説明

摩擦点接合方法およびその装置

【課題】 本発明は、異種材からなる第1金属部材と第2金属部材とを重ね合わせて回転子を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う方法及びその装置において、第2金属部材が外部に露出することを確実に回避し、よって、異種金属同士の接合であっても電気腐食の問題が発生しない摩擦点接合を行う方法及びその装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 回転子2を回転させながら接合中心線Xに沿ってアルミニウム合金板W1に進入させ、ショルダー部2bが該アルミニウム合金板W1に接触するとき、ピン部材21を回転子2の内部に後退させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異種金属材料の接合方法、特に、回転子による摩擦熱を利用して金属材料を軟化させ、攪拌し、塑性流動を生じさせることで接合を行う摩擦点接合の方法及び装置に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車体の軽量化の流れから、鉄系材料に代わりアルミニウム合金の接合のニーズが高まっている。アルミニウムの接合を行う場合、最も多く使用される接合方法として抵抗接合を利用した接合がある。しかし、この方法では、アルミニウムは電気導率が比較的大きいため抵抗による発熱が小さく、また、アルミニウムは熱伝導率が大きいため溶接熱の逸散が生じ易く、溶接が困難となる。さらに抵抗溶接は、金属材料に瞬間的に大電流を流すことで瞬時に溶融させた後、急激に冷却させるため、割れ等の溶接欠陥が生じ易く、熱歪による変形が大きく、その上、溶接部の機械的性質が劣化する等の数々の問題がある。
【0003】
これらの問題を解決してアルミニウム合金の接合を行う方法として摩擦点接合がある。この摩擦点接合は、一般に、底面が平らなショルダー部にピンの突起を備える回転子を回転させながら金属材料に接触させて摩擦熱を発生させ、接合部を含む領域をピンによる攪拌で塑性流動を生じさせることで接合を行う。すなわち、この接合方法は金属材料の溶融を伴わない固相接合の一種であり、通常の抵抗溶接に見られるような溶融、凝固による材質的劣化が無く、かつ変形が極めて少なく高速接合でき、作業環境がクリーンである等の多くの長所がある。さらに、他の溶接、例えば、レーザ溶接や電子ビーム溶接等が高価な設備機器を必要とするのに対し、摩擦点接合は設備が簡単でコストパフォーマンスやエネルギー効率においても優れている。
【0004】
しかし、摩擦点接合において、摩擦熱で金属材料を軟化させて攪拌した後、回転子を金属材料から退避させたときには同時にピンも後退することになるので、金属材料にピンの形状の穴が残る。この様な穴が形成されると、穴に応力が集中するため、接合強度が低下し、破損しやすくなる。また、外観が悪化して商品価値が低下する等の問題がある。
【0005】
そこで、接合終了後にピンだけを先に回転子内に後退させた後に、穴を含む領域を再加圧することで穴を母材で埋めて穴の生成を抑制する方法が考えられる。しかし、この方法では接合が終了した後にピンを回転子内部に後退させ、その後に再加圧を行うから、接合に要する時間が長くなり、また、ピンを後退させている間に母材が冷却されて硬化するため、その後に再加圧を行っても充分に穴を埋めることができない場合があった。
【0006】
このような問題に鑑み、短時間で穴を埋めて金属材料を接合することが可能な摩擦点接合として、特許文献1に開示されているような摩擦点接合装置を用いた接合方法が知られている。この摩擦点接合装置では、接合終了後に回転子の先端で金属材料を加圧している状態でピンを後退させるため、ピンを後退させることで生じる穴に周囲の軟化した母材が硬化することなく流れ込み、穴を確実に埋めることが可能となる。
【0007】
【特許文献1】特開2002−192358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記方法は、ピンを、重ね合わせた金属部材のうちの上側の第1金属部材を貫通させて下側の第2金属部材にまで到達させているので、穴が良好に埋まらずに第2金属部材が外部に露出した場合に、第2金属部材が第1金属部材とイオン化傾向の異なる例えば鋼などの異種金属であったときは、電気腐食の問題が生じ、金属部材に大きな損傷が発生する。
【0009】
そこで、本発明は、異種材からなる第1金属部材と第2金属部材とを重ね合わせて回転子を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う方法及びその装置において、第2金属部材が外部に露出することを確実に回避し、よって、異種金属同士の接合であっても電気腐食の問題が発生しない摩擦点接合を行う方法及びその装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、異種材からなる第1金属部材と第2金属部材とを重ね合わせて回転加圧手段を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う方法であって、上記回転加圧手段として、先端部に対して相対的に進退可能であるピン部材とショルダー部とを有するものを用い、かつ、該回転加圧手段と同軸状に対向配置された受け手段を用いて、重ね合わせた金属部材を第2金属部材の側から上記受け手段で支持すると共に、上記ピン部材を先端部から突出させた状態で上記回転加圧手段を第1金属部材の側から回転させながら押し込み、ショルダー部が第1金属部材に突入した状態で上記ピン部材が第1金属部材を突き抜けて第2金属部材に達する前に、ピン部材を後退させ、その後も、回転加圧手段の回転動作及び加圧動作を継続させて発生する摩擦熱を用いて第1金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて両金属部材間の重ね合せ部を固相接合することを特徴とする。
【0012】
そして、本願の請求項2に記載の発明は、隣接する複数の第1金属部材と該第1金属部材と異種材でなる1つの第2金属部材とを重ね合わせて回転加圧手段を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う方法であって、上記回転加圧手段として、先端部に対して相対的に進退可能であるピン部材と径が相異なる複数のショルダー部とを有するものを用い、かつ、該回転加圧手段と同軸状に対向配置された受け手段を用いて、重ね合わせた金属部材を第2金属部材の側から上記受け手段で支持すると共に、上記ピン部材を先端部から突出させた状態で上記回転加圧手段を隣接する複数の第1金属部材の側から回転させながら押し込み、小径の第1ショルダー部が第2金属部材に隣接する第1金属部材に突入した状態で、上記ピン部材が同第1金属部材を突き抜けて第2金属部材に達する前に、ピン部材を後退させ、その後も、回転加圧手段の回転動作及び加圧動作を継続させて発生する摩擦熱を用いて第1金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて第1金属部材と第2金属部材との重ね合せ部を固相接合すると共に、隣接する複数の第1金属部材の重ね合せ部を接合することを特徴とする。
【0013】
次に、本願の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、第1金属部材はアルミニウム合金板であり、第2金属部材は金属メッキ層が施された鋼板であると共に、接合時に、回転加圧手段の回転動作及び加圧動作により発生する摩擦熱を用いて金属メッキ材料を軟化させ、加圧動作により接合部位から外側に押し出した後で、第1金属部材と第2金属部材とを固相接合することを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項4に記載の発明は、異種材からなる第1金属部材と第2金属部材とを重ね合わせて回転加圧手段を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う装置であって、先端部に対して相対的に進退可能であるピン部材とショルダー部とを有する回転加圧手段と、該回転加圧手段と同軸状に対向配置された受け手段と、上記ピン部材を回転加圧手段の先端部から進退移動させるピン移動手段と、重ね合わされた金属部材を第2金属部材の側から上記受け手段で支持すると共に、上記ピン部材を先端部から突出させた状態で上記回転加圧手段を第1金属部材の側から回転させながら押し込み、ショルダー部が第1金属部材に突入した状態で上記ピン部材が第1金属部材を突き抜けて第2金属部材に達する前に、ピン部材を後退させ、その後も、回転加圧手段の回転動作及び加圧動作を継続させて発生する摩擦熱を用いて第1金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて両金属部材間の重ね合せ部を固相接合するように回転加圧手段及びピン移動手段を制御する駆動制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0015】
そして、本願の請求項5に記載の発明は、隣接する複数の第1金属部材と1つの第2金属部材とを重ね合わせて回転加圧手段を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う摩擦点接合装置であって、先端部に対して相対的に進退可能であるピン部材と径が相異なる複数のショルダー部とを有する回転加圧手段と、該回転加圧手段と同軸状に対向配置された受け手段と、上記ピン部材を回転加圧手段の先端部から進退移動させるピン移動手段と、重ね合わせた金属部材を第2金属部材の側から上記受け手段で支持すると共に、上記ピン部材を先端部から突出させた状態で上記回転加圧手段を隣接する複数の第1金属部材の側から回転させながら押し込み、小径の第1ショルダー部が第2金属部材に隣接する第1金属部材に突入した状態で、上記ピン部材が同第1金属部材を突き抜けて第2金属部材に達する前に、ピン部材を後退させ、その後も、回転加圧手段の回転動作及び加圧動作を継続させて発生する摩擦熱を用いて第1金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて第1金属部材と第2金属部材との重ね合せ部を固相接合すると共に、隣接する複数の第1金属部材の重ね合せ部を接合するように回転加圧手段及びピン移動手段を制御する駆動制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0016】
次に、本願の請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、回転加圧手段の先端のショルダー部が、中央に向けて円錐状に傾斜した凹部に形成されていることを特徴とする。
【0017】
そして、本願の請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、回転加圧手段の先端の第1ショルダー部が、中央に向けて円錐状に傾斜した凹部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上の様に構成したことにより、まず、請求項1に記載の発明によれば、第1金属部材を突き抜けて、ピン部材が第2金属部材に達する前に該ピン部材を後退させることで、ピン部材が第2金属部材にまで達し第2金属部材が外部に露出することにより電気腐食の問題が生じる事態が回避されると共に、ピン部材を回転子内部に後退させた後のショルダー部による加圧動作で安定した接合面を得ることが可能となる。
【0019】
そして、請求項2に記載の発明によれば、隣接する複数の第1金属部材と1つの第2金属部材とを重ね合わせた3枚以上の金属材料の接合においても、ピン部材が第2金属部材に達する前に該ピン部材を後退させることで、ピン部材が第2金属部材にまで達し第2金属部材が外部に露出することにより電気腐食の問題が生じる事態が回避されると共に、第1ショルダー部による加圧動作で安定した接合面を得ることが可能となる。
【0020】
次に、請求項3に記載の発明によれば、第1金属部材にアルミニウム合金板を用い、第2金属部材に金属メッキ層として例えば腐食防止用の亜鉛メッキ層が施された鋼板を用いて摩擦点接合を行う場合において、亜鉛はアルミニウムよりも融点が低く、回転子の回転動作により生じる摩擦熱で軟化され、塑性流動が生じ、加圧動作により軟化した亜鉛メッキ層がショルダー部周囲の外側に押し出されるため、間に亜鉛メッキ層を挟むことなくアルミニウム合金板と鋼板との固相接合を確実に行うことが可能となる。
【0021】
そして、請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様に、第1金属部材を突き抜けて、ピン部材が第2金属部材に達する前にピン部材を後退させることで、ピン部材が第2金属部材にまで達し第2金属部材が外部に露出することにより電気腐食の問題が生じる事態が回避されると共に、ショルダー部による加圧動作で安定した接合面を得ることが可能となる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明と同様に、隣接する複数の第1金属部材と1つの第2金属部材とを重ね合わせた3枚以上の金属材料の接合においても、第1金属部材を突き抜けて、ピン部材が第2金属部材に達する前にピン部材を後退させることで、ピン部材が第2金属部材にまで達し第2金属部材が外部に露出することにより電気腐食の問題が生じる事態が回避されると共に、第1ショルダー部による加圧動作で安定した接合面を得ることが可能となる。
【0023】
次に、請求項6に記載の発明によれば、ショルダー部が、中央に向けて円錐状に傾斜した凹部に形成されていることで、回転子の内部に軟化させられた第1金属部材を塑性流動させるスペースを設け、ショルダー部近傍の金属部材を外側に押し出さず内部に閉じ込めて圧力の媒体とするので、接合時に第2金属部材にまで圧力を伝え、回転子による加圧動作を確実に行うことが可能となる。
【0024】
そして、請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の発明と同様に、第1ショルダー部が、中央に向けて円錐状に傾斜した凹部に形成されていることで、回転子の内部に軟化させられた第1金属部材を塑性流動させるスペースを設け、第1ショルダー部近傍の金属部材を外側に押し出さず内部に閉じ込めて圧力の媒体とするので、接合時に第2金属部材にまで圧力を伝え、回転子による加圧動作を確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面に基いて説明する。
【0026】
まず、本発明に係る方法を実施する具体的な接合装置の構成について説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る接合装置のシステム構成を示しており、この接合装置は、被接合部材としてのワークWの接合を行うために用いられるもので、該ワークWとして、例えば自動車ボディ等に用いられるアルミニウム合金等のアルミニウム板(一方の金属部材)W1と亜鉛メッキ層Z1が施された鋼板(他方の金属部材)W2とを重ね合わせた状態で接合するために用いられる。
【0028】
本実施形態では、本発明に係る摩擦点接合装置は図1に示す接合ガン1に適用され、該接合ガン1はロボットアーム100の先端に取り付けられている。
【0029】
該ロボットアーム100は、接合ガン1を、上記アルミニウム合金板W1と鋼板W2との接合位置に位置付ける機能を有している。
【0030】
上記接合ガン1は、図1に示すように、上記アルミニウム合金板W1と鋼板W2とを接合するべく、接合用工具として、回転子2と受け具3とを備えている。
【0031】
回転子2は工具鋼からなり、接合材が軟化する温度でも充分な強度が確保されるようになっている。また、該回転子2は、接合中心線X上に配設されており、回転軸モータM1により該接合中心線Xを中心として回転されることになっている。すなわち、上記回転子2は、筒状の旋回軸4の取り付けフランジ5に固定されている。
【0032】
接合ガン1の本体にベアリング6を介して回転可能に支持された筒状の駆動軸7の上端は第1プーリ8が取り付けられており、下端は上記旋回軸4の穴部に挿入されてボールスプラインにより該旋回軸4とスプライン結合されている。
【0033】
一方、上記回転軸モータM1の回転軸に第2プーリ9が取り付けられ、該第2プーリ9により駆動される歯付きベルト10を介して上記第1プーリ8が駆動され、駆動軸7及び旋回軸4を介して回転子2が回転する。
【0034】
さらに、上記回転子2は、加圧手段としての加圧軸モータM2によって、加圧のために上記接合中心線Xに沿って昇降動されるように構成されている。すなわち、接合ガン1の本体に回転可能に配置されたネジ軸11に螺合して上昇する昇降部材12に筒状の昇降筒体13を設け、該昇降筒体13の下端側はブッシュ14を介して接合ガン1の本体に昇降可能に支持されている。
【0035】
昇降筒体13の内部には、ベアリング15を介して上記旋回軸4が回転可能に支持されている。
【0036】
一方、上記加圧軸モータM2の回転軸に第3プーリ16が取り付けられ、該第3プーリ16で駆動される歯付きベルト17を介して上記ネジ軸11に取り付けられた第4プーリ18が駆動され、ネジ軸11の回転により昇降部材12及び昇降筒体13が昇降し、ベアリング15を介して旋回軸4が昇降して回転子2が接合中心線X上を昇降する。
【0037】
可動ピン19は上端にジョイント20と下端にピン部材21とを備えており、回転子2の中心を貫く穴部に挿入され、該回転子2とスプライン結合されている。そして、上記可動ピン19の上端は上記ジョイント20を介して操作軸22に連結されており、該操作軸22は駆動軸7内側の穴部に挿入されて該駆動軸7とスプライン結合されている。
【0038】
このため、駆動軸7の回転により回転子2と可動ピン19とは一体的に回転する。
【0039】
また、上記操作軸22の上端はベアリング23を介して棒部材24に連結されている。さらに、上記棒部材24に備えられたラック25はピニオン26と噛合っており、ピンシフト用リニアモータM3を作動させて、歯車27を回転させることで該ピニオン26とラック25とを介して可動ピン19を昇降させる。
【0040】
上記回転軸モータM1としては、インダクションモータやサーボモータを用いることができ、上記加圧軸モータM2としては、サーボモータを用いることができる。
【0041】
そして、受け具3は、上記回転子2に対向配置されており、この位置状態は、略L字状のアーム40を利用し、その先端に受け具3を取り付けることにより保持されている。尚、回転子2及び受け具3は、接合ガン1に対して着脱可能に取り付けられている。
【0042】
また、回転軸モータM1と加圧軸モータM2とピンシフト用リニアモータM3とに制御信号を出力するコントローラ50と、回転子2が接合中心線Xに沿って昇降移動する際に該回転子2の位置を把握するためのエンコーダ28と、回転子2の下端、すなわちピン部材21が始めてアルミニウム合金板W1に接触した瞬間を検知するタッチセンサ29と、コントローラ50からの出力信号を受けてロボットアーム100の駆動制御を行うロボットアームアクチュエータ30とが上記接合装置に設けられており、回転子2の回転動作と加圧動作、及び可動ピン19の回転子内部への後退動作の各動作の制御システムを形成している。
【0043】
次に、回転子2と受け具3とについて、図2に基いて説明する。回転子2は、本体部2aと、センタリング(位置決め機能、位置ずれ防止機能)を主目的とした可動ピン19とを一体的に有している。本体部2aは、略円柱状に形成され、その配置は、その軸心が上記接合中心線Xに合致するように設定されている。この回転子2の先端のショルダー部2bは、可動ピン19側に向かって傾斜した円錐状の凹所を形成しており、該凹所は回転子2の径方向内方に向かうに従って深くなっている。可動ピン19は、その軸心が回転子2の軸心(接合中心線X)に合致するように配置されつつ、回転子2よりも小径となるようにしてピン部材21が該回転子2の先端面から突出されており、その先端面は平坦面に形成されている。この場合、この先端面の形状は、より好ましくは、曲率半径40mm程度の曲面形状がよく、これにより、回転子2の回転時に求心力が発生して押し込みがスムーズとなる。勿論この他に、この回転子2の別の態様として、全体的に円柱状とされてその先端面が平坦なもの、全体的に円柱状とすると共に、その先端面の周縁部付近をやや丸みを持たせたようなもの、上記実施形態に係るものにおいて、回転子2の先端面を外に向けてやや膨らませたような形状のものを用いてもよい。
【0044】
尚、本発明を具体化する上では、このショルダー部2bに形成された凹所(凹部)の形状としては、上述のように径方向内方に向かうに従って深くなっている形状がより好ましい。すなわち、本発明においては、後述するように回転子2は、その加圧時に、本発明の目的で形成した酸化防止用の金属膜を軟化させて、外周方向へ押し出す役目を同時に果たすものであるが、上述の形状の凹所(凹部)がこの機能を達成する上でより好ましい。つまり、この形状の方が、摩擦熱で軟化して塑性流動する金属部材(例えばアルミニウム部材)の金属材料が回転子外周に流動して逃げるのを可及的に抑制することができるので、回転子の加圧力を有効に酸化防止用の金属膜に作用させ、そして外周に押し出すことができるためである。
【0045】
受け具3は、上記回転子2と略同径とされた略円柱状に形成されており、その先端面は平坦面に形成されている。
【0046】
次に、上記接合装置を用いて、ワークWの接合方法について具体的に説明する。
[接合動作第1例]
まず、第1接合動作例として、アルミニウム合金板と酸化防止用の亜鉛メッキ層が施された鋼板との摩擦点接合を行う場合について説明する。
【0047】
図2に示すように、アルミニウム合金板W1と鋼板W2との接合前において、ピン部材21を先端部から突出させた状態で、回転子2が回転軸モータM1で回転しながら接合中心線X方向に沿って加圧軸モータM2及びピンシフト用リニアモータM3で上側からアルミニウム合金板W1に接近しており、そして受け具3は回転せずに同軸方向の下側から亜鉛メッキ層Z1が施された鋼板W2に接近している。
【0048】
そして、図3に示すように、ピン部材21と受け具3とがそれぞれ、アルミニウム合金板W1と鋼板W2とに同時に接触したとき、ピン部材21の回転動作で生じる摩擦熱によりアルミニウム合金板W1と鋼板W2に施された亜鉛メッキ層Z1とが軟化し始め、軟化領域Sが生じる。この瞬間をアルミニウム合金板W1と鋼板W2との接合開始のポイントとして、後述のピン部材21を時間設定により回転子2の内部に後退させる場合と、位置設定により後退させる場合との2つの場合における設定の基準とする。
【0049】
次に、図4に示すように、引き続き回転子2を回転させた状態でピン部材21を接合中心線Xに沿ってアルミニウム合金板W1内部に進入させ、かつ、受け具3による鋼板W2の軸方向下側からの支持を行うと、ショルダー部2bがアルミニウム合金板W1に接触するようになる。このとき、ピン部材21の回転動作により生じる摩擦熱だけでなく、ピン部材21よりもアルミニウム合金板W1との接触面積が広いショルダー部2bが接触することで生じる摩擦熱も加えられるため、アルミニウム合金板W1と鋼板W2に施された亜鉛メッキ層Z1の軟化領域Sが拡大し、アルミニウム合金板W1がショルダー部2bの回転動作により剪断され、該ショルダー部2bの周囲のアルミニウム部材が盛り上がってバリBが生じる。
【0050】
なお、この動作例では、上記ショルダー部2bがアルミニウム合金板W1に接触する位置に到達するとき、ピン部材21を回転子2の内部に後退させる。
【0051】
ピン部材21を回転子2の内部に後退させるタイミングの設定方法は、上述したように、時間設定による方法と位置設定による方法との2つの方法がある。
【0052】
まず、時間設定によりピン部材21を回転子2の内部に後退させるタイミングを定める方法について図1の制御システム図を用いて説明する。
【0053】
回転子2と受け具3とが、それぞれアルミニウム合金板W1と鋼板W2とに同時に接触したとき、タッチセンサ29からの検出信号がコントローラ50に入力され、該検出信号が入力された時点からの経過時間がコントローラ50に内蔵されたタイマー31で計測される。そして、回転軸モータM1の制御信号がコントローラ50から出力される。該回転軸モータM1の駆動による回転子2の回転数は、再びコントローラ50にフィードバックされて、タイマー31による計時開始の時点からの経過時間にパラメータ変換される。そして、該タイマー31による計時時間が設定時間になったときに、ピンシフト用リニアモータM3の回転駆動により、ピン部材21を回転子2の内部に後退させるようにロボットに制御させる。この設定時間は、予め実験的に求めておき、ロボットにインプットしておく。
【0054】
次に、位置設定によりピン部材21を回転子2の内部に後退させるタイミングを定める方法について図1の制御システム図を用いて説明する。
【0055】
回転子2と受け具3とが、それぞれアルミニウム合金板W1と鋼板W2とに同時に接触するときのピン部材21の位置を原点と定め、このとき、エンコーダ28からの入力信号がコントロールユニット50に入力され、加圧軸モータM2への制御信号が出力される。ピン部材21が原点の位置にある時点から現時点までの加圧軸モータM2の回転変位量が、回転子2が原点から接合中心線Xに沿って移動する距離にパラメータ変換されてから、エンコーダ28にフィードバックされる。この動作を繰り返すことでショルダー部2bがアルミニウム合金板W1に接触するまでの間の回転子2の接合中心線X上における位置が絶えず把握される。
【0056】
ピン部材21が設定した位置、すなわちショルダー部2bがアルミニウム合金板W1に接触するときのピン部材21の位置に到達したとき、ピン部材21を回転子2の内部に後退させるようにロボットに制御させる。この設定した位置は、予め実験的に求めておき、パラメータ設定してロボットにインプットしておく。
【0057】
以上のように、アルミニウム合金板W1を突き抜けて、ピン部材21が鋼板W2に達する前に該ピン部材21を後退させることで、ピン部材21が鋼板W2にまで達し該鋼板W2が外部に露出することにより、電気腐食の問題が生じる事態が回避されると共に、その後のショルダー部2bによる加圧動作で安定した接合面を得ることが可能となる。
【0058】
また、ショルダー部2bが、回転子2の中央に向けて円錐状に傾斜した凹部に形成されていることで、回転子2の内部に軟化させられたアルミニウム合金板W1を塑性流動させるスペースを設け、ショルダー部2b近傍のアルミニウム合金板W1を外側に押し出さず内部に閉じ込めて圧力の媒体とするので、接合時に鋼板W2にまで圧力を伝え、回転子2による加圧動作を確実に行うことが可能となる。
【0059】
次に、図5に示すように、ピン部材21を回転子2の内部に完全に後退させた後、回転子2を回転させながらアルミニウム合金板W1のさらに内部に進入させると、鋼板W2に施された亜鉛メッキ層Z1はアルミニウムよりも融点が低いので、回転子2の回転動作により生じる摩擦熱で軟化される。亜鉛メッキ層Z1は塑性流動が生じ、回転子2の加圧動作により軟化した膜Z2のほとんどがショルダー部2bの外側に押し出されると共に一部がアルミニウム合金材料中に取り込まれることで、間に亜鉛メッキ層Z1を挟むことなくアルミニウム合金板W1と鋼板W2とを固相接合することが可能となる。
【0060】
次に、図6に示すように、回転子2がアルミニウム合金板W1に最も深く沈みこんだ状態では、回転子2の加圧動作により、鋼板W2に施された亜鉛メッキ層Z1が回転子2の周囲の外側に押し出されているため、この時点でアルミニウム合金板W1と鋼板W2との固相接合が確実に行われている。なお、このとき、回転子2の回転動作によりショルダー部2bの周囲に押し出された軟化した亜鉛メッキ層Z1の膜Z2の中にはアルミニウムと亜鉛との金属間化合物Yが生成している。
【0061】
そして、図7に示すように、接合終了後は回転子2と受け具3とをそれぞれ接合中心線Xに沿ってアルミニウム合金板W1と鋼板W2とから退避させる。このとき、回転子2の回転動作を停止してからアルミニウム合金板W1から退避させると、冷却して硬化したアルミニウムが回転子2に付着し、接合が終了したワークWを回転子2を退避させるときにまとめて持ち上げてしまう恐れがあるため、回転子2を回転させながらワークWから退避させる。
【0062】
また、ワークWの接合面は全面が固相接合しているため、接合面が多く、鉄とアルミニウムとが原子レベルで一体となっているため、抵抗溶接と比較して接合強度が大きくなっている。
[接合動作第2例]
次に、第2接合動作例として、隣接する2つのアルミニウム合金板と腐食防止用の亜鉛メッキ層が施された1つの鋼板との摩擦点接合を行う場合について説明する。
【0063】
図8に示すように、第1アルミニウム合金板W1と第2アルミニウム合金板W3と鋼板W2との接合前において、ピン部材21を回転子2の先端部から突出させた状態で、回転子2が回転しながら接合軸方向の上側から第1アルミニウム合金板W1に接近しており、そして受け具3は回転せずに同軸方向の下側から亜鉛メッキ層Z1が施された鋼板W2に接近している。
【0064】
そして、図9に示すように、ピン部材21と受け具3とがそれぞれ、第1アルミニウム合金板W1と鋼板W2とに同時に接触するとき、ピン部材21の回転動作で生じる摩擦熱により第1アルミニウム合金板W1と第2アルミニウム合金板W3と鋼板W2に施された亜鉛メッキ層Z1とが軟化し始め、軟化領域Sが生じる。この瞬間を第1アルミニウム合金板W1と第2アルミニウム合金板W3と鋼板W2との接合開始のポイントとして、第1の実施形態と同様にピン部材21を時間設定により回転子2の内部に後退させる場合と、位置設定により後退させる場合との2つの場合における設定の基準とする。
【0065】
次に、図10に示すように、引き続き回転子2を回転させた状態でピン部材21を接合中心線Xに沿って第1アルミニウム合金板W1内部に進入させ、かつ、受け具3による鋼板W2の軸方向下側からの支持を行うと、ショルダー部2bが第1アルミニウム合金板W1に接触するようになる。このとき、ピン部材21の回転動作により生じる摩擦熱だけでなく、ピン部材21よりも第1アルミニウム合金板W1との接触面積が広いショルダー部2bが接触することで生じる摩擦熱も加えられるため、第1アルミニウム合金板W1と第2アルミニウム合金板W3と鋼板W2に施された亜鉛メッキ層Z1の軟化領域Sが拡大し、第1アルミニウム合金板W1がショルダー部2bの回転動作により剪断され、該ショルダー部2bの周囲のアルミニウム部材が盛り上がってバリBが生じる。
【0066】
なお、この接合動作例ではショルダー部2bが第2アルミニウム合金板W3に接触する位置に達するとき、ピン部材21を回転子2の内部に後退させる。
【0067】
ピン部材21を回転子2の内部に後退させるタイミングの設定方法は、上述したように、時間設定による方法と位置設定による方法との2つの方法がある。ただし、第1の動作例と同様の設定方法であるため説明は省略する。
【0068】
第1アルミニウム合金板W1を突き抜けて、ピン部材21が鋼板W2に達する前に該ピン部材21を後退させることで、ピン部材21が鋼板W2にまで達し該鋼板W2が外部に露出することにより、電気腐食の問題が生じる事態が回避されると共に、その後のショルダー部2bによる加圧動作で安定した接合面を得ることが可能となる。
【0069】
また、ショルダー部2bが、回転子2の中央に向けて円錐状に傾斜した凹部に形成されていることで、回転子2の内部に軟化させられた第1アルミニウム合金板W1及び第2アルミニウム合金板W3を塑性流動させるスペースを設け、ショルダー部2b近傍の第1アルミニウム合金板W1及び第2アルミニウム合金板W3を外側に押し出さず内部に閉じ込めて圧力の媒体とするので、接合時に鋼板W2にまで圧力を伝え、回転子2による加圧動作を確実に行うことが可能となる。
【0070】
次に、図11に示すように、ピン部材21を回転子2の内部に完全に後退させた後、回転子2を回転させながら第2アルミニウム合金板W3のさらに内部に進入させると、鋼板W2に施された亜鉛メッキ層Z1はアルミニウムよりも融点が低いので、回転子2の回転動作により生じる摩擦熱で軟化される。亜鉛メッキ層Z1は塑性流動が生じ、回転子2の加圧動作により軟化した膜Z2のほとんどがショルダー部2bの外側に押し出されると共に一部がアルミニウム合金材料中に取り込まれることで、間に亜鉛メッキ層Z1を挟むことなく第1アルミニウム合金板W1と鋼板W2とを固相接合することが可能となる。
【0071】
そして、隣接する第1アルミニウム合金板W1と第2アルミニウム合金板W3において、回転子2の回転動作により接合部付近が剪断されて盛り上がり、バリが生じ、該バリが回転により成長して両アルミニウム合金板間で互いに食い込み合うことで接合される。
【0072】
次に、図12に示すように、回転子2が第1アルミニウム合金板W1及び第2アルミニウム合金板W3に最も深く沈みこんだ状態では、回転子2の加圧動作により、鋼板W2に施された亜鉛メッキ層Z1が回転子2の周囲の外側に押し出されているため、この時点で第1アルミニウム合金板W1と鋼板W2との固相接合及び第1アルミニウム合金板W1と第2アルミニウム合金板W3の接合が確実に行われている。なお、このとき、回転子2の回転動作によりショルダー部2bの周囲に押し出された軟化した亜鉛メッキ層Z1の膜Z2の中にはアルミニウムと亜鉛との金属間化合物Yが生成している。
【0073】
そして、図13に示すように、接合終了後は回転子2と受け具3とをそれぞれ接合中心線Xに沿ってアルミニウム合金板W1と鋼板W2とから退避させる。このとき、回転子2の回転動作を停止してからアルミニウム合金板W1から退避させると、冷却して硬化したアルミニウムが回転子2に付着し、接合が終了した両金属板を回転子2を退避させるときにまとめて持ち上げてしまう恐れがあるため、回転子1を回転させながらワークWから退避させる。
【0074】
また、ワークWの接合面は全面が固相接合しているため、接合面が多く、鉄とアルミニウムとが原子レベルで一体となっているため、抵抗溶接と比較して接合強度が大きくなっている。また、第1アルミニウム合金板W1と第2アルミニウム合金板W3の接合面も、回転子2の回転動作により剪断されて盛り上がった部分同士が互いに食い込み合っているため、接合強度が大きく容易には離れない。
【0075】
また、ショルダー部2bが第2アルミニウム合金板W3に接するときに、ピン部材21を回転子2の内部に後退させてあるため、接合終了後に鋼板W2が外部に露出することで、該鋼板W2に電気腐食の問題が生じる事態が確実に回避される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明によれば、本発明は、異種材からなる第1金属部材と第2金属部材とを重ね合わせて回転子を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う方法及びその装置において、第2金属部材が外部に露出することを確実に回避し、そして、異種金属同士の接合であっても電気腐食の問題が発生しない摩擦点接合を行うことが可能となり、異種金属材料の接合方法、特に、回転子による摩擦熱を利用して金属材料を軟化させ、攪拌し、塑性流動を生じさせることで接合を行う摩擦点接合の方法及びその装置の技術分野に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態に係る接合装置のシステム図である。
【図2】第1の接合動作例の接合前の動作側面図である。
【図3】第1の接合動作例の接合開始時の動作側面図である。
【図4】第1の接合動作例の接合中の動作側面図である。
【図5】第1の接合動作例のピンを回転子内部に後退させる瞬間の動作側面図である。
【図6】第1の接合動作例の回転子が最も深く沈みこんだ瞬間の動作側面図である。
【図7】第1の接合動作例の接合終了後の動作側面図である。
【図8】第2の接合動作例の接合前の動作側面図である。
【図9】第2の接合動作例の接合開始時の動作側面図である。
【図10】第2の接合動作例の接合中の動作側面図である。
【図11】第2の接合動作例のピンを回転子内部に後退させる瞬間の動作側面図である。
【図12】第2の接合動作例の回転子が最も深く沈みこんだ瞬間の動作側面図である。
【図13】第2の接合動作例の接合終了後の動作側面図である。
【符号の説明】
【0078】
2 回転子(回転加圧手段)
2a 回転子本体
2b ショルダー部
3 受け具(受け手段)
19 可動ピン
21 ピン部材
W1 第1アルミニウム合金板
W2 鋼板
W3 第2アルミニウム合金板
Z1 亜鉛メッキ層
M1 回転軸モータ
M2 加圧軸モータ
M3 ピンシフト用リニアモータ(ピン移動手段)
50 コントロールユニット(駆動制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種材からなる第1金属部材と第2金属部材とを重ね合わせて回転加圧手段を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う方法であって、上記回転加圧手段として、先端部に対して相対的に進退可能であるピン部材とショルダー部とを有するものを用い、かつ、該回転加圧手段と同軸状に対向配置された受け手段を用いて、重ね合わせた金属部材を第2金属部材の側から前記受け手段で支持すると共に、上記ピン部材を先端部から突出させた状態で上記回転加圧手段を第1金属部材の側から回転させながら押し込み、ショルダー部が第1金属部材に突入した状態で上記ピン部材が第1金属部材を突き抜けて第2金属部材に達する前に、ピン部材を後退させ、その後も、回転加圧手段の回転動作及び加圧動作を継続させて発生する摩擦熱を用いて第1金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて両金属部材間の重ね合せ部を固相接合することを特徴とする摩擦点接合方法。
【請求項2】
隣接する複数の第1金属部材と該第1金属部材と異種材でなる1つの第2金属部材とを重ね合わせて回転加圧手段を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う方法であって、上記回転加圧手段として、先端部に対して相対的に進退可能であるピン部材と径が相異なる複数のショルダー部とを有するものを用い、かつ、該回転加圧手段と同軸状に対向配置された受け手段を用いて、重ね合わせた金属部材を第2金属部材の側から上記受け手段で支持すると共に、上記ピン部材を先端部から突出させた状態で上記回転加圧手段を隣接する複数の第1金属部材の側から回転させながら押し込み、小径の第1ショルダー部が第2金属部材に隣接する第1金属部材に突入した状態で、上記ピン部材が同第1金属部材を突き抜けて第2金属部材に達する前に、ピン部材を後退させ、その後も、回転加圧手段の回転動作及び加圧動作を継続させて発生する摩擦熱を用いて第1金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて第1金属部材と第2金属部材との重ね合せ部を固相接合すると共に、隣接する複数の第1金属部材の重ね合せ部を接合することを特徴とする摩擦点接合方法。
【請求項3】
第1金属部材はアルミニウム合金板であり、第2金属部材は金属メッキ層が施された鋼板であると共に、接合時に、回転加圧手段の回転動作及び加圧動作により発生する摩擦熱を用いて金属メッキ材料を軟化させ、加圧動作により接合部位から外側に押し出した後で、第1金属部材と第2金属部材とを固相接合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の摩擦点接合方法。
【請求項4】
異種材からなる第1金属部材と第2金属部材とを重ね合わせて回転加圧手段を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う装置であって、先端部に対して相対的に進退可能であるピン部材とショルダー部とを有する回転加圧手段と、該回転加圧手段と同軸状に対向配置された受け手段と、上記ピン部材を回転加圧手段の先端部から進退移動させるピン移動手段と、重ね合わされた金属部材を第2金属部材の側から上記受け手段で支持すると共に、上記ピン部材を先端部から突出させた状態で上記回転加圧手段を第1金属部材の側から回転させながら押し込み、ショルダー部が第1金属部材に突入した状態で上記ピン部材が第1金属部材を突き抜けて第2金属部材に達する前に、ピン部材を後退させ、その後も、回転加圧手段の回転動作及び加圧動作を継続させて発生する摩擦熱を用いて第1金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて両金属部材間の重ね合せ部を固相接合するように回転加圧手段及びピン移動手段を制御する駆動制御手段とを備えていることを特徴とする摩擦点接合装置。
【請求項5】
隣接する複数の第1金属部材と1つの第2金属部材とを重ね合わせて回転加圧手段を回転させながら押圧することにより摩擦点接合を行う摩擦点接合装置であって、先端部に対して相対的に進退可能であるピン部材と径が相異なる複数のショルダー部とを有する回転加圧手段と、該回転加圧手段と同軸状に対向配置された受け手段と、上記ピン部材を回転加圧手段の先端部から進退移動させるピン移動手段と、重ね合わせた金属部材を第2金属部材の側から上記受け手段で支持すると共に、上記ピン部材を先端部から突出させた状態で上記回転加圧手段を隣接する複数の第1金属部材の側から回転させながら押し込み、小径の第1ショルダー部が第2金属部材に隣接する第1金属部材に突入した状態で、上記ピン部材が同第1金属部材を突き抜けて第2金属部材に達する前に、ピン部材を後退させ、その後も、回転加圧手段の回転動作及び加圧動作を継続させて発生する摩擦熱を用いて第1金属部材を軟化させ、塑性流動を生じさせて第1金属部材と第2金属部材との重ね合せ部を固相接合すると共に、隣接する複数の第1金属部材の重ね合せ部を接合するように回転加圧手段及びピン移動手段を制御する駆動制御手段とを備えていることを特徴とする摩擦点接合装置。
【請求項6】
回転加圧手段の先端のショルダー部が、中央に向けて円錐状に傾斜した凹部に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の摩擦点接合装置。
【請求項7】
回転加圧手段の先端の第1ショルダー部が、中央に向けて円錐状に傾斜した凹部に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の摩擦点接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−61921(P2006−61921A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244498(P2004−244498)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】