説明

携帯電話装置、それを使用する車両制御装置および車両運行管理システム

【課題】アルコール等の禁止薬物の濃度を検出して、予め設定した濃度を超える場合に、車両の制御を不能にすることにより、危険運転を確実に防止する携帯電話装置、それを使用する車両制御装置および車両運行管理システムを提供する。
【解決手段】携帯電話装置10は、アルコール等の禁止薬物検出部21、ユーザを識別する指紋認証部22および車両通信部23を備えている。そして、指紋認証部22でユーザを識別後に、このユーザの汗に含まれる禁止薬物の濃度をアルコール(薬物)検出部21で検出し、この検出濃度が予め設定された濃度を超える場合には、車両ドアのロック/アンロック又はエンジン始動のため車両通信部23による車両へのリモコン信号の送信を不能にして運転禁止する。この運転禁止期間は、検出された薬物濃度に応じて複数の値に設定され、この禁止期間後に車両制御を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話装置、それを使用する車両制御装置および車両運行管理システムに関し、特に車両のドライバがアルコール等の禁止薬物を飲食したことを検出し、規定値を超える薬物濃度のドライバによる車両の危険運転を阻止する薬物検出機能付き携帯電話装置、それを使用する車両制御装置および車両運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話は、圏内(即ち、無線基地局のサービスエリア内)であれば、そのユーザがどこへ移動しても他の通信装置(携帯電話又は固定電話)と通信可能であるという利便性の故に、急速に普及している。また、携帯電話の高機能化に伴い、その用途又は応用範囲は、単なる通信手段に留まらず、例えば撮影手段、個人認証手段、電子マネー等の種々の分野に急速に拡大している。斯かる高機能化に伴い、携帯電話は、今や現代人には不可欠の電子機器の1つであるといっても過言ではなくなりつつあり、外出時のみならず在宅時であっても、必ずユーザが身に付け又は傍に置くのが一般的になっている。
【0003】
他方、車両(自動車、バスおよびトラック等の路上を自由に走行するものおよび決められた軌道上を走行する電車等を含む)も比較的遠距離への個人的な高速の交通手段として広く普及している。少なくとも一家に1台の割合で車両を所有して業務又はレジャーに使用するのが一般的になっている。このように車両は、高速で走行可能であるので、誤った運転をするとドライバ(運転者)自身を死傷させると共に他の車両のドライバや同乗者のみならず路上を歩行する歩行者を死傷させ、更には路傍の建造物を破壊する凶器となり得る。車両の凶器化は、そのドライバの運転技術が未熟な場合や不注意の場合もあるが、特に、ドライバがアルコール等の禁止薬物を飲食して運動能力や注意力が低下した状態で運転する飲酒運転(危険運転)等が大きな社会問題となっている。
【0004】
斯かる飲酒又は危険運転による交通事故を撲滅又は低減する種々の努力がなされている。その1つは、法令(道路交通法および刑法)による罰則の強化である。しかし、如何に法令による罰則を強化しても、法令を無視するドライバを皆無にすることは困難である。そこで、アルコール等の禁止薬物を飲食した不適格なドライバによる車両の運転を不可能にするための対策が必要であり、この対策が確実になされることにより初めてこの問題の解決が期待できる。
【0005】
斯かる飲酒運転を防止するための対策として、アルコール検出可能なアルコール検出機能を付加した携帯電話が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。また、車両の運転者の血中又は汗に含まれるアルコール濃度を車両自体の運転操作部に設け、所定のアルコール濃度を超えると警告するか又は駆動状態を制御する後段処理を行う飲酒運転チェック装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2001−313696号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】特開2003−115902号公報(第3−4頁、第1図)
【特許文献3】特開2005−224319号公報(第4−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来技術は、次の如き課題を有する。即ち、上述した特許文献1および2には、携帯電話機にアルコール検知機能を付加し、センサで検出されたアルコール成分が許容範囲内か否かを判断し、判断結果を表示部に表示又はスピーカから警告を発するか又は飲酒量をチェックして判定するのみである。そのアルコール量の判断結果によりユーザ(ドライバ)が車両の運転を止めるか否かは、ユーザの良心又はモラルに依存し、運転を確実に禁止又は抑止することは期待できない。
【0007】
他方、上述した特許文献3には、車両の運転者の血中又は汗に含まれるアルコール濃度を、車両自体の運転操作部に設けられたセンサにより検出し、所定のアルコール濃度を超える場合には警告するか車両の駆動状態を制御する後段処理を行う飲酒運転のチェック装置であり、車両毎に複雑且つ特別な構成を必要とする。
【0008】
本発明は、従来技術の上述した課題に鑑みなされたものであり、斯かる課題を解消又は軽減する携帯電話装置、それを使用する車両制御装置および車両運行監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による携帯電話装置、それを使用する車両制御装置および車両運行管理システムは、次の如き特徴的な構成を有する。
【0010】
(1)制御部により制御される無線部に接続されたアンテナを介して無線通信する携帯電話装置において、
ユーザを識別するユーザ識別手段と、
前記ユーザの禁止薬物の濃度を検出する薬物検出手段と、
前記無線部に接続されたアンテナを介して車両に搭載されたリモコン制御部に制御信号を送信する車両通信手段と、
を備え前記薬物検出手段による前記薬物の濃度に応じて前記車両通信手段による前記車両のリモコン制御部との通信を制限する携帯電話装置。
(2)前記薬物検出手段により前記薬物が検出された場合に、前記検出された薬物濃度を予め複数に区分し、該区分毎に前記車両通信手段の通信を阻止する運転禁止期間を変更する上記(1)の携帯電話装置。
(3)前記薬物検出手段は、前記ユーザ識別手段により前記ユーザを確認後に、前記ユーザが発する汗に含まれる前記薬物の濃度を薬物センサにより検出する上記(1)又は(2)の携帯電話装置。
(4)前記薬物検出手段が、予め定めた規定値を超える薬物濃度を検出したとき、該検出結果を前記ユーザに通知して警告する警告手段を更に備える上記(1)乃至(3)の何れかの携帯電話装置。
(5)前記薬物検出手段が、予め定めた規定値を超える薬物濃度を検出したとき、該検出結果を外部へ送信する送信手段を更に備える上記(1)乃至(4)の何れかの携帯電話装置。
(6)前記薬物検出手段が、前記薬物検出を行った位置情報を取得する位置情報取得手段を更に備え、前記位置情報を前記薬物検出結果と共に管理する上記(1)乃至(5)の何れかの携帯電話装置。
(7)車両通信部からの制御信号を無線により携帯電話装置から送信してリモコン受信部が搭載された車両を制御する携帯電話装置を使用する車両制御装置において、
前記携帯電話装置は、前記車両のドライバであるユーザを識別する識別手段と、前記ユーザの禁止薬物濃度を検出する薬物検出手段とを備え、
該薬物検出手段が規定濃度を超える前記薬物を検出すると、前記車両の制御を不能化する携帯電話装置を使用する車両制御装置。
(8)前記車両の制御不能化は、前記薬物検出手段が検出した前記薬物の濃度に応じて予め決められた車両運転禁止期間中、前記携帯電話装置の車両通信部から前記車両への制御信号の送信を禁止する上記(7)の携帯電話装置を使用する車両制御装置。
(9)前記薬物検出手段が前記ユーザから予め定めた規定値を超える薬物濃度を検出した場合には、前記ユーザ情報と共に前記薬物の検出データを前記携帯電話装置から予め指定した外部へ送信する上記(7)又は(8)の携帯電話装置を使用する車両制御装置。
(10)携帯電話装置により制御可能な複数台の車両のドライバが禁止薬物を飲食して危険運転しているか否かを管理センターで管理する車両運行管理システムにおいて、
前記携帯電話装置は、前記ドライバを識別する識別手段と、該識別手段で識別された前記ドライバの前記薬物の濃度を検出する薬物検出手段とを備え、
前記ドライバが前記車両を運転するため前記携帯電話装置により制御するとき、該携帯電話装置の前記薬物検出手段で前記ドライバの薬物濃度を検出して前記携帯電話装置から自動的に前記管理センターへ送信する車両運行管理システム。
(11)前記携帯電話装置は、位置情報を取得する位置情報取得手段を更に備え、前記位置情報を前記薬物検出手段による前記ドライバの薬物濃度データと共に前記管理センターへ送信する上記(10)の車両運行管理システム。
(12)前記薬物濃度検出手段は、前記ドライバが前記携帯電話装置により前記車両のドアの開閉やエンジン始動操作をする毎に前記ドライバの薬物濃度を検出し、前記携帯電話装置により前記管理センターへ送信する上記(10)又は(11)の車両運行管理システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明による携帯電話装置、それを使用する車両制御装置および車両運行管理システムは、次の如き実用上の顕著な特有の効果を奏する。即ち、携帯電話装置にユーザ識別手段とアルコール等の禁止薬物の検出手段を備え、検出された薬物濃度に応じて車両の制御を不可能にするので、確実に危険運転を抑止可能である。また、検出された薬物濃度に応じて複数の運転禁止期間が予め設定されるので、ユーザ(ドライバ)が安全運転可能な正常状態に回復するまで、確実に危険運転を禁止可能である。更に、車両自体には、リモコン受信部(およびそれによる制御部)を搭載する以外に特別の構成を付加する必要なく、携帯電話装置を保持するユーザ(又はドライバ)によりどの車両でも制御・操作可能である。更にまた、薬物濃度および位置データを管理センターへ自動送信することにより、車両のドライバおよび車両の運行を確実に管理することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による携帯電話装置およびそれを使用する車両制御装置の好適な実施の形態の構成および動作を、添付図面を参照して詳述する。
【0013】
先ず、図1は、本発明による携帯電話装置の第1実施の形態であるアルコール検出機能付き携帯電話装置(以下、単に携帯電話装置という)の構成を示す機能ブロック構成図である。この携帯電話装置10は、無線部11、アンテナ12、表示部13、操作部14、メモリ部15、制御部16、スピーカ部(又は警報部)17、アルコール検出部21、ユーザ識別部(指紋認証部)22および車両通信部23により構成されている。この携帯電話装置10は、アルコール検出部21、指紋認証部22および車両通信部23を除き、一般的な携帯電話装置と同様の構成である。
【0014】
図1に示す携帯電話装置10において、無線部11、表示部13、操作部14、メモリ部15、スピーカ部17、アルコール検出部(薬物検出部)21、指紋認証部(ユーザ識別部)22および車両通信部23は、制御部(例えば、CPU:中央処理装置)16に接続されている。また、アンテナ12は、無線部11に接続されている。
【0015】
次に、図1に示す携帯電話装置10の各構成要件乃至要素11〜23の主要機能について説明する。無線部11は、アンテナ12を介して比較的狭いサービスエリアを有する少なくとも1以上の携帯電話の基地局と無線により情報を送受信する。表示部13は、各種情報や警報を表示する、例えば液晶表示パネル(LCD)である。操作部14は、後述する如き決定キー等を含む各種キーのキー操作を行う。メモリ部15は、各種情報、プログラム又はデータ等を格納する。スピーカ部17は、警報等を鳴動によりユーザに通知する。
【0016】
アルコール検出部21は、ユーザのアルコール濃度を検出し、検出されたアルコール濃度が予め設定された基準値を超えるか否かを判断する。指紋認証部22は、携帯電話装置10のユーザ(又は使用者)を識別するため指紋認証を行う。車両通信部23は、車両との無線通信を行う。制御部16は、無線部11、表示部13、操作部14、メモリ部15、スピーカ部17、アルコール検出部21、指紋認証部22および車両通信部23の各部の動作を制御する。尚、アンテナ12は、無線部11からの無線出力信号を最寄の基地局へ送信すると共に、無線基地局からの無線信号を受信して無線部11へ入力する。
【0017】
次に、図1に示す携帯電話装置10の動作を、図2乃至図4を参照して説明する。図2は、図1に示す携帯電話装置10における指紋認証(ユーザ識別)処理およびアルコール(禁止薬物)濃度検出(又は測定)処理のフローチャートである。図3は、図1に示す携帯電話装置10における車両ドアのロック/アンロック処理のフローチャートである。図4は、図1に示す携帯電話装置10における車両のエンジン始動処理のフローチャートである。
【0018】
先ず、携帯電話装置10の操作部14の何れかのキーが操作されると、予め設定されている指定時間内に指紋認証部22によりユーザの指紋が認証されたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、指紋認証されていない場合(ステップS101:NO)には、指紋認証部22で使用者の指紋パターンを検出し、予めメモリ部15に登録してある指紋パターンと比較する指紋認証処理を行う(ステップS102)。他方、指紋認証済みの場合(ステップS101:YES)には、操作継続ステップへ進む(ステップS110)。
【0019】
次に、指紋認証処理で認証が一致したか否かを判定する(ステップS103)。認証が一致しない場合(ステップS103:NO)には、表示部13に認証不一致(NG)の表示およびスピーカ部17の鳴動による警告を行い(ステップS111)、携帯電話装置10を待ち受け状態に戻す。他方、認証が一致した場合(ステップS103:YES)には、表示部13に認証OKの表示およびスピーカ部17でその旨の鳴動を行う(ステップS104)。
【0020】
次に、アルコール検出部21でユーザの汗からアルコール濃度を測定する(ステップS105)。このアルコール濃度の測定後にアルコール濃度が予め設定された一定値以上(即ち、基準値を超えた)か否かを判定する(ステップS106)。基準値を超えない場合(ステップS106:NO)には、ステップS112へ進み、指紋認証およびアルコール濃度検出処理((1)の処理)中か否か判定する。この処理中でない場合(ステップS112:NO)には、ステップS110へ進み、処理中の場合(ステップS112:YES)には、後述するドアのロック/アンロック処理((2)の処理)又はエンジン始動処理((3)の処理)へ進む。他方、アルコール濃度が基準値を越える場合(ステップS106:YES)には、図5のアルコール濃度に応じた運転禁止時間を制御部16のタイマ(図示せず)に設定する(ステップS107)。そして、(1)の処理中か否かを判定し(ステップS108)、処理中でない場合(ステップS108:NO)には、表示部13に運転禁止表示およびスピーカ部17にその旨の鳴動を行う(ステップS109)。(1)の処理中の場合(ステップS108:YES)には、(2)の処理又は(3)の処理へ進む。
【0021】
ここで、図5に示すアルコール濃度に応じた運転禁止期間の設定例について説明する。図5に示す具体例では、アルコール濃度を6つの区分、即ち0.02〜0.04%の「爽快期」、0.05〜0.1%の「ほろ酔い初期」、0.11〜0.15%の「ほろ酔い極期」、0.16〜0.3%の「酩酊極期」、0.31〜0.40%の「泥酔期」および0.41〜0.50%の「昏睡期」に分類している。そして、それぞれの区分に対応する運転禁止時間を、3時間、7時間、9時間、12時間、24時間および48時間と設定している。尚、図5中には、アルコール濃度の各区分の臨床症状およびそれに対応する酒量も例示している。
【0022】
上述した(1)の処理は、この図5に例示する如く設定された「運転禁止時間」が経過したか否かを、制御部16のタイマで判定することも含んでいる。後述の如く、アルコール検出部21により、上述した各区分のアルコール濃度が一度検出されると、その区分に応じて設定された「運転禁止期間」が経過するまでは、車両通信部23により車両との通信およびそのドア開閉やエンジン始動等の制御を不能にすることにより、酔払運転によるユーザ(運転者)自身のみならず他の車両ドライバや歩行者とのトラブルを効果的に回避又は阻止する。
【0023】
次に、本発明の携帯電話装置10を使用する車両制御、即ち車両ドアのロック/アンロックのワイヤレス・リモート動作について、図3を参照して説明する。図3は、携帯電話装置10による車両ドアのロック/アンロック操作を示すフローチャートである。
【0024】
携帯電話装置10の車両通信部23は、車両に搭載されているリモコン受信部(図示せず)と無線(ワイヤレス)通信を行う。即ち、携帯電話装置10のユーザは、その車両通信部23からリモートデータを送信して車両ドアのロック/アンロックを行う。先ず、予め設定されている指定時間内にユーザの指紋が認証されたか否かを判定する(ステップS201)。
【0025】
ここで、指紋認証されていない場合(ステップS201:NO)には、キー操作と同様の指紋認証処理およびアルコール検出処理((1)の処理)を行う。指紋認証済みの場合(ステップS201:YES)には、車両ドアのロック操作かアンロック操作かの判定を行う(ステップS202)。ロック操作の場合には、そのままリモートデータ送信を行う(ステップS206)。他方、アンロック操作の場合には、アルコール検出状態か否かを判定する(ステップS203)。
【0026】
ここで、例えば図5に示す区分に該当するアルコール濃度がアルコール検出部21により検出されない状態、即ちアルコール検出状態でない場合(ステップS203:NO)には、ロック操作と同様にリモートデータ送信を行う(ステップS206)。他方、基準値を超えるアルコール濃度が検出された状態、即ちアルコール検出状態の場合(ステップS203:YES)には、表示部13に運転禁止表示およびスピーカ部17にその旨の鳴動を行い(ステップS204)、ユーザに「飲酒運転禁止」を警告する。ここで、ユーザが飲酒している状態で車両の運転はしないが、車両に乗せている荷物等を取り出すためにドアのアンロック操作をする場合もあり得る。そのため、アンロック操作をするか否かをユーザに確認させる(ステップS205)。この目的でアンロックさせる場合(ステップS205:YES)には、リモートデータ送信を行う(ステップS206)。他方、アンロックさせない場合(ステップS205:NO)には、操作終了となり(ステップS207)、リモート操作を終了する。
【0027】
次に、本発明の携帯電話装置10を使用する車両エンジン始動動作について、図4を参照して説明する。図4は、携帯電話装置10による車両のエンジン始動動作を説明するフローチャートである。
【0028】
先ず、図3を参照して上述した車両ドアのロック/アンロック動作と同様に、携帯電話装置10の車両通信部23は、車両に搭載されているリモコン受信部と無線通信を行い、エンジン始動の条件をアルコール検出されているか否かで判断する。即ち、予め設定されている指定時間内に指紋認証部22でユーザの指紋が認証されたか否かを判定する(ステップS301)。指紋認証されていない場合(ステップS301:NO)には、キー操作と同様の指紋認証処理およびアルコール検出処理を行う。他方、指紋認証済みの場合(ステップS301:YES)には、アルコール検出部21によるアルコール検出状態を判定する(ステップS302)。ここで、アルコール検出がない場合(ステップS302:NO)には、エンジン始動許可のリモートデータを送信し(ステップS304)、車両のエンジン始動許可、即ちエンジン始動を可能にする(ステップS305)。他方、基準値を越えるアルコール濃度を検出した場合(ステップS302:YES)には、表示部13に「運転禁止表示」およびスピーカ部17の鳴動でその旨の警告を行い(ステップS303)、ユーザに「飲酒運転禁止」を警告して車両のエンジン始動を中止し処理を終了する(ステップS306)。
【0029】
次に、本発明による携帯電話装置の第2実施の形態について、図6〜図8を参照して詳細に説明する。図6は、本発明による携帯電話装置の第2実施の形態である薬物検出機能を備えた携帯電話装置20の構成を示す機能ブロック図である。図7は、この携帯電話装置20の動作を説明するフローチャートである。図8は、この携帯電話装置20の概略的な外観を示す斜視図である。
【0030】
先ず、図6の機能ブロック図において、説明の便宜上、図1に示す携帯電話装置10の構成に対応する構成要素には同じ参照符号を使用する。この携帯電話装置20は、携帯電話の基地局より送信される情報を受信する無線部11、アンテナ12、表示部13、決定キーを含む操作部(又はキー操作部)14、メモリ部15、各部の動作を制御する制御部16、スピーカ部17、アルコールに限らず、コカインや麻薬等の如く人間の正常な運動能力および判断能力を低下させる特定の禁止薬物を検出する薬物検出部21、ユーザの指紋認証を行う指紋認証部22、車両との通信を行う車両通信部23、ユーザの写真撮影手段であるカメラ部24および位置検出手段であるGPS(Global Positioning System)部25により構成されている。
【0031】
この携帯電話装置20において、制御部16は、例えばCPU(中央処理装置)であって、無線部11、表示部13、操作部14、メモリ部15、スピーカ部17、カメラ部24、GPS部25、薬物検出部21、指紋認証部22および車両通信部23に接続され、これらの動作を総合的に制御する。アンテナ12は、サービスエリア内の無線基地局との無線通信のために無線部11に接続されている。
【0032】
次に、図7のフローチャートを参照して、携帯電話装置20の指紋認証処理及び薬物検出処理動作を説明する。先ず、携帯電話装置20の操作部14のキー操作、車両ドアのロック/アンロック操作又は車両のエンジン始動操作の何れかが行われると、予め設定されている指定時間内に指紋認証部22でユーザの指紋が認証されたか否かを判定する(ステップS401)。ここで、指紋認証されていない場合(ステップS401:NO)には、指紋認証部22でユーザの指紋パターンを検出し、予めメモリ部15に登録してある指紋パターンと比較する指紋認証処理を行う(ステップS402)。
【0033】
次に、指紋認証の一致を判定する(ステップS403)。指紋認証が一致しない場合(ステップS403:NO)には、表示部13に指紋認証NG(不一致)の表示およびスピーカ部17で鳴動によるその旨の警告を行い(ステップS411)、携帯電話装置20を待ち受け状態に戻す。他方、認証が一致した場合(ステップS403:YES)には、表示部13に認証OK(一致)の表示およびスピーカ部17で鳴動によるその旨の通知を行う(ステップS404)。
【0034】
このステップS404の次に、薬物検出部21によりユーザの汗に特定の禁止薬物が含まれているかを検査する薬物検出処理を行う(ステップS405)。この薬物検出処理の後、禁止薬物が含まれているか否かを判定する(ステップS406)。規定量を超える禁止薬物が検出された場合(ステップS406:YES)には、GPS部25で現在の位置の測定を行うと共にカメラ部24でユーザの写真を撮影する(ステップS407)。更に、検出した禁止薬物の情報、測定した現在位置情報および撮影したユーザの撮影データをまとめて警察署(又はバスやタクシー会社の場合にはドライバ管理センター等)に電子メールで自動送信する(ステップS408)。
【0035】
尚、ステップS407およびステップS408の処理については、ユーザが途中で処理を中断させないように表示部13およびスピーカ部17で処理中の表示や動作をせずバックグラウンドで処理を行うのが好ましい。その後、表示部13での薬物検出の表示、運転禁止表示およびスピーカ部17の鳴動を行う(ステップS409)。最後に、携帯電話装置20の操作をロック、即ち、操作不能状態にする(ステップS416)。
【0036】
他方、上述した禁止薬物の判定で規定量を越える禁止薬物が検出されなかった場合(ステップS406:NO)および上述した指紋認証済み判定で指紋認証済みの場合(ステップS401:YES)には、車両ドアのロック/アンロック操作処理?の判定を行う(ステップS412)。この判定で車両のロック/アンロック処理の場合(ステップS412:YES)には、車両通信部23から車両にリモコン受信部へリモートデータを送信し(ステップS413)、操作を終了する(ステップS417)。他方、ロック/アンロック操作判定でロック/アンロック操作でない場合(ステップS412:NO)には、エンジン始動処理?の判定を行う(ステップS414)。エンジン始動処理の場合(ステップS414:YES)には、エンジン始動許可し、携帯電話装置20の車両通信部23から車両のリモコン受信部へリモートデータを送信し(ステップS415)、車両のエンジン始動を可能にする(ステップS418)。エンジン始動処理でない場合(ステップS414:NO)には、操作継続する(ステップS419)。
【0037】
図8は、図6に示す携帯電話装置20の具体例の概略外観を示す斜視図である。この携帯電話装置20は、第1半体30および第2半体40がヒンジ部50により折り畳み可能に構成されている。第1半体30は、操作部14を構成する多数の操作キー31および薬物検出部21や指紋認証部22を構成する各種センサ(図示せず)が組み込まれた決定キー(2次元ポインティングデバイス)32を含んでいる。他方、第2半体40は、文字や図形を表示するカラー液晶表示パネル(LCD)等の表示部41およびカメラ部24を構成するCCDカメラ(図示せず)を含んでいる。使用時には、ヒンジ部50を中心にこれら第1半体30および第2半体40を図8に示す如く開いて操作可能にし、不使用時には閉じる。
【0038】
また、本発明は、車両運行管理システムとしても活用又は利用可能である。即ち、複数台の車両(バスやタクシー)を保有するバス会社、タクシー会社および宅配便会社等で、これら車両を運転する複数のドライバ(運転者)が、法令や規則を遵守しているか否かを管理監督するシステムである。具体的には、これらドライバが、日常の車両運転の開始時又は駐車或いは停車後に運転再開時にアルコールを含む禁止薬物を飲食していないことを当該会社の管理センターで管理し、万一規定値を超える薬物があるドライバから検出された場合には、車両の運転停止を命令すると共にその運転者の代替運転者を派遣する。薬物が検出されたドライバは、その薬物濃度に応じて、図5を参照して上述の如く、予め定めた運転禁止期間中には車両の運転が禁止される。従って、薬物が検出されたドライバには、会社の規定による罰則が課せられると共に、その運転禁止期間中は、当然ながらそのドライバを勤務外の扱いとする(給与の不支給)。斯かるペナルティー又は経済的な不利益により、ドライバの飲酒運転等を抑止する効果を一層高めることが可能である。
【0039】
上述した車両運行管理システムでは、各車両には携帯電話と無線通信可能なリモコン受信部が搭載され、これら車両のドライバは、図1および図6等を参照して上述した如き携帯電話装置を常時所持している。そして、車両運転開始時、休憩後の運転再開時その他随時にドライバの薬物濃度を薬物検出部で検出し、検出結果を上述した管理センターへ自動的に送信して管理する。また、この管理センターに蓄積されたデータは、各ドライバの勤務評価にも活用可能である。
【0040】
以上、本発明による携帯電話装置、それを使用する車両制御装置および車両運行管理システムの好適な実施の形態について詳述した。しかし、斯かる実施の形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。また、本発明の要旨および精神を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。
【0041】
例えば、携帯電話装置は、単に通話目的の携帯電話に限定されず、PDA(Personal Digital Assistant)等を含むこと勿論である。また、ユーザを識別する指紋認証部は、他の周知の個人識別手段である網膜パターン、人相その他のバイオメトリック識別手段又は文字や数字によるIDでもよい。更に、薬物検出部が検出するユーザの汗に含まれる薬物濃度は、季節(又は温度)依存性を有する場合もあるので、温度センサを設け、濃度区分および/又は運転禁止時間の設定値を温度により変更して危険運転防止効果を一層正確にしてもよい。また、ユーザの汗の代わりに呼気に含まれる薬物濃度を検出してもよいが、その場合には呼気をセンサに吹きかける強さ、距離および量により濃度検出値にばらつきが生じ得ることに注意が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による携帯電話装置の第1実施の形態の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示す携帯電話装置における指紋認証処理およびアルコール濃度検出処理のフローチャートである。
【図3】図1に示す携帯電話装置における車両ドアのロック/アンロック処理のフローチャートである。
【図4】図1に示す携帯電話装置における車両エンジン始動処理のフローチャートである。
【図5】図1に示す携帯電話装置におけるアルコール濃度に応じて設定される運転禁止時間の具体例の説明図である。
【図6】本発明による携帯電話装置の第2実施の形態の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図7】図6に示す携帯電話装置における指紋認証処理および薬物検出処理のフローチャートである。
【図8】図6に示す携帯電話装置の概略外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
10、20 携帯電話装置
11 無線部
13 表示部
14 操作部
15 メモリ部
16 制御部(CPU)
17 スピーカ部
21 薬物(アルコール)検出部
22 指紋認証部(ユーザ識別手段)
23 車両通信部
24 カメラ部(写真撮影手段)
25 GPS部(位置検出手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部により制御される無線部に接続されたアンテナを介して無線通信する携帯電話装置において、
ユーザを識別するユーザ識別手段と、
前記ユーザの禁止薬物の濃度を検出する薬物検出手段と、
前記無線部に接続されたアンテナを介して車両に搭載されたリモコン制御部に制御信号を送信する車両通信手段と、
を備え前記薬物検出手段による前記薬物の濃度に応じて前記車両通信手段による前記車両のリモコン制御部との通信を制限することを特徴とする携帯電話装置。
【請求項2】
前記薬物検出手段により前記薬物が検出された場合に、前記検出された薬物濃度を予め複数に区分し、該区分毎に前記車両通信手段の通信を阻止する運転禁止期間を変更することを特徴とする請求項1に記載の携帯電話装置。
【請求項3】
前記薬物検出手段は、前記ユーザ識別手段により前記ユーザを確認後に、前記ユーザが発する汗に含まれる前記薬物の濃度を薬物センサにより検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯電話装置。
【請求項4】
前記薬物検出手段が、予め定めた規定値を超える薬物濃度を検出したとき、該検出結果を前記ユーザに通知して警告する警告手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の携帯電話装置。
【請求項5】
前記薬物検出手段が、予め定めた規定値を超える薬物濃度を検出したとき、該検出結果を外部へ送信する送信手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の携帯電話装置。
【請求項6】
前記薬物検出手段が、前記薬物検出を行った位置情報を取得する位置情報取得手段を更に備え、前記位置情報を前記薬物検出結果と共に管理することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の携帯電話装置。
【請求項7】
車両通信部からの制御信号を無線により携帯電話装置から送信してリモコン受信部が搭載された車両を制御する携帯電話装置を使用する車両制御装置において、
前記携帯電話装置は、前記車両のドライバであるユーザを識別する識別手段と、前記ユーザの禁止薬物濃度を検出する薬物検出手段とを備え、
該薬物検出手段が規定濃度を超える前記薬物を検出すると、前記車両の制御を不能化することを特徴とする携帯電話装置を使用する車両制御装置。
【請求項8】
前記車両の制御不能化は、前記薬物検出手段が検出した前記薬物の濃度に応じて予め決められた車両運転禁止期間中、前記携帯電話装置の車両通信部から前記車両への制御信号の送信を禁止することを特徴とする請求項7に記載の携帯電話装置を使用する車両制御装置。
【請求項9】
前記薬物検出手段が前記ユーザから予め定めた規定値を超える薬物濃度を検出した場合には、前記ユーザ情報と共に前記薬物の検出データを前記携帯電話装置から予め指定した外部へ送信することを特徴とする請求項7又は8に記載の携帯電話装置を使用する車両制御装置。
【請求項10】
携帯電話装置により制御可能な複数台の車両のドライバが禁止薬物を飲食して危険運転しているか否かを管理センターで管理する車両運行管理システムにおいて、
前記携帯電話装置は、前記ドライバを識別する識別手段と、該識別手段で識別された前記ドライバの前記薬物の濃度を検出する薬物検出手段とを備え、
前記ドライバが前記車両を運転するため前記携帯電話装置により制御するとき、該携帯電話装置の前記薬物検出手段で前記ドライバの薬物濃度を検出して前記携帯電話装置から自動的に前記管理センターへ送信することを特徴とする車両運行管理システム。
【請求項11】
前記携帯電話装置は、位置情報を取得する位置情報取得手段を更に備え、前記位置情報を前記薬物検出手段による前記ドライバの薬物濃度データと共に前記管理センターへ送信することを特徴とする請求項10に記載の車両運行管理システム。
【請求項12】
前記薬物濃度検出手段は、前記ドライバが前記携帯電話装置により前記車両のドアの開閉やエンジン始動操作をする毎に前記ドライバの薬物濃度を検出し、前記携帯電話装置により前記管理センターへ送信することを特徴とする請求項10又は11に記載の車両運行管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−160715(P2008−160715A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349946(P2006−349946)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】