説明

携帯型電子機器

【課題】第1の筐体と第2の筐体をヒンジ構造によって連結した携帯型電子機器において、各筐体内に水の浸入を防いで防水性を高める。
【解決手段】第1の筐体が第2の筐体に連結し、第1の筐体の後面に取付凹部が形成され、枢軸63が取付凹部に設けられ、第2の筐体の前面に回動円筒部70が設けられ、枢軸63が回動円筒部70に受容され、回動円筒部70にフレキシブル配線基板160が巻かれ、取付凹部に通し孔が形成され、フレキシブル配線基板160が通し孔を通り、回動円筒部70の周囲において第2の筐体3の前面に通し孔が形成され、フレキシブル配線基板160が通し孔を通り、フレキシブル配線基板160に設けられた防水キャップ161が通し孔に嵌合し、フレキシブル配線基板160に設けられた防水キャップ162が通し孔に嵌合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の筐体が第2の筐体に対向した状態で連結し、前記第1の筐体が前記第2の筐体に対して対向面に直交する軸心周りに回動可能とされた携帯型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機といった携帯型電子機器には、第1の筐体をヒンジ構造によって第2の筐体に対向した状態に連結し、第1の筐体に対して第2の筐体をそれらの対向面に直交する軸線周りに回動可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。ヒンジ構造内には軸線に沿って通し孔が形成され、その通し孔に配線が挿入され、配線の一端部が第1の筐体内において回路基板に接続され、配線の他端部が第2の筐体内において回路基板に接続されている。これにより、各筐体間で電気的な信号の送受信が実現される。また、ヒンジ構造の摺動面間にゴムパッキンを介在させ、水等が外部から摺動面間の隙間を通って通し孔に浸入しないようにしている。これにより、ヒンジ構造の防水性を向上している。
【特許文献1】特開2004−270821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ヒンジ構造の摺動面の摺動が許容される構成となっているので、携帯電子機器が水没してしまって過大な水圧が摺動面間に加わった場合、ゴムパッキンによって完全な防水を図ることは極めて困難である。そのため、水没時には、摺動面間の隙間から漏れた水が通し孔を通って第1の筐体内や第2の筐体内に浸入してしまう。
【0004】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、第1の筐体と第2の筐体をヒンジ構造によって連結した携帯型電子機器において、各筐体内に水の浸入を防いで防水性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の携帯型電子機器は、
第1の筐体が第2の筐体に対向した状態で連結し、前記第1の筐体が前記第2の筐体に対して対向面に直交する軸心周りに回動可能とされた携帯型電子機器において、
前記第1の筐体の対向面に凹部が形成され、前記軸心に沿った枢軸が前記凹部に設けられ、前記第2の筐体の対向面に円筒部が設けられ、前記枢軸が前記円筒部に受容され、前記円筒部に可撓性配線体が巻かれ、前記凹部の壁面に第1の通し孔が形成され、前記可撓性配線体が前記第1の通し孔を通って前記第1の筐体内の回路基板に接続され、前記円筒部の周囲において前記第2の筐体の対向面に第2に通し孔が形成され、前記可撓性配線体が前記第2の通し孔を通って前記第2の筐体内の回路基板に接続され、第1の防水部材が前記可撓性配線体を包み込むよう前記可撓性配線体に一体形成され、前記第1の防水部材が前記第1の通し孔に嵌合し、第2の防水部材が前記可撓性配線体を包み込むよう前記可撓性配線体に一体形成され、前記第2の防水部材が前記第2の通し孔に嵌合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1の通し孔に第1の防水部材が嵌合し、第2の通し孔に第2の防水部材が嵌合しているので、枢軸と円筒部との間の隙間や凹部等に水が浸入したものとしても、第1の筐体や第2の筐体内への水の浸入が阻止される。
【0007】
また、凹部に設けられた枢軸が円筒部に受容されるので、円筒部がその凹部に収容される。その円筒部に可撓性配線体が巻かれるので、可撓性配線体もその凹部に収容される。そのため、枢軸、円筒部及び可撓性配線体が隠れて、デザイン性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0009】
図1は、携帯電話機1の斜視図である。図1(a)は、軸線41方向に見て第1の筐体2の外縁が第2の筐体3の外縁に一致した状態を示し、図1(c)は、図1(a)の状態に対して180°回動した状態を示し、図1(b)は、図1(a)の状態と図1(c)の状態の間の状態を示す。図2は、携帯電話機1の正面図である。
【0010】
図1〜図2に示すように、第1の筐体2は、前面ケース22と後面ケース23とをゴム製の防水リングを介在させて嵌め合わせることで構成され、第2の筐体3は、前面ケース32と後面ケース33とをゴム製の防水リングを介在させて嵌め合わせることで構成されている。
【0011】
第1の筐体2の前面には透明な表示窓21が設けられ、第1の筐体2内にディスプレイパネルが収容され、そのディスプレイパネルの表示面が表示窓21に対向している。第2の筐体3の前面にはテンキーといったキー操作部31が設けられている。
【0012】
第1の筐体2と第2の筐体3が図3〜図6に示すようなヒンジ構造4によって連結され、これによりヒンジ構造4の連結により第1の筐体2の後面と第2の筐体3の前面が対向した状態となっている。ここで、図3は、図2に示された切断線III−IIIの矢視断面図であり、図4は、図2に示された切断線IV−IVの矢視断面図である。図5は、ヒンジ構造4の分解斜視図であり、図6は、図5とは異なる角度から見た分解斜視図である。
【0013】
このヒンジ構造4の軸線41は第1の筐体2の前後面及び第2の筐体3の前後面に対して直交し、ヒンジ構造4によって、第1の筐体2の後面が第2の筐体3の前面に略平行になった状態を保って第1の筐体2が第2の筐体3に対して回動可能とされている。
【0014】
図3〜図6に示すように、ヒンジ構造4においては、第1の回動円筒部60が第1の筐体2に取り付けられ、第1の回動円筒部60に対して第2の回動円筒部70が軸線41周りに回動可能に設けられ、第2の回動円筒部70が第2の筐体3に取り付けられている。これにより、第1の筐体2が第2の筐体3に対して軸線41周りに回動可能となっている。
【0015】
第1の回動円筒部60が有底円筒状に形成され、この第1の回動円筒部60の底61の外周部分にフランジ状の平板部62が形成され、平板部62と第1の回動円筒部60が一体とされている。第1の回動円筒部60の内側において枢軸63が第1の回動円筒部60の底61から軸線41に沿って突出し、第1の回動円筒部60と枢軸63が一体とされている。
【0016】
枢軸63の底寄りの部分64が円柱状に形成されている。枢軸63の先端寄りの部分65の形状は円柱ではなく、軸線41から周面上の一点までの距離と軸線41から周面上の他の一点までの距離とが異なっている。以下、枢軸63の底寄りの部分64を円柱部64といい、先端寄りの部分を多角柱部65という。
【0017】
また、図3〜6では枢軸63の先端にフランジ66が形成されているが、このフランジ66は第1の回動円筒部60を第2の回動円筒部70に組み付けた後にカシメ加工されたものである。そのため、第1の回動円筒部60を第2の回動円筒部70に組み付ける前では枢軸63の先端のフランジ66が形成されていない。
【0018】
枢軸63は、リング状の漏れ止め部材90、第2の回動円筒部70、クリックリング110、リング状のディスクスプリング120、リング状のストッパ130、リング状の規制部材140にこれらの順に挿入されている。
【0019】
漏れ止め部材90は比較的硬質のゴムを鼓状に成形したもので、漏れ止め部材90の軸線方向中央部がくびれている。漏れ止め部材90の内径は枢軸63の円柱部64の径に等しく、枢軸63の円柱部64が漏れ止め部材90に嵌入し、漏れ止め部材90が第1の回動円筒部60の底61に当接している。
【0020】
第2の回動円筒部70は円筒状に形成され、この第2の回動円筒部70に枢軸63が受容されている。第2の回動円筒部70の外周面であって両端面の間の中間部にはフランジ状の円板部72が設けられ、円板部72と第2の回動円筒部70が一体形成されている。第2の回動円筒部70の内側であって両端面の間の中間部にはリング状の中板部73が形成され、その中板部73も第2の回動円筒部70と一体形成されている。その中板部73の中央に軸孔71が貫通し、枢軸63がその軸孔71に挿入されている。
【0021】
軸孔71に枢軸63が挿入された状態では、第1の回動円筒部60が第2の回動円筒部70に受容され、これにより第2の回動円筒部70の一方の開口が第1の回動円筒部60の底61によって閉塞されている。第1の回動円筒部60の端面が中板部73に当接し、第1の回動円筒部60のアキシアル荷重が中板部73によって受けられている。
【0022】
また、軸孔71の径は漏れ止め部材90の内径よりも小さく、漏れ止め部材90が軸孔71を囲繞するようにして中板部73に当接し、漏れ止め部材90が中板部73と第1の回動円筒部60の底61との間に挟み込まれている。漏れ止め部材90が鼓状に設けられているので、漏れ止め部材90が挟持されることで僅かながら圧縮変形している。
【0023】
クリックリング110の穴111の形状は枢軸63の多角柱部65の外縁の形状に一致し、この穴111に多角柱部65が嵌入されている。これにより、クリックリング110は枢軸63に対して回転が固定され、枢軸63とクリックリング110が一体に回転するようになっている。クリックリング110は中板部73に当接し、クリックリング110の当接面には2つの凹部112が形成され、中板部73の当接面には2つの凸部が形成され、2つの凸部が2つの凹部112にそれぞれ入り込んでいる。2つの凹部112が軸線41に関して180°の位置にあり、2つの凸部も軸線41に関して180°の位置にある。クリックリング110の回転に伴って凸部76が凹部112から抜ける。また、クリックリング110の外縁が円形状に設けられ、クリックリング110のラジアル荷重が第2の回動円筒部70の内面に受けられることで、枢軸63が軸支されている。
【0024】
ディスクスプリング120は円環状に設けられ、枢軸63に対して回転が自由となっている。ディスクスプリング120は、軸線41に直交する面に対して傾斜することで軸線41方向への弾性変形をするように設けられている。このディスクスプリング120が第2の回動円筒部70内にある。
【0025】
ストッパ130の径はディスクスプリング120の径よりも大きく、ストッパ130の内にディスクスプリング120があり、ストッパ130が枢軸63に対して回転可能となっている。また、ストッパ130の一方の面に突起部131が形成され、反対面にも突起部132が形成され、軸線41に関して突起部132の180°の位置にも突起部133が形成されている。このストッパ130も第2の回動円筒部70内にあり、ストッパ130の突起部131に係止可能な突起部が中板部73に形成されている。
【0026】
規制部材140の穴141の形状は枢軸63の多角柱部65の外縁の形状に一致し、この穴141に多角柱部65が嵌入されている。そして、穴141に嵌入された多角柱部65の先端はカシメ加工されてフランジ66となっている。これにより、規制部材140は枢軸63に対して回転が固定され、規制部材140とクリックリング110が一体に回転するようになっている。この規制部材140も第2の回動円筒部70内にある。また、規制部材140の縁には、円弧状の切欠き142,143が形成されており、ストッパ130の突起部132がこの切欠き142内にあり、ストッパ130の突起部133が切欠き143内にある。この切欠き142,143、突起部131,132,133及び中板部73の突起部によって回転角度が制限値である180°を僅かに超え得るようになっている。
【0027】
枢軸63のフランジ66が規制部材140の穴141の周囲において規制部材140に当接し、クリックリング110、ディスクスプリング120及び規制部材140はフランジ66と中板部73との間に挟まれ、ストッパ130は規制部材140と中板部73との間に挟まれている。更に、フランジ66と第1の回動円筒部60の底61との間には、漏れ止め部材90、中板部73、クリックリング110、ディスクスプリング120及び規制部材140が挟まれている。このように、フランジ66によって第2の回動円筒部70、漏れ止め部材90、クリックリング110、ディスクスプリング120、ストッパ130及び規制部材140からの枢軸63の抜けが防止されている。
【0028】
また、ディスクスプリング120や漏れ止め部材90が挟持された状態で僅かながら圧縮変形している。軸孔71の周囲において漏れ止め部材90が中板部73や第1の回動円筒部60の底61に圧接しているので、枢軸63の外周面と軸孔71の内面との間の隙間を通った液体の漏れを防止することができる。
【0029】
第2の回動円筒部70のもう一方の開口には、キャップ材150が挿入され、第2の回動円筒部70の開口がキャップ材150によって閉塞されている。また、キャップ材150にはパッキン151が巻装され、キャップ材150の外周面と第2の回動円筒部70の内壁面との間の隙間がそのパッキン151によって埋めている。また、キャップ材150の外周部分に2つの係合突起152が形成され、第2の回動円筒部70の端面に係合凹部74が形成され、係合突起152が係合凹部74に係合することによって、第2の回動円筒部70に対するキャップ材150の回動が抑止されている。
【0030】
このヒンジ構造4における第1の筐体2と第2の筐体3との間の配線について説明する。図3〜図6に示すように、可撓性のフレキシブル配線基板(FPC)160が、平板部62と円板部72の間において第2の回動円筒部70に2周分巻かれており、フレキシブル配線基板160の巻き径は第2の回動円筒部70の外径よりも大きい。フレキシブル配線基板160の巻かれた部分よりも一方の端部寄りには、第1の防水キャップ161が設けられ、他方の端部寄りには第2の防水キャップ162が設けられている。第1の防水キャップ161,162は、インサート材としてのフレキシブル配線基板160の一部を溶融樹脂で包んで固化させることによって形成されたものであり、その固化した樹脂が第1の防水キャップ161,162となる。
【0031】
第1の防水キャップ161の外周には、フランジ161aが周方向に亘って形成されている。第1の防水キャップ161の両端の間の中央部外周には溝161bが周方向に亘って形成され、溝161bにエラストマー性のリング状パッキン161cが嵌められている。第2の防水キャップ162も第1の防水キャップ161と同様に、フランジ162a及び溝162bが形成され、溝162bにエラストマー性のリング状パッキン162cが嵌められている。フレキシブル配線基板160の一端から他端に沿ってみた場合、第1の防水キャップ161のフランジ161aが第2の防水キャップ162側にあり、第2の防水キャップ162のフランジ162aが第1の防水キャップ161側にある。
【0032】
図3、図4、図7に示すように、第1の筐体2の後面から下面にかけて取付凹部26が形成され、取付凹部26の左右両壁面にはスライド溝27が形成されている。ここで、図7は携帯電話機1の分解斜視図であり、図7においては図面を見やすくするために第1の筐体2の前面ケース22、第2の筐体3の後面ケース33の図示を省略し、後面ケース23を一部破断した状態で示す。
【0033】
スライド溝27に平板部62が下から上へスライドにより挿入され、更に固定具170が下から取付凹部26に挿入され、固定具170がネジ等によって第1の筐体2に固定されている。これにより第1の回動円筒部60が第1の筐体2に取り付けら、枢軸63が軸線41に沿うよう取付凹部26に設けられる。
【0034】
この固定具170には、弓なり状に凹んだ曲面を有する門型部171が設けられ、門型部171が平板部62と円板部72の間において第2の回動円筒部70を囲んでいる。門型部171の反対側の面が第1の筐体2の下面と面一となっている。
【0035】
また、取付凹部26の上壁面には第1の通し孔28が形成されている。第1の通し孔28にフレキシブル配線基板160が挿入され、フレキシブル配線基板160が第1の筐体2内において回路基板に接続されている。第1の通し孔28に第2の防水キャップ162が嵌合し、リング状パッキン161cによって第1の通し孔28の隙間が埋められている。また、第1の防水キャップ161のフランジ161aが取付凹部26の上壁面に係止し、第1の防水キャップ161が第1の筐体2の内側に入り込まないようになっている。
【0036】
平板部62に切欠き62aが形成され、その切欠き62aに爪部材180が挿入され、その爪部材180が取付凹部26において第1の筐体2に係合している。この爪部材180と取付凹部26の上壁面との間にフランジ162aが挟まれ、第2の防水キャップ162が第1の通し孔28から外れないようになっている。フレキシブル配線基板160が切欠き62aにおいて爪部材180によって曲げられ、フレキシブル配線基板160が爪部材180と取付凹部26の底との間に挟まれている。
【0037】
第2の筐体3の前面には、取付凹部37が形成され、取付凹部37の底の中央部に円形凹部38が形成されている。第2の回動円筒部70の一部が円形凹部38に挿入され、取付凹部37に円板部72が嵌合され、円板部72がネジ等によって第2の筐体3に固定されている。これにより第2の回動円筒部70が第2の筐体3の前面に設けられる。
【0038】
また、取付凹部37の底には第2の通し孔39が形成され、この第2の通し孔39が第2の回動円筒部70の周囲にある。第2の通し孔39にフレキシブル配線基板160が挿入され、フレキシブル配線基板160が第2の筐体3内において回路基板に接続されている。第2の通し孔39には、第2の防水キャップ162が嵌合し、リング状パッキン162cによって第2の通し孔39の隙間が埋められている。
【0039】
第2の防水キャップ162のフランジ162aが取付凹部37の底に係止し、第2の防水キャップ162が第2の筐体3の内側に入り込まないようになっている。また、円板部72の縁に切欠き72aが形成され、その切欠き72aに留具190が嵌め込まれ、この留具190が円板部72と取付凹部37の底との間に挟まれることで固定されている。第2の防水キャップ162のフランジ162aが留具190と取付凹部37の底との間に挟まれ、第2の防水キャップ162が第2の通し孔39から外れないようになっている。また、フレキシブル配線基板160が切欠き72aにおいて留具190によって曲げられ、フレキシブル配線基板160が留具190と切欠き72aの縁との間に挟まれている。
【0040】
この携帯電話機1の回動について説明する。
図5及び図6に示した状態は、図1の(c)の状態に対応している。この状態ではクリックリング110の凹部112に中板部73の凸部が入り込んでいる。また、この状態では、ストッパ130の突起部132が切欠き142の一方の縁部に当接し、突起部131が中板部73の突起部に当接しているので、第1の回動円筒部60及び第1の筐体2を第2の回動円筒部70及び第2の筐体3に対して一方に回転することができるが他方には回転することができない。より具体的には、携帯電話機1を図1の(a)の状態から図1の(c)の状態にする際に、第1の筐体2を回転させた方向と逆の方向にしか回転させることができない。
【0041】
そして、第1の回動円筒部60及び第1の筐体2を第2の回動円筒部70及び第2の筐体3に対して上述した方向に回転させると、枢軸63とともにクリックリング110及び規制部材140が回転し、中板部73の凸部が凹部112から抜ける。中板部73の凸部が凹部112から抜ける時に、クリックリング110によってディスクスプリング120が変形するので、ディスクスプリング120の反発力をクリック感として感じることができる。
【0042】
そして、第1の回動円筒部60及び第1の筐体2を第2の回動円筒部70及び第2の筐体3に対して180°回転させると、中板部73の凸部が反対側の凹部112に入り込む。この時、ディスクスプリング120が復元し、その復元力をクリック感として感じることができる。また、この状態では、枢軸63に固定された規制部材140によってストッパ130が第1の回動円筒部60の回転に連動して略180°回転しており、ストッパ130の突起部131が中板部73の突起部から略180°回転した位置にあるので、第1の回動円筒部60及び第1の筐体2を第2の回動円筒部70及び第2の筐体3に対して左右両方向にそれぞれ180°回転することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、第2の筐体3と第1の筐体2との間の隙間5を通って取付凹部26に水が浸入しても、第1の防水キャップ161が第1の通し孔28に嵌合しているので、第1の筐体2内への水の浸入を抑えることができる。第1の防水キャップ161は摺動面間を止水しているものではないので、摺動面間を止水したゴムパッキン等よりも第1の防水キャップ161の止水性が高い。第2の筐体3についても同様に、第2の防水キャップ162によって高い防水性をもつ。
【0044】
また、第1の回動円筒部60、第2の回動円筒部70、枢軸63及びフレキシブル配線基板160等が取付凹部26に収容された状態となっているので、第1の回動円筒部60、第2の回動円筒部70、枢軸63及びフレキシブル配線基板160等が隠れて、携帯電話機1のデザイン性が向上する。
【0045】
また、軸孔71の周囲において漏れ止め部材90が第1の回動円筒部60底61や第2の回動円筒部70の中板部73に圧接しているので、枢軸63の外周面と軸孔71の内面との間の隙間を通った水の浸入を防止することができる。また、第2の回動円筒部70の開口もキャップ材150によって閉塞され、これにより防水が実現されている。そのため、携帯電話機1が水没したものとしても、第2の回動円筒部70内にある規制部材140、ストッパ130、ディスクスプリング120、クリックリング110が濡れずに済む。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば上記実施形態では携帯型電子機器として携帯電話機1を例に挙げて説明を行ったが、2つの筐体をヒンジ構造4で連結した携帯型電子機器であれば、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、腕時計、PDA(Personal Digital Assistance)、電子手帳、携帯型無線機、その他の電子機器に本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】携帯電話機の斜視図である。
【図2】携帯電話機の正面図である。
【図3】図2の切断線III−IIIに沿った面の矢視断面図である。
【図4】図2の切断線IV−IVに沿った面の矢視断面図である。
【図5】ヒンジ構造の分解斜視図である。
【図6】図5とは異なる方向に見た分解斜視図である。
【図7】携帯電話機の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 携帯電話機
2 第1の筐体
3 第2の筐体
26 取付凹部
28 第1の通し孔
39 第2の通し孔
41 軸線
160 フレキシブル配線基板
161 第1の防水キャップ
162 第2の防水キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体が第2の筐体に対向した状態で連結し、前記第1の筐体が前記第2の筐体に対して対向面に直交する軸心周りに回動可能とされた携帯型電子機器において、
前記第1の筐体の対向面に凹部が形成され、前記軸心に沿った枢軸が前記凹部に設けられ、円筒部が前記第2の筐体の対向面に設けられ、前記枢軸が前記円筒部に受容され、可撓性配線体が前記円筒部に巻かれ、前記凹部の壁面に第1の通し孔が形成され、前記可撓性配線体が前記第1の通し孔を通って前記第1の筐体内の回路基板に接続され、前記円筒部の周囲において前記第2の筐体の対向面に第2に通し孔が形成され、前記可撓性配線体が前記第2の通し孔を通って前記第2の筐体内の回路基板に接続され、第1の防水部材が前記可撓性配線体の一部を包み込むよう前記可撓性配線体に一体形成され、前記第1の防水部材が前記第1の通し孔に嵌合し、第2の防水部材が前記可撓性配線体の一部を包み込むよう前記可撓性配線体に一体形成され、前記第2の防水部材が前記第2の通し孔に嵌合していることを特徴とする携帯型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−273877(P2007−273877A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99981(P2006−99981)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】