説明

携帯機器

【課題】 第2筐体を第1筐体に対してスライドさせることができると共に回動させることができる携帯機器を提供する。
【解決手段】 開閉機構4を用いて第1筐体2の上面を第2筐体3で覆う閉成状態と、第1筐体2の上面を露出させる開成状態とを形成する。開閉機構4が、第2筐体3に設けられたガイド溝5と、このガイド溝5にスライド係合すると共に第1筐体2に設けられたガイド部材6とを備える。ガイド部材6が、第2筐体3に設けられたケース61と、このケース61に回動可能に設けられたシャフト62と、このシャフト62に取り付けられガイド溝5に回動することなくスライド係合するスライド部材63と、ケース61に対するシャフト62の回動を制御するカム機構7とを有し、第1筐体2及び第2筐体3を互いにスライドさせると共に互いにシャフト62を軸に回動させるように構成することにより、前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機や携帯端末機のような携帯機器を構成する第1筐体と第2筐体を互いに重ね合わせた状態で相対的に長手方向に開閉可能にスライドさせる際に用いて好適な携帯機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯機器において、キーボードやマイク等を上面に設けた送話部としての第1筐体と、ディスプレイやスピーカー等を上面に設けた受話部としての第2筐体とを有し、これらの第1筐体と第2筐体が重なり合って第2筐体で第1筐体の上面を覆う閉成状態と、第2筐体を第1筐体に対して長手方向へスライドさせて第1筐体の上面を露出させる開成状態とを作り出す、携帯機器付きのものが市場に出回っている。このような携帯機器としては、下記する特許文献1に記載されたものが公知である。
【特許文献1】特開2004−235897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この特許文献1に記載されたものは、第2筐体の両側部にその後端部近傍から先端部近傍までの長手方向に延びるガイド溝を設けると共に、第1筐体の両側部の中央部と先端部近傍の2箇所にそれぞれガイド溝に係合するガイド部材を設けて、第2筐体の両側部と第1筐体の両側部とを互いに直線方向にスライド係合させることができるという構成のものであった。ガイド部材は、ケースに出没可能でかつ突出する方向に付勢されているボールベアリングを有し、このボールベアリングがガイド溝に押圧されているために、第2筐体を第1筐体に対してスライドさせている途中でこのスライドを停止すると、ボールベアリングとガイド溝との接触による摩擦力によってその位置に第2筐体を停止することができる。その結果、第2筐体を第1筐体に対して所望の位置に停止させることができる。第2筐体は、第1筐体に対して直線方向にスライドするが、第1筐体に対する角度は同じであるので、例えば、キーボードの面とディスプレイの表示画面とが略平行に位置されている場合には、ディスプレイに表示された画像を見ながらキーボードを操作し難いことがあり、使い勝手が悪く、ディスプレイを有効に利用することができなかった。
【0004】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、第2筐体を第1筐体に対してスライドさせることができると共に回動させることができる携帯機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するための本発明に係る携帯機器は、第1筐体と第2筐体とからなり、開閉機構を用いて前記第1筐体の上面を前記第2筐体で覆う閉成状態と、前記第1筐体の上面を露出させる開成状態とを形成する携帯機器であって、前記開閉機構が、前記第1筐体及び前記第2筐体のいずれか一方の筐体に設けられたガイド溝と、このガイド溝にスライド係合すると共に前記第1筐体及び前記第2筐体のいずれか他方の筐体に設けられたガイド部材とを備え、前記ガイド部材が、前記他方の筐体に設けられたケースと、このケースに回動可能に設けられたシャフトと、このシャフトに取り付けられ、前記ガイド溝に回動することなくスライド係合するスライド部材と、前記ケースに対する前記シャフトの回動を制御するカム機構とを有し、前記第1筐体及び前記第2筐体を互いにスライドさせると共に互いに前記シャフトを軸に回動させるように構成したことを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、一方の筐体にガイド溝を設けると共に他方の筐体にガイド溝にスライド係合するガイド部材を設けたので、第1筐体及び第2筐体を互いにスライドさせることができる。また、ガイド部材が、他方の筐体に設けられたケースと、このケースに回動可能に設けられたシャフトと、このシャフトに取り付けられ、ガイド溝に回動することなくスライド係合するスライド部材と、ケースに対するシャフトの回動を制御するカム機構とを有するので、第1筐体及び第2筐体を互いにシャフトを軸に回動させることができる。
【0007】
本発明に係る携帯機器において、前記カム機構が、前記シャフトに固定された第1カムと、前記シャフトの軸方向に移動可能で前記第1カムと面接触する第2カムと、前記第1カムの接触面及び前記第2カムの接触面の少なくとも一方に設けられるカム凸部と、前記第1カムの接触面及び前記第2カムの接触面の少なくとも他方に設けられ、前記カム凸部と係合して前記第1筐体に対する前記第2筐体の位置を所定の位置にロック状態に保持するカム凹部とを有することが好ましい。また、本発明に係る携帯機器において、前記カム機構が、前記閉成状態のとき、前記第1筐体及び前記第2筐体を互いに回転させて開く方向に付勢するカム凸部及びカム凹部を有し、前記ガイド溝及び前記ガイド部材を前記一方の筐体及び前記他方の筐体に前記第1筐体及び前記第2筐体の回動を規制するように設け、前記第1筐体及び前記第2筐体の少なくとも一方に、前記第1筐体及び前記第2筐体を前記閉成状態から互いにスライドさせて開成状態になったとき、前記カム機構による前記第1筐体及び前記第2筐体の回転を許容すると共に、前記第1筐体に対する前記第2筐体が所定の角度になったとき、その第1筐体及び第2筐体の回転を停止する回動許容部を設けることが好ましい。また、本発明に係る携帯機器において、前記ガイド部材が、さらに前記スライド部材に出没可能でかつ突出する方向に付勢され、前記ガイド溝に押圧される凸部材を有することが好ましい。また、本発明に係る携帯機器において、前記ケースに対する前記シャフトの回動をダンパー効果を介して行うダンパー機構を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明に係る携帯機器によれば、一方の筐体にガイド溝を設けると共に他方の筐体にガイド溝にスライド係合するガイド部材を設け、かつ、ガイド部材が、他方の筐体に設けられたケースと、このケースに回動可能に設けられたシャフトと、このシャフトに取り付けられ、ガイド溝に回動することなくスライド係合するスライド部材と、ケースに対するシャフトの回動を制御するカム機構とを有するので、第2筐体を第1筐体に対してスライドさせることができると共に回動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る携帯機器の一例を添付図面に基づいて詳述する。
【0010】
図1〜図4は本発明に係る携帯機器の一例を示す図である。図5及び図6は本発明に係るガイド部材の一例を示す図である。本発明に係る携帯機器は、図1〜図4に示すように、第1筐体2と第2筐体3とからなり、開閉機構4を用いて第1筐体2の上面を第2筐体3で覆う閉成状態(図1(a−1)及び(b−1)参照。)と、第1筐体2の上面を露出させる開成状態(図1(a−2)、(b−2)、(a−3)、(b−3)、図2、図3(a−2)、(b−2)、(a−3)、(b−3)参照。)とを形成するものである。なお、本実施の形態では第1筐体2及び第2筐体3を閉成状態から互いにスライドさせて第1筐体2の上面を露出させた開成状態(スライド開成状態(図1(a−2)、(b−2)、図2、図3(a−2)、(b−2)参照。)ということがある。)と、このスライド開成状態からさらに第1筐体2及び第2筐体3を回動させた開成状態(フルオープン開成状態(図1(a−3)、(b−3)、図3(a−3)、(b−3)参照。)ということがある。)との2つの開成状態がある。
【0011】
本発明に係る携帯機器1としては、特に限定されず、例えば、携帯電話機、ザウルス(商標)等の携帯端末機、電卓、ポケットコンピュータ、携帯ゲーム機等が挙げられる。なお、本発明において携帯機器としては、その他、灰皿、ケース蓋等も含まれる。すなわち、2つの筐体を互いに移動させるものであれば特に限定されない。また、本実施の形態では、携帯機器としては特に限定せずに説明する。
【0012】
この本発明に係る携帯機器1は、開閉機構4が、第1筐体2及び第2筐体3のいずれか一方の筐体、例えば、第2筐体3に設けられたガイド溝5と、このガイド溝5にスライド係合すると共に第1筐体2及び第2筐体3のいずれか他方の筐体、例えば、第1筐体2に設けられたガイド部材6とを備え、ガイド部材6が、第1筐体2に設けられたケース61と、このケース61に回動可能に設けられたシャフト62と、このシャフト62に取り付けられ、ガイド溝5に回動することなくスライド係合するスライド部材63と、ケース61に対するシャフト62の回動を制御するカム機構7とを有し、第1筐体2及び第2筐体3を互いにスライドさせると共に互いにシャフト62を軸に回動させるように構成したことに特徴がある。
【0013】
第1筐体2は、キーボード(図示せず)等を上面に有しているものである。第1筐体2は、横長の略矩形状に形成されている。すなわち、第1筐体2は、上下方向の長さが短く、左右方向(幅方向)の長さが長い横長の略矩形状に形成されている。この第1筐体2の両側部は、上面から上方にそれぞれ突出してガイド部21として形成されている。すなわち、第1筐体2は、上面が略凹状に形成されていると共に、平面視横長の略矩形状に形成されている。第1筐体2のガイド部21の内面には、ガイド部材6を嵌合して収容するガイド部材収容部22が設けられている。このガイド部材6は、カム機構7を備えたものであり、両ガイド部の内面に収容するようにしてもよいし、図示例のように一方のガイド部21にのみ収容するようにしてもよい。この場合、一方のガイド部21にのみカム機構7を備えたガイド部材6を収容する場合には、他方のガイド部には、カム機構を備えないガイド部材すなわちボールユニット13を収容して第1筐体2及び第2筐体3を互いにスライドさせると共に互いにシャフト62を軸に回動させるようにしてもよい。
【0014】
第2筐体3は、例えば、LCDなどのディスプレイ31、スピーカー(図示せず)、カメラ(図示せず)等を有している。第2筐体3は、第1筐体2のガイド部21間に嵌合して第1筐体2に重ね合すことができる横長の略矩形状に形成されている。第2筐体3の両端面には、ガイド溝5がそれぞれ設けられている。これらガイド溝5に第1筐体2のガイド部材6がスライド係合して、第1筐体2と第2筐体3とが互いに重ね合わされてキーボードを閉塞する閉成状態からキーボードを露出させるスライド開成状態までの間で互いに第1筐体2と第2筐体3とがスライドし得ると共に、第1筐体2と第2筐体3とが互いに回動し得るようになっている。なお、第2筐体3にガイド溝5を設けると共に第1筐体2にガイド部材6を設けたが、第1筐体にガイド溝を設けると共に第2筐体にガイド部材を設けてるようにしてもよい。
【0015】
ガイド部材6は、ガイド溝5と係合して第1筐体2と第2筐体3を互いにスライド可能に支持すると共に互いに回動可能に支持するものである。ガイド部材6は、特に限定されず、図4〜図6に示すように、第1筐体2のガイド部材収容部22に嵌合されて収容されるケース61と、このケース61に回動可能に設けられたシャフト62と、このシャフト62に取り付けられ、ガイド溝5に回動することなくスライド係合するスライド部材63と、ケース61に対するシャフト62の回動を制御するカム機構7とを有することが好ましい。
【0016】
ケース61は、図4〜図7に示すように、ガイド部材収容部22に嵌合されて収容される有底の略矩形筒状に形成されている。ケース61の両側部は、湾曲状に形成されていることが好ましい。ケース61の底部には、シャフト62が貫通される貫通孔61aが設けられている。貫通孔61aは、シャフト62の径より大きな径、例えば若干大きな径で形成されていることが好ましい。ケース61内は、底部側がスプリング収容部61bとして形成されていると共に、開口部側がカム摺動部61cとして形成されている。スプリング収容部61bは円形状に形成されている。カム摺動部61cは、両側部に係合突部61dを有する略矩形状に形成されている。
【0017】
シャフト62は、例えば、円柱状に形成されている。シャフト62の他端部である後端部は、拡径されたフランジ部62aが設けられており、シャフト62の先端部を貫通孔61aにワッシャー64を介して貫通させることによってシャフト62がケース61に回動可能に支持されるようになっている。シャフト62は、ケース61の開口部から突出する寸法で形成されている。このケース61から突出するシャフト62の一端部である先端部近傍には、径方向に貫通する取付孔62bが設けられている。このシャフト62の先端部に取付ピン65を取付孔62bに挿入してスライド部材63が取り付けられる。
【0018】
スライド部材63は、図4〜図6及び図8に示すように、ガイド溝5に回動することなくスライド係合するものである。スライド部材63は、円筒状に形成された基部63aと、この基部63aの一端部である先端部に設けられたスライド部63bとからなることが好ましい。基部63aの後端部近傍の周面の対向する2箇所には、シャフト62に取り付けるための取付孔63cが設けられている。基部63aは、内部にシャフト62の先端部が挿嵌される寸法の径で形成されている。スライド部材63の内形は、先端部近傍から先端部にかけて漸次縮径されて形成されている。すなわち、基部63aの先端部の開口部(出没孔63dということがある。)は、他端部(後端部ということがある。)の開口部より径が小さな寸法の径で形成されている。スライド部63bは、基部63aの先端部の周縁部にその径方向外方に延びた平板状に形成されている。スライド部63bは、横長の略矩形平板状の両側部をそれぞれ湾曲状に形成されていることが好ましい。スライド部63bの外周には、スライド部材63のスライドを容易にするためのガイド材63eが設けられていることが好ましい。このスライド部材63には、凸部材が設けられていることが好ましい。
【0019】
凸部材は、スライド部材63の出没孔63dから出没可能でかつ突出する方向に付勢され、ガイド溝5に押圧されるものであることが好ましい。凸部材は、例えば、ボールベアリング66等であることが好ましい。ボールベアリング66は、スライド部材63内に収容されている。このボールベアリング66は、基部63aの他端部の開口部の径より小さな寸法であって出没孔63dの径より大きな寸法の径で形成されており、スライド部材63内に収容された状態で出没孔63dから一部が突出し得るようになっている。スライド部材63内のボールベアリング66とシャフト62との間には、受座部材67と付勢部材とが収容されている。
【0020】
受座部材67は、ボールベアリング66を支承するもので、例えば、略円柱状に形成されている。受座部材67の一端部には、ボールベアリング66を回転可能に支承するボールベアリング66の径と同じ径の球面状の支承部67aが設けられている。また、受座部材67の他端部には、付勢部材であるコンプレッションスプリング68の一端部が嵌装されるスプリング嵌挿部67bが設けられている。コンプレッションスプリング68の他端部は、シャフト62の先端面に当接しており、ボールベアリング66の一部が出没孔63dから突出するように付勢されている。これらスライド部材63、ボールベアリング66、受座部材67、コンプレッションスプリング68によってボールユニットが構成されている。このボールユニットは、出没孔63dから凸部材を出没可能であって突出する方向に付勢することができればどのように構成してもよい。
【0021】
カム機構7は、ケース61に対するシャフト62の回動、すなわち、第1筐体2に対する第2筐体3の回動を制御するものである。カム機構7は、第1筐体2に対して第2筐体3を所定の位置にロック状態に保持するものである。カム機構7は、例えば、第1筐体2に対して第2筐体3を0°〜40°の角度の範囲で回動し得る場合、40°の角度でロック状態に保持するように構成されていることが好ましい。この場合の角度とは、第1筐体2の上下方向に延びる直線と第2筐体3の上下方向に延びる直線との角度(回動角度ということがある。)であり、この角度が0°のときに、第1筐体2と第2筐体3が互いに重なり合った閉成状態やスライド開成状態等の平行状態となる場合である。
【0022】
カム機構7は、シャフト62の先端部近傍の外周にその軸周りに取り付けられた第1カム71と、ケース61内にシャフト62の軸方向に移動可能に設けられ、第1カム71と面接触する第2カム72と、ケース61内に設けられ、第2カム72を第1カム71に付勢する付勢手段73と、第1カム71の接触面と第2カム72の接触面の少なくとも一方の面例えば第1カム71の接触面に設けられるカム凸部74と、第1カム71の接触面と第2カム72の接触面の少なくとも他方の面例えば第2カム72の接触面の他方に設けられ、カム凸部74と係合して第1筐体2と第2筐体3の位置を所定の位置にロック状態に保持するカム凹部75とで構成されていることが好ましい。
【0023】
第1カム71は、図4〜図6及び図9に示すように、円筒状に形成されている。第1カム71の周面の対向する2箇所には、シャフト62に取り付けるための取付孔71aが設けられている。第1カム71は、内部にスライド部材63の基部63aが挿嵌される寸法の径で形成されている。すなわち、シャフト62の先端部には、取付ピン65によってスライド部材63及び第1カム71が取り付けられる。第1カム71のケース61側の面(第1カム面ということがある。)には、例えば、カム凸部74が3つ設けられている。これらのカム凸部74は、120°間隔で第1カム71面に設けられている。これらのカム凸部74の形状は、特に限定されないが、先端部がR形状の略三角形状に突出して形成されている。これらカム凸部74間の第1カム面は、平面状に形成されていることが好ましい。
【0024】
第2カム72は、図4〜図6及び図10に示すように、ケース61内のカム摺動部61cに摺動可能に嵌合して収容されている。この第2カム72は、両側部が湾曲状に形成された略矩形状に形成され、この中央部には、シャフト62が貫通する貫通孔72aが設けられている。第2カム72の両側部には、ケース61と係合して第2カム72のシャフト62の軸周りの回転を防止する回転防止部72bが設けられており、第2カム72はシャフト62の軸方向に移動可能であるが、その軸周りに回転できないようになっている。
【0025】
第2カム72の第1カム71側の面(第2カム面ということがある。)には、カム凸部74と係合するカム凹部75が3つ設けられている。3つのカム凹部75は、第2カム面の周方向に120°間隔で第2カム面に設けられている。これらカム凹部75間の第2カム面は平面状に平面部72dとして形成されていることが好ましい。3つのカム凹部75は、例えば、回動角度が50°、170°、290°でカム凸部74と嵌合し得る形状に形成されていることが好ましい。これにより、閉成状態では回動角度が0°であり、このとき、カム凸部74が平面部72d上に位置されており、付勢手段73であるコンプレッションスプリング73aの付勢力によって第1カム71は第2カム72に対してその位置に停止すると共に、回動角度が0°から40°に第1筐体2に対して第2筐体3が回動する途中でカム凸部74がカム凹部75を形成する傾斜面72cに至るようになっている。また、第2カム72の残りの面(付勢面ということがある。)は、平面状に形成されていることが好ましい。この付勢面とケース61の底部との間には、付勢手段73が設けられている。
【0026】
付勢手段73は、例えば、コンプレッションスプリング73a等である。コンプレッションスプリング73aは、シャフト62の周面にその軸周りに設けられると共に、ケース61のスプリング収容部61bに収容される。コンプレッションスプリング73aの一端部は、第2カム72の付勢面に当接されていると共に、他端部はケース61の底部に当接され、第2カム72を第1カム71に押圧するように付勢するものである。これにより、第1カム71と第2カム72との間に作用する摩擦力がそれぞれ大きくなって第1筐体2と第2筐体3をその回動範囲の任意の位置で停止することができるようになっている。
【0027】
ガイド溝5は、図1及び図2に示すように、ガイド部材6と係合して第1筐体2と第2筐体3を互いに直線方向にスライド可能に支持すると共に第1筐体2と第2筐体3を互いに回動可能に支持するものである。ガイド溝5は、第2筐体3の両側部に直線状に延びると共に断面略凹状にそれぞれ形成されている。
【0028】
ガイド溝5は、スライド部材63のスライド部63bがガイド溝5内に嵌入されて係合し得る深さ及び幅で形成されていることが好ましい。これにより、第1筐体2と第2筐体3が互いに上下方向の直線方向に閉成状態と開成状態との間でスライドし得ると共に、第1筐体2と第2筐体3が互いに回動し得るようになっている。
【0029】
また、ガイド溝5には、スライド部材63の出没孔63dから突出するボールベアリング66が係合する球面状のボール係合部51が設けられていることが好ましい。このボール係合部51は、閉成状態のときと開成状態のときの2つの状態でボールベアリング66と係合するようにガイド溝5の2箇所に設けられていることが好ましい。また、ガイド溝5内には、ボールベアリング66が摺動するボール摺動部53が設けてもよい。ボール摺動部53は、ボール係合部51より深さが浅い例えば断面円形状に形成されていることが好ましい。ボール摺動部53は、例えば、ボール係合部51を連結すると共に、ボールベアリング66がスライド移動するときボールベアリング66と対向する直線上に形成されている。
【0030】
また、ガイド部材6及びガイド溝5を第1筐体2及び第2筐体3に第1筐体2及び第2筐体3の回動が規制されるように設けられていることが好ましい。すなわち、閉成状態において第1筐体2の上面と第2筐体3の下面とを近接させて第2筐体3が第1筐体2に接触して第1筐体2に対して第2筐体3が回動しないようにガイド部材6及びガイド溝5を配置するようにする。このとき、回動許容部11を第1筐体2及び第2筐体3のどちらか一方または両方に、例えば、第1筐体2に設けるようにする。
【0031】
回動許容部11は、第1筐体2及び第2筐体3を閉成状態から互いにスライドさせて開成状態になったとき、第1筐体2及び第2筐体3の回転を許容すると共に、第1筐体2に対する第2筐体3が所定の角度例えば回動角度が40°になったとき、その回転を停止するものである。回動許容部11は、例えば、第1筐体2の上面に凹状に形成されている。すなわち、第1筐体2及び第2筐体3が互いにスライドしてスライド開成状態になったとき、第2筐体3の端部が接する位置に凹状の回動許容部11を設けて、第2筐体3が回動し得るようにすることが好ましい。また、この回動許容部11は、第1筐体2に対して第2筐体3が回動角度40°になると、その回動が停止するようなストッパ部11aを有する、例えば、側面略三角形状に形成されていることが好ましい。これにより、第1筐体2及び第2筐体3が閉成状態から互いにスライドしてスライド開成状態になると、カム機構7の付勢力により第1筐体2に対して第2筐体3がシャフト62を軸に回転してその回動角度が40°になると回転が停止されるように構成されている。この回動角度が40°になった状態がフルオープン開成状態である。なお、図1中、符号15は第1筐体2に対する第2筐体3のスライドを容易にするためのガイド案内部材を示す。
【0032】
また、ダンパー機構8を用いて図1、図2及び図4〜図6に示すようにケース61に対するシャフト62の回動、すなわち、第1筐体2に対する第2筐体3の回動をダンパー効果を介して行うようにしてもよい。ダンパー機構8は、例えば、スライド部材63の基部63aの外周に装着されるOリング81と、スライド部材63の基部63aの軸周りに配置されると共に第1筐体2に取り付けられるダンパーケース82と、このダンパーケース82内に注入される粘性剤とからなることが好ましい。Oリング81は、摩擦係数が大きい材料例えば合成ゴム等で形成されているものが好ましい。このOリング81を例えば4つスライド部材63の基部63aの外周に設けることが好ましい。粘性剤は、粘性が高い材料が好ましく、例えば、グリース等であることが好ましい。
【0033】
次に本発明に係る携帯機器の作用を説明する。
【0034】
携帯機器1が使用されていない通常の状態では、第1筐体2と第2筐体3が互いに重なり合った閉成状態である。このとき、コンプレッションスプリング68の付勢力によって、ボールベアリング66がボール係合部51に係合しているので、スライドすることがない。また、第2筐体3は第1筐体2に接しているので、第1筐体2及び第2筐体3が互いに回動することがない。その結果、第1筐体2と第2筐体3が閉成状態に保持される。なお、この閉成状態をより確実に維持するために、ロック機構を設けるようにしてもよい。
【0035】
この携帯機器1を使用する場合には、例えば、第1筐体2に対して第2筐体3がスライドして開成状態になるように第2筐体3に力を作用させる。これにより、第1筐体2に対して第2筐体3がスライドしてスライド開成状態になると、第1筐体2に接した個所が第1筐体2の回動許容部11に至る。このとき、カム凸部74が平面部72d上に位置、すなわち、カム凸部74がカム凹部75内ではなく平面部72d上に乗り上げた状態に位置されているので、付勢手段73であるコンプレッションスプリング73aの付勢力によって第1筐体2に対して第2筐体3がスライド開成状態に停止される。このため、このスライド開成状態で携帯機器1を使用することができる。
【0036】
また、スライド開成状態から第1筐体2に対して第2筐体3を開く方向に力を作用させると、カム凸部74が平面部72d上を移動すると共に、第1筐体2に接した第2筐体3の個所が回動許容部11内に入り込むと共に、第1筐体2に対して第2筐体3がシャフト62を軸に回転する。そして、カム凸部74がカム凹部75を形成する傾斜面72cに至ると、コンプレッションスプリング73aの付勢力により第1筐体2に対して第2筐体3が開く方向に自動的に回動し、その回動角度が40°になると第1筐体2が回動許容部11のストッパ部11aに当接して第2筐体3の回転が停止される。すなわち、第1筐体2に対して第2筐体3が回転して回動角度が40°になると停止し、フルオープン開成状態になる。
【0037】
このとき、コンプレッションスプリング68の付勢力によって、ボールベアリング66がボール係合部51に係合しているので、スライドすることがない。また、カム凸部74がカム凹部75に完全に嵌合していないでカム凹部75を形成する傾斜面72cに接しているために、第1筐体2に対して第2筐体3は回動しようとするが、第2筐体3は第1筐体2の回動許容部11のストッパ部11aに当接しているので、第1筐体2及び第2筐体3が互いに回動することがないと共に、第1筐体2と第2筐体3がガタツクことがない。その結果、第1筐体2と第2筐体3がフルオープン開成状態に保持される。なお、このフルオープン開成状態をより確実に維持するために、ロック機構を設けるようにしてもよい。
【0038】
これにより、第1筐体2の上面に設けたキーボードが露出するので、キーボード操作が可能となり、携帯機器1を使用し得る状態になる。このとき、キーボードが設けられている第1筐体2の上面とディスプレイ31が設けられている第2筐体3の上面とが平行でなく傾斜した状態であるために、キーボードを操作する際には、ディスプレイ31が見やすい状態であるので、操作性が向上する。
【0039】
使用後、閉成状態に戻すには、カム機構7の付勢力に抗して回動角度が40°から0°になるように第2筐体3を第1筐体2に対して回動させる。回動後、第2筐体3を第1筐体2に対してスライド開成状態から閉成状態へとスライドさせる。これにより、コンプレッションスプリング68の付勢力によって、ボールベアリング66がボール係合部51に係合して閉成状態に保持される。すなわち、第1筐体2と第2筐体3が互いに重なり合った閉成状態となる。
【0040】
したがって、本発明に係る携帯機器1は、第2筐体3にガイド溝5を設けると共に第1筐体2にガイド部材6を設け、かつ、このガイド部材6がケース61とシャフト62とスライド部材63とカム機構7とを有するので、第2筐体3を第1筐体2に対してスライドさせることができると共に回動させることができる。その結果、第1筐体2に対する第2筐体3の位置を任意に設定することができるので、使い勝手がよく、ディスプレイ31を有効に利用することができる。
【0041】
また、第1筐体2と第2筐体3を互いにスライドさせる際に、第2筐体3を第1筐体2に対してスライドさせている途中でこのスライドを停止すると、その位置に第2筐体3を停止することができる。すなわち、第2筐体3を第1筐体2に対してスライドさせると、ボールベアリング66がガイド溝5内のボール摺動部53に摺動しつつコンプレッションスプリング68の付勢力によりボール摺動部53に押圧されている。このため、第2筐体3を停止すると、ボールベアリング66とボール摺動部53の接触による摩擦力によって第2筐体3はその位置に停止する。よって、第2筐体3を第1筐体2に対して所望の位置に停止させることができる。
【0042】
また、ダンパー機構8を用いることにより、ケース61に対するシャフト62の回動、すなわち、第1筐体2に対する第2筐体3の回動がダンパー効果を介して行われるために、第2筐体3の第1筐体2に対するスライド開成状態からフルオープン開成状態までの回動(いわゆるホップアップ)を緩やかにすなわちソフトに行うことができる。
【0043】
なお、本発明においてカム凹部75をカム凸部74と嵌合し得るように形成すると共にこれらカム凹部75間の第2カム面を平面部72dとして形成したが、カム凹部75の形状は、他の形状に形成してもよく、このカム凹部75の形状によって第1筐体2に対する第2筐体3の回動を制御することができる。例えば、カム凹部75の形成範囲を第2カム面の周方向の略120°で形成する、すなわち、第2カム面の略全域に3つのカム凹部を設けるようにしてもよい。このように構成すると、回動角度が0°のとき、カム凹部の傾斜面にカム凸部が接触して回動角度が50°になるように第1カムが回動付勢される。その結果、第1筐体に対して第2筐体を閉成状態からスライド開成状態にスライドさせると、カム機構により自動的に第1筐体に対して第2筐体がスライド開成状態からフルオープン開成状態に回動するので、操作性が一層向上する。
【0044】
また、ガイド部材6及びガイド溝5を第1筐体2及び第2筐体3の回動が規制されるように設けたが、ガイド部材及びガイド溝を第1筐体及び第2筐体の回動が常に行われるように設けてもよい。この場合、カム機構により回動角度が0°及び1つまたは2以上の角度で第1筐体2に対する第2筐体を保持するようにすなわち停止位置が1箇所または2箇所以上となるようにカム機構を構成することが好ましい。このように構成すれば、スライド開成状態でなくても第2筐体を第1筐体に対して回動させることができる。その結果、ディスプレイの位置や角度を任意に設定することができる。また、0°〜180°の回動角度の範囲で第1筐体及び第2筐体が回動するようにしてもよく、これにより、第2筐体を第1筐体に対して反転することができる。また、回動許容部11を1つ設けたが、2つ以上設けてスライドの中間位置でも第1筐体と第2筐体との回動を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように本発明に係る携帯機器は、一方の筐体にガイド溝を設けると共に他方の筐体にガイド溝にスライド係合するガイド部材を設け、かつ、ガイド部材が、他方の筐体に設けられたケースと、このケースに回動可能に設けられたシャフトと、このシャフトに取り付けられ、ガイド溝に回動することなくスライド係合するスライド部材と、ケースに対するシャフトの回動を制御するカム機構とを有するので、第2筐体を第1筐体に対してスライドさせることができると共に回動させることができることから、特に携帯端末機に用いるものとして好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1a】本発明に係る携帯機器の一例を示す図で、(a−1)は閉成状態を示す斜視図、(a−2)はスライド開成状態を示す斜視図、(a−3)はフルオープン開成状態を示す斜視図である。
【図1b】本発明に係る携帯機器の一例を示す図で、(b−1)は閉成状態を示す側面図、(b−2)はスライド開成状態を示す側面図、(b−3)はフルオープン開成状態を示す側面図である。
【図1c】本発明に係る携帯機器の一例を示す図で、(c−1)は閉成状態におけるガイド部材の一例を示す側面図、(c−2)はスライド開成状態におけるガイド部材の一例を示す側面図、(c−3)はフルオープン開成状態におけるガイド部材の一例を示す側面図である。
【図2】本発明に係る携帯機器のスライド開成状態を示す斜視図である。
【図3a】本発明に係る携帯機器の一例を示す破断図で、(a−1)はスライド途中の状態を示す側面図、(a−2)はスライド開成状態を示す側面図、(a−3)はフルオープン開成状態を示す側面図である。
【図3b】本発明に係る携帯機器の一例を示す破断図で、(b−1)はスライド途中の状態を示す斜視図、(b−2)はスライド開成状態を示す斜視図、(b−3)はフルオープン開成状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る携帯機器の要部の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明に係るガイド部材の一例を示す斜視図で、(a)及び(b)はダンパー機構を有するガイド部材の一例を示す図で、(c)はダンパー機構がない状態のガイド部材の一例を示す図で、(d)はダンパー機構及びカム機構がない状態のガイド部材の一例を示す図である。
【図6】本発明に係るガイド部材の一例を示す分解図である。
【図7】本発明に係るケースの一例を示す図、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は正面図である。
【図8】本発明に係るスライド部材の一例を示す図、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図9】本発明に係る第1カムの一例を示す図、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は側面図である。
【図10】本発明に係る第2カムの一例を示す図、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 携帯機器
2 第1筐体
3 第2筐体
4 開閉機構
5 ガイド溝
6 ガイド部材
7 カム機構
8 ダンパー機構
11 回動許容部
61 ケース
62 シャフト
63 スライド部材
71 第1カム
72 第2カム
73 付勢手段
74 カム凸部
75 カム凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体とからなり、開閉機構を用いて前記第1筐体の上面を前記第2筐体で覆う閉成状態と、前記第1筐体の上面を露出させる開成状態とを形成する携帯機器であって、
前記開閉機構が、前記第1筐体及び前記第2筐体のいずれか一方の筐体に設けられたガイド溝と、このガイド溝にスライド係合すると共に前記第1筐体及び前記第2筐体のいずれか他方の筐体に設けられたガイド部材とを備え、
前記ガイド部材が、前記他方の筐体に設けられたケースと、このケースに回動可能に設けられたシャフトと、このシャフトに取り付けられ、前記ガイド溝に回動することなくスライド係合するスライド部材と、前記ケースに対する前記シャフトの回動を制御するカム機構とを有し、
前記第1筐体及び前記第2筐体を互いにスライドさせると共に互いに前記シャフトを軸に回動させるように構成したことを特徴とする、携帯機器。
【請求項2】
前記カム機構が、前記シャフトに固定された第1カムと、前記シャフトの軸方向に移動可能で前記第1カムと面接触する第2カムと、前記第1カムの接触面及び前記第2カムの接触面の少なくとも一方に設けられるカム凸部と、前記第1カムの接触面及び前記第2カムの接触面の少なくとも他方に設けられ、前記カム凸部と係合して前記第1筐体に対する前記第2筐体の位置を所定の位置にロック状態に保持するカム凹部とを有することを特徴とする、請求項1に記載の携帯機器。
【請求項3】
前記カム機構が、前記閉成状態のとき、前記第1筐体及び前記第2筐体を互いに回転させて開く方向に付勢するカム凸部及びカム凹部を有し、
前記ガイド溝及び前記ガイド部材を前記一方の筐体及び前記他方の筐体に前記第1筐体及び前記第2筐体の回動を規制するように設け、前記第1筐体及び前記第2筐体の少なくとも一方に、前記第1筐体及び前記第2筐体を前記閉成状態から互いにスライドさせて開成状態になったとき、前記カム機構による前記第1筐体及び前記第2筐体の回転を許容すると共に、前記第1筐体に対する前記第2筐体が所定の角度になったとき、その第1筐体及び第2筐体の回転を停止する回動許容部を設けたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の携帯機器。
【請求項4】
前記ガイド部材が、さらに前記スライド部材に出没可能でかつ突出する方向に付勢され、前記ガイド溝に押圧される凸部材を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯機器。
【請求項5】
前記ケースに対する前記シャフトの回動をダンパー効果を介して行うダンパー機構を設けたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の携帯機器。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−148817(P2007−148817A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342708(P2005−342708)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000124085)加藤電機株式会社 (117)
【Fターム(参考)】