説明

携帯式作業機

【課題】第1部材と第2部材との間への防振装置の取り付け作業を容易にすることである。
【解決手段】コイルばね32の一端に取付部を設け、この取付部においてコイルばね32をタッピングねじによりベースに固定する。接続部材35の外周にねじ込み部35aを設け、このねじ込み部35aにコイルばね32の他端をねじ込んで取り付ける。接続部材35にねじ込み部35aと同軸にボルト36を設け、このボルト36の軸部36bをハウジングの取付孔に挿通する。接続部材35に、ねじ込み部35aの径方向側から工具43を係合させることができるように、二面幅として構成された係合部41を設ける。ボルト36の軸部36bにナットを締め付け、接続部材35をハウジングに固定する際に、係合部41に係合させた工具43により接続部材35を回転方向に保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチェーンソーやヘッジトリマー等の携帯式作業機に関し、特に、駆動源とハンドルとの間に防振装置を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源に駆動される処理刃により被処理物を処理する携帯式作業機としては、例えば動力鋸とも呼ばれるチェーンソーがある。チェーンソーは処理刃として無端状のソーチェーンを備えており、ソーチェーンは駆動源により駆動されて作動し、作動したソーチェーンを樹木の幹や枝などの被処理物に押し当てることにより切断作業を行なうことができる。
【0003】
作業機の駆動源としては2サイクルガソリンエンジン等が多く用いられている。駆動源はハウジングに収容され、ハウジングにはベースが取り付けられている。ベースには前ハンドルと後ハンドルとが設けられ、これらのハンドルを把持することにより作業者は作業を行うことができる。
【0004】
処理刃や駆動源の振動がハンドルを介して作業者に伝達されることを抑制して、作業者の負担を低減させるために、ハウジングとベースとの間に防振装置を設けた作業機が知られている。この場合、螺旋状のねじ込み溝を備えた接続部材が、このねじ込み部と同軸に設けられたボルトとナットとによりハウジングに固定され、ねじ込み部にコイルばねの一端がねじ込まれて固定され、コイルばねの他端がねじ部材によりベースに固定される。これにより、ハウジングとベースとがコイルばねにより連結され、ハンドルを介して作業者に伝達される振動がコイルばねにより吸収される。
【0005】
このような防振装置では、コイルばねの一端をねじ込んだ接続部材を、ボルトとナットによりハウジングに固定するようにしているので、ナットをボルトに締め付ける際に、接続部材がナットと共に回転して、コイルばねの接続部材へのねじ込み量が規定値からずれるおそれがある。コイルばねの接続部材へのねじ込み量が規定値からずれると、コイルばねの有効長つまりばね定数が変化して、所望の振動吸収効果が得られなくなったり、ハウジングをベースに保持できなくなったりするおそれがある。
【0006】
そこで、例えば特許文献1に示される作業機では、接続部材をハウジングに固定するためのボルトの先端面にスリットを設け、このスリットに軸方向からマイナスドライバ等の工具を係合させ、当該工具によりボルトを回転しないように保持しながらナットの締め付け作業を行うことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2010−041606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示す構造では、ボルトの先端面のスリットに軸方向から工具を係合させるとともに、ナットにも工具を係合させ、これらの工具をハウジングに対して同じ側で操作する必要があるので、ハウジングとベースとの間にコイルばねを取り付ける作業は困難であった。
【0009】
また、ナットをボルトに締め付けるときに、ボルトの先端面のスリットに軸方向から工具を係合させる必要があるので、ナットを締め付ける工具としてトルクレンチを用いることができない。
【0010】
本発明の目的は、第1部材と第2部材との間への防振装置の取り付け作業を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の携帯式作業機は、駆動源に駆動される処理刃により被処理物を処理する携帯式作業機であって、前記駆動源が取り付けられる第1の部材と、作業者に把持されるハンドルが設けられる第2の部材と、螺旋状のねじ込み部を備え、前記ねじ込み部と同軸に設けられる第1締結部材により軸方向の一端において前記第1の部材または前記第2の部材のいずれか一方に固定される接続部材と、一端が前記ねじ込み部にねじ込まれて前記接続部材に取り付けられ、他端が第2締結部材により前記第1の部材または前記第2の部材のいずれか他方に固定されるコイルばねと、を有し、前記ねじ込み部の径方向側から工具が係合可能な係合部を前記接続部材に設け、該係合部に係合させた工具により前記接続部材を回転方向に保持可能としたことを特徴とする。
【0012】
本発明の携帯式作業機は、前記第1締結部材はボルトとナットとにより構成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の携帯式作業機は、前記係合部は、対向して設けられる一対の係合面により構成されることを特徴とする。
【0014】
本発明の携帯式作業機は、前記係合部は、多角柱により構成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の携帯式作業機は、前記係合部は、径方向に向けて開口する孔として構成されることを特徴とする。
【0016】
本発明の携帯式作業機は、前記係合部は、前記ねじ込み部に対して軸方向の一方側に設けられることを特徴とする。
【0017】
本発明の携帯式作業機は、前記係合部は、前記ねじ込み部に対して軸方向の他方側に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、接続部材にねじ込み部の径方向から工具を係合可能な係合部を設けるようにしたので、接続部材を第1締結部材により締結する作業を行う際に、係合部に係合させた工具により接続部材を回転しないように保持することができる。したがって、係合部に係合させた工具により接続部材を回転しないように保持しつつ、第1締結部材の締結作業を行うことを可能として、第1部材と第2部材との間へのコイルばねの取り付け作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態であるチェーンソーの側面図である。
【図2】図1に示すチェーンソーを底面側から見た斜視図である。
【図3】図2に示す防振装置の分解斜視図である。
【図4】図2に示す防振装置の断面図である。
【図5】図4におけるA−A線に沿う断面図である。
【図6】図4におけるB−B線に沿う断面図である。
【図7】接続部材の係合部に工具を係合させた状態を示す断面図である。
【図8】図5に示す係合部の変形例であって、係合部を多角柱により構成した場合を示す断面図である。
【図9】図5に示す係合部の変形例であって、係合部を径方向に向けて開口する孔として構成した場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1に示すチェーンソー11は動力鋸とも呼ばれる携帯式作業機であり、樹木の幹や枝などの被処理物を切断処理するために使用される。
【0022】
チェーンソー11は第1の部材としての樹脂製のハウジング12を備えており、このハウジング12には駆動源としてのエンジン13が取り付けられている。ハウジング12はエンジンケースとも呼ばれるものであり、エンジン13はハウジング12の内部に収容されている。エンジン13としては2サイクルのガソリンエンジンが用いられており、このエンジンはハウジング12の内部に縦置きに配置されている。
【0023】
ハウジング12の側面にはサイドケース14が固定され、ハウジング12とサイドケース14との間にはガイドバー15が挟持固定されている。ガイドバー15は鋼材等の金属により長尺の板状に形成されており、その基端側においてハウジング12とサイドケース14とに挟持固定され、その先端側はハウジング12から前方に向けて突出している。ガイドバー15の外周縁はレール状に形成されており、この外周縁には処理刃としてのソーチェーン16が掛け渡されている。ソーチェーン16はサイドケース14内に配置された図示しないスプロケットに掛け渡されており、このスプロケットは図示しない遠心クラッチを介してエンジン13のクランク軸に連結されている。
【0024】
エンジン13が作動してクランク軸の回転数が所定回転数以上となると、遠心クラッチが動力伝達状態に切り替わり、スプロケットがエンジン13により駆動されて回転する。スプロケットが回転すると、これに掛け渡されたソーチェーン16がガイドバー15の外周縁に沿って作動する。このように、エンジン13に駆動されてガイドバー15の外周縁に沿って作動するソーチェーン16を樹木の幹や枝等の被処理物に押し付けることにより、被処理物の切断作業を行うことができる。
【0025】
ハウジング12は第2の部材としてのベース21に取り付けられている。ベース21は樹脂材料により形成されており、その後方側には後ハンドル(後グリップ)22が一体に設けられ、前方側にはねじ部材により前ハンドル(前グリップ)23が取り付けられている。作業者はこれらのハンドル22,23を把持することにより、このチェーンソー11を携帯して作業を行なうことができる。前ハンドル23の前方にはハンドガード24が設けられ、前ハンドル23を握る作業者の手の保護が図られている。後ハンドル22にはスロットルレバー25が設けられ、スロットルレバー25を操作することによりエンジン13の回転数を制御することができる。符号26は後ハンドル22に設けられたロックレバーであり、作業者が後ハンドル22を把持してロックレバー26が押し込まれた状態でのみスロットルレバー25を操作することができる。
【0026】
図2に示すように、ハウジング12とベース21との間には防振装置31が設けられている。この防振装置31により、ソーチェーン16が被処理物との間で生じる振動やエンジン13が発生する振動がハウジング12からベース21に伝達されることが抑制され、各ハンドル22,23を介しての作業者への振動の伝達が抑制される。
【0027】
なお、図2には、1つの防振装置31のみが示されるが、このチェーンソー11にはハウジング12とベース21との間に3つの防振装置31が設けられ、これらの防振装置31によりハウジング12がベース21に取り付けられている。これらの防振装置31は基本的に同一の構成であるので、以下では図2に示す防振装置31について説明する。
【0028】
図3及び図4に示すように、防振装置31はコイルばね32を備えている。コイルばね32は、所定の巻き数の巻回部分32aを有するとともに各巻回部分32aの間に隙間を備えた圧縮コイルばねとして構成されており、その軸方向の一端には巻回部分32aよりも巻き径(径方向寸法)が小さい取付部(ピッグテールエンド)32bが一体に設けられている。コイルばね32の取付部32bには、巻回部分32aの内側から第2締結部材としてのタッピングねじ33が挿通され、このタッピングねじ33がベース21に設けられた取付孔34にねじ込まれることにより、コイルばね32は、その一端に設けられた取付部32bにおいてタッピングねじ33によりベース21に固定されている。
【0029】
なお、コイルばね32をベース21に固定する第2締結部材としては、図示するタッピングねじ33に限らず、ボルトとナット等の他の締結部材を用いるようにしてもよい。
【0030】
コイルばね32の他端は、接続部材35を介してハウジング12に固定されている。接続部材35は樹脂材料により円柱状に形成されており、その外周部にはねじ込み部35aが一体に形成されている。ねじ込み部35aは螺旋状に凹んだ溝として形成されており、その外径寸法はコイルばね32の巻回部分32aの内径寸法と略同一の値に設定され、ピッチはコイルばね32の巻回部分32aのピッチと同一の値に設定されている。また、ねじ込み部35aの軸方向寸法はコイルばね32の軸方向寸法よりも小さく設定されている。
【0031】
コイルばね32は、その取付部32bが設けられた側とは反対側の一端がねじ込み部35aにねじ込まれて接続部材35に取り付けられている。ねじ込み部35aにねじ込まれたコイルばね32は、接続部材35と同軸に配置され、接続部材35に対して軸方向に固定された状態となる。
【0032】
なお、コイルばね32のねじ込み部35aへのねじ込み量は、コイルばね32の有効長つまりばね定数が所望の値となるように、予め設定された規定値となるように調整されている。
【0033】
接続部材35には、インサート成形等の手段により、ボルト36が埋設されている。ボルト36は、ねじ込み部35aと同軸に配置されており、その頭部36aはねじ込み部35aの内部に配置され、軸部36bは接続部材35のコイルばね32の取付部32bとは反対側を向く軸方向の一端から突出している。ハウジング12には接続部材35を取り付けるための取付孔37が設けられ、接続部材35の一端から突出したボルト36の軸部36bが取付孔37に挿通されている。ボルト36の軸部36bの取付孔37から突出した先端にはナット38がねじ結合され、このナット38とボルト36とにより接続部材35は軸方向の一端面35bがハウジング12に当接した状態となってハウジング12に固定されている。つまり、接続部材35は、ねじ込み部35aと同軸に配置された第1締結部材としてのボルト36とナット38とにより、その軸方向の一端においてハウジング12に固定されている。
【0034】
このように、コイルばね32は、その一端がタッピングねじ33によりベース21に固定されるとともに、他端が接続部材35を介してハウジング12に固定されている。コイルばね32の中間部分はベース21と接続部材35との間で伸縮自在となっているので、ソーチェーン16が被処理物との間で生じる振動やエンジン13が発生する振動を、ハウジング12とベース21とを連結するコイルばね32の伸縮により吸収することができる。
【0035】
コイルばね32の接続部材35へのねじ込み量が規定値からずれると、コイルばね32の有効長つまりばね定数が変化して、所望の振動吸収効果が得られなくなり、また、ハウジング12をベース21に保持できなくなるおそれがある。そのため、コイルばね32がねじ込まれた接続部材35を、ボルト36とナット38とでハウジング12に固定する際には、ナット38の締め付けにより接続部材35が回転しないようにする必要がある。
【0036】
本発明では、接続部材35に一対の係合部41,42を設け、これらの係合部41,42のいずれかに係合させた工具43により、接続部材35の回転を阻止しながらナット38の締め付けを行えるようにしている。
【0037】
接続部材35に設けられる一方の係合部41は、ねじ込み部35aに対してボルト36の軸部36bが突出する軸方向の一方側にねじ込み部35aに対して軸方向に突出して設けられている。この係合部41はねじ込み部35aと一体に形成されている。係合部41はねじ込み部35aと同軸の円柱状部分41aを備えるとともに、図5に示すように、円柱状部分41aの外周面に互いに平行であるとともに、ねじ込み部35aやボルト36の軸方向にも平行となる一対の係合面41bを備えた構成となっている。つまり、係合部41は、ねじ込み部35aと同軸の円柱状部分41aの外周面に対向する一対の係合面41bが設けられた二面幅に構成されている。図7に示すように、係合部41にはスパナ等の締結用の工具43をねじ込み部35aの径方向側から係合させることができる。そして、係合部41に係合させた工具により、接続部材35をねじ込み部35aの軸心を中心とした回転方向に保持して、その回転を阻止することができる。
【0038】
また、接続部材35には、ねじ込み部35aに対してコイルばね32の取付部32bと対向する軸方向の他方側にも係合部42が設けられている。この係合部42はねじ込み部35aに対して軸方向に突出して設けられており、また、ねじ込み部35aと一体に形成されている。この係合部42もねじ込み部35aと同軸の円柱状部分42aを備えるとともに、図6に示すように、円柱状部分42aの外周面に互いに平行であるとともに、ねじ込み部35aやボルト36の軸方向にも平行となる一対の係合面42bを備えた構成となっている。つまり、係合部42も、ねじ込み部35aと同軸の円柱状部分42aの外周面に一対の係合面42bが設けられた二面幅に構成されている。なお、係合部42は、コイルばね32の内側に配置されるため、その外径寸法は係合部41の外径寸法よりも小さくされている。係合部41と同様に、この係合部42にも、スパナ等の締結用の工具43をねじ込み部35aの径方向側から係合させることができる。このとき、係合部42はコイルばね32の内側に配置されているので、工具43はコイルばね32の各巻回部分32aの隙間から差し込まれることになる。そして、係合部42に係合させた工具43により、接続部材35をねじ込み部35aの軸心を中心とした回転方向に保持して、その回転を阻止することができる。
【0039】
次に防振装置31のハウジング12とベース21との間への取り付け手順について説明する。
【0040】
まず、コイルばね32の長手方向の一端をタッピングねじ33によりベース21に固定する。次に、コイルばね32の他端を接続部材35のねじ込み部35aにねじ込んで、接続部材35をコイルばね32の他端に取り付ける。このとき、コイルばね32のねじ込み部35aへのねじ込み量が、予め設定された規定値となるように調整する。
【0041】
次に、接続部材35の先端側にハウジング12を配置し、接続部材35から突出するボルト36の軸部36bをハウジング12の取付孔37に挿通させる。接続部材35のいずれか一方の係合部41,42にねじ込み部35aの径方向から工具43を係合させ、この工具43により接続部材35を、軸心を中心として回転しないように保持する。この状態で、取付孔37から突出したボルト36の軸部36bの先端からナット38をねじ結合させ、トルクレンチやラチェット、スパナ等の工具43を用いてナット38をボルト36に締め付ける。ナット38を締め付ける際には、工具43により接続部材35を保持して、接続部材35がナット38とともに回転しないようにする。
【0042】
このような手順により、接続部材35のねじ込み部35aに対するコイルばね32のねじ込み量を規定値に維持したままナット38をボルト36に締結して、接続部材35をハウジング12に固定することができる。
【0043】
このように、本発明では、ねじ込み部35aの径方向から工具43を係合させることが可能な係合部41,42を接続部材35に設けるようにしたので、この係合部41,42にねじ込み部35aの径方向側から工具43を係合させることにより、工具43により接続部材35を回転方向に保持することができる。したがって、係合部41,42に係合させた工具43により接続部材35を回転しないように保持しながら、トルクレンチ等の工具43を用いてナット38を締め付ける作業を行うことができるので、ハウジング12とベース21との間への防振装置31(コイルばね32)の取り付け作業が容易になる。接続部材35を回転方向に保持する工具43を、ねじ込み部35aの径方向から係合部41,42に係合させる構成であるので、接続部材35に係合させた工具43で接続部材35の回転を阻止しつつ、ナット38を軸方向から覆う構成であるトルクレンチを工具43として用いることができる。したがって、ナット38の締め付けトルクの管理も容易に行うことができる。
【0044】
なお、工具43は、手で保持する手工具でも、組み付け治具等に設けられて自動的に作動するものであってもよい。
【0045】
また、本発明では、接続部材35に、ねじ込み部35aに対して軸方向の一方側と他方側とにそれぞれ係合部41,42を設けるようにしたので、一方の係合部41の径方向外側がハウジング12により覆われる構成であっても、他方の係合部42に工具43を係合させることで接続部材35を回転方向に保持することができる。一方の係合部41の径方向外側がハウジング12に覆われる部分に設けられる防振装置31と、係合部41の径方向外側がハウジング12により覆われない部分に設けられる防振装置31とに、同一の接続部材35を用いることができるので、接続部材35の汎用性を高めて、この防振装置31やチェーンソー11のコストを低減することができる。
【0046】
図8は図5に示す係合部の変形例であって、係合部を多角柱により構成した場合を示す断面図である。また、図9は図5に示す係合部の変形例であって、係合部を径方向に向けて開口する孔として構成した場合を示す断面図である。
【0047】
図5に示す場合では、接続部材35に設ける係合部41,42を円柱状部分41a,42aの外周面に一対の平行な係合面41b,42bを設けた二面幅に構成している。
【0048】
これに対して、図8に示す変形例では、接続部材35に設けられる係合部41は正六角柱に構成されている。このように正六角柱に構成された係合部41は、それぞれ互いに平行な一対の係合面41bからなる3対の二面幅を有し、これらのいずれかの二面にスパナ等の工具を係合させることができる。
【0049】
一方、図9に示す変形例では、係合部41は、円柱状部分41aの外周面に径方向に向けて開口する孔44を備えた構成とされている。この場合、工具43としては、例えば六角レンチ等の棒状のものが用いられる。この棒状の工具43を径方向から係合部41の孔44に挿通することにより、工具43を係合部41に係合させて、当該工具43により接続部材35を回転方向に保持して、その回転を阻止することができる。
【0050】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0051】
例えば、前記実施の形態においては、携帯式作業機としてチェーンソー11を例示しているが、これに限らず、例えばヘッジトリマーなど、他の携帯式作業機に本発明を適用してもよい。
【0052】
また、前記実施の形態においては、駆動源としてエンジン13を用いるようにしているが、これに限らず、駆動源として電動モータを用いるようにしてもよい。また、エンジン13としては、2サイクルのガソリンエンジンに限らず、4サイクルのガソリンエンジンやガソリン以外の他の燃料を用いるエンジンとしてもよい。
【0053】
さらに、前記実施の形態においては、コイルばね32の取付部32bをベース21に固定し、接続部材35をハウジング12に固定するようにしているが、これに限らず、コイルばね32の取付部32bをハウジング12に固定し、接続部材35をベース21に固定するようにしてもよい。
【0054】
さらに、前記実施の形態においては、係合部41,42は、二面幅や多角柱、径方向に開口する孔として構成されているが、これに限らず、径方向から工具が係合可能であり、且つ、係合した工具により接続部材35を回転方向に保持できる構成であれば、他の構成としてもよい。
【0055】
さらに、前記実施の形態では、第1締結部材をボルト36とナット38とで構成するようにしているが、これに限らず、第1締結部材を接続部材35にタッピングねじをねじ込む構成としてもよい。
【0056】
さらに、前記実施の形態では、ボルト36を接続部材35に埋設するようにしているが、これに限らず、接続部材35にこれと同軸に雄ねじを一体に設けるようにしてもよい。また、ナット38を接続部材35に埋設し、ハウジング12の取付孔37に挿通したボルト36の軸部36bをナット38にねじ結合させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
11 チェーンソー(携帯式作業機)
12 ハウジング(第1の部材)
13 エンジン(駆動源)
14 サイドケース
15 ガイドバー
16 ソーチェーン(処理刃)
21 ベース(第2の部材)
22 後ハンドル
23 前ハンドル
24 ハンドガード
25 スロットルレバー
26 ロックレバー
31 防振装置
32 コイルばね
32a 巻回部分
32b 取付部
33 タッピングねじ(第2締結部材)
34 取付孔
35 接続部材
35a ねじ込み部
35b 一端面
36 ボルト(第1締結部材)
36a 頭部
36b 軸部
37 取付孔
38 ナット(第1締結部材)
41 係合部
41a 円柱状部分
41b 係合面
42 係合部
42a 円柱状部分
42b 係合面
43 工具
44 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に駆動される処理刃により被処理物を処理する携帯式作業機であって、
前記駆動源が取り付けられる第1の部材と、
作業者に把持されるハンドルが設けられる第2の部材と、
螺旋状のねじ込み部を備え、前記ねじ込み部と同軸に設けられる第1締結部材により軸方向の一端において前記第1の部材または前記第2の部材のいずれか一方に固定される接続部材と、
一端が前記ねじ込み部にねじ込まれて前記接続部材に取り付けられ、他端が第2締結部材により前記第1の部材または前記第2の部材のいずれか他方に固定されるコイルばねと、を有し、
前記ねじ込み部の径方向側から工具が係合可能な係合部を前記接続部材に設け、該係合部に係合させた工具により前記接続部材を回転方向に保持可能としたことを特徴とする携帯式作業機。
【請求項2】
前記第1締結部材はボルトとナットとにより構成されることを特徴とする請求項1記載の携帯式作業機。
【請求項3】
前記係合部は、対向して設けられる一対の係合面により構成されることを特徴とする請求項1または2記載の携帯式作業機。
【請求項4】
前記係合部は、多角柱により構成されることを特徴とする請求項1または2記載の携帯式作業機。
【請求項5】
前記係合部は、径方向に向けて開口する孔として構成されることを特徴とする請求項1または2記載の携帯式作業機。
【請求項6】
前記係合部は、前記ねじ込み部に対して軸方向の一方側に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯式作業機。
【請求項7】
前記係合部は、前記ねじ込み部に対して軸方向の他方側に設けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の携帯式作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−31931(P2013−31931A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167988(P2011−167988)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】