説明

摩耗防止性の改善のための水素結合形成性の官能性を有するポリマー

本願は、ラジカル重合可能なモノマーから構成されかつ長鎖アルキル置換されたエチレン性不飽和化合物、特にアクリレート又はメタクリレートの他に、更に水素結合供与体の官能を有するコポリマー又はグラフトコポリマーを含有する潤滑油配合物に関する。水素結合供与体特性を有するモノマーは、本発明によれば、ポリマー骨格又はグラフトされた側枝のいずれかに存在する。水素結合供与体の官能を有するモノマーを有するポリマーの他に、また同時に水素結合供与体の官能と水素結合受容体の官能とを有するモノマーを有するポリマーが開示されている。ポリマー中の水素結合供与体の官能、特に水素結合供与体の官能と水素結合受容体の官能とが同時に存在することで、摩耗防止性、清浄作用及び分散作用に優れた影響がもたらされることが判明した。該ポリマーは、潤滑油配合物、例えばエンジンオイル又はハイドロリックオイル用の添加剤として改善された摩耗挙動をもって適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ラジカル重合可能なモノマーから構成されており、かつ長鎖アルキル置換されたエチレン性不飽和の化合物、特にアクリレート又はメタクリレートの他に、付加的に更に水素結合供与体の官能を有するモノマーを有するコポリマー又はグラフトコポリマーを含有する潤滑油配合物に関する。水素結合供与体の特性を有するモノマーは、本発明によれば、ポリマー骨格中か又はグラフトされた側枝中のいずれかに存在する。水素結合供与体の官能を有するモノマーを有するポリマーの他に、水素結合供与体の官能と水素結合受容体の官能を同時に有するモノマーを有するポリマーも開示されている。これらのポリマーは、改善された摩耗挙動を有する潤滑油配合物用、例えばエンジンオイル又はハイドロリック液用の添加剤として適している。ポリマー中の水素結合供与体の官能が、特に水素結合供与体の官能と水素結合受容体の官能とが同時に存在することが、摩耗防止性、清浄作用及び分散作用に優れた作用を有することが見出された。
【0002】
従来の技術
ポリアルキルアクリレートは、潤滑油配合物用の通常のポリマー添加剤である。アクリレートモノマーのエステル官能性における長いアルキル鎖(一般的な鎖長:C〜C18)は、ポリアルキルアクリレートに対して、非極性溶剤、例えば鉱油中での良好な溶解性を与える。該添加剤の通常の利用分野は、ハイドロリックオイル、トランスミッションオイル又はエンジンオイルである。それらのポリマーは、粘度指数(VI)最適化作用をもたらし、またVI向上剤という名称もそこからきたものである。高い粘度指数は、ある油が、高い温度(例えば70〜140℃の一般的な範囲において)で比較的高い粘度を示し、かつ低い温度(例えば−60〜20℃の一般的な範囲において)で比較的低い粘度を示すことを意味している。ポリアクリレートを含有しない油に対して改善された、ある油の高い温度での潤滑性は、例えば40℃では同じ動粘度を有するが、高められた温度範囲でより高い粘度を有するという制約を受ける。同時に、より低い温度でVI向上剤を用いる場合に、例えばエンジンの冷間始動段階の間に前記剤が存在する場合に、100℃では同じ動粘度を示す油と比較してより低い粘度が記録されている。エンジンの始動段階の間により低い粘度を有することに制約されて、従って冷間始動は実質的に軽減される。
【0003】
最近では、潤滑物質産業において、粘度指数の最適化の他に更なる特性、例えば分散作用を提供するポリアクリレート系が確立された。かかるポリマーによって、とりわけ単独で又は分散目的に特別に使用される分散剤−インヒビター(DI)添加剤と一緒で、前記油の使用によって生ずる酸化生成物は不利な粘度上昇にあまり寄与しなくなる。改善された分散性によって、潤滑油の寿命を引き延ばすことができる。同じように、かかる添加剤によって、その清浄作用に関連して、エンジンの汚れ具合は、例えばピストンの汚れ具合もしくはリング焼付けによって表現されるが、これらに優れた影響が及ぼされる。酸化生成物は、煤又はスラッジである。ポリアクリレートに分散作用を与えるためには、窒素を含有する官能性をポリマーの側鎖に導入することができる。通常の系は、部分的にアミノ官能化されたエステル側鎖を有するポリマーである。しばしば、ジアルキルアミン置換されたメタクリレート、そのメタクリルアミド類似体又はN−複素環式のビニル化合物がコモノマーとして分散能の改善に使用される。分散作用に基づいて潤滑物質中で言及されるべきモノマー型の更なるクラスは、エステル置換基中にエトキシレート又はプロポキシレート含有の官能を有するアクリレートである。分散性のモノマーは、ポリマー中に統計的に存在してよく、従って古典的な共重合の範囲でポリマー中に導入されても、又はポリアクリレート上にグラフトさせて、こうして非統計的に導入された系を得てもよい。分散−清浄作用に関する公知の利点の他に、減摩性に関する利点をも提供するポリアクリレートについて、今までに集中的な研究がなされていない。
【0004】
EP164807号(Agip Petroli S.p.A)は、分散作用、清浄作用並びに低温作用を有する多機能のVI向上剤を記載している。該VI向上剤を有する組成物は、NVPがグラフトされたポリアクリレートに相当するが、それは更に製造に費用がかかるアミン含有のエトキシレート残基を有するアクリレートを含有している。
【0005】
DE−OS1594612号(Shell Int.Research Maatschappij N.V.)は、カルボキシル基、ヒドロキシル基及び/又は窒素含有基を有する油溶性重合体と分散されたアルカリ土類金属の塩又は水酸化物とを含有する潤滑油混合物を開示している。前記の成分の相乗効果によって、減摩作用が観察される。
【0006】
US−P3153640号(Shell Oil Comp.)は、(メタ)アクリル酸の長鎖エステルとN−ビニル−ラクタムとからなるコポリマーを包含し、それは、潤滑用途における摩耗に有利な影響をおよぼす。それらの記載されたポリマーは、統計コポリマーである。水素結合供与体の官能を有するモノマーとグラフトコポリマーは、挙げられていない。
【0007】
E.H.Okrentは、ASLE Transactions(1961,4,97−108)において、ポリイソブチレン又はポリアクリレートをVI向上剤として使用することはエンジンにおける摩耗挙動に影響をおよぼすことを記載している。使用される化学とポリマーの特定の組成については推論はなされていない。減摩作用は、重合体を含有する油の粘弾性効果で単に理由づけされている。こうして、例えばポリアクリレートとPIBを含有する油との間の摩耗に対する影響において差異は確認されなかった。
【0008】
NeudoerflとSchoedelの刊行物(Schmierungstechnik 1976,7,240−243;SAE Paper 760269;SAE Paper 700054;Die Angewandte Makromolekulare Chemie 1970,2,175−188)は、とりわけ、エンジン摩耗に対するポリマー濃度の影響について注意を喚起している。前述のE.H.Okrentの文献を指摘して、Okrentに類推するに、摩耗改善作用はポリマーの化学とは関連していない。一般に、より低い分子量の粘度指数向上剤は改善された摩耗成果をもたらすという結論が出ている。
【0009】
既にNeudoerflとSchoedelが記載しているように、K.Yoshida(Tribology Transactions 1990,33,229−237)は、摩耗挙動に対するポリマーの効果は、単に粘度法的観点であると見なしている。有利な効果は、好ましい弾性流体力学的な被膜形成の傾向と説明されている。
【0010】
それらの従来の技術で知られる重合体は、ほぼ例外なく、水素結合供与体(以下に水素結合供与体と呼ぶ)である分散性の官能基を有するモノマーか、又はジメチルアミノプロピルメタクリルアミドのように、専らの水素結合供与体の官能(ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド中のアミン官能)を有する官能性も水素結合受容体(以下に水素結合受容体と呼ぶ)を有する官能性をも示す分散性の官能基を有するモノマーから形成される。エンジンオイル用途に該当するかかるポリマーの更なる特徴は、N−複素環を有するモノマーが好ましくはポリマー骨格に対してグラフトされていることである。それに対して、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを有するポリマーは、統計的なコポリマーであって、グラフトコポリマーではない。
【0011】
後に更に立ち入って議論する本発明による潤滑油配合物は、エンジンオイルにも、トランスミッションオイルにも関連しうるものであるが、改善されたハイドロリックオイルもそこから得ることができる。粘度法的特性の他に、摩擦学的な摩耗に対する影響は、ハイドロリックオイルの最も重要な品質的な要求事項である。この理由から、通常のハイドロリックオイルには、少なくとも硫黄とリンを含有しかつその界面活性のゆえに金属に対して減摩作用をもたらすいわゆる摩耗防止成分が添加される。ハイドロリックポンプ中では、特に過酷な駆動条件下でハイドロリック液が過熱されるなかで観察される摩耗は上昇傾向となる。ハイドロリックシステムの個々の部材の摩擦、高い圧力降下を伴う体積流量及び導管系における配管抵抗はハイドロリック液の温度上昇並びに摩耗挙動の増強につながる。
【0012】
最近のハイドロリック配合物のレオロジー特性は、一般に、ポリマーの粘度指数向上剤(VI向上剤)の添加によって最適化される。殆どの場合に、そこにはポリアルキルメタクリレートが使用される。少なくとも、部分的に長鎖(C〜C18)のアルキル置換基をメタクリルエステル基中に有するポリメタクリレートにかかわるものである。油中に溶解されたポリマーの増粘作用によって、高い温度の場合にできる限り高い動粘度(少なくとも100℃で測定される)を可能にできる。ハイドロリックポンプの摩耗傾向並びに容積効率は、それによって低減される。ポリマーの粘度増大作用は、より低い温度の場合には(40℃で測定すると)、例えば100℃の場合ほど十分に顕著ではない。これをもって、摩耗と効率低下が内部漏れ率の増大によっていずれにせよ軽微な役割を担う低い温度では、動粘度の高すぎる上昇は、回避される。より低い温度での低下された粘度は、ハイドロリック装置がより低い流体力学的損失下に作動するという利点をともにもたらす。最適化された粘度挙動は、100℃でのできる限り高い動粘度と40℃でのできる限り低い粘度とによって表現されるが、それは粘度指数(VI指数)によって表現される。
【0013】
粘度法的効果とは無関係の更なる減摩作用は、例えば金属様あるいは金属酸化物様の表面との相互作用(摩耗防止添加剤について記載したように)によって実現されるが、それはポリアクリルメタクリレートについては今までに見出されていない。ポリマーによってレオロジーを最適化するだけでなく粘度非依存性の摩耗挙動も改善させるべき場合には、このことは、ハイドロリック液中の通常の摩耗防止成分の含量を低減させるか又は完全に排除するための洗礼された方法である。
【0014】
従って、本発明の課題は、
水素結合供与体の官能を有するモノマーを含有する新規のコポリマー又はグラフトコポリマーを提供すること、
潤滑油配合物において、そのVI作用の他に、分散作用及び/又は清浄作用に優れた多機能のVI向上剤を提供すること、
潤滑油配合物において、そのVI作用の他に、摩耗挙動に対して優れた影響の点で傑出した多機能のVI向上剤を提供すること、
現代の潤滑油配合物の製造コストを下げること、
ハイドロリックポンプ中の摩耗を、従来の摩耗防止添加剤濃度を保持したままで、従来の技術に対して更に低下させること、
現代のハイドロリック装置の寿命を、減摩性ポリマーの製造によって延長させること、
減摩性について更に寄与し、それが粘度非依存性であることが望ましいポリマーを提供すること
である。
【0015】
ISO等級46のハイドロリック液であってDIN51524に従って40℃で測定された動粘度46mm/s±10%を有するハイドロリック液は、従って、より高粘度の液体に対しても、例えばISO等級68のハイドロリックオイル(40℃で測定された動粘度:68mm/s±10%)と比較して、より低い摩擦をもたらすことが望ましい。
【0016】
かかる比較において、ISO68の液体は、40℃の場合だけでなく、より高い温度、例えば100℃の場合にも、ISO46の液体に対して高められた動粘度を有することが望ましい。
【0017】
本発明の課題は、更に、
水素結合供与体の官能を有するモノマーを場合によりグラフトされて有するコポリマー又はグラフトコポリマーを製造するための汎用的に使用可能な方法を提供すること、
摩耗防止性、分散作用及び清浄作用、腐食挙動及び酸化安定性に関して改善された特性を有する本発明によるコポリマー又はグラフトコポリマーを含有する潤滑剤を提供すること
である。
【0018】
前記の課題並びに明示的に挙げられていないものの、本明細書中で導入的に議論した関係から容易に想到するか、もしくは推論することができる別の課題は、全混合物に対して0.2〜30質量%のコポリマーを含有し、該コポリマーは、ラジカル重合された単位
a)0〜40質量%の式(I)
【0019】
【化1】

[式中、Rは、水素又はメチルを意味し、かつRは、1〜5個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味する]で示される1又は複数の(メタ)アクリレート、
b)35〜99.99質量%の式(II)
【0020】
【化2】

[式中、Rは、水素又はメチルを意味し、Rは、6〜40個の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分枝鎖状のアルキル基を意味し、R及びRは、無関係に、水素又は式−COORの基を意味し、その際、Rは、水素又は6〜40個の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分枝鎖状のアルキル基である]で示される1又は複数のエチレン性不飽和のエステル化合物、及び
c)0〜40質量%の1又は複数のコモノマー、並びに
d)0.01〜20質量%の式(III)
【0021】
【化3】

[式中、R、R及びRは、互いに無関係に、水素又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であってよく、かつRは、水素結合の形成が可能な1又は複数の構造単位を有しかつ水素供与体である基である]で示される化合物、及び
e)0〜20質量%の式(IV)
【0022】
【化4】

[式中、R、R10及びR11は、互いに無関係に、水素又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であってよく、かつ
12は、基C(O)OR13であり、かつR13は、少なくとも1個の−NR1415−基で置換された2〜20個、有利には2〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味し、その際、R14及びR15は、互いに無関係に、水素、1〜20個、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表すか又はR14及びR15は、窒素原子を含んで、かつ場合により更なる窒素原子又は酸素原子を含んで、5員又は6員の環を形成し、該環は、場合によりC〜C−アルキルで置換されていてよく、又は
12は、基NR16C(=O)R17を表し、その際、R16及びR17は、一緒になって、2〜6個、有利には2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を形成し、その際、前記の基は、場合により更なる窒素原子又は酸素原子を含んで、4員ないし8員、有利には4員ないし6員の飽和又は不飽和の環を形成し、その際、該環は、更に場合によりC〜C−アルキルで置換されていてよく、又は
12は、基NR17C(=O)R18を表し、その際、R17及びR18は、一緒になって、2〜6個、有利には2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を形成し、その際、前記の基は、場合により更なる窒素原子又は酸素原子を含んで、4員ないし8員、有利には4員ないし6員の飽和又は不飽和の環を形成し、その際、該環は、更に場合によりC〜C−アルキルで置換されていてよい]で示される1又は複数の化合物
から形成され、その際、
式(III)の化合物(d)は、主鎖中にのみか又は形成されたポリマーのグラフトされた側鎖中にのみ存在し、かつ
存在する場合には、式(IV)の化合物e)は、同様に、主鎖中にのみか又は形成されたポリマーのグラフトされた側鎖中にのみ存在し、
前記の成分の質量%の表記は、使用されるモノマーの全質量に対するものである潤滑油組成物であって、かつ該潤滑油組成物は、更に他の成分として:
25〜90質量%の鉱物性及び/又は合成の基油、
全部合わせて0.2〜20質量%の更なる通常の添加剤、例えば流動点降下剤、VI向上剤、劣化防止剤、清浄剤、分散助剤又は減摩成分
を含有する潤滑油組成物によって解決される。
【0023】
本発明による潤滑油配合物の有利な実施態様は、請求項1を引用する従属請求項に記載されている。グラフトコポリマーの製造方法に関しては、請求項11〜14は、前記課題の解決策を提供するが、一方で請求項15〜20は、特に好適なポリマーを記載している。請求項21〜24の範囲では、ハイドロリック用途とのかかわりで好ましい実施形態に関連している。
【0024】
本発明の利点
ポリマー中に水素結合供与体−官能を有する本発明によるポリマー、特に水素結合供与体の官能と水素結合受容体の官能とが同時に存在するポリマーは、該ポリマーを用いて製造された潤滑油配合物の摩耗防止性、清浄作用及び分散作用に対して優れた効果を示す。従って、該ポリマーは、産業上通常使用されているリン含有添加剤及び硫黄含有添加剤に取って代わる減摩性の代替物又は補足物であり、その公知の欠点の回避に役立つ。
【0025】
エンジンオイルに関しては、摩耗挙動において得られた利点は、例えばディーゼルエンジン又はオットーエンジンのエネルギー消費量に優れた作用を示す。
【0026】
本発明による配合物は、従来の油に対して明らかに良好な摩耗成果をもたらす。
【0027】
ハイドロリックオイルにおける特定の用途の場合に、該ポリマーはVI向上剤として使用でき、そしてハイドロリックオイルの動粘度とは無関係にハイドロリック装置中の減摩に寄与する。
【0028】
摩耗防止性は、単独でコポリマーによっても、又は通常の減摩性添加剤、例えば摩擦調節剤と一緒に達成される。
【0029】
該コポリマーは、VI作用と摩耗防止性の他に、流動点降下作用も示す。
【0030】
本発明によるグラフトコポリマーを使用して製造された配合物は、良好な腐蝕挙動並びに良好な酸化安定性の点で優れている。
【0031】
本発明によるグラフトされたメタクリル酸を含有するポリマー溶液の動粘度は、メタクリル酸を主にポリマー骨格中に有する匹敵するポリマーに対して実質的に低減されている。
【0032】
同時に本発明による方法により一連のその他の利点を達成することができる。これには、とりわけ
→ 圧力、温度及び溶剤に関して、重合の実施は比較的問題がなく、中程度の温度でも所定の状況下では許容できる成果が達成されること、
→ 本発明による方法は、副反応が少ないこと、
→ 該方法は、コスト的に有利に実施できること、
→ 本発明による方法を用いて、高い収率を達成できること、
→ 本発明の方法を用いて、前記に定義した構造と目的の構造をもったポリマーを製造できること
が該当する。
【0033】
今までにエンジンオイルで使用されていたVI作用と分散作用を有するポリマーは、前記で論じたように、好ましくは水素結合受容体官能性を有するモノマータイプ、特にN−複素環を有する。従って、水素結合供与体特性を有するモノマーを使用することにより、前記の改善された特性を示すポリマーが得られることは依然として予測できるものではなかった。
【0034】
発明の詳細な説明
該潤滑油は、全混合物に対して0.2〜30質量%、有利には0.5〜20質量%、特に有利には1〜10質量%のコポリマーを含有し、該コポリマーは、
0〜40質量%の式(I)
【0035】
【化5】

[式中、Rは、水素又はメチルを意味し、かつRは、1〜5個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味する]で示される1又は複数の(メタ)アクリレート
のラジカル重合された単位から形成される。
【0036】
式Iの成分のための例は、とりわけ飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、例えば
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート及びペンチル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート;
不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、例えば2−プロピニル(メタ)アクリレート及びアリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート
である。
【0037】
式(I)の(メタ)アクリレートの含量は、グラフトコポリマーの主鎖のエチレン性不飽和モノマーの全質量に対して、0〜40質量%、0.1〜30質量%又は1〜20質量%である。他の成分として、該ポリマーは、35〜99.99質量%の式(II)
【0038】
【化6】

[式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、6〜40個の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分枝鎖状のアルキル基を意味し、R及びRは、無関係に、水素又は式−COORの基を意味し、その際、Rは、水素又は6〜40個の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分枝鎖状のアルキル基である]で示される1又は複数のエチレン性不飽和のエステル化合物を含有する。
【0039】
式(II)による前記化合物には、6〜40個の炭素原子を有する少なくとも1個のアルコール基をそれぞれ有する(メタ)アクリレート、マレエート及びフマレートが該当する。
【0040】
この場合に、式(IIa)
【0041】
【化7】

[式中、Rは、水素又はメチルを意味し、かつRは、6〜40個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味する]で示される(メタ)アクリレートを意味する。
【0042】
本願の範囲内で、(メタ)アクリレートという表現を用いる場合に、この概念は、それぞれメタクリレート又はアクリレート単独又はその両者の混合物をも包含する。これらのモノマーは周知である。これらのモノマーには、とりわけ、
飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、例えばヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート及び/又はエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート;
不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、例えばオレイル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート
が該当する。
【0043】
長鎖アルコール基を有するエステル化合物は、例えば(メタ)アクリレート、フマレート、マレエート及び/又は相応する酸と長鎖脂肪アルコールとの反応により得られ、その際、一般にエステルの混合物、たとえば種々の長鎖アルコール基を有する(メタ)アクリレートが生じる。前記の脂肪アルコールには、とりわけ、
Monsanto社製のOxo Alcohol(登録商標)7911及びOxo Alcohol(登録商標)7900、Oxo Alcohol(登録商標)1100;
ICI社製のAlphanol(登録商標)79;
Sasol社製のNafol(登録商標)1620、Alfol(登録商標)610及びAlfol(登録商標)810;
Ethyl Corporation社製のEpal(登録商標)610及びEpal(登録商標)810;
Shell AG社製のLinevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911及びDobanol(登録商標)25L;
Sasol社製のLial 125(登録商標);
Henkel KGaA社製のDehydad(登録商標)及びLorol(登録商標);並びに
Linopol(登録商標)7−11及びAcropol(登録商標)91
が該当する。
【0044】
式IIの(メタ)アクリレートの長鎖アルキル基は、一般に、6〜40個の炭素原子、有利には6〜24個の炭素原子、特に有利には8〜18個の炭素原子を有し、そして直鎖状、分枝鎖状、直鎖状/分枝鎖状の混合型又は一緒になって環状成分であってよい。有利な実施態様は、メタクリレートとして、メチルメタクリレートとC〜C18−アルキルメタクリレートとからの混合物を使用することにある。
【0045】
(メタ)アクリルエステルの製造に使用される長鎖アルキル基を有するアルコールは市販されており、かつ一般に、多かれ少なかれ種々の鎖長を有する広範な混合物からなる。炭素原子の数の表記は、この場合には、一般に平均炭素数に関するものである。本願の範囲内で、アルコールもしくはこのアルコールを使用して製造された長鎖(メタ)アクリル酸エステルを、“C12”−アルコール又は“C12”−エステルと呼称する場合に、これらの化合物のアルキル基は、一般に、12個の炭素原子を有するアルキル基の他に、場合により更に8個、10個、14個又は16個の炭素原子をより低い割合で含有し、その際、平均炭素数が12であるアルキル基をも有する。本願の範囲内で、化合物をC12〜C18−アルキルアクリレートと呼称する場合に、これとともに、アクリル酸のエステルの混合物であって、直鎖状及び/又は分枝鎖状のアルキル置換基が存在し、かつ12〜18個の炭素原子のアルキル置換基を保持することを特徴とする混合物を意味している。
【0046】
式(II)又は式(IIa)の(メタ)アクリレートの含量は、グラフトコポリマーの主鎖のエチレン性不飽和モノマーの全質量に対して、35〜99.99質量%、40〜99質量%又は50〜80質量%である。
【0047】
ポリマーの合成のためには、また更に、全質量に対して、0〜40質量%、特に0.5〜20質量%の1又は複数のラジカル重合可能な他のモノマーも関与してよい。このための例は、
(メタ)アクリル酸のニトリル及び別の窒素含有のメタクリレート、例えばメタクリロイルアミドアセトニトリル、2−メタクリロイルオキシエチルメチルシアナミド、シアノメチルメタクリレート;アリール(メタ)アクリレート、例えばベンジルメタクリレート又はフェニルメタクリレート、その際、該アリール基は、それぞれ非置換又は四置換までなされていてよい;カルボニル含有のメタクリレート、例えばオキサゾリジニルエチルメタクリレート、N−(メタクリロイルオキシ)ホルムアミド、アセトニルメタクリレート、N−メタクリロイルモルホリン、N−メタクリロイル−2−ピロリジノン;グリコールジメタクリレート、例えば1,4−ブタンジオールメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエトキシメチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、エーテルアルコールのメタクリレート、例えばテトラヒドロフルフリルメタクリレート、ビニルオキシエトキシエチルメタクリレート、メトキシエトキシエチルメタクリレート、1−ブトキシプロピルメタクリレート、1−メチル−(2−ビニルオキシ)エチルメタクリレート、シクロヘキシルオキシメチルメタクリレート、メトキシメトキシエチルメタクリレート、ベンジルオキシメチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエトキシメチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、アリルオキシメチルメタクリレート、1−エトキシブチルメタクリレート、メトキシメチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート;ハロゲン化されたアルコールのメタクリレート、例えば2,3−ジブロモプロピルメタクリレート、4−ブロモフェニルメタクリレート、1,3−ジクロロ−2−プロピルメタクリレート、2−ブロモエチルメタクリレート、2−ヨードエチルメタクリレート、クロロメチルメタクリレート;オキシラニルメタクリレート、例えば2,3−エポキシブチルメタクリレート、3,4−エポキシブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート;リン、ホウ素及び/又はケイ素を含有するメタクリレート、例えば2−(ジメチルホスファト)プロピルメタクリレート、2−(エチレンホスフィト)プロピルメタクリレート、ジメチルホスフィノメチルメタクリレート、ジメチルホスホノエチルメタクリレート、ジエチルメタクリロイルホスホネート、ジプロピルメタクリロイルホスフェート;硫黄含有のメタクリレート、例えばエチルスルフィニルエチルメタクリレート、4−チオシアナトブチルメタクリレート、エチルスルホニルエチルメタクリレート、チオシアナトメチルメタクリレート、メチルスルフィニルメチルメタクリレート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)スルフィド;トリメタクリレート、例えばトリメチロイルプロパントリメタクリレート;ビニルハロゲン化物、例えば塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン及びフッ化ビニリデン;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル;スチレン、アルキル置換基で側鎖中で置換されたスチレン、例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、アルキル置換基で環上で置換されたスチレン、例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン、ハロゲン化されたスチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレン;複素環式のビニル化合物、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール及び水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾール;ビニルエーテル及びイソプレニルエーテル;マレイン酸誘導体、例えばマレイン酸のジエステルであってアルコール基が1〜9個の炭素原子を有するエステル、無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、マレインイミド、メチルマレインイミド;フマル酸誘導体、例えばフマル酸のジエステルであってアルコール基が1〜9個の炭素原子を有するエステル;ジエン、例えばジビニルベンゼン
ラジカル重合可能な4〜40個の炭素原子を有するα−オレフィン
である。例えば、代表物として、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、エイコセン−1、ヘネイコセン−1、ドコセン−1、トロコセン−1、テトラコセン−1、ペンタコセン−1、ヘキサコセン−1、ヘプタコセン−1、オクタコセン−1、ノナコセン−1、トリアコンテン−1、ヘントリアコンテン−1、ドトリアコンテン−1又は同等物が挙げられる。更に、分枝鎖状のアルケン、例えばビニルシクロヘキサン、3,3−ジメチルブテン−1、3−メチルブテン−1、ジイソブチレン−4−メチルペンテン−1又は同等物が適している。
【0048】
更に、エチレン、プロピレン又はその混合物の重合に際して生じる10〜32個の炭素原子を有するアルケン−1が適しており、この材料は、また水素化分解された材料から得られる。
【0049】
本発明によるポリマーの必須成分は、0.01〜20質量%の式(III)
【0050】
【化8】

[式中、R、R及びRは、互いに無関係に、水素又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であってよく、かつRは、水素結合の形成が可能な1又は複数の構造単位を有しかつ水素供与体である基である]で示される化合物である。
【0051】
同様に、式(III)のモノマーdとのグラフト工程あるいは、式(III)のモノマーdと式(IV)のモノマーeとのグラフト工程は、ほぼ専ら又は専ら炭素と水素とからなるポリマーに可能である。かかる純粋に炭化水素含有のポリマーにヘテロ原子含有モノマーをグラフトするための方法は、当業者に公知である。炭化水素を基礎とするポリマーとしては、例えばエチレン及びプロピレンからのコポリマー又は水素化スチレン/ジエン−コポリマーが該当する。前記ポリマーのグラフトされた生成物は、本発明の基礎となるポリアクリレートと同様に、潤滑油配合物への添加剤として、摩耗挙動の改善のために又は粘度指数の向上の目的で使用することができる。
【0052】
水素結合受容体の作用又は水素結合供与体の作用を有する基としての官能性の定義は、一般的な文献もしくは公知の化学参考書、例えば“Roempp Lexikon Chemie、第10版、1999年、Thieme Stuttgart New York出版”から引用することができる。
【0053】
これに従って、水素結合(H-Brueckenverbindung, Wasserstoff-Bindung, Wasserstoff-Bruecke)は、1つの重要な形の副原子価結合であり、該結合は、電気陰性元素(水素結合供与体、プロトン供与体、X)の原子に共有結合した水素原子と別の電気陰性原子(プロトン受容体、Y)の孤立電子対との間で形成される。一般に、かかる系は、RX−H…YR′として表現され、その際、点線が水素結合を記号化している。XとYとしては、主にO、N、S及びハロゲンが該当する。かなりの場合に(例えばHCN)、Cもプロトン供与体として機能する。供与体の共有結合の極性は、水素(プロトン)の正の部分電荷δを誘発し、一方で受容体原子は、相応の負の部分電荷δを有する。
【0054】
水素結合を介して結合された複合体の特徴付けられた、構造的かつ分光学的な特性は:
a)距離rHYは、原子H及びYのファンデルワールス半径の合計より明らかに小さい
b)XH−平衡核間距離は、遊離分子RX−Hに対して拡大されている
c)XH−伸縮振動(供与体の伸縮振動)は、より長波長へのシフト(“レッドシフト”)をうける。更に、その強度は明らかに高まる(より強い水素結合の場合には振幅の一桁より大)
d)双方の極性のため、水素結合で結合した複合体の双極子モーメントは、それらの成分の双極子モーメントのベクトル和より大きい
e)結合水素原子での電子密度は、水素結合の形成に際して減少する。前記効果は、実験的にNMRシフトの低下(プロトンの遮蔽の低下)の形で現れる。分子間距離がより短くなると、モノマーの電子殻が重複する。この場合に、ある一定の電荷移動で結合した4電子−3中心結合のタイプの化学結合が形成しうる。その他に、交換斥力が存在するのは、パウリの原理が、距離を保持して、2つのモノマーが近づくことを妨げるからである。解離エネルギーD=ΔH(絶対ゼロ度での反応RX−H…YR′→RX−H+YR′のモルエンタルピー)は、一般に、1〜50kJmol−1にある。その実験的な測定のために、熱化学的測定(第二ビリアル係数、熱伝導率)又は分光測定的調査が引き合いに出される(このために更には、“Chem.Rev.88,Chem.Phys.92,6017−6029(1990)”を引き合いに出すことができる)。
【0055】
水素結合の形成が可能でありかつ水素供与体である構造単位の水素原子については、該原子が電気陰性原子、例えば酸素、窒素、リン又は硫黄に結合されていることが特徴的である。“電気陰性”又は“電気陽性”という概念は、原子が、共有結合において1つ又は複数の価電子対を電子の非対称分布の範囲で自身に引きつけ、それにより双極子モーメントが生ずる傾向を示すものとして当業者にはよく知られている。“電気陰性”及び“水素結合”という概念の十分な議論は、例えば“Advanced Organic Chemistry”、J.March、第4版、J.Wiley&Sons、1992に見られる。
【0056】
かなりの二量体においては、例えばカルボン酸の環状構造を形成する二量体においては、1つより多い水素結合が形成される。環状構造は、しばしば、高級オリゴマーにおいても、例えば三量体以降のメタノールのオリゴマーにおいて、エネルギー的に好ましい。3つのモノマーにおける三量体の解離エネルギーは、52kJ・mol−1で、二量体のそれよりほぼ4倍である。1モノマーあたりの解離エネルギーへの非加算性は、水素結合を介して結合された複合体の典型的な特性である。
【0057】
本発明は、水素結合を形成する官能性の場合には、特にヘテロ原子を含有する基に関連し、その際、ヘテロ原子は、O、N、P又はSであることが好ましい。理論的には、炭素−水素結合は、水素結合供与体としても機能しうるが、かかる官能は、本願特許請求の範囲では、水素結合供与体の官能を有する官能性には該当しない。
【0058】
水素結合供与体の官能を有するモノマーは、例えばエチレン性不飽和カルボン酸及び全てのそれらの誘導体であって更に少なくとも1個の遊離のカルボキシル基を有するものである。このための例は、
アクリル酸、メタクリル酸、1−[2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)エチル]−マレエート(2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とマレイン酸とのモノエステル)、1−[2−(ビニルカルボニルオキシ)エチル]−マレエート(2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)とマレイン酸とのモノエステル)、1−[2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)エチル]−スクシネート(HEMAとコハク酸とのモノエステル)、1−[2−(ビニルカルボニルオキシ)エチル]−スクシネート(HEAとコハク酸とのモノエステル)、1−[2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)エチル]−フタレート(HEMAとフタル酸とのモノエステル)、1−[2−(ビニルカルボニルオキシ)エチル]−フタレート(HEAとフタル酸とのモノエステル)、1−[2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)エチル]−ヘキサヒドロフタレート(HEMAとヘキサヒドロフタル酸とのモノエステル)、1−[2−(ビニルカルボニルオキシ)エチル]−ヘキサヒドロフタレート(HEAとヘキサヒドロフタル酸とのモノエステル)、1−[2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)ブチル]−マレエート(2−ヒドロキシブチルメタクリレート(HBMA)とマレイン酸とのモノエステル)、1−[2−(ビニルカルボニルオキシ)ブチル]−マレエート(2−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)とマレイン酸とのモノエステル)、1−[2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)ブチル]−スクシネート(HBMAとコハク酸とのモノエステル)、1−[2−(ビニルカルボニルオキシ)ブチル]−スクシネート(HBAとコハク酸とのモノエステル)、1−[2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)ブチル]−フタレート(HBMAとフタル酸とのモノエステル)、1−[2−(ビニルカルボニルオキシ)ブチル]−フタレート(HBA及びフタル酸とのモノエステル)、1−[2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)ブチル]−ヘキサヒドロフタレート(HBMAとヘキサヒドロフタル酸とのモノエステル)、1−[2−(ビニルカルボニルオキシ)ブチル]−ヘキサヒドロフタレート(HBAとヘキサヒドロフタル酸とのモノエステル)、フマル酸、メチルフマル酸、フマル酸のモノエステル又はその誘導体、マレイン酸、メチルマレイン酸、マレイン酸のモノエステル又はその誘導体、クロトン酸、イタコン酸、アクリルアミドグリコール酸、メタクリルアミド安息香酸、ケイ皮酸、ビニル酢酸、トリクロロアクリル酸、10−ヒドロキシ−2−デセン酸、4−メタクリルオキシエチルトリメチル酸、スチレンカルボン酸
である。
【0059】
水素結合供与体の官能を有する更なる好適なモノマーは、アセトアセテート官能化されたエチレン性不飽和化合物、例えば2−アセトアセトキシエチルメタクリレート又は2−アセトアセトキシエチルアクリレートである。これらの化合物は、少なくとも部分的に互変異性エノール形で存在してよい。
【0060】
更に、水素結合供与体の官能を有するモノマーとしては、少なくとも1個のスルホン酸基及び/又は少なくとも1個のホスホン酸基を有する全てのエチレン性不飽和モノマーである。これは、少なくとも1個のエチレン性二重結合と、少なくとも1個のスルホン酸基及び/又は少なくとも1個のホスホン酸基をも有する全ての有機化合物である。該化合物には、例えば2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)−エタンスルホン酸、2−(ビニルカルボニルオキシ)−エタンスルホン酸、2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)−プロピルスルホン酸、2−(ビニルカルボニルオキシ)−プロピルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドドデカンスルホン酸、2−プロペン−1−スルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンジスルホン酸、メタクリルアミドエタンホスホン酸、ビニルホスホン酸、2−ホスファトエチルメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、Ω−アルケンカルボン酸、例えば2−ヒドロキシ−4−ペンテン酸、2−メチル−4−ペンテン酸、2−n−プロピル−4−ペンテン酸、2−イソプロピル−4−ペンテン酸、2−エチル−4−ペンテン酸、2,2−ジメチル−4−ペンテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7ーオクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、11−ドデセン酸、12−トリデセン酸、13−テトラデセン酸、14−ペンタデセン酸、15−ヘキサデセン酸、16−ヘプタデセン酸、17−オクタデセン酸、22−トリコセン酸、3−ブテン−1,1−ジカルボン酸が該当する。
【0061】
特に10−ウンデセン酸が好ましい。
【0062】
同様に、モノマーとしては、カルボン酸と同様に同時に水素結合供与体としても水素結合受容体としても作用しうることが知られる酸アミドが適している。不飽和カルボン酸アミドは、非置換のアミド基を有するか又は場合により一置換されたカルボン酸アミド基を有してよい。好適な化合物は、例えば
(メタ)アクリル酸のアミド並びにN−アルキル置換された(メタ)アクリルアミド、例えばN−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(ジエチルホスホノ)メタクリルアミド、1−メタクリロイルアミド−2−メチル−2−プロパノール、N−(3−ジブチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−t−ブチル−N−(ジエチルホスホノ)メタクリルアミド、N,N−ビス(2−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、4−メタクリロイルアミド−4−メチル−2−ペンタノール、N−(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(メトキシメチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−(ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド;アミノアルキルメタクリレート、例えばトリス(2−メタクリルオキシエチル)アミン、N−メチルホルムアミドエチルメタクリレート、N−フェニル−N′−メタクリロイル尿素、N−メタクリロイル尿素、2−ウレイドエチルメタクリレート;N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素、複素環式(メタ)アクリレート、例えば2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン、フルフリルメタクリレート
である。
【0063】
同様に、水素結合供与体として適したカルボン酸エステルは、
2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−メチルホルムアミドエチルメタクリレート、2−ウレイドエチルメタクリレート;複素環式(メタ)アクリレート、例えば2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、例えば3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオール(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸のポリオキシエチレン誘導体及びポリオキシプロピレン誘導体、例えばトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びテトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メタクリルヒドロキサム酸、アクリルヒドロキサム酸、N−アルキルメタクリルヒドロキサム酸、N−アルキルアクリルヒドロキサム酸、メタクリル酸もしくはアクリル酸とラクタム、例えばカプロラクタムとの反応生成物、メタクリル酸もしくはアクリル酸とラクトン、例えばカプロラクトンとの反応生成物、メタクリル酸もしくはアクリル酸と酸無水物との反応生成物、メタクリルアミドもしくはアクリルアミドとラクタム、例えばカプロラクタムとの反応生成物、メタクリルアミドもしくはアクリルアミドとラクトン、例えばカプロラクトンとの反応生成物、メタクリルアミドもしくはアクリルアミドと酸無水物との反応生成物
である。
【0064】
水素結合の形成が可能な1又は複数の構造単位を有し、水素供与体である化合物の含量は、使用されるエチレン性不飽和モノマーの全質量に対して0.01〜20質量%、有利には0.1〜15質量%、特に有利には0.5〜10質量%である。
【0065】
該ポリマーは、場合により更に付加的に、コポリマーの全質量に対して、0〜20質量%又は0〜10質量%の1又は複数の式(IV)
【0066】
【化9】

[式中、R10、R11及びR12及びR13は、既に挙げた意味を有する]で示される化合物を含有してよい。
【0067】
式(IV)の化合物のための例は、とりわけ、
N,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド及びN,N−ジエチルメタクリルアミド、アミノアルキルメタクリレート、例えばトリス(2−メタクリルオキシエチル)アミン、N−メチルホルムアミドエチルメタクリレート、2−ウレイドエチルメタクリレート;複素環式(メタ)アクリレート、例えば2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート及び1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン、複素環式ビニル化合物、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール及び水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾール
である。
【0068】
式(III)の化合物d)は、本発明によれば、主鎖中にのみか又は形成されたポリマーのグラフトされた側鎖中にのみ存在してよい。
【0069】
存在するのであれば、式(IV)の化合物e)は、同様に、主鎖中にのみか又は形成されたポリマーのグラフトされた側鎖中にのみ存在する。
【0070】
種々の成分の質量%の表記は、一般に、使用されるモノマーの全質量に対するものである。
【0071】
潤滑油組成物は、更に他の成分として、25〜90質量%の鉱物性及び/又は合成の基油と、全部合わせて0.2〜20質量%、有利には0.5〜10質量%の更なる通常の添加剤、例えば流動点降下剤、VI向上剤、劣化防止剤、清浄剤、分散助剤又は減摩成分とを含有する。
【0072】
通常は、前記の成分の複数種は、既に、市販されているいわゆるDIパッケージ(DI-Paket)中にまとめられている。殆どの場合にリン含有成分及び硫黄含有成分を摩耗防止添加剤として含有する、かかる多目的添加剤のための例は、例えば
Ethyl社の製品、例えばHitec 521、Hitec 522、Hitec 525、Hitec 522、Hitec 381、Hitec 343、Hitec 8610、Hitec 8611、Hitec 8680、Hitec 8689、Hitec 9230、Hitec 9240、Hitec 9360、
Oronite社の製品、これらは“OLOA”という名称と製品特定番号とで提供され、例えばOLOA 4994、OLOA 4994C、OLOA 4900D、OLOA 4945、OLOA 4960、OLOA 4992、OLOA 4616、OLOA 9250、OLOA 4595など、
Infineum社の製品、例えばInfineum N8130、
Lubrizol社の製品、例えばLubrizol 7653、Lubrizol 7685、Lubrizol 7888、Lubrizol 4970、Lubrizol 6950D、Lubrizol 8880、Lubrizol 8888、Lubrizol 9440、Lubrizol 5187J、Anglamol 2000、Anglamol 99、Anglamol 6043、Anglamol 6044B、Anglamol 6059、Anglamol 6055
である。
【0073】
ポリマーの製造
前述のエチレン性不飽和モノマーは、単独で又は混合物として使用することができる。更に、モノマー組成物を重合の間に変更することも可能である。
【0074】
上記の組成物からのポリマーの製造は、自体公知である。例えば、これらのポリマーは特にラジカル重合により、並びに類似の方法、例えばATRP(=Atom Transfer Radical Polymerization:原子移動ラジカル重合)又はRAFT(=Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer:可逆的な付加断片化連鎖移動)により行うことができる。
【0075】
通常のラジカル重合は特にUllmanns’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版に記載されている。一般にこのために重合開始剤を使用する。
【0076】
これには特に専門業界で周知のアゾ開始剤、たとえばAIBN及び1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、並びにペルオキシ化合物、たとえばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロキシペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、前記の化合物2種類以上の相互の混合物並びに前記の化合物と、前記に記載しなかったが、同様にラジカルを形成することができる化合物との混合物が属する。
【0077】
ATRP−法は自体公知である。これは“リビング”ラジカル重合であるが、メカニズムの記載により限定されるべきではないと考えられる。この方法で遷移金属化合物を、移動可能な原子基を有する化合物と反応させる。この場合、移動可能な原子基を遷移金属化合物に転位させ、このことにより金属が酸化される。この反応の際に、エチレン基に付加する基が形成される。しかし遷移金属化合物への原子基の移動は可逆的であるので、原子基は成長しているポリマー鎖に逆戻りし、このことによって制御された重合系が形成される。相応してポリマーの構造、分子量及び分子量分布を制御することができる。この反応実施はたとえばJ−S.Wang等によりJ.Am.Chem.Soc.、第117巻、第5614〜5615頁(1995)に、MatyajaszewskiによりMacromolecules、第28巻、第7901〜7910(1995)に記載されている。更に、特許出願WO96/30421号、WO97/47661号、WO97/18247号、WO98/40415号及びWO99/10387号は、上記説明したATRPの変法を開示している。
【0078】
更に本発明によるポリマーはたとえばRAFT法によっても得られる。この方法はたとえばWO98/01478号に詳細に記載されており、これを開示の目的のために明言をもって引用する。
【0079】
重合は標準圧力、減圧又は過圧で実施することができる。重合温度もまた重要ではない。しかし温度は一般に−20℃〜200℃、有利には0℃〜130℃及び特に有利には60℃〜120℃の範囲である。
【0080】
重合は溶剤を用いても用いなくても実施することができる。溶剤の概念はこの場合、広く理解すべきである。
【0081】
有利には重合を非極性溶剤中で実施する。これには炭化水素溶剤、たとえば芳香族溶剤、たとえばトルエン、ベンゼン及びキシレン、飽和炭化水素、たとえばシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンであり、これらは分枝鎖状で存在していてもよい。これらの溶剤を単独で、並びに混合物として使用することができる。特に有利な溶剤は鉱油、天然油及び合成油並びにこれらの混合物である。これらの中で鉱油が特に有利である。
【0082】
鉱油は自体公知であり、市販されている。鉱油は一般に石油又は原油から蒸留及び/又は抽出及び場合によりその後の精製により得られ、その際、鉱油の概念の下には特に高沸点の原油又は石油の割合が該当する。一般に鉱油の沸点は5000Paで200℃よりも高く、有利には300℃より高い。シェール油の乾留、石炭乾留、褐炭の空気の遮断下での蒸留並びに石炭もしくは褐炭の水素化により製造が同様に可能である。より少ない割合のために鉱油はまた植物性(たとえばホホバ、ナタネ)又は動物性(たとえば牛脚油)に由来の原料からも製造される。相応して鉱油は、その由来に応じて、芳香族、環式、分枝鎖状及び直鎖状の炭化水素の異なった割合を有する。
【0083】
一般に原油もしくは鉱油中のパラフィンベース、ナフテン系及び芳香族の割合は異なっており、その際、パラフィンベースの割合という概念は、長鎖もしくは著しく分枝鎖状のイソアルカンを表し、かつナフテン系の割合という概念はシクロアルカンを表す。更に鉱油はその由来及び精製に応じて、低い分枝度を有する異なったn−アルカン、イソアルカンの割合、いわゆるモノメチル分枝鎖状パラフィン、及びヘテロ原子、特にO、N及び/又はSを有する化合物を有し、極性の特性はここに属することが認められる。n−アルカンの割合は有利な鉱油中で3質量%より少なく、O、N及び/又はS含有化合物の割合は6質量%より少ない。芳香族及びモノメチル分枝鎖状のパラフィンの割合は一般にそのつど0〜30質量%の範囲である。興味深い側面によれば鉱油は主としてナフテン系及びパラフィンベースのアルカンを含み、これは一般に13個より多くの、有利には18個より多くの、及び特に有利には20個より多くの炭素原子を有する。これらの化合物の割合は一般に≧60質量%、有利には≧80質量%であるが、このことにより限定されるべきではない。従来の方法、たとえば尿素分離及びシリカゲルを用いた液体クロマトグラフィーにより行われていた特に有利な鉱油の分析は、たとえば以下の成分を有しており、その際、パーセントの記載はそのつど使用される鉱油の全質量に対するものである:
約18〜31個のC原子を有するn−アルカン:0.7〜1.0%
18〜31個のC原子を有するわずかに分枝したアルカン:1.0〜8.0%
14〜32個のC原子を有する芳香族化合物:0.4〜10.7%
20〜32個のC原子を有するイソアルカン及びシクロアルカン:60.7〜82.4%
極性化合物:0.1〜0.8%
損失:6.9〜19.4%
鉱油の分析に関する貴重な示唆並びに相違する組成を有する鉱油の列挙はたとえばUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、CD−ROM版の第5版、1997、キーワード“潤滑剤及び関連製品”に見ることができる。
【0084】
合成油は、とりわけ有機エステル、有機エーテル、例えばシリコーン油及び合成炭化水素、特にポリオレフィンである。これらは多くの場合、鉱油よりも若干高価であるが、しかしその性能に関して利点を有する。
【0085】
天然油は動物性もしくは植物性の油、たとえば牛脚油又はホホバ油である。
【0086】
これらの油は混合物として使用することもでき、かつ多様なものが市販されている。
【0087】
これらの溶剤は、混合物の全質量に対して、有利には1〜99質量%、特に有利には5〜95質量%、殊に有利には10〜60質量%の量で使用される。該組成物は、また、極性溶剤を有してよいが、その際、その量は、前記溶剤がポリマーの可溶性に対して是認できない不利な作用を及ぼしてはならないということによって制限される。
【0088】
ポリマーの分子量Mは、1500〜4000000g/モル、特に5000〜2000000g/モル、特に有利には20000〜500000g/モルである。多分散性(M/M)は、有利には1.2〜7.0の範囲にある。分子量は、公知の方法に従って測定することができる。例えば、“サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)”としても知られるゲル透過クロマトグラフィーを使用することができる。同様に、浸透圧測定的方法、例えば“気相浸透圧測定法”を分子量の測定のために使用することができる。上述の方法は、例えば:P.J.Flory,“Principles of Polymer Chemistry” Cornell University Press(1953)、Chapter VII,266−316並びに“Macromolecules,an Introduction to Polymer Science”,F.A.Bovey and F.H.Winslow,Editors,Academic Press(1979),296−312並びにW.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,“Modern Size Exclusion Liquid Chromatography”,John Wiley and Sons,New York,1979に記載されている。本願で説明されるポリマーの分子量の測定のためには、ゲル透過クロマトグラフィーを使用することが好ましい。有利には、ポリメチルアクリレート標準もしくはポリアクリレート標準に対して測定すべきである。
【0089】
残留モノマー含量(例えばC〜C18−アルキルアクリレート、MMA、メタクリル酸、NVP)は、通常の方法に従ってHPLC分析で測定された。その記述は、製造されたポリマー溶液の全質量に対するppm又は質量%のいずれかでなされる。例として、長鎖アルキルで置換されたアクリレートについて、例えばC〜C18−アルキルアクリレートについて示された残留モノマー含量が、エステル側鎖中に8〜18個の炭素原子を保持するアルキル置換基を有する使用される全アクリレートモノマーを含むことが挙げられる。
【0090】
本発明で記載される合成は、ポリマー溶液の製造であるが、これをもって記載される合成が溶剤を含まずに実施できないと制限されない。上述の動粘度は、それに相応してポリマー溶液に関するものであって、純粋に単離されたポリマーに関するものではない。概念“増粘作用”は、規定量のポリマー溶液を他の溶剤で希釈することによって規定の温度で測定されるポリマー溶液の動粘度に関するものである。通常は、それぞれ製造された10〜15質量%のポリマー溶液を150N油中で希釈し、そして得られた溶液の動粘度を40℃もしくは100℃で測定する。動粘度の測定は、通常の方法に従って、例えばウッベローデ型粘度計又はHerzog社製の自動測定装置中で実施する。動粘度の記述は、常にmm/sで行われる。
【0091】
本発明のグラフトコポリマーの製造方法は、全ての個々の成分の共重合によって製造するか、又は別の実施態様においては、第一工程で、主鎖をモノマーa)、b)及びc)のラジカル重合によって製造し、次いで第二工程で、1又は複数のモノマーd)及び場合によりe)をその主鎖上にグラフトさせるかのいずれかを特徴としている。
【0092】
グラフトコポリマーの製造方法の有利な実施態様においては、式(III)で示される1又は複数のモノマーのグラフト後に、式(IV)で示される水素結合の形成が可能な構造単位を有さない1又は複数のモノマーによる更なるグラフト工程を実施する。
【0093】
同様に、前記のグラフト工程の順序は交換することができる。グラフトコポリマーの製造方法の前記の実施態様において、主鎖の重合後に、まず式(IV)で示される1又は複数のモノマーによるグラフト工程を実施し、引き続き式(III)で示される1又は複数のモノマーによる更なるグラフト工程を行う。
【0094】
グラフトコポリマーの製造のための本方法は、グラフト工程を、式(III)と式(IV)の1又は複数のモノマーからそれぞれなる混合物を使用することで行うことも好ましいことがある。
【0095】
グラフトコポリマーの製造のための本方法の更なる有利な実施態様は、グラフト工程を続けて5回まで実施することを特徴とする。この場合に、それぞれ少量のモノマー量による、例えば水素結合供与体として作用しうるモノマーそれぞれ1質量%による連続的な複数回のグラフト化が行われる。例えば、全体で2質量%のかかるモノマーがグラフト化のために使用されるのであれば、続けて2回のグラフト工程を、例えばそれぞれ1質量%の当該モノマーによって実施することが好ましい。当業者には、ここで個々の事例に依存して、使用されるモノマー量及びグラフト工程数についての一連の他の値を使用できることは明らかなので、これらをここで個別に列挙する必要はない。複数回の、5回までのグラフ工程の繰り返しを、式(III)及び式(IV)で示されるモノマーの混合物を用いても実施できることは自明である。
【0096】
N−官能化されたモノマーe)は、N−ビニル置換されたモノマー、例えばN−ビニル−ピロリドン、N−ビニル−カプロラクタム、N−ビニル−トリアゾール、N−ビニル−ベンゾトリアゾール又はN−ビニル−イミダゾールであってよい。別の一実施態様においては、ビニルピリジン、例えば2−ビニル−ピリジンであってよい。同様に、エステル官能中にN−複素環を有するメタクリレート又はアクリレートであってよい。その他に、N含有モノマーは、N,N−ジアルキルアミノアクリレートもしくはそのメタクリレート類似体であってよく、その際、アミノアルキル基は1〜8個の炭素原子を有する。他の可能な化合物に関しては、前記の化合物の代わりに、式(IV)で示されるモノマーの定義で詳しく列挙したものを指摘する。
【0097】
実際に、酸官能化されたポリマーは、しばしばアミン、ポリアミン又はアルコールでポリマー類似反応において中和され、そのための指示を、例えばDE−A2519197号(ExxonMobil)並びにUS3,994,958号(Rohm&Haas Company)が開示している。前記の両方の出願と同様に、本願の本発明によるポリマーは、ポリマー類似反応において第一級又は第二級のアミン化合物又はアルコールでポリマー類似反応において後に中和又はエステル化されてよい。この場合に、ポリマーの部分的又は完全な中和を実施することができる。
【0098】
粘度指数、分散能及び本願で議論されていない特性、例えば酸化安定性の他に、特に機械要素の摩耗挙動に対する潤滑油の影響も関心が持たれる。従って、潤滑油には、一般に、このために特別に準備された減摩性添加剤が添加される。かかる添加剤は、少なくともリン含有及び/又は硫黄含有である。潤滑物質産業においては、現代の潤滑油配合物中でリン及び硫黄の供給を減らそうという努力がなされている。これには、技術的な理由(排ガス触媒被毒の回避)と同様に、環境保護政策の理由もある。それに伴い、リン不含及び硫黄不含の潤滑物質添加剤の探求は、まさについ最近、多くの添加剤製造元の集中的な研究活動を引き起こした。
【0099】
摩耗挙動における利点は、例えばディーゼルエンジン又はオットーエンジンのエネルギー消費量に有利に作用しうる。本発明のポリマーは、今までに、摩耗挙動に対する有利な効果とはまだ関係づけられていなかった。
【0100】
本発明のポリマーは、摩耗防止性に関して知られる従来のN−官能性を有するポリマーより優れている。
【0101】
今日の従来技術によれば、内燃機関のクランクシャフトドライブ、ピストン群、シリンダ内壁及びバルブ制御はエンジンオイルで潤滑されている。この場合に、エンジンのオイルパン中に集まるエンジンオイルは、給油ポンプによってオイルフィルタを介して個々の潤滑部位に供給される(はねかけ潤滑及び油霧潤滑と連係した潤滑油加圧循環方式)。
【0102】
エンジンオイルは、このシステム中で、動力伝達、摩擦の低減、摩耗の低減、部材の冷却並びにピストンの気密化といった機能を有する。
【0103】
そのオイルは、この場合に圧力下でベアリング位置に供給される(クランクシャフトベアリング、ロッドベアリング及びカムシャフトベアリング)。バルブ装置、ピストン群、歯車及びチェーンの潤滑部には、インジェクションオイル、遠心油(Schleuderoel)又は油霧が供給される。
【0104】
個々の潤滑部位で、駆動時に、伝達されるべき動力、接触形状、滑り速度及び温度が広範に変化する。
【0105】
エンジンの出力密度(kW/排気量;回転モーメント/排気量)の増大は、より高い部材温度と潤滑部位の表面圧力をもたらす。
【0106】
前記の駆動条件下でエンジンオイル機能を保証するために、エンジンオイルの性能は、規格化された試験方法及びエンジン試験(例えば米国におけるAPI分類又は欧州におけるACEA試験シーケンス)で試験される。更に、エンジンオイルの使用が許可される前に、個別の製造元自体で定義された試験法が使用される。
【0107】
上述の潤滑油特性は、エンジンオイルの摩耗防止性に特に重要である。ACEA試験シーケンス2002の要求事項リストは、例として、各カテゴリー(PKWオットーエンジンについてはA、ディーゼルエンジンについてはB、そしてLKWエンジンについてはE)において、別個のエンジン試験で、バルブ装置について十分な摩耗防止性が立証されているべきことを示す。
【0108】
そのオイルは、駆動時に以下の負荷に晒されている:
・ 高温の部材との接触(300℃以上まで)
・ 空気の存在(酸化)、窒素酸化物の存在(ニトロ化)、燃料とその燃焼残滓の存在(壁部凝結、液体形での投入)及び燃焼後の煤粒子の存在(固形不純物の投入)
・ 燃焼時点で、シリンダ上の油膜が高い放射熱に晒される
・ エンジンのクランクシャフトドライブによって生ずる乱流は、クランクシャフトドライブのガス空間に小滴の形でオイルの大きな活性表面をもたらし、かつオイルパン中に気泡をもたらす。
【0109】
挙げられた蒸発、酸化、ニトロ化、燃料による希釈及び粒子の投入といった負荷は、エンジン駆動の結果、エンジンオイル自体及び駆動時にエンジンオイルで湿潤したエンジンの部材を改質させる。結果として、エンジンの十分な駆動にとって、以下の不所望な効果を生ずる:
・ 粘度(低温範囲並びに40℃と100℃で測定される)の変化
・ 低い外気温でのオイルのポンプ圧送性
・ エンジンの高温及び低温の部材での堆積物形成:これは、ラッカー様の層(色は褐色ないし黒色)の形成ないしカーボンの形成を表す。これらの堆積物は、個々の部材の機能、例えばピストンリングの滑動性及びターボチャージャの吸気部材(ディフーザ及びスパイラル)の尖鋭化を損ねる。結果として、重大なエンジン故障あるいは力損と排ガス放出の増大をもたらす。更に、有利にはエンジンルームの水平面にスラッジ様の堆積物層が形成し、それは極端な場合にはエンジンのオイルフィルタとオイル通路を閉塞することがあり、これは同様にエンジン故障を招くことがある。
【0110】
堆積物形成の減少及び高い清浄能及び分散能の保証並びに長い使用期間にわたる摩耗防止作用は、以下の1998年のACEA試験シーケンスの例に見られるように通常の認可手続において最も重要である:
・ カテゴリーA(オットーエンジン):6種のエンジン試験法において、オイル堆積を10回、摩耗性を4回、粘度を2回測定する。堆積挙動の測定に際して、ピストンの汚れ具合を3回、ピストンリング焼付けを3回、そしてスラッジ形成を3回評価する。
【0111】
・ カテゴリーB(軽ディーゼルエンジン):5種のエンジン試験法において、オイル堆積を7回、摩耗性を3回、粘度を2回測定する。堆積挙動の測定に際して、ピストンの汚れ具合を4回、ピストンリング焼付けを2回、そしてスラッジ形成を1回評価する。
【0112】
カテゴリーE(重ディーゼルエンジン=ヘビーデューティーディーゼル):5種のエンジン試験法において、オイル堆積を7回、摩耗性を6回、粘度を1回測定する。堆積挙動の測定に際して、ピストンの汚れ具合を3回、スラッジ形成を2回、そしてターボ堆積物を1回評価する。
【0113】
本発明については、使用される潤滑物質の摩耗に対する影響を、CEC−L−51−A−98試験法に従って測定した。これらの試験法は、PKW−ディーゼルエンジン(ACEAカテゴリーB)の調査のためにも、LKW−ディーゼルエンジン(ACEAカテゴリーE)においても適している。これらの試験法では、それぞれのカムから、二次元あるいは三次元測定装置において試験前後に1゜のステップで全周プロフィールを測定して比較する。その試験で生ずるプロフィール偏差は、この場合にカム摩耗に相当する。試験されるエンジンオイルの評価のために、個々のカムの摩耗結果の平均値を出し、相応のACEAカテゴリーの限界値と比較する。
【0114】
CEC試験法とは異なって、200時間の試験期間を100時間に短縮した。実施された試験は、既に100時間後に、使用された油間で明らかに区別できることを示している。それというのも、既にこの時間後に摩耗において明らかな差異が確認できたからである。
【0115】
本発明の油A(第1表と第2表を参照)は、摩耗試験のための第一の比較例として用いた。それは、カテゴリーSAE 5W−30のヘビーデューティーディーゼルエンジン配合物である。この油は、実際と同様に、通常は、商慣習の基油、本事例ではFortum社製のNexbase 3043と、更なる典型的な添加剤とを混合してなっている。前記添加剤は、Oronite社製のOloa 4549である。その成分は、エンジンオイル用の典型的なDI添加剤である。該製品は、無灰の分散剤の他に、摩耗挙動の改善のための成分も含有する。Oloa 4549中の後者の成分は、亜鉛含有及びリン含有の化合物である。亜鉛含有及びリン含有の化合物は、摩耗挙動の改善のために目下入手可能な添加剤と見なされる。更なる添加剤としては、増粘剤あるいはVI向上剤の作用の目的で、エチレン−プロピレン−コポリマー(Oronite社製のParatone 8002)が使用されている。Paratone 8002は、実際と同じように、通常は、鉱油中の溶液として使用されている。そのVI作用に制限があるが、エチレン−プロピレン−コポリマーは、その良好な増粘作用に基づいて、PKW−エンジンオイル及びLKW−エンジンオイルにおいて目下最も一般的なVI向上剤である。目立った摩耗改善作用は、かかる系については、今まではまだ記載されていない。ポリアクリレートは、油Aのための添加剤成分として使用されていない。まとめると、油Aは、75.3質量%のNexbase 3043、13.2質量%のOloa 4594並びにParatone 8002の溶液11.5質量%から構成されている。
【0116】
第1表.油A〜Gで得られるCEC−L−51−A−98による摩耗結果
【0117】
【表1】

【0118】
第2表.摩耗試験に使用される配合物のレオロジーデータ並びにTBN値
【0119】
【表2】

【0120】
摩耗試験のための第二の比較例として、油Bを用いた(第1表及び第2表を参照)。油Bは、油Aとは、Paratone 8002の一部がポリアクリレートによって、特定の場合には比較例1からのポリアクリレートによって交換されているという点で異なる。比較例1からのポリマーは、既に摩耗防止性に関して好ましいとして説明されたNVP含有のポリアクリレートである。油C(摩耗研究のための第三の比較例)のために使用されるポリアクリレートは、比較例2に由来し、かつそれは比較例1からのポリマーに対して、窒素の代わりに酸素から構成される分散性の官能性を有するポリアクリレートである。更に、比較例2からのポリマー溶液は、他の溶剤成分の他に、エンジンにおいて分散作用があることが認められたアルキルアルコキシレートを少量含有する。第2表から明白なように、油Aと油B並びに全ての他の摩耗試験に使用される配合物は、それらの動粘度データに関しては実質的に相違しない。このことは、40℃と100℃で測定された動粘度(第2表において、KV40℃あるいはKV100℃と示される)をもとに確認できる。同様に、第2表は、使用される配合物が、粘度指数(VI)、全アルカリ価(TBN)、クランクケース−シミュレーターデータ(CCS)によって表現される冷間始動挙動並びに高温剪断データ(HTHS)によって表現される高温時での一時的な剪断による粘度損失に関しては、決定的に相違しないことを示している。KV40℃データ、KV100℃データ、VIデータ、TBNデータ、CCSデータ及びHTHSデータは、当業者に公知のASTM法に従って測定した。
【0121】
また腐蝕挙動並びに酸化安定性に関しても、本発明による配合物は、比較例に対して目立った相違点が認められなかった。例として、本発明による配合物D及びEは、油A、油B及び油Cとの直接的な比較において、その腐蝕挙動に関して調査された(第3表を参照)。これらの調査は、ASTM D5968に従って、鉛、銅及びスズについて行い、そしてASTM D130に従って、銅について行った。
【0122】
第3表.摩耗試験に使用される配合物の腐蝕挙動
【0123】
【表3】

【0124】
酸化挙動は、当業者に公知のPDSC法をもとに測定した(CEC L−85−T−99)。
【0125】
油B、油C、油D及び油Eは、共通して、3質量%のParatone 8002溶液をそれぞれ、その都度のポリアクリレート溶液3質量%と交換した。油D及び油Eは、摩耗挙動に関しては、本発明による配合物である。
【0126】
実施例1からのポリマーは、特に好ましいと判明した(平均カム摩耗:5.7μm)。容易に製造されるべき実施例3からのコポリマーは、従来技術に対して改善されていることが判明し、そのことは油Eの油Aに対するカム摩耗における比較によって指示される。
【0127】
本発明による潤滑油配合物の製造用の基油としては、原則的に、高められた温度でも壊れない十分な潤滑膜を提供するあらゆる化合物が適している。前記の特性の測定のためには、例えばSAE規格においても規定されているような粘度を例えば用いることができる。
【0128】
特に適しているのは、とりわけ、100℃でそれぞれ測定して、15セイボルト秒(SUS、セイボルトユニバーサル)ないし250SUSの範囲、有利には15〜100SUSの範囲にある粘度を有する化合物である。
【0129】
このために適した化合物には、とりわけ、天然油、鉱物性油及び合成油並びにそれらの混合物が該当する。
【0130】
天然油は動物性もしくは植物性の油、たとえば牛脚油又はホホバ油である。鉱物性油は、主に、原油からの蒸留によって得られる。該油は、特にその有利な費用の点で好ましい。合成油は、とりわけ、前記の要求を満たす有機エステル、合成炭化水素、特にポリオレフィンである。これらは多くの場合、鉱油よりも若干高価であるが、しかしその性能に関して利点を有する。
【0131】
これらの基油は混合物として使用することもでき、かつ多様なものが市販されている。
【0132】
基油及び既に分散挙動と摩耗防止性に寄与する本願に挙げられるポリマーの他に、潤滑油は、一般に、他の添加剤を含有する。このことは、特にエンジンオイル、トランスミッションオイル並びにハイドロリックオイルの場合に言えることである。該添加剤は、固体を懸濁させ(清浄剤−分散剤挙動)、酸性反応生成物を中和し、かつシリンダ表面に保護膜を形成する(“極圧”用のEP添加剤)。その他に、減摩性添加剤、例えば摩擦調節剤、劣化防止剤、流動点降下剤、腐蝕防止剤、着色物質、解乳化剤及び着臭剤が使用される。他の貴重な示唆を、当業者であれば、Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、CD−ROM版の第5版、1998年版に見出す。本発明の本発明によるポリマーは、その摩耗防止性への寄与に基づいて、摩擦調節剤又はEP添加剤が存在しなくても十分な摩耗防止性を保証することができる。その際、摩耗改善作用は、本発明によるポリマーによって寄与でき、従ってそこに摩擦調節剤の作用があると見なすことができた。
【0133】
上述の添加剤の使用される量は、潤滑剤の使用分野に依存する。一般に、基油の割合は、25〜90質量%、有利には50〜75質量%である。添加剤は、いわゆるDIパッケージ(清浄剤−インヒビター(Detergent-inhibitor))としても使用でき、これらは広く知られており、かつ商業的に入手することができる。
【0134】
特に有利なエンジンオイルは、基油の他に、例えば
0.1〜1質量%の流動点降下剤、
0.5〜15質量%のVI向上剤、
0.4〜2質量%の劣化防止剤、
2〜10質量%の清浄剤、
1〜10質量%の潤滑能向上剤、
0.0002〜0.07質量%の泡止め剤、
0.1〜1質量%の腐蝕防止剤
を含有する。
【0135】
本発明による潤滑油は、更に、有利には0.05〜10.0質量%の濃度で、式(V)で示されるアルキルアルコキシレートを含有してよい。該アルキルアルコキシレートは、潤滑油組成物に直接、VI向上剤の成分として、DIパッケージの成分として、潤滑剤濃縮物の成分として添加することができ、又は後に該油に添加することができる。この場合に、油として後処理された使用済み油を使用することもできる。
【0136】
【化10】

[式中、
、R及びRは、無関係に、水素又は40個までの炭素原子を有する炭化水素基であり、
は、水素、メチル基又はエチル基であり、
Lは、結合性基であり、
nは、4〜40の範囲の整数であり、
Aは、2〜25個の繰返単位を有するアルコキシ基であり、その単位は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドから誘導され、その際、Aは、上述の化合物のホモポリマー並びに該化合物少なくとも2個からなる統計コポリマーを含み、かつ
zは、1又は2であり、その際、
式(V)の化合物(VI)
【0137】
【化11】

で示される非極性部は、少なくとも9個の炭素原子を有する]。これらの化合物は、本発明の範囲では、アルキルアルコキシレートと呼称する。これらの化合物は、単独でも、混合物としても使用することができる。
【0138】
40個までの炭素原子を有する炭化水素基とは、例えば直鎖状、分枝鎖状又は環状であってよい飽和及び不飽和のアルキル基並びにヘテロ原子及びアルキル置換基を有してもよいアリール基を表すべきであり、前記基は、場合により例えばハロゲンのような置換基を備えてもよい。
【0139】
これらの基のうち、C〜C20−アルキル、特にC〜C−アルキル、殊にC〜C−アルキル基が好ましい。
【0140】
表現“C〜C−アルキル”とは、1〜4個の炭素原子を有する非分枝鎖状又は分枝鎖状の炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−メチルプロピル基又はt−ブチル基を表すべきである。
【0141】
表現“C〜C−アルキル”とは、前記のアルキル基と並んで、例えばペンチル基、2−メチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基又は1,1,3,3−テトラメチルブチル基を表すべきである。
【0142】
表現“C〜C20−アルキル”とは、前記のアルキル基と並んで、例えばノニル基、1−デシル基、2−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基又はエイコシル基を表すべきである。
【0143】
更に、C〜C−シクロアルキル基が炭化水素基として好ましい。これには、とりわけ、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基又はシクロオクチル基が該当する。
【0144】
更に、前記基は不飽和であってもよい。前記基のうち、“C〜C20−アルケニル”、“C〜C20−アルキニル”及び特に“C〜C−アルケニル”並びに“C〜C−アルキニル”が好ましい。表現“C〜C−アルケニル”とは、例えばビニル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基又は2−ブテニル基を表すべきである。
【0145】
表現“C〜C20−アルケニル”とは、前記の基と並んで、例えば2−ペンテニル基、2−デセニル基又は2−エイコセニル基を表すべきである。
【0146】
表現“C〜C−アルキニル”とは、例えばエチニル基、プロパルギル基、2−メチル−2−プロピニル基又は2−ブチニル基を意味するべきである。
【0147】
表現“C〜C20−アルケニル”とは、前記の基と並んで、例えば2−ペンチニル基又は2−デシニル基を表すべきである。
【0148】
更に、芳香族基、例えば“アリール”又は“複素芳香族環系”が好ましい。表現“アリール”とは、6〜14個、特に6〜12個の炭素原子を有する同素環式芳香族基、例えばフェニル、ナフチル又はビフェニリル、有利にはフェニルを表すべきである。
【0149】
表現“複素芳香族環系”とは、アリール基であって少なくとも1個のCH基がNによって交換されておりかつ/又は少なくとも2個の隣接するCH基がS、NH又はOによって交換されているアリール基、例えばチオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、インドール、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[c]フラン、イソインドール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,4,5−トリアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、プテリジン又は4H−キノリジンの残基である。
【0150】
分子の疎水性部に場合により複数ある基RもしくはRは、それぞれ同一又は異なってよい。
【0151】
結合性基Lは、極性アルコキシ部と非極性アルキル基との結合に用いられる。好適な基には、例えば芳香族基、例えばフェノキシル(L=−C−O−)、酸から誘導される基、例えばエステル基(L=−CO−O−)、カルバメート基(L=−NH−CO−O−)及びアミド基(L=−CO−NH−)、エーテル基(L=−O−)及びケト基(L=−CO−)が該当する。この場合に、特に、安定な基、例えばエーテル基、ケト基及び芳香族基が好ましい。
【0152】
前記に挙げたように、nは、4〜40の範囲、10〜30の範囲の整数である。nが40より大きい場合に、一般に、本発明による添加剤によって生ずる粘度は大きすぎる。nが4未満である場合に、一般に、分子部の親油性は、式(V)の化合物を溶解状態で保つには不十分である。それに応じて、式(VI)の化合物(V)の非極性部は、有利には全体で10〜100個の炭素原子を有し、かつ殊に有利には全体で10〜35個の炭素原子を含有する。
【0153】
アルキルアルコキシレートの極性部は、式(V)においては、Aによって表現されている。前記のアルキルアルコキシレートの部分は、式(VII)
【0154】
【化12】

[式中、基Rは、水素、メチル基及び/又はエチル基を意味し、かつmは、2〜40、有利には2〜25、特に2〜15、殊に有利には2〜5の範囲の整数である]によって表現できることを前提とする。上述の数値は、本発明の範囲では、平均値として解されるべきである。それというのも、前記のアルキルアルコキシレートの部分は、一般に重合によって得られるからである。mが40より大きい場合には、該化合物の可溶性は疎水環境では低いので、油中に混濁をもたらすことがあり、場合により沈殿をもたらしうる。その数が2未満であれば、所望の効果は保証することはできない。
【0155】
その極性部は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドから誘導される単位を有してよく、その際、エチレンオキシドが好ましい。この場合に、その極性部は、前記の単位1個だけを有することができる。しかしながら、これらの単位は、一緒になって極性基中にあってもよい。
【0156】
数zは、化合物基の選択あるいは使用される出発化合物に起因するものである。その数は、1又は2である。
【0157】
式(VI)によるアルキルアルコキシレートの非極性部の炭素原子の数は、この分子の極性部A(おそらく式(VII)による)の炭素原子の数より多い。有利には、非極性部は、極性部より少なくとも2倍多い炭素原子を有し、特に有利には3倍以上である。
【0158】
アルキルアルコキシレートは、市販されている。これには、例えばSasol社製の(登録商標)Marlipal型及び(登録商標)Marlophen型並びにBASF社製の(登録商標)Lutensol型が該当する。
【0159】
これには、例えば(登録商標)Marlophen NP3(ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル(3EO))、(登録商標)Marlophen NP4(ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル(4EO))、(登録商標)Marlophen NP5(ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル(5EO))、(登録商標)Marlophen NP6(ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル(6EO));
(登録商標)Marlipal 1012/6(C10〜C12−脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル(6EO))、(登録商標)Marlipal MG(C12−脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル)、(登録商標)Marlipal 013/30(C13−オキソアルコールポリエチレングリコールエーテル(3EO))、(登録商標)Marlipal 013/40(C13−オキソアルコールポリエチレングリコールエーテル(4EO));
(登録商標)Lutensol TO3(3個のEO単位を有するi−C13−脂肪アルコール)、(登録商標)Lutensol TO5(5個のEO単位を有するi−C13−脂肪アルコール)、(登録商標)Lutensol TO7(7個のEO単位を有するi−C13−脂肪アルコール)、(登録商標)Lutensol TO8(8個のEO単位を有するi−C13−脂肪アルコール)及び(登録商標)Lutensol TO12(12個のEO単位を有するi−C13−脂肪アルコール)
が該当する。
【0160】
実施例
使用される製品及び出発材料:
本願に記載されるポリマー合成に使用される出発材料、例えば開始剤又は連鎖移動剤は、例外なく、例えばAldrich社又はAkzo Nobel社から入手される市販製品である。同様に、モノマー、例えばMMA(Degussa)、NVP(BASF)、DMAPMAM(Degussa)、10−ウンデセン酸(Atofina)又はメタクリル酸(Degussa)は、商慣習の製造元から取得した。Plex 6844−0は、エステル基中に尿素を有するメタクリレート(Degussa社製)である。
【0161】
ここで使用される別のモノマー、例えばC〜C18−アルキルメタクリレート又はエトキシ化メタクリレートについては、本願の詳細な説明を指摘する。このことは、使用される溶剤、例えば油又はアルキルアルコキシレートのより厳密な説明についても同様のことが言える。
【0162】
概念の説明、測定方法
本発明において、アクリレート又は、例えばアクリレートポリマーあるいはポリアクリレートが問題になっているのであれば、それらは、アクリレート、従ってアクリル酸の誘導体の他にも、メタクリレート、メタクリル酸の誘導体又はアクリレートもしくはメタクリレートを基礎とする系からなる混合物を表すべきである。
【0163】
本発明において、ポリマーが、統計的に構成されたポリマーを示すのであれば、これと共に、使用されるモノマー型がポリマー鎖中に統計的に分布しているコポリマーを指す。グラフトコポリマー、ブロックコポリマー又は使用されるモノマー型の濃度勾配をポリマー鎖に沿って有する系は、この関連では、非統計ポリマー又は非統計的に構成されたポリマーを意味する。
【0164】
エンジンオイル配合物
摩耗試験は、方法CEC−L−51−A−98に従って実施した。
【0165】
ハイドロリック配合物
摩耗防止能の測定は、ビッカースのポンプ圧送試験(DIN51389の第2部)に従って実施した。このために、前記のようにベーンポンプV105−C型を使用した。このポンプは、回転数1440分−1で稼働させた。使用される全流量式フィルタのサイズは10μmであり、液位とポンプ入口との差は500mmであった。前記の条件下で、0バールの場合に、38.7l/分の吐出量が設定され、そして70バールの場合に、35.6l/分の吐出量が設定された。DIN51389の第2部で定められるように、設定されるべき液体温度を、その都度のハイドロリック液の動粘度に合わせた、すなわち40℃でより高い動粘度を有する液体は、摩耗試験のために、低粘度の液体より高温に加熱した。摩耗試験に使用される液体は、組成、粘度及び粘度指数を含めて、第4表から参照することができる。摩耗試験の間のポンプ稼働条件並びにリング及びベーンでの摩耗についてのその都度の結果は、第5表に見出すことができる。
【0166】
これらの配合物は、DIN51524に従って製造した。ISO等級46の油(第4表におけるF、G及びH)の動粘度は、従って、46mm/s±10%の粘度範囲にあり、かつISO等級68を有する油(油I)の粘度は、68mm/s±10%の範囲にあった。油F並びに油Gは、ポリアルキルメタクリレート含有の液体であった。油Gは、標準的にハイドロリックオイル用のVI向上剤として使用されるポリマーを含有していた。
【0167】
油F中に含まれる実施例6からのポリマーは、それに対して、ハイドロリック用途に典型的に使用されない組成を有していた。油H及び油Iは、ポリアルキルメタクリレートを含有していなかった。そのVI向上剤の含量に基づいて、油F及び油Gの粘度指数は高まった。油Iは、その高いISO等級に基づいて、油F、油G及び油Hに対して高められた基礎粘度を有していた。上述の油の選択により、場合により生ずる減摩性効果が純粋に粘度法的効果に関して調査することができず、むしろポリマー特有の効果に関して調査できることが証明された。換言すると、高い基礎粘度が減摩性に寄与すべきであれば、最良の結果は、ISO68油で期待されるべきである。できる限り高い粘度指数が必要とされるべきであれば、油Fと油Gとの間に大きな差異が期待されないべきである。DIパッケージとして、第4表に示される全ての配合物について、Oronite社製の市販品Oloa 4992を使用した。Oloa 4992の濃度は、試験した全ての配合物に関して、0.6質量%で一定に維持した。
【0168】
本発明による配合物Fは、全ての別の使用されるハイドロリックオイルに対して明らかに良好な摩耗結果がもたらされることが認識されるべきである(第5表参照)。このことは、リングでも、使用されるポンプのベーンでも、全ての試験と比較して低下した質量損失によって認めることができる。向上した結果が、実施例6からのポリマーを含有する本発明による配合物Fの使用に起因することを認めることができる。
【0169】
第4表.ポンプ圧送試験に使用されるハイドロリック配合物
【0170】
【表4】

【0171】
第5表.ポンプ稼働条件(ベーンポンプV105−C型)及び第4表に示されるハイドロリックオイルによる摩耗試験の結果
【0172】
【表5】

【0173】
ハイドロリック配合物のために、潤滑油組成物は、有利には、モノマーa)及びb)が好ましくはモノマーのメチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート及びオクタデシルメタクリレートから選択されたコポリマーを含有した。
【0174】
本発明による潤滑油組成物は、VI向上剤として、ハイドロリックオイルの動粘度とは無関係にハイドロリック装置における減摩性に寄与するコポリマーを使用することを特徴とする。
【0175】
更に本発明による潤滑油組成物は、その摩耗防止性が、単独で該コポリマーによって又は通常の減摩性添加剤、例えば摩擦調節剤と一緒に提供されることを特徴とする。
【0176】
本発明によるハイドロリック配合物の場合に、該コポリマーは、溶液中に、1〜30質量%、特に2〜20質量%、特に有利には3〜15質量%で存在する。
【0177】
本発明によるハイドロリック配合物は、該コポリマーが、VI作用と摩耗保護性の他に、流動点降下作用も提供することを特徴とする。
【0178】
本発明によるハイドロリック配合物においては、該コポリマーの他に、別の一般的な潤滑油添加剤、例えば酸化防止剤、腐蝕防止剤、消泡剤、着色剤、着色安定剤、清浄剤、流動点降下剤又はDI添加剤が存在してよい。
【0179】
本発明によるハイドロリック配合物は、ベーンポンプ、歯車ポンプ、ラジアルピストンポンプ又はアキシャルピストンポンプにおいて使用することができる。
【0180】
ポリマー合成
比較例1(グラフトされた成分中に3質量%のNVPを有するポリアルキルアクリレート)
サーベル型撹拌機(Sabelruehrer)(1分間あたり150回転で稼働)、温度計及び還流冷却器を備えた2リットルの四ツ口フラスコ中で、430gの150N油及び、C12〜C18−アルキルメタクリレート及びメチルメタクリレート(MMA)とからなる質量比99/1のモノマー混合物47.8gを装入する。温度を100℃に調整する。次いで、0.71gのt−ブチルペルオクトエートを添加し、そして同時にC12〜C18−アルキルメタクリレートとメチルメタクリレートとからなる質量比99/1の混合物522.2g並びに3.92gのt−ブチルペルオクトエートからなるモノマーの供給を開始する。供給時間は、3.5時間であり、かつ供給速度は均一である。供給完了の2時間後に、更に1.14gのt−ブチルペルオクトエートを添加する。全反応時間は8時間である。次いで、そのバッチを130℃に加熱する。130℃に達した後に、13.16gの150N油、17.45gのn−ビニルピロリドン及び1.46gのt−ブチルペルベンゾエートを添加する。その1時間後、2時間後、そして3時間後のそれぞれに、更に各0.73gのt−ブチルペルベンゾエートを添加する。全反応時間は8時間である。次いで、全溶液の7質量%を成す流動点向上剤のポリマー溶液を添加する。
【0181】
比粘度(クロロホルム中20℃):31.7ml/g
100℃での動粘度:500mm/s
100℃での増粘作用(150N油中10%):11.06mm/s
40℃での増粘作用(150N油中10%):64.7mm/s
残留モノマー含量 C12〜C18−アルキルメタクリレート:0.22%
残留モノマー含量 MMA:28ppm
残留モノマー含量 NVP:0.061%。
【0182】
比較例2(ポリアルキルアクリレートを油とエトキシレートとからなる混合物中に溶解させたもの)
サーベル型撹拌機(1分あたり150回転で稼働)、温度計及び還流冷却器を備えた2リットルの四ツ口フラスコ中で、400gの150N油及び、C12〜C18−アルキルメタクリレート、メチルメタクリレート(MMA)及び20個のエトキシレート単位を有するイソ−C13−アルコールのメタクリレートエステルからなる質量比87.0/0.5/12.5のモノマー混合物44.4gを装入する。温度を90℃に調整する。90℃に達した後に、1.75gのt−ブチルペルオクトエートを添加し、そして同時に、C12〜C18−アルキルメタクリレート、メチルメタクリレート及び20個のエトキシレート単位を有するイソ−C13−アルコールのメタクリレートエステルからなる質量比87.0/0.5/12.5の混合物555.6g並びに2.78gのt−ブチルペルオクトエートの供給を開始する。供給時間は、3.5時間である。供給速度は、均一である。添加完了の2時間後に、更に1.20gのt−ブチルペルオクトエートを添加する。全反応時間は8時間である。次いで、5質量%まで存在する流動点向上剤のポリマー溶液を添加する。次いで、該溶液を、3個のエトキシレート単位を有するエトキシ化されたイソ−C13−アルコールで比率79/21で希釈する。
【0183】
比粘度(クロロホルム中20℃):45ml/g
100℃での動粘度:400mm/s
100℃での増粘作用(150N油中10%):11.56mm/s
40℃での増粘作用(150N油中10%):11.56mm/s
残留モノマー含量 C12〜C18−アルキルメタクリレート:0.59%
残留モノマー含量 MMA:48ppm。
【0184】
実施例1(ポリマー骨格中に3質量%のメタクリル酸が統計的に組み込まれたポリアクリレート)
サーベル型撹拌機(1分間あたり150回転で稼働)、温度計及び還流冷却器を備えた2リットルの四ツ口フラスコ中で、430gの150N油及び、C12〜C18−アルキルメタクリレート、メチルメタクリレート及びメタクリル酸とからなる質量比82.0/15.0/3.0のモノマー混合物47.8gを装入する。温度を100℃に調整する。100℃に達した後に、0.38gのt−ブチルペルオクトエートを添加し、そして同時に、C12〜C18−アルキルメタクリレート、メチルメタクリレート及びメタクリル酸からなる質量比82.0/15.0/3.0の混合物522.2gと一緒に2.09gのt−ブチルペルオクトエート(モノマー混合物中に溶解されている)の供給を開始する。供給時間は、3.5時間であり、かつ供給速度は均一である。供給完了の2時間後に、更に1.14gのt−ブチルペルオクトエートを添加する。全反応時間は8時間である。次いで、そのバッチを150N油で、全ポリマー含量が45質量%になるまで希釈する。澄明で均質に見える反応生成物が得られる。
【0185】
比粘度(クロロホルム中20℃):45.9ml/g
100℃でのポリマー溶液の動粘度:7302mm/s
100℃での増粘作用(150N油中12.67質量%):11.07mm/s
残留モノマー含量 C12〜C18−アルキルメタクリレート:0.61%
残留モノマー含量 MMA:0.073%
残留モノマー含量 メタクリル酸:143ppm。
【0186】
実施例2(3質量%のメタクリル酸をポリマー骨格中に有し、かつ3質量%のNVPをグラフトされた成分中に有するポリアクリレート)
サーベル型撹拌機(1分間あたり150回転で稼働)、温度計及び還流冷却器を備えた2リットルの四ツ口フラスコ中で、430gの150N油及び、C12〜C18−アルキルメタクリレート及びメタクリル酸とからなる質量比87.3/3.0のモノマー混合物47.8gを装入する。温度を100℃に調整する。100℃に達した後に、0.66gのt−ブチルペルオクトエートを添加し、そして同時に、C12〜C18−アルキルメタクリレート及びメタクリル酸からなる質量比87/3の混合物522.2gと一緒に3.66gのt−ブチルペルオクトエートの供給を開始する。供給時間は、3.5時間であり、かつ供給速度は均一である。供給完了の2時間後に、更に1.14gのt−ブチルペルオクトエートを添加する。全反応時間は8時間である。次いで、そのバッチを130℃に加熱し、その後、13.16gの150N油、17.45gのn−ビニルピロリドン(NVP)及び1.46gのt−ブチルペルベンゾエートを添加する。その1時間後と2時間後に、再度、それぞれ0.73gのt−ブチルペルベンゾエートを添加する。全反応時間は8時間である。均質に見える反応生成物が得られる。
【0187】
比粘度(クロロホルム中20℃):33.5ml/g
100℃での動粘度:11889mm/s
100℃での増粘作用(150N油中10%):11.19mm/s
40℃での増粘作用(150N油中10%):66.48mm/s
残留モノマー含量 C12〜C18−アルキルメタクリレート:0.0695%
残留モノマー含量 MMA:<10ppm
残留モノマー含量 メタクリル酸:10.5ppm
残留モノマー含量 N−ビニルピロリドン:0.04%。
【0188】
実施例3(3質量%の尿素で誘導体化されたメタクリレートPlex 6844−0をポリマー骨格中に有する統計的に構成されたポリアクリレート)
サーベル型撹拌機(1分間あたり150回転で稼働)、温度計及び還流冷却器を備えた2リットルの四ツ口フラスコ中で、430gの150N油及び、C12〜C18−アルキルメタクリレート、メチルメタクリレート及びPlex 6844−0とからなる質量比82.0/15.0/3.0のモノマー混合物47.8gを装入する。温度を100℃に調整する。100℃に達した後に、0.56gのt−ブチルペルオクトエートを添加し、そして同時に、C12〜C18−アルキルメタクリレート、メチルメタクリレート及びPlex 6844−0からなる質量比82.0/15.0/3.0の混合物522.2gと一緒に3.13gのt−ブチルペルオクトエートの供給を開始する。供給時間は、3.5時間であり、かつ供給速度は均一である。供給完了の2時間後に、更に1.14gのt−ブチルペルオクトエートを添加する。全反応時間は8時間である。軽く混濁しているが、それでも均質に見える反応生成物が得られる。
【0189】
比粘度(クロロホルム中20℃):39.5
100℃での動粘度:1305mm/s
100℃での増粘作用(150N油中10%):11.13mm/s
40℃での増粘作用(150N油中10%):59.36mm/s
残留モノマー含量 C12〜C18−アルキルメタクリレート:0.65%
残留モノマー含量 MMA:0.063%。
【0190】
実施例4(10質量%のメタクリル酸をポリマー骨格中に有する統計的なポリアクリレート)
サーベル型撹拌機(1分間あたり150回転で稼働)、温度計及び還流冷却器を備えた2リットルの四ツ口フラスコ中で、300gの150N油及び、C12〜C15−アルキルメタクリレート及びメタクリル酸とからなる質量比90.0/10.0のモノマー混合物33.3gを装入する。温度を100℃に調整する。100℃に達した後に、0.36gのt−ブチルペルオクトエート、0.63gのドデシルメルカプタン及び0.63gのt−ドデシルメルカプタンを添加し、そして同時に、C12〜C15−アルキルメタクリレート及びメタクリル酸とからなる質量比90.0/10.0の混合物666.7gと一緒に、2.00gのt−ブチルペルオクトエート、12.67gのドデシルメルカプタン及び12.67gのt−ドデシルメルカプタンの供給を開始する。供給時間は、3.5時間であり、かつ供給速度は均一である。全反応時間は8時間である。供給完了の30分後に、そのバッチを、150N油で、全ポリマー含量に対して50質量%の比率で希釈する。供給完了の1時間後と2時間後に、再度、それぞれ1.40gのt−ブチルペルオクトエートを添加する。澄明で均質に見える反応生成物が得られる。
【0191】
100℃での動粘度:1886mm/s
100℃での増粘作用(150N油中36%):14.36mm/s
残留モノマー含量 C12〜C18−アルキルメタクリレート:0.84%
残留モノマー含量 メタクリル酸:0.034%。
【0192】
実施例5(統計的に構成された10−ウンデセン酸含有のポリアルキルアクリレート)
サーベル型撹拌機(Sabelruehrer)(1分間あたり150回転で稼働)、温度計及び還流冷却器を備えた2リットルの四ツ口フラスコ中で、240gの10−ウンデセン酸を装入する。温度を140℃に調整する。140℃に達した後に、C〜C13−アルキルメタクリレートと20エトキシ化されたメタクリレート(例えばMMAとBASF社製のLutensol TO20との反応によって製造する)とからなる質量比71.43/28.57の混合物を添加し、そして別個に、6.14gの2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン(ホワイト油中50%)を滴加する。供給時間は、モノマー混合物については7時間であり、かつ開始剤については11時間である。開始剤供給の完了後に、更に1時間引き続き反応させる。澄明で均質に見える反応生成物が得られる。
【0193】
100℃での動粘度:153mm/s
ハイドロリック配合物のためのポリマーの合成
ポリマーの合成は、以下の実施例6及び比較例3に記載されるようにして、鉱油中での溶液重合によって実施した。得られた油中のポリマー溶液を、第4表に示されるように、ハイドロリックオイルF及びGの製造のために使用した。
【0194】
比較例3
撹拌機(1分間あたり150回転で稼働)、温度計及び還流冷却器を備えた20リットルの重合反応器中で、4125gの100N油、2.07gのドデシルメルカプタン、2.9gのt−ブチルペルオクトエート及び、C12〜C18−アルキルメタクリレート、メチルメタクリレート及びメタクリル酸とからなる質量比86.0/11.0/3.0のモノマー混合物460.4gを装入する。温度を104℃に調整する。104℃に達した後に、26gのt−ブチルペルオクトエート、46.86gのドデシルメルカプタン及び、C12〜C18−アルキルメタクリレート、メチルメタクリレート及びメタクリル酸とからなる混合物(前記と同様の質量比:86.0/11.0/3.0)10414.6gからなる混合物を計量供給する。供給時間は、214分であり、かつ供給速度は均一である。供給完了の2時間後に、更に21.8gのt−ブチルペルオクトエートを添加する。全反応時間は10時間である。次いで、7.5gの解乳化剤(Uniquema社製のSynperonic PE/L101)を添加する。澄明で均質に見える反応生成物が得られる。
【0195】
100℃でのポリマー溶液の動粘度:8325mm/s
100℃での増粘作用(150N油中12質量%):10.95mm/s
40℃での増粘作用(150N油中12質量%):63.39mm/s
分子量(g/モル):Mw=65000。
【0196】
実施例6
撹拌機(1分間あたり150回転で稼働)、温度計及び還流冷却器を備えた20リットルの重合反応器中で、4125gの100N油、3.45gのドデシルメルカプタン、2.9gのt−ブチルペルオクトエート及び、C12〜C18−アルキルメタクリレート及びメチルメタクリレートとからなる質量比86.0/14.0のモノマー混合物460.4gを装入する。温度を100℃に調整する。100℃に達した後に、26gのt−ブチルペルオクトエート、78.11gのドデシルメルカプタン及び、C12〜C18−アルキルメタクリレート及びメチルメタクリレートとからなる混合物(前記と同様の質量比:86.0/14.0)10414.6gからなる混合物を計量供給する。供給時間は、214分であり、かつ供給速度は均一である。供給完了の2時間後に、更に21.8gのt−ブチルペルオクトエートを添加する。全反応時間は10時間である。次いで、7.5gの解乳化剤(Uniquema社製のSynperonic PE/L101)を添加する。澄明で均質に見える反応生成物が得られる。
【0197】
100℃でのポリマー溶液の動粘度:650mm/s
100℃での増粘作用(150N油中12質量%):10.96mm/s
40℃での増粘作用(150N油中12質量%):62.9mm/s
分子量(g/モル):Mw=64000

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全混合物に対して、0.2〜30質量%のコポリマーを含有する潤滑油組成物であって、該コポリマーが、ラジカル重合された単位
a)0〜40質量%の式(I)
【化1】

[式中、Rは、水素又はメチルを意味し、かつRは、1〜5個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味する]で示される1又は複数の(メタ)アクリレート、
b)35〜99.99質量%の式(II)
【化2】

[式中、Rは、水素又はメチルを意味し、Rは、6〜40個の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分枝鎖状のアルキル基を意味し、R及びRは、無関係に、水素又は式−COORの基を意味し、その際、Rは、水素又は6〜40個の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分枝鎖状のアルキル基である]で示される1又は複数のエチレン性不飽和のエステル化合物、及び
d)0〜40質量%の1又は複数のコモノマー、並びに
d)0.01〜20質量%の式(III)
【化3】

[式中、R、R及びRは、互いに無関係に、水素又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であってよく、かつRは、水素結合の形成が可能な1又は複数の構造単位を有しかつ水素供与体である基である]で示される化合物、及び
e)0〜20質量%の式(IV)
【化4】

[式中、R10、R11及びR12は、互いに無関係に、水素又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であってよく、かつ
13は、基C(O)OR14であり、かつR14は、少なくとも1個の−NR1516−基で置換された2〜20個、有利には2〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味し、その際、R15及びR16は、互いに無関係に、水素、1〜20個、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表すか又はR15及びR16は、窒素原子を含んで、かつ場合により更なる窒素原子又は酸素原子を含んで、5員又は6員の環を形成し、該環は、場合によりC〜C−アルキルで置換されていてよく、又は
13は、基NR17C(=O)R18を表し、その際、R17及びR18は、一緒になって、2〜6個、有利には2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を形成し、その際、前記の基は、場合により更なる窒素原子又は酸素原子を含んで、4員ないし8員、有利には4員ないし6員の飽和又は不飽和の環を形成し、その際、該環は、更に場合によりC〜C−アルキルで置換されていてよい]で示される1又は複数の化合物
から形成され、その際、
式(III)の化合物d)は、主鎖中のみか又は形成されたポリマーのグラフトされた側鎖中のみに存在し、かつ
存在するのであれば、式(IV)の化合物e)は、同様に、主鎖中のみか又は形成されたポリマーのグラフトされた側鎖中のみに存在し、
前記の成分の質量%の表記は、使用されるモノマーの全質量に対するものであり、かつ
該潤滑油組成物は、更に他の成分:
25〜90質量%の鉱物性及び/又は合成の基油、
全部合わせて0.2〜20質量%の更なる通常の添加剤、例えば流動点降下剤、VI向上剤、劣化防止剤、清浄剤、分散助剤又は減摩成分
を含有する潤滑油組成物。
【請求項2】
請求項1記載の潤滑油組成物であって、該組成物が、付加的に0.05〜10.0質量%の式(V)
【化5】

[式中、
、R及びRは、無関係に、水素又は40個までの炭素原子を有する炭化水素基であり、
は、水素、メチル基又はエチル基であり、
Lは、結合性基であり、
nは、4〜40の範囲の整数であり、
Aは、2〜25個の繰返単位を有するアルコキシ基であり、その単位は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドから誘導され、その際、Aは、上述の化合物のホモポリマー並びに該化合物少なくとも2個からなる統計コポリマーを含み、かつ
zは、1又は2であり、その際、
式(V)の化合物(VI)
【化6】

で示される非極性部は、少なくとも9個の炭素原子を有する]で示されるアルキルアルコキシレートを含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の潤滑油組成物であって、水素結合の形成が可能な構造単位Rが、カルボキシル基又は置換されていてよいカルボン酸アミド基であることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の潤滑油組成物であって、水素結合の形成が可能な式(III)の化合物が、メタクリル酸、アクリル酸、10−ウンデセン酸、ジメチルアミノプロピルアクリル酸アミド又はジメチルアミノプロピルメタクリル酸アミドであることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の潤滑油組成物であって、他のコモノマーc)が、α−オレフィンもしくはスチレン又はその両者からなる混合物であることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の潤滑油組成物であって、コポリマーの分子量の質量平均が1500〜4000000g/モルであることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の潤滑油組成物であって、式(I)のモノマーが、メチルメタクリレートもしくはn−ブチルメタクリレート又はその両者からなる混合物であることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の潤滑油組成物であって、式(II)のモノマーが、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート及びオクトデシルメタクリレートの群から選択される1又は複数の化合物であることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の潤滑油組成物であって、式(IV)のモノマーが、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N−モルホリノエチルメタクリレート又は複素環式のビニル化合物、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール及び水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾール又はかかる化合物の混合物であることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の潤滑油中のコポリマーを、分散性又は非分散性の粘度指数向上剤として、清浄化成分として、流動点向上剤として、減摩成分として又は減摩によりエネルギー消費量を下げる成分として用いる使用。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか1項記載の潤滑油組成物中に使用できるグラフトコポリマーの製造方法において、式(III)の1又は複数のモノマーをグラフトさせた後に、式(IV)の1又は複数のモノマーにより更なるグラフト工程を実施することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか1項記載の潤滑油組成物中で使用されるグラフトコポリマーの製造方法において、まず、式(IV)の1又は複数のモノマーによるグラフト工程を実施し、引き続き式(III)の1又は複数のモノマーによる更なるグラフト工程を実施することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から9までのいずれか1項記載の潤滑油組成物中で使用されるグラフトコポリマーの製造方法において、グラフト工程を、式(III)及び式(IV)のそれぞれの1又は複数のモノマーからなる混合物を使用して実施することを特徴とする方法。
e)0〜40質量%の1又は複数のコモノマー、並びに
e)0.01〜20質量%の、オメガ−オレフィンカルボン酸、特に10−ウンデセン酸から形成される基からの化合物
f)0〜20質量%の式(IV)
【化7】

[式中、R10、R11及びR12は、互いに無関係に、水素又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であってよく、かつ
13は、基C(O)OR14であり、かつR14は、少なくとも1個の−NR1516−基で置換された2〜20個、有利には2〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味し、その際、R15及びR16は、互いに無関係に、水素、1〜20個、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表すか又はR15及びR16は、窒素原子を含んで、かつ場合により更なる窒素原子又は酸素原子を含んで、5員又は6員の環を形成し、該環は、場合によりC〜C−アルキルで置換されていてよく、又は
13は、基NR17C(=O)R18を表し、その際、R17及びR18は、一緒になって、2〜6個、有利には2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を形成し、その際、前記の基は、場合により を含んで、4員ないし8員、有利には4員ないし6員の飽和又は不飽和の環を形成し、
【請求項14】
請求項13記載のグラフトコポリマーの製造方法において、グラフト工程を続けて5回まで実施することを特徴とする方法。
【請求項15】
ラジカル重合された単位
a)0〜40質量%の式(I)
【化8】

[式中、Rは、水素又はメチルを意味し、かつRは、1〜5個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味する]で示される1又は複数の(メタ)アクリレート、
b)35〜99.99質量%の式(II)
【化9】

[式中、Rは、水素又はメチルを意味し、Rは、6〜40個の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分枝鎖状のアルキル基を意味し、R及びRは、無関係に、水素又は式−COORの基を意味し、その際、Rは、水素又は6〜40個の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分枝鎖状のアルキル基である]で示される1又は複数のエチレン性不飽和のエステル化合物、及び
更なる窒素原子又は酸素原子を、その際、該環は、更に場合によりC〜C−アルキルで置換されていてよい
から形成され、その際、
化合物e)は、主鎖中のみか又は形成されたポリマーのグラフトされた側鎖中のみに存在し、かつ
存在するのであれば、式(IV)の化合物f)は、同様に、主鎖中のみか又は形成されたポリマーのグラフトされた側鎖中のみに存在し、かつ
前記の成分の質量%の表記は、使用されるモノマーの全質量に対するものであるコポリマー。
【請求項16】
請求項15記載のコポリマーであって、分子量の質量平均が1500〜4000000g/モルであることを特徴とするコポリマー。
【請求項17】
請求項15又は16記載のコポリマーであって、式(I)のモノマーが、メチルメタクリレートもしくはn−ブチルメタクリレート又はその両者からなる混合物であることを特徴とするコポリマー。
【請求項18】
請求項15から17までのいずれか1項記載のコポリマーであって、式(II)のモノマーが、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート及びオクトデシルメタクリレートの群から選択される1又は複数の化合物であることを特徴とするコポリマー。
【請求項19】
請求項15から18までのいずれか1項記載のコポリマーであって、他のコモノマーc)が、α−オレフィンもしくはスチレン又はその両者からなる混合物であることを特徴とするコポリマー。
【請求項20】
請求項15から19までのいずれか1項記載のコポリマーであって、式(IV)のモノマーが、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N−モルホリノエチルメタクリレート又は複素環式のビニル化合物、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール及び水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾール又はかかる化合物の混合物であることを特徴とするコポリマー。
【請求項21】
請求項1から9までのいずれか1項記載の潤滑油組成物をハイドロリックオイルとして用いる使用。
【請求項22】
請求項21記載の使用であって、コポリマーをVI向上剤として使用し、かつハイドロリックオイルの動粘度とは無関係に、ハイドロリック装置において減摩に寄与し、その際、摩耗防止性は、単独でコポリマーによって又は通常の減摩添加剤、例えば摩擦調節剤と一緒に提供されることを特徴とする使用。
【請求項23】
請求項1から9までのいずれか1項記載のハイドロリックオイルであり、コポリマーであって、そのコポリマー中に式(III)の化合物d)が0.5〜40質量%まで存在することを特徴とするハイドロリックオイル。
【請求項24】
請求項22記載のハイドロリックオイルであって、式(III)の化合物d)が、アクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアミノプロピルアクリル酸アミド、ジメチルアミノプロピルメタクリル酸アミド又はオメガ−オレフィンカルボン酸、特に10−ウンデセン酸であることを特徴とするハイドロリックオイル。

【公表番号】特表2007−532703(P2007−532703A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506674(P2007−506674)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001905
【国際公開番号】WO2005/097956
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(399020957)ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (38)
【氏名又は名称原語表記】RohMax Additives GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】