説明

搬送台車及び搬送台車による被搬送物移送方法

【課題】カセットとカセット収納棚との間に滑り磨耗が発生するのを防止する。
【解決手段】この搬送台車1の台座11に取り付けられる車輪14の近傍には、油圧ジャッキ30a及び30bが設けられている。この油圧ジャッキ30a及び30bは、カセット棚装置4側に配置される一対の前方ジャッキ30aと、一対の前方ジャッキ30aのカセット棚装置4の反対側に配置される一対の後方ジャッキ30bとから構成されている。そして、一対の前方ジャッキ30a及び一対の後方ジャッキ30bをジャッキ制御部により制御することによって、前方ジャッキ30aを後方ジャッキ30bより高位置に保持して、車体部10を傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送台車及び搬送台車による被搬送物移送方法に関し、特に、被搬送物を収容可能な被搬送物載置手段に被搬送物を搬入し、又は、被搬送物載置手段に載置される被搬送物を搬出する搬送台車及びその搬送台車による被搬送物移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送台車は、液晶表示パネル製造工場や半導体製造工場において、液晶表示パネルやウエハが収容された重量カセットをカセット棚装置や製造装置に搬入したり、重量カセットをカセット棚装置や製造装置から搬出したりする用途で利用されている。
【0003】
例えば、液晶表示パネル製造工場においては、製造過程にある液晶ガラス基板は、カセットに収容された状態で、カセット棚装置や処理装置などに搬送される。このカセットに収容される液晶ガラス基板のサイズは、近年のテレビの大型化や生産性の向上を背景に大型化が著しい。このような液晶ガラス基板の大型化は、これを収納するカセットの大型化と高重量化に反映され、カセットを搬送する搬送装置にも液晶ガラス基板の大型化に伴う様々な対応が迫られている。
【0004】
ここで、図6及び図7を参照して、従来の一例による搬送台車100について説明する。図6は、従来の一例による搬送台車とカセット収納棚とを示した側面図である。
【0005】
図6に示すように、カセット収納棚104の棚フレーム104aには複数段に棚104bが設けられ、各棚104bには、カセット103の底面の両端を支持する桟104cが設けられている。また、搬送台車100には、公知の移載ロボット120が搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この移載ロボット120は、垂直方向に昇降可能な昇降台124と、その昇降台124上に設けられる回転可能なベース台125とを含んでいる。そして、ベース台125上には、水平方向に伸縮可能な一段アーム121、二段アーム122及び三段アーム123が設けられている。そして、カセットが載置される処理装置におけるポート台にて、三段アーム123上にカセット103を載せた移載ロボット120は、カセット収納棚104のアクセス位置に位置合わせされる。そして、一段アーム121及び二段アーム122を伸張させることにより、カセット収納棚104の内部に三段アーム123を侵入させて、カセット103の載置位置を確定後、昇降台124を降下させ、桟104cにカセット103を載置する。
【0007】
以下、図7を参照して、カセット103が移載ロボット120によりカセット収納棚104の棚104bに載置されるまでの過程を詳細に説明する。図7は、図6に示した従来の搬送台車の移載ロボットがカセットをカセット収納棚に載置するまでの過程を、カセットとカセット収納棚のみについて示した状態遷移説明図である。
【0008】
まず、図7(A)に示すように、移載ロボット120は、所定の高さ位置で、一段アーム121、二段アーム122及び三段アーム123を伸張させてカセット103をカセット収納棚104の棚104bに移送させた後、昇降台124を下降させることにより、桟104cにカセット103を載置する。この際、移載ロボット120のアーム121〜123は、大型の液晶表示パネルなどが収容されたカセット103の重量により撓んでいるので、カセット103の先端C102がR102点で桟104cに接触する。このとき、カセット103の後端C101は、搬送台車100側のR101点に位置する。したがって、R101点とR102点との間の距離は、カセット103が撓んだ分だけカセット103の長さLより短くなり、L−Wとなる。
【0009】
そして、撓んだカセット103は、底面を伸張させながら、図7(B)の状態を経て図7(C)の状態に至る。この間、カセット103の後端C101は、三段アーム123上にあり、R101点に固定され不動であるので、カセット103の先端C102は桟104cに当接しながら距離Wだけ棚104bの奥に向かって滑る。このようにして、大型の液晶パネルなどが収容されたカセット103がカセット収納棚104の棚104bに載置される。
【0010】
ところで、本願発明が用いるジャッキ手段は、トラック車両などの作業車に設けられており、作業時にジャッキ手段を伸長させて車体を持ち上げて支持している(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、このようなジャッキ手段を備えたトラック車両などは、本願発明とは目的、構成を全く異にする別発明であることは明白である。つまり、上記特許文献2は、本発明と前提とする技術が異なるため、本発明が解決しようとする課題すら存在しない。
【0011】
【特許文献1】特開2002−370184号公報
【特許文献2】特開2001−335293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そして、図7に示した移載ロボット120によるカセット収納棚104へのカセット103の載置動作では、カセット103の重量が大きいことに起因する以下に示す問題点が生じる。
【0013】
カセット103が桟104c上を滑る場合に、カセット103の重量が十分大きいことによって、カセット103と桟104cとの間に大きな摩擦が生じて、カセット103と桟104cとの間に滑り摩耗が発生して、カセット103及び桟104cの双方が傷付くという問題点があった。また、上記したカセット103をカセット収納棚104に載置する場合だけでなく、カセット103をカセット収納棚104から摘出する場合も、カセット103と桟104cとの間に滑り磨耗が発生して、カセット103及び桟104cの双方が傷付くという問題点があった。
【0014】
そして、このカセット103と桟104cとの間の磨耗による2次的な問題として以下のものが挙げられる。
【0015】
カセット収納棚104には、垂直方向及び水平方向に複数段の棚104bが設けられ、各棚104bにカセット103が収納される。また、カセット収納棚104の上部には図示しないフィルタが設置され、カセット収納棚104の各棚104bにはフィルタを介したダウンフローの清浄空気が供給される。しかしながら、前述のようにカセット103と桟104cとの間の滑り磨耗により、当該多量のパーティクル(微小塵埃)が発生している状態では、多量のパーティクルがダウンフローの気流に乗って、上部から下部に移動するという不都合があった。そのため、棚104bにカセット103が載置されていると、これらカセット103の表面にそのパーティクルが付着したり、気流の淀み部にパーティクルが沈殿・堆積したりしていた。また、カセット収納棚104の上部の棚104bで発生するパーティクルは、他の棚104bに載置されるカセット103との接触期間が多く、カセット103に付着し易い。
【0016】
そして、パーティクルの付着したカセット103が処理装置に搬入されて、当該カセット103の扉を開放して内部から液晶ガラス基板を取り出す場合、カセット103に付着したパーティクルが僅かな空気の流れで舞い上がり、飛散してカセット103内部の液晶ガラス基板に付着する。一旦、液晶ガラス基板に付着したパーティクルは、洗浄しても完全に除去することは困難で、その除去されないパーティクルが原因となって、最終製品に欠陥が生じ、製品の歩留まりを低下させるという問題点があった。
【0017】
更には、パーティクルの付着したカセット103をクリーンルーム内で搬送する場合でも、搬送途中でパーティクルが飛散し、飛散したパーティクルが各処理装置に侵入して、各処理装置で扱われる液晶ガラス基板に欠陥を発生させることも起り得る。
【0018】
従って、カセット収納棚104へのカセット載置作業におけるカセット103と桟104cとの間の滑り磨耗は、製品の歩留まり向上のために、回避せねばならぬ技術上の重要課題であると認識される。
【0019】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、カセット(被搬送物)とカセット収納棚(被搬送物載置手段)との間に滑り磨耗が発生するのを防止することが可能な搬送台車及びその搬送台車による被搬送物移送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0020】
上記目的を達成するために、この発明の搬送台車は、被搬送物を収容可能な被搬送物載置手段に被搬送物を搬入し、又は、被搬送物載置手段に載置される被搬送物を搬出する搬送台車であって、床面上を走行可能な走行手段が設けられる車体部と、車体部に搭載され、被搬送物載置手段に載置される被搬送物の下方から上方に向かって移動することにより当該被搬送物を持ち上げるとともに、被搬送物載置手段の上方から下方に向かって移動することにより持ち上げられている被搬送物を当該被搬送物載置手段に載置する移載ロボットと、被搬送物載置手段側に設けられ、走行時には床面から離間した位置に配置されるとともに、停止時には車体部を持ち上げ支持する第1ジャッキ手段と、第1ジャッキ手段の被搬送物載置手段とは反対側に設けられ、走行時には床面から離間した位置に配置されるとともに、停止時には車体部を持ち上げ支持する第2ジャッキ手段と、第1ジャッキ手段及び第2ジャッキ手段の各々の高さ位置を制御するジャッキ制御手段とを備えている。そして、ジャッキ制御手段が第1ジャッキ手段及び第2ジャッキ手段を制御することによって、第1ジャッキ手段を第2ジャッキ手段より同等又は高位置に保持して、車体部を水平又は傾斜させる。
【0021】
上記構成によれば、被搬送物載置手段側に設けられる第1ジャッキ手段が、第1ジャッキ手段の被搬送物載置手段とは反対側に設けられる第2ジャッキ手段より高位置に配置されるので、車体部の被搬送物載置手段側が高位置になるように傾斜させることができる。このため、車体部に搭載される移載ロボットの被搬送物載置手段側が高位置となり傾斜する。これにより、移載ロボットに重量の大きい被搬送物が載置されることにより、被搬送物及び移載ロボットが撓んだとしても、移載ロボットに載置される被搬送物を被搬送物載置手段側が高位置になる傾斜状態にすることができる。したがって、この状態の被搬送物を被搬送物載置手段に載置する場合に、車体部側から順に載置させていくことができるので、被搬送物の撓みを解消させながら被搬送物載置手段に被搬送物を載置することができる。その結果、被搬送物が被搬送物載置手段上で滑ることなく載置するので、被搬送物と被搬送物載置手段との間に滑り磨耗が発生するのを防止することができる。なお、第1ジャッキ手段及び第2ジャッキ手段により、移載ロボットに載置される被搬送物を水平状態にする場合でも、被搬送物を被搬送物載置手段側が上方になる傾斜状態する場合と同様の効果を得ることができる。
【0022】
上記搬送台車において、好ましくは、第1ジャッキ手段及び/又は第2ジャッキ手段は、複数のジャッキを含む。このように構成すれば、車体部を安定して傾斜させることができる。
【0023】
上記搬送台車において、好ましくは、第1ジャッキ手段及び/又は第2ジャッキ手段は、油圧ジャッキからなる。このように構成すれば、搬送台車の構成を小型化することができるとともに、強力な力を車体部に加えることができる。
【0024】
この発明の搬送台車による被搬送物移送方法は、被搬送物を収容可能な被搬送物載置手段に被搬送物を搬入し、又は、被搬送物載置手段に載置される被搬送物を搬出する搬送台車による被搬送物移送方法であって、搬送台車は、床面上を走行可能な走行手段が設けられる車体部と、車体部に搭載され、被搬送物載置手段に載置される被搬送物の下方から上方に向かって移動することにより当該被搬送物を持ち上げるとともに、被搬送物載置手段の上方から下方に向かって移動することにより持ち上げられている被搬送物を当該被搬送物載置手段に載置する移載ロボットと、被搬送物載置手段側に設けられ、走行時には床面から離間した位置に配置されるとともに、停止時には車体部を持ち上げ支持する第1ジャッキ手段と、第1ジャッキ手段の被搬送物載置手段とは反対側に設けられ、走行時には床面から離間した位置に配置されるとともに、停止時には車体部を持ち上げ支持する第2ジャッキ手段と、第1ジャッキ手段及び第2ジャッキ手段の各々の高さ位置を制御するジャッキ制御手段とを備えている。そして、搬送台車による被搬送物移送方法は、ジャッキ制御手段が第1ジャッキ手段及び第2ジャッキ手段を制御することによって、第1ジャッキ手段を第2ジャッキ手段より同等又は高位置に保持して、車体部を水平又は傾斜させるステップを含んでいる。
【0025】
上記構成によれば、車体部を傾斜させるステップにおいて、被搬送物載置手段側に設けられる第1ジャッキ手段が、第1ジャッキ手段の被搬送物載置手段とは反対側に設けられる第2ジャッキ手段より高位置に配置されるので、車体部の被搬送物載置手段側が高位置になるように傾斜させることができる。このため、車体部に搭載される移載ロボットの被搬送物載置手段側が高位置となり傾斜する。これにより、移載ロボットに重量の大きい被搬送物が載置されることにより、被搬送物及び移載ロボットが撓んだとしても、移載ロボットに載置される被搬送物を被搬送物載置手段側が高位置になる傾斜状態にすることができる。したがって、この状態の被搬送物を被搬送物載置手段に載置する場合に、車体部側から順に載置させていくことができるので、被搬送物の撓みを解消させながら被搬送物載置手段に被搬送物を載置することができる。その結果、被搬送物が被搬送物載置手段上で滑ることなく載置するので、被搬送物と被搬送物載置手段との間に滑り磨耗が発生するのを防止することができる。なお、第1ジャッキ手段及び第2ジャッキ手段により、移載ロボットに載置される被搬送物を水平状態にする場合でも、被搬送物を被搬送物載置手段側が上方になる傾斜状態する場合と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態による搬送台車1の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態による搬送台車とカセット棚装置とを示した側面図であり、図2は、図1に示した一実施形態による搬送台車の正面図であり、図3は、図1に示した一実施形態による搬送台車の平面図である。
【0028】
搬送台車1は、図1〜図3に示すように、大型の液晶表示パネルが収容されたカセット3をカセット棚装置4に搬入するとともに、カセット棚装置4に載置されたカセット3を搬出する無人搬送台車である。なお、上記したカセット棚装置4は、搬送台車1により搬送されるカセット3を複数ストックする機能を有している。そして、搬送台車1により搬送されるカセット3は、フレーム4aにより構成される各棚4bに搬入され、各棚4bに設けられる桟4cに載置される。この桟4cは、カセット3の底面の両端を支持するために、各棚4bの下方両端に設けられている。搬送台車1は、床面2上を走行可能な4つの車輪14が設けられる車体部10と、車体部10に搭載される移載ロボット20と、油圧ジャッキ30a及び30bと、油圧ジャッキ30a及び30bを制御するジャッキ制御部40(図4参照)とを備えている。
【0029】
車体部10は、台座11と、台座11上に対向して配置される一対のフレーム12a及び12bと、前記一対のフレーム12a及び12bの上部に取り付けられるフレーム13とを含んでいる。そして、一対のフレーム12a及び12bとフレーム13とは、矩形状の枠体を形成している。また、台座11の下部には、上記した4つの車輪14が取り付けられている。この車輪14は、タイヤ14a、車輪支持部材14b及びタイヤ14aを車輪支持部材14bに回転可能に支持する回転軸14cから構成され、図示しない駆動機構により駆動される。
【0030】
移載ロボット20は、上記した車体部10の一対のフレーム12a及び12b及びフレーム13により形成される枠体の内部に設けられている。この移載ロボット20は、後述するアーム21〜23を、カセット棚装置4の棚4bの桟4cに載置されるカセット3の下方から上方に向かって移動させることにより、当該カセット3を持ち上げる機能を有している。また、この移載ロボット20は、カセット3が載置されているアーム21〜23をカセット棚装置4の棚4bの上方から下方に向かって移動させることにより、アーム23上のカセット3をカセット棚装置4の棚4bの桟4cに載置する機能を有している。
【0031】
そして、移載ロボット20は、車体部5のフレーム12及び13の枠内を垂直方向に移動する昇降台24と、昇降台24に回転可能に取り付けられる回転テーブル25とを備えている。そして、回転テーブル25には、下側から順番に、一対の一段アーム21、一対の二段アーム22及び三段アーム23が取り付けられている。また、一対の一段アーム21は、回転テーブル25に設けられる一段目回転軸26に回転可能に取り付けられ、一対の二段アーム22は、一対の一段アーム21に設けられる二段目回転軸27に回転可能に取り付けられ、三段アーム23は、一対の二段アーム22に設けられる三段目回転軸28に回転可能に取り付けられている。これにより、各アーム21〜23が連携して、伸縮可能となる。また、回転テーブル25には、図示しない旋回機構が設けられ、回転テーブル25をA1方向及びA2方向(図3参照)に回転可能とする。三段アーム23は、カセット3の底面中心を下方から支持するように構成されており、移載ロボット20により三段アーム23に支持されるカセット3を任意の方向に搬送することが可能となる。
【0032】
ここで、本実施形態では、車体部10の下部に設けられる各車輪14に隣接する箇所には、それぞれ油圧ジャッキ30a及び30bが設けられている。この油圧ジャッキ30a及び30bは、カセット棚装置4側に設けられる一対の前方ジャッキ30aと、一対の前方ジャッキ30aのカセット棚装置4とは反対側に設けられる一対の後方ジャッキ30bとから構成されている。そして、これらの油圧ジャッキ30a及び30bは、走行時に、床面2から離間した位置に配置されて、搬送台車1の走行を可能にしている。また、これらの油圧ジャッキ30a及び30bは、停止時に、車体部10を持ち上げ支持する。
【0033】
ここで、図4を参照して、上記した油圧ジャッキ30a及び30bを制御するジャッキ制御部40について詳細に説明する。図4は、図1に示した一実施形態による搬送台車の油圧ジャッキを制御するジャッキ制御部の模式図である。
【0034】
ジャッキ制御部40は、一対の前方ジャッキ30aの各々に設けられる一対の前方油圧バルブ41と、一対の後方ジャッキ30bの各々に設けられる一対の後方油圧バルブ42とを備えている。これら前方油圧バルブ41及び後方油圧バルブ42は、同一の油圧バルブが用いられる。そして、前方油圧バルブ41は油圧配管43により油圧制御バルブ44に接続されており、その油圧制御バルブ44は、油圧配管45により更に油圧ポンプ46及び油圧タンク47に接続されている。
【0035】
また、後方油圧バルブ42も前方油圧バルブ41と同様に、油圧配管48により油圧制御バルブ49に接続されており、その油圧制御バルブ49は、油圧配管50により更に上記した油圧ポンプ46及び油圧タンク47に接続されている。
【0036】
油圧ポンプ46は、油圧タンク47から油を汲み上げて突出圧力を発生させる機能を有している。また、油圧制御バルブ44は、内蔵する弁を油圧供給側に設定することにより、前方ジャッキ30aに油を供給して油圧を発生させて、前方ジャッキ30aを上昇させるとともに、内蔵する弁を油圧開放側に切り換えることにより、前方ジャッキ30aに供給された油を油回収タンク51に回収させて前方ジャッキ30aを降下させる。また、油圧制御バルブ49も油圧制御バルブ44と同様に、内蔵する弁を油圧供給側に設定することにより、後方ジャッキ30bに油を供給して油圧を発生させて、後方ジャッキ30bを上昇させるとともに、内蔵する弁を油圧開放側に切り換えることにより、後方ジャッキ30bに供給された油を油回収タンク52に回収させて後方ジャッキ30bを降下させる。
【0037】
一対の前方ジャッキ30aに対応する一対の前方油圧バルブ41は、一体に制御され、一対の前方ジャッキ30aが個別に昇降動作を行うことはない。また、一対の後方ジャッキ30bに対応する一対の後方油圧バルブ42も、前方油圧バルブ41と同様に、一体に制御され、一対の後方ジャッキ30bが個別に昇降運動を行うことはない。
【0038】
図1では、前方ジャッキ30aが後方ジャッキ30bよりΔLだけ高く持ち上げられることにより、移載ロボット20の三段アーム23の先端が高位置になり、水平軸に対しθだけ傾いている。各ジャッキ30a及び30bによる傾斜角度の設定は、慣用される傾斜角検出センサ(図示せず)で傾斜角を検出し、検出値をコントローラにフィードバックさせ、傾斜角が所定の検出値になるようジャッキ30a及び30bの高さを調整・確定させる。この場合、傾斜角検出センサを使用せず、予め実測した傾斜角度とΔL値との関係データに基づいてジャッキ30a及び30bの高さを調整・確定してもよい。
【0039】
なお、図1では、4つの車輪14のすべてをジャッキ30a及び30bで持ち上げ、車体部10の重量を全てジャッキ30a及び30bで支えているが、何れか一方のみジャッキ(前方ジャッキ30a又は後方ジャッキ30b)で持ち上げ、他方は車輪14を床面2に接地させる方法で車体部10を傾斜させてもよい。
【0040】
次に、図5を参照して、カセット3が移載ロボット20によりカセット棚装置4の棚4bに載置されるまでの過程を詳細に説明する。図5は、図1に示した搬送台車の移載ロボットがカセットをカセット棚装置に載置するまでの過程を、カセットとカセット棚装置のみについて示した状態遷移説明図である。
【0041】
まず、本実施形態では、車体部10は、前方ジャッキ30aが後方ジャッキ30bよりΔLだけ高く持ち上げられるので、カセット棚装置4側が高くなるように傾斜して、その車体部10に収容される移載ロボット20の三段アーム23も傾斜する。そして、図5(A)に示すように、移載ロボット20は、所定の高さ位置で、一段アーム21、二段アーム22及び三段アーム23を伸張させてカセット3をカセット棚装置4の所定の棚4bに移送させた後、昇降台24を下降させることにより、当該棚4bの桟4cにカセット3の後端C1を当接させる。このとき、R1点とR2点との間の距離は、カセット3が撓んだ分だけカセット3の長さLより短くなり、L−Wとなる。
【0042】
続いて、昇降台24が下方に降下することにより、カセット3は、図5(B)に示すように、カセット3の撓みを解消させながら後端C1より、逐次棚4bの桟4cとの接触面積を増やす。更に、昇降台24が一層下降することにより、最終段階でカセット3の前端C2が桟4cに当接する。この間でも、カセット3の撓みが、載置動作に伴って解消して、桟4cとの間で滑り磨耗を発生させることなく載置される。そして、R1点とR2点との間の距離は、カセット3の撓みが解消して、カセットの長さLとなる。
【0043】
なお、前方ジャッキ30aに対する後方ジャッキ30bの持ち上げ量ΔLを小さく調整し、移載ロボット20の三段アーム23が水平になるよう調整しても、カセット3の底面とカセット棚装置4の桟4cとの間の滑り磨耗を回避できる場合がある。
【0044】
以上、カセット3をカセット棚装置4に載置する場合について説明したが、カセット3をカセット棚装置4から摘出する場合も、図5の逆の手順を行うことにより、カセット3が摘出されるので、カセット3をカセット棚装置4に載置する場合と同様に、カセット3をカセット棚装置4から摘出する場合も、カセット3と桟4cとの間に滑り磨耗は発生しない。
【0045】
本実施形態では、上記のように、カセット棚装置4側に設けられる前方ジャッキ30aが、前方ジャッキ30aのカセット棚装置4とは反対側に設けられる後方ジャッキ30bより高位置に配置されるので、車体部10のカセット棚装置4側が高位置になるように傾斜させることができる。このため、車体部10に搭載される移載ロボット20のカセット棚装置4側が高位置となり傾斜する。これにより、移載ロボット20に重量の大きいカセット3が載置されることにより、カセット3及び移載ロボット20が撓んだとしても、移載ロボット20に載置されるカセット3をカセット棚装置4側が高位置になる傾斜状態にすることができる。したがって、この状態のカセット3をカセット棚装置4の棚4bに載置する場合に、車体部10側から順に載置させていくことができるので、カセット3の撓みを解消させながらカセット棚装置4にカセット3を載置することができる。その結果、カセット3がカセット棚装置4の桟4c上で滑ることなく載置するので、カセット3とカセット棚装置4との間に滑り磨耗が発生するのを防止することができる。なお、前方ジャッキ30a及び後方ジャッキ30bにより、移載ロボット20に載置されるカセット3を水平状態にする場合でも、カセット3をカセット棚装置4側が上方になる傾斜状態する場合と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、本実施形態では、一対の前方ジャッキ30a及び一対の後方ジャッキ30bを設けることによって、車体部10をバランスよく安定して傾斜させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、前方ジャッキ30a及び後方ジャッキ30bを油圧ジャッキにすることによって、小型で強力な力を車体部10に加えることができる。
【0048】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
例えば、上記実施形態では、4つの車輪によって床面上を走行する搬送台車について説明したが、本発明はこれに限らず、車輪以外の走行手段を本発明の搬送台車に適用してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、カセット棚装置にカセットを載置する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、被搬送物載置手段としての処理装置のポートにカセットを載置する場合でも、同様の効果を奏する。
【0051】
また、上記実施形態の搬送台車では、カセット棚装置側に1つの右ジャッキを設けるとともに、右ジャッキのカセット棚装置の反対側に1つの左ジャッキを設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、右ジャッキ及び/又は左ジャッキを1つにしてもよいし、右ジャッキ及び/又は左ジャッキを3つ以上設けてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、ジャッキ手段として油圧ジャッキを用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、油圧ジャッキ以外のエアジャッキなども適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態による搬送台車の全体構成を示した側面図である。
【図2】図1に示した搬送台車の正面図である。
【図3】図1に示したる搬送台車の平面図である。
【図4】図1に示した搬送台車の油圧ジャッキを制御するジャッキ制御部の模式図である。
【図5】図1に示した搬送台車の移載ロボットがカセットをカセット棚装置に載置するまでの過程を、カセットとカセット収納棚のみについて示した状態遷移説明図である。
【図6】従来の一例による搬送台車とカセット収納棚とを示した側面図である。
【図7】図6に示した従来の搬送台車の移載ロボットがカセットをカセット収納棚に載置させるまでの過程を、カセットとカセット収納棚のみについて示した状態遷移説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 搬送台車
3 カセット(被搬送物)
4 カセット棚装置(被搬送物載置手段)
10 車体部
14 車輪(走行手段)
20 移載ロボット
30a 前方ジャッキ(第1ジャッキ手段)
30b 後方ジャッキ(第2ジャッキ手段)
40 ジャッキ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を収容可能な被搬送物載置手段に前記被搬送物を搬入し、又は、前記被搬送物載置手段に載置される前記被搬送物を搬出する搬送台車であって、
床面上を走行可能な走行手段が設けられる車体部と、
前記車体部に搭載され、前記被搬送物載置手段に載置される前記被搬送物の下方から上方に向かって移動することにより当該被搬送物を持ち上げるとともに、前記被搬送物載置手段の上方から下方に向かって移動することにより持ち上げられている前記被搬送物を当該被搬送物載置手段に載置する移載ロボットと、
前記被搬送物載置手段側に設けられ、走行時には床面から離間した位置に配置されるとともに、停止時には前記車体部を持ち上げ支持する第1ジャッキ手段と、
前記第1ジャッキ手段の前記被搬送物載置手段とは反対側に設けられ、走行時には床面から離間した位置に配置されるとともに、停止時には前記車体部を持ち上げ支持する第2ジャッキ手段と、
前記第1ジャッキ手段及び前記第2ジャッキ手段の各々の高さ位置を制御するジャッキ制御手段とを備え、
前記ジャッキ制御手段が前記第1ジャッキ手段及び前記第2ジャッキ手段を制御することによって、前記第1ジャッキ手段を前記第2ジャッキ手段より同等又は高位置に保持して、前記車体部を水平又は傾斜させることを特徴とする、搬送台車。
【請求項2】
前記第1ジャッキ手段及び/又は前記第2ジャッキ手段は、複数のジャッキを含むことを特徴とする、請求項1に記載の搬送台車。
【請求項3】
前記第1ジャッキ手段及び/又は前記第2ジャッキ手段は、油圧ジャッキからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の搬送台車。
【請求項4】
被搬送物を収容可能な被搬送物載置手段に前記被搬送物を搬入し、又は、前記被搬送物載置手段に載置される前記被搬送物を搬出する搬送台車による被搬送物移送方法であって、
前記搬送台車は、
床面上を走行可能な走行手段が設けられる車体部と、
前記車体部に搭載され、前記被搬送物載置手段に載置される前記被搬送物の下方から上方に向かって移動することにより当該被搬送物を持ち上げるとともに、前記被搬送物載置手段の上方から下方に向かって移動することにより持ち上げられている前記被搬送物を当該被搬送物載置手段に載置する移載ロボットと、
前記被搬送物載置手段側に設けられ、走行時には床面から離間した位置に配置されるとともに、停止時には前記車体部を持ち上げ支持する第1ジャッキ手段と、
前記第1ジャッキ手段の前記被搬送物載置手段とは反対側に設けられ、走行時には床面から離間した位置に配置されるとともに、停止時には前記車体部を持ち上げ支持する第2ジャッキ手段と、
前記第1ジャッキ手段及び前記第2ジャッキ手段の各々の高さ位置を制御するジャッキ制御手段とを備え、
前記搬送台車による被搬送物移送方法は、
前記ジャッキ制御手段が前記第1ジャッキ手段及び前記第2ジャッキ手段を制御することによって、前記第1ジャッキ手段を前記第2ジャッキ手段より同等又は高位置に保持して、前記車体部を水平又は傾斜させるステップを含むことを特徴とする、搬送台車による被搬送物移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−100774(P2008−100774A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282303(P2006−282303)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】