説明

搬送装置及び画像形成装置

【課題】搬送部材の片寄りを低減することができる搬送装置および画像形成装置を得る。
【解決手段】搬送部20は、回転可能に設けられた駆動ロール14及び従動ロール16と、駆動ロール14及び従動ロール16で張架された搬送ベルト18と、搬送ベルト18の両端部の内周面に周方向に沿って隙間をあけて複数設けられたリブ22とを有している。ここで、搬送ベルト18の駆動ロール14と従動ロール16への巻付き長さのうち最も短い長さをW(min)とし、複数のリブ22の周方向の隙間の長さのうち最も長い長さをd(max)としたとき、d(max)≦W(min)以下とされているので、搬送ベルト18の片寄りが発生してもリブ22が駆動ロール14又は従動ロール16と接触する。これにより、搬送ベルト18の片寄りを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置における記録用紙の搬送部や画像の中間転写部において、複数のロールで張架されたエンドレスベルト状の搬送部材を有する搬送装置が用いられている。ここで、エンドレスベルト状の搬送部材を有する搬送装置のうち、搬送部材の内側の両縁部にリブを接着したものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1の搬送装置では、エンドレスベルト状の搬送部材の内側の両縁部全体にリブが形成されており、搬送部材が幅方向に移動したとき、ロール端面とリブが接触することで搬送部材の片寄りを抑えている。
【0004】
特許文献2の搬送装置では、エンドレスベルト状の搬送部材内側の両縁部に複数のリブが間隔をあけて斜め方向に揃えて設けられており、搬送部材が幅方向に移動したとき、ロール端面とリブが接触することで搬送部材の片寄りを抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−230950
【特許文献2】特開2007−286090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、本構成を有していない場合に比較して、搬送部材の片寄りを低減することができる搬送装置および画像形成装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、回転可能に設けられた複数の回転部材と、複数の前記回転部材で張架され前記回転部材の回転によって被搬送物を搬送する搬送部材と、前記搬送部材の両端部の内周面に周方向に沿って隙間をあけて複数設けられ、前記回転部材と接触して前記搬送部材の幅方向への移動を制限する移動制限部材と、を有し、前記搬送部材の前記回転部材への巻付き長さのうち最も短い長さをW(min)とし、複数の前記移動制限部材の周方向の隙間の長さのうち最も長い長さをd(max)としたとき、d(max)がW(min)以下とされている。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記搬送部材の前記幅方向の一方の端部の前記移動制限部材の隙間と、前記幅方向の他方の端部の前記移動制限部材の隙間とが、前記搬送部材の移動方向にずれて配置されている。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記移動制限部材の隙間の移動方向の後端面と前記移動制限部材の隙間の移動方向と反対側の前端面の少なくとも一方が面取り形状又は円弧形状であるとき、前記移動制限部材の隙間の長さdは、前記後端面から前記前端面までの長さのうち最も長い長さとする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の搬送装置と、前記搬送部材と対向配置され、前記搬送装置で搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、搬送部材の片寄りを低減できる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、搬送部材の片寄りを低減できる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、移動制限部材の端面が面取り形状又は円弧形状であっても、本構成を有していない場合に比較して、搬送部材の片寄りを低減できる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録媒体に形成される画像の位置ずれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体図である。
【図2】(a)本発明の第1実施形態に係る搬送ベルトの内周面側の平面図である。(b)本発明の第1実施形態に係る搬送ベルトと駆動ロールの溝部との係合状態を示す断面図である。(c)本発明の第1実施形態の他の実施例に係る搬送ベルトと駆動ロールの溝部との係合状態を示す断面図である。
【図3】(a)、(b)比較例としての搬送部の断面図及び平面図である。
【図4】(a)、(b)本発明の第1実施形態に係る搬送部の断面図及び平面図である。
【図5】(a)本発明の第2実施形態に係る搬送ベルトの内周面側の平面図である。(b)本発明の第2実施形態に係る搬送部の平面図である。
【図6】(a)本発明の第3実施形態に係る搬送ベルトの内周面側の平面図である。(b)本発明の第3実施形態に係る搬送ベルトの部分拡大図である。
【図7】(a)比較例としての搬送ベルトの部分拡大図である。(b)本発明の第3実施形態に係る搬送ベルトの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の搬送装置及び画像形成装置の第1実施形態を図面に基づき説明する。図1には、画像形成装置10の各構成が概略的に示されている。画像形成装置10は、本体である筐体12の内側に記録用紙Pを搬送する搬送部20と、搬送部20で搬送された記録用紙Pに画像形成する画像形成部30と、画像形成された記録用紙Pの画像定着を行う定着部40と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部50とを有している。なお、搬送部20には、記録用紙Pが収納された収納部(図示省略)から記録用紙Pが順次搬送されるようになっている。
【0017】
搬送部20は、筐体12内に回転可能に設けられモータ(図示省略)により駆動される駆動ロール14と、駆動ロール14と同じ軸方向となるように駆動ロール14と間隔をあけて配置され筐体12内に回転可能に設けられた従動ロール16と、駆動ロール14及び従動ロール16に張架され、駆動ロール14の回転により矢印X方向に回転移動する無端状の搬送ベルト18とを有している。なお、駆動ロール14の半径をR1、従動ロール16の半径をR2としたとき、R1>R2となっている。また、駆動ロール14及び従動ロール16の回転中心となる軸部の図示を省略している。
【0018】
図2(a)には、搬送ベルト18を内周面側から見た状態が示されている。搬送ベルト18には、幅方向(移動方向である矢印X方向と交差する矢印Y方向)一方の端部の内周面に周方向に沿って隙間(長さd)を空けて、4つのリブ22(22A、22B、22C、22D)が順に接着固定されている。同様にして、搬送ベルト18には、幅方向の他方の端部の内周面に周方向に沿って隙間を空けて、4つのリブ22(22E、22F、22G、22H)が順に接着固定されている。なお、図2(a)では、リブ22D、22Hの図示を省略している。リブ22は、矢印X方向の長さがL、矢印Y方向の幅がD、高さがHの直方体状に形成されている。
【0019】
ここで、リブ22Aとリブ22Bの隙間の長さをd1、リブ22Bとリブ22Cの隙間の長さをd2、リブ22Cとリブ22Dの隙間の長さをd3、リブ22Dとリブ22Aの隙間の長さをd4とする。さらに、リブ22Eとリブ22Fの隙間の長さをd5、リブ22Fとリブ22Gの隙間の長さをd6、リブ22Gとリブ22Hの隙間の長さをd7、リブ22Hとリブ22Eの隙間の長さをd8とする。なお、図2(a)では、隙間の長さd3、d4、d7、d8の図示を省略している。
【0020】
一方、図2(b)及び図4(a)に示すように、駆動ロール14の両端部にはそれぞれ溝部24が周方向に沿って形成されている。溝部24は、幅がリブ22の幅Dよりも大きく、深さがリブ22の高さHよりも大きくなるように形成されている。同様にして、図4(a)に示すように、従動ロール16の両端部にはそれぞれ溝部26が周方向に沿って形成されている。溝部26は、幅がリブ22の幅Dよりも大きく、深さがリブ22の高さHよりも大きくなるように形成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、搬送部20を構成する複数の回転部材として、溝部24が形成された駆動ロール14と、溝部26が形成された従動ロール16とを用いているが、これに限らず、例えば、図2(c)に示すように、溝部が形成されていない駆動ロール27及び従動ロール28を用いて、リブ22の側面と駆動ロール27の端面、リブ22の側面と従動ロール28の端面を接触させて、搬送ベルト18の矢印Y方向の片寄りを規制するようにしてもよい。
【0022】
図1に示すように、搬送ベルト18の駆動ロール14への巻付き長さ(W1とする)は、駆動ロール14と搬送ベルト18が接触している駆動ロール14の外周上の点Aから点Bまでの距離で表される。同様にして、搬送ベルト18の従動ロール16への巻付き長さ(W2とする)は、従動ロール16と搬送ベルト18が接触している従動ロール16の外周上の点Cから点Dまでの距離で表される。
【0023】
駆動ロール14での搬送ベルト18の巻付き長さW1と、従動ロール16での搬送ベルト18の巻付き長さW2は、W1>W2に設定されており、巻付き長さの最小値をW(min)とすると、W(min)=W2となる。さらに、各リブ22の隙間の長さd1からd8までのうち、最も長い長さがd1であったとすると、各リブ22の隙間の長さの最長値d(max)=d1となる。
【0024】
ここで、各リブ22の接着時に、各リブ22の隙間の長さd1からd8までが、全て巻付き長さの最小値W2以下となるように接着が行われており、W2=d1となっているものとする。即ち、W(min)≧d(max)となっている。
【0025】
一方、画像形成部30は、搬送ベルト18に接して矢印R方向に回転する感光体32を備えている。感光体32の周囲には、感光体32を帯電させるための帯電ロール34が設けられている。帯電ロール34は導電性であり、外周面が感光体32の表面に接触するように配置されている。また、帯電ロール34は給電部(図示省略)によって、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加され、感光体32の回転に追従するように回転しながら、感光体32の表面を帯電させる。
【0026】
感光体32の回転方向Rで帯電ロール34よりも下流側には、露光器36が設けられている。露光器36は、複数の発光ダイオードが配列されたLED(Light Emitting Diode)アレイを含んで構成されており、帯電ロール34により帯電された感光体32の表面へ、画像データに基づいて光ビームBMを変調して照射する。これにより、感光体32の表面に静電潜像が形成される。
【0027】
感光体32の回転方向Rで露光器36よりも下流側には、現像器38が設けられている。現像器38は、感光体32に向けて開口部42Aが形成され、樹脂製のトナー(黒色又は黒色を除く他の単色)と磁性を有するキャリアとで構成された現像剤Gが内部に貯留された筐体42を有している。また、筐体42内には、円筒状の現像ロール44が、開口部42Aを介して外周面を感光体32の表面と対向させて回転可能に設けられている。
【0028】
現像ロール44の内側には、予め設定された磁極を構成するように複数の磁石(図示省略)が固定されており、この磁石の磁力によってキャリアを穂立ちさせることで、感光体32の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成するようになっている。
【0029】
また、現像器38内には、板状又は円筒状の薄層形成部材(図示省略)が現像ロール44と隙間を空けて設けられている。これにより、現像ロール44が回転すると、現像ロール44の外周面に付着した現像剤Gの層厚が薄層形成部材で規制され、現像ロール44の外周面に現像剤層が形成される。
【0030】
感光体32の回転方向Rで現像器38よりも下流側であり、且つ感光体32と搬送ベルト18が接触する部位の搬送ベルト18の内周側には、転写ロール46が設けられている。転写ロール46は、制御部50によって、トナーの電荷と逆極性の電圧が印加されるようになっており、感光体32の表面のトナーを搬送ベルト18上の記録用紙P上に転写させる。これにより、記録用紙P上にトナー像が形成される。
【0031】
感光体32の回転方向Rで転写ロール46よりも下流側には、クリーニングユニット48が設けられている。クリーニングユニット48は、感光体32に向けて開口部52Aが形成された筐体52を有している。また、筐体52内にはブラシロール54が感光体32に接して回転可能に支持されており、感光体32と連れ回りするようになっている。
【0032】
さらに、筐体52の開口部52Aの外側上縁部には、ブレード56が取付けられている。ブレード56は、弾性体の一例としてのゴム(例えば、ウレタンゴム、天然ゴム等)を直方体状に成形したものであり、感光体32の回転方向Rに対して逆方向に延びて一端部が接触している。つまり、ブレード56は、一端部が感光体32に突っ掛かるように配置されている。これにより、感光体32の表面に残留した残留トナーが、ブレード56の一端部によって掻き落とされるようになっている。
【0033】
一方、定着部40は、ハロゲンヒーター等の加熱源を内包した加熱ロール58と、加熱ロール58に接触すると共に加熱ロール58を加圧する加圧ロール59とを有している。ここで、転写ロール46でトナー像が転写された記録用紙Pが、搬送ベルト18で搬送され加熱ロール58と加圧ロール59の接触部を通過することで、熱及び圧力の作用により記録用紙P上にトナー像が定着される。トナー像が定着された記録用紙Pは、筐体12の外側へ排出される。
【0034】
次に、本発明の第1実施形態の作用について説明する。
【0035】
まず、本発明の第1実施形態の搬送部20との比較例として搬送部200の構成及び作用について説明する。図3(a)、(b)には、比較例として、搬送部200の縦断面図及び平面図が示されている。
【0036】
搬送部200は、駆動ロール202と、従動ロール204と、駆動ロール202及び従動ロール204に張架され、駆動ロール202の回転により矢印X方向に回転移動する無端状の搬送ベルト206とを有している。なお、駆動ロール202の半径をR3、従動ロール204の半径をR4としたとき、R3>R4となっている。
【0037】
搬送ベルト206には、幅方向(移動方向である矢印X方向と交差する矢印Y方向)一方の端部の内周面に周方向に沿って隙間(長さd)を空けて、4つのリブ212(212A、212B、212C、212D)が順に接着固定されている。同様にして、搬送ベルト206には、幅方向の他方の端部の内周面に周方向に沿って隙間を空けて、4つのリブ212(212E、212F、212G、212H)が順に接着固定されている。
【0038】
ここで、リブ212Aとリブ212Bの隙間の長さをdA、リブ212Bとリブ212Cの隙間の長さをdB、リブ212Cとリブ212Dの隙間の長さをdC、リブ212Dとリブ212Aの隙間の長さをdDとする。さらに、リブ212Eとリブ212Fの隙間の長さをdE、リブ212Fとリブ212Gの隙間の長さをdF、リブ212Gとリブ212Hの隙間の長さをdG、リブ212Hとリブ212Eの隙間の長さをdHとする。
【0039】
一方、駆動ロール202の両端部にはそれぞれ溝部208が周方向に沿って形成されている。溝部208は、幅がリブ212の幅よりも大きく、深さがリブ212の高さよりも大きくなるように形成されている。同様にして、従動ロール204の両端部にはそれぞれ溝部210が周方向に沿って形成されている。溝部210は、幅がリブ212の幅よりも大きく、深さがリブ212の高さよりも大きくなるように形成されている。
【0040】
また、駆動ロール202での搬送ベルト206の巻付き長さをWA、従動ロール204での搬送ベルト206の巻付き長さをWBとすると、ここではWA>WBとなっており、W(min)=WBとなっている。さらに、各リブ212の隙間の長さdAからdHまでのうち、最も長い長さがdA、dHであり、d(max)=dA、dHとなっている。ここで、各リブ212の接着時に、隙間の長さdA、dHがいずれも巻付き長さWBよりも長くなっており、即ち、W(min)<d(max)となっているものとする。
【0041】
搬送部200において、駆動ロール202が図示しないモータにより駆動され回転すると、搬送ベルト206は矢印X方向に移動する。ここで、駆動ロール202の回転中心軸と従動ロール204の回転中心軸の平行度にばらつきがあったり、駆動ロール202あるいは従動ロール204の軸方向で外径の大きさに差があると、搬送ベルト206は矢印X方向に進むだけでなく矢印Y方向にも移動して、いわゆる片寄りが起きる。
【0042】
搬送部200では、搬送ベルト206の片寄りが起こり始めると、従動ロール204での搬送ベルト206の巻付き長さの最短の長さWBよりも、リブ212の隙間の最長の長さdA、dHの方が大きいため、従動ロール204に長さdA、dHのリブ212の隙間が位置したときに、リブ212の側面と溝部210の内壁とが接触しなくなり、搬送ベルト206の矢印Y方向への移動が規制されなくなる。これにより、搬送ベルト206は矢印Y方向に移動して端部の割れ等が生じることになる。
【0043】
一方、図4(a)、(b)に示すように、本発明の第1実施形態の搬送部20では、駆動ロール14が図示しないモータにより駆動され回転すると、搬送ベルト18は矢印X方向に移動する。ここで、駆動ロール14の回転中心軸と従動ロール16の回転中心軸の平行度にばらつきがあったり、駆動ロール14あるいは従動ロール16の軸方向で外径の大きさに差があると、搬送ベルト18は矢印X方向に進むだけでなく矢印Y方向にも移動を開始しようとする。
【0044】
しかし、搬送部20では、搬送ベルト18の片寄りが起こり始めたとき、リブ22の隙間の最長の長さd(max)=d1が、従動ロール16での搬送ベルト18の巻付き最短の長さW(min)=W2以下となっているため、従動ロール16に長さd1のリブ22の隙間が位置したときでも、リブ22の側面と溝部26の内壁とが接触する。これにより、搬送ベルト18の矢印Y方向への移動が規制され、片寄りによる端部の割れ等が生じることが抑えられる。
【0045】
次に、搬送ベルト18の破断有無確認試験について説明する。
【0046】
破断有無確認試験では、搬送ベルト18として、直径40mm、周長126mm、厚さ0.06mmのポリアミドイミドを用いている。リブ22は、ウレタンゴム製であり、幅D=5mm、厚さH=1mmとなっている。また、駆動ロール14の直径16mm、駆動ロール14への搬送ベルト18の巻付き長さW1=25mm、従動ロール16の直径10mm、従動ロール16への搬送ベルト18の巻付き長さW2=16mmとなっている。
【0047】
破断有無確認試験の方法は、まず、リブ22の分割本数(片側の本数)、リブ22の長さL、リブ22の最長間隔d(max)、及びリブ22の最短間隔d(min)を変更した搬送ベルト18を準備して、駆動ロール14及び従動ロール16で張架する。そして、駆動ロール14と従動ロール16の回転中心軸間アライメントを崩した状態(片寄りが起きやすい状態)で、駆動ロール14を200時間連続回転駆動させた後、搬送ベルト18の破断の有無を目視で確認する。
【0048】
ここで、破断有無確認試験の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、リブ22が1本、リブ22の長さL=125mm、最長間隔d(max)=1mmの条件では、120時間でリブ22の接着部付近から搬送ベルト18に裂け目が発生した(目視結果×)。また、リブ22が2本、リブ22の長さL=40mm、最長間隔d(max)=27mm、最短間隔d(min)=19mmの条件では、リブ22が2時間で従動ロール16の溝部26を乗り上げ、搬送ベルト18が破断した(目視結果×)。
【0051】
一方、リブ22が2本、リブ22の長さL=50mm、最長間隔d(max)=16mm、最短間隔d(min)=12mmの条件と、リブ22が3本、リブ22の長さL=35mm、最長間隔d(max)=12mm、最短間隔d(min)=3mmの条件では、200時間連続回転駆動しても搬送ベルト18が破断しなかった(目視結果○)。なお、目視結果○の条件で画像形成してみたが、画像位置ずれは見られなかった。
【0052】
次に、本発明の搬送装置及び画像形成装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0053】
図5(a)には、第2実施形態の搬送部60に設けられた無端状の搬送ベルト62を内周面側から見た状態が示されている。搬送部60は、前述の第1実施形態の搬送部20(図1、2参照)において、搬送ベルト18に換えて搬送ベルト62を設けた構成となっている。
【0054】
搬送ベルト62の幅方向(移動方向である矢印X方向と交差する矢印Y方向)一方の端部の内周面には、周方向に沿って隙間(長さd)を空けて4つのリブ64(64A、64B、64C、64D)が順に接着固定されている。同様にして、搬送ベルト62の幅方向の他方の端部の内周面には、周方向に沿って隙間を空けて、4つのリブ64(64E、64F、64G、64H)が接着固定されている。なお、図5(a)では、リブ64D、64G、64Hの図示を省略している。リブ64は、矢印X方向の長さがL、矢印Y方向の幅がD、高さがHの直方体状に形成されている。
【0055】
ここで、リブ64Aとリブ64Bの隙間の長さをd9、リブ64Bとリブ64Cの隙間の長さをd10、リブ64Cとリブ64Dの隙間の長さをd11、リブ64Dとリブ64Aの隙間の長さをd12とする。さらに、リブ64Eとリブ64Fの隙間の長さをd13、リブ64Fとリブ64Gの隙間の長さをd14、リブ64Gとリブ64Hの隙間の長さをd15、リブ64Hとリブ64Eの隙間の長さをd16とする。なお、図5(a)では、隙間の長さd11、d12、d14、d15、d16の図示を省略している。
【0056】
また、搬送ベルト62では、リブ64A、64B、64C、64Dと、リブ64E、64F、64G、64Hとが、移動方向(矢印X方向)にずれて互い違いに配置されており、リブ64の隙間が一方の端部と他方の端部とで互い違いの配置となっている。
【0057】
ここで、駆動ロール14での搬送ベルト62の巻付き長さをW3、従動ロール16での搬送ベルト62の巻付き長さをW4とすると、ここではW3>W4に設定されており、巻付き長さの最短値をW(min)とすると、W(min)=W4となる。
【0058】
一方、各リブ64の隙間の長さd9からd16までのうち、最も長い長さがd9であったとすると、各リブ64の隙間の長さの最長値d(max)=d9となる。ここで、各リブ64の接着時に、各リブ64の隙間の長さd9からd16までが全て巻付き長さの最小値W4以下となるように接着が行われており、W4=d9となっているものとする。即ち、W(min)≧d(max)となっている。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態の作用について説明する。
【0060】
図5(b)に示すように、搬送部60では、駆動ロール14が図示しないモータにより駆動され回転すると、搬送ベルト62は矢印X方向に移動する。ここで、駆動ロール14の回転中心軸と従動ロール16の回転中心軸の平行度にばらつきがあったり、駆動ロール14あるいは従動ロール16の軸方向で外径の大きさに差があると、搬送ベルト62は矢印X方向に進むだけでなく矢印Y方向にも移動を開始しようとする。
【0061】
しかし、搬送部60では、搬送ベルト62の片寄りが起こり始めたとき、リブ64の隙間の最長の長さd(max)=d9が、従動ロール16での搬送ベルト62の巻付き最短長さW(min)=W4以下となっているため、従動ロール16に長さd9のリブ64の隙間が位置したときでも、リブ64の側面と溝部26の内壁とが接触する。これにより、搬送ベルト62の矢印Y方向への移動が規制され、片寄りによる端部の割れ等が生じることを抑える。
【0062】
さらに、リブ64A、64B、64C、64Dのいずれかの隙間が従動ロール16の一方端の溝部26を通過するときには、従動ロール16の他方端の溝部26にリブ64E、64F、64G、64Hのいずれかが配置されることになるので、リブ64E、64F、64G、64Hそれぞれの側面と溝部26との接触により、搬送ベルト62の片寄が規制される。
【0063】
次に、本発明の搬送装置及び画像形成装置の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1、第2実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1、第2実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0064】
図6(a)には、第3実施形態の搬送部70に設けられた無端状の搬送ベルト72を内周面側から見た状態が示されている。搬送部70は、前述の第2実施形態の搬送部60(図5(a)参照)において、搬送ベルト62に換えて搬送ベルト72を設けた構成となっている。
【0065】
搬送ベルト72の幅方向(移動方向である矢印X方向と交差する矢印Y方向)一方の端部の内周面には、周方向に沿って隙間(長さd)を空けて4つのリブ74(74A、74B、74C、74D)が順に接着固定されている。同様にして、搬送ベルト72の幅方向の他方の端部の内周面には、周方向に沿って隙間を空けて、4つのリブ74(74E、74F、74G、74H)が接着固定されている。なお、図6(a)では、リブ74D、74G、74Hの図示を省略している。
【0066】
リブ74は、矢印X方向の長さがL、矢印Y方向の幅がD、高さがHの直方体に近い形状となっており、図6(b)に示すように、搬送ベルト72の移動方向(矢印X方向)における後端面76は平面視にて直線状であり、前端面78は面取り部78Aが形成されて平面視にて凸状となっている。なお、リブ74の隙間の長さdは、後端面76から前端面78までの長さd25ではなく、後端面76から前端面78までの長さのうち最も長い長さであるd17で規定している。
【0067】
ここで、図6(a)に示すように、リブ74Aとリブ74Bの隙間の長さをd17、リブ74Bとリブ74Cの隙間の長さをd18、リブ74Cとリブ74Dの隙間の長さをd19、リブ74Dとリブ74Aの隙間の長さをd20とする。さらに、リブ74Eとリブ74Fの隙間の長さをd21、リブ74Fとリブ74Gの隙間の長さをd22、リブ74Gとリブ74Hの隙間の長さをd23、リブ74Hとリブ74Eの隙間の長さをd24とする。なお、図6(a)では、隙間の長さd19、d20、d22、d23、d24の図示を省略している。
【0068】
また、搬送ベルト72では、リブ74A、74B、74C、74Dと、リブ74E、74F、74G、74Hとが、移動方向(矢印X方向)にずれて互い違いに配置されており、リブ74の隙間が一方の端部と他方の端部とで互い違いの配置となっている。
【0069】
ここで、駆動ロール14での搬送ベルト72の巻付き長さをW5、従動ロール16での搬送ベルト72の巻付き長さをW6として、W5>W6に設定されており、搬送ベルト72の巻付き長さの最短値をW(min)とすると、W(min)=W6となる。
【0070】
一方、各リブ74の隙間の長さd17からd24までのうち、最も長い長さがd17であったとすると、各リブ74の隙間の長さの最長値d(max)=d17となる。ここで、各リブ74の接着時に、各リブ74の隙間の長さd17からd24までが全て巻付き長さの最小値W6以下となるように接着が行われており、W6=d17となっているものとする。即ち、W(min)≧d(max)となっている。
【0071】
次に、本発明の第3実施形態の作用について説明する。
【0072】
まず、比較例として、図7(a)に示すように、リブ74の隙間の長さdを、後端面76から前端面78までの長さd25で規定した場合について説明する。なお、d(max)=d25であるとする。
【0073】
この場合、搬送ベルト72の片寄りが起こり始めたとき、W(min)≧d(max)の条件を満たしているため、従動ロール16の溝部26の壁部と、各リブ74の少なくとも面取り部78Aとが接触することになる。
【0074】
しかし、面取り部78Aと溝部26の壁部との接触面積が小さいため、搬送ベルト72をさらに片寄りさせようとする力が作用したとき、面取り部78Aと溝部26の壁部との接触だけではリブ74の移動を規制できない。このため、特にリブ74Bが、従動ロール16の軸方向の溝部26よりも外側の端部を乗り越えて、搬送ベルト72の片寄りが大きくなる。
【0075】
一方、図7(b)に示すように、本実施形態の搬送部70では、搬送ベルト72の片寄りが起こり始めたとき、W(min)≧d(max)の条件を満たしており、さらに、リブ74の隙間の長さdを、後端面76から前端面78までの長さのうち最も長い長さであるd17で規定しているため、従動ロール16の溝部26の壁部と、各リブ74の側面78Bとが接触することになる。
【0076】
ここで、従動ロール16の溝部26の壁部とリブ74の側面78Bとの接触面積は、従動ロール16の溝部26の壁部と面取り部78Aとの接触面積よりも大きくなっているため、搬送ベルト72をさらに矢印Y方向に片寄りさせようとする力が作用しても、溝部26の壁部とリブ74の側面78Bとの接触によりリブ74の移動が規制される。これにより、搬送ベルト72の片寄りが抑えられると共に、片寄りによる搬送ベルト72の端部の割れ等が生じることが抑えられる。
【0077】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0078】
被搬送物は、記録用紙Pだけでなくトナー等の現像剤であってもよい。この場合、搬送部材は中間転写ベルトとなる。
【0079】
搬送ベルト18を張架するのに駆動ロール14と従動ロール16の2本のロールだけでなく、さらに複数本のロールを追加してもよい。この場合、搬送ベルト18を張架する全てのロールのうちから、搬送ベルト18の巻付き長さが最も短くなるものを選択する。
【0080】
リブ22は、断面直方体状のものに限らず、駆動ロール14の溝部24及び従動ロール16の溝部26の断面形状に合わせて、例えば、台形状や三角形状としてもよい。さらに、リブ64、74の先端部は、面取り形状だけでなく円弧形状であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 画像形成装置(画像形成装置)
14 駆動ロール(回転部材)
16 従動ロール(回転部材)
18 搬送ベルト(搬送部材)
20 搬送部(搬送装置)
22 リブ(移動制限部材)
30 画像形成部(画像形成部)
60 搬送部(搬送装置)
62 搬送ベルト(搬送部材)
64 リブ(移動制限部材)
70 搬送部(搬送装置)
72 搬送ベルト(搬送部材)
74 リブ(移動制限部材)
P 記録用紙(被搬送物、記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられた複数の回転部材と、
複数の前記回転部材で張架され前記回転部材の回転によって被搬送物を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材の両端部の内周面に周方向に沿って隙間をあけて複数設けられ、前記回転部材と接触して前記搬送部材の幅方向への移動を制限する移動制限部材と、
を有し、
前記搬送部材の前記回転部材への巻付き長さのうち最も短い長さをW(min)とし、複数の前記移動制限部材の周方向の隙間の長さのうち最も長い長さをd(max)としたとき、d(max)がW(min)以下とされている搬送装置。
【請求項2】
前記搬送部材の前記幅方向の一方の端部の前記移動制限部材の隙間と、前記幅方向の他方の端部の前記移動制限部材の隙間とが、前記搬送部材の移動方向にずれて配置されている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記移動制限部材の隙間の移動方向の後端面と前記移動制限部材の隙間の移動方向と反対側の前端面の少なくとも一方が面取り形状又は円弧形状であるとき、
前記移動制限部材の隙間の長さdは、前記後端面から前記前端面までの長さのうち最も長い長さとする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送部材と対向配置され、前記搬送装置で搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
を有する画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−164811(P2010−164811A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7572(P2009−7572)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】