説明

搬送装置

【課題】自動車の組立てラインなどに活用できる搬送装置を提供する。
【解決手段】一定走行経路を走行する搬送用走行体11にその走行方向と平行に前後移動自在な可動体33を設け、この可動体33に、当該可動体33の移動方向と平行な垂直面に沿って上下方向に揺動自在にリンク35aの一端を軸支し、このリンク35aの他端にハンガー13を前後方向に揺動自在に軸支し、リンク35aの中間位置と搬送用走行体11とに両端を揺動自在に軸支したリンク39により、リンク35aのハンガー軸支位置が、当該リンク35aの上下方向の揺動と可動体33の前後移動を伴って垂直に上下移動するように構成された搬送装置において、リンク39の搬送用走行体11側の支軸40の周りで当該リンク39と連動して上下方向に揺動するカム従動ローラー43が設けられ、このカム従動ローラー43を介してリンク39の上下姿勢を規制するカムレール44Aが架設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を昇降させることができて自動車の製造ラインなどに活用できる搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被搬送物を昇降させることができる搬送装置は、種々のものが知られているが、特許文献1に記載されるように、一定走行経路を走行する搬送用走行体にその走行方向と平行に前後移動自在な可動体を設け、この可動体に、当該可動体の移動方向と平行な垂直面に沿って上下方向に揺動自在に揺動リンクの一端を軸支し、この揺動リンクの他端に被搬送物支持手段を前後方向に揺動自在に軸支し、前記揺動リンクの中間位置と前記搬送用走行体とに両端を揺動自在に軸支した短リンクにより、前記揺動リンクの被搬送物支持手段の軸支位置が、当該揺動リンクの上下方向の揺動と前記可動体の前後移動を伴って垂直に上下移動するように構成された搬送装置は、被搬送物を搬送用走行体の上方レベルと下方レベルとの間で垂直に昇降させることができるように構成して、自動車の製造ラインなどに活用できるものである。
【特許文献1】特開2007−8621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら特許文献1に記載の従来の搬送装置では、ハンガーなどの被搬送物支持手段を昇降駆動するための駆動手段(モーターやネジ軸など)が各搬送用走行体に搭載される構成であるため、搬送経路に沿って各搬送用走行体に対する給電設備も必要であることと相俟って、自動車製造ラインのように1つの搬送経路中に多数台の搬送用走行体が設けられる搬送装置では、搬送装置全体の設備コストが非常に高くつく。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消し得る搬送装置を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の搬送装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、一定走行経路を走行する搬送用走行体11にその走行方向と平行に前後移動自在な可動体33を設け、この可動体33に、当該可動体33の移動方向と平行な垂直面に沿って上下方向に揺動自在に揺動リンク35aの一端を軸支し、この揺動リンク35aの他端に被搬送物支持手段(ワーク支持用ハンガー13)を前後方向に揺動自在に軸支し、前記揺動リンク35aの中間位置と前記搬送用走行体11とに両端を揺動自在に軸支した短リンク(第三揺動リンク39)により、前記揺動リンク35aの被搬送物支持手段(ワーク支持用ハンガー13)の軸支位置が、当該揺動リンク35aの上下方向の揺動と前記可動体33の前後移動を伴って垂直に上下移動するように構成された搬送装置において、前記短リンク(第三揺動リンク39)の搬送用走行体11側の支軸40の周りで当該短リンク(第三揺動リンク39)と連動して上下方向に揺動するカム従動ローラー43が設けられ、前記走行経路側には、前記カム従動ローラー43を介して前記短リンク(第三揺動リンク39)の上下姿勢を規制するカムレール44A,44Bが架設され、このカムレール44A,44Bにより前記被搬送物支持手段(ワーク支持用ハンガー13)の移動レベルを規制する構成となっている。
【0005】
上記構成の本発明を実施するについて、具体的には請求項2に記載のように、前記可動体33と前記被搬送物支持手段(ワーク支持用ハンガー13)との間に前記揺動リンク35aと平行な第二揺動リンク35bを介装して、当該被搬送物支持手段(ワーク支持用ハンガー13)を一定姿勢で昇降させる平行リンク機構34を構成することができる。
【0006】
又、請求項3に記載のように、前記揺動リンク35a(請求項2に記載のように、第二揺動リンク35bを併設するときはこの第二揺動リンク35bも含む)と短リンク(第三揺動リンク39)とは、当該揺動リンク35a,35bを下向き姿勢と上向き姿勢との間で上下揺動できるように搬送用走行体11の走行方向とは直交する左右横方向に位置をずらし、前記揺動リンク35a,35bを軸支する搬送用走行体11の本体19に対し当該揺動リンク35a,35bのある側とは反対側に、前記短リンク(第三揺動リンク39)と連動して上下揺動する操作レバー42を設け、この操作レバー42の遊端に前記カム従動ローラー43を軸支することができる。この場合、操作レバー42の向きは、短リンク(第三揺動リンク39)と同一向きとして当該短リンク(第三揺動リンク39)と同一方向に上下揺動するように構成することもできるが、請求項4に記載のように、前記操作レバー42は、短リンク(第三揺動リンク39)とは逆方向に上下揺動するように当該短リンク(第三揺動リンク39)とは逆方向に延出させ、搬送用走行体11は、前記操作レバー42が搬送用走行体11の走行方向に対し後方上方に延出する向きに走行するように構成することができる。
【0007】
更に、請求項5に記載のように、前記搬送用走行体11は、前記可動体33を支持する本体19の上下両側に設けられたトロリー18b,18c,21a,21bを介して下側ガイドレール27と上側ガイドレール28とで走行可能に支持し、これら上下両ガイドレール27,28と前記カムレール44A,44Bとは、床面3上に設置された架台1に支持し、この架台1の横側方で前記被搬送物支持手段(ワーク支持用ハンガー13)が片持ち状に上下移動するように構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
上記請求項1に記載の本発明に係る搬送装置によれば、走行経路側に架設したカムレールによって、各搬送用走行体側のカム従動ローラーを介して被搬送物支持手段の移動レベルを規制する構成であるため、自動車製造ラインのように1つの搬送経路中に多数台の搬送用走行体が設けられる搬送装置であっても、搬送経路側に各搬送用走行体に対する給電設備も不要であることと相俟って、搬送装置全体の設備コストを大幅に低減することができる。しかも特別な制御を要することなく、カムレールのレベルによって一元的に各搬送用走行体の被搬送物支持手段の移動レベルを規制できるのであるから、制御系の故障や誤動作で被搬送物支持手段の移動レベルが不測に変動するようなこともなく、安全且つ確実に所期の搬送作用を遂行できる。
【0009】
尚、被搬送物によっては、揺動リンクの遊端に軸支された被搬送物支持手段が重力で常に一定姿勢を保持するように構成することもできるが、請求項2に記載の構成によれば、被搬送物支持手段、即ち、被搬送物を不測に揺れ動かすことなく確実に一定姿勢に保持しながら搬送し、必要に応じて昇降させることができるので、自動車ボディーに対する部品取付けを行う組立てラインなどでの搬送装置として好適である。
【0010】
又、請求項3に記載の構成によれば、被搬送物支持手段(被搬送物)を搬送用走行体より下方のレベルと上方のレベルとの間で昇降させることができるので、被搬送物支持手段が下降限レベルにあるときの搬送経路を、当該被搬送物支持手段が支持する被搬送物に対して作業を行う作業ラインとして本発明装置を利用する場合に、搬送用走行体の走行経路は、作業の邪魔にならない作業空間より上方で且つ出来る限り低いレベルに配設しながら、当該作業空間より上方のレベルまで被搬送物支持手段を上昇させることができるので、被搬送物を支持している被搬送物支持手段をして被搬送物搬送経路と交叉する通路などに対する乗り越えを行わせることができる。この場合、請求項4に記載の構成によれば、搬送用走行体の走行抵抗を減らして円滑に走行させることができる。
【0011】
更に、請求項5に記載の構成によれば、搬送用走行体の走行経路に要する空間の巾が狭くなるので、当該搬送用走行体のガイドレールやカムレールを支持する架台の横巾を狭くして占有床面積を抑えることができる。そして、被搬送物支持手段が下降限レベルにあるときの搬送経路を、当該被搬送物支持手段が支持する被搬送物に対して作業を行う作業ラインとして本発明装置を利用する場合に、当該作業ラインの片側に前記架台が存在するだけの、良好な作業環境を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1〜図4において、1は自立可能な門形の支持用架台であって、直線状の通路2を跨ぐように床面3上に設置され、通路2の左右両側に立設された支柱4、これら支柱4によって支持された中間床部5、この中間床部5の巾の中央上部に保守作業用通路6を確保するように当該中間床部5の上に左右2列に立設された上部支柱7、及びこれら上部支柱7によって支持された、中間床部5と同一巾の天井部8から構成されている。尚、中間床部5は、その全域に床材(鋼製ネットやパンチングメタルプレートを含む)が張設されたものであっても良いし、少なくとも保守作業用通路6の床面となる領域にのみ前記床材が張設されたものであっても良い。又、天井部8は、水平の枠組み構造体から構成できるが、必要に応じてその全域又は一部分に天井材を張設したものであっても良い。
【0013】
9は吊下げ搬送装置であって、支持用架台1の下側の直線状の通路2を挟むように並列する往行搬送経路部10aと復行搬送経路部10bとを有する無端循環搬送経路に沿って摩擦駆動により走行する多数台の搬送用走行体11と、各搬送用走行体11の外側に昇降支持手段12を介して片持ち状に支持されたワーク支持用ハンガー13とから構成されている。
【0014】
吊下げ搬送装置9の構成を詳述すると、図5〜図8に示すように、各搬送用走行体11は、5本の同一巾のロードバー14a〜14eを垂直支軸15a〜15dにより水平に折れ曲がり可能に連結して成るロードバーユニット16と、このロードバーユニット16の下側で中間前後2本の垂直支軸15b,15cの周りで回転可能に当該ロードバーユニット16に取り付けられた前後一対のロードトロリー17a,17bと、ロードバーユニット16の下側で前後両端の垂直支軸15a,15dの周りで回転可能に当該ロードバーユニット16に取り付けられた前後一対のガイドトロリー18a,18bと、中間前後2本の垂直支軸15b,15cを介してロードバー14cと平行にロードバーユニット16の上側に支持された、側面視が矩形枠状の本体19と、中間前後2本の垂直支軸15b,15cと同心状の前後2本の垂直支軸20a,20bの周りで回転可能に本体19の上側に支持された前後一対の上側ロードトロリー21a,21bとから構成されている。前後一対、上下二組のロードトロリー17a,17b,21a,21bは、それぞれ垂直軸により軸支された同一径の前後一対のガイドローラー22と、これら前後一対のガイドローラー22の中間位置で水平軸により軸支された大径の支持用ローラー23とを備えている。又、前後一対のガイドトロリー18a,18bは、それぞれ垂直軸により軸支された、ロードトロリーのガイドローラー22と同一径の前後一対のガイドローラー24と、これら前後一対のガイドローラー24の中間位置で水平軸により軸支された小径の支持用ローラー25とを備えている。
【0015】
尚、ロードバーユニット16の前後両端に位置するロードバー14a,14eは、長さが他のものより短く、前後両端のガイドトロリー18a,18bと常に平行向きになるように、垂直支軸15a,15dを介して当該ガイドトロリー18a,18bに固定されている。
【0016】
上記構成の搬送用走行体11は、支持用架台1の中間床部5と天井部8との間で且つ上部支柱7の外側(保守作業用通路6の外側)の走行空間26内に走行可能に配置されている。即ち、前記走行空間26の床に相当する中間床部5の上側には、ロードバーユニット16の各トロリー17a〜18bにおけるガイドローラー22が転動可能に遊嵌する、中間床部5上に並設した2本の型材で構成された上側開放の下側溝形ガイドレール27が敷設され、この下側溝形ガイドレール27の内側平坦レール面27a(中間床部5の上面)の上をロードバーユニット16の各トロリー17a〜18bにおける支持用ローラー23,25が転動移動するように構成され、更に、前記走行空間26の天井に相当する天井部8の下側には、本体19の上側ロードトロリー21a,21bにおけるガイドローラー22が転動可能に遊嵌する、天井部8の下側に並設した2本の型材で構成された下側開放の上側溝形ガイドレール28が敷設され、この上側溝形ガイドレール28の内側平坦レール面28a(天井部8の下側面)の下を前記上側ロードトロリー21a,21bにおける支持用ローラー23が転動移動するように構成されている。この構成により搬送用走行体11は、前記走行空間26内で垂直姿勢を保って往行搬送経路部10a及び搬送経路部10bと平行に走行することができる。この直線状の往行搬送経路部10a及び搬送経路部10bに沿って搬送用走行体11が走行するとき、ロードバーユニット16は直線状に伸びていて、各ロードバー14a〜14dの左右両側面は、連続した1つの垂直平面を形成している。
【0017】
各搬送用走行体11の駆動方式は特に限定されるものではないが、例えば、図6及び図8にそれぞれ仮想線で示すように、往行搬送経路部10a及び搬送経路部10bに沿って搬送用走行体11が走行するときに直線状に伸びるロードバーユニット16の左右両側面を被駆動摩擦面として当該ロードバーユニット16を左右両側から挟む、モーター駆動の摩擦駆動ローラー29とバックアップローラー30との組み合わせから成る摩擦駆動ユニット31を利用することができる。このような摩擦駆動方式は従来周知であるから詳細な説明は省くが、この実施形態では、各搬送用走行体11のロードバーユニット16の前端(前端のロードバー14aの前端)で直前の搬送用走行体11のロードバーユニット16の後端(後端のロードバー14eの後端)を後押しさせる、所謂突き押し方式により、複数台の搬送用走行体11を往行搬送経路部10a及び搬送経路部10b内に設定された組立てライン内で数珠つなぎに定速走行させることができる。
【0018】
昇降支持手段12は、図5〜図7に示すように、搬送用走行体11の本体19に、当該本体19の下側水平枠材19a上に敷設された左右一対のガイドレール32を介して、ロードバーユニット16の本体支持ロードバー14cの長さ方向と平行に前後移動自在に支持された可動体33と、この可動体33とワーク支持用ハンガー13とを連結する平行リンク機構34とから構成されている。この平行リンク機構34は、第一揺動リンク35aと第二揺動リンク35bのそれぞれ一端を、第二揺動リンク35bが第一揺動リンク35aに対して搬送用走行体11の走行方向の前方に位置する配置で、可動体33に左右横向きの水平支軸36a,36bにより軸支すると共に、当該各リンク35a,35bの他端を、両リンク35a,35bが互いに平行な状態で左右横向きの水平支軸37a,37bによりワーク支持用ハンガー13のハンガーアーム支持フレーム13aに軸支し、第一揺動リンク35aの中間位置に左右横向きの水平支軸38により一端を軸支した短リンク、即ち、短い第三揺動リンク39の他端を本体19の後端部に左右横向きの水平支軸40により軸支し、可動体33が横動しても常に水平支軸36a,38,40が、水平支軸36a,40間を底辺とする二等辺三角形の各頂点に位置するように構成し、以て、可動体33の横動を伴わせてワーク支持用ハンガー13を垂直に平行昇降移動できるように構成している。このとき、平行リンク機構34の各リンク35a,35b,39の左右横方向の位置を、第三揺動リンク39、第一揺動リンク35a、第二揺動リンク35bの順に本体19(可動体33)から横外側に離して、各リンク35a,35b,39が、本体19に対して図5及び図6に示す下向き姿勢と図9及び図10に示す上向き姿勢との間で互いに干渉することなく上下揺動できるように構成している。
【0019】
上記構成の昇降支持手段12では、ワーク支持用ハンガー13側に作用する重力により、平行リンク機構34の各リンク35a,35b,39が本体19側から略垂直下方に垂下してワーク支持用ハンガー13が下降限まで下がることになるが、このワーク支持用ハンガー13の床面3からの高さを規制するために、ハンガー高さ規制手段41が設けられている。この実施形態におけるハンガー高さ規制手段41は、図5〜図7に示すように、平行リンク機構34における第三揺動リンク39と水平支軸40を介して連動し且つ水平支軸40に対し正反対方向に延出する操作レバー42と、この操作レバー42の遊端に軸支されたカム従動ローラー43と、このカム従動ローラー43を押し下げる方向に作用するように搬送用走行体11の走行経路に沿って架設されたカムレール44A、及び後述するカムレール44Bから構成されている。尚、操作レバー42は、搬送用走行体11に対し平行リンク機構34のある側(外側)とは反対側(内側)に配置され、カムレール44A,44Bは、支持用架台1の中間床部5と天井部8との間で且つ上部支柱7の外側に架設されている。
【0020】
而して、図1の往行搬送経路部10a、図5、及び図6に示すようにカムレール44Aが高レベル、即ち、当該カムレール44Aの下側にカム従動ローラー43が接するときの操作レバー42が略上向きとなる高さで水平に配設された区間では、ワーク支持用ハンガー13の移動レベルが床面3に接近した作業レベルに規制される。そして図1の復行搬送経路部10b、図9、及び図10に示すようにカムレール44Bが低レベル、即ち、当該カムレール44Bの下側にカム従動ローラー43が接するときの操作レバー42が略下向きとなる高さで水平に配設された区間では、ワーク支持用ハンガー13の移動レベルが支持用架台1の中間床部5より上方、即ち、通路2より上方の乗り越えレベルに規制することができる。
【0021】
即ち、図4に示すように、吊下げ搬送装置9の往行搬送経路部10aや復行搬送経路部10bを横断して、支持用架台1の下側の通路2につながる横断路45がレイアウトされている場合、ワーク支持用ハンガー13が横断路45を通過するときに当該ワーク支持用ハンガー13の移動レベルを図1の復行搬送経路部10b、図9、及び図10に示す乗り越えレベルに切り換えれば良い。この実施形態では、図2に示すように、横断路45を含む区間の入り口に、当該区間の上手側において高レベルで水平に架設されたカムレール44A(図5及び図6参照)の下側に圧接するカム従動ローラー43を、横断路45を含む区間内に低レベルで水平に架設されたカムレール44B(図9及び図10参照)の下側に移行させるためのレベル切換装置46が併設され、図3に示すように、横断路45を含む区間の出口に、当該区間内に低レベルで水平に架設されたカムレール44Bの下側に圧接するカム従動ローラー43を、当該区間の下手側において高レベルで水平に架設されたカムレール44Aの下側に移行させるためのレベル切換装置47が併設されている。
【0022】
上記レベル切換装置46,47は、ハンガー高さ規制手段41に組み込まれた同一構造のものであって、図11に示すように、高レベルで架設されたカムレール44Aに接続する上昇限位置と、低レベルで架設されたカムレール44Bに接続する下降限位置との間で昇降駆動される昇降カムレール48を備えている。この昇降カムレール48は、ガイドレール48aに昇降自在に支持されたもので、この昇降カムレール48の昇降経路の後側において自転のみ可能に垂直に支承された回転螺軸49に螺嵌する雌ネジ体50が突設され、回転螺軸49がモーター51により正逆回転駆動されることにより、昇降カムレール48が昇降するように構成されたものである。
【0023】
以上のように構成された搬送装置の使用方法と作用について説明すると、吊下げ搬送装置9の搬送経路中に設定されたワーク積込み箇所、例えば図4の往行搬送経路部10aの始端位置にフロアーコンベヤ52で搬入された自動車ボディーなどのワークWを、当該ワーク積込み箇所で停止させた搬送用走行体11のワーク支持用ハンガー13に移載させる。このときのワークWの移載は、図6に仮想線で示すワーク支持用ハンガー13のハンガーアーム13bの開閉運動を利用して行わせることができる。ワークWがワーク支持用ハンガー13に積み込まれた搬送用走行体11は、先に説明したように摩擦駆動ユニット31によって定速走行させ、ワーク支持用ハンガー13がハンガー高さ規制手段41によって床面3に近い作業レベルで移動する間に、ワークWに対する部品の組み付けなど、組立て作業を行うことができる。このとき、平行リンク機構34の第一揺動リンク35aと第二揺動リンク35bは、搬送用走行体11から走行方向に対し斜め後方下向きに延出している。
【0024】
尚、ワークWの作業対象箇所が低いためにワークWを床面3から上げた方が良いときには、当該作業区間におけるハンガー高さ規制手段41のカムレール44Aを高レベルより下げて水平に架設しておけば良い。このようにカムレール44Aの架設レベルが異なる区間が設けられるときは、当該区間とその前後の区間との間ではカムレール44Aを所要角度で傾斜させ、搬送用走行体11の走行に伴ってカム従動ローラー43(操作レバー42)が円滑に上下動するように構成すれば良い。勿論、先に説明したレベル切換装置46,47と同様のレベル切換装置を利用することもできる。
【0025】
横断路45の上手側に配設されたレベル切換装置46は、図2に示すように昇降カムレール48がその上手側のカムレール44Aに接続する上昇限位置で待機している。この昇降カムレール48内の前端寄り所定位置に搬送用走行体11側のカム従動ローラー43が乗り移ったならば、当該搬送用走行体11を一旦停止させ、昇降カムレール48を下降限位置まで降下させる。この結果、カム従動ローラー43を介して操作レバー42が斜め後方上向き姿勢から斜め後方下向き姿勢まで強制的に揺動せしめられ、この操作レバー42の揺動に伴って平行リンク機構34の第三揺動リンク39が斜め前方下向き姿勢から斜め前方上向き姿勢まで水平支軸40の周りで回動すると共に、平行リンク機構34の第一揺動リンク35a及び第二揺動リンク35bが斜め後方下向き姿勢から斜め後方上向き姿勢まで水平支軸36a,36bの周りで回動する。このときカム従動ローラー43が昇降カムレール48内で前後に往復移動することになるので、昇降カムレール48は、当該カム従動ローラー43の前後往復移動を許すことができるだけの長さを有する。
【0026】
上記の平行リンク機構34の第一揺動リンク35a及び第二揺動リンク35bの平行上動運動に伴ってワーク支持用ハンガー13が水平姿勢を保ちながら作業レベルから乗り越えレベルまで上昇するので、係る状態で搬送用走行体11を発進させることにより、カム従動ローラー43を昇降カムレール48内から、横断路45を含む区画に低レベルで架設されたカムレール44Bの下側へ移行させ、乗り越えレベルまで上げられたワーク支持用ハンガー13をして横断路45の上側を通過移動させることができる。横断路45を通過し終わったワーク支持用ハンガー13は、横断路45の下手側のレベル切換装置47の位置で一旦停止せしめられ、当該レベル切換装置47により再び元の作業レベルまで降下させることができる。このときのレベル切換装置47の昇降カムレール48は、下降限位置で待機している状態でカムレール44Bの下側からカム従動ローラー43を受け入れた後、下手側の高レベルで架設されているカムレール44Aに接続する上昇限位置まで上げられる。この結果、ワーク支持用ハンガー13が乗り越えレベルから元の作業レベルまで下ろされるので、この後、搬送用走行体11を発進させ、ワークWに対する組立て作業などを継続させることができる。
【0027】
ワーク支持用ハンガー13で支持されたワークWに対する作業が完了し、吊下げ搬送装置9の搬送経路中に設定されたワーク下ろし箇所、例えば図4の復行搬送経路部10bの終端位置にワーク支持用ハンガー13が到着したならば、搬送用走行体11を当該ワーク下ろし箇所で停止させ、フロアーコンベヤ53上に作業済みワークWを移載して搬出することができる。このときのワークWの移載も、図6に仮想線で示すワーク支持用ハンガー13のハンガーアーム13bの開閉運動を利用して行わせることができる。
【0028】
尚、実際の搬送用走行体11の走行駆動運転の一例を述べると、組立て作業ラインの始端位置に配設された摩擦駆動ユニット31により数珠つなぎ状態で突き押し駆動されてくる搬送用走行体11の列の先頭の搬送用走行体11を、横断路45の入り口側のレベル切換装置46より一定距離手前で後続の搬送用走行体11から切り離すように、高速駆動用の摩擦駆動ユニット31により高速駆動し、この搬送用走行体11を適当な推進手段でレベル切換装置46の位置まで走行させて停止させ、当該レベル切換装置46によりワーク支持用ハンガー13を乗り越えレベルに切り換える。その後、適当な推進手段でレベル切換装置46から搬送用走行体11を発進させると共に、高速駆動用の摩擦駆動ユニット31により当該搬送用走行体11を高速駆動して横断路45を通過させる。そして横断路45を通過した搬送用走行体11は、適当な推進手段でレベル切換装置47の位置まで走行させて停止させ、当該レベル切換装置47によりワーク支持用ハンガー13を作業レベルに戻し、その後、適当な推進手段でレベル切換装置47から搬送用走行体11を発進させると共に、当該搬送用走行体11を高速駆動用の摩擦駆動ユニット31により高速駆動して下手側の組立て作業ラインに送り込み、当該組立て作業ラインの始端位置に配設された摩擦駆動ユニット31により再び数珠つなぎ状態での突き押し駆動に切り換えることができる。
【0029】
尚、本発明装置の利用は、上記実施形態で示した例に限定されない。又、本発明装置を実施するについて、基本的には第二揺動リンク35bは無くとも良い。この場合、第一揺動リンク35aに対して被搬送物支持用ハンガー13が前後に揺動できることになるが、第二揺動リンク35bを利用しないで、例えば特許文献1に記載のような方法で被搬送物支持用ハンガー13の姿勢を規制するようにしても良い。又、カム従動ローラー43は、第一揺動リンク35aと第三揺動リンク39とを軸支する支軸38と同心状か又は、当該支軸38に近い位置で第三揺動リンク39若しくは第一揺動リンク35aに軸支することも可能である。更に、操作レバー42を設ける場合、当該操作レバー42は、支軸40に対して第三揺動レバー39と同一向きに延出させ、操作レバー42と第三揺動レバー39とが同一方向に上下揺動するように構成しても良い。更に、第一揺動リンク35aがハンガー1の走行方向の斜め前方下方に延出する向きにハンガー1を走行させることも可能である。
【0030】
又、ワーク支持用ハンガー13を乗り越えレベルで移動させる区間の入り口と出口とに、搬送用走行体11を一旦停止させた状態でワーク支持用ハンガー13を作業レベルと乗り越えレベルとの間で昇降させるレベル切換装置46,47を配設したが、図12に示すように、高レベルで架設されたカムレール44Aと低レベルで架設されたカムレール44Bとを傾斜カムレール44Cで接続し、搬送用走行体11を停止させることなくワーク支持用ハンガー13のレベル切り換えを行わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ワーク支持用ハンガーが作業レベルにある状態(右半分)とワーク支持用ハンガーが乗り越えレベルにある状態(左半分)とを示す縦断正面図である。
【図2】横断路とその上手側の搬送経路部とを示す一部切り欠き側面図である。
【図3】横断路とその下手側の搬送経路部とを示す一部切り欠き側面図である。
【図4】設備全体のレイアウトの一例を示す概略平面図である。
【図5】ワーク支持用ハンガーが作業レベルにある状態での要部の拡大側面図である。
【図6】図5の要部の正面図である。
【図7】図5の要部の平面図である。
【図8】搬送用走行体のロードバーを示す横断平面図である。
【図9】ワーク支持用ハンガーが乗り越えレベルにある状態での要部の拡大側面図である。
【図10】図9の要部の正面図である。
【図11】A図はワーク支持用ハンガーのレベル切換装置を示す縦断正面図、B図は同要部を内側から見た側面図である。
【図12】別の実施形態を示す要部の側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 支持用架台
2 通路
5 中間床部
6 保守作業用通路
8 天井部
9 吊下げ搬送装置
10a 往行搬送経路部
10b 復行搬送経路部
11 搬送用走行体
12 昇降支持手段
13 ワーク支持用ハンガー
14a〜14e ロードバー
16 ロードバーユニット
17a,17b,21a,21b ロードトロリー
18a,18b ガイドトロリー
19 本体
27 下側溝形ガイドレール
28 上側溝形ガイドレール
29 摩擦駆動ローラー
31 摩擦駆動ユニット
33 可動体
34 平行リンク機構
35a 第一揺動リンク
35b 第二揺動リンク
39 第三揺動リンク
41 ハンガー高さ規制手段
42 操作レバー
43 カム従動ローラー
44A 高レベルのカムレール
44B 低レベルのカムレール
44C 傾斜カムレール
45 横断路
46,47 レベル切換装置
48 昇降カムレール
49 回転螺軸
52,53 フロアーコンベヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定走行経路を走行する搬送用走行体にその走行方向と平行に前後移動自在な可動体を設け、この可動体に、当該可動体の移動方向と平行な垂直面に沿って上下方向に揺動自在に揺動リンクの一端を軸支し、この揺動リンクの他端に被搬送物支持手段を前後方向に揺動自在に軸支し、前記揺動リンクの中間位置と前記搬送用走行体とに両端を揺動自在に軸支した短リンクにより、前記揺動リンクの被搬送物支持手段の軸支位置が、当該揺動リンクの上下方向の揺動と前記可動体の前後移動を伴って垂直に上下移動するように構成された搬送装置において、前記短リンクの搬送用走行体側の支軸の周りで当該短リンクと連動して上下方向に揺動するカム従動ローラーが設けられ、前記走行経路側には、前記カム従動ローラーを介して前記短リンクの上下姿勢を規制するカムレールが架設され、このカムレールにより前記被搬送物支持手段の移動レベルを規制するように構成した、搬送装置。
【請求項2】
前記可動体と前記被搬送物支持手段との間には前記揺動リンクと平行な第二揺動リンクが介装されて、当該被搬送物支持手段を一定姿勢で昇降させる平行リンク機構が構成されている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記揺動リンクと短リンクとは、当該揺動リンクを下向き姿勢と上向き姿勢との間で上下揺動できるように搬送用走行体の走行方向とは直交する左右横方向に位置がずらされ、前記揺動リンクを軸支する搬送用走行体の本体に対し当該揺動リンクのある側とは反対側に、前記短リンクと連動して上下揺動する操作レバーが設けられ、この操作レバーの遊端に前記カム従動ローラーが軸支されている、請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記操作レバーは、短リンクとは逆方向に上下揺動するように当該短リンクとは逆方向に延出され、搬送用走行体は、前記操作レバーが搬送用走行体の走行方向に対し後方上方に延出する向きに走行するように構成されている、請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送用走行体は、前記可動体を支持する本体の上下両側に設けられたトロリーを介して下側ガイドレールと上側ガイドレールとで走行可能に支持され、これら上下両ガイドレールと前記カムレールとは、床面上に設置された架台に支持され、この架台の横側方で前記被搬送物支持手段が片持ち状に上下移動するように構成された、請求項1〜4の何れか1項に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−222405(P2008−222405A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66093(P2007−66093)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】