説明

撮像システム

【課題】追跡対象の位置および大きさをより正確に検出することができる。
【解決手段】交差点に設けられる撮像システムであって、前記交差点内および前記交差点周辺を移動する複数の対象を撮像する全体視撮像部と、前記交差点に設置された一対の歩行者用信号および自動車用信号の少なくとも一方の点灯状態を示す信号情報を取得する信号情報取得部と、前記信号情報に基づいて、前記全体視撮像部の撮像データから事故の危険性の高い前記対象を追跡対象として特定する追跡対象特定部と、前記全体視撮像部の撮像素子における画素密度よりも高い画素密度の撮像素子を有し、前記追跡対象を追跡しながら撮像する複数の特定対象撮像部と、前記特定対象撮像部の撮像方向および焦点を制御する制御部と、を備えることを特徴とする撮像システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点に設けられる撮像システムに関する。より詳しくは、交差点内および交差点周辺を移動する複数の対象うちの特定の対象を追跡しながら撮像する撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交差点を走行する車両の運転者を支援する交差点運転支援システムが知られている(例えば特許文献1参照)。このようなシステムでは、自車両の前方および側方を撮像した画像から移動体を検出して当該移動体の危険度に応じて車両の運転者に通知または警報を行うことにより、交差点を走行する際の安全性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−352394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたシステムでは、車両前方および車両側方にそれぞれ1台ずつ設けられた撮像装置により移動体を検知することから、移動体の位置および大きさを正確に検出することが難しかった。ゆえに、例えば、道路横断中に歩行者が倒れたり、道路上に障害物が放置されているなどの車両にとって極めて危険な状態を早期かつ正確に検出することができなかった。また、移動体の種類や大きさの検出精度を高めるために撮像装置の解像度を高めると、撮像される画像のデータが大きくなり、それに伴って移動体の検出処理による負荷も大きくなることが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することを目的として、本発明は、交差点に設けられる撮像システムであって、前記交差点内および前記交差点周辺を移動する複数の対象を撮像する全体視撮像部と、前記交差点に設置された一対の歩行者用信号および自動車用信号の少なくとも一方の点灯状態を示す信号情報を取得する信号情報取得部と、前記信号情報に基づいて、前記全体視撮像部の撮像データから事故の危険性の高い前記対象を追跡対象として特定する追跡対象特定部と、前記全体視撮像部の撮像素子における画素密度よりも高い画素密度の撮像素子を有し、前記追跡対象を追跡しながら撮像する複数の特定対象撮像部と、前記特定対象撮像部の撮像方向および焦点を制御する制御部と、を備えることを特徴とする撮像システムを提供する。
【0006】
このような撮像システムによれば、交差点内および交差点周辺を移動する複数の対象を全体視撮像部で撮像するとともに、その撮像データから危険度などの条件に基づいて特定された追跡対象を複数の特定対象撮像部で追跡しながら撮像するので、当該追跡対象の位置および大きさをより正確に検出することができる。また、全体視撮像部の撮像素子における画素密度は、特定対象撮像部の撮像素子における画素密度よりも低いので、交差点内外の撮像データから複数の対象を検出する際の検出処理の負荷を抑えることができる。
【0007】
また、上記撮像システムにおいて、前記追跡対象特定部は、前記交差点内を移動する前記対象および前記交差点周辺から前記交差点内へ向けて移動する前記対象のうち、互いに接触することが予見される前記対象を前記追跡対象とすることが好ましい。
【0008】
これにより、事故の危険性のより高い対象を追跡対象とすることができる。
【0009】
また、上記撮像システムにおいて、前記追跡対象特定部は、前記追跡対象が複数特定される場合に、当該追跡対象の各々に対して事故の危険性を示す危険度の高い順に識別IDを割り当て、前記制御部は、前記識別IDに基づいて、前記危険度の最も高い前記追跡対象を前記特定対象撮像部に撮像させることが好ましい。
【0010】
これにより、複数の追跡対象が特定された場合でも、その中でより事故に至る危険性の高い(より危険度の高い)追跡対象を正確に選択して特定対象撮像部で追跡撮像させることができる。
【0011】
また、上記撮像システムは、前記特定対象撮像部からの撮像データに基づいて前記危険度が所定レベル以上である前記追跡対象を危険対象として識別する危険対象識別部をさらに備えることが好ましい。
【0012】
これにより、事故の危険性が高まった追跡対象を他の対象から識別することができる。
【0013】
また、上記撮像システムにおいて、前記危険対象識別部は、前記信号情報取得部から前記信号情報を取得し、歩行者が横断不可であることを当該信号情報が示す場合に、前記交差点内の歩行者を前記危険対象として識別してもよい。
【0014】
これにより、例えば歩行者用信号が赤になっても交差点内に残っている歩行者など、車と衝突する可能性の高い対象を他の対象から識別することができる。
【0015】
また、上記撮像システムにおいて、前記全体視撮像部は、前記複数の対象とともに前記交差点に設置された信号の点灯状態を撮像し、前記危険対象識別部は、前記全体視撮像部の撮像データを取得して、前記点灯状態が歩行者が横断不可であることを示す場合に、前記交差点内の前記対象を前記危険対象として識別することが好ましい。
【0016】
この場合においても、例えば歩行者用信号が赤になっても交差点内に残っている歩行者など、車と衝突する可能性の高い対象を他の対象から識別することができる。
【0017】
また、上記撮像システムは、前記危険対象に対して警告情報を発する警告情報出力部をさらに備えることが好ましい。また、前記警告情報出力部は、前記危険対象である自動車の車載端末へ、前記警告情報を送信することが好ましい。
【0018】
このような警告情報出力部を備えることにより、互いに衝突あるいは接触する可能性の高い自動車または歩行者の少なくとも一方に自身の危険性を認識させて危険を回避させることができる。
【0019】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像システム100が設けられた交差点500を上方から見た図である。
【図2】撮像システム100の構成を示すブロック図である。
【図3】撮像システム100による歩行者および自動車の追跡撮像の動作フローである。
【図4】撮像システム101の構成を示すブロック図である。
【図5】コンピュータ1000のハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態について説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態における特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像システム100が設けられた交差点500を上方から見た図である。また、図2は、撮像システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る撮像システム100は、交差点500内およびその周辺を移動する歩行者や自動車などの複数の対象を撮像するとともに、撮像した複数の歩行者から特定の歩行者を選択して追跡撮像し、事故に遭う危険性の高い状態(危険状態)にある歩行者を検出することのできるシステムである。
【0023】
なお、撮像システム100の説明のために例示する交差点500は、図1の上下方向に自動車が対面通行可能な車道511と、図1の左右方向に自動車が対面通行可能な車道512とが交差する十字路型の交差点である。また、交差点500には、車道511,512側方の歩道521,522,523,524間を横断するための横断歩道531,532,533,534が設けられている。
【0024】
また、車道511,512のそれぞれにおける横断歩道531〜534の手前側(交差点500の中心から遠い側)には、自動車用信号541,542,543,544が設けられている。また、横断歩道531〜534の両側(歩道521〜524側)には、歩行者用信号551,552,553,554が設けられている。
【0025】
例えば、歩道521から歩道522へと車道511を横断するための横断歩道531の手前側には、自動車用信号541が設けられている。また、横断歩道531の両側には、歩行者用信号551が設けられている。
【0026】
例えば車道511を走行する自動車621A,621B,621C,621D,621E、および二輪車631は、自動車用信号541,543が青である場合は、そのまま交差点500内に侵入することができるが、自動車用信号541,543が赤である場合は、横断歩道531,533の手前側に設けられた一時停止線より手前にて停車しなければならない。また、歩行者611は、歩行者用信号551が青である場合は、横断歩道531を横断できるが、歩行者用信号551が赤である場合は、横断することはできない。同様に、歩行者612,613,614は、歩行者用信号552,553,554が青である場合は、横断歩道532,533,534を横断できるが、歩行者用信号552,553,554が赤である場合は、横断することはできない。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る撮像システム100は、固定部105と、全体視撮像部110と、2台の特定対象撮像部120,130とを備える。固定部105は、車道511の両側に設けられた支柱部と当該支柱部に両端が固定された梁部によって構成される。全体視撮像部110および特定対象撮像部120,130は、固定部105の梁部に固定される。
【0028】
本例において、2台の特定対象撮像部120,130は、全体視撮像部110の両側に設けられる。また、全体視撮像部110および特定対象撮像部120,130は、いずれも車道511の路面から10m程度の高さに設置されることが好ましい。なお、全体視撮像部110および特定対象撮像部120,130の配置およびこれらを設置する路面からの高さは、本例に限られず、それぞれの撮像部の撮像対象および撮像範囲などにより適切に設定される。
【0029】
図2に示すように、撮像システム100は、さらに、撮像データ取得部141,142と、動体識別部150と、追跡対象特定部160と、制御部170と、信号情報取得部175と、危険対象識別部180と、警告情報出力部190とを備える。
【0030】
全体視撮像部110は、交差点500内およびその周辺を撮像可能なCCDカメラ111、およびCCDカメラ111による撮像データを記憶する画像記憶部112を有する。CCDカメラ111は、例えば画素数が320×240のCCDイメージセンサを撮像素子として有し、30fpsのフレームレートで上記撮像範囲を撮像可能なCCDカメラであってよい。また、本例において、CCDカメラ111は、固定部105に固定されて一定の範囲を撮像するカメラである。なお、全体視撮像部110は、CCDカメラ111に替えて、CMOSイメージセンサなど他の方式の撮像素子を有するカメラを有してもよい。
【0031】
画像記憶部112は、CCDカメラ111によって上記フレームレートで撮像された撮像データを撮像時間に対応付けて記憶する。画像記憶部112には、例えばフラッシュメモリなどの記憶素子またはハードディスクドライブなどの記憶装置が用いられる。
【0032】
特定対象撮像部120は、全体視撮像部110が有するCCDカメラ111の撮像範囲のうちの特定の範囲を拡大して撮像する光学ズーム機能を有するCCDカメラ121、CCDカメラ121による撮像データを記憶する画像記憶部122、およびCCDカメラ121を駆動する駆動部123を有する。また、特定対象撮像部130は、特定対象撮像部120のCCDカメラ121、画像記憶部122、および駆動部123のそれぞれと同様の機能を有するCCDカメラ131、画像記憶部132、および駆動部133を有する。
【0033】
CCDカメラ121,131は、例えば画素数が640×480のCCDイメージセンサを撮像素子として有し、30fpsのフレームレートで上記撮像範囲を撮像可能なCCDカメラであってよい。画像記憶部122は、CCDカメラ121によって上記フレームレートで撮像された撮像データを時系列で取得し、それぞれの撮像データを撮像時間に対応付けて記憶する。なお、特定対象撮像部120,130は、CCDカメラ121,131に替えて、CMOSイメージセンサなど他の方式の撮像素子を有し、かつ所定の光学ズーム機能を有するカメラを有してもよい。
【0034】
画像記憶部132は、CCDカメラ131によって上記フレームレートで撮像された撮像データを撮像時間に対応付けて記憶する。画像記憶部132は、画像記憶部122,132には、画像記憶部112と同様に、例えばフラッシュメモリなどの記憶素子またはハードディスクドライブなどの記憶装置が用いられる。
【0035】
撮像データ取得部141は、画像記憶部112に対して所定のタイミングでアクセスして画像記憶部112が記憶する撮像データを取得する。動体識別部150は、撮像データ取得部141から出力される撮像データを受け取り、CCDカメラ111の撮像範囲内において移動する一または複数の対象を当該撮像データから識別する。
【0036】
より具体的には、動体識別部150は、ある時点における撮像データが撮像データ取得部141から送られると、当該撮像データから画素毎の輝度の情報を抽出して記憶する。そして、動体識別部150は、次に撮像データ取得部141から送られる撮像データにおける対応する画素の輝度との差分を求める。動体識別部150は、時系列で送られる撮像データについてこの処理を繰り返すことにより、CCDカメラ111の撮像範囲内において移動する対象を識別する。
【0037】
ここで、動体識別部150は、識別される対象の種類(歩行者、自動車など)まで識別できることが好ましいが、本例では、全体視撮像部110のCCDカメラ111による撮像範囲内で移動する対象の位置および数を少なくとも検出できればよく、さらには検出した対象の移動速度および予想進路などを算出してもよい。
【0038】
信号情報取得部175は、交差点500に設置された歩行者用信号および自動車用信号の点灯状態を示す信号情報を例えばネットワーク経由で取得する。例えば、信号情報取得部175は、交差点500に設置された歩行者用信号551〜554、および自動車用信号541〜544のうち、どの信号が通行または横断不可を示す点灯状態(例えば赤)であり、どの信号が通行または横断可能を示す点灯状態(例えば青)であるかなどを示す信号情報を取得する。そして、信号情報取得部175は、取得した信号情報を追跡対象特定部160および危険対象識別部180へと出力する。
【0039】
追跡対象特定部160は、動体識別部150により識別された対象それぞれの位置などの情報を動体識別部150から取得するとともに、上記信号情報を信号情報取得部175から取得する。そして、追跡対象特定部160は、動体識別部150により識別された対象から、上記信号情報に基づいて、特定対象撮像部120,130により追跡させながら撮像させるべき対象(以下、「追跡対象」と称する)を特定する。より具体的には、動体識別部150により識別された対象の中に、例えば、歩行者用信号が青から赤に変わろうとしているにも関わらず、交差点500内で立ち止まったまま動かない歩行者がいる場合、そのような歩行者は事故に遭う危険性が高い。したがって、追跡対象特定部160は、かかる歩行者が特定された場合は、その歩行者を追跡対象とする。
【0040】
また、追跡対象特定部160は、上記対象の移動速度および予想進路などの情報を動体識別部150から取得可能な場合は、これらの情報をさらに参照して追跡対象を特定してもよい。また、追跡対象特定部160は、対象に関する上記情報から事故の危険性を示す危険度を算出し、当該危険度が所定レベル以上の対象を追跡対象としてもよい。追跡対象の特定に上記危険度を参照することにより、事故の危険性のより高い対象を追跡対象とすることができる。
【0041】
制御部170は、特定結果取得部171および撮像条件制御部172を有する。特定結果取得部171は、追跡対象特定部160による追跡対象に関する情報を取得する。具体的には、特定結果取得部171は、例えば、追跡対象特定部160により特定された追跡対象に関する上記情報とともに当該追跡対象の危険度を取得する。撮像条件制御部172は、特定結果取得部171が取得した追跡対象に関する上記情報に基づいて、特定対象撮像部120のCCDカメラ121および特定対象撮像部130のCCDカメラ131の撮像方向および焦点などの撮像条件を設定する。
【0042】
より具体的には、撮像条件制御部172は、特定結果取得部171が取得した追跡対象の位置、移動速度、予想進路などに関する情報に基づいて、駆動部123にCCDカメラ121を駆動させることによりCCDカメラ121の撮像方向を追跡対象の方向に設定するとともに、CCDカメラ121の光学系を制御することにより焦点および露出などを追跡対象の撮像に適した条件に設定する。また、これと同様に、撮像条件制御部172は、駆動部133にCCDカメラ131を駆動させることによりCCDカメラ131の撮像方向を追跡対象の方向に設定するとともに、CCDカメラ131の光学系を制御することにより焦点および露出などを追跡対象の撮像に適した条件に設定する。
【0043】
そして、撮像条件制御部172は、CCDカメラ121,131による追跡対象の撮像データに基づいて、CCDカメラ121,131による追跡対象の撮像条件を適宜変更する。これにより、CCDカメラ121,131の撮像範囲は、いずれも上記追跡対象の移動に追従する。また、これに替えて、撮像条件制御部172は、特定結果取得部171が上記追跡対象の位置、移動速度、予想進路などが変化したことを示す情報を取得した場合に、当該新たな情報に基づいてCCDカメラ121,131による追跡対象の撮像条件を変更してもよい。
【0044】
このように、2台の特定対象撮像部120,130(CCDカメラ121,131)で同一の追跡対象を追跡させながら撮像させることにより、特定対象撮像部120,130をステレオカメラとして機能させることができる。したがって、追跡対象までの距離を正確に測定することができる。
【0045】
また、本例のCCDカメラ121,131は、高倍率の光学ズーム機能を有するとともに、それぞれのCCDカメラが備える撮像素子は、CCDカメラ111が備える撮像素子よりも高い画素密度を有する。したがって、追跡対象の大きさを正確に測定することができるので、例えば追跡対象として撮像している歩行者が横断歩道を横断中に倒れたり蹲って立往生したことを正確に検知することができる。
【0046】
また、本例において、追跡対象が複数特定される場合は、追跡対象特定部160は、当該追跡対象の各々に対して事故の危険性を示す危険度の高い順に当該危険度に関連付けた識別IDを割り当てる。そして、特定結果取得部171は、複数の追跡対象のそれぞれについて、位置、移動速度、予想進路などに関する情報とともに各々の追跡対象の識別IDを取得する。そして、撮像条件制御部172は、識別IDに基づいて、複数の追跡対象の中から危険度の最も高い追跡対象をCCDカメラ121,131により撮像させる。
【0047】
このように、複数の追跡対象が特定された場合でも、その中でより事故に至る危険性の高い(より危険度の高い)追跡対象を正確に選択して特定対象撮像部120,130により追跡撮像させることができる。また、特定対象撮像部120,130のCCDカメラ121,131をステレオカメラとすることにより、追跡対象が危険な状態となったことをより正確に検知することができる。
【0048】
危険対象識別部180は、特定対象撮像部120,130による追跡対象の撮像データに基づいて、危険度が所定レベル以上である追跡対象を危険対象として識別する。より具体的には、危険対象識別部180は、例えば、特定対象撮像部120,130のCCDカメラ121,131による追跡対象の撮像データに基づいて、当該追跡対象の危険度を算出する。
【0049】
また、危険対象識別部180は、特定対象撮像部120,130による追跡対象の撮像データに加えて、信号情報取得部175からの信号情報を参照することにより追跡対象を危険対象として識別してもよい。より具体的には、危険対象識別部180は、信号情報取得部175からの信号情報が、歩行者用信号が赤(歩行者が横断不可)であることを示しているにも関わらず交差点500内(横断歩道上)に歩行者が残っている場合、そのような歩行者は事故に遭う危険性が極めて高い。したがって、危険対象識別部180は、かかる歩行者がいる場合は、その歩行者を、危険対象として識別してもよい。
【0050】
危険対象識別部180において算出される危険度は、特定対象撮像部120,130による追跡対象の撮像データを反映させたものであることから、追跡対象特定部160が算出する上記危険度と比べて追跡対象の事故の危険性がより反映された指標となる。
【0051】
そして、危険対象識別部180は、算出される危険度が所定レベル以上となった場合に、追跡撮像している追跡対象が事故の危険性が非常に高い状態である危険対象として識別する。そして、危険対象識別部180は、追跡対象が危険対象となったことを示す情報を警告情報出力部190へと出力する。
【0052】
警告情報出力部190は、危険対象識別部180からの上記情報を受け付けると、危険対象に対して警告情報を発する。例えば、警告情報出力部190は、危険対象が自動車である場合には、VICS受信機あるいは通信機能を有するカーナビゲーション装置などの車載端末へ警告情報を示すデータを送信してもよい。
【0053】
この場合、警告情報出力部190は、例えば、車載端末の表示画面へ警告メッセージを表示させるとともに、当該端末に警告アラームを発報させてもよい。これにより、互いに衝突あるいは接触する可能性の高い自動車または歩行者の少なくとも一方に自身の危険性を認識させて危険を回避させることができる。
【0054】
また、本実施形態において、全体視撮像部110のCCDカメラ111が有する撮像素子の画素密度は、特定対象撮像部120,130のCCDカメラ121,131が有する撮像素子の画素密度よりも低い。したがって、CCDカメラ111は、CCDカメラ121,131よりも解像度は低くなるものの、より広範囲の対象を検出処理の負荷を抑えつつ特定することができる。そして、追跡対象のみをより高解像度のCCDカメラ121,131で撮像することにより、注目すべき追跡対象までの距離、および当該追跡対象の大きさ、姿勢などをより正確に検出することができる。
【0055】
以下において、撮像システム100の動作フローをより具体的に説明する。
【0056】
図3は、撮像システム100による歩行者および自動車の追跡撮像の動作フローである。本フローにおいては、まず、全体視撮像部110で、交差点500およびその周辺(本例では特に車道511)を撮像する(ステップ:S300)。次に、動体識別部150は、全体視撮像部110による撮像データから、横断歩道532を横断中の歩行者612A〜612E、横断歩道534を横断中の歩行者614、交差点500内で左折しようとしている自動車621A、交差点500内で右折しようとしている自動車621D,621E、および、車道511を交差点500へ向けて走行する自動車621B,621Cおよび二輪車631を、移動する対象として識別する(ステップ:S305)。
【0057】
そして、追跡対象特定部160は、移動する対象の中から、特定対象撮像部120,130により追跡撮像させるべき追跡対象を特定する(ステップ:S310)。
【0058】
例えば、追跡対象特定部160は、歩行者612Dが左折してくる自動車621Aと接触することが予見される場合は、自動車621Aを追跡対象とする。また、追跡対象特定部160は、自動車621A、自動車621D、および二輪車631の位置関係から、二輪車631が自動車621Dの死角となっていると判別される場合、例えば自動車621Dおよび二輪車631を追跡対象とする。
【0059】
また、追跡対象特定部160は、信号情報取得部175からの信号情報に基づいて、歩行者用信号552が青から赤に変わろうとしているときに歩行者612A〜612Eのいずれかが横断歩道532上で立ち止まったまま動かなくなった場合、あるいは横断歩道532上で蹲った場合、その歩行者を追跡対象とする。また、追跡対象特定部160は、歩行者612A〜612Eのいずれかが、歩行者用信号552が青の間に横断歩道532を渡り切ることができない速度で歩行している場合、その歩行者を追跡対象とする。
【0060】
そして、追跡対象が複数特定される場合(ステップ:S315 YES)、追跡対象特定部160は、当該追跡対象の各々に対して事故の危険性を示す危険度を算出し、当該危険度の高い順に識別IDを割り当てる(ステップ:S320)。ここで、それぞれの追跡対象に割り当てられる識別IDは、対応する追跡対象の危険度を示す情報を含む。そして、制御部170は、識別IDに基づいて、複数の追跡対象の中から危険度の最も高い追跡対象を特定対象撮像部120,130により撮像させる(ステップ:S325)。
【0061】
一方、追跡対象が一つの場合(ステップ:S315 NO)、追跡対象特定部160は、当該追跡対象を特定対象撮像部120,130により撮像させる(ステップ:S330)。
【0062】
そして、危険対象識別部180は、追跡対象の撮像データおよび信号情報取得部175からの信号情報に基づいて、追跡対象が危険対象であるか否かを識別する(ステップ:S340)。
【0063】
そして、危険対象識別部180は、歩行者用信号552が赤であることを信号情報が示しているときに歩行者612A〜612Eのいずれかが横断歩道532上に残っている場合、その歩行者を危険対象として識別する(ステップ:S340 YES)。また、危険対象識別部180は、二輪車631が接近しているにもかかわらず、自動車621Aが左折した後で直ちに自動車621Dが右折しようとした場合、あるいは、自動車用信号541,543が赤に変わったにも関わらず、自動車621Dが右折できずに交差点500内に止まっている場合、自動車621Dを危険対象とする。
【0064】
そして、危険対象識別部180は、特定対象撮像部120,130により追跡撮像していた追跡対象が危険対象となったことを示す情報を警告情報出力部190へと出力し、警告情報出力部190は、当該危険対象に対して警告情報を発する(ステップ:S345)。
【0065】
一方、危険対象識別部180によって、特定対象撮像部120,130により追跡撮像していた追跡対象が危険対象とならず(ステップ:S340 NO)、そのまま交差点500外に出た場合(ステップ:S350 YES)、すなわち、追跡対象として追跡撮像していた歩行者611〜614が横断歩道531〜534を渡り切った場合、あるいは、追跡対象として追跡撮像していた自動車621A〜621Eおよび二輪車631の走行位置が特定対象撮像部120,130による追跡範囲外となった場合、本フローは終了する。
【0066】
なお、追跡対象が交差点500外に出るまでは、再び上記ステップS340以降を繰り返す(ステップ:S350 NO)。
【0067】
図4は、撮像システム101の構成を示すブロック図である。撮像システム101において、上記の撮像システム100と略同じ構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0068】
撮像システム101では、全体視撮像部110は、上記複数の対象とともに交差点500に設置された歩行者用信号および自動車用信号の少なくとも一方の点灯状態を撮像する。すなわち、本例の撮像システム101が備える全体視撮像部110は、その撮像範囲において撮像される歩行者が横断する横断歩道に設けられている歩行者用信号、および、撮像される自動車の走行方向に設けられている自動車用信号の少なくとも一方について、その点灯状態(赤か、青か、など)が撮像範囲に入るように設けられる。
【0069】
また、危険対象識別部180は、全体視撮像部110の撮像データを取得する。そして、危険対象識別部180は、取得した撮像データにおいて、例えば、上記歩行者用信号が、歩行者が横断不可であることを示しているにも関わらず、追跡対象である歩行者が交差点500内(横断歩道上)に残っている場合、その歩行者を危険対象として識別する。
【0070】
このように、撮像システム101においては、撮像システム100のように信号情報取得部175を設けて信号情報を取得することなく、追跡対象が危険対象となったことを識別することができる。
【0071】
図5は、コンピュータ1000のハードウェア構成の一例を示す。コンピュータ1000は、与えられるプログラムに基づいて、図1から4において説明した撮像システム100,101の全体視撮像部110および特定対象撮像部120,130を制御するホストコンピュータとして機能する。例えば、コンピュータ1000がホストコンピュータとして機能する場合、プログラムは、コンピュータ1000を、図1から4に関連して説明した撮像システム100,101の撮像データ取得部141,142、動体識別部150、追跡対象特定部160、制御部170、信号情報取得部175、危険対象識別部180、および警告情報出力部190として機能させてよい。
【0072】
コンピュータ1000は、CPU周辺部、入出力部、及びレガシー入出力部を備える。CPU周辺部は、ホスト・コントローラ1082により相互に接続されるCPU1005、RAM1020、グラフィック・コントローラ1075、及び表示装置1080を有する。入出力部は、入出力コントローラ1084によりホスト・コントローラ1082に接続される通信インターフェース1030、ハードディスクドライブ1040、及びCD−ROMドライブ1060を有する。レガシー入出力部は、入出力コントローラ1084に接続されるROM1010、フレキシブルディスク・ドライブ1050、及び入出力チップ1070を有する。
【0073】
ホスト・コントローラ1082は、RAM1020と、高い転送レートでRAM1020をアクセスするCPU1005及びグラフィック・コントローラ1075とを接続する。CPU1005は、ROM1010及びRAM1020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ1075は、CPU1005等がRAM1020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置1080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ1075は、CPU1005等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0074】
入出力コントローラ1084は、ホスト・コントローラ1082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェース1030、ハードディスクドライブ1040、CD−ROMドライブ1060を接続する。通信インターフェース1030は、ネットワークを介して全体視撮像部110および特定対象撮像部120,130などと通信する。ハードディスクドライブ1040は、コンピュータ1000内のCPU1005が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ1060は、CD−ROM1095からプログラム又はデータを読み取り、RAM1020を介してハードディスクドライブ1040に提供する。
【0075】
また、入出力コントローラ1084には、ROM1010と、フレキシブルディスク・ドライブ1050、及び入出力チップ1070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM1010は、コンピュータ1000が起動時に実行するブート・プログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ1050は、フレキシブルディスク1090からプログラム又はデータを読み取り、RAM1020を介してハードディスクドライブ1040に提供する。入出力チップ1070は、フレキシブルディスク・ドライブ1050や、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
【0076】
RAM1020を介してハードディスクドライブ1040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク1090、CD−ROM1095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM1020を介してコンピュータ1000内のハードディスクドライブ1040にインストールされ、CPU1005において実行される。
【0077】
当該プログラムは、コンピュータ1000にインストールされる。当該プログラムは、CPU1005等に働きかけて、コンピュータ1000を、前述した撮像データ取得部141,142、動体識別部150、追跡対象特定部160、制御部170、信号情報取得部175、危険対象識別部180、および警告情報出力部190として機能させる。
【0078】
以上に示したプログラムは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク1090、CD−ROM1095の他に、DVDやCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークやインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1000に提供してもよい。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0080】
100,101…撮像システム
105…固定部
110…全体視撮像部
120,130…特定対象撮像部
111,121,131…CCDカメラ
112,122,132…画像記憶部
123,133…駆動部
141,142…撮像データ取得部
150…動体識別部
160…追跡対象特定部
170…制御部
171…特定結果取得部
172…撮像条件制御部
175…信号情報取得部
180…危険対象識別部
190…警告情報出力部
500…交差点
511,512…車道
521,522,523,524…歩道
531,532,533,534…横断歩道
541,542,543,544…自動車用信号
551,552,553,554…歩行者用信号
611,612,613,614…歩行者
621…自動車
631…二輪車
1000…コンピュータ
1005…CPU
1010…ROM
1020…RAM
1030…通信インターフェース
1040…ハードディスクドライブ
1050…フレキシブルディスク・ドライブ
1060…CD−ROMドライブ
1070…入出力チップ
1075…グラフィック・コントローラ
1080…表示装置
1082…ホスト・コントローラ
1084…入出力コントローラ
1090…フレキシブルディスク
1095…CD−ROM


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に設けられる撮像システムであって、
前記交差点内および前記交差点周辺を移動する複数の対象を撮像する全体視撮像部と、
前記交差点に設置された一対の歩行者用信号および自動車用信号の少なくとも一方の点灯状態を示す信号情報を取得する信号情報取得部と、
前記信号情報に基づいて、前記全体視撮像部の撮像データから事故の危険性の高い前記対象を追跡対象として特定する追跡対象特定部と、
前記全体視撮像部の撮像素子における画素密度よりも高い画素密度の撮像素子を有し、前記追跡対象を追跡しながら撮像する複数の特定対象撮像部と、
前記特定対象撮像部の撮像方向および焦点を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記追跡対象特定部は、前記交差点内を移動する前記対象および前記交差点周辺から前記交差点内へ向けて移動する前記対象のうち、互いに接触することが予見される前記対象を前記追跡対象とすることを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記追跡対象特定部は、前記交差点内で立ち止まった歩行者を前記追跡対象とすることを特徴とする請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記追跡対象特定部は、前記追跡対象が複数特定される場合に、当該追跡対象の各々に対して事故の危険性を示す危険度の高い順に識別IDを割り当て、
前記制御部は、前記識別IDに基づいて、前記危険度の最も高い前記追跡対象を前記特定対象撮像部に撮像させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項5】
前記特定対象撮像部からの撮像データに基づいて前記危険度が所定レベル以上である前記追跡対象を危険対象として識別する危険対象識別部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記危険対象識別部は、前記信号情報取得部から前記信号情報を取得し、歩行者が横断不可であることを当該信号情報が示す場合に、前記交差点内の歩行者を前記危険対象として識別することを特徴とする請求項5に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記全体視撮像部は、前記複数の対象とともに前記交差点に設置された信号の点灯状態を撮像し、
前記危険対象識別部は、前記全体視撮像部の撮像データを取得して、前記点灯状態が歩行者が横断不可であることを示す場合に、前記交差点内の歩行者を前記危険対象として識別することを特徴とする請求項5に記載の撮像システム。
【請求項8】
前記危険対象に対して警告情報を発する警告情報出力部をさらに備えることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項9】
前記警告情報出力部は、前記危険対象である自動車の車載端末へ、前記警告情報を送信することを特徴とする請求項8に記載の撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−81533(P2011−81533A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232214(P2009−232214)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】