説明

撮像素子、撮像素子の製造方法、画素設計方法および電子機器

【課題】簡易な加工プロセスにより、高感度化および微細化を実現することが可能な撮像素子を提供する。
【解決手段】イメージセンサ1は、2次元配置された複数の画素Pを備え、各画素Pが、フォトダイオードを含む受光部20と、入射光を受光部20へ向けて集光する集光部10とを有する。集光部10では、その画素位置に応じた特定の凹凸構造11Aを表面に有する1または複数の光学機能層(例えばオンチップレンズ11)を含んでいる。特定の凹凸構造11Aを有することにより、オンチップレンズ11表面における反射率が低減すると共に、瞳補正の効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子およびそのような撮像素子を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において使用される電子機器(内視鏡カメラやビジョンチップ、生体センサ等)への半導体イメージングデバイス(撮像装置)の応用が活発に行われつつある。そこで、更なる高感度化とデバイスの小型化(画素の微細化)とを両立することが要求されるが、画素の微細化が進むと、射出瞳距離が短くなることから、次のような不具合が生じる。即ち、画素端領域でのOCL(On Chip Lens:オンチップレンズ)への光の入射角度が大きくなり、OCL表面での反射率の増大や、ケラレの増大が生じる。
【0003】
このため、一般的には、CCDやCMOSといったイメージセンサでは、OCLの表面に反射防止膜を設けたり、あるいはレンズの中心軸をフォトダイオードの中心軸からシフトさせる補正(いわゆる瞳補正)を行うことにより対応している。
【0004】
また最近では、OCLを円柱形状とし、更にその円柱形状のレンズに複数のスリットを設けた構造(デジタルマイクロレンズ)を採用することで、入射角度に応じてレンズの実効的な屈折率を変えることで、集光効率を向上させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−266900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなOCL表面へ反射防止膜を積層した場合、それによって画素の微細化が阻害される。また、瞳補正の際には、上記のようにレンズの中心軸をシフトさせたり、あるいはレンズ自体をシュリンク(レンズ径を小さく)させて中心軸を内側にシフトさせる手法が知られているが、前者では画素の微細化が阻害され、後者では集光面積が小さくなり感度が低下してしまう。
【0007】
また、上記特許文献1に記載の手法では、複数のスリットが複雑なパターンで設けられる特殊なレンズ構造であるがゆえに、マスク形状も複雑になると共に、高アスペクト比(例えば10以上)の微細加工を、高い加工再現性で行う必要がある。そのような加工は画素の微細化が進めば進むほど、難しくなる。また、複雑かつ難しい加工のため、製造コストも抑えられない。
【0008】
昨今の先進的医療技術開発をはじめ、半導体イメージングデバイスの応用分野が拡大しつつあり、更なる高感度化、微細化が要求されている。また、そのような高感度化および微細化に対応可能なイメージングデバイスを、簡易かつ低コストな加工プロセスによって実現することが望まれている。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡易な加工プロセスにより、高感度化および微細化を実現することが可能な撮像素子、撮像素子の製造方法、画素設計方法および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撮像素子は、2次元配置されると共に、それぞれが、光電変換素子を含む受光部と入射光を受光部へ向けて集光する集光部とを有する複数の画素を備えている。複数の画素における各集光部は、その画素位置に応じた特定の凹凸構造を表面に有する1または複数の光学機能層を含んでいる。
【0011】
本発明の撮像素子では、2次元配置された複数の画素がそれぞれ、光電変換素子を含む受光部と、入射光を受光部へ集光する集光部とを備え、各集光部の1または複数の光学機能層の表面に、その画素位置に応じた特定の凹凸構造が設けられている。これにより、光学機能層表面における反射率が低減すると共に瞳補正がなされる。
【0012】
本発明の撮像素子の製造方法は、2次元配置されると共に、それぞれが、光電変換素子を含む受光部と入射光を受光部へ向けて集光する集光部とを有する複数の画素を形成する際に、複数の画素の各集光部において、その画素位置に応じた特定の凹凸構造を表面に有する1または複数の光学機能層を形成するものである。
【0013】
本発明の撮像素子の製造方法では、2次元配置されると共に、光電変換素子を含む受光部と入射光を受光部へ向けて集光する集光部とを有する複数の画素を形成する際に、各集光部において、その画素位置に応じた特定の凹凸構造を表面に有する1または複数の光学機能層を形成する。その際、複雑なマスク形状は不要であり、高い加工精度も要求されない。
【0014】
本発明の画素設計方法は、表面に凹凸構造を有する1または複数の光学機能層を含む画素において凹凸構造のスケールを設計する際に、光学機能層における実効的屈折率を、射出瞳距離および中央画素からの距離の関数として求め、求めた実効的屈折率に基づいて凹凸構造のスケールを決定するものである。
【0015】
本発明の電子機器は、上記本発明の撮像素子を備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の撮像素子によれば、2次元配置されると共に、光電変換素子を含む受光部と、入射光を受光部へ集光する集光部とを備えた複数の画素において、各集光部の1または複数の光学機能層の表面に、その画素位置に応じた特定の凹凸構造が設けられている。これにより、光学機能層表面における反射率を低減すると共に瞳補正を行うことができ、高感度化を実現できる。また、本発明の撮像素子の製造方法によれば、そのような撮像素子を、複雑なマスク形状を用いることなく、また高い加工精度が要求されることなく製造できるため、微細化にも対応可能である。よって、簡易な加工プロセスにより、高感度化および微細化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るイメージセンサの概略構成を表す断面模式図である。
【図2】図1に示した受光部の詳細構成を表す断面模式図である。
【図3】図1に示した受光部の周辺回路構成を表す平面模式図である。
【図4】凹凸スケールによる界面の屈折率変化を表す概念図である。
【図5】平面へ入射した光の屈折率と反射率との関係を表す特性図である。
【図6】シミュレーションに使用した画素構造を表す図である。
【図7】凹凸スケールに対する集光効率の変化を表すシミュレーション結果である。
【図8】瞳補正の原理および凹凸設計を説明するための概念図である。
【図9】凹凸設計の手順を表す流れ図である。
【図10】レンズ表面の凹凸構造の加工プロセス(ナノインプリント法)を説明するための断面模式図である。
【図11】凹凸構造の他の加工プロセス(ナノボール溶液を利用した手法)を説明するための断面模式図である。
【図12】反射率改善結果を示す特性図である。
【図13】変形例1に係るイメージセンサの概略構成を表す断面模式図である。
【図14】変形例2に係るイメージセンサの概略構成を表す断面模式図である。
【図15】変形例3に係るイメージセンサの概略構成を表す断面模式図である。
【図16】変形例4に係る受光部(表面照射型)の概略構成を表す断面模式図である。
【図17】適用例1(撮像装置)に係る全体構成を表す機能ブロック図である。
【図18】適用例2(カプセル型内視鏡カメラ)に係る全体構成を表す機能ブロック図である。
【図19】内視鏡カメラの他の例(挿入型内視鏡カメラ)に係る全体構成を表す機能ブロック図である。
【図20】適用例3(ビジョンチップ)に係る全体構成を表す機能ブロック図である。
【図21】適用例4(生体センサ)に係る全体構成を表す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(中央画素から端画素にかけて、オンチップレンズの表面に所定の凹凸構造を設けた例)
2.変形例1(レンズ位置を画素位置に応じてシフトさせた例)
3.変形例2(インナーレンズに所定の凹凸構造を設けた例)
4.変形例3(反射防止膜に所定の凹凸構造を設けた例)
5.適用例(電子機器への適用例)

【0019】
<実施の形態>
図1は、本発明の一実施の形態に係るイメージセンサ(イメージセンサ1)の断面構成を表したものである。イメージセンサ1は、例えば裏面照射型(裏面受光型)の固体撮像素子(CCD,CMOS)であり、基板上に複数の画素Pが2次元配列した構造を有する。各画素Pは、光電変換素子(後述のフォトダイオード202)を含む受光部20と、入射光をその受光部20へ向けて集光させる集光部10とを備えている。
【0020】
(集光部10)
集光部10は、受光部20の受光面に設けられると共に、光入射側には、画素P毎にオンチップレンズ11を有している。集光部10には、また、そのオンチップレンズ11と受光部20との間に、オンチップレンズ11の側から順に、カラーフィルタ12、反射防止膜13および遮光膜14が設けられている。尚、本実施の形態では、オンチップレンズ11が、本発明における光学機能層の一具体例となっている。
【0021】
オンチップレンズ11は、受光部20(詳細には受光部20のフォトダイオード202)の受光面へ光を集光させる機能を有するものである。このオンチップレンズ11のレンズ径は、画素Pのサイズに応じた値に設定されており、例えば2μm程度以下である。また、このオンチップレンズ11を構成するレンズ材料の屈折率は、例えば1.1〜1.4である。レンズ材料としては、例えばシリコン酸化膜(SiO2)が挙げられるが、後述する凹凸設計および製造方法に応じて適切なものが選定される。
【0022】
本実施の形態では、このようなオンチップレンズ11の表面に凹凸構造11Aが設けられており(オンチップレンズ11の表面が凹凸面となっており)、この凹凸構造11Aのスケール(以下、凹凸スケールという)が、画素位置に応じた分布を持っている。具体的には、凹凸スケールは、例えば受光部20における受光波長よりも小さなオーダーで設けられ、中央画素Pcからの距離が大きくなるに従って、凹凸スケールが小さくなるように設計されている。この凹凸構造11Aの詳細構成および凹凸スケールの設計手法については後述する。尚、本明細書において「スケール」とは、凹凸構造における凹部(凸部)の幅および深さ(高さ)によって規定されるものである。また以下では、各凹凸構造11Aのアスペクト比が画素Pの全領域において同等であることを想定して説明を行うが、必ずしも各凹部(凸部)のアスペクト比は同等でなくともよい。後述する設計手法における実効的屈折率を実現し得る形状であれば、本実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0023】
カラーフィルタ12は、例えば赤色(R)フィルタ、緑色(G)フィルタおよび青色(B)フィルタのいずれかであり、例えば画素P毎に設けられている。これらのカラーフィルタは、規則的な色配列(例えばベイヤー配列)で設けられている。このようなカラーフィルタ12を有することにより、イメージセンサ1では、その色配列に対応したカラーの受光データが得られる。
【0024】
反射防止膜13は、例えばシリコン酸化膜(SiO2)およびシリコン窒化膜(SiN)のいずれかよりなる単層膜または、これらの積層膜により構成されている。
【0025】
遮光膜14は、オンチップレンズ11の光路上に開口14aを有しており、隣接画素間における光線のクロストークを抑制するために設けられている。この遮光膜14は、例えばタングステン(W)よりなり、厚みは例えば100nmである。
【0026】
(受光部20)
図2は、受光部20の断面構造(裏面照射型構造)について、集光部10の構成と共に表したものである。受光部20は、画素部100と周辺回路部200とが、同一基板201上に集積された構造を有している。このような受光部20では、基板201上に、トランジスタや金属配線を含む配線層203を介して、フォトダイオード202が設けられている。フォトダイオード202は、シリコン(Si)層204に埋設されており、このSi層204上にはSiO2膜205が形成されている。
【0027】
図3は、受光部20の画素部の周辺回路構成を表す機能ブロック図である。受光部20は、垂直(V)選択回路206,S/H(サンプル/ホールド)・CDS(Correlated Double Sampling:相関二重サンプリング)回路207,水平(H)選択回路208,タイミングジェネレータ(TG)209,AGC(Automatic Gain Control)回路210,A /D変換回路211およびデジタルアンプ212を有し、これらが同一の基板(チップ)204上に搭載されている。
【0028】
[凹凸構造の詳細構成例]
続いて、図4〜図8を参照して、凹凸構造11Aの詳細構成および設計手法について説明する。本実施の形態では、凹凸構造11Aを設けることにより、反射率低減および瞳補正の効果を実現するが、以下にその原理と、そのような凹凸構造11Aの設計手法について述べる。
【0029】
(反射率低減の原理)
図4(A),(B)は、凹凸構造11Aを付与することによる界面の屈折率変化を表す概念図である。上述のように、本実施の形態では、オンチップレンズ11の表面に凹凸構造11Aを有するが、この凹凸構造11Aによって、空気層とレンズ層との界面における屈折率変化が実効的に緩やかになる。例えば、図4(A)に示したように、中央部(中央画素Pc)では、屈折率n1の層と屈折率n2の層との界面付近における屈折率変化は、凹凸を設けなかった場合(平面の場合)(t100)に比べ、緩やか(t1,t2)なものとなる。端部(端画素Pe)についても同様である(図4(B))。このように、凹凸構造11Aの付与により、オンチップレンズ11表面(空気層との界面)入射時における屈折率変化を緩やかなものとすることができ、これにより、レンズ表面における反射率を低減することができる。
【0030】
このような凹凸構造11Aにおける凹凸スケールは、画素位置に応じて変化するようになっている。また、各画素における凹凸スケールは、受光波長に対して1/5程度以下の範囲内で設定されていることが望ましい。例えば、受光波長550nmに対して、中央画素Pcの凹凸スケールを100nmとし、このスケールが端画素Peに向かって小さくなるように設定される。但し、受光波長は、この550nmに限定されず、550nm以外の可視光や、赤外光等の他の波長についても適用可能である。いずれの受光波長であっても、凹凸スケールは上記範囲内で設定されることが望ましい。
【0031】
(瞳補正の原理)
続いて、凹凸構造11Aにおける瞳補正の原理について説明する。受光波長よりも小さな凹凸構造11Aを考えた場合、近似的に、図5に示したような平面における光の透過および反射を考えることができる。屈折率n1の媒質(たとえば空気)から屈折率n2の媒質(たとえばレンズ)に光が入射するとき、入射角度をα、透過角度(出射角度:フォトダイオード受光面への入射角度に相当)をβとすると、一般に、レンズ表面での反射率Rは、以下の式(1)のように表される。また、スネルの法則より、上記の入射角度αおよび出射角度βと屈折率n1,n2との関係は以下の式(2)のように表せる。
【0032】
【数1】

【0033】
ここで、様々な入射角度αに対して(全画素領域にわたって)、出射角度βを一定にすることで、イメージセンサ1における瞳補正の効果が得られる。出射角度βを一定にすることは、後述するように、レンズ表層の屈折率n2を入射角度αに応じて実効的に変化させればよい。つまり、図1に示したように、中央画素Pcからの距離に依存してレンズ表面の凹凸のスケールを変化させることにより、実効的屈折率を出射角度βが一定となるように変化させることができ、瞳補正の効果を得ることができる。尚、本明細書において、このような凹凸スケールに依存して変化する“見かけの”屈折率を「実効的屈折率」と称する。
【0034】
上記のような原理により、レンズ表層に中央画素Pcからの距離に依存したスケール分布を有する凹凸構造11Aを付加させることにより、瞳補正と反射率低減の両方の効果が得られ、集光部10における集光効率の向上へつながる。
【0035】
例えば、図6に示したような画素構造を想定し、凹凸構造11Aを有する球面レンズに550nmの波長の平面光を入射したときの集光効率を、FDTD(Finite-difference time-domain)法を用いた電磁界シミュレーションにより測定した。この際、凹凸スケール(凸部直径d)は、0nm,55nm,110nm,220nmとした。尚、凹凸スケール0nmの構造(直径d/入射波長550=1/∞)は、通常の滑らかな表面のレンズ(凹凸構造を有していないレンズ)に相当する。図7に、そのシミュレーション結果を示す。
【0036】
図7に示したように、凹凸スケールが入射波長よりも十分に小さい場合、例えば入射波長の1/5以下、望ましくは1/10以下である場合には、凹凸が大きくなるほど集光効率が向上する傾向にあることがわかる。一方、凹凸スケールが入射波長の1/5より大きい場合には、凹凸構造における局所的散乱等が影響することから、スネルの法則から逸脱するため、逆に反射率が増大して集光効率が低減してしまう。従って、上述したように、凹凸スケールは受光波長の1/5程度以下の微細な凹凸スケールであることが望ましい。
【0037】
(凹凸スケール分布の規定)
次に、上記のような凹凸スケールと画素位置との関係について、図8を参照して説明する。ここでは、中央画素Pcとその中央画素Pcから距離Lだけ離れた位置に配置された周辺画素Pmについての光線幾何について考える。射出瞳距離をH、オンチップレンズ11の大きさ(長軸方向における径)をr、レンズ表面上の任意の点の角度をθ、中央画素Pcにおける光線の入射角度をα、周辺画素Pmにおける入射角度をα'(=Δ+α)とすると、次のような式(3)〜(5)のように表すことができる。また、一般に、イメージセンサでは、射出瞳距離H>>rであるため、これらの式(3)〜(5)から、近似的にΔを求めることができる(式(6))。
【0038】
更に、スネルの法則を中央画素Pcと周辺画素Pmとについて考えると、中央画素Pcでは、以下の式(7)、周辺画素Pmでは式(8)のような関係で表すことができる。
【0039】
【数2】

ここで、出射角度βを一定にすることを考えると、上記式(7),(8)および上記式(6)より、周辺画素Pmにおいて、中央画素Pcと出射角度βを等しくするような実効的屈折率n2(L)(>n2)を、中央画素からの距離Lの関数として求めることができる。このような実効的屈折率n2(L)と、凹凸スケールとの関係を、実験ないしはシミュレーションにより予め求めておけば、中央画素Pcからの距離Lに応じて適切な実効的屈折率n2(L)が求まり、この実効的屈折率n2(L)に対応する凹凸スケールが決定される。このようにして、画素位置(距離L)に応じて、出射角度βを一定とするような実効的屈折率n2(L)を満たす凹凸スケールを決定することができる。このような凹凸設計のフロー図を図9に示す。
【0040】
図9に示したように、凹凸構造11Aにおける凹凸スケールを設計する際には、まず、射出瞳距離(H)を設定する(ステップS11)。つまり、集光部10におけるいずれの光学機能層に、凹凸スケールを付与するかを決定する。本実施の形態では、オンチップレンズ11の表面に凹凸スケールを形成する。続いて、設定した射出瞳距離Hを含む中央画素Pcと周辺画素Pmとの光線幾何から、周辺画素Pmと中央画素Pcとにおいて出射角度βを等しくする実効的屈折率n2(L)を導出する(ステップS12)。これにより、実効的屈折率n2(L)を距離Lの関数として求め(ステップS13)、求めた実効的屈折率n2(L)に基づいて(実効的屈折率n2(L)を満たす)凹凸スケールを決定する(ステップS14)。尚、実効的屈折率と凹凸スケールとの関係(上述のようにシミュレーション等を用いて事前に取得しておく)は、予めデータベース(図示せず)等に保持しておけばよい。
【0041】
[凹凸構造の製造方法]
オンチップレンズ11における凹凸構造11Aは、上述したような凹凸設計に基づいて、例えば次のようにして製造することができる。即ち、ナノインプリントリソグラフィ法、および有機ナノボール(ナノボール溶液)を用いた方法により製造可能である。以下、これらの具体的な手法について説明する。
【0042】
(ナノインプリントリソグラフィ法)
図10(A)〜(E)は、ナノインプリントリソグラフィ法を用いたオンチップレンズ11の製造工程を工程順に表したものである。まず、図10(A)に示したように、
レンズ母体110上にレンズマスク母材111aを形成し、このレンズマスク母材111aをリフローする。これにより、図10(B)に示したように、レンズ母体110上に、レンズマスク111を形成する。尚、ここでは、簡便化のため、1つのオンチップレンズ11に対応する領域(1画素分の領域)のみを図示している。
【0043】
他方、基板上に、光ないしは電子ビーム露光等により、例えばフォトレジストよりなるマスク材112を所定のパターン(前述した凹凸設計に基づいた、画素位置に応じてスケールが変化するマスクパターン)で形成する(図示せず)。続いて、このようにしてパターン形成したマスク材112上に、PDMS(ポリジメチルシロキサン)を液滴し、約100℃で20分ベーキングすることにより、PDMSモールド113を形成する(図示せず)。その後、室温に戻し、基板から、マスク材112とPDMSモールド113をはがす。このようにして作成したマスク材112およびPDMSモールド113を、図10(C)に示したように、上記のレンズマスク111の表面に押し当てることにより、レンズマスク111の表面にマスク材112を転写する。尚、PDMSモールドは有機材料からなるため、レンズのような曲面に対してもパターン形成されたマスク材112を精度良く転写することができる。
【0044】
この後、図10(D)に示したように、形成したレンズマスク111およびマスク材112をマスクとして、その下層に設けられたレンズ母体110をドライエッチング(エッチバック)する。これにより、図10(E)に示したように、オンチップレンズ11を形成すると共に、その表面に、マスク材112のパターンに応じた凹凸スケールを有する凹凸構造11Aを形成することができる。凹凸構造11Aを表面に有するオンチップレンズ11を形成する。この際のエッチング条件の一例としては、CCP(Capacitive Coupled Plasma:容量結合型)エッチング装置を使用し、例えばフルオロカーボンガスの流量を50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minutes),酸素ガスの流量を20sccmとし、ソース電力を800W,バイアス電力を100W,ガス圧力を50mT,下部電極温度を20℃とする。但し、これらの条件は一例に過ぎず、エッチングガス種、エッチングガスの流量比率、ガス圧力、基板温度、エッチング時間等の調整により、表面の凹凸の形状を緻密にコントロールすることが可能である。尚、ドライエッチング終了時点において、レジスト残渣が生じた場合は、その残渣を、シンナー剥離を行うことにより除去すればよい。
【0045】
(ナノボール溶液を用いた手法)
図11(A),(B)は、ナノボール溶液を用いたオンチップレンズ11の製造工程の一部を模式的に表したものである。まず、上記ナノインプリントリソグラフィ法の場合と同様にして、レンズ母体110上にレンズマスク111を形成する。この後、図11(A)に示したように、 レンズマスク111の表面に、所定のスケールのナノボール(ナノ粒子)114a(前述した凹凸設計に基づいた、画素位置に応じてスケールが変化するナノボール)を含有するナノボール溶液114を塗布する。この際、使用するナノボール114aの粒径は、例えば100nm程度以下の範囲とし、その材料としては、フォトレジストよりも熱耐性およびプラズマ耐性の高い有機系材料、例えばポリイミド樹脂を用いる。
【0046】
但し、これらの粒径および材料は一例であり、凹凸の形状もしくは凹部(凸部)幅や深さに応じて、適切な粒径および材料が選択されればよい。また、溶媒としては、ナノボールよりも熱耐性およびプラズマ耐性が低く、かつ粘度の低い有機系溶媒、例えば、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)もしくは純水を用いることができる。粘度の低い溶媒を用いる理由は、ナノボール1個分に相当する程度の膜厚でレンズ表面上にナノボール溶液を塗布し、できるだけナノボール個々の形状を一様にレンズに転写するためである。
【0047】
ナノボール溶液114を塗布する際には、例えばPSL塗布機(パーティクル散布装置)を用いることで、ナノボール溶液114をレンズ表面に高精度(μmレベル以下)で散布することが可能である。但し、ナノボール溶液114をμmレベルの精度で任意のウエハ位置に塗布できる装置であれば、他の装置を用いてもよい。また、スピンコートなどのウェットコーティングのできる装置を使用してもよい。
【0048】
続いて、図11(B)に示したように、ナノボール溶液114が塗布されたレンズ母体110を、フルオロカーボンガスに酸素を添加した混合ガス、もしくは塩素ガスに酸素を添加した混合ガスを使用してドライエッチング(エッチバック)する。尚、この際のエッチング条件としては、上記ナノインプリントリソグラフィ法の場合と同様の条件とすることもできるし、他の条件としてもよい。これにより、オンチップレンズ11を形成すると共に、その表面に、ナノボール114のスケールに応じた凹凸スケールを有する凹凸構造11Aを形成することができる。
【0049】
尚、ドライエッチング終了時点においてナノボール残渣がある場合には、上記ナノインプリントリソグラフィ法の場合と同様、シンナー剥離を行えばよいが、ナノボール114aを用いた本手法では、ナノボール114aの粒径とレンズ膜厚とが大きく異なるため、そのような残渣が生じにくい。
【0050】
(作用・効果)
本実施の形態のイメージセンサ1では、複数の画素が2次元配置され、各画素が、フォトダイオード202を含む受光部20と、入射した光を受光部20へ向けて集光する集光部10とを有している。集光部10はオンチップレンズ11を含み、このオンチップレンズ11の表面に、画素位置に応じた特定の凹凸構造11Aが設けられている。具体的には、凹凸構造11Aにおける凹凸スケールが、画素全域においてオンチップレンズ11の透過光線の出射角度(β)が一定となるような屈折率(実効的屈折率)を満たすように設計されている。このような凹凸構造11Aの付与により、オンチップレンズ11の表面における反射率を低減すると共に、瞳補正の効果を得ることができる。従って、近年のイメージングデバイスの応用分野拡大に伴う高感度化に対応可能となる。また、従来のように、オンチップレンズ表面に反射防止膜を設ける必要もなくなるため、更なる画素の微細化にも対応できる。
【0051】
例えば、次のような数値条件で画素設計を行い、反射率を測定したところその改善が確認された。条件としては、オンチップレンズ11の表面に、画素位置に応じた凹凸スケールを有する凹凸構造11Aを設けると共に、射出瞳距離Hを1mm,単位画素サイズを1.4μm×1.4μm,画素数を1000万画素とした。また、オンチップレンズ11におけるレンズ径を1.4μm,カラーフィルタ12(R,G,B)の膜厚を700nm,遮光膜14の膜厚を100nm,反射防止膜13の膜厚を400nmとした。更に、フォトダイオード(シリコン)膜厚を3μmとした。このような構成において、凹凸スケールを、中央画素において100nmとし、端画素に向かって徐々に小さくなる(実効的屈折率が1.4から1.1の間で変化する)ようにした。図12に、そのようにして作製した中央画素Pcと端画素Peとの反射率改善の一例を示す。このように、中央画素Pcと端画素Peのいずれにおいても、数%程度の反射率低減効果がみられる。また、これらの値は、従来のように、反射防止膜をレンズ表面に形成した場合とほぼ同等の効果を示すものである。
【0052】
また、このような反射率低減および瞳補正の効果を生じる凹凸構造11Aは、その所定の凹凸スケールに対応したマスクパターンを用いたナノインプリントリソグラフィ法、またはそのような凹凸スケールに対応したナノボールを用いた手法等により、容易に形成可能である。即ち、マスクパターンやナノボール等、マスクとして使用する部材のスケールを調整するだけでよいので、複雑なパターン形状を有するマスクを使用せずに済み、また高い加工精度も要求されない。即ち、画素の微細化への対応が可能となる。よって、イメージセンサ1では、簡易な加工プロセスにより、高感度化および微細化を実現することが可能となる。
【0053】
以下、上記実施の形態の変形例(変形例1〜4)について説明する。以下では、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0054】
<変形例1>
図13は、変形例1に係るイメージセンサ(イメージセンサ1A)の断面構成を表したものである。イメージセンサ1Aは、上記実施の形態のイメージセンサ1と同様、裏面照射型の固体撮像素子であり、基板上に複数の画素Pが2次元配列した構造を有する。また、各画素Pは、光電変換素子(フォトダイオード202)を含む受光部20と、オンチップレンズ11を含む集光部10Aとを備えている。集光部10Aは、オンチップレンズ11と受光部20との間に、カラーフィルタ12、反射防止膜13および遮光膜14を有している。このような構成において、本変形例においても、上記実施の形態と同様、オンチップレンズ11の表面に凹凸構造11Aを有しており、この凹凸構造11Aが画素位置に応じて異なる所定の凹凸スケールを有している。
【0055】
但し、本変形例では、上記凹凸スケールの変化に加え、オンチップレンズ11の位置を画素位置に応じてシフトさせた構造となっている。具体的には、中央画素Pc以外の画素におけるオンチップレンズ11を、その中心軸(h1〜hn)が中央画素Pcの側(内側)に近づくようにシフトさせる。このとき、そのシフト量、例えば受光部20(フォトダイオード202)の中心軸hfと、オンチップレンズ11の中心軸h1〜hnのそれぞれの間の距離(シフト量d1〜dn)は、中央画素Pcから端画素Peに向かって徐々に大きくなっている(d1<d2<…<dn)。またシフト量dnは、例えば0.2μmである。このようなレンズシフトによっても、瞳補正の効果を得ることができる。
【0056】
尚、ここでは中央画素Pcから端画素Peに向かって徐々にシフト量が大きくなるように画素の全域において、オンチップレンズ11をシフトさせる場合について説明したが、必ずしも全てのレンズをシフトさせる必要はなく、例えば端画素Peのみシフトさせるようにしてもよい。あるいは、端部側に配置された選択的な画素においてシフトさせるような構成であってもよい。
【0057】
このように、オンチップレンズ11に所定の凹凸構造11Aを設けたうえで、更にレンズ位置をシフトして瞳補正を行うようにしてもよい。これにより、上記実施の形態と同等かそれ以上の効果(瞳補正効果の更なる向上)が得られる。
【0058】
<変形例2>
図14は、変形例2に係るイメージセンサ(イメージセンサ1B)の断面構成を表したものである。イメージセンサ1Bは、上記実施の形態のイメージセンサ1と同様、裏面照射型の固体撮像素子であり、基板上に複数の画素Pが2次元配列した構造を有する。また、各画素Pは、光電変換素子(フォトダイオード202)を含む受光部20と、オンチップレンズ11を含む集光部10Bとを備えている。このような構成において、本変形例においても、上記実施の形態と同様、オンチップレンズ11の表面に凹凸構造11Aを有しており、この凹凸構造11Aが画素位置に応じて異なる所定の凹凸スケールを有している。
【0059】
但し、本変形例では、集光部10Bにおいて、オンチップレンズ11と受光部20との間に、インナーレンズ15を有している。具体的には、インナーレンズ15は、受光部20上の遮光膜14の開口領域に配設されており、このインナーレンズ15上にカラーフィルタ12を介してオンチップレンズ11が設けられている。このインナーレンズ15が積層された多重レンズ構造により、より反射率を低減して、集光効率を高めることができる。
【0060】
本変形例では、このようなインナーレンズ15の表面にも、オンチップレンズ11における凹凸構造11Aと同様の凹凸構造15Aが設けられている。即ち、インナーレンズ15の凹凸構造15Aにおいても、画素位置に応じた所定の凹凸スケールを有している。この場合、凹凸構造15Aの凹凸スケールは、例えば上述したような設計手順を経て得られた凹凸スケールと同等のスケール(直上のオンチップレンズ11と同等の凹凸スケール)とすればよい。
【0061】
このように、集光部10Bが多重レンズ構造を有する場合に、オンチップレンズ11に所定の凹凸構造11Aを設けたうえで、更にインナーレンズ15にも同様の凹凸構造15Aを設けてもよい。これにより、上記実施の形態と同等かそれ以上の効果(反射率の更なる低減、および瞳補正効果の更なる向上)が得られる。
【0062】
<変形例3>
図15は、変形例3に係るイメージセンサ(イメージセンサ1C)の断面構成を表したものである。イメージセンサ1Cは、上記実施の形態のイメージセンサ1と同様、裏面照射型の固体撮像素子であり、基板上に複数の画素Pが2次元配列した構造を有する。また、各画素Pは、光電変換素子(フォトダイオード202)を含む受光部20と、オンチップレンズ11を含む集光部10Cとを備えている。集光部10Cは、オンチップレンズ11と受光部20との間に、カラーフィルタ12、反射防止膜16および遮光膜14を有している。このような構成において、本変形例においても、上記実施の形態と同様、オンチップレンズ11の表面に凹凸構造11Aを有しており、この凹凸構造11Aが画素位置に応じて異なる所定の凹凸スケールを有している。
【0063】
但し、本変形例では、集光部10Cにおいて、反射防止膜16の表面にも、オンチップレンズ11における凹凸構造11Aと同様の凹凸構造16Aが設けられている。即ち、反射防止膜16の凹凸構造16Aにおいても、画素位置に応じた所定の凹凸スケールを有している。この場合、凹凸構造16Aにおける凹凸スケールは、例えば上述したような設計手順を経て得られた凹凸スケールと同等のスケール(直上のオンチップレンズ11と同等の凹凸スケール)とすればよい。
【0064】
このように、集光部10Cにおいて、オンチップレンズ11に所定の凹凸構造11Aを設けたうえで、更に反射防止膜16にも同様の凹凸構造16Aを設けてもよい。これにより、上記実施の形態と同等かそれ以上の効果(反射率の更なる低減、および瞳補正効果の更なる向上)が得られる。
【0065】
<変形例4>
図16は、変形例4に係るイメージセンサにおける受光部(受光部20A)の断面構成を表したものである。上記実施の形態等では、裏面照射型のイメージセンサを例に挙げたが、本発明は、以下に説明するような表面照射型のイメージセンサにも適用可能である。即ち、表面照射型のイメージセンサでは、受光部20Aにおいて、画素部100と周辺回路部200とが、同一基板201上に集積された構造を有するが、基板201上に、フォトダイオード214が埋設されたシリコン層213が設けられており、このフォトダイオード214の上層(光入射側)に、トランジスタや金属配線を含む配線層215が設けられている。尚、この受光部20A上に、上記実施の形態等で説明した集光部10が形成される。
【0066】
このように、裏面照射型のイメージセンサに限らず、表面照射型のイメージセンサにも適用可能であり、表面照射型の場合であっても、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0067】
[適用例]
以下、上記実施の形態および変形例等において説明したイメージセンサの適用例(適用例1〜4)について説明する。上記実施の形態等におけるイメージセンサはいずれも、様々な分野における電子機器に適用可能である。ここでは、その一例として、撮像装置(カメラ)、内視鏡カメラ、ビジョンチップ(人工網膜)および生体センサについて説明する。また、上述のイメージセンサを代表して上記実施の形態において説明したイメージセンサ1を例に挙げる。
【0068】
<適用例1>
図17は、適用例1に係る撮像装置(撮像装置2)の全体構成を表す機能ブロック図である。撮像装置2は、例えばデジタルスチルカメラまたはデジタルビデオカメラであり、光学系21と、シャッタ装置22と、イメージセンサ1と、駆動回路24と、信号処理回路23と、制御部25とを備えている。
【0069】
光学系21は、被写体からの像光(入射光)をイメージセンサ1の撮像面上に結像させる1または複数の撮像レンズを含むものである。シャッタ装置22は、イメージセンサ1への光照射期間(露光期間)および遮光期間を制御するものである。駆動回路24は、シャッタ装置22の開閉駆動を行うと共に、イメージセンサ1における露光動作および信号読み出し動作を駆動するものである。信号処理回路23は、イメージセンサ1からの出力信号に対して、所定の信号処理、例えばデモザイク処理やホワイトバランス調整処理等の各種補正処理を施すものである。制御部25は、例えばマイクロコンピュータから構成され、駆動回路24におけるシャッタ駆動動作およびイメージセンサ駆動動作を制御すると共に、信号処理回路23における信号処理動作を制御するものである。
【0070】
この撮像装置2では、入射光が、光学系21、シャッタ装置22を介してイメージセンサ1において受光されると、イメージセンサ1では、その受光量に基づく信号電荷が蓄積される。駆動回路24により、イメージセンサ1に蓄積された信号電荷が読み出しがなされ、読み出された電気信号は信号処理回路23へ出力される。イメージセンサ1から出力された出力信号は、信号処理部23において所定の信号処理が施され、映像信号Doutとして外部(モニタ等)へ出力されるが、あるいは、図示しないメモリ等の記憶部(記憶媒体)に保持される。
【0071】
<適用例2>
図18は、適用例2に係る内視鏡カメラ(カプセル型内視鏡カメラ3A)の全体構成を表す機能ブロック図である。カプセル型内視鏡カメラ3Aは、光学系31と、シャッタ装置32と、イメージセンサ1と、駆動回路34と、信号処理回路33と、データ送信部35と、駆動用バッテリー36と、姿勢(方向、角度)感知用のジャイロ回路37とを備えている。これらのうち、光学系31、シャッタ装置32、駆動回路34および信号処理回路33は、上記撮像措置2において説明した光学系21、シャッタ装置22、駆動回路24および信号処理回路23と同様の機能を有している。但し、光学系31は、3次元空間における複数の方位(例えば全方位)での撮影が可能となっていることが望ましく、1つまたは複数のレンズにより構成されている。但し、本例では、信号処理回路33における信号処理後の映像信号D1およびジャイロ回路37から出力された姿勢感知信号D2は、データ送信部35を通じて無線通信により外部の機器へ送信されるようになっている。
【0072】
尚、上記実施の形態におけるイメージセンサを適用可能な内視鏡カメラとしては、上記のようなカプセル型のものに限らず、例えば図19に示したような挿入型の内視鏡カメラ(挿入型内視鏡カメラ3B)であってもよい。挿入型内視鏡カメラ3Bは、上記カプセル型内視鏡カメラ3Aにおける一部の構成と同様、光学系31、シャッタ装置32、イメージセンサ1、駆動回路34、信号処理回路33およびデータ送信部35を備えている。但し、この挿入型内視鏡カメラ3Bは、更に、装置内部に格納可能なアーム38aと、このアーム38aを駆動する駆動部38とが付設されている。このような挿入型内視鏡カメラ3Bは、駆動部38へアーム制御信号CTLを伝送するための配線39Aと、撮影画像に基づく映像信号Doutを伝送するための配線39Bとを有するケーブル39に接続されている。
【0073】
<適用例3>
図20は、適用例3に係るビジョンチップ(ビジョンチップ4)の全体構成を表す機能ブロック図である。ビジョンチップ4は、眼の眼球E1の奥側の壁(視覚神経を有する網膜E2)の一部に、埋め込まれて使用される人口網膜である。このビジョンチップ4は、例えば網膜E2における神経節細胞C1、水平細胞C2および視細胞C3のうちのいずれかの一部に埋設されており、例えばイメージセンサ1と、信号処理回路41と、刺激電極部42とを備えている。これにより、眼への入射光に基づく電気信号をイメージセンサ1において取得し、その電気信号を信号処理回路41において処理することにより、刺激電極部42へ所定の制御信号を供給する。刺激電極部42は、入力された制御信号に応じて視覚神経に刺激(電気信号)を与える機能を有するものである。
【0074】
<適用例4>
図21は、適用例4に係る生体センサ(生体センサ5)の全体構成を表す機能ブロック図である。生体センサ5は、例えば指Aに装着可能な血糖値センサであり、半導体レーザ51と、イメージセンサ1と、信号処理回路52とを備えたものである。半導体レーザ51は、例えば赤外光(波長780nm以上)を出射するIR(infrared laser)レーザである。このような構成により、血中のグルコース量に応じたレーザ光の吸収具合をイメージセンサ1によりセンシングし、血糖値を測定するようになっている。
【0075】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、オンチップレンズ11の表面に凹凸構造11Aを設けた構成を例に挙げて説明したが、必ずしもオンチップレンズ11が凹凸構造11Aを有している必要はなく、集光部におけるいずれかの光学機能層が、凹凸構造を有していればよい。例えば、受光部とオンチップレンズとの間に設けられた反射防止膜のみが凹凸構造を有していてもよいし、上記変形例2において説明したような多重レンズ構造を有する場合には、インナーレンズのみが凹凸構造を有していてもよい。あるいは逆に、オンチップレンズと受光部との間に更に他の光学機能層を備え、それらの光学機能層の表面にもオンチップレンズと同様の凹凸構造を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,1A〜1C…イメージセンサ、10…集光部、11…オンチップレンズ、11A,15A,16A…凹凸構造、12…カラーフィルタ、13,16…反射防止膜、14…遮光膜、15…インナーレンズ、2…撮像装置、3…内視鏡カメラ、4…ビジョンチップ、5…生体センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元配置されると共に、それぞれが、光電変換素子を含む受光部と入射光を前記受光部へ向けて集光する集光部とを有する複数の画素を備え、
前記複数の画素における各集光部は、その画素位置に応じた特定の凹凸構造を表面に有する1または複数の光学機能層を含む
撮像素子。
【請求項2】
前記複数の画素では、中央画素からの距離が大きくなるに従って、前記光学機能層における凹凸構造がより微細なスケールを有する
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記光学機能層を通過する光線の出射角度が前記複数の画素において略一定となっている
請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記凹凸構造のスケールは、前記受光部における受光波長よりも小さいものである
請求項2に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記集光部は、前記光学機能層としてレンズを有し、
前記レンズの表面に前記凹凸構造が設けられている
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記レンズと前記受光部との間に更にインナーレンズを有する
請求項5に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記インナーレンズの表面に前記凹凸構造が設けられている
請求項6に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記レンズと前記受光部との間に反射防止膜を有する
請求項5に記載の撮像素子。
【請求項9】
前記反射防止膜の表面に前記凹凸構造が設けられている
請求項8に記載の撮像素子。
【請求項10】
前記複数の画素では、前記レンズが中央画素に向かってシフトして配設され、
前記レンズのシフト量は、中央画素からの距離が大きくなるに従って大きくなっている
請求項5に記載の撮像素子。
【請求項11】
2次元配置されると共に、それぞれが、光電変換素子を含む受光部と入射光を前記受光部へ向けて集光する集光部とを有する複数の画素を形成する際に、
前記複数の画素の各集光部において、その画素位置に応じた特定の凹凸構造を表面に有する1または複数の光学機能層を形成する
撮像素子の製造方法。
【請求項12】
前記光学機能層としてレンズを設け、
前記レンズの表面に前記凹凸構造を形成する
請求項11に記載の撮像素子の製造方法。
【請求項13】
前記光学機能層における前記凹凸構造を、ナノインプリント法を用いて形成する
請求項12に記載の撮像素子の製造方法。
【請求項14】
前記光学機能層における前記凹凸構造を、ナノボール溶液を用いて形成する
請求項12に記載の撮像素子の製造方法。
【請求項15】
前記レンズにおける実効的屈折率を、射出瞳距離および中央画素からの距離の関数として求め、
求めた実効的屈折率に基づいて前記凹凸構造のスケールを決定する
請求項12に記載の撮像素子の製造方法。
【請求項16】
表面に凹凸構造を有する1または複数の光学機能層を含む画素において前記凹凸構造のスケールを設計する際に、
前記光学機能層における実効的屈折率を、射出瞳距離および中央画素からの距離の関数として求め、
求めた実効的屈折率に基づいて前記凹凸構造のスケールを決定する
画素設計方法。
【請求項17】
2次元配置されると共に、それぞれが、光電変換素子を含む受光部と入射光を前記受光部へ向けて集光する集光部とを有する複数の画素を備え、
前記複数の画素における各集光部は、その画素位置に応じた特定の凹凸構造を表面に有する1または複数の光学機能層を含む
撮像素子を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−174885(P2012−174885A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35471(P2011−35471)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】