説明

携帯用電子機器の機能制限システム及び携帯用電子機器

【課題】機能制限エリアにおいて悪意による制限解除による携帯用電子機器の不当使用を
減らして、健全な携帯用電子機器の使用環境を構築することができる携帯用電子機器及び
その機能制限システムを提供すること。
【解決手段】施設に設置される施設側制御装置3は制限する機能に応じた機能制限信号7
を出力し、携帯用電子機器5は、受信した機能制限信号7に基づいて、自機の該当する動
作機能を制限する制御部と、機能制限信号7による制限を強制解除可能な機能制御カスタ
ム部44と、機能制限信号7や機能制御カスタム部44によって実施した自機の機能制限
の履歴を書き換え不可に記録する履歴記録部46とを備える。さらに、制御部の位置情報取得部によって取得された位置情報を、機能制御信号または位置情報信号に含まれる時刻情報と対にして、前記機能制限の履歴と共に履歴記憶部に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設に設置された施設側制御装置の発生する機能制御信号によって、その施
設に持ち込まれる無線通信機能付きの携帯用電子機器の動作機能を制限する携帯用電子機
器の機能制限システムと、当該機能制限システムに使用して好適な携帯用電子機器に関す
る。
【背景技術】
【0002】
携帯用電子機器である携帯電話やPHS等の携帯用通信端末は、電波が中継器(基地局
)に届く範囲内であれば、どこででも通話が可能なため、非常に便利である。
【0003】
その反面、電車内のような公共の場所で不用意に使用すると、他人に迷惑をかける。ま
た、航空機、研究所、病院のような公共の場所では、携帯用通信端末の発信する電波が、
その場所に設置されている測定機器、制御機器、ペースメーカのような電子機器の異常動
作を招くおそれがある。
【0004】
そこで、携帯用通信端末による通話が他人の迷惑となったり、あるいは、電話機の発信
する電波が周囲の電子機器に異常動作を招くような不都合な事態の発生を確実に防止する
ために、施設に設置された施設側制御装置の発生する機能制御信号によって、その施設に
持ち込まれる携帯用通信端末の電源を所定時間オフにする機能制限システムが提案されて
いる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような機能制限システムを採用すれば、マナー違反等による不正使用による不都合
の発生を確実に防止することができる。
【0006】
しかし、近年の携帯用通信端末では、無線電話としての機能に加えて、カメラとしての
撮影機能や、インターネット接続によるWeb閲覧機能や、パーソナルコンピュータ等で
使用される表計算ソフト等に互換のアプリケーションソフトを動作させるアプリ機能、プ
リペイドカードとして利用可能な決算機能など、多種の機能が追加された多機能化モデル
が各社から開発されている。
【0007】
このような多機能化モデルでは、上記特許文献1に記載のように電源を強制的にオフに
する画一的な規制を実施すると、使用しても他人への迷惑とならない例えばアプリ機能な
ども、使用できなくなってしまい、過剰規制になってしまう。
【0008】
そこで、施設に設置された施設側制御装置の発生する機能制御信号によって、その施設
に持ち込まれる携帯用通信端末等に対して、電源をオフにはせず、規制が必要となる機能
のみを所定時間作動不能となる制限を実施すると共に、合理的理由がある場合には、その
携帯用通信端末等の使用者の意識的な操作で、制限を強制解除できるようにした機能制限
システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
この特許文献2に記載の機能制限システムのように、電源自体をオフにするのではなく
、規制が必要となる機能だけを制限する構成で規制に関与しない機能(例えば、携帯用通
信端末等に装備されているアプリ機能など)は、作動させることができ、その端末を制限
内で有用に活用することができる。
【0010】
更に、撮影機能を搭載する携帯用通信端末の場合は、公共施設等で撮影機能を制限する
場合も少なく無い。しかし、撮影機能の制限は、通常、周囲の器物や他人の撮影を対象と
しており、携帯用通信端末の使用者自身のみの撮影に用いる場合は規制対象とならないこ
とが多く、早急に使用者自身の映像を通信したいような緊急事態が発生した場合には、特
許文献2に記載された制限解除機能があれば、このような緊急事態にも対応可能となる。
【特許文献1】特開2003−110694号公報
【特許文献2】特開2004−260796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記特許文献2に記載のように、携帯用通信端末等に制限解除機能を装備し
た構成にすると、悪意で制限解除をして、不当に盗撮を行ったり、不当な通話が行われる
可能性があり、従来のシステムでは、そのような不当な制限解除の発生を簡単に実証でき
ないため、悪意による制限解除による不当使用を減らすことが難しいという問題があった

【0012】
また、従来のシステムでは、施設側制御装置の発生する機能制御信号によって制限され
ている機能を、携帯用通信端末等の端末で随時確認可能にする技術の記載がなく、その結
果、例えば、制限中であることを知らずに、制限中の機能を作動させようと試みて、装置
の故障と誤解したり、あるいは、制限が解除されているのに、制限中であると誤認してい
て、使用可能な機能を円滑に活用できなくなる虞があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、機能制限地域下における悪意
による制限解除による携帯用電子機器の不当使用を減らして、健全な携帯用電子機器の使
用環境の構築を促進することができ、更には、制限中の機能や制限が解除された機能を簡
単に確認できて、携帯用電子機器に搭載されている非制限の諸機能をより有効に活用する
ことができる携帯用電子機器及びその機能制限システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明に係る携帯用電子機器の機能制限システムは、施設
に設置された施設側制御装置の発生する機能制御信号によって、その施設に持ち込まれる
無線通信機能付きの携帯用電子機器の動作機能を制限する携帯用電子機器の機能制限シス
テムであって、前記施設側制御装置は制限する機能に応じた機能制限信号を出力し、前記
携帯用電子機器は、受信した前記機能制限信号に基づいて、自機の該当する動作機能を制
限する制御部と、前記機能制限信号による制限を強制解除可能な機能制御カスタム部と、
前記機能制限信号や機能制御カスタム部によって実施した自機の機能制限の履歴を書き換
え不可に記録する履歴記録部と、を備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0015】
上記構成によれば、施設側制御装置の出力する機能制限信号は、携帯用電子機器の電源
をON,OFFするための信号ではなく、制限する機能に応じた信号で、携帯用電子機器
側の該当する動作機能のみの制限が可能であるため、使用しても他人の迷惑にならない機
能については、機能制限信号による機能制限地域内でも、有効に活用することができる。
【0016】
また、他人への迷惑や、周囲の電子機器への悪影響のために規制が必要な機能は、携帯
用電子機器の使用者が特別な操作をせずとも、機能制限信号に対する携帯用電子機器側の
自動応答で機能が自動的に制限される。従って、携帯用電子機器の使用者に操作上で負担
をかけることなく、機能制限地域に対応した健全な携帯用電子機器の使用環境を構築する
ことができる。
【0017】
また、機能制限信号によって制限されている機能も、合理的理由がある場合には、各携
帯用通信端末等の使用者が機能制御カスタム部により解除操作をすることで制限を強制解
除できるため、機能制限信号による機能制限により、緊急時等における携帯用電子機器の
利便性が損なわれることもない。
【0018】
そして、上記構成では、機能制限信号によって制限された機能や、使用者が機能制御カ
スタム部の操作により制限を解除した機能は、いずれも、履歴記録部に記録されるため、
もしも、使用者が合理的な理由もなく機能制御カスタム部の操作によって制限を解除した
機能を不当に使用した場合には、その携帯用電子機器の履歴記録部の機能制限履歴を確認
することで、そのような不当な制限解除の発生を容易に実証でき、不当使用に対する証拠
に利用できる。また、他人から、制限解除による不当使用があったと誤解された場合には
、機能制限履歴を見せることで、誤解を解消することもできる。従って、携帯用電子機器
の使用者における不当な制限解除を抑止して、機能制限地域下における悪意による制限解
除による携帯用電子機器の不当使用を減らして、健全な携帯用電子機器の使用環境の構築
を促進することができる。
【0019】
また、携帯用電子機器の位置情報信号を取得する位置情報取得部をさらに備え、
前記履歴記録部は、前記位置情報取得部によって取得された位置情報を、前記機能制限の履歴と時刻情報と共に履歴記憶部に記録することで、携帯用電子機器に記録された情報の信頼性をより担保することが可能となる。
【0020】
位置情報信号としては、受信される信号の種類によって異なる。例えば、GPS衛星からの信号では、複数の衛星のIDや時刻、伝播遅延情報から携帯用電子機器の位置を算出したものとなる。公衆無線基地局からの信号や無線LANからの信号では、それぞれのIDと信号強度を位置情報と扱っても良い。さらには施設側制御装置等の近距離通信信号に含まれる装置固有IDであってもよい。またそれぞれの装置に設定された時刻情報が含まれていることが好ましい。
【0021】
なぜなら、携帯用電子機器の時計の時刻はユーザが自由に設定変更できる、携帯用電子機器に記録された情報の信頼性を担保するには不十分であるからである。(請求項2)
また、前記機能制限信号は、制限する動作機能の組み合わせに応じて設定された制限モ
ード信号であり、前記携帯用電子機器の制御部は、各種の制限モード毎に制限する動作機
能を規定した機能制限テーブルを保有し、機能制限信号に指定された制限モードに基づい
て、該当する動作機能を制限する構成とすることを特徴とする(請求項3)。
【0022】
このような構成にすると、例えば、施設側制御装置は出力する機能制限信号は、制限す
べき動作機能が多数に及ぶ場合でも、制限する機能数に関係なく単純な構成の信号にする
ことができ、その結果、機能制限信号を出力する施設側制御装置の構成の単純化や、小型
化、低コスト化を図ることが可能になる。
【0023】
そして、施設側制御装置の小型化により、施設側制御装置を設置する場所の確保が容易
になり、例えば、電車やバス等における吊り輪や、車両の座席の一部、駅の改札装置の一
部などに施設側制御装置を埋設装備するなどして、システムの普及を図ることが容易にな
る。
【0024】
また、本発明に係る携帯用電子機器は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯用電子機器の機能制限システムに使用可能な携帯用電子機器であって、動作制限されている機能を表示する表示部を備えていることを特徴とする(請求項4)。
【0025】
上記構成によれば、制限中の機能や制限が解除された機能は、表示部により簡単に確認
できる。そして、制限中の機能を表示部により確認することで、例えば、制限中であるこ
とを知らずに、制限中の機能を作動させようと試みて、装置の故障と誤解するといった不
都合な事態の発生を防止できる。また、制限が解除されているのに、制限中であると誤認
していて使用可能な機能を円滑に活用できなくなるといった不都合の発生も防止できる。
【0026】
従って、携帯用電子機器に搭載されている非制限の諸機能をより有効に活用することがで
きる。
【0027】
また、前記履歴記録部に記録されている機能制限の履歴を前記表示部に表示可能である
ことを特徴とする(請求項5)。
【0028】
このような構成にすると、機能制限の履歴の確認が簡単にできる。
【0029】
また、前記施設側制御装置が発生する前記機能制限信号によらずに、自機上での入力設
定により任意の動作機能を制限状態にするカスタム制限モードを備えていることを特徴と
する(請求項6)。
【0030】
このような構成にすると、施設側制御装置が未設置の場所でも、携帯用電子機器の一部
の機能の制限が必要と考えられる場合には、使用者の意思で、適時カスタム制限モードを
選択することで、携帯用電子機器を他人等に迷惑がかからない運用状態に維持できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る携帯用電子機器及びその機能制限システムでは、施設側制御装置の出力す
る機能制限信号は、携帯用電子機器の電源をON,OFFするための信号ではなく、制限
する機能に応じた信号で、携帯用電子機器側の該当する動作機能のみの制限が可能である
ため、使用しても他人の迷惑にならない機能については、機能制限信号による機能制限地
域内でも、有効に活用することができる。
【0032】
また、他人への迷惑や、周囲の電子機器への悪影響のために規制が必要な機能は、携帯
用電子機器の使用者が特別な操作をせずとも、機能制限信号に対する携帯用電子機器側の
自動応答で機能が自動的に制限される。従って、携帯用電子機器の使用者に操作上で負担
をかけることなく、機能制限地域に対応した健全な携帯用電子機器の使用環境を構築する
ことができる。
【0033】
また、機能制限信号によって制限されている機能も、合理的理由がある場合には、各携
帯用通信端末等の使用者が機能制御カスタム部により解除操作をすることで制限を強制解
除できるため、機能制限信号による機能制限により、緊急時等における携帯用電子機器の
利便性が損なわれることもない。
【0034】
そして、上記構成では、機能制限信号によって制限された機能や、使用者が機能制御カ
スタム部の操作により制限を解除した機能は、いずれも、履歴記録部に記録されるため、
もしも、使用者が合理的な理由もなく機能制御カスタム部の操作によって制限を解除した
機能を不当に使用した場合には、その携帯用電子機器の履歴記録部の機能制限履歴を確認
することで、そのような不当な制限解除の発生を容易に実証でき、不当使用に対する証拠
に利用できる。
【0035】
また、他人から、制限解除による不当使用があったと誤解された場合には
、機能制限履歴を見せることで、誤解を解消することもできる。従って、携帯用電子機器
の使用者における不当な制限解除を抑止して、機能制限地域下における悪意による制限解
除による携帯用電子機器の不当使用を減らして、健全な携帯用電子機器の使用環境の構築
を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る携帯用電子機器及びその機能制限システムの好適な実施の形態につ
いて、図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
図1は本発明に係る実施の形態の携帯用電子機器の機能制限システムの概略構成図、図
2は図1に示した機能制限システムにおける施設側制御装置及び携帯用電子機器の構成を
示すブロック図、図3は図1に示した機能制限システムにおいて使用する各種の制限モー
ド毎に制限する機能を示した機能制限テーブルの一例の説明図、図4は図2に示した携帯
用電子機器の制限表示機能により、制限されている機能、非制限中の機能を表示した状態
の説明図、図5は図2に示した携帯用電子機器において、履歴記録部に記録された機能制
限履歴の説明図である。
【0038】
図1に示した携帯用電子機器の機能制限システム1は、多数の人が利用をする施設に設
置される施設側制御装置3と、無線通信機能付きの携帯用電子機器5とで構成される。
【0039】
ここに、上記の多数の人が利用をする施設としては、電車やバスや飛行機等の公共的な
乗り物、これらの乗り物が出入りする駅構内や空港施設、病院や映画館、美術館などの施
設などが該当する。
【0040】
施設側制御装置3は、携帯用電子機器5が施設内で使用された時に、携帯用電子機器5
の動作機能が施設内にいる他の人々に迷惑をかけることがないように、また、携帯用電子
機器5の動作機能が施設内の電子設備の動作等に悪影響を及ぼすことが無いように、携帯
用電子機器5の動作機能を制限するための機能制限信号7を出力する。
【0041】
機能制限信号7は、携帯用電子機器5の動作機能を制限するための制限機能指定信号の
他に、制限時間を指定する信号を付加した構成としたり、あるいは、機能制限信号7が届
かない範囲に携帯用電子機器5が移動すると制限が解除される構成とすることが考えられ
る。更に、施設側制御装置3は、施設内に持ち込まれる携帯用電子機器5と、施設外に持
ち出される携帯用電子機器5とを判別可能にしておいて、施設外に持ち出される携帯用電
子機器5に対しては、制限解除信号を送信する構成とすることも考えられる。
【0042】
施設側制御装置3の出力は、機能制限信号7の到達距離が数10cm〜数10メートル
の比較的近距離となるように設定されている。これにより、機能制限信号7の出力回路を
小型化して、施設側制御装置3の設置を容易にすることができる。
【0043】
図1において、施設側制御装置3の周囲を囲う領域9の内部が、機能制限信号7の到達
するエリアで、領域9の外部に位置している携帯用電子機器5に対しては、機能制限信号
7の効力は働かない。
【0044】
携帯用電子機器5は、本実施の形態の場合は、無線電話としての機能に加えて、カメラ
としての撮影機能や、インターネット接続によるWeb閲覧機能やメールの送受信機能、
パーソナルコンピュータ等で使用される表計算ソフト等に互換のアプリケーションソフト
を動作させるアプリ機能などを備えた多機能型の携帯用通信端末である。
【0045】
本実施の形態の携帯用電子機器の機能制限システム1は、施設に設置された施設側制御
装置3の発生する機能制限信号7によって、その施設に持ち込まれる無線通信機能付きの
携帯用電子機器5の動作機能を制限する。
【0046】
施設側制御装置3は、図2に示すように、制限する機能項目等を入力するための入力操
作部11と、入力操作部11の入力に従って制限する機能の組み合わせに応じた機能制限
信号7を生成する動作制限信号管理部12と、この動作制限信号管理部12が生成した機
能制限信号7を出力する無線通信部13と、入力操作部11による入力内容や動作制限信
号管理部12の動作状況を表示する表示部14とを備えていて、制限する機能の組み合わ
せに応じた機能制限信号7を出力する。
【0047】
例えば、施設側制御装置3が設置されている場所が電車である場合、図3に示す機能制
限テーブル20において、制限モード21の電車の欄21cにおける制限項目に対応する
機能制限信号7を出力する。
【0048】
機能制限テーブル21は、制限モード21の欄に、施設側制御装置3が設置される施設
毎に分別した複数の制限モードの欄21a〜21iが用意されていて、施設毎に、制限す
る機能の組み合わせによる制限モードを設定できるようになっている。
【0049】
それぞれの制限モードの欄21a〜21iでは、携帯用電子機器5に搭載された各種機
能22a〜22jの内、○印のフラグ23が立てられている機能項目以外が、制限する機
能項目となる。
【0050】
例えば、制限モード21の電車の欄21cでは、電車内での使用では他人の迷惑になる
と考えられる着信鳴動機能22b、バイブ機能22c、通話機能22d、写真撮影用のフ
ラッシュストロボ機能22g、カメラ撮影機能22h、アプリケーションを動作させるア
プリ機能22iなどを制限される機能項目となっている。従って、電車内での機能制限下
では、電波の発信機能22jが利用でき、メールの送受信機能22eやWebの閲覧機能
22fなどに、利用が限定されることになる。
【0051】
本実施の形態の場合、施設側制御装置3が出力する機能制限信号7は、制限する動作機
能の組み合わせに応じて設定された制限モード信号として出力される。この制限モード信
号は、機能制限テーブル20において制限モード21に設定されている各制限モードの欄
の一つを選択する信号であれば良く、各制限機能を直接示唆する信号とする必要はない。
【0052】
携帯用通信端末である携帯用電子機器5は、図2に示すように、動作を入力指示するた
め入力操作部31と、複数の動作機能ユニット32a〜32jと、図3に示した機能制限
テーブル20の情報や電話帳の情報、更には動作制御に必要な各種の情報を格納したメモ
リ33と、各動作機能ユニット32a〜32jの動作状況や入力操作部31による入力状
況を表示するための表示部34と、外部との情報の送受を行う無線通信部35と、これら
の各部を制御するための制御部36と、各部への給電を行う電源37とを備えている。
【0053】
入力操作部31は、複数の押下式又はダイヤル式のスイッチ等で構成されるもので、図
1に示すように、筐体の表面に設けられている。
【0054】
また、表示部34は、所謂液晶表示装置で、図1に示すように、入力操作部31と並ん
で筐体の表面に設けられている。
【0055】
携帯用電子機器5に装備されている各動作機能ユニット32a〜32jは、図3に示し
た機能制限テーブル20の機能項目に対応したもので、具体的には次のような機能を果た
す。
【0056】
主電源ON,OFF機能ユニット32aは、制御部36からの制御信号に基づいて、電
源37の出力をON,OFFするユニットである。
【0057】
着信鳴動機能ユニット32bは、電話やメールの着信時に、筐体内に装備されているス
ピーカを駆動して、メロディ音やブザー音により着信が有ったことを知らせる機能である

【0058】
バイブ機能ユニット32cは、電話やメールの着信時に、筐体内に装備されている振動
装置を駆動して、筐体から発せられる振動により、着信が有ったことを知らせる機能であ
る。
【0059】
通話機能ユニット32dは、電話通話時に、筐体に装備したマイクロホンへの入力音を
所定の電気信号に変換して無線通信部35に送出したり、通話先からの音声信号を筐体内
に装備されているスピーカから再生する機能である。
【0060】
メール機能ユニット32eは、無線通信部35を介してインターネット上のメールサー
バにアクセスしてメールを送受信したり、携帯用電子機器5相互間で直接メールを送受信
する機能である。
【0061】
Web閲覧機能ユニット32fは、無線通信部35を介してインターネットのWebサ
ーバに接続して、Webの閲覧をする機能である。
【0062】
フラッシュストロボ機能ユニット32gは、写真撮影時に、発光して、撮影対象を所定
の明るさに設定する機能である。
【0063】
撮影機能ユニット32hは、静止画又は動画を撮影するカメラユニットとしての機能で
ある。
【0064】
アプリケーション機能ユニット32iは、スケジューラや、表計算などのアプリケーシ
ョンソフトを動作させる機能である。
【0065】
無線送信機能ユニット32jは、電話通話やメール送信、Web閲覧等の際に、所定の
信号電波を出力する機能で、無線通信部35に装備されている。
【0066】
無線通信部35には無線送信機能ユニット32jと電波受信機能とが装備されていて、
電波受信機能により受信された信号は、制御部36で解読されて、処理される。
【0067】
携帯用電子機器5の制御部36には、無線通信部35が受信した機能制限信号7を解読
して、機能制限信号7に含まれる制限モードや制限時間等を検知する動作制限信号解読部
41と、この動作制限信号解読部41の検知した制限時間を計時して制限時間が過ぎた時
に制限解除信号を出力する動作時間制御部42と、動作制限信号解読部41の解読信号に
基づいて自機の該当する動作機能を制限する機能制御部43と、機能制限信号7による制
限を強制解除可能な機能制御カスタム部44と、が備えられている。
【0068】
また、メモリ33内には、機能制限信号7や機能制御カスタム部44によって実施した
自機の機能制限の履歴を書き換え不可に記録する履歴記録部46が備えられている。
【0069】
動作制限信号解読部41は、予め取り決めした複数種の制御モード信号(制御モード種
別)と、各生後モード信号に割り当てた制御すべき機能の組み合わせとを図3に示した機
能制限テーブル20の形態で保有しており、無線通信部35が受信した機能制限信号7か
ら制御モード種別を判別したら、機能制限テーブル20と照合することで、制御すべき機
能を確定して、動作時間制御部42を介して機能制御部43に送出する。
【0070】
動作時間制御部42は、動作制限信号解読部41から通知された制御すべき機能を機能
制御部43に通知すると同時に、機能制限信号7に含まれていた制御時間信号に基づいて
制御開始後の経過時間の計時を行い、経過時間が過ぎると、制限の解除信号を機能制御部
43に送出する。
【0071】
機能制御カスタム部44は、入力操作部31からの制限解除操作を実施することにより
、機能制御部43に制限解除信号を入力して、機能制限信号7による制限を解除する。例
えば、電車内での使用に際して、当初、アプリ機能ユニット32iは機能制限信号7によ
り制限されているが、他人への迷惑とならない場合は、機能制御カスタム部44により解
除処理を実施することで、使用可能になる。
【0072】
また、本実施の形態の携帯用電子機器5の場合、施設側制御装置3が発生する前記機能
制限信号7によらずに、自機上での入力設定により任意の動作機能を制限状態にするカス
タム制限モードを備えている。
【0073】
このカスタム制限モードは、入力操作部31からの入力設定で、図3の機能制限テーブ
ル20の制限モードの欄21g〜21iに示したように、使用者の設定による制限モード
を追加設定するもので、カスタム制限モードで設定した制限は、機能制御カスタム部44
を介して機能制御部43に通知され、作動する。
【0074】
図6は本発明の実施の形態に係る携帯用電子機器の機能制限システムの第2の概略構成図であって、図2の携帯用電子機器5の制御部36において、位置情報取得部37をさらに備えて位置情報と時刻情報と機能制限の履歴とを関連づけて履歴記憶部に記録する機能制限スシテムの構成例である。
【0075】
位置情報信号8としては、受信される信号の種類によって異なる。例えば、GPS衛星60からの信号では、複数の衛星のIDや位置、伝播遅延情報から携帯用電子機器5の位置を算出したものとなる。公衆無線基地局50からの信号や無線LAN70からの信号では、それぞれのIDと信号強度を位置情報と扱っても良い。さらには施設側制御装置3の近距離通信信号に含まれる装置固有IDであってもよい。またそれぞれの装置に設定された時刻情報が含まれていることが好ましい。
【0076】
図3において、制限モードの欄21gに示した制限モードは、使用者が自社の会議室用
に設定したもので、施設側制御装置3が設置されていない施設等で、使用者のマナー等か
ら機能の制限を行う場合に、有効である。
【0077】
機能制御部43は、動作時間制御部42及び機能制御カスタム部44からの指示に基づ
いて、制限がかかる機能については作動を停止する。また、動作時間制御部42及び機能
制御部43からの解除信号を受けると、それに基づいて制限を解除して、制限されていた
機能を利用可能にする。
【0078】
また、本実施の形態の携帯用電子機器5の場合、動作時間制御部42又は機能制御カス
タム部44からの指示により動作制限される機能は、機能制限テーブル20に準じた形態
で、表示部34に表示することができる。
【0079】
即ち、通信状態等を表示する表示部34が、動作制限されている機能を表示する表示部
として機能する。
【0080】
図4は、病院等に設置された施設側制御装置3からの機能制限信号7によって動作制御
されている機能を、表示部34に表示した状態を示している。この表示部34への表示に
より、病院内では、撮影機能ユニット32hによるカメラ撮影以外の全ての機能が制限さ
れていることが、簡単に確認できる。
【0081】
更に本実施の形態の携帯用電子機器5では、履歴記録部46に記録されている機能制限
の履歴を表示部34に表示可能である。
【0082】
図5は、履歴記録部46に記録されている機能制限を表示部34に表示させた状態を示
している。
【0083】
履歴記録部46は、少なくとも1週間以内に受けた制限履歴及び制限解除履歴を保存で
きる容量を持っていることが望ましいが、できれば、より長期に亘って制限履歴及び制限
解除履歴を保存する容量を確保することが望ましい。
【0084】
以上に説明した機能制限システム1によれば、施設側制御装置3の出力する機能制限信
号7は、携帯用電子機器5の電源をON,OFFするための信号ではなく、制限する機能
に応じた信号で、携帯用電子機器5側の該当する動作機能のみの制限が可能であるため、
使用しても他人の迷惑にならない機能については、機能制限信号7による機能制限地域内
でも、有効に活用することができる。
【0085】
また、他人への迷惑や、周囲の電子機器への悪影響のために規制が必要な機能は、携帯
用電子機器5の使用者が特別な操作をせずとも、機能制限信号7に対する携帯用電子機器
5側の自動応答で機能が自動的に制限される。従って、携帯用電子機器5の使用者に操作
上で負担をかけることなく、機能制限地域に対応した健全な携帯用電子機器5の使用環境
を構築することができる。
【0086】
また、機能制限信号7によって制限されている機能も、合理的理由がある場合には、各
携帯用電子機器5の使用者が機能制御カスタム部44により解除操作をすることで制限を
強制解除できるため、機能制限信号7による機能制限により、緊急時等における携帯用電
子機器5の利便性が損なわれることもない。
【0087】
そして、上記実施の形態の機能制限システム1では、機能制限信号7によって制限され
た機能や、使用者が機能制御カスタム部44の操作により制限を解除した機能は、いずれ
も、履歴記録部46に記録されるため、もしも、使用者が合理的な理由もなく機能制御カ
スタム部44の操作によって制限を解除した機能を不当に使用した場合(例えば、機能制
限信号7によりカメラ撮影が制限される電車内等で、撮影機能ユニット32hに対する制
限を強制解除して、盗撮等を行った場合)には、その携帯用電子機器5の履歴記録部46
の機能制限履歴を確認することで、そのような不当な制限解除の発生を容易に実証でき、
不当使用に対する証拠に利用できる。また、逆に他人から、制限解除による不当使用があ
ったと誤解された場合には、機能制限履歴を見せることで、誤解を解消することもできる
。従って、携帯用電子機器5の使用者における不当な制限解除を抑止して、機能制限地域
下における悪意による制限解除による携帯用電子機器5の不当使用を減らして、健全な携
帯用電子機器5の使用環境の構築を促進することができる。
【0088】
更に、本実施の形態の機能制限システム1の場合、機能制限信号7は、制限する動作機
能の組み合わせに応じて設定された制限モード信号である。
【0089】
また、携帯用電子機器5の制御部36は、各種の制限モード毎に制限する動作機能を規
定した機能制限テーブルを保有し、機能制限信号7に指定された制限モードに基づいて、
該当する動作機能を制限する。
【0090】
このような構成では、例えば、施設側制御装置3は出力する機能制限信号7が、制限す
べき動作機能が多数に及ぶ場合でも、制限する機能数に関係なく単純な構成の信号にする
ことができ、その結果、機能制限信号7を出力する施設側制御装置3の構成の単純化や、
小型化、低コスト化を図ることが可能になる。
【0091】
そして、施設側制御装置3の小型化により、施設側制御装置3を設置する場所の確保が
容易になり、例えば、電車やバス等における吊り輪や、車両の座席の一部、駅の改札装置
の一部などの微少なスペースに施設側制御装置3を埋設装備するなどして、システムの普
及を図ることが容易になる。
【0092】
なお、施設側制御装置3の設置箇所としては、上記の他に、施設の出入り口となるドア
の一部、商店(売店)の勘定台の周辺、施設の通路の路面や壁なども対象にすることができ
る。
【0093】
また、上記実施の形態の携帯用電子機器5は、動作制限されている機能を表示する表示
部34を備えているため、制限中の機能や制限が解除された機能は、表示部34により簡
単に確認できる。そして、制限中の機能を表示部34により確認することで、例えば、制
限中であることを知らずに、制限中の機能を作動させようと試みて、装置の故障と誤解す
るといった不都合な事態の発生を防止できる。また、制限が解除されているのに、制限中
であると誤認していて使用可能な機能を円滑に活用できなくなるといった不都合の発生も
防止できる。従って、携帯用電子機器5に搭載されている非制限の諸機能をより有効に活
用することができる。
【0094】
また、上記実施の形態の携帯用電子機器5は、履歴記録部46に記録されている機能制
限の履歴を表示部34に表示可能であるため、機能制限の履歴の確認が簡単にできる。
【0095】
更に、上記実施の形態の携帯用電子機器5は、施設側制御装置3が発生する前記機能制
限信号7によらずに、自機上での入力設定により任意の動作機能を制限状態にするカスタ
ム制限モードを備えている。
【0096】
そのため、施設側制御装置3が未設置の場所でも、携帯用電子機器5の一部の機能の制
限が必要と考えられる場合には、使用者の意思で、適時カスタム制限モードを選択するこ
とで、携帯用電子機器5を他人等に迷惑がかからない運用状態に維持できる。
【0097】
なお、本発明に係る携帯用電子機器の具体例は、上記実施の形態に示した多機能型の携
帯電話機に限らない。例えば、無線通信機能を備えたモバイルパソコンやノートパソコン
、無線通信機能を備えたディジタルカメラ、撮影した映像を無線で転送するビデオカメラ
(テレビカメラ)を始めとして、携帯可能な各種の電子機器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施の形態に係る携帯用電子機器の機能制限システムの概略構成図である。
【図2】図1に示した機能制限システムにおける施設側制御装置及び携帯用電子機器の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した機能制限システムにおいて使用する各種の制限モード毎に制限する機能を示した機能制限テーブルの一例の説明図である。
【図4】図2に示した携帯用電子機器の制限表示機能により、制限されている機能、非制限中の機能を表示した状態の説明図である。
【図5】図2に示した携帯用電子機器において、履歴記録部に記録された機能制限履歴の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る携帯用電子機器の機能制限システムの第2の概略構成図である。
【符号の説明】
【0099】
1 機能制限システム
3 施設側制御装置
5 携帯用電子機器(携帯用通信端末)
7 機能制限信号
8 位置情報信号(無線局のIDや時刻情報を含む)
9 領域
11 入力操作部
12 動作制限信号管理部
13 無線通信部
20 機能制限テーブル
21 制限モード
23 フラグ
31 入力操作部
32a〜32j 機能ユニット
33 メモリ
34 表示部
35 無線通信部
36 制御部
37 位置情報取得部
41 動作制限信号解読部
42 動作時間制御部
43 機能制御部
44 機能制御カスタム部
46 履歴記録部
50 公衆無線基地局
60 GPS衛星
70 無線LAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設置された施設側制御装置の発生する機能制御信号によって、その施設に持ち込
まれる無線通信機能付きの携帯用電子機器の動作機能を制限する携帯用電子機器の機能制
限システムであって、
前記施設側制御装置は制限する機能に応じた機能制限信号を出力し、
前記携帯用電子機器は、受信した前記機能制限信号に基づいて、自機の該当する動作機
能を制限する制御部と、前記機能制限信号による制限を強制解除可能な機能制御カスタム
部と、前記機能制限信号や機能制御カスタム部によって実施した自機の機能制限の履歴を
書き換え不可に記録する履歴記録部と、を備えたことを特徴とする携帯用電子機器の機能
制限システム。
【請求項2】
前記制御部は位置情報信号を取得する位置情報取得部をさらに備え、
前記履歴記録部は、前記位置情報取得部によって取得された位置情報を、前記機能制御信号または前記位置情報信号に含まれる時刻情報と対にして、前記機能制限の履歴と共に履歴記憶部に記録することを特徴とする請求項1に記載の携帯電子機器の機能制限システム。
【請求項3】
前記機能制限信号は、制限する動作機能の組み合わせに応じて設定された制限モード信
号であり、
前記携帯用電子機器の制御部は、各種の制限モード毎に制限する動作機能を規定した機
能制限テーブルを保有し、機能制限信号に指定された制限モードに基づいて、該当する動
作機能を制限することを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯用電子機器の機能制限システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯用電子機器の機能制限システムに使用可能な携帯用電子機器であって、
動作制限されている機能を表示する表示部を備えていることを特徴とする携帯用電子機
器。
【請求項5】
前記履歴記録部に記録されている機能制限の履歴を前記表示部に表示可能であることを
特徴とする請求項4に記載の携帯用電子機器。
【請求項6】
前記施設側制御装置が発生する前記機能制限信号によらずに、自機上での入力設定によ
り任意の動作機能を制限状態にするカスタム制限モードを備えていることを特徴とする請
求項4又は5に記載の携帯用電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−136194(P2008−136194A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280380(P2007−280380)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】