説明

携帯電話機用操作部品の製造方法及びその製造方法に用いられる製造装置

【課題】 透明な操作ボタンと支持材との間に模様材が設けられた携帯電話機用操作部品を製造する場合に、製造工数を削減して操作部品のコストの低廉化を図る。
【解決手段】 固定型4と可動型5との間にスライド型6を配置し、スライド型6の第1成形面20と可動型5との間に第1キャビティを形成する。第1キャビティに模様材を配置した後、透明な溶融状態の第1成形材を供給して模様材と一体化して操作ボタンを得る。型開きした後、中間成形品を可動型5の成形面32に保持させ、スライド型6を移動させて第2成形面24を可動型5の成形面32に対向させて型閉じして第2キャビティを形成する。第2キャビティに溶融状態の第2成形材を供給して支持材と操作ボタンとを一体化して操作部品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機に取り付けられる操作部品を製造するための製造方法及びその製造方法に用いられる製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話機には、数字やアルファベット等を入力するための操作ボタンを有する樹脂製の操作部品が取り付けられている。この操作部品は、携帯電話機の表面積に占める割合が大きくかつ目立つものであるため、操作部品の意匠性を向上させることにより、携帯電話機全体の意匠性を向上させることが行われている。
【0003】
また、例えば樹脂材等の成形材を用いて成形品を製造する装置として、固定型と可動型との間に、該可動型と共にキャビティを形成するスライド型を配置した、いわゆるダイスライドタイプの装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置を用いて中空状の成形品を成形する場合には、まず、可動型とスライド型とで形成された第1キャビティに溶融状態の成形材を供給して半割体を2つ成形する。その後、型開きしてスライド型を移動させて2つの半割体の開放側を合わせて再び型閉じし、スライド型及び可動型の別の成形面で半割体の接合部の周囲に第2キャビティを成形し、この第2キャビティに溶融状態の成形材を供給して2つの半割体を一体化して成形品を得る。
【特許文献1】特開昭62−87315号公報(図1〜図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、携帯電話機の操作部品の意匠性を向上させる場合に、操作部品を操作ボタンと該操作ボタンを支持する支持材とに分け、操作ボタンを透明な成形材で成形し、支持材を別の成形材で成形し、これら操作ボタンと支持材との間に、数字やアルファベット等の模様材を操作ボタンの表面側から見えるように配置して、操作ボタンと支持材とを一体化することが考えられる。こうすることで、携帯電話機の使用者からは、模様材が操作ボタンを透過して該操作ボタンの奥の方に見えるので、模様材に深みが出て操作部品の意匠性を向上させることができる。
【0005】
しかしながら、そのように模様材を操作ボタンと支持材との間に設ける場合には、操作ボタン及び支持材を成形する工程、操作ボタンまたは支持材に模様材を付す工程及び操作ボタンと支持材とを一体化する工程が必要になる。その結果、操作部品の製造工数が増加してコストが高騰してしまう。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作ボタンと支持材との間に模様材を配置してなる携帯電話機用操作部品を製造する場合に、固定型と可動型との間で移動するスライド型を用いることで、製造工数を削減して操作部品のコストの低廉化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、可動型とスライド型の第1成形面との間に形成された第1キャビティに溶融状態の第1成形材を供給して模様材が付された操作ボタンを成形した後、スライド型を移動させて可動型とスライド型の第2成形面との間に形成された第2キャビティに溶融状態の第2成形材を供給し、該第2成形材を固化させることにより支持材と操作ボタンとを一体化できるようにした。
【0008】
請求項1の発明は、携帯電話機用操作部品の製造方法の発明である。
【0009】
具体的には、透明な第1成形材からなる操作ボタンと、第2成形材からなり上記操作ボタンを支持する支持材との間に上記操作ボタン側に向く模様材が設けられた携帯電話機用操作部品を製造する方法を対象とする。
【0010】
そして、固定型と可動型とを型閉じして該固定型と可動型との間に配置されたスライド型の第1成形面と上記可動型の成形面との間に第1キャビティを形成するとともに、該第1キャビティのスライド型側に上記模様材を配置し、その後、上記第1キャビティに溶融状態の第1成形材を供給して固化させることにより模様材が付された操作ボタンを得た後、上記固定型と可動型とを型開きして、該操作ボタンを可動型に保持させ、次いで、上記スライド型を該スライド型の第2成形面が上記可動型に保持された操作ボタンと対向するまで移動させて上記固定型と可動型とを型閉じし、上記スライド型の第2成形面と上記可動型の成形面との間に第2キャビティを形成し、しかる後、上記第2キャビティに溶融状態の第2成形材を供給して該第2成形材を上記操作ボタンの模様材側と一体化して固化させることにより、操作ボタンと支持材との間に模様材が設けられた携帯電話機用操作部品を得る構成とする。
【0011】
この構成によれば、第1キャビティに供給した溶融状態の第1成形材が固化すると、該第1成形材は模様材と一体化する。これにより、スライド型側に模様材が付された操作ボタンが得られ、該操作ボタンは型開き後に可動型に保持される。操作ボタンが可動型に保持された状態で、スライド型を移動させて第2成形面を操作ボタンに対向させて型閉じすることで第2キャビティが形成される。このとき、操作ボタンの模様材は第2成形面側に位置しているので、第2キャビティに供給した溶融状態の第2成形材が固化すると、該第2成形材は上記操作ボタンの模様材側と一体化する。従って、操作ボタンの成形と同時に該操作ボタンに模様材を付すことが可能になるとともに、支持材の成形と同時に該支持材を操作ボタンに一体化することが可能になって、操作ボタンと支持材との間に模様材が設けられた携帯電話機用操作部品が得られる。
【0012】
請求項2の発明は、携帯電話機用操作部品の製造装置の発明である。
【0013】
具体的には、透明な第1成形材からなる操作ボタンと、第2成形材からなり上記操作ボタンを支持する支持材との間に上記操作ボタン側に向く模様材が設けられた携帯電話機用操作部品を製造する製造装置を対象とする。
【0014】
そして、固定型と、上記固定型に対し進退可能に設けられた可動型と、上記固定型と可動型との間に配置され、該可動型側に第1成形面と第2成形面とを有するスライド型と、上記スライド型を、第1成形面が可動型の成形面と対向して第1キャビティを形成する位置と、第2成形面が可動型の成形面と対向して第2キャビティを形成する位置との間で移動させる移動手段と、上記模様材を上記第1キャビティのスライド型側に配置する模様材配置手段と、上記第1成形材を溶融させて上記第1キャビティに供給するとともに、上記第2成形材を溶融させて上記第2キャビティに供給する成形材供給手段とを備えている構成とする。
【0015】
この構成によれば、スライド型の第1成形面と可動型の成形面とを対向させて型閉じすることで第1キャビティが形成され、該第1キャビティに模様材配置手段により模様材が配置される。成形材供給手段により第1キャビティに供給された第1成形材が固化すると、スライド型側に模様材が付された操作ボタンを得ることが可能になる。そして、固定型と可動型とを型開きしたとき上記操作ボタンを可動型の成形面に保持させてから、スライド型を第2成形面が可動型の成形面と対向するまで移動手段により移動させて型閉じすることで第2キャビティが形成される。このとき、操作ボタンの模様材は第2成形面側に位置しているので、成形材供給手段により第2キャビティに供給された第2成形材が固化すると操作ボタンの模様材側と一体化する。従って、請求項1の発明と同様に、操作ボタンの成形と同時に該操作ボタンに模様材を付すことが可能になるとともに、支持材の成形と同時に該支持材を操作ボタンに一体化することが可能になって、操作ボタンと支持材との間に模様材が設けられた携帯電話機用操作部品が得られる。
【0016】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、模様材配置手段は、複数の模様材が所定方向に並んで設けられた長尺状のフィルム部材を備えるとともに、該フィルム部材を可動型とスライド型との間に配置し携帯電話機用操作部品の成形サイクル毎にフィルム部材を上記所定方向に移動させることにより、上記模様材を第1キャビティに順に配置するように構成されているものとする。
【0017】
この構成によれば、1回の成形サイクルが終わると、フィルム部材の第1キャビティに配置されている部分から模様材が無くなった状態となる。そして、次の成形サイクルにおいて、模様材配置手段によりフィルム部材を模様材が並ぶ方向に移動させると、先の成形サイクルで付された模様材に並ぶ次の模様材が第1キャビティに配置され、該模様材が次の成形サイクルで操作ボタンに付される。従って、例えば操作部品の脱型時に固定型と可動型とを型開きする際、この型開き工程に並行して同時にフィルム部材を移動させて次の模様材を第1キャビティに配置することが可能になり、成形サイクルに要する時間が長時間化するのを回避することが可能になる。
【0018】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、成形材供給手段は、第1成形材を固定型側から供給するように構成され、フィルム部材には、上記成形材供給手段から供給された第1成形材を第1キャビティに流入させる流入口が設けられている構成とする。
【0019】
この構成によれば、成形材供給手段により供給される第1成形材をフィルム部材の流入口から第1キャビティに流入させることが可能になる。
【0020】
請求項5の発明では、請求項3または4の発明において、成形材供給手段は、第2成形材を固定型側から供給するように構成され、フィルム部材における所定方向に並ぶ模様材の間には、スライド型の第2成形面の外形及び可動型の成形面の外形よりも大きい開口部が設けられ、模様材配置手段は、上記第2成形面と可動型の成形面との間に第2キャビティが形成されるときに、該第2キャビティの外側に上記開口部の周縁が位置するまでフィルム部材を移動させるように構成されているものとする。
【0021】
この構成によれば、操作ボタンを成形した後、スライド型を移動させて第2キャビティを形成するときに、模様材配置手段によりフィルム部材を移動させることでフィルム部材の開口部周縁を第2キャビティの外側に位置付けることが可能になる。これにより、第2成形材を第2キャビティに供給する際、フィルム部材が邪魔になることはなくなるとともに、第2キャビティに供給された第2成形材がフィルム部材と一体化することが回避される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、スライド型の第1成形面と可動型との間に形成された第1キャビティに模様材を配置して溶融状態の第1成形材を供給するようにしたので、操作ボタンの成形と同時に該操作ボタンに模様材を付すことができる。そして、操作ボタンを可動型に保持させてから、スライド型を移動させて形成した第2キャビティに溶融状態の第2成形材を供給するようにしたので、支持材の成形と同時に該支持材を操作ボタンに一体化して操作ボタンと支持材との間に模様材が設けられた携帯電話機用操作部品を得ることができる。これにより、携帯電話機用操作部品の製造工数を削減することができて、コストの低廉化を図ることができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様に、操作ボタンの成形と同時に該操作ボタンに模様材を付すことができるとともに、支持材の成形と同時に該支持材を操作ボタンに一体化して携帯電話機用操作部品を得ることができるので、携帯電話機用操作部品の製造工数を削減することができて、コストの低廉化を図ることができる。
【0024】
請求項3の発明によれば、フィルム部材に模様材を複数並べて設け、携帯電話機用操作部品の成形サイクル毎にフィルム部材を移動させて上記模様材を第1キャビティに順に配置するようにしたので、1回の成形サイクルに要する時間を長時間化することなく、模様材を第1キャビティに配置することができる。
【0025】
請求項4の発明によれば、第1成形材をフィルム部材の流入口から第1キャビティにおける所望位置に流入させることができて、携帯電話機用操作部品の欠陥を抑制することができる。
【0026】
請求項5の発明によれば、フィルム部材に開口部を形成し、この開口部周縁を第2キャビティの外側に位置付けるようにしたので、フィルム部材が第2成形材の供給を邪魔することはなく、第2成形材をスムーズに供給することができるとともに、第2キャビティに供給された第2成形材がフィルム部材と一体化するのを回避することができて、携帯電話機用操作部品の欠陥を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る製造装置1を示し、この製造装置1は携帯電話機用操作部品100を製造するものである。
【0029】
この実施形態の説明では、製造装置1の構造を説明する前に、上記操作部品100の構造について説明する。この操作部品100は、図7及び図8に示すように、複数の操作ボタン101と、該操作ボタン101を支持する支持材102とを一体化して構成されたものであり、これら操作ボタン101と支持材102との間には、数字やアルファベット等の模様材103が設けられている。操作ボタン101は第1成形材からなるものであり、この第1成形材としては、例えば透明なABS樹脂等の硬質材を用いることができる。一方、支持材102は第2成形材からなるものであり、この第2成形材としては、例えば透明なシリコンゴム等の軟質材を用いることができる。この操作部品100を携帯電話機に組み付けた状態で使用者が操作ボタン101を押すと、支持材102が弾性変形し、この支持材102が変形した分、操作ボタン101が変位し使用者に操作感が得られるようになっている。また、第1成形材は、模様材103を第1成形材の表面側から見ることができる程度の透明度があればよく、着色されていてもよい。
【0030】
次に、上記製造装置1について説明する。製造装置1は、成形用金型2と本発明の成形材供給手段としての射出成形機3とを備えている。成形用金型2は、固定型4と、該固定型4に対し進退する可動型5と、該固定型4と可動型5との間に配置されるスライド型6とで構成されている。
【0031】
上記射出成形機3は、第1射出部7及び第2射出部8を備えている。第1射出部7は、上記第1成形材を混練して溶融状態にし、射出ノズル7aから射出するように構成されている。一方、第2射出部8は、上記第2成形材を混練して溶融状態にし、射出ノズル8aから射出するように構成されている。これら第1射出部7及び第2射出部8は、図示しないが制御装置により独立して制御されるようになっている。
【0032】
尚、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、成形用金型2を射出ノズル7、8側から見たときに左となる側を単に「左」といい、同様に右となる側を単に「右」というものとする。
【0033】
射出成形機3のベッド(図示せず)上には固定盤10が設けられ、該固定盤10に上記固定型4が取り付けられている。固定型4及び固定盤10の略中央部には、上記第1射出部7の射出ノズル7aが連通する第1スプルー11が設けられている。また、図9に示すように、上記固定型4及び固定盤10の第1スプルー11よりも左側には、上記第2射出部8の射出ノズル8aが連通する第2スプルー12が設けられている。上記固定型4のスライド型6側の面には、略中央部に上記第1スプルー11の下流端が連通する固定型側第1ランナ13が設けられ、該固定型側第1ランナ13の左側に上記第2スプルー12の下流端が連通する固定側第2ランナ14が設けられている。
【0034】
また、固定型4の上部及び下部には、上記スライド型6の上下に設けられた脱型装置15が収容される収容凹部16がそれぞれ設けられている。
【0035】
上記スライド型6の上下方向の寸法は固定型4の上下方向の寸法よりも長く形成されており、このスライド型6は固定型4に移動機構(図示せず)を介して取り付けられている。上記移動機構は、スライド型6を固定型4に対し進退させる進退用シリンダと、スライド型6を固定型4と可動型5との型割面に沿って上下方向に移動させるスライド用シリンダとを備えていて、本発明の移動手段を構成している。
【0036】
図1に示すように、スライド型6の可動型5側の面における上半部は略平坦に形成されており、この上半部には、上記操作ボタン101の支持材102側を成形する第1成形面20が設けられている。スライド型6の上半部には、上記固定型側第1ランナ13と連通するスライド型側第1ランナ21が操作ボタン101の数に対応して複数設けられている。これらスライド型側第1ランナ21の下流端がそれぞれ第1ゲート23とされ、図4に示すように、該第1ゲート23は上記第1成形面20に開口している。これら第1ゲート23の開口位置は、後述の可動型5の成形面における凹部の形成位置に対応している。
【0037】
上記スライド型6の可動型5側の面における下半部には、上記支持材102を成形する凹状の第2成形面24が設けられている。スライド型6の下半部には、上記固定型側第2ランナ14に連通するスライド型側第2ランナ25が設けられている。このスライド型側第2ランナ25の下流端が第2ゲート26とされ、該第2ゲート26は上記第2成形面24に開口している。
【0038】
スライド型6における第2成形面24の上端部及び下端部には上記脱型装置15が設けられている。各脱型装置15は、押し出しピン27と、該押し出しピン27の基端に連結されて該押し出しピン27を進退させる押し出しシリンダ28とで構成されている。押し出しシリンダ28は、スライド型6から固定型4側へ突出しており、この突出部分が上記固定型4の収容凹部16に収容されるようになっている。そして、押し出しピン27は、押し出しシリンダ28によって、ピン先端面が第2成形面24と略同一面上に位置する後退状態と、図7(b)に示すように、ピン先端面が第2成形面24から突出する進出状態との一方に切り替えられる。
【0039】
図1に示すように、上記可動型5は、射出成形機3のベッド上を固定盤10に対し進退移動する可動盤30に取り付けられている。可動型5のスライド型6側の面には、操作ボタン101の表面側を成形するための凹部31が形成されており、これら凹部31及び該凹部31周囲の平坦面により成形面32が構成されている。凹部31は、操作ボタン101の間隔に対応して配置されている。このように可動型5の成形面32に凹部31が形成されているので、成形面32で成形される操作ボタン101は該成形面32に保持される。
【0040】
そして、図5(a)に示すように、スライド型6の第1成形面20が可動型5の成形面32に対向するまでスライド型6を下方へ移動させた状態で、固定型4と可動型5とを型閉じすると、固定型4とスライド型6とが密着するとともに、スライド型6と可動型5とが密着する。これにより、スライド型6の第1成形面20と可動型5の成形面32との間に第1キャビティ35(図5(a)に仮想線で示す)が形成されるとともに、固定型側第1ランナ13とスライド型側第1ランナ21とが連通する。
【0041】
一方、図6(b)に示すように、スライド型6の第2成形面24が可動型6の成形面32に対向するまでスライド型6を上方へ移動させた状態で、固定型4と可動型5とを型閉じすると、スライド型6の第2成形面24と可動型5の成形面32との間に第2キャビティ43(図6(b)に仮想線で示す)が形成されるとともに、固定型側第2ランナ14とスライド型側第2ランナ25とが連通する。また、固定型4と可動型5とを型開きすると、図1に示すように、上記進退用シリンダの動作によりスライド型6と固定型4との間には隙間が形成される。この隙間は、スライド型6を移動させる際に上記押し出しシリンダ28が固定型4に当たらないようにするためのものである。
【0042】
また、可動型5には、上記第1キャビティ35に模様材103を配置する模様材配置手段としての模様材配置装置36が設けられており、この模様材配置装置36も製造装置1を構成するものである。模様材配置装置36は、上側ローラ37と下側ローラ38とを有しており、これら上側ローラ37及び下側ローラ38は、図示しないが、例えば制御装置により制御されるモータ等により回転駆動され、任意のタイミングで回転が停止されるようになっている。
【0043】
上記上側ローラ37は、回転軸が略水平かつ固定型4及び可動型5の型割面方向に沿って延びるように可動型5の上端部に配置され、該上端部に取り付けられている。上記下側ローラ38は、回転軸が上記上側ローラ37の回動軸と略平行になるように可動型5の下端部に配置され、該下端部に取り付けられている。
【0044】
上側ローラ37には、模様材103が設けられた長尺状のフィルム部材39が巻き付けられていて、このフィルム部材39が下側ローラ38に巻き取られるようになっている。フィルム部材39は、可動型5のスライド型6側の面に密着するように配置されており、固定型4と可動型5とを型閉じした状態で該可動型5とスライド型6との間に位置する。このフィルム部材39は上記模様材配置装置36の構成部材である。
【0045】
フィルム部材39は、溶融状態の第1成形材が接触しても変形しない耐熱性を有する材質で構成されている。上記模様材103は、フィルム部材39の可動型5側の面に該フィルム部材39の長手方向に間隔をあけて複数設けられており、これら模様材103の表面は可動型5側に向いている。
【0046】
模様材103は、溶融状態の第1成形材が接触したときの熱によりフィルム部材39から剥離して第1成形材に転写されるようになっており、樹脂成形品に模様を付す際に従来から用いられているものである。図2に示すように、模様材103は操作ボタン101の個数に対応して複数個に分割され、これらが1回の成形サイクルで操作ボタン101に付されるようになっている。これら模様材103の右側のフィルム部材39には、該フィルム部材39を貫通し、型閉じ状態で第1ゲート23に連通する孔部40がそれぞれ形成されている。これら孔部40は、溶融状態の第1成形材を第1ゲート23から第1キャビティ35に流入させるためのものであり、本発明の流入孔を構成している。
【0047】
フィルム部材39において1回目の成形サイクルで操作ボタン101に付される模様材103と、次の成形サイクルで操作ボタン101に付される模様材103との間には、該フィルム部材39の長手方向に長い略矩形の開口部42が形成されている。つまり、フィルム部材39には、該フィルム部材39の長手方向に、1回の成形サイクルで操作ボタン101に付される模様材103と開口部42とが交互に設けられている。開口部42の大きさは、平面視で上記スライド型6の第2成形面24及び可動型5の成形面32よりも大きく形成されている。従って、開口部42は、固定型4と可動型5とを型閉じして形成される第2キャビティ43よりも大きいため、上記模様材配置装置36によりフィルム部材39を長手方向に移動させることにより、開口部42の周縁を第2キャビティ43の外側に位置させることができるようになっている。
【0048】
次に、上記のように構成された製造装置1を用いて操作部品100を製造する場合について説明する。まず、図1に示すように、固定型4と可動型5とを型開きしておき、フィルム部材39を模様材配置装置36により移動させて、図2に示すように、模様材103の表側を可動型5の成形面32に対向させて所定位置に配置する。さらに、スライド型6を上記スライド用シリンダにより下降させて、スライド型6の第1成形面20を可動型5の成形面32と対向させる。そして、図5(a)に示すように、固定型4と可動型5とを型閉じする。これにより、第1成形面20と可動型5の成形面32との間に第1キャビティ35が形成されるとともに、模様材103が第1キャビティ35のスライド型6側に配置された状態となる。
【0049】
その後、第1射出部7の射出ノズル7aから溶融状態の第1成形材を射出すると、該第1成形材は、第1スプルー11及び固定型側第1ランナ13を通ってスライド型側第1ランナ21に流入する。このスライド型側第1ランナ21に流入した第1成形材は、各第1ゲート23からフィルム部材39の孔部40を通って第1キャビティ35に供給されて充填される。このように、第1成形材は、フィルム部材39を通過して第1キャビティ35に流入する。尚、孔部40の形状は任意に設定することが可能である。
【0050】
第1キャビティ35に充填された第1成形材がフィルム部材39上の模様材103に接触すると該模様材103が第1成形材に転写され、第1成形材が固化すると該第1成形材と模様材103が一体化し、模様材が付された操作ボタン101が得られる。
【0051】
第1成形材が固化した後、図5(b)に示すように、固定型4と可動型5とを型開きし、図示しないが、第1スプルー11、固定型側第1ランナ13及びスライド型側第1ランナ21で固化した第1成形材を、スライド型6と固定型4との隙間から除去する。この固定型4と可動型5とを型開きした状態では操作ボタン101は可動型5の成形面32に保持されている。
【0052】
さらに、上記固定型4と可動型5とを型開きした状態で、図3及び図6(a)に示すように、模様材配置装置36の上側ローラ37及び下側ローラ38を回転させて、上記開口部42の周縁が可動型5の成形面32よりも外側に位置するまでフィルム部材39を下方へ移動させる。このとき、スライド型6を上記スライド用シリンダにより上昇させてスライド型6の第2成形面24を可動型5の成形面32と対向させる。このフィルム部材39を移動させる工程と、型開きしてスライド側6を移動させる工程とは並行して進めるようにしている。尚、上記フィルム部材39を移動させる工程と、型開きしてスライド型6を移動させる工程とは並行して進めることなく、一方の工程が終了した後、他方の工程を開始するようにしてもよい。
【0053】
そして、図6(b)に示すように、固体型4と可動型5とを型閉じする。これにより、スライド型6の第2成形面24と可動型6の成形面32との間に第2キャビティ43が形成される。この第2キャビティ43には上記模様材103の裏側が臨むことになる。
【0054】
しかる後、第2射出部8の射出ノズル8aから溶融状態の第2成形材を射出すると、該2成形材は、第2スプルー12及び固定型側第2ランナ14を通ってスライド型側第2ランナ25に流入する。このスライド型側第2ランナ25に流入した第2成形材は、第2ゲート26からフィルム部材39の開口部42を通って第2キャビティ43に供給されて充填される。この第2成形材を第2キャビティ43に供給する際、フィルム部材39の開口部42の周縁が第2キャビティ43内に位置していないので、フィルム部材39が第2成形材の流れを阻害することはなく該第2成形材がスムーズに供給されるとともに、第2成形材がフィルム部材39と一体化することも回避される。
【0055】
第2キャビティ43に充填された第2成形材は固化する際に、操作ボタン101の模様材103側と一体化する。第2成形材が固化すると、図7(a)に示すように、固定型4と可動型5とを型開きする。この型開き状態では、支持材102が第2成形面24に保持されており、図7(b)に示すように、上記脱型装置15の押し出しシリンダ28により押し出しピン27を進出させると、操作ボタン101と支持材102との間に模様材103が設けられた操作部品100が脱型される。
【0056】
このようにして1回の成形サイクルが終わると、次の成形サイクルに備えて模様材配置装置36を作動させてフィルム部材39を下方へ移動させて、次の模様材103を第1キャビティ35に配置する。尚、このフィルム部材39を移動させる工程と、型開きして操作部品100を脱型する工程とは並行して進めるようにしているが、これら両工程を並行して進めることなく、一方の工程が終了した後、他方の工程を開始するようにしてもよい。
【0057】
したがって、この実施形態によれば、スライド型6の第1成形面20と可動型5の成形面32との間に第1キャビティ35を形成し、該第1キャビティ35に模様材103を配置して第1成形材を供給するようにしたので、第1キャビティ35において操作ボタン101の成形と同時に該操作ボタン101に模様材103を付すことができる。そして、固定型4と可動型5とを型開きした後、可動型5に操作ボタン101を保持させたままスライド型6を移動させて型閉じして形成した第2キャビティ43に第2成形材を供給するようにしたので、支持材102の成形と同時に該支持材102を操作ボタン101と一体化することができる。これにより、操作部品100の製造工数を削減することができて、コストの低廉化を図ることができる。
【0058】
また、模様材103を長尺状のフィルム部材39に長手方向に並べて複数設け、このフィルム部材39を成形サイクル毎に長手方向に移動させることで模様材103を第2キャビティ43に配置するようにしたので、模様材103を第1キャビティ35に配置する工程を成形サイクルの他の工程と並行して進めることができる。これにより、1回の成形サイクルに要する時間が長時間化するのを回避することができる。
【0059】
また、フィルム部材39に、第1ゲート23に連通する孔部40を形成したので、該孔部40を介して第1成形材を第1キャビティ35における所望位置に供給することができて、操作ボタン101の欠陥を抑制することができる。
【0060】
また、フィルム部材39に、スライド型6の第2成形面24の外形及び可動型5の成形面32の外形よりも大きい開口部42を設け、第2キャビティ43が形成されるときに、該第2キャビティ43の外側に開口部42の周縁を位置付けるようにしたので、第2成形材を第2キャビティ43に供給する際、フィルム部材39が邪魔にならず、しかも、第2成形材がフィルム部材39と一体化することが回避される。このことによっても、操作部品100の欠陥を抑制することができる。
【0061】
尚、上記模様材103は転写以外の方法で操作ボタン101に付すようにしてもよい。この場合、例えば、フィルム部材39における模様材103の周囲に脆弱部を設けておく。そして、模様材103を操作ボタン101と一体化した後、模様材配置装置36によりフィルム部材39を移動させる際に、脆弱部を破断させて模様材103をフィルム部材39から切り離すことで、模様材103を操作ボタン101に付すことができる。
【0062】
また、この実施形態では、第1成形材及び第2成形材を透明にしているが、第1成形材のみを透明にしてもよい。また、第1成形材及び第2成形材としては、用途等に応じて各種樹脂材料やゴム材料を用いることができる。また、第1成形材及び第2成形材を同じにしてもよい。
【0063】
また、この実施形態では、スライド型6を移動機構により上下方向に移動させるようにしているが、これに限らず、例えば固定型4と可動型5との型割面に沿って左右方向に移動させるようにしてもよい。この場合には、スライド型6を左右方向に長く形成し、第1成形面20及び第2成形面24をスライド型6に左右に並べて設ける。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明は、携帯電話機の操作部品を製造するのに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態に係る製造装置の縦断面図である。
【図2】可動型を固定型側から見た正面図である。
【図3】成形面に操作ボタンを保持し、フィルム部材の開口部周縁を成形面よりも外側に位置付けた状態を示す図2相当図である。
【図4】スライド型を可動型側から見た正面図である。
【図5】(a)は、第1キャビティで第1成形材が固化した状態を示す図1相当図であり、(b)は、操作ボタンの成形が終了して固定型と可動型とを型開きした状態を示す図1相当図である。
【図6】(a)は、スライド型を上昇させ、フィルム部材の開口部周縁を可動型の成形面よりも外側に位置付けた状態を示す図1相当図であり、(b)は、固定型と可動型とを型閉じして形成された第2キャビティで第2成形材が固化した状態を示す図1相当図である。
【図7】(a)は、第2成形材が固化して固定型と可動型とを型開きした状態を示す図1相当図であり、(b)は、操作部品をスライド型から脱型した状態を示す図1相当図である。
【図8】図7(a)の状態にあるスライド型の図4相当図である。
【図9】固定型を可動型側から見た正面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 製造装置
4 固定型
5 可動型
6 スライド型
7 第1射出部
8 第2射出部
20 第1成形面
24 第2成形面
35 第1キャビティ
36 模様材配置装置(模様材配置手段)
39 フィルム部材
40 流入孔
42 開口部
43 第2キャビティ
100 操作部品
101 操作ボタン
102 支持材
103 模様材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な第1成形材からなる操作ボタンと、第2成形材からなり上記操作ボタンを支持する支持材との間に上記操作ボタン側に向く模様材が設けられた携帯電話機用操作部品を製造する方法であって、
固定型と可動型とを型閉じして該固定型と可動型との間に配置されたスライド型の第1成形面と上記可動型の成形面との間に第1キャビティを形成するとともに、該第1キャビティのスライド型側に上記模様材を配置し、
その後、上記第1キャビティに溶融状態の第1成形材を供給して固化させることにより模様材が付された操作ボタンを得た後、上記固定型と可動型とを型開きして、該操作ボタンを可動型に保持させ、
次いで、上記スライド型を該スライド型の第2成形面が上記可動型に保持された操作ボタンと対向するまで移動させて上記固定型と可動型とを型閉じし、上記スライド型の第2成形面と上記可動型の成形面との間に第2キャビティを形成し、
しかる後、上記第2キャビティに溶融状態の第2成形材を供給して該第2成形材を上記操作ボタンの模様材側と一体化して固化させることにより、操作ボタンと支持材との間に模様材が設けられた携帯電話機用操作部品を得ることを特徴とする携帯電話機用操作部品の製造方法。
【請求項2】
透明な第1成形材からなる操作ボタンと、第2成形材からなり上記操作ボタンを支持する支持材との間に上記操作ボタン側に向く模様材が設けられた携帯電話機用操作部品を製造する製造装置であって、
固定型と、
上記固定型に対し進退可能に設けられた可動型と、
上記固定型と可動型との間に配置され、該可動型側に第1成形面と第2成形面とを有するスライド型と、
上記スライド型を、第1成形面が可動型の成形面と対向して第1キャビティを形成する位置と、第2成形面が可動型の成形面と対向して第2キャビティを形成する位置との間で移動させる移動手段と、
上記模様材を上記第1キャビティのスライド型側に配置する模様材配置手段と、
上記第1成形材を溶融させて上記第1キャビティに供給するとともに、上記第2成形材を溶融させて上記第2キャビティに供給する成形材供給手段とを備えていることを特徴とする携帯電話機用操作部品の製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯電話機用操作部品の製造装置において、
模様材配置手段は、複数の模様材が所定方向に並んで設けられた長尺状のフィルム部材を備えるとともに、該フィルム部材を可動型とスライド型との間に配置し携帯電話機用操作部品の成形サイクル毎にフィルム部材を上記所定方向に移動させることにより、上記模様材を第1キャビティに順に配置するように構成されていることを特徴とする携帯電話機用操作部品の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の携帯電話機用操作部品の製造装置において、
成形材供給手段は、第1成形材を固定型側から供給するように構成され、
フィルム部材には、上記成形材供給手段から供給された第1成形材を第1キャビティに流入させる流入口が設けられていることを特徴とする携帯電話機用操作部品の製造装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の携帯電話機用操作部品の製造装置において、
成形材供給手段は、第2成形材を固定型側から供給するように構成され、
フィルム部材における所定方向に並ぶ模様材の間には、スライド型の第2成形面の外形及び可動型の成形面の外形よりも大きい開口部が設けられ、
模様材配置手段は、上記第2成形面と可動型の成形面との間に第2キャビティが形成されるときに、該第2キャビティの外側に上記開口部の周縁が位置するまでフィルム部材を移動させるように構成されていることを特徴とする携帯電話機用操作部品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−218835(P2006−218835A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36681(P2005−36681)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(505054519)株式会社加西産業 (12)
【Fターム(参考)】