における前記被描画領域の被描画領域幅WEだけ送る媒体送り工程と、前記被描画領域を吸着する吸着工程とを有する供給吸着工程と、前記副走査方向に前記ヘッドユニットを前記被描画領域に対して相対移動させる改行工程と、前記連続媒体の前記描画位置に位置する部分における前記連続媒体の面方向に略平行であって、前記副走査方向に交差する主走査方向に前記ヘッドユニットを走査させながら、前記吐出ヘッドから前記被描画領域に向けて前記液状体を吐出する描画走査工程と、を有する描画工程と、を有し、前記媒体送り工程における送り幅である前記被描画領域幅WEが、前記改行工程における前記ヘッドユニットの前記副走査方向の描画時改行幅WMIに対して、(n−1)WMI+(1/2)WMI≦WE≦(n)WMI(nは整数)を満たす関係を有することを特徴とする。
【0018】
本適用例にかかる描画方法によれば、連続媒体が媒体送り工程によって被描画領域幅を送られ、吸着工程において被描画領域が吸着されることで、描画位置に位置した被描画領域が吸着されて、平坦に保持されている。
被描画領域への描画は、描画走査工程において副走査方向の幅が例えば描画時改行幅WEの領域に描画し、改行工程において副走査方向に被描画領域幅WEの改行を実施して次の描画走査工程を実施する位置にヘッドユニットを被描画領域に対して相対移動することを繰り返すことで、実施する。被描画領域幅WEが、ヘッドユニットの副走査方向の描画時改行幅WMIに対して、(n−1)WMI+(1/2)WMI≦WE≦(n)WMI(nは整数)を満たす関係を有するため、(n−1)回の描画走査工程では描画時改行幅WMIで描画し、1回だけ描画時改行幅WMIに満たない幅を描画する描画走査工程を実施する。このときの描画幅は(1/2)WMI以上であり、描画走査工程において描画に寄与しない部分を描画時改行幅WMIの(1/2)以下にすることができる。例えば、描画時改行幅WMがヘッドユニットの副走査方向における描画幅であれば、最後の1回の描画走査工程において、ヘッドユニットにおける描画走査工程実施時に描画に寄与しない部分を、ヘッドユニットの描画幅の(1/2)以下にすることができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかる描画方法は、前記被描画領域幅WEが、前記描画時改行幅WMIの整数倍であることが好ましい。
【0020】
この描画方法によれば、被描画領域幅WEが、描画時改行幅WMIの整数倍である。したがって、描画幅が描画時改行幅WMIである描画走査工程を実施することで、被描画領域幅WEの範囲を過不足なく描画することができる。例えば、描画時改行幅WMがヘッドユニットの副走査方向における描画幅であれば、ヘッドユニットにおける全ての吐出ノズルが描画に寄与する描画走査工程を実施して、被描画領域全面に描画することができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる描画方法は、前記描画時改行幅WMIが、前記ヘッドユニットによる前記副走査方向における描画幅であることが好ましい。
【0022】
この描画方法によれば、(n−1)回の描画走査工程は、ヘッドユニットによる描画幅で実施し、最後の1回の描画走査工程において、ヘッドユニットにおける描画走査工程において描画に寄与しない部分を、ヘッドユニットの描画幅の(1/2)未満にすることができる。
または、ヘッドユニットにおける全ての吐出ノズルが描画に寄与する描画走査工程のみを実施して、被描画領域全面に描画することができる。
【0023】
[適用例9]上記適用例にかかる描画方法は、前記描画時改行幅WMIが、前記吐出ヘッドによる前記副走査方向における描画幅であることが好ましい。
【0024】
この描画方法によれば、(n−1)回の描画走査工程は、吐出を実施している吐出ヘッドは当該吐出ヘッドにおける全ての吐出ノズルが描画に寄与する状態で描画を実施し、最後の1回の描画走査工程において、一部の吐出ノズルのみが描画に寄与する状態で描画を実施する。当該最後の1回の描画走査工程において、吐出ヘッドにおける描画に寄与しない吐出ノズルを、吐出ヘッドにおける全ての吐出ノズルの(1/2)未満にすることができる。
または、描画走査工程において吐出を実施している吐出ヘッドは当該吐出ヘッドにおける全ての吐出ノズルが描画に寄与する状態で描画を実施する描画走査工程のみを実施して、被描画領域全面に描画することができる。
【0025】
[適用例10]上記適用例にかかる描画方法は、前記被描画領域の描画部分1個所あたり、m回(mは整数)の前記描画工程を実施して画像を描画し、前記描画時改行幅WMIが、前記ヘッドユニットによる前記副走査方向における描画幅、又は前記吐出ヘッドによる前記副走査方向における描画幅の(1/m)倍であることが好ましい。
【0026】
この描画方法によれば、被描画領域幅WEをヘッドユニットによる描画幅の(1/m)倍の幅の区画に区切ると、最後の区画は、ヘッドユニットによる描画幅の(1/m)倍の1/2以上の幅となる。当該区画を描画する位置にあるヘッドユニットの描画幅の(1/m)倍の幅に存在する吐出ノズルの中で、描画に寄与しない吐出ノズルを1/2未満にすることができる。または、被描画領域幅WEをヘッドユニットによる描画幅の(1/m)倍の幅の区画に区切ると、過不足なく区切ることができる。最後端の区画を描画する位置にあるヘッドユニットの描画幅の(1/m)倍の幅に存在する吐出ノズルの中で、描画に寄与しない吐出ノズルをなくすることができる。
または、被描画領域幅WEを吐出ヘッドによる描画幅の(1/m)倍の幅の区画に区切ると、最後の区画は、吐出ヘッドによる描画幅の(1/m)倍の1/2以上の幅となる。当該区画を描画する位置にある吐出ヘッドの描画幅の(1/m)倍の幅に存在する吐出ノズルの中で、描画に寄与しない吐出ノズルを1/2未満にすることができる。または、被描画領域幅WEを吐出ヘッドによる描画幅の(1/m)倍の幅の区画に区切ると、過不足なく区切ることができる。最後端の区画を描画する位置にある吐出ヘッドの描画幅の(1/m)倍の幅に存在する吐出ノズルの中で、描画に寄与しない吐出ノズルをなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、描画装置の概略構成を示す模式平面図。(b)は、描画装置の概略構成を示す模式側面図。
【図2】(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図。(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図。(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図。
【図3】ヘッドユニットの概略構成を示す平面図。
【図4】描画工程を示すフローチャート。
【図5】フィルムにおける被描画領域の幅と、ヘッドユニットの描画幅との関係を示す説明図。
【図6】フィルムにおける被描画領域の幅と、ヘッドユニットの微小改行幅との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、描画装置、及び描画方法について、図面を参照して説明する。本実施形態は、連続媒体の一例である帯状のフィルムに画像を描画する工程で用いられる描画装置及び描画方法を例に説明する。
【0029】
<液滴吐出法>
最初に、描画装置において描画用の機能液を吐出するために用いられる液滴吐出法について説明する。液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0030】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒーターにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。このうち、ピエゾ方式は、液状材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないなどの利点を有する。本実施形態では、液状材料選択の自由度の高さ、及び液滴の制御性の良さの点から上記ピエゾ方式を用いる。
【0031】
<描画装置>
次に、フィルム10に描画する描画装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、描画装置の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、描画装置の概略構成を示す模式平面図であり、図1(b)は、描画装置の概略構成を示す模式側面図である。
【0032】
図1に示すように、描画装置1は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッド機構部2と、供給排出機構部3と、機能液供給部(図示省略)と、メンテナンス装置部5と、を備えている。
ヘッド機構部2が備える液滴吐出ヘッド20は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドであり、紫外線硬化性を有する機能液を液滴として、描画対象物に向けて吐出する。供給排出機構部3は、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴を着弾させる描画対象物であるフィルム10の被描画領域101(図5参照)を描画位置などに供給し、当該位置から排出する。機能液供給部は、液滴吐出ヘッド20への機能液の供給を行う。メンテナンス装置部5は、液滴吐出ヘッド20の保守を行う。
描画装置1は、また、これら各機構部等を総括的に制御する吐出装置制御部(図示省略)を備えている。液滴吐出ヘッド20が、吐出ヘッドに相当する。機能液が液状体に相当する。
【0033】
供給排出機構部3は、供給リール31と、巻取りリール32と、吸着テーブル33と、供給ローラー34と、従動ローラー34aと、媒体送りローラー36と、従動ローラー36aと、アイドラローラー37と、アイドラローラー38とを備えている。各リール、及び各ローラーは、それぞれ回動軸まわりに回動可能であり、それぞれの回動軸は互いに略平行である。
供給リール31と、アイドラローラー37と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、アイドラローラー38と、巻取りリール32とは、この順で配置されており、吸着テーブル33は、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとの間に配設されている。
【0034】
供給リール31には、帯状のフィルム10が巻かれており、供給モーターによって供給リール31が回動させられることによって、フィルム10が繰り出される。
従動ローラー34aは、外周が供給ローラー34の外周に接しており、付勢装置によって供給ローラー34に押し付けられている。供給ローラー34は供給モーターによって回動させられ、供給ローラー34に当接している従動ローラー34aは、供給ローラー34に従って回動する。供給リール31から供給されたフィルム10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に挟まれて、従動ローラー34aによって供給ローラー34に押し付けられており、供給ローラー34の回動による外周の回動長さに略同等の長さが供給される。
【0035】
アイドラローラー37は、回動軸が軸方向に交差する方向に揺動可能であり、揺動方向の一方に付勢されている。フィルム10における、供給リール31と、供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分に、アイドラローラー37が付勢された状態で当接することで、供給リール31とアイドラローラー37との間、及びアイドラローラー37と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分が、略弛みなく張られている。
【0036】
従動ローラー36aは、外周が媒体送りローラー36の外周に接しており、付勢装置によって媒体送りローラー36に押し付けられている。媒体送りローラー36は媒体送りモーターによって回動させられ、媒体送りローラー36に当接している従動ローラー36aは、媒体送りローラー36に従って回動する。供給ローラー34の回動によって供給されたフィルム10は、媒体送りローラー36と従動ローラー36aとの間に挟まれて、従動ローラー36aによって媒体送りローラー36に押し付けられており、媒体送りローラー36の回動による外周の回動長さに略同等の長さが供給される。
【0037】
媒体送りローラー36による送り量は、供給ローラー34による送り量より多く設定されている。媒体送りモーターから媒体送りローラー36への動力伝達機構にはトルク制御機構が組み込まれている。媒体送りローラー36において供給ローラー34より早く送ることができるフィルム10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、トルク制御機構によって制御されたトルクに応じた張力で張られる。当該張られた部分には、吸着テーブル33の吸着面が臨んでいる。
吸着テーブル33は、吸着面にフィルム10を吸着する。吸着面は平坦な面であり、フィルム10における吸着面に吸着された部分は平坦な状態に維持される。吸着方法としては、大気吸引装置を設けて負圧によって吸着する方法や、帯電及び除電装置を設けて静電気によって吸着する方法などを用いることができる。
【0038】
巻取りリール32は、巻取りモーターによって回動させられる。媒体送りローラー36から送り出されたフィルム10は、回動する巻取りリール32に巻き取られる。
アイドラローラー38は、回動軸が軸方向に交差する方向に揺動可能であり、揺動方向の一方に付勢されている。フィルム10における、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、巻取りリール32との間の部分に、アイドラローラー38が付勢された状態で当接することで、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとアイドラローラー38との間、及びアイドラローラー38と巻取りリール32との間の部分が、略弛みなく張られている。
【0039】
このような状態で、フィルム10は、供給リール31から巻取りリール32まで送られ、途中の吸着テーブル33に吸着された部分に描画が実施される。フィルム10が送られる方向は、互いに略平行である各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に略直交する方向である。各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に平行な方向をX軸方向と表記し、フィルム10の送り方向をY軸方向と表記する。
供給排出機構部3が、供給手段に相当する。フィルム10が、連続媒体に相当する。吸着テーブル33が保持手段に相当する。
【0040】
ヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11と、Y軸走査機構12とを備えている。
Y軸走査機構12は、Y軸ガイドレール12aとY軸スライダー12bとを、それぞれ1対備えている。Y軸ガイドレール12aは、吸着テーブル33を挟んでX軸方向の両側にそれぞれ1個ずつ配設されており、Y軸方向に延在している。一方のY軸ガイドレール12aと吸着テーブル33との間には、メンテナンス装置部5が配設されている。Y軸スライダー12bは、Y軸駆動モーターを介して、Y軸ガイドレール12aに、Y軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。
【0041】
X軸走査機構11は、X軸ガイドレール11aとX軸スライダー11bとを、それぞれ1対備えており、さらにガイドレール支持柱11cを4本備えている。2本のガイドレール支持柱11cが、1個のY軸スライダー12bの上に、Y軸スライダー12bのY軸方向の両端において、それぞれ1本ずつ立設されている。1個のX軸ガイドレール11aは、Y軸スライダー12bの供給リール31の側の端にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11cに差渡されて、吸着テーブル33の上方で、X軸方向に延在している。もう1個のX軸ガイドレール11aは、Y軸スライダー12bの巻取りリール32の側の端にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11cに差渡されて、吸着テーブル33の上方で、X軸方向に延在している。
2個のY軸スライダー12bは、X軸ガイドレール11a及びガイドレール支持柱11cを介して互いに固定されており、一体にY軸方向に移動する。
X軸スライダー11bは、X軸駆動モーターを介して、X軸ガイドレール11aに、X軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。2本のX軸ガイドレール11aのそれぞれに支持されたX軸スライダー11bには、ヘッドキャリッジ22のブリッジプレート27の一端がそれぞれ固定されている。両端がそれぞれX軸スライダー11bに固定されたブリッジプレート27は、X軸スライダー11bに支持されて、2本のX軸ガイドレール11aの間に差渡されている。ブリッジプレート27は、X軸駆動モーターによって、X軸ガイドレール11aに沿って、X軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能である。
【0042】
ヘッドキャリッジ22は、ブリッジプレート27と、サブキャリッジ28と、ヘッドユニット21とを備えている。サブキャリッジ28は、ブリッジプレート27の略中央に懸吊されている。ヘッドユニット21は、サブキャリッジ28の下に固定されている。ヘッドユニット21が備える液滴吐出ヘッド20は、吐出ノズル24(図2参照)が形成されたノズル基板25(図2参照)が吸着テーブル33の吸着面が臨む状態で保持されている。
【0043】
Y軸走査機構12によってX軸走査機構11をY軸方向に移動させることによって、X軸走査機構11に支持されたヘッドキャリッジ22が備えるヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20を、Y軸方向に走査させることができる。X軸走査機構11によってブリッジプレート27をX軸方向に移動させることによって、ブリッジプレート27に懸吊されたサブキャリッジ28に固定されたヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20を、X軸方向に走査させることができる。X軸走査機構11及びY軸走査機構12によって、ヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20を、X軸方向及びY軸方向に走査させることで、吸着テーブル33の吸着面の全面に対して液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24を臨ませることができる。
ヘッドユニット21を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、X軸方向の移動に同調させて、描画用の機能液を液滴として吐出させる。X軸方向に移動させる主走査と、Y軸方向に移動させる改行とを制御することにより、吸着テーブル33の吸着面に吸着されたフィルム10上の任意の位置に機能液の液滴を着弾させることで、所望する描画などを行うことが可能である。ヘッドユニット21を移動させて吐出ノズル24を臨ませることができる範囲が、描画位置に相当する。Y軸走査機構12が、副走査手段に相当する。X軸走査機構11が、主走査手段に相当する。
【0044】
<液滴吐出ヘッド>
次に、液滴吐出ヘッド20について、図2を参照して説明する。図2は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す図である。図2(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図であり、図2(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図であり、図2(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図である。
【0045】
図2(a)に示したように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25を備えている。ノズル基板25には、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aが2列形成されている。吐出ノズル24から機能液を液滴として吐出し、対向する位置にある描画対象物などに着弾させることで、当該位置に機能液を配置する。ノズル列24Aは、液滴吐出ヘッド20が描画装置1に装着された状態で、図1に示したY軸方向に延在している。ノズル列24Aにおいて吐出ノズル24は等間隔のノズルピッチで並んでおり、2列のノズル列24A間で、吐出ノズル24の位置がY軸方向に半ノズルピッチずれている。したがって、液滴吐出ヘッド20としては、Y軸方向に半ノズルピッチ間隔で機能液の液滴を配置することができる。
【0046】
図2(b)及び(c)に示すように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25に圧力室プレート51が積層されており、圧力室プレート51に振動板52が積層されている。
圧力室プレート51には、液滴吐出ヘッド20に供給される機能液が常に充填される液たまり55が形成されている。液たまり55は、振動板52と、ノズル基板25と、圧力室プレート51の壁とに囲まれた空間である。機能液は、振動板52の液供給孔53を経由して液たまり55に供給される。また、圧力室プレート51には、複数のヘッド隔壁57によって区切られた圧力室58が形成されている。振動板52と、ノズル基板25と、2個のヘッド隔壁57とによって囲まれた空間が圧力室58である。
【0047】
圧力室58は吐出ノズル24のそれぞれに対応して設けられており、圧力室58の数と吐出ノズル24の数とは同じである。圧力室58には、2個のヘッド隔壁57の間に位置する供給口56を介して、液たまり55から機能液が供給される。ヘッド隔壁57と圧力室58と吐出ノズル24と供給口56との組は、液たまり55に沿って1列に並んでおり、1列に並んだ吐出ノズル24がノズル列24Aを形成している。図2(b)では図示省略したが、図示した吐出ノズル24を含むノズル列24Aに対して液たまり55に関して略対称位置に、1列に並んで配設された吐出ノズル24がもう1列のノズル列24Aを形成している。当該ノズル列24Aに対応するヘッド隔壁57と圧力室58と供給口56との組が、1列に並んでいる。
【0048】
振動板52の圧力室58を構成する部分には、それぞれ圧電素子59の一端が固定されている。圧電素子59の他端は、固定板(図示省略)を介して液滴吐出ヘッド20全体を支持する基台(図示省略)に固定されている。
圧電素子59は電極層と圧電材料とを積層した活性部を有し、電極層に駆動電圧を印加することで、活性部が長手方向(図2(b)又は(c)における振動板52の厚さ方向)に縮む。活性部が縮むことで、圧電素子59の一端が固定された振動板52が圧力室58と反対側に引張られる力を受ける。振動板52が圧力室58と反対側に引張られることで、振動板52が圧力室58の反対側に撓む。これにより、圧力室58の容積が増加することから、機能液が液たまり55から供給口56を経て圧力室58に供給される。次に、電極層に印加されていた駆動電圧が解除されると、活性部が元の長さに戻ることで、圧電素子59が振動板52を押圧する。振動板52が押圧されることで、圧力室58側に戻る。これにより、圧力室58の容積が急激に元に戻る、すなわち増加していた容積が減少することから、圧力室58内に充填されていた機能液に圧力が加わり、当該圧力室58に連通して形成された吐出ノズル24から機能液が液滴となって吐出される。
【0049】
<ヘッドユニット>
次に、ヘッド機構部2が備えるヘッドユニット21の概略構成について、図3を参照して説明する。図3は、ヘッドユニットの概略構成を示す平面図である。図3に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット21が描画装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0050】
図3に示したように、ヘッドユニット21は、ユニットプレート23と、ユニットプレート23に搭載された9個の液滴吐出ヘッド20と、を有している。液滴吐出ヘッド20は、図示省略したヘッド保持部材を介してユニットプレート23に固定されている。固定された液滴吐出ヘッド20は、ヘッド本体がユニットプレート23に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズル基板25が、ユニットプレート23の面より突出した位置に位置している。図3は、ノズル基板25の側から見た図である。9個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの液滴吐出ヘッド20を有するヘッド組42を3群、形成している。それぞれの液滴吐出ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が描画装置1に取り付けられた状態において、Y軸方向に延在している。
【0051】
一つのヘッド組42が有する3個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う液滴吐出ヘッド20の、一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。ヘッド組42が有する3個の液滴吐出ヘッド20において、全ての吐出ノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、吐出ノズル24は、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶ。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの液滴吐出ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成する吐出ノズル24から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線上に着弾する。一つのヘッド組42が備える3個の液滴吐出ヘッド20が有する6列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列は、例えば180個の6倍、1080個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは、70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は、約75.5mmである。液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において互いに重なるため、X軸方向に階段状に並んでヘッド組42を構成している。
【0052】
ヘッドユニット21が有する3つのヘッド組42は、それぞれが有する1本のノズル列とみなせるノズル列が、Y軸方向において、ノズル列24Aの半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。言い換えると、それぞれのヘッドユニット21は、互いに隣り合うヘッド組42を構成する液滴吐出ヘッド20の、一方のヘッド組42における液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方のヘッド組42における液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が、Y軸方向において、半ノズルピッチずれた位置に、配設されている。
一つのヘッドユニット21が備える3つのヘッド組42における9個の液滴吐出ヘッド20が有する18列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列を「ユニットノズル列240A」と表記する。ユニットノズル列240Aは、例えば180個の18倍、3240個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは、70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は、約226.7mmである。即ち、一つのヘッドユニット21の吐出ノズル24から一滴ずつ吐出させて、X軸方向が同じ位置になるように着弾させると、3240個の点が70μmのピッチ間隔で連なる直線が形成される。
【0053】
<描画工程>
次に、描画装置1によってフィルム10に描画する描画工程について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、描画工程を示すフローチャートである。図5は、フィルムにおける被描画領域の幅と、ヘッドユニットの描画幅との関係を示す説明図である。図5に示したX軸及びY軸は、図1に示したX軸及びY軸と一致している。矢印aの方向が、フィルム10が移動する方向である。
【0054】
図4のステップS1では、フィルム送りを実施する。フィルム送りは、上述した供給ローラー34を回動させて、所定の長さを吸着テーブル33の吸着面上に送出する。上述したように、吸着テーブル33に対して供給ローラー34の反対側には媒体送りローラー36が配設されている。供給ローラー34から送出されたフィルム10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、媒体送りローラー36のトルク制御機構によって制御されたトルクに応じた張力で張られる。
フィルム送りによるフィルム10送り長さは、図5に二点鎖線で囲って示した被描画領域101のY軸方向の幅であるWEである。フィルム送りと描画とを交互に実施して、フィルム10の上に連続する画像を形成するため、フィルム送り長さと、被描画領域101のY軸方向の長さである被描画領域幅WEとは、略同等である。フィルム送り長さが被描画領域幅WEより長いと、画像の境目に隙間が形成される。被描画領域幅WEがフィルム送り長さより長いと、画像の境目に描画された画像が重なる部分が形成される。
【0055】
次に、図4のステップS2では、吸着テーブル33によってフィルム10を吸着する。図5に示した、フィルム10における吸着テーブル33と重なる部分の略全面が、吸着テーブル33に吸着される。
被描画領域101の全面に描画するため、吸着テーブル33は、被描画領域101より広い範囲を吸着して平坦に維持することが好ましい。ヘッドユニット21のユニットノズル列240Aは、被描画領域101を包含する範囲に機能液の液滴を着弾させることができる位置に位置することが可能であることが必要である。
【0056】
次に、図4のステップS3では、X軸走査機構11及びY軸走査機構12を稼働させて、ヘッドユニット21を描画開始位置に移動させる。描画開始位置は、例えば、被描画領域101における、フィルム10の進行方向の最も下流側(巻取りリール32側)に描画できる位置である。図5に示したヘッドユニット21aは、当該描画開始位置に位置したヘッドユニット21である。
【0057】
次に、図4のステップS4では、描画走査を実施する。図5に示したヘッドユニット21aの位置に位置したヘッドユニット21をX軸方向(主走査方向)に走査させると共に、吐出ノズル24から描画形状に対応した位置に向けて液滴を吐出することで、第一描画行121に描画する。第一描画行121は、被描画領域101における、フィルム10の進行方向の最も下流側の、Y軸方向の幅がユニット描画幅WUの領域である。ユニット描画幅WUは、ヘッドユニット21のユニットノズル列240Aによって描画可能な幅である。
【0058】
次に、図4のステップS5では、改行を実施する。改行は、描画走査を実施してヘッドユニット21bの位置に位置したヘッドユニット21を、Y軸方向におけるフィルム10の進行方向の上流側に移動させることで実施する。改行における移動距離(改行量)は、描画走査で描画したY軸方向の幅であるユニット描画幅WUである。幅がユニット描画幅WUの領域に描画し、改行量がユニット描画幅WUの改行を実施し、当該改行位置で描画走査を実施することで、フィルム10上に隙間なく描画することができる。改行における移動距離(改行量)が、描画時改行幅WMIに相当する。
【0059】
次に、ステップS6では、被描画領域101における描画してない領域のY軸方向の幅がユニット描画幅WU以上であるか否かを判定する。
被描画領域101における描画してない領域のY軸方向の幅がユニット描画幅WU以上である(ステップS6でYES)場合には、ステップS4に戻り、ステップS4からステップS6を繰り返す。図5に示した例では、ヘッドユニット21cの位置に位置したヘッドユニット21をX軸方向(主走査方向)に走査させると共に、吐出ノズル24から描画形状に対応した位置に向けて液滴を吐出することで、第二描画行122に描画する。さらに、改行させることで、すなわち、Y軸方向におけるフィルム10の進行方向の上流側にユニット描画幅WUの距離を移動させることで、ヘッドユニット21dの位置に移動させる。
【0060】
被描画領域101における描画してない領域のY軸方向の幅がユニット描画幅WU未満である(ステップS6でNO)場合には、ステップS7に進む。図5に示した例では、ヘッドユニット21がヘッドユニット21dの位置に位置した場合に、未描画の第三描画行123の幅WUJがユニット描画幅WUより小さいため、ステップS7に進む。
【0061】
次に、図4のステップS7では、部分描画走査を実施する。部分描画走査は、ヘッドユニット21が備える吐出ノズル24の一部を稼働させない描画走査である。図5に示した例では、ヘッドユニット21によって、第三描画行123及びノズル休止行140に描画することが可能である。しかし、ノズル休止行140の部分は現在描画を実施している対象である被描画領域101には含まれない領域であり、描画走査を実施する対象の領域には含まれない。部分描画走査では、幅WUJの第三描画行123に対向する吐出ノズル24を稼働させて第三描画行123に描画し、幅WUKのノズル休止行140に対向する吐出ノズル24は休止させる。第三描画行123の幅WUJをユニット描画幅WUの半分以上に設定することで、部分描画走査において休止させる吐出ノズル24の数を減らして、吐出ノズル24の稼働率を高くしている。
【0062】
次に、図4のステップS8では、フィルム10の描画対象領域への描画が完了したか否かを判定する。フィルム10の描画対象領域への描画が完了していなかった(ステップS8でNO)場合には、ステップS1に戻り、ステップS1からステップS8を繰り返す。フィルム10の描画対象領域への描画が完了していた(ステップS8でYES)場合には、描画装置1によってフィルム10に描画する描画工程を終了する。
【0063】
<描画工程2>
次に、描画装置1によって、微小改行方式を用いてフィルム10に描画する微小改行描画工程について、図6を参照して説明する。図6は、フィルムにおける被描画領域の幅と、ヘッドユニットの微小改行幅との関係を示す説明図である。図6に示したX軸及びY軸は、図1に示したX軸及びY軸と一致している。したがって、矢印aの方向がフィルム10が移動する方向である。
微小改行描画は、微小改行幅WKがユニット描画幅WUの(1/m)であって(mは整数)、1回の描画走査で1個の吐出ノズル24を用いて描画することが可能な描画像を、m回の描画走査を実施して、m個の吐出ノズル24を用いて形成する描画方法である。例えば、1個の吐出ノズル24を用いて描画走査方向に液滴を連続して着弾させて直線を形成することができる。当該直線を、ヘッドユニット21において副走査方向に微小改行幅WKを隔てて位置するm個の吐出ノズル24を用いて、それぞれの吐出ノズル24に当該直線を形成する液滴m個に対して1個の液滴を吐出させることによって、形成する。吐出ノズル24は、吐出量や着弾位置が、規格を満たす範囲でばらついている。m個の吐出ノズル24を使用することで、当該ばらつきの影響を少なくすることができる。微小改行幅WKが、描画時改行幅WMIに相当する。
【0064】
図6に示した微小改行描画は、微小改行幅WKがユニット描画幅WUの(1/4)である。
微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224は、Y軸方向の幅が、微小改行幅WKである。ノズル休止行241、ノズル休止行242、及びノズル休止行243は、Y軸方向の幅が微小改行幅WKであり、被描画領域101に含まれない領域である。
【0065】
図6に示した被描画領域101を描画する最初の描画走査では、ヘッドユニット21を、ノズル休止行241、ノズル休止行242、ノズル休止行243、及び微小描画行221に対向させて、微小描画行221に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221に描画するために必要な量の略(1/4)である。
【0066】
最初の描画走査が終了後、改行幅が微小改行幅WKの改行を実施し、ヘッドユニット21を、2番目の描画走査を実施する位置に位置させる。2番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、ノズル休止行242、ノズル休止行243、微小描画行221、及び微小描画行222に対向させて、微小描画行221及び微小描画行222に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221又は微小描画行222に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221又は微小描画行222に描画するために必要な量の略(1/4)である。
【0067】
2番目の描画走査が終了後、改行幅が微小改行幅WKの改行を実施し、ヘッドユニット21を、3番目の描画走査を実施する位置に位置させる。3番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、ノズル休止行243、微小描画行221、微小描画行222、及び微小描画行223に対向させて、微小描画行221及び微小描画行222及び微小描画行223に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223に描画するために必要な量の略(1/4)である。
【0068】
3番目の描画走査が終了後、改行幅が微小改行幅WKの改行を実施し、ヘッドユニット21を、4番目の描画走査を実施する位置に位置させる。4番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、及び微小描画行224に対向させて、対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223又は微小描画行224に向けて吐出される吐出量は、微小描画行221又は微小描画行222又は微小描画行223又は微小描画行224に描画するために必要な量の略(1/4)である。
4番目の描画走査が実施されると、微小描画行221には、最初と2番目と3番目と4番目とのそれぞれの描画走査において微小描画行221に描画するために必要な量の略(1/4)ずつの機能液が配置されて、微小描画行221に描画するために必要な量の機能液が配置されている。したがって、微小描画行221の描画は完成している。
【0069】
微小描画行222には、2番目と3番目と4番目とのそれぞれの描画走査において微小描画行222に描画するために必要な量の略(1/4)ずつの機能液が配置されて、微小描画行222に描画するために必要な量の略(3/4)の機能液が配置されている。
微小描画行222には、2番目と3番目と4番目とのそれぞれの描画走査において微小描画行222に描画するために必要な量の略(1/4)ずつの機能液が配置されて、微小描画行222に描画するために必要な量の略(3/4)の機能液が配置されている。
微小描画行223には、3番目と4番目とのそれぞれの描画走査において微小描画行223に描画するために必要な量の略(1/4)ずつの機能液が配置されて、微小描画行223に描画するために必要な量の略(1/2)の機能液が配置されている。
微小描画行224には、4番目の描画走査において微小描画行224に描画するために必要な量の略(1/4)の機能液が配置されている。
5番目以降の描画走査では、ヘッドユニット21を、4個所の微小描画行に対向させて、それぞれの微小描画行に、当該微小描画行に描画するために必要な量の略(1/4)の機能液を配置する。
【0070】
図6に示した被描画領域101を描画する最後から4番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、微小描画行226、微小描画行227、微小描画行228、部分描画行230、及び部分休止行240に対向させて、微小描画行226、微小描画行227、微小描画行228、及び部分描画行230に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。
微小描画行226、微小描画行227、微小描画行228、又は部分描画行230、に向けて吐出される吐出量は、当該微小描画行に描画するために必要な量の略(1/4)である。微小描画行226にはそれまでに実施された3回の描画走査において配置されていた機能液と合わせて、微小描画行226に描画するために必要な量の機能液が配置されている。したがって、最後から4番目の描画走査を実施して、微小描画行226の描画は完成している。
【0071】
最後から3番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、微小描画行227、微小描画行228、部分描画行230、部分休止行240、及びノズル休止行245に対向させて、微小描画行227、微小描画行228、及び部分描画行230に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行227、微小描画行228、又は部分描画行230、に向けて吐出される吐出量は、当該微小描画行に描画するために必要な量の略(1/4)である。微小描画行227にはそれまでに実施された3回の描画走査において配置されていた機能液と合わせて、微小描画行227に描画するために必要な量の機能液が配置されている。したがって、最後から3番目の描画走査を実施して、微小描画行227の描画は完成している。
【0072】
最後から2番目の描画走査では、ヘッドユニット21を、微小描画行228、部分描画行230、部分休止行240、ノズル休止行245、及びノズル休止行246に対向させて、微小描画行228、及び部分描画行230に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。微小描画行228、又は部分描画行230、に向けて吐出される吐出量は、当該微小描画行に描画するために必要な量の略(1/4)である。微小描画行228にはそれまでに実施された3回の描画走査において配置されていた機能液と合わせて、微小描画行228に描画するために必要な量の機能液が配置されている。したがって、最後から2番目の描画走査を実施して、微小描画行228の描画は完成している。
【0073】
最後の描画走査では、ヘッドユニット21を、部分描画行230、部分休止行240、ノズル休止行245、ノズル休止行246、及びノズル休止行247に対向させて、部分描画行230に対向する吐出ノズル24から液滴を吐出させる。部分描画行230に向けて吐出される吐出量は、部分描画行230に描画するために必要な量の略(1/4)である。部分描画行230にはそれまでに実施された3回の描画走査において配置されていた機能液と合わせて、部分描画行230に描画するために必要な量の機能液が配置されている。したがって、最後の描画走査を実施して、部分描画行230の描画は完成している。
【0074】
部分描画行230への描画は、部分休止行240に臨んでいる吐出ノズル24を稼働させない描画走査である。部分描画行230の幅を微小改行幅WKの半分以上に設定することで、部分休止行240に臨んでいる故に休止させる吐出ノズル24の数を減らして、吐出ノズル24の稼働率を高くしている。
【0075】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)被描画領域101における第三描画行123の幅WUJがユニット描画幅WUの半分以上となる幅に、被描画領域101の幅を設定している。これにより、部分描画走査において、ノズル休止行140に対向するために休止させる吐出ノズル24の数を、ヘッドユニット21が備える吐出ノズル24の半分未満にして吐出ノズル24の稼働率を高くすることができる。
【0076】
(2)被描画領域101における部分描画行230の幅が微小改行幅WKの半分以上となる幅に、被描画領域101の幅を設定している。これにより、部分描画行230に描画する際に、部分休止行240に臨んでいるために休止させる吐出ノズル24の数を、部分描画行230又は部分休止行240に臨んでいる吐出ノズル24の半分未満にして吐出ノズル24の稼働率を高くすることができる。
【0077】
(3)フィルム10の被描画領域101に描画を実施する際には、被描画領域101は、全面が吸着テーブル33に吸着されている。これにより、フィルム10の被描画領域101を平坦に維持して、被描画領域101に皺ができるなどの平坦な状態が維持されないことに起因して、描画形状精度や描画位置精度などが損なわれることを抑制することができる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0079】
(変形例1)前記実施形態においては、図4及び図5を参照して説明した描画工程の描画対象である被描画領域101における第三描画行123の幅WUJをユニット描画幅WUの半分以上に設定することで、部分描画走査において休止させる吐出ノズル24の数を減らして、吐出ノズル24の稼働率を高くしていた。より好ましくは、被描画領域101の幅は、ユニット描画幅WUの整数倍であって、第三描画行123の幅WUJがユニット描画幅WUと等しくなる幅である。ユニット描画幅WUは、描画時の改行量である。被描画領域の幅をヘッドユニットの描画幅(改行量)の整数倍にすることによって、ノズル休止行140のような、被描画領域に臨んでいるヘッドユニットの一部の吐出ノズルが臨んでいるが被描画領域の外である領域をなくすることができる。すなわち、被描画領域の外に対向する吐出ノズルを休止させた描画走査をなくして、ヘッドユニットが備える吐出ノズルを効率よく稼働させることができる。
【0080】
(変形例2)前記実施形態においては、図6を参照して説明した描画工程の描画対象である被描画領域101における部分描画行230の幅を微小改行幅WKの半分以上に設定することで、部分休止行240に臨んでいて休止させる吐出ノズル24の数を減らして、吐出ノズル24の稼働率を高くしている。より好ましくは、被描画領域101の幅は、微小改行幅WKの整数倍であって、部分描画行230の幅が微小改行幅WKと等しくなる幅である。微小改行幅WKは、ユニット描画幅WUの(1/4)である。
被描画領域の幅をヘッドユニットの描画幅の(1/m)の長さ(mは整数)である微小改行幅の整数倍にすることによって、部分休止行240のような、被描画領域に臨んでいるヘッドユニットの一部の吐出ノズルが臨んでいるが被描画領域の外である領域をなくすることができる。すなわち、被描画領域の外に対向する吐出ノズルを休止させた描画走査をなくして、ヘッドユニットが備える吐出ノズルを効率よく稼働させることができる。
【0081】
(変形例3)前記実施形態においては、図6を参照して説明した微小改行描画工程の描画対象である被描画領域101における微小描画行221、微小描画行222、微小描画行223、微小描画行227、微小描画行228、及び部分描画行230にも、被描画領域101における他の部分と同様に、4回の描画走査を実施する描画を行っていた。しかし、微小改行描画において、被描画領域の全てに同一回数の描画走査を実施して描画することは必須ではない。始端や終端近くの領域では少ない描画走査で描画を完成させる方法であってもよい。例えば、微小描画行221と部分描画行230とには1回の描画走査で、微小描画行222と微小描画行228とには2回の描画走査で、微小描画行223と微小描画行227とには3回の描画走査で、それぞれの領域に描画を完成させる描画方法であってもよい。この描画方法によれば、ヘッドユニット21の一部が、ノズル休止行245、ノズル休止行246、ノズル休止行247、ノズル休止行241、ノズル休止行242、又はノズル休止行243に臨む状態で描画を実施することは必須ではなくなる。これにより、被描画領域の外に対向する吐出ノズルを休止させた描画走査をなくして、ヘッドユニットが備える吐出ノズルを効率よく稼働させることができる。
【0082】
(変形例4)前記実施形態においては、描画装置1は、ヘッドユニット21を1個備えていたが、描画装置が備えるヘッドユニットが1個であることは必須ではない。描画装置が備えるヘッドユニットは、いくつであってもよい。
【0083】
(変形例5)前記実施形態においては、ヘッドユニット21は、液滴吐出ヘッド20を9個備えていたが、ヘッドユニットが備える吐出ヘッドが9個であることは必須ではない。ヘッドユニットが備える吐出ヘッドは、いくつであってもよい。
ヘッドユニットが備える吐出ヘッドが1個の場合は、吐出ヘッドによる副走査方向における描画幅が、ヘッドユニットによる副走査方向における描画幅である。
【0084】
(変形例6)前記実施形態においては、供給ローラー34から送出されたフィルム10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、媒体送りローラー36のトルク制御機構によって制御されたトルクに応じた張力で張られており、張られた状態で吸着テーブル33に吸着され、描画が実施されていた。フィルム10が吸着テーブル33に吸着された後は、媒体送りローラー36による張り力を解除する構成であってもよい。フィルム10は、吸着テーブル33に吸着されていることで、媒体送りローラー36による張り力を解除しても、平坦な状態が維持できる。媒体送りローラー36による張り力を解除することで、当該張り力に起因してフィルム10が変形する可能性を低減することができる。
【0085】
(変形例7)前記実施形態においては、液滴吐出ヘッド20は、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aを2列備えていたが、吐出ヘッドが備えるノズル列は何列であってもよい。また、液滴吐出ヘッド20が備える吐出ノズル24は、ノズル列24Aの延在方向において互いの位置がずれていたが、吐出ヘッドは、ノズル列の延在方向において、略同一位置に位置する吐出ノズルを複数備える構成であってもよい。
【0086】
(変形例8)前記実施形態においては、描画装置1の供給排出機構部3は、巻取りリール32を備えており、描画済みのフィルム10は巻取りリール32に巻き取られていた。しかし、描画装置が巻取りリールを備えることも、連続媒体の描画済みの部分を巻き取ることも、必須ではない。例えば、切断装置を設け、描画済みの部分を所定の長さに切断する、描画装置の構成、及び描画方法であってもよい。あるいは、型抜き装置を設け、描画済みの連続媒体から製品部分のみを型抜きし、製品以外の部分を切断したり巻き取ったりする、描画装置の構成、及び描画方法であってもよい。
【0087】
(変形例9)前記実施形態においては、描画装置1のヘッドユニット21が備える全ての吐出ノズル24を使用する場合について説明した。しかし、描画装置によっては、あるいは必要な描画特性によっては、吐出量の精度や着弾位置精度を向上させるために、ヘッドユニットの構成や吐出ヘッドの構造などに起因して、特性が劣ることが予めわかっている吐出ノズルは使用しないなどの工夫がなされている場合がある。このような場合には、必ずしも全ての吐出ノズルが使用されない。この場合は、使用される吐出ノズルによって、ユニットノズル列240Aに相当するノズル列を構成する。
【0088】
(変形例10)前記実施形態においては、Y軸走査機構12によってX軸走査機構11をY軸方向に移動させることによって、ヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20を、Y軸方向に走査させていた。しかし、ヘッドユニットを保持手段に対して副走査方向に相対移動させる副走査手段が、ヘッドユニットを移動させることは必須ではない。副走査手段は、保持手段を副走査方向に移動させることによってヘッドユニットと保持手段とを相対移動させる構成であってもよい。
描画装置1において、保持手段としての吸着テーブル33を副走査方向に移動させる場合には、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、も一緒に移動させることが好ましい。吸着テーブル33を副走査方向に移動させる場合には、供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの距離、及び媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと巻取りリール32との距離が、変動する。当該距離の変動に、当該部分に位置するフィルム10の長さを適合させるためには、吸着テーブル33の移動に追従させて、供給リール31又は巻取りリール32が、フィルム10を繰り出したり、巻き取ったりする。供給リール31又は巻取りリール32による繰り出しや巻き取りが追従できない範囲は、アイドラローラー37又はアイドラローラー38で弛みを吸収することによって追従させることができる。
【0089】
(変形例11)前記実施形態においては、描画工程は、図4に示した各ステップを実施する工程であったが、描画工程は図4に示したような工程に限らない。描画工程は、例えば、描画する画像をビットマップに展開し、当該ビットマップにしたがって描画する工程であってもよい。ビットマップは、画像を、機能液の液滴を着弾させる位置情報、及び当該機能液を吐出させる吐出ノズルの情報で規定したマップである。
【0090】
(変形例12)前記実施形態においては、機能液の種類については特に記載しなかったが、描画装置においては、色が異なるなど種類の異なる機能液を吐出してもよい。色が異なる複数種類の機能液を吐出することでカラー描画も可能である。機能液の種類は、複数のヘッドユニットを備えてヘッドユニットごとに異ならせてもよいし、ヘッド組ごとに異ならせてもよいし、液滴吐出ヘッドごとに異ならせてもよいし、ノズル列ごとに異ならせてもよい。吐出ノズルごとに機能液を個別に供給できる液滴吐出ヘッドを用いて、吐出ノズルごとに異なる機能液を吐出してもよい。なお、カラー描画を実施する際には、同じ着弾位置に、複数の、例えば色が異なる機能液を着弾させることができる構成のヘッドユニット又は液滴吐出ヘッドを用いたり、走査方法を用いたりすることで、より微細な描画が可能となる。
【符号の説明】
【0091】
1…描画装置、2…ヘッド機構部、3…供給排出機構部、10…フィルム、11…X軸走査機構、11a…X軸ガイドレール、11b…X軸スライダー、12…Y軸走査機構、12a…Y軸ガイドレール、12b…Y軸スライダー、20…液滴吐出ヘッド、21…ヘッドユニット、24…吐出ノズル、24A…ノズル列、27…ブリッジプレート、28…サブキャリッジ、31…供給リール、32…巻取りリール、33…吸着テーブル、34…供給ローラー、34a…従動ローラー、36…媒体送りローラー、36a…従動ローラー、37,38…アイドラローラー、101…被描画領域、121…第一描画行、122…第二描画行、123…第三描画行、140…ノズル休止行、221,222,223,224,226,227,228…微小描画行、230…部分描画行、240…部分休止行、240A…ユニットノズル列、241,242,243,245,246,247…ノズル休止行。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続媒体を描画位置に順次供給する供給手段と、
前記連続媒体における前記描画位置に位置する被描画領域を吸着保持する保持手段と、
液状体を吐出する複数の吐出ノズルを備え前記被描画領域に向けて前記液状体を吐出する吐出ヘッドを備えるヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを、前記連続媒体の前記保持手段に吸着保持された部分における前記連続媒体の長さ方向に略平行な副走査方向に、前記保持手段に対して相対移動させる副走査手段と、
前記ヘッドユニットを、前記連続媒体の前記保持手段に吸着保持された部分における前記連続媒体の面に略平行な方向であって、前記副走査方向に交差する主走査方向に走査させる主走査手段と、を備え、
前記被描画領域の前記副走査方向の被描画領域幅WEが、前記ヘッドユニットの前記副走査方向の描画時改行幅WMIに対して、(n−1)WMI+(1/2)WMI≦WE≦(n)WMI(nは整数)を満たす関係を有することを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記被描画領域幅WEが、前記描画時改行幅WMIの整数倍であることを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記描画時改行幅WMIが、前記ヘッドユニットによる前記副走査方向における描画幅であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記描画時改行幅WMIが、前記吐出ヘッドによる前記副走査方向における描画幅であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の描画装置。
【請求項5】
前記被描画領域の描画部分1個所あたり、前記吐出ヘッドからの前記液状体の吐出を伴う走査を、m回(mは整数)実施して画像を描画し、
前記描画時改行幅WMIが、前記ヘッドユニットによる前記副走査方向における描画幅、又は前記吐出ヘッドによる前記副走査方向における描画幅の(1/m)倍であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の描画装置。
【請求項6】
連続媒体における描画装置の描画位置に位置する部分である被描画領域に、液状体を吐出する複数の吐出ノズルを備え前記被描画領域に向けて前記液状体を吐出する吐出ヘッドを備えるヘッドユニットを用いて描画する描画方法であって、
前記連続媒体を、前記連続媒体の前記描画位置に位置する部分における前記連続媒体の長尺方向に略平行な副走査方向に、前記副走査方向における前記被描画領域の被描画領域幅WEだけ送る媒体送り工程と、前記被描画領域を吸着する吸着工程とを有する供給吸着工程と、
前記副走査方向に前記ヘッドユニットを前記被描画領域に対して相対移動させる改行工程と、前記連続媒体の前記描画位置に位置する部分における前記連続媒体の面方向に略平行であって、前記副走査方向に交差する主走査方向に前記ヘッドユニットを走査させながら、前記吐出ヘッドから前記被描画領域に向けて前記液状体を吐出する描画走査工程と、を有する描画工程と、を有し、
前記媒体送り工程における送り幅である前記被描画領域幅WEが、前記改行工程における前記ヘッドユニットの前記副走査方向の描画時改行幅WMIに対して、(n−1)WMI+(1/2)WMI≦WE≦(n)WMI(nは整数)を満たす関係を有することを特徴とする描画方法。
【請求項7】
前記被描画領域幅WEが、前記描画時改行幅WMIの整数倍であることを特徴とする、請求項6に記載の描画方法。
【請求項8】
前記描画時改行幅WMIが、前記ヘッドユニットによる前記副走査方向における描画幅であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の描画方法。
【請求項9】
前記描画時改行幅WMIが、前記吐出ヘッドによる前記副走査方向における描画幅であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の描画方法。
【請求項10】
前記被描画領域の描画部分1個所あたり、m回(mは整数)の前記描画工程を実施して画像を描画し、
前記描画時改行幅WMIが、前記ヘッドユニットによる前記副走査方向における描画幅、又は前記吐出ヘッドによる前記副走査方向における描画幅の(1/m)倍であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245824(P2011−245824A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123908(P2010−123908)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】