説明

携帯燃料用保温器

【課題】ビュッフェ形式で提供される料理を焦げ付きを生じることなく保温することが可能な携帯燃料用保温器を提供する。
【解決手段】携帯燃料2を収容する燃料受け11aの上部に、保温容器3を載置可能な五徳部11bが形成された本体11と、この本体11の五徳部11b上に着脱可能に設けられ、携帯燃料2と保温容器3との間に介在する熱伝導板12とからなり、この熱伝導板12は、当該熱伝導板2の中心の直径d1と携帯燃料2の直径d2との比d1/d2が1.3以上3.6以下になる範囲より外側が開口するように開口部10が設けられており、携帯燃料2によって加熱される熱伝導板12からの輻射熱と、携帯燃料2の炎で加熱されて開口部10から上昇する熱風とによって保温容器3を加熱保温するようになされた携帯燃料用保温器1である。熱伝導板12は、鉄、アルミ、ステンレス、グラファイト、銅から選ばれた一種または複数種からなる材質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビュッフェ形式で提供される大皿料理を保温する際に使用することができる携帯燃料用保温器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は 湯煎槽を必要とせず、主に調理済みの料理を適温かつ安全に、保温または加温できる大型の加熱保温器として、特許文献1の加熱保温器を提案している。
【0003】
この加熱保温器は、携帯燃料を収容する燃料受けの上方に熱伝導板を配設して構成されており、携帯燃料から受けた熱を熱伝導板全体に分散させることによって熱伝導板の均熱化を図り、この熱伝導板の上に乗せられた保温皿の料理を全体的に加熱保温できるようになされている。
【特許文献1】特許第3668874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ビュッフェ形式で提供される比較的量の多い料理を保温する場合、その量に見合った熱エネルギーが必要になる。
【0005】
しかし、上記従来の加熱保温器は、熱伝導板を加熱し、この熱伝導板を介して保温皿の料理を加熱保温するため、熱効率が良くない。そのため、固形燃料を大きくして火力を強くすることが考えられるが、単に固形燃料を大きくするだけでは不経済である。
【0006】
また、熱伝導板を用いずに直火で保温皿を保温することが考えられるが、この場合、局部的に温度が高くなり、焦げ付きが発生することが懸念される。特にとろみの多い(粘性が高い)料理や、水分が少ない料理は焦げ付きやすい。従ってできるだけ熱効率を高くして、かつ局部的に温度が高くなりすぎないことが求められる。
【0007】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、ビュッフェ形式で提供される料理を焦げ付きを生じることなく保温することが可能な携帯燃料用保温器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の携帯燃料用保温器は、携帯燃料を収容する燃料受けの上部に、保温容器を載置可能な五徳部が形成された本体と、この本体の五徳部上に着脱可能に設けられ、携帯燃料と保温容器との間に介在する熱伝導板とからなり、この熱伝導板は、当該熱伝導板の中心部の直径d 1と携帯燃料d2との比d1/d2が1.3以上3.6以下になる範囲より外側が開口するように開口部が設けられており、携帯燃料によって加熱される熱伝導板からの輻射熱と、携帯燃料の炎で加熱されて開口部から上昇する熱風とによって保温容器を加熱保温するようになされたものである。
【0009】
熱伝導板は、鉄、アルミ、ステンレス、グラファイト、銅から選ばれた一種または複数種からなる材質であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱伝導板の中心部の直径d 1と携帯燃料d2との比d1/d2が1.3以上3.6以下になる範囲より外側が開口するように開口部が設けられた熱伝導板を用いているので、保温容器の中央は、携帯燃料によって加熱される熱伝導板からの輻射熱で加熱し、保温容器の周囲は、携帯燃料の炎で加熱されて開口部から上昇する熱風によって加熱することができ、保温容器を局部的に加熱して焦がすことなく、均等に加熱保温するすることができる。
【0011】
また、保温容器の周囲からは、熱伝導板を介さずに、携帯燃料の炎で加熱されて開口部から上昇する熱風によって加熱することができるので、熱伝導板のみを使用する加熱保温の場合と比較して熱効率良く加熱保温することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0013】
図1ないし図4は本発明に係る携帯燃料用保温器(以下、単に保温器という。)1を示し、図3は同保温器1の本体11、図4は同保温器1の熱伝導板12を示している。
【0014】
すなわち、この保温器1は、携帯燃料2を収容する燃料受け11aの上部に、保温容器3を載置可能な五徳部11bが形成された本体11と、五徳部11bの上に着脱可能に設けられて携帯燃料2と保温容器3との間に介在する熱伝導板12とからなり、熱伝導板12に開口部10が設けられている。
【0015】
本体11は、携帯燃料2を載置することが可能な皿状に形成された燃料受け11aの周囲に、棒状の鋼材を溶接固定して五徳部11bを構成している。
【0016】
燃料受け11aは、その上に携帯燃料2を載置可能な皿状に形成されている。この燃料受け11aからは保温器1の取っ手13が溶接固定されている。
【0017】
五徳部11bは、燃料受け11aから放射状に拡径し、上方に屈曲加工した4本の鋼材上にリング状の鋼材を溶接固定して熱伝導板12および保温容器3を載置可能に構成されている。この五徳部11bの大きさは、保温容器3および熱伝導板12を載置することが可能な大きさに形成されている。
【0018】
熱伝導板12は、この保温器1で使用する携帯燃料2の直径d2の約5倍程度の直径Dを有する円板状に形成されている。この熱伝導板12は、鉄、アルミ、ステンレス、グラファイト、銅などによって形成されたものを用いることができる。この熱伝導板12は、中心部12aの直径d1が、携帯燃料2の直径d2の1.3倍〜3.6倍の範囲より外側が開口するように開口部10が設けられている。すなわち、熱伝導板12は、中心部12aと、外周縁部12bとの間が、4本の連結片12cで連結され、それ以外の中心部12aと外周縁部12bとの間が、90度の中心角で均等に設けられた4つの扇型状の開口部10となされている。
【0019】
なお、この開口部10は、中心部12aと外周縁部12bとの間を4本の連結片12cで連結しているので、90度の中心角で均等に設けられた4つの扇型状に形成されているが、この開口部10の形状としては、携帯燃料2の直径d2の1.3倍〜3.6倍の範囲より外側を開口させるものであれば、特にその形状は限定されるものではなく、例えば、2本の連結片12cによって180度の中心角で均等に設けられた2つの半円形扇型状に形成されたものであってもよいし、3本の連結片12cによって120度の中心角で均等に設けられた3つの扇型状に形成されたものであってもよいし、1本の連結片12cによって略C字形状に開口するように形成されたものであってもよい。
【0020】
この開口部10は、中心部12aの直径d1が、携帯燃料2の直径d2の1.3倍未満の範囲より外側から開口しているような場合、携帯燃料2の炎が、熱伝導板12の開口部10から保温容器3に直接回り込んでしまい、この携帯燃料2の炎によって保温容器3を直接加熱している場合とさほど変わりなくなってしまい、十分な均熱効果が得られないこととなってしまう。
【0021】
また、開口部10は、中心部12aの直径d1が、携帯燃料2の直径d2の3.6倍の範囲より外側から開口しているような場合、携帯燃料2の炎によって暖められた熱伝導板12からの伝熱加熱のみによって保温容器3を暖めることとなるので、熱のロスが大きくなって十分な保温効果が得られない。
【0022】
この熱伝導板12の厚みとしては、0.1mm〜10mmの範囲で適宜決められる。0.1mmのように薄い場合は、いわゆるアルミ箔のようなシート状のものが用いられる。この厚みは、保温器1に用いられる携帯燃料2の火力や、保温容器3に盛られる料理、保温容器3の材質などに応じて適宜決定される。例えば、薄い板、箔、紙等で構成された軽量の鍋による保温容器3の場合には、薄い熱伝導板12を用いる。また、鋳鉄等の鋳物製の鍋や大皿または陶磁器製の鍋や大皿などの保温容器3の場合には、厚みのある熱伝導板12を用いる。
【0023】
携帯燃料2としては、一般的に用いられている燃料であれば、固形燃料であっても液体燃料であっても使用することができる。携帯燃料2の直径d2としては、28〜50mmの範囲のものを用いることができる。また、携帯燃料2の直径d2が上記28〜50mm以外であっても、携帯燃料2の上面に設けた火力調整用の絞り(図示省略)によって、炎の直径を上記28〜50mmの範囲に調整するようにしたものであってもよい。
【0024】
保温容器3としては、一般的にビュッフェ形成で提供する際に用いられているものであれば、特にその形状、大きさ、材質などに限定されるものではなく、例えば、金属製、陶磁器製の各種鍋や大皿、ビュッフェ料理提供用に構成された専用の大型容器などを用いることができる。
【0025】
このようにして構成される保温器1は、図1に示すように、携帯燃料2の炎によって熱伝導板12の中心部12aが加熱されることとなり、この中心部12aからの伝熱加熱によって保温容器3を加熱することとなる。また、この携帯燃料2の炎によって加熱され、自然対流する熱風は、熱伝導板12の開口部10から上昇して保温容器3を加熱することとなる。
【0026】
したがって、保温容器3の中心から熱伝導板12の中心部12aの直径d1に相当する範囲は、熱伝導板12の伝熱加熱によって加熱され、保温容器3の中心から離れた位置は、熱伝導板12の開口部10からの熱風によって加熱されることとなり、保温容器3全体は、均等に保温されることとなる。
[実施例1、2、比較例1、2]
−お湯の保温実験−
図1 ないし図4に示す本発明に係る保温器1を使用して保温容器3に入れた80℃のお湯1kgの経時的温度変化を測定する実験を実施した。
【0027】
保温容器3としては、口径300mm、高さ100mmのステンレス製の鍋を使用した。また、携帯燃料2は、直径φ46mm、30gの固形燃料を使用した。
【0028】
熱伝導板12は、直径Dがφ175mm、厚さ1.5mmのステンレス製の円盤に、中心部12aの直径d1が60mm、100mmでその周囲に扇型の 4つの開口部10(開口部10の外径148mm)を設けたもの(実施例1、2)を用意した。熱伝導板12と携帯燃料2との間隙は、30mmであった。
【0029】
また、比較対象として、開口部10を設けない直径Dがφ175mmの熱伝導板を用いた場合(比較例1)と、熱伝導板を使用せず直火とした場合(比較例2)についても同様に実験してお湯の経時的温度変化を測定した。なお、水温の測定は保温容器3の中央部で実施した。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

表1の結果から、開口部10を有する熱伝導板12を使用した本願発明に係る実施例1、2の温度低下は、熱伝導板12に穴が無い比較例1より小さく、保温効果が高い、すなわち熱効率が高いことがわかる。特に、燃焼開始から5 分までの初期温度からの低下率は、比較例1(16%)に比べて実施例1(8%)、実施例2(10%)は小さく、顕著な差が見られる。これは、穴が無い比較例1の熱伝導板12が十分加熱されるまで時間がかかるためであると考えられる。
【0031】
なお、当該実験では比較例2の熱伝導板なし(直火)が直接鍋を加熱することになるので最も保温効果が高い結果になる。

−空鍋の温度測定実験−
上記お湯の保温実験で使用したお湯を空にして鍋だけとし、直径φ38mm、15gの固形燃料でこの空鍋を加熱した。鍋の中央部の位置(A)と、中央部から50mm離れた位置(B)とに熱伝対を設け、最高到達温度を測定した。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

表2の結果から、実施例1は(A)の位置より(B)の位置の温度が高くなっている。これは、炎の先端が鍋の周囲に回りこみ直接接触しており、周囲が高くなったものと考えられる。実施例2は炎が鍋に直接接触しておらず、比較例1の場合と同様に(A)(B)の位置の温度差は小さいが、開口部10を設けたぶん、比較例1よりも鍋に回り込む熱風が多く、相対的に比較例1よりも高い温度を測定した。なお、比較例2は(A)(B)ともに最も高い最大到達温度を示している。

−陶器製皿の保温実験−
上記空鍋の代わりとして、直径225mm、高さ25mm、重さ630gで糸底部の直径が140mmの白色陶器製皿を保温容器3として保温実験を行った。携帯燃料2としては、直径φ46mm、30gの固形燃料を使用した。結果を表3に示す。
【0033】
【表3】

表3の結果から、比較例2では、加熱から5分程度で陶器製皿が破壊したが、実施例1、2、比較例1では割れることはなかった。

−とろみのある食材の保温実験−
上記お湯の保温実験で使用したお湯の代わりに、保温開始温度が60℃で粘性の高い液状の食材を使用した以外は、同じ条件で以下の保温実験を行った。
【0034】
実験で使用した食材は、水0.1kgに市販の片栗粉0.05kgを混合した水溶き片栗粉を、75〜80℃のお湯0.85kgに溶かしてとろみをつけたものを調整して総量1kgとしたものを使用した。なお、保温は、当該食材が60℃になった時点で携帯燃料2に点火して開始した。携帯燃料2は、直径φ46mm、30gの固形燃料を使用した。そして携帯燃料2が約30分で燃え尽きた後に、保温容器3の内側底部の変化を評価した。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】

表4の結果から、実施例1では、保温中、食材が薄っすらと狐色に変色した部分があったものの黒い焦げ付きはなかったが、比較例2では鍋の中央部が激しく黒く焦げ付いた。実施例2、比較例1では焦げ付きは無かった。
【0036】
これらの実験結果を総合すると、開口部10を有する熱伝導板12を使用した本願発明に係る保温器1は、局部的に焦がしたりすることなく、熱効率良く保温することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ビュッフェ形式で提供される料理の保温に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る携帯燃料用保温器の使用状態を示す側面分解端面図である。
【図2】本発明に係る携帯燃料用保温器の使用状態を示す側端面図である。
【図3】(a)ないし(c)は、本発明に係る携帯燃料用保温器の本体を示す平面図、I-I 線断面図、II-II 線断面図である。
【図4】本発明に係る携帯燃料用保温器の熱伝導板を示す平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 携帯燃料用保温器
10 開口部
11 本体
12 熱伝導板
12a 中心部
2 携帯燃料
3 保温容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯燃料を収容する燃料受けの上部に、保温容器を載置可能な五徳部が形成された本体と、
この本体の五徳部上に着脱可能に設けられ、携帯燃料と保温容器との間に介在する熱伝導板とからなり、
この熱伝導板は、当該熱伝導板の中心部の直径d 1と携帯燃料d2との比d1/d2が1.3以上3.6以下になる範囲より外側が開口するように開口部が設けられており、携帯燃料によって加熱される熱伝導板からの輻射熱と、携帯燃料の炎で加熱されて開口部から上昇する熱風とによって保温容器を加熱保温するようになされたことを特徴とする携帯燃料用保温器。
【請求項2】
熱伝導板が、鉄、アルミ、ステンレス、グラファイト、銅から選ばれた一種または複数種からなる材質である請求項1記載の携帯燃料用保温器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−56101(P2009−56101A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225778(P2007−225778)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000190736)株式会社ニイタカ (33)
【Fターム(参考)】