携帯電子機器及びそのケーシングの製法
【課題】内部電子部品にて発生した熱をケーシング外表面から効率よく放熱する又は熱拡散する携帯電子機器を提供する。
【解決手段】ケーシング外表面10を形成する薄肉表壁部2と、薄肉表壁部2の裏面の一部に積層されると共に内部電子部品5の発熱部6からの熱を伝導させてケーシング外表面10から放熱させる熱伝導性シート体3と、熱伝導性シート体3の裏面及び薄肉表壁部2の裏面に溶融樹脂の固化によって一体状に積層形成される内壁部4と、から構成されるケーシング部材1を具備している。
【解決手段】ケーシング外表面10を形成する薄肉表壁部2と、薄肉表壁部2の裏面の一部に積層されると共に内部電子部品5の発熱部6からの熱を伝導させてケーシング外表面10から放熱させる熱伝導性シート体3と、熱伝導性シート体3の裏面及び薄肉表壁部2の裏面に溶融樹脂の固化によって一体状に積層形成される内壁部4と、から構成されるケーシング部材1を具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電子機器及びそのケーシングの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォン、タブレット型通信端末、ノートパソコン等の携帯電子機器は、ケーシングの内部に電子部品を有している。この電子部品の内、CCDカメラモジュールやICチップ等の部品は電力の消費に伴って発熱するため、ケーシングの内部にて発生した熱を拡散させて放熱するための熱拡散シートが、ケーシングの裏面に貼り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−117594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の携帯電子機器に於て、特許文献1記載のような熱拡散シートは、ケーシングの裏面に両面粘着テープにて後付けで貼着されていた。よって、ケーシングの裏面にリブやボスが形成されている場合には、貼る場所が制限されて発熱部に対応できず、有効に貼り付けることができなかった。しかも、ケーシングの裏面に熱拡散シートが露出しているため、内部に電子部品を収納して組立てる作業時等に於て、熱拡散シートが損傷を受けたり、剥がれてしまう虞れがあった。
【0005】
また、熱拡散シートが、ケーシング外表面から(ケーシング肉厚分だけ)離れた裏面に貼着されているため、発熱部からの熱をケーシング外に逃がしにくく、放熱特性が劣化する欠点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点の解決するため、内部電子部品にて発生した熱をケーシング外表面から効率よく放熱する(又は熱拡散する)携帯電子機器及びそのケーシングの製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る携帯電子機器は、ケーシング外表面を形成する薄肉表壁部と、該薄肉表壁部の裏面の一部に積層されると共に内部電子部品の発熱部からの熱を伝導させて上記ケーシング外表面から放熱させる熱伝導性シート体と、該熱伝導性シート体の裏面及び上記薄肉表壁部の裏面に溶融樹脂の固化によって一体状に積層形成される内壁部と、から構成されるケーシング部材を具備するものである。
【0008】
また、本発明に係る携帯電子機器用ケーシングの製法は、浅皿状の薄肉表壁部を形成し、該薄肉表壁部の裏面に熱伝導性シート体を貼着し、該熱伝導性シート体を貼着した上記薄肉表壁部を金型内に設置して、該薄肉表壁部の裏面に溶融樹脂を注入して内壁部を一体状に積層させ、上記熱伝導性シート体を上記薄肉表壁部と上記内壁部との間に埋設する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の携帯電子機器によれば、熱伝導性シート体をケーシング部材に埋設することができ、効率よく放熱でき、あるいは、熱拡散できる。薄肉表壁部の裏面が広範囲に平面を有しているため、任意の箇所に熱伝導性シート体を貼り付けることが可能である。つまり、ケーシング裏面のリブやボスに左右されることなく、熱伝導性シート体を内部電子部品の発熱部に対応させて有効に配設でき、放熱特性、及び/又は、熱拡散特性を向上できる。しかも、ケーシング部材を薄肉化できる。また、ケーシング外表面に近い位置に熱伝導性シート体を配設でき、確実に放熱できる。また、本発明の携帯電子機器用ケーシングの製法によれば、熱伝導性シート体を確実に一体化して埋設することができる。即ち、薄肉で、かつ、優れた放熱特性、及び/又は、熱拡散特性を有するケーシングを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の一形態を示した断面正面図である。
【図2】本発明の携帯電子機器を示した平面図である。
【図3】ケーシング部材を示した一部破断斜視図である。
【図4】ケーシング部材の底面図である。
【図5】携帯電子機器用ケーシングの製造方法を説明するための断面正面図である。
【図6】携帯電子機器用ケーシングの製造方法を説明するための断面正面図である。
【図7】携帯電子機器用ケーシングの製造方法を説明するための断面正面図である。
【図8】携帯電子機器用ケーシングの製造方法を説明するための断面正面図である。
【図9】携帯電子機器用ケーシングの製造方法を説明するための断面正面図である。
【図10】ケーシング部材の要部拡大断面正面図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示した断面正面図である。
【図12】本発明の別の実施形態を示した断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1と図2に示すように、本発明に係る携帯電子機器は、携帯電話やスマートフォン、タブレット型通信端末、PDA、電子辞書、ノートパソコン等であって、ケーシング部材1によって内部電子部品5を外装しており、内部電子部品5には使用に伴って発熱する発熱部6が含まれる。
本発明の携帯電子機器は、ケーシング外表面10を形成する薄肉表壁部2と、薄肉表壁部2の裏面の一部に積層されると共に内部電子部品5の発熱部6からの熱を伝導させてケーシング外表面10から放熱させる熱伝導性シート体3と、熱伝導性シート体3の裏面及び薄肉表壁部2の裏面に溶融樹脂の固化によって一体状に積層形成される内壁部4と、から構成されるケーシング部材1を具備している。
【0012】
図1〜図4に示すように、ケーシング部材1は、内部電子部品5を外部の衝撃から保護する殻構造であって、外装体として十分な剛性をもって作製されている。ケーシング部材1には、内部電子部品5を嵌め込むための孔部11が貫設され、裏面には、リブR,Rが突設されている。ケーシング部材1は、図例では、平面視略長方形状に形成されているが、形状及び大きさは設計変更可能である。
内部電子部品5とは、プリント基板やディスプレイ、CPU、メモリ等を包含するものである。その内、発熱部(発熱源)6としては、例えば、CCDカメラモジュールやICチップ等が熱を発生しやすいといわれている。
【0013】
熱伝導性シート体3は、例えば、面方向への熱伝導性が1000W/mK〜2000W/mKであり、厚み方向への熱伝導性が3W/mK〜7W/mKとなるように形成されている。つまり、熱伝導性シート体3は、面方向に素早く熱を拡散するように構成されており、その熱拡散率は7.0cm2/s〜11.0cm2/sに設定するのが好ましい。言い換えると、図2に示すように、熱伝導性シート体3は、発熱部6の発熱により生ずるヒートスポットA1〜A3に対応するヒートスポット対応部を有する形状とされ、図中矢印で示すように熱を伝達して放熱部Zから熱を放散し、ヒートスポットA1〜A3の温度上昇を緩和している。熱伝導性シート体3は、面方向への熱伝導に優れているため、発熱部6が相互に離れた位置に配置されている場合であっても、ヒートスポット対応部から放熱部Zまでスムーズに熱を伝搬して、熱を拡散するように構成されている。熱伝導性シート体3の厚さ寸法T3は、30μm〜200μmに設定され、より好ましくは、40μm〜100μmとして薄膜状に形成するのが良い。図6と図9に示すように、熱伝導性シート体3は、グラファイトシート30の表裏に、PET樹脂から成る補強用の保護層31と、アクリル系粘着材から成る(両面粘着テープ等の)粘着層32を積層している。なお、グラファイトシート30は、銅の3倍以上、アルミの6倍以上の極めて優れた熱伝導性を有していることが知られている。
【0014】
図3及び図4に示すように、薄肉表壁部2は、真空成形又は圧縮成形により浅皿状に形成された樹脂成型品であり、ケーシング外表面10を形成する薄い化粧板である。薄肉表壁部2は、原材料として透明な熱可塑性シート材の裏面に印刷層を設けたものを用いるのが望ましく、この印刷層により、ケーシング部材1に美観的な装飾を施すことが可能であり、その装飾を半永久的に保存できる。なお、薄肉表壁部2の厚さ寸法T2は、75μm〜200μmに設定されている(図10参照)。
内壁部4は、熱可塑性プラスチックから成り、例えば、ABS樹脂を溶融させて(金型内で)熱伝導性シート体3及び薄肉表壁部2の裏面側に流し込み、固化させることで積層形成されている。なお、内壁部4の厚さ寸法T4は、600μm〜3000μmに設定されている(図10参照)。
つまり、ケーシング部材1は、浅皿状の薄肉表壁部2の底面に於て広範囲にわたって形成される平坦面に、所望の形状の熱伝導性シート体3を貼り付けることが可能である。また、図10に示すように、ケーシング部材1は、ケーシング外表面10に近い位置に熱伝導性シート体3を配設しており、薄肉表壁部2を介して外部に熱を放散し易いように構成されている。
【0015】
次に、本発明の携帯電子機器用ケーシングの製法を説明する。
図5に於て、2点鎖線で示す(予め印刷層を形成した)熱可塑性シート材を、図示省略の熱源により加熱して軟化させる。軟化した熱可塑性シート材を、多数の小孔部21…を有する真空成形用の金型20上に載置し、小孔部21に負圧を発生させて熱可塑性シート材を金型20に密着させる。又は、(図示省略するが)熱プレス成形、高圧成形等を用いるも自由であり、要するに、熱可塑性シート材に熱を加えて軟化させ、圧力を何らかの手段(方法)で加えて成形する。そして、冷却して硬化した熱可塑性シート材の不要部分を切り落として、浅皿状の薄肉表壁部2を形成する。
【0016】
次に、図6(a)に示すように、浅皿状の薄肉表壁部2の裏面(底面)に、熱伝導性シート体3を貼着する。この際、熱伝導性シート体3は、予め、切取り又は打抜き等の方法で、所定の形状に成形しておき、粘着層32を保護するための剥離紙を捲って、粘着層32を薄肉表壁部2の裏面に密着させる。熱伝導性シート体3は、粘着層32、グラファイトシート30、保護層31の順に、薄肉表壁部2の裏面に積層するように貼り付けられる(図6(b)参照)。
【0017】
次に、図7に示すように、熱伝導性シート体3を貼着した薄肉表壁部2を、(熱伝導性シート体3の裏面側及び薄肉表壁部2の裏面側に空間が形成されるように)射出成形用の金型40内に設置する。
そして、図8に示すように、この金型40内で、薄肉表壁部2の裏面に溶融樹脂を(矢印Eのように)注入(充填)して、内壁部4を積層形成する(いわゆる、フィルムインサート成形を行う)。その後、射出成形用の金型40を開いてケーシング半製品を取り出し、溶融樹脂を固化させることで、熱伝導性シート体3を、薄肉表壁部2と内壁部4との間に埋設して一体化する(図9(a)参照)。
【0018】
図9(b)に示すように、熱伝導性シート体3は、グラファイトシート30に保護層31を積層して有しているので、内壁部4を積層する工程の途中で、グラファイトシート30が破損したり剥がれたりすることなく保護され、しかも、(PET樹脂から成る)保護層31と、(ABS樹脂等の熱可塑性プラスチックから成る)内壁部4とが、融合する。こうして作製されたケーシング部材1は、内壁部4が十分な接着力をもって熱伝導性シート体3の裏面に密着し、薄肉表壁部2と内壁部4との間に熱伝導性シート体3を確実に埋設一体化する。
【0019】
次に、図11に基づいて、本発明の他の実施形態を説明する。
上述の実施形態と相違する点は、ケーシング部材1に於て、熱伝導性シート体3の一部分が(局部的に)薄肉表壁部2の裏面から離れるように形成されており、内部電子部品5の発熱部6に対応して、内壁部4に被覆されることなく熱伝導性シート体3の一部が露出し、発熱部6に当接して直接に熱を奪う熱受取部8を構成している。この熱受取部8は、薄肉表壁部2との間に、複数の粘着剤層を介設するか、又は、スペーサ等を介装して積層されている。この構成により、熱伝導性シート体3の熱受取部8が、発熱部6からより一層効率的に熱を受理することが可能となり、放熱特性、及び/又は、熱拡散特性をさらに向上することができる。その他の構成は、上述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0020】
なお、本発明は設計変更可能であって、例えば、図12に示すように、熱伝導性シート体3の一部分を、発熱部6に対応して、複数回折り畳んで肉厚の熱受取部8を形成しても良い。この熱受取部8は、薄肉表壁部2の裏面に粘着剤層やスペーサを介さずに接すると共に、発熱部6に直接当接して、熱を効率よく伝達してケーシング外表面10から放熱、及び/又は、熱拡散することが可能である。
【0021】
以上のように、本発明に係る携帯電子機器は、ケーシング外表面10を形成する薄肉表壁部2と、薄肉表壁部2の裏面の一部に積層されると共に内部電子部品5の発熱部6からの熱を伝導させてケーシング外表面10から放熱させる熱伝導性シート体3と、熱伝導性シート体3の裏面及び薄肉表壁部2の裏面に溶融樹脂の固化によって一体状に積層形成される内壁部4と、から構成されるケーシング部材1を具備するので、熱伝導性シート体3をケーシング部材1に埋設することができ、効率よく放熱、及び/又は、熱拡散できる。薄肉表壁部2の裏面が広範囲に平面を有しているため、任意の箇所に熱伝導性シート体3を貼り付けることが可能である。つまり、ケーシング部材1裏面のリブR,Rに左右されることなく、熱伝導性シート体3を内部電子部品5の発熱部6に対応させて有効に配設でき、放熱特性(又は熱拡散特性)を向上できる。しかも、ケーシング部材1を薄肉化できる。また、ケーシング外表面10に近い位置に熱伝導性シート体3を配設でき、確実に放熱できる。例えば、携帯電話を長時間継続使用して、内部電子部品5の発熱部6から熱を発生した場合であっても、(放熱、及び/又は、熱拡散によって)ケーシング外表面10が人の肌に触れる部分の温度上昇を防止できる。
【0022】
また、本発明の携帯電子機器用ケーシングの製法は、浅皿状の薄肉表壁部2を形成し、薄肉表壁部2の裏面に熱伝導性シート体3を貼着し、熱伝導性シート体3を貼着した薄肉表壁部2を金型内に設置して、薄肉表壁部2の裏面に溶融樹脂を注入して内壁部4を一体状に積層させ、熱伝導性シート体3を薄肉表壁部2と内壁部4との間に埋設するので、熱伝導性シート体3を確実に一体化して埋設することができる。即ち、薄肉で、かつ、優れた放熱特性(又は熱拡散特性)を有するケーシングを製作することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 ケーシング部材
2 薄肉表壁部
3 熱伝導性シート体
4 内壁部
5 内部電子部品
6 発熱部
10 ケーシング外表面
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電子機器及びそのケーシングの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォン、タブレット型通信端末、ノートパソコン等の携帯電子機器は、ケーシングの内部に電子部品を有している。この電子部品の内、CCDカメラモジュールやICチップ等の部品は電力の消費に伴って発熱するため、ケーシングの内部にて発生した熱を拡散させて放熱するための熱拡散シートが、ケーシングの裏面に貼り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−117594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の携帯電子機器に於て、特許文献1記載のような熱拡散シートは、ケーシングの裏面に両面粘着テープにて後付けで貼着されていた。よって、ケーシングの裏面にリブやボスが形成されている場合には、貼る場所が制限されて発熱部に対応できず、有効に貼り付けることができなかった。しかも、ケーシングの裏面に熱拡散シートが露出しているため、内部に電子部品を収納して組立てる作業時等に於て、熱拡散シートが損傷を受けたり、剥がれてしまう虞れがあった。
【0005】
また、熱拡散シートが、ケーシング外表面から(ケーシング肉厚分だけ)離れた裏面に貼着されているため、発熱部からの熱をケーシング外に逃がしにくく、放熱特性が劣化する欠点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点の解決するため、内部電子部品にて発生した熱をケーシング外表面から効率よく放熱する(又は熱拡散する)携帯電子機器及びそのケーシングの製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る携帯電子機器は、ケーシング外表面を形成する薄肉表壁部と、該薄肉表壁部の裏面の一部に積層されると共に内部電子部品の発熱部からの熱を伝導させて上記ケーシング外表面から放熱させる熱伝導性シート体と、該熱伝導性シート体の裏面及び上記薄肉表壁部の裏面に溶融樹脂の固化によって一体状に積層形成される内壁部と、から構成されるケーシング部材を具備するものである。
【0008】
また、本発明に係る携帯電子機器用ケーシングの製法は、浅皿状の薄肉表壁部を形成し、該薄肉表壁部の裏面に熱伝導性シート体を貼着し、該熱伝導性シート体を貼着した上記薄肉表壁部を金型内に設置して、該薄肉表壁部の裏面に溶融樹脂を注入して内壁部を一体状に積層させ、上記熱伝導性シート体を上記薄肉表壁部と上記内壁部との間に埋設する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の携帯電子機器によれば、熱伝導性シート体をケーシング部材に埋設することができ、効率よく放熱でき、あるいは、熱拡散できる。薄肉表壁部の裏面が広範囲に平面を有しているため、任意の箇所に熱伝導性シート体を貼り付けることが可能である。つまり、ケーシング裏面のリブやボスに左右されることなく、熱伝導性シート体を内部電子部品の発熱部に対応させて有効に配設でき、放熱特性、及び/又は、熱拡散特性を向上できる。しかも、ケーシング部材を薄肉化できる。また、ケーシング外表面に近い位置に熱伝導性シート体を配設でき、確実に放熱できる。また、本発明の携帯電子機器用ケーシングの製法によれば、熱伝導性シート体を確実に一体化して埋設することができる。即ち、薄肉で、かつ、優れた放熱特性、及び/又は、熱拡散特性を有するケーシングを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の一形態を示した断面正面図である。
【図2】本発明の携帯電子機器を示した平面図である。
【図3】ケーシング部材を示した一部破断斜視図である。
【図4】ケーシング部材の底面図である。
【図5】携帯電子機器用ケーシングの製造方法を説明するための断面正面図である。
【図6】携帯電子機器用ケーシングの製造方法を説明するための断面正面図である。
【図7】携帯電子機器用ケーシングの製造方法を説明するための断面正面図である。
【図8】携帯電子機器用ケーシングの製造方法を説明するための断面正面図である。
【図9】携帯電子機器用ケーシングの製造方法を説明するための断面正面図である。
【図10】ケーシング部材の要部拡大断面正面図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示した断面正面図である。
【図12】本発明の別の実施形態を示した断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1と図2に示すように、本発明に係る携帯電子機器は、携帯電話やスマートフォン、タブレット型通信端末、PDA、電子辞書、ノートパソコン等であって、ケーシング部材1によって内部電子部品5を外装しており、内部電子部品5には使用に伴って発熱する発熱部6が含まれる。
本発明の携帯電子機器は、ケーシング外表面10を形成する薄肉表壁部2と、薄肉表壁部2の裏面の一部に積層されると共に内部電子部品5の発熱部6からの熱を伝導させてケーシング外表面10から放熱させる熱伝導性シート体3と、熱伝導性シート体3の裏面及び薄肉表壁部2の裏面に溶融樹脂の固化によって一体状に積層形成される内壁部4と、から構成されるケーシング部材1を具備している。
【0012】
図1〜図4に示すように、ケーシング部材1は、内部電子部品5を外部の衝撃から保護する殻構造であって、外装体として十分な剛性をもって作製されている。ケーシング部材1には、内部電子部品5を嵌め込むための孔部11が貫設され、裏面には、リブR,Rが突設されている。ケーシング部材1は、図例では、平面視略長方形状に形成されているが、形状及び大きさは設計変更可能である。
内部電子部品5とは、プリント基板やディスプレイ、CPU、メモリ等を包含するものである。その内、発熱部(発熱源)6としては、例えば、CCDカメラモジュールやICチップ等が熱を発生しやすいといわれている。
【0013】
熱伝導性シート体3は、例えば、面方向への熱伝導性が1000W/mK〜2000W/mKであり、厚み方向への熱伝導性が3W/mK〜7W/mKとなるように形成されている。つまり、熱伝導性シート体3は、面方向に素早く熱を拡散するように構成されており、その熱拡散率は7.0cm2/s〜11.0cm2/sに設定するのが好ましい。言い換えると、図2に示すように、熱伝導性シート体3は、発熱部6の発熱により生ずるヒートスポットA1〜A3に対応するヒートスポット対応部を有する形状とされ、図中矢印で示すように熱を伝達して放熱部Zから熱を放散し、ヒートスポットA1〜A3の温度上昇を緩和している。熱伝導性シート体3は、面方向への熱伝導に優れているため、発熱部6が相互に離れた位置に配置されている場合であっても、ヒートスポット対応部から放熱部Zまでスムーズに熱を伝搬して、熱を拡散するように構成されている。熱伝導性シート体3の厚さ寸法T3は、30μm〜200μmに設定され、より好ましくは、40μm〜100μmとして薄膜状に形成するのが良い。図6と図9に示すように、熱伝導性シート体3は、グラファイトシート30の表裏に、PET樹脂から成る補強用の保護層31と、アクリル系粘着材から成る(両面粘着テープ等の)粘着層32を積層している。なお、グラファイトシート30は、銅の3倍以上、アルミの6倍以上の極めて優れた熱伝導性を有していることが知られている。
【0014】
図3及び図4に示すように、薄肉表壁部2は、真空成形又は圧縮成形により浅皿状に形成された樹脂成型品であり、ケーシング外表面10を形成する薄い化粧板である。薄肉表壁部2は、原材料として透明な熱可塑性シート材の裏面に印刷層を設けたものを用いるのが望ましく、この印刷層により、ケーシング部材1に美観的な装飾を施すことが可能であり、その装飾を半永久的に保存できる。なお、薄肉表壁部2の厚さ寸法T2は、75μm〜200μmに設定されている(図10参照)。
内壁部4は、熱可塑性プラスチックから成り、例えば、ABS樹脂を溶融させて(金型内で)熱伝導性シート体3及び薄肉表壁部2の裏面側に流し込み、固化させることで積層形成されている。なお、内壁部4の厚さ寸法T4は、600μm〜3000μmに設定されている(図10参照)。
つまり、ケーシング部材1は、浅皿状の薄肉表壁部2の底面に於て広範囲にわたって形成される平坦面に、所望の形状の熱伝導性シート体3を貼り付けることが可能である。また、図10に示すように、ケーシング部材1は、ケーシング外表面10に近い位置に熱伝導性シート体3を配設しており、薄肉表壁部2を介して外部に熱を放散し易いように構成されている。
【0015】
次に、本発明の携帯電子機器用ケーシングの製法を説明する。
図5に於て、2点鎖線で示す(予め印刷層を形成した)熱可塑性シート材を、図示省略の熱源により加熱して軟化させる。軟化した熱可塑性シート材を、多数の小孔部21…を有する真空成形用の金型20上に載置し、小孔部21に負圧を発生させて熱可塑性シート材を金型20に密着させる。又は、(図示省略するが)熱プレス成形、高圧成形等を用いるも自由であり、要するに、熱可塑性シート材に熱を加えて軟化させ、圧力を何らかの手段(方法)で加えて成形する。そして、冷却して硬化した熱可塑性シート材の不要部分を切り落として、浅皿状の薄肉表壁部2を形成する。
【0016】
次に、図6(a)に示すように、浅皿状の薄肉表壁部2の裏面(底面)に、熱伝導性シート体3を貼着する。この際、熱伝導性シート体3は、予め、切取り又は打抜き等の方法で、所定の形状に成形しておき、粘着層32を保護するための剥離紙を捲って、粘着層32を薄肉表壁部2の裏面に密着させる。熱伝導性シート体3は、粘着層32、グラファイトシート30、保護層31の順に、薄肉表壁部2の裏面に積層するように貼り付けられる(図6(b)参照)。
【0017】
次に、図7に示すように、熱伝導性シート体3を貼着した薄肉表壁部2を、(熱伝導性シート体3の裏面側及び薄肉表壁部2の裏面側に空間が形成されるように)射出成形用の金型40内に設置する。
そして、図8に示すように、この金型40内で、薄肉表壁部2の裏面に溶融樹脂を(矢印Eのように)注入(充填)して、内壁部4を積層形成する(いわゆる、フィルムインサート成形を行う)。その後、射出成形用の金型40を開いてケーシング半製品を取り出し、溶融樹脂を固化させることで、熱伝導性シート体3を、薄肉表壁部2と内壁部4との間に埋設して一体化する(図9(a)参照)。
【0018】
図9(b)に示すように、熱伝導性シート体3は、グラファイトシート30に保護層31を積層して有しているので、内壁部4を積層する工程の途中で、グラファイトシート30が破損したり剥がれたりすることなく保護され、しかも、(PET樹脂から成る)保護層31と、(ABS樹脂等の熱可塑性プラスチックから成る)内壁部4とが、融合する。こうして作製されたケーシング部材1は、内壁部4が十分な接着力をもって熱伝導性シート体3の裏面に密着し、薄肉表壁部2と内壁部4との間に熱伝導性シート体3を確実に埋設一体化する。
【0019】
次に、図11に基づいて、本発明の他の実施形態を説明する。
上述の実施形態と相違する点は、ケーシング部材1に於て、熱伝導性シート体3の一部分が(局部的に)薄肉表壁部2の裏面から離れるように形成されており、内部電子部品5の発熱部6に対応して、内壁部4に被覆されることなく熱伝導性シート体3の一部が露出し、発熱部6に当接して直接に熱を奪う熱受取部8を構成している。この熱受取部8は、薄肉表壁部2との間に、複数の粘着剤層を介設するか、又は、スペーサ等を介装して積層されている。この構成により、熱伝導性シート体3の熱受取部8が、発熱部6からより一層効率的に熱を受理することが可能となり、放熱特性、及び/又は、熱拡散特性をさらに向上することができる。その他の構成は、上述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0020】
なお、本発明は設計変更可能であって、例えば、図12に示すように、熱伝導性シート体3の一部分を、発熱部6に対応して、複数回折り畳んで肉厚の熱受取部8を形成しても良い。この熱受取部8は、薄肉表壁部2の裏面に粘着剤層やスペーサを介さずに接すると共に、発熱部6に直接当接して、熱を効率よく伝達してケーシング外表面10から放熱、及び/又は、熱拡散することが可能である。
【0021】
以上のように、本発明に係る携帯電子機器は、ケーシング外表面10を形成する薄肉表壁部2と、薄肉表壁部2の裏面の一部に積層されると共に内部電子部品5の発熱部6からの熱を伝導させてケーシング外表面10から放熱させる熱伝導性シート体3と、熱伝導性シート体3の裏面及び薄肉表壁部2の裏面に溶融樹脂の固化によって一体状に積層形成される内壁部4と、から構成されるケーシング部材1を具備するので、熱伝導性シート体3をケーシング部材1に埋設することができ、効率よく放熱、及び/又は、熱拡散できる。薄肉表壁部2の裏面が広範囲に平面を有しているため、任意の箇所に熱伝導性シート体3を貼り付けることが可能である。つまり、ケーシング部材1裏面のリブR,Rに左右されることなく、熱伝導性シート体3を内部電子部品5の発熱部6に対応させて有効に配設でき、放熱特性(又は熱拡散特性)を向上できる。しかも、ケーシング部材1を薄肉化できる。また、ケーシング外表面10に近い位置に熱伝導性シート体3を配設でき、確実に放熱できる。例えば、携帯電話を長時間継続使用して、内部電子部品5の発熱部6から熱を発生した場合であっても、(放熱、及び/又は、熱拡散によって)ケーシング外表面10が人の肌に触れる部分の温度上昇を防止できる。
【0022】
また、本発明の携帯電子機器用ケーシングの製法は、浅皿状の薄肉表壁部2を形成し、薄肉表壁部2の裏面に熱伝導性シート体3を貼着し、熱伝導性シート体3を貼着した薄肉表壁部2を金型内に設置して、薄肉表壁部2の裏面に溶融樹脂を注入して内壁部4を一体状に積層させ、熱伝導性シート体3を薄肉表壁部2と内壁部4との間に埋設するので、熱伝導性シート体3を確実に一体化して埋設することができる。即ち、薄肉で、かつ、優れた放熱特性(又は熱拡散特性)を有するケーシングを製作することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 ケーシング部材
2 薄肉表壁部
3 熱伝導性シート体
4 内壁部
5 内部電子部品
6 発熱部
10 ケーシング外表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング外表面(10)を形成する薄肉表壁部(2)と、該薄肉表壁部(2)の裏面の一部に積層されると共に内部電子部品(5)の発熱部(6)からの熱を伝導させて上記ケーシング外表面(10)から放熱させる熱伝導性シート体(3)と、該熱伝導性シート体(3)の裏面及び上記薄肉表壁部(2)の裏面に溶融樹脂の固化によって一体状に積層形成される内壁部(4)と、から構成されるケーシング部材(1)を具備することを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
浅皿状の薄肉表壁部(2)を形成し、該薄肉表壁部(2)の裏面に熱伝導性シート体(3)を貼着し、該熱伝導性シート体(3)を貼着した上記薄肉表壁部(2)を金型内に設置して、該薄肉表壁部(2)の裏面に溶融樹脂を注入して内壁部(4)を一体状に積層させ、上記熱伝導性シート体(3)を上記薄肉表壁部(2)と上記内壁部(4)との間に埋設することを特徴とする携帯電子機器用ケーシングの製法。
【請求項1】
ケーシング外表面(10)を形成する薄肉表壁部(2)と、該薄肉表壁部(2)の裏面の一部に積層されると共に内部電子部品(5)の発熱部(6)からの熱を伝導させて上記ケーシング外表面(10)から放熱させる熱伝導性シート体(3)と、該熱伝導性シート体(3)の裏面及び上記薄肉表壁部(2)の裏面に溶融樹脂の固化によって一体状に積層形成される内壁部(4)と、から構成されるケーシング部材(1)を具備することを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
浅皿状の薄肉表壁部(2)を形成し、該薄肉表壁部(2)の裏面に熱伝導性シート体(3)を貼着し、該熱伝導性シート体(3)を貼着した上記薄肉表壁部(2)を金型内に設置して、該薄肉表壁部(2)の裏面に溶融樹脂を注入して内壁部(4)を一体状に積層させ、上記熱伝導性シート体(3)を上記薄肉表壁部(2)と上記内壁部(4)との間に埋設することを特徴とする携帯電子機器用ケーシングの製法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−212802(P2012−212802A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78113(P2011−78113)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591264072)三井物産プラスチックトレード株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591264072)三井物産プラスチックトレード株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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