説明

撮像システム及び画像処理方法並びに画像処理プログラム

【課題】階調とびを低減し、高品位な映像信号を得ること。
【解決手段】Mビットの映像信号をNビット(M、Nは整数、M>N)の映像信号に変換する第1階調変換特性を用いて第1階調変換処理された映像信号から第2階調変換特性を算出し、該第1階調変換特性を用いて第2階調変換特性を補正し、補正後の第2階調変換特性を用いて映像信号に第2階調変換処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システム及び画像処理方法並びに画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、現在のデジタルスチルカメラやビデオカメラなどでは、映像信号に対して表示系を考慮した階調変換処理(例えば、ガンマ変換処理)が行われる。また、人間の目に好ましい映像信号にするため、ガンマ変換後の映像信号の情報、例えばヒストグラムの情報を用いて更に階調変換処理を行い、映像信号に応じたコントラスト調整を行うことにより、より高画質な映像信号を得る方法も知られている。
【0003】
例えば、特開2007−88650号公報には、濃度補正処理により原画像に白飛び現象が発生する可能性があるか否かを事前に判断し、可能性のある場合に、白飛び現象が発生しないように濃度補正曲線を補正する方法が開示されている。また、特開2007−47244号公報には、階調範囲の伸張に伴って画像が劣化する場合に、その劣化位置に応じた伸張処理を行う方法が開示されている。
【特許文献1】特開2007−88650号公報
【特許文献2】特開2007−47244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いずれの方法もガンマ変換処理における階調幅の変化については考慮されておらず、階調幅が足りないために階調変換処理による階調とびが生ずるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、階調とびを低減し、高品位な映像信号を得ることの可能な撮像システム及び画像処理方法並びに画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様は、撮像系からの映像信号を階調変換して出力する撮像システムであって、Mビットの映像信号をNビット(M、Nは整数、M>N)の映像信号に変換する第1階調変換特性を用いて第1階調変換処理された映像信号から、第2階調変換特性を算出する第2階調変換特性算出手段と、前記第1階調変換特性を用いて、前記第2階調変換特性算出手段により算出された第2階調変換特性を補正する第2階調変換特性補正手段と、前記第1階調変換特性を用いて、映像信号に前記第1階調変換処理を行う第1階調変換手段と、前記第2階調変換特性補正手段により補正された前記第2階調変換特性を用いて、前記第1階調変換手段により前記第1階調変換処理が施された映像信号に第2階調変換処理を行う第2階調変換手段とを具備する撮像システムである。
【0007】
本発明の第2の態様は、撮像系からの映像信号を階調変換して出力する画像処理方法であって、Mビットの映像信号をNビット(M、Nは整数、M>N)の映像信号に変換する第1階調変換特性を用いて第1階調変換処理された映像信号から、第2階調変換特性を算出する過程と、前記第1階調変換特性を用いて、前記第2階調変換特性を補正する過程と、前記第1階調変換特性を用いて、映像信号に前記第1階調変換処理を行う過程と、補正後の前記第2階調変換特性を用いて、前記第1階調変換処理が施された映像信号に第2階調変換処理を行う過程とを有する画像処理方法である。
【0008】
本発明の第3の態様は、撮像系からの映像信号に対する階調変換処理をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムであって、Mビットの映像信号をNビット(M、Nは整数、M>N)の映像信号に変換する第1階調変換特性を用いて第1階調変換処理された映像信号から、第2階調変換特性を算出する処理と、前記第1階調変換特性を用いて、前記第2階調変換特性を補正する処理と、前記第1階調変換特性を用いて、映像信号に前記第1階調変換処理を行う処理と、補正後の前記第2階調変換特性を用いて、前記第1階調変換処理が施された映像信号に第2階調変換処理を行う処理とをコンピュータに実行させる画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高品位な映像信号を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係る撮像システム及び画像処理方法並びに画像処理プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る撮像システムの概略構成を示したブロック図である。本実施形態に係る撮像システムは、例えば、デジタルカメラであり、図1に示されるように、撮像部2と画像処理部3とを備えている。撮像部2は、レンズ系100、シャッター(図示略)、絞り101、カラーフィルタ103、CCD104、及びAFモータ102等を備えている。撮像部2により取得されたアナログ信号の映像信号は、画像処理部3に入力される。
【0011】
画像処理部3は、例えば、ASICであり、アナログ/デジタル変換部(以下「A/D変換部」という。)105、バッファ106、撮影制御部107、信号処理部108、第1階調変換特性算出部109、第2階調変換特性算出部(第2階調変換特性算出手段)110、第2階調変換特性補正部(第2階調変換特性補正手段)111、第1階調変換部(第1階調変換手段)112、第2階調変換部(第2階調変換手段)113、圧縮部114、制御部116等を備えている。これら各部は、画像処理部3内のデータバス30を介して相互に接続されている。更に、画像処理部3は、電源スイッチ、シャッターボタン、並びに撮影時の各種モードの切替を行うためのインターフェースを備えた外部I/F部117、及び出力部115等を備えている。
【0012】
画像処理部3において、制御部116は、各部の制御を行う。
A/D変換部105は、アナログ信号の映像信号をデジタル信号の映像信号に変換し、バッファ106に出力する。バッファ106は、A/D変換部105からの映像信号を保持する。
撮影制御部107は、制御部116からの制御信号に基づいて、バッファ106に保持されている単板状態の映像信号を読み出し、この映像信号のAFエリア内のコントラスト情報を検出する。そして、AFエリア内のコントラストが最大となるようにAFモータ102を制御することで、被写体に焦点を合わせる。また、撮影制御部107は、バッファ106に保持されている映像信号中の輝度レベルや図示しない輝度センサを用いて適正露光となるよう、絞り101およびCCD104の電子シャッター速度などを制御する。
なお、合焦処理においては、上記方法に代えて、例えば、外部赤外線センサを設け、撮影制御部107が、この外部赤外線センサにより測定された主要被写体までの距離に応じてAFモータ102を制御することで、被写体に焦点を合わせることとしてもよい。
【0013】
信号処理部108は、制御部116からの制御信号に基づいて、バッファ106に保持されている単板状態の映像信号を読み出す。そして、読み出した映像信号に対して補間処理、ホワイトバランス処理等の公知の信号処理を実行し、各画素RGBの三板状態の映像信号を生成する。更に、信号処理部108は、以下の(1)式に示されるように、RGB信号をYCbCr信号に変換することとしてもよい。
信号処理部108は、上記信号処理後の映像信号を第1階調変換特性算出部109、第2階調変換特性算出部110、及び第1階調変換部112に出力する。
【0014】
【数1】

【0015】
第1階調変換特性算出部109は、信号処理部108から転送されたMビットの映像信号をNビット(M,Nはともに整数であり、M>N)の映像信号に変換するのに使用される第1階調変換特性(例えば、ガンマ曲線)を算出し、算出した第1階調変換特性を第2階調変換特性算出部110、第2階調変換特性補正部111、及び第1階調変換部112に出力する。
例えば、第1階調変換特性算出部109は、表示モードの切替、撮影モード等の撮影時における各種設定条件に対応付けられた複数の第1階調変換特性を保持している。そして、これら複数の第1階調変換特性の中から、制御部116から入力される撮影時の設定条件に対応する第1階調変換特性を抽出する。なお、第1階調変換特性の算出手法については、上記手法に限定されず、公知のその他の手法を用いることも可能である。
図2に第1階調変換特性の一例を示す。図2には、暗部の階調性を考慮した第1階調変換特性が示されている。第1階調変換特性は、例えば、所定の関数式或いはテーブルで表現されている。
【0016】
第2階調変換特性算出部110は、図3に示すように、バッファ300、階調変換部301、ヒストグラム作成部(ヒストグラム作成手段)302、クリッピング部(クリッピング手段)303、および累積正規化部(累積値算出手段)304を備えて構成されている。信号処理部108からの映像信号は、バッファ300に転送され、保持される。階調変換部301は、制御部116からの制御信号に基づいて、バッファ300から映像信号を読み出し、上述した第1階調変換特性算出部109から転送された第1階調変換特性を用いて、読み出した映像信号に対して第1階調変換処理を行い、処理後の映像信号をヒストグラム作成部302に出力する。
【0017】
ヒストグラム作成部302は、階調変換部301からの映像信号のヒストグラムを算出し、クリッピング部303に出力する。図4は、ヒストグラム作成部302によって作成されるヒストグラムの一例を示した図である。
クリッピング部303は、図5に示すように、ヒストグラム作成部302により作成されたヒストグラムに対して予め決められている所定のクリッピング値を用いてクリッピング処理を行い、累積正規化部304に出力する。
累積正規化部304は、クリッピング部303から転送されたヒストグラムに対して、累積処理を行い、第2階調変換特性を算出し、第2階調変換特性補正部111に出力する。図6に、第2階調変換特性の一例を示す。図6において、実線はクリッピング処理前のヒストグラムから算出された第2階調変換特性の一例を、点線はクリッピング処理後のヒストグラムから算出された第2階調変換特性の一例を示している。図6から明らかなように、クリッピング処理を行うことによってコントラストをあまり強調しない第2階調変換特性を得ることが可能となる。
【0018】
第2階調変換特性補正部111は、図7に示されるように、傾き算出部(傾き算出手段)200、比較部(比較手段)201、補正部(補正手段)202、ROM203を備えて構成されている。
傾き算出部200は、第1階調変換特性算出部109によって算出された第1階調変換特性の各入力ビットの変化量に対する出力ビットの変化量を示す傾きをそれぞれ求め、比較部201に出力する。具体的には、第1階調変換特性の各入力ビットに対する傾きを、微分演算をすることによってそれぞれ算出する。
【0019】
比較部201は、ROM203に記憶されている所定の閾値を読み出し、この閾値と傾き算出部200から入力された傾きとを比較し、傾きが閾値よりも小さい入力ビットの領域を特定し、その領域の情報とその傾きとを対応付けて補正部202に出力する。
【0020】
補正部202には、上記第2階調変換特性算出部110からの第2階調変換特性と、比較部201からの傾き及び領域情報とが入力される。補正部202は、第1階調変換特性の傾きに応じて第2階調変換特性を補正する。より具体的には、第2階調変換特性における、比較部201によって特定された領域に対応する領域において、第2階調変換特性の傾きが小さくなるように、第2階調変換特性を補正する。例えば、図8に示されるような第1階調変換特性を想定した場合であって、比較部201により、入力ビット値xに対する傾きmが所定の閾値よりも小さいと判断された場合には、補正部202は、図9に示すように、入力ビット値xに対応する入力輝度値ikにおいて、第2階調変換特性の傾きを小さく補正することにより、入力輝度値ikにおけるコントラストの強調具合を緩和させる。このように、ビット割当が少ないために通常であればコントラストが強調されてしまい、階調とびが目立ちやすいような領域に対して、コントラストの強調具合を緩和させる補正を行うので、階調とびの発生を防止することが可能となる。第2階調変換特性補正部111は、補正後の第2階調変換特性を第2階調変換部113に出力する。
【0021】
図1に戻り、第1階調変換部112は、第1階調変換特性算出部109から転送された第1階調変換特性を用いて、信号処理部108からの映像信号に対して第1階調変換処理を行い、処理後の映像信号を第2階調変換部113に出力する。
【0022】
第2階調変換部113は、第1階調変換部112から転送された映像信号に対して、第2階調変換特性補正部111から転送される第2階調変換特性を用いて階調変換処理を行い、圧縮部114に出力する。
圧縮部114は、第2階調変換部113から転送された映像信号に対して公知のJPEG等の圧縮処理を行い、出力部115へ出力する。出力部115は、メモリカード(図示略)などへ圧縮信号を記録保存する。或いは、外部表示ディスプレイに映像信号を表示する。
【0023】
次に、本実施形態に係る撮像システムの動作について参照する。
まず、ユーザによって、外部I/F部117を介してISO感度、露出等の撮影条件が設定され、シャッターボタンが半押しされると、プリ撮影モードに入る。プリ撮影モードでは、レンズ系100、絞り101、カラーフィルタ103、CCD104を介して映像信号が取得され、A/D部105においてデジタル信号へ変換された後、バッファ106に転送される。なお、本実施形態例においてCCD104はRGB原色系の単板CCDを想定し、A/D部105による信号の階調幅をMビットとする。
【0024】
撮影制御部107は、バッファ106に保持される映像信号を読み出し、この映像信号のAFエリア内のコントラスト情報を検出し、検出したコントラスト情報が最大となるようにAFモータ102を制御することで、被写体に焦点を合わせる。更に、撮影制御部107は、信号中の輝度レベル等を用いて適正露光となるよう、絞り101およびCCD104の電子シャッター速度などを制御する。
【0025】
次に、ユーザにより、外部I/F部117を介してシャッターボタンが全押しにされると、本撮影が行われる。本撮影では、撮影制御部107にて求められた合焦条件および露光条件に基づいて、被写体の撮影が行われる。撮像部2によって取得された映像信号は、A/D変換部105によりデジタル信号に変換され、バッファ106に転送され、保存される。また、上記映像信号の取得と並行して、撮影時における露光条件、合焦条件等の各種設定情報が撮影制御部107から制御部116へ転送される。更に、撮影時における各種設定情報は、制御部116から第1階調変換特性算出部109に転送される。
【0026】
信号処理部108は、制御部116の制御に基づきバッファ106上の単板状態の映像信号を読み込み、公知の補間処理、ホワイトバランス処理等を行うことで、各画素RGBの三板状態の映像信号を生成する。
【0027】
信号処理部108で処理された映像信号は、第1階調変換特性算出部109、第2階調変換特性算出部110及び第1階調変換部112へ転送される。第1階調変換特性算出部109では、制御部116から転送された撮影時における各種設定条件、例えば、表示モードの設定条件、或いは撮影モードの設定条件等及び映像信号に基づいて、第1階調変換特性が求められ、求められた第1階調変換特性が第2階調変換特性算出部110、第2階調変換特性補正部111、及び第1階調変換部112に転送される。
【0028】
第2階調変換特性算出部110(図3参照)では、階調変換部301により、第1階調変換特性を用いた第1階調変換処理が信号処理部108からの映像信号に対して施され、ヒストグラム作成部302において、第1階調変換処理後の映像信号に基づいてヒストグラムが作成され、更に、クリッピング部303において、該ヒストグラムのクリッピング処理が行われる。クリッピング処理後のヒストグラムは、累積正規化部304に転送され、ここで、第2階調変換特性が作成される。第2階調変換特性は、第2階調変換特性補正部111に転送される。
【0029】
第2階調変換特性補正部111では、傾き算出部200によって、第1階調変換算出部109からの第1階調変換特性の傾きが求められ、比較部201において傾きが閾値と比較されることにより、傾きが閾値よりも小さい入力ビット値の領域が特定され、この領域及び傾きの情報が補正部202に転送される。補正部202は、比較部201からの情報に基づいて第2階調変換特性を補正することにより、ビット割当の少ない領域に対する傾きを小さくすることにより、コントラストの強調具合を緩和させる。補正後の第2階調変換特性は、第2階調変換部113に転送される。
【0030】
第1階調変換部112では、第1階調変換特性算出部109により求められた第1階調変換特性を用いた第1階調変換処理が、信号処理部108から転送されてきた映像信号に対して行われる。第1階調変換処理後の映像信号は、第2階調変換部113に転送される。第2階調変換部113では、第2階調変換特性補正部111により補正された後の第2階調変換特性を用いた第2階調変換処理が、第1階調変換処理後の映像信号に対して行われ、処理後の映像信号が圧縮部114を介して出力部115に送られる。
【0031】
なお、上記説明ではハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定されない。例えば、CCD104からの映像信号を未処理のままのRawデータとして、また、ISO感度情報や映像信号サイズなどをヘッダ情報として、画像処理部3に情報を転送し、画像処理部3内において別途ソフトウェアにて処理する構成も可能である。
【0032】
この場合、画像処理部3は、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記憶媒体に記録されている画像処理プログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の画像処理部3が備える各部と同様の処理を実現させる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0033】
以下、CPUが画像処理プログラムを実行することにより実現される画像処理方法の処理手順について図10を参照して説明する。
【0034】
まず、ステップSA1において、ヘッダ情報の読み出し処理が行われ、続くステップSA2において映像信号の読み出し処理が行われる。ステップSA3において、ステップSA2で読み出された映像信号に対して、ホワイトバランス処理等の公知の信号処理が行われ、ステップSA4において、ステップSA3で第1階調変換特性の算出処理が行われる。
【0035】
ステップSA5において、ステップSA2で得られた映像信号に対して、ステップSA3で得られた第1階調変換特性を用いた第1階調変換処理が施され、更に、該処理後の映像信号に基づいて第2階調変換特性の算出処理が行われる。ステップSA6において、ステップSA4にて得られた第1階調変換特性を用いた第2階調変換特性の補正処理が行われる。
【0036】
ステップSA7において、ステップSA4にて得られた第1階調変換特性を用いた第1階調変換処理がステップSA3で得られた映像信号に対して行われ、続く、ステップSA8において、ステップSA6にて補正された第2階調変換特性を用いた第2階調変換処理が、ステップSA7で得られた映像信号に対して行われる。
【0037】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る撮像システム及び画像処理方法並びに画像処理プログラムによれば、ビット割当が小さい領域に対するコントラストの強調具合を緩和させるように、第2階調変換特性を補正し、補正後の第2階調変換特性を用いて映像信号に対して第2階調変換を行う。このように、映像信号に応じて最適な階調変換処理を行うことで、階調とびを低減させることができ、高品位な映像信号を算出することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0039】
〔変形例1〕
上述した実施形態では、第2階調変換特性の傾きを直接的に補正していたが、これに代えて、第2階調変換特性を算出するのに使用されるヒストグラムのクリッピング値を調整することにより、第2階調変換特性を補正することとしてもよい。
【0040】
この場合、第2階調変換特性補正部111には、第2階調変換特性に加えて、ヒストグラム作成部302によって作成されたヒストグラム、及びクリッピング部303が用いているクリッピング値が第2階調変換特性算出部110から転送される。
第2階調変換特性補正部111は、比較部201の比較結果、換言すると、第1階調変換特性の傾きに応じて、クリッピング303が用いているクリッピング値を調整する。例えば、傾きが所定の閾値よりも小さい領域が全体に占める割合に応じて、クリッピング値を調整する。より具体的には、図8に示すような第1階調変換特性において、傾きが所定の閾値よりも小さい領域が多いほど、クリッピング値を小さい値に変更する。
補正部202は、補正後のクリッピング値を用いて、ヒストグラム作成部302によって作成されたヒストグラムのクリッピング処理を再度行い、クリッピング処理後のヒストグラムを用いて第2階調変換特性を再度算出することで、補正後の第2階調変換特性を得る。なお、クリッピング処理後のヒストグラムから第2階調変換特性を作成する方法は、上述した累積正規化部304と同様である。
【0041】
このように、クリッピング値を変更することにより、第2階調変換特性を全体的に補正することにより、より自然な階調変換を行うことが可能となる。
なお、上記説明においては、補正部202がクリッピング処理、並びに第2階調変換特性の再生成を行うこととしたが、この構成に限られることなく、例えば、補正部202から調整後のクリッピング値を第2階調変換特性算出部110のクリッピング303に転送することとしてもよい。これにより、再度のクリッピング処理をクリッピング部303に行わせるとともに、クリッピング処理後のヒストグラムに基づく第2階調変換特性の算出処理を累積正規化部304に行わせることが可能となる。このようにすることで、装置構成をより簡略化することが可能となる。
【0042】
〔変形例2〕
例えば、上述した実施形態に係る第2階調変換特性算出部110の構成は一例であり、図11に示すように、局所領域抽出部305を更に備える構成としてもよい。このような構成に係る第2階調変換特性算出部110´においては、局所領域抽出部305において、階調変換部301から転送された映像信号に対して注目画素を中心とする局所領域が抽出され、ヒストグラム作成部302に転送される。ヒストグラム作成部302は、局所領域毎にヒストグラムを作成し、クリッピング部303へ転送する。クリッピング部303では、ヒストグラムにクリッピング処理を施し、処理後のヒストグラムを累積正規化部304に転送する。累積正規化部304では、クリッピング処理された各局所領域におけるヒストグラムに対して累積処理を行い、注目画素における階調変換特性を算出する。このような構成にすることによって、映像信号の画素毎に異なる階調変換特性を算出することができ、より自由度の高い階調変換処理を行うことが可能となる。
【0043】
〔変形例3〕
また、更に、上記第2階調変換特性算出部110における累積正規化部104に代えて、例えば、複数の第2階調変換特性をテーブルとして予め保有しており、ヒストグラム作成部302によって作成されるヒストグラムの情報に応じて、複数の第2階調変換特性の中から適切なものを選択することで第2階調変換特性を求める算出部(算出手段)を設けることとしてもよい。
【0044】
〔変形例4〕
また、上記第2階調変換特性算出部110における累積正規化部104に代えて、複数のガンマ値を保持し、ヒストグラムの情報に応じて適切なガンマ値を選択し、このガンマ値からガンマ曲線を設定することで、第2階調変換特性を求める算出部(算出手段)を設けることとしてもよい。
【0045】
〔変形例5〕
また、本実施形態では、クリッピング部303によってクリッピング処理された後のヒストグラムを使用して、累積正規化部304が第2階調変換特性を作成することとしたが、これに代えて、クリッピング部303を構成要素からはずして、クリッピング処理がされていないヒストグラムを用いて、第2階調変換特性を求めることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像システムの全体概略構成を示した図である。
【図2】第1階調変換特性の一例を示した図である。
【図3】第2階調変換特性算出部の一構成例を示したブロック図である。
【図4】ヒストグラム作成部によって作成されるヒストグラムの一例を示した図である。
【図5】クリッピング部によってクリッピング処理がされた後のヒストグラムの一例を示した図である。
【図6】クリッピング処理前のヒストグラムに基づいて作成される第2階調変換特性とクリッピング処理後のヒストグラムに基づいて作成される第2階調変換特性とを比較して示した図である。
【図7】第2階調変換特性補正部の一構成例を示した図である。
【図8】第1階調変換特性の一例を示した図である。
【図9】第2階調変換特性の変形について説明するための図である。
【図10】画像処理方法の処理手順について示したフローチャートである。
【図11】変形例2に係る第2階調変換特性算出部の一構成例を示した図である。
【符号の説明】
【0047】
2 撮像部
3 画像処理部
108 信号処理部
109 第1階調変換特性算出部
110 第2階調変換特性算出部
111 第2階調変換特性補正部
112 第1階調変換部
113 第2階調変換部
116 制御部
300 バッファ
301 階調変換部
302 ヒストグラム作成部
303 クリッピング部
304 累積正規化部
200 傾き算出部
201 比較部
202 補正部
203 ROM
305 局所領域抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像系からの映像信号を階調変換して出力する撮像システムであって、
Mビットの映像信号をNビット(M、Nは整数、M>N)の映像信号に変換する第1階調変換特性を用いて第1階調変換処理された映像信号から、第2階調変換特性を算出する第2階調変換特性算出手段と、
前記第1階調変換特性を用いて、前記第2階調変換特性算出手段により算出された第2階調変換特性を補正する第2階調変換特性補正手段と、
前記第1階調変換特性を用いて、映像信号に前記第1階調変換処理を行う第1階調変換手段と、
前記第2階調変換特性補正手段により補正された前記第2階調変換特性を用いて、前記第1階調変換手段により前記第1階調変換処理が施された映像信号に第2階調変換処理を行う第2階調変換手段と
を具備する撮像システム。
【請求項2】
前記第2階調変換特性補正手段は、
前記第1階調変換特性における入力信号の変化量に対する出力信号の変化量を示す傾きを算出する傾き算出手段と、
前記傾きに応じて前記第2階調変換特性の補正を行う補正手段と
を具備する請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記第1階調変換特性における傾きと所定の閾値とを比較し、前記第1階調変換特性において、前記傾きが前記閾値よりも小さい領域を特定する比較手段を備え、
前記補正手段が、前記第2階調変換特性における前記比較手段によって特定された領域に対応する領域において、前記第2階調変換特性における入力信号の変化量に対する出力信号の変化量を示す傾きが小さくなるように、前記第2階調変換特性を補正する請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記第2階調変換特性算出手段は、
前記第1階調変換特性を用いた前記第1階調変換処理が行われた後の前記映像信号のヒストグラムを算出するヒストグラム算出手段と、
前記ヒストグラムを所定のクリッピング値を用いてクリッピング処理するクリッピング手段と、
クリッピング処理後の前記ヒストグラムを用いて前記第2階調変換特性を算出する算出手段と
を備え、
前記補正手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて前記クリッピング値を変更し、変更後の前記クリッピング値を用いて前記ヒストグラム算出手段により作成されたヒストグラムをクリッピング処理し、該クリッピング処理後のヒストグラムを用いて前記第2階調変換特性を算出し、この第2階調変換特性を補正後の前記第2階調変換特性として前記第2階調変換手段に出力する請求項2に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記補正手段は、変更後の前記クリッピング値を前記第2階調変換特性算出手段に供給し、変更後の前記クリッピング値を用いたクリッピング処理を前記クリッピング手段に行わせ、該クリッピング処理後の前記ヒストグラムに基づく前記第2階調変換特性の算出処理を前記算出手段に行わせる請求項4に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記補正手段は、前記第1階調変換特性において、前記所定の閾値よりも小さい傾きを示す領域が占める割合が多いほど、前記クリッピング値を小さな値に変更する請求項4または請求項5に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記第2階調変換特性算出手段は、
前記第1階調変換特性を用いた前記第1階調変換処理が行われた後の前記映像信号のヒストグラムを算出するヒストグラム算出手段と、
前記ヒストグラムを用いて前記第2階調変換特性を算出する算出手段と
を具備する請求項1から請求項3のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項8】
前記算出手段は、複数の前記第2階調変換特性を保持し、前記ヒストグラムに基づいて複数の前記第2階調変換特性の中から一の前記第2階調変換特性を選択する請求項7に記載の撮像システム。
【請求項9】
前記算出手段は、複数のガンマ値を保持し、前記ヒストグラムに基づいて複数の前記ガンマ値の中から一のガンマ値を選択し、選択したガンマ値を用いてガンマ曲線を設定し、該ガンマ曲線を前記第2階調変換特性とする請求項7に記載の撮像システム。
【請求項10】
前記算出手段は、前記ヒストグラムに対してクリッピング処理を行うクリッピング手段と、前記クリッピング処理が行われたヒストグラムの累積値を算出することにより、前記第2階調変換特性を算出する累積値算出手段とを具備する請求項7に記載の撮像システム。
【請求項11】
前記第1階調変換特性は、撮影時における表示モード、撮影モード等の各種設定条件に基づいて決定される請求項1から請求項10のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項12】
撮像系からの映像信号を階調変換して出力する画像処理方法であって、
Mビットの映像信号をNビット(M、Nは整数、M>N)の映像信号に変換する第1階調変換特性を用いて第1階調変換処理された映像信号から、第2階調変換特性を算出する過程と、
前記第1階調変換特性を用いて、前記第2階調変換特性を補正する過程と、
前記第1階調変換特性を用いて、映像信号に前記第1階調変換処理を行う過程と、
補正後の前記第2階調変換特性を用いて、前記第1階調変換処理が施された映像信号に第2階調変換処理を行う過程と
を有する画像処理方法。
【請求項13】
撮像系からの映像信号に対する階調変換処理をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムであって、
Mビットの映像信号をNビット(M、Nは整数、M>N)の映像信号に変換する第1階調変換特性を用いて第1階調変換処理された映像信号から、第2階調変換特性を算出する処理と、
前記第1階調変換特性を用いて、前記第2階調変換特性を補正する処理と、
前記第1階調変換特性を用いて、映像信号に前記第1階調変換処理を行う処理と、
補正後の前記第2階調変換特性を用いて、前記第1階調変換処理が施された映像信号に第2階調変換処理を行う処理と
をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−194728(P2009−194728A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34876(P2008−34876)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】