説明

撮像装置及び撮像システム

【課題】簡易な構成及び簡便な処理によりA/D変換器の非直線性誤差に起因するノイズや違和感を低減し得る撮像装置を提供する。
【解決手段】放射線又は光をアナログ電気信号に変換するための画素を複数備えた検出部101と、検出部101から出力されたアナログ電気信号を読み出す読出回路103と、読出回路103からのアナログ電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器104と、を含む信号処理部105と、検出部101及び信号処理部105に対して各種バイアスを与える電源部106と、を有する撮像装置であって、A/D変換器104のA/D変換特性に関する情報と、A/D変換器104への入力が予想される入力アナログ電気信号に関する情報とを基に、信号処理部105及び電源部106の少なくとも一方を制御する制御部109を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の診断や工業用の非破壊検査に用いて好適な撮像装置、放射線撮像装置及びシステムに関する。特に平面型の検出器からの信号を複数のA/D変換器でデジタル出力として読み出すことが可能な撮像装置、放射線撮像装置、及びそれらの撮像システムに関するものである。なお、本明細書では、X線、γ線などの電磁波やα線、β線も放射線に含めるものとして説明する。
【背景技術】
【0002】
近年、X線による医療画像診断や非破壊検査に用いる撮影装置として、半導体材料によって形成された平面型の検出器(Flat Panel Detector、以下FPDと略す)を用いた放射線撮像装置が実用化され始めている。このFPDを用いた放射線撮像装置は、患者などの被検体を透過したX線などの放射線をFPDでアナログ電気信号に変換し、そのアナログ電気信号をアナログデジタル変換してデジタル画像信号を取得するデジタル撮影が可能な装置である。この放射線撮像装置に用いられるFPDとしては、直接変換型と間接変換型に大別される。直接変換型の放射線撮像装置は、a−Seなどの放射線を直接電荷に変換可能な半導体材料を用いた変換素子を含む画素が、二次元に複数配列されたFPDを有する装置である。間接変換型の放射線撮像装置は、放射線を光に変換可能な蛍光体などの波長変換体と、光を電荷に変換可能なa−Siなどの半導体材料を用いた光電変換素子と、を有する変換素子を含む画素が、二次元に複数配列されたFPDを有する装置である。このようなFPDを有する放射線撮像装置は、例えば医療画像診断においては、一般撮影のような静止画撮影や、透視撮影のような動画撮影のデジタル撮像装置として用いられている。
【0003】
放射線撮像装置からは、被検体を透過した放射線に基づく撮影時の画像信号のほかに、オフセット補正用の画像信号や感度補正用の画像信号など、撮影時の画像信号の補正を行うための補正用の画像信号が取得される。このオフセット補正用の画像信号は、検出器に光又は放射線が照射されていない状態で取得された出力(暗出力)に基づくものである。また、感度補正用の画像信号は、検出器に光又は放射線が略一様に照射された状態で取得された出力(明出力)に基づくものである。このような補正用の画像信号を用いて撮影時の画像信号を補正処理することにより、補正後の画像信号は低ノイズで高精度なものとなる。
【0004】
また、この放射線撮像装置には、前述の検出器と、検出器を駆動するための駆動回路と、検出器からのアナログ電気信号を読み出すための読み出し回路と、そのアナログ電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とが含まれている。A/D変換器からは、デジタル化された撮影時の画像信号や補正用の画像信号がそれぞれ出力される。
【0005】
しかしながら、A/D変換器は、その入力されるアナログ電気信号と出力されるデジタル信号との間の変換特性(A/D変換特性)において、理想的な線形的な特性とならない非線形性誤差を生ずる場合がある。そのため、デジタル信号から作成された画像に、A/D変換器の非直線性誤差に起因するノイズや違和感が生じる場合がある。このようなノイズや違和感が生じる場合には、非直線性誤差を抑える、或いは、非直線性誤差による影響を補正することが望ましい。
【0006】
特許文献1には、A/D変換手段の出力信号をアドレスデータとして同期した基準信号をA/D変換手段の出力によって指定されたアドレスに記憶し、その基準信号に合わせてA/D変換手段の出力信号を補正するA/D変換回路が開示されている。これによって、A/D変換手段の非直線性誤差によって発生する画像違和感を低減でき、高画質化を実現できることが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、複数のAD変換回路と対として設けら、AD変換回路ごとの入出力特性に応じて設定されたLUTを有し、LUTに入力されるデジタル信号を所定の入出力信号特性に沿った値に変換して出力するAD変換装置が開示されている。これによって、AD変換回路ごとの特性差を補正し、それぞれが所定の入出力特性に沿った出力をすることが開示されている。
【特許文献1】特開2005−210480号公報
【特許文献2】特開2007−017650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2では、上述のようにA/D変換器からのデジタル出力に補正を行うことで、A/D変換器の非直線性誤差に起因するノイズや違和感を抑えている。しかしながら、特許文献1及び特許文献2のような補正を行う場合、デジタル出力を補正するために膨大な回路が必要となってしまうという問題点を有していた。また、予め各A/D変換器の非直線性を補正するための変換データを取得しておく工程や、補正処理の度にLUTにアクセスしてデジタル画像処理する工程が必要となり、結果的にシステムが複雑化する問題点を有していた。
【0009】
本発明は、上記問題点を鑑みて、簡易な構成及び簡便な処理によりA/D変換器の非直線性誤差に起因するノイズや違和感を低減し得る撮像装置又は撮像システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、上述の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0011】
本発明に係る撮像装置は、放射線又は光をアナログ電気信号に変換するための画素を複数備えた検出部と、前記検出部から出力されたアナログ電気信号を読み出す読出回路と、前記読出回路からのアナログ電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、を含む信号処理部と、前記検出部及び前記信号処理部に対して各種バイアスを与える電源部と、を有する撮像装置であって、A/D変換器のA/D変換特性に関する情報と、前記A/D変換器への入力が予想される入力アナログ電気信号に関する情報とを基に、前記信号処理部及び前記電源部の少なくとも一方を制御する制御部を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る撮像システムは、放射線をアナログ電気信号に変換するための画素を複数備えた検出部と、前記検出部から出力されたアナログ電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、放射線を発生するための放射線発生装置と、を含む撮像システムであって、前記A/D変換器のA/D変換特性に関する情報と、前記A/D変換器への入力が予想される入力アナログ電気信号に関する情報とを基に、前記放射線発生装置を制御する制御部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成及び簡便な処理によりA/D変換器の非直線性誤差に起因するノイズや違和感を低減し得る撮像装置又は撮像システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を好適に適用可能な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の概念的ブロック図である。図1の撮像装置100は、放射線又は光をアナログ電気信号に変換するための画素を複数備えた検出部101と、検出部101からアナログ電気信号を出力するために検出部101を駆動する駆動回路102と、を有する。また、撮像装置100は、検出部101から出力されたアナログ電気信号を読み出す読出回路103と、読出回路103からのアナログ電気信号113をデジタル信号114に変換するA/D変換器104と、を含む信号処理部105を有する。そして、撮像装置100は、検出部101及び信号処理部105に対して夫々に対応するバイアスを与える電源部106を有する。この電源部106は、検出部に対してセンサバイアスVsを供給するバイアス電源106a、読出回路103に第1の基準電圧Vref1を供給する第1の基準電源106b、A/D変換器104に第2の基準電圧Vref2を供給する第2の基準電源106cを含む。撮像装置100は更に、信号処理部105及び電源部106の少なくとも一方を制御するための制御部109を有する。
【0016】
この制御部109は、A/D変換器104のA/D変換特性に関する情報が記憶された記憶手段108と、その情報を基に信号処理部105及び電源部106の少なくとも一方を制御する制御回路107と、を有する。制御回路107は、バイアス電源106aに対してゲイン調整信号116を、第1の基準電源106bに対して基準電圧調整信号117を、第2の基準電源106cに対して基準電圧調整信号118を、それぞれ供給している。また、制御回路107は、読出回路103に対してゲイン調整信号115を供給している。そして、制御回路107は、駆動回路102に駆動制御信号119を供給し、駆動回路102はそれに基づいて検出部101に駆動信号111を供給している。
【0017】
図2は、本発明の撮像装置の概念的な等価回路図を含む撮像システムの概念図である。なお、図1を用いて説明した構成と同じものは同じ番号を付与してあり、詳細な説明は割愛する。検出部101は、行列状に複数配置された画素201を有する。図2にはm行n列にわたってm×n個の画素201が配置されている。画素201は、放射線又は光を電荷に変換する変換素子Sと、その電荷に応じた電気信号を出力するスイッチ素子Tと、を有する。光を電荷に変換する変換素子Sとしては、ガラス基板等の絶縁性基板上に配置され、アモルファスシリコンを主材料とするPIN型フォトダイオードやMIS型変換素子などの、光電変換素子が好適に用いられる。放射線を電荷に変換する変換素子としては、上述の光電変換素子の放射線入射側に放射線を光電変換素子が感知可能な波長帯域の光に変換する波長変換体を備えた間接型の変換素子や、放射線を直接電荷に変換する直接型の変換素子が好適に用いられる。スイッチ素子Tとしては、制御端子と2つの主端子を有するトランジスタが好適に用いられ、光電変換素子が絶縁性基板上の備えられる画素の場合には、薄膜トランジスタ(TFT)が好適に用いられる。変換素子Sの一方の電極はスイッチ素子Tの2つの主端子の一方に電気的に接続され、他方の電極は共通の配線を介してバイアス電源106aと電気的に接続される。行方向の複数の画素のスイッチ素子、例えばT11〜T1nは、それらの制御端子が1行目の駆動配線Gに共通に電気的に接続されており、駆動回路102からスイッチ素子の導通状態を制御する駆動信号が、駆動配線を介して行単位で与えられる。列方向の複数の画素のスイッチ素子、例えばT11〜Tm1は、それらの他方の主端子が1列目の信号配線Sigに電気的に接続されており、導通状態になっている間に、変換素子の電荷に応じた電気信号を、信号配線を介して読出回路103に出力する。列方向に複数配列された信号配線Sig〜Sigは、検出部101の複数の画素から出力された電気信号を並列に読出回路103に伝送する。
【0018】
読出回路103は、検出部101から並列に出力された電気信号を増幅する増幅回路部202と、増幅回路部202からの電気信号をサンプルしホールドするためのサンプルホールド回路部203と、を有する。増幅回路部202は、読み出された電気信号を増幅して出力する演算増幅器Aと、積分容量群Cfと、増幅率切り換えのためのスイッチ群SWと、積分容量をリセットするリセットスイッチRCと、を有する増幅回路を、各信号配線に対応して有している。演算増幅器Aの反転入力端子には出力された電気信号が入力され、正転入力端子には第1の基準電源106bから第1の基準電圧Vref1が入力され、出力端子から増幅された電気信号が出力される。また、複数の積分容量が並列に備えられた積分容量群Cfが演算増幅器Aの反転入力端子と出力端子の間に配置される。サンプルホールド回路部203は、サンプリングスイッチSHとサンプリング容量Chとによって構成されるサンプルホールド回路を、各増幅回路に対応して有している。また読出回路103は、サンプルホールド回路部203から並列に読み出された電気信号を順次出力して直列信号の画像信号として出力するマルチプレクサ204と、画像信号をインピーダンス変換して出力する出力バッファである可変増幅器205と、を有する。読出回路103から出力されたアナログ電気信号である画像信号は、A/D変換器104によってデジタル画像信号に変換されて出力される。A/D変換器104には、第2の基準電源106cから第2の基準電圧Vref2が供給される。
【0019】
図2の制御回路107は、図1で説明したゲイン調整信号115として、増幅回路のスイッチ群SWに対してゲイン調整信号115aを、可変増幅器205に対してゲイン調整信号115bを、それぞれ与えている。また、制御回路107は更に、X線源等の放射線発生装置206に対して、出射される放射線の線量を制御するための線量制御信号120を供給する。そして、制御回路107は、A/D変換器104のA/D変換特性に関する情報を記憶した記憶手段108の情報を基に、信号処理部105及び電源部106の少なくとも一方を制御する。
【0020】
記憶手段108に記憶されるA/D変換器104のA/D変換特性に関する情報には、以下に示すものが含まれる。まずは、A/D変換器の非直線性に関する情報が挙げられる。この非直線性とは、実際のアナログ入力とデジタル出力(A/D変換値)の関係が理想直線からどれだけ外れているかを示すもので、具体的には微分非直線性(DNL)或いは積分非直線性(INL)で示される。図3(a),(b)を用いてINL及びDNLについて説明する。INLとは、A/D変換器の入出力特性全体を見渡したときの理想の入出力直線に対する実際の入出力特性のずれを意味する。このINLは、A/D変換器があるデジタル出力Nを出すアナログ入力量の理想値VNIdealと出力Nを実際に出す為に必要なアナログ入力量Vとのずれ量を、デジタル出力の1LSB変化に必要な理想的なアナログ入力量VΔIdealで規格化した値である。つまり、INLは次の式1で示される。
INL=(V−VNIdeal)/VΔIdeal (式1)
ここで、デジタル出力Nを出すアナログ入力量の理想値VNIdealとは、1LSB変化の理想的なアナログ入力量VΔIdealをN倍したものに、A/D変換器が有するオフセットVoffsetを加えたものであり、次の式2で示される。
NIdeal=N×VΔIdeal+Voffset (式2)
DNLとは、入出力の各ステップを個別に見た場合の理想ステップとのずれを意味する。具体的にDNLは、デジタル出力Nをデジタル出力N+1に(1LSB分)変化させる為に必要なアナログ入力量の変化量VΔNと上述のVΔIdealとのずれ量をVΔIdealで規格化した値である。つまりDNLは、次の式3で示される。
DNL=(VΔN−VΔIdeal)/VΔIdeal (式3)
【0021】
次に、非直線性に起因するA/D変換器の出力誤差に関する情報が挙げられる。INLやDNLは、実際のアナログ入力量に対して出力されるべきデジタル出力と異なるデジタル出力に変換される入出力誤差を生じさせる原因となる。また、図3(c)に示すように、DNLが±1/2LSBを上回ると、出力すべきデジタル出力がA/D変換器から出力されないというミッシングコードという問題が発生する可能性がある。これらA/D変換器の入出力誤差の情報やミッシングコードの情報を含めて、A/D変換器の出力誤差に関する情報とする。
【0022】
また、記憶手段108は、A/D変換器への入力が予想される入力アナログ電気信号に関する情報を保持している。この情報は、オフセット補正用の画像信号を取得する際の入力アナログ電気信号の範囲や、感度補正用の画像信号を取得する際の入力アナログ電気信号の範囲や、実際の撮影時の画像信号を取得する際の入力アナログ電気信号の範囲に関する情報等が含まれる。特に、オフセット補正用や感度補正用等、補正用の画像信号を撮像装置が取得する際には、A/D変換器へ入力されるアナログ電気信号の幅は、ダイナミックレンジ全体に比べて非常に狭い範囲に限定されており、精度の高い予測が可能となる。また、補正用の画像信号は、狭い範囲に限定されているため、A/D変換器の入出力誤差やミッシングコードによって受ける影響が、撮影時の画像信号に比べて大きい。補正用の画像信号が大きな影響を受けると補正精度に大きな影響を与えることとなるため、補正用の画像信号が入出力誤差やミッシングコードの影響を避けることは補正精度に対して大きな意義を有する。これらの入力が予想される入力アナログ電気信号に関する情報は、出荷時又は設置時に、動画撮影動作や静止画撮影動作、又はそれらにおける各補正画像取得動作に対応して、予め取得及び記憶されていることが好ましい。ただし、本発明はそれに限定されるものではなく、実際にA/D変換器に入力される直前のアナログ電気信号を監視して入力アナログ電気信号の範囲に関する情報をリアルタイムで取得し、それを基に制御を行っても良い。
【0023】
制御回路107は、記憶手段108に記憶された、A/D変換器104のA/D変換特性に関する情報を基に、信号処理部105及び電源部106の少なくとも一方を制御し得る。つまり、制御回路107と記憶手段108を含む制御部109は、A/D変換器104のA/D変換特性に関する情報を基に、信号処理部105及び電源部106の少なくとも一方を制御することができる。ここで、制御回路107は、A/D変換器の非直線性に関する情報及びA/D変換器の出力誤差に関する情報のうちの少なくとも一方と、A/D変換器への入力が予想される入力アナログ電気信号に関する情報と、を用いて制御を決定する。そして、制御回路107は、A/D変換特性に関する情報を基に、A/D変換器に入力されるアナログ電気信号がA/D変換器のA/D変換特性が好ましくない領域にあたらないように、信号処理部105及び電源部106の少なくとも一方を制御する。A/D変換器のA/D変換特性が好ましくない領域とは、A/D変換特性がミッシングコードを有する領域やA/D変換器の入出力誤差が所定値より大きい領域、例えば入出力誤差の標準偏差が3σより大きい領域、である。所定値は形態や構成にあわせて適宜設定し得る。具体的には、制御回路107は、信号処理部105が有する読出回路103に属する増幅回路部202や可変増幅器205の増幅率を決定し必要があれば変更する。例えば増幅回路部202の増幅率は、増幅率切り換えのためのスイッチ群SWによって積分容量群Cfの容量値を決定する。また、制御回路107は、電源部106が有する、バイアス電源106a、第1の基準電源106b、及び第2の基準電源106cのうちの少なくとも一つの変更を決定し、必要があれば変更する。バイアス電源106aから供給されるセンサバイアスVsが変更されれば、検出器の感度が変更される。第1の基準電源106bから供給される第1の基準電圧Vref1が変更されれば、増幅回路部202に入力されるアナログ電気信号に正又は負の直流成分が付加されることとなり、出力されるアナログ電気信号が変更される。この第1の基準電圧Vref1の決定及び変更は、演算増幅器単位で行っても良く、増幅回路部202内の複数の演算増幅器を複数の群に分割し群単位で行っても良く、増幅回路部202全体で行っても良い。また第2の基準電源106cから供給される第2の基準電圧Vref2が変更されれば、A/D変換器の参照電圧を変更することとなり、A/D変換器のA/D変換特性が好ましくない領域が変更される。本発明の制御部109は、画像信号となる入力アナログ信号を出力する画素のうち、A/D変換特性の好ましくない領域に含まれる入力アナログ信号を出力する画素の数を、制御により低減するものである。言い換えると、画像信号となる全ての入力アナログ信号のうちA/D変換特性が好ましくない領域にあたる入力アナログ信号の量が上記制御により低減されればよい。例えば、本発明の制御部109は、上述の制御を好適に選択して行うことにより、A/D変換器に入力されるアナログ電気信号の平均値がA/D変換器のA/D変換特性が好ましくない領域にあたらないようにする。ただし、本発明の制御部109は、上述の制御を好適に選択して行うことにより、A/D変換器に入力されるアナログ電気信号がA/D変換器のA/D変換特性が好ましくない領域にあたらないようにすることがより好ましい。ここで、バイアス電源106a又は読出回路103の増幅率の変更による撮像装置のゲインの変更、第1の基準電源106bの変更による直流成分の付加、第2の基準電源106cによるA/D変換器104のレベル遷移は、撮影条件などにより好適に選択され得る。上述の制御部109による制御は、読出回路103からの入力アナログ電気信号が、A/D変換器104のダイナミックレンジ内に収まるようになされることが望ましい。また、例えば上記制御が補正用の画像信号を取得する際になされた場合、他の補正用の画像信号を取得する際や実際の撮影時の画像信号を取得する際には、変更された項目をあわせて動作されることが望ましい。なお、バイアス電源106a、基準電源106b、及び基準電源106cには公知の可変電圧源が適宜用いられ、制御回路107には、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)、カスタムIC等が適宜用いられる。
【0024】
以下に、図面を用いて具体的な制御例を説明する。図4は、本実施形態における制御のフローチャートである。本例では、A/D変換器の出力誤差に関する情報としてミッシングコードの情報を、入力アナログ電気信号に関する情報としてオフセット補正用の画像信号を取得する際の入力アナログ電気信号の範囲に関する情報を用いる。そして、制御部109は、電源部106の第1の基準電源106bを制御して、増幅回路部202に与える第1の基準電圧Vref1の変更を決定する制御を行い得る。
【0025】
まず、図4(a)において、工場出荷時又は装置設置時において、静止画撮影や動画撮影等の各種動作毎に、オフセット補正用の画像信号を取得する際の入力アナログ電気信号の範囲を記憶手段108に記憶する。この際、増幅回路部202の増幅率、バイアス電源106aのセンサバイアスVs第1の基準電源106bの基準電圧値Vref1、第2の基準電源106cの基準電圧値Vref2を、デフォルト値として記憶手段108に記憶しておくことが望ましい。このデフォルト値を、実際の撮影時のデフォルト値として用いることができる。また、記憶手段108はA/D変換部104のミッシングコードの情報を記憶する。
【0026】
次に、図4(b)において、撮像装置100がオフセット補正用の画像信号を取得する動作を開始する際に以下の動作を行う。制御回路107は、記憶手段108に記憶された情報のうち、その後に行う撮影動作にあわせて、対応するミッシングコードの情報と入力アナログ電気信号の範囲に関する情報を参照する。そして、その入力アナログ電気信号の範囲に、A/D変換部のミッシングコードが存在するか否か判定する。入力アナログ電気信号の範囲内にミッシングコードが存在しないと判定された場合、制御部109は電源部106から出力される各電圧をデフォルト値とすることを決定する。そして、撮像装置100にオフセット補正用の画像信号の取得を行わせる。一方、入力アナログ電気信号の範囲内にミッシングコードが存在すると判定された場合には、入力アナログ電気信号の範囲がミッシングコードと重ならないようにするための直流成分を入力アナログ電気信号に与えることが必要となる。制御部109は、直流成分となる、第1の基準電源106bの電圧値のデフォルト値からの変更量を決定し、それに基づいて基準電圧調整信号117を第1の基準電源106bに与えて第1の基準電圧Vref1を変更する。そして、変更された第1の基準電圧Vref1が増幅回路部202に与えられた状態で、撮像装置100にオフセット補正用の画像信号の取得を行わせる。なお、上述の具体例において、A/D変換器の出力誤差に関する情報としてミッシングコードの情報を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。出力誤差に関する情報の変わりにA/D変換器の非直線性に関する情報を用いる場合には、制御回路107が非直線性に関する情報から出力誤差に関する情報を生成して制御に用いても良い。また、オフセット補正用の画像信号を取得する動作について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、感度補正用又は実際の撮影時の画像信号を取得する動作に用いても良い。ただし、補正用の画像信号を取得する際の入力アナログ電気信号の幅は実際の撮影時に比べて非常に狭い範囲に限定されているため、補正用の画像信号を取得する際に本発明を適用することがより望ましい。
【0027】
本実施形態によると、A/D変換器のA/D変換特性が好ましくない領域に入力されるアナログ電気信号に対応する画素の数が低減するように制御することが可能となる。更に、A/D変換器に入力されるアナログ電気信号がA/D変換器のA/D変換特性が好ましくない領域にあたらないように制御することが可能となる。それにより、A/D変換器がA/D変換特性の好ましくない領域を有していても、精度の高いA/D変換を、A/D変換後のデジタル信号を補正処理する方式に比べて簡便に行うことが可能となる。また、デジタル信号を補正するための回路に比べて、規模が小さく簡易な回路を用いて精度の高いA/D変換を行うことが可能となる。
【0028】
(第2の実施形態)
次に、図2、図3、図5を用いて、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態において説明した箇所は同じ番号を付与し詳細な説明は割愛する。図5は、本実施形態における制御のフローチャートである。
【0029】
A/D変換器の出力誤差に関する情報として、第1の実施形態ではミッシングコードの情報を用いたが、本実施形態では入出力誤差の情報を用いる点で相違する。
【0030】
また、入力アナログ電気信号に関する情報として、第1の実施形態では記憶手段108に記憶されたオフセット補正用の画像信号を取得する際の入力アナログ電気信号の範囲に関する情報を用いた。一方、本実施形態では、取得されてA/D変換された感度補正用の画像信号を平均化した平均値を、記憶手段108に予め記憶させずに直接用いており、その点で第1の実施形態と相違する。
【0031】
更に、第1の実施形態では制御部109が第1の基準電源106bの電圧値を決定・変更する制御を行ったが、本実施形態では、放射線発生装置206から出射される放射線量を決定・調節する制御を行う点で相違する。それ以外は第1の実施形態と同様の構成であり、同様の処理を行う。
【0032】
まず、図5(a)において、工場出荷時において、記憶手段108はA/D変換部104の入出力誤差の情報として、入出力誤差が所定値より大きなデジタル出力値を記憶する。例えば、DNLが±1/2LSBを上回るデジタル出力値や、INLの標準偏差が3σより大きいデジタル出力値である。これら入出力誤差の情報は、適宜設定され得るものであり、入出力誤差が所定値より大きい領域に相当するものである。
【0033】
次に、図5(b)において、制御部109は、撮像装置100及び放射線発生装置206を動作させてA/D変換された感度補正用の画像信号の平均値を取得する。この際、記憶手段108は放射線発生装置206の動作条件を記憶しておくことが望ましい。制御回路107は、記憶手段108に記憶されたA/D変換部104の入出力誤差の情報を参照して、その平均値が入出力誤差の大きなデジタル出力値の近傍に存在するか否か判定する。近傍の範囲は適宜設定され得るものである。平均値が入出力誤差の大きなデジタル出力値の近傍に存在しないと判定された場合、取得された感度補正用の画像信号を正式な補正用の画像信号として記憶手段108に記憶する。一方、平均値が入出力誤差の大きなデジタル出力値の近傍に存在すると判定された場合には、A/D変換特性の好ましくない領域に含まれる入力アナログ信号を出力する画素の数を、制御により低減することが必要となる。制御部109は、放射線発生装置206から発生される放射線量を決定し、それに基づいて線量制御信号120を放射線発生装置206に与えて放射線量を変更する。そして、変更された放射線量で再度感度補正用の画像信号の取得し、その平均値が入出力誤差の大きなデジタル出力値の近傍に存在しないと判定されるまで繰り返す。
【0034】
なお、本実施形態では入出力誤差の情報を用いたが、本発明はそれに限定されるものではなく、他のA/D変換特性に関する情報を適宜用いることができる。また、本実施形態では感度補正用の画像信号について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、オフセット補正用の画像信号や実際の撮影時の画像信号に適宜適用され得る。ただし、オフセット補正用の画像信号の場合には、制御部109は放射線発生装置202を制御するのではなく、信号処理部105や電源部106を制御することとなる。また、実撮影時の画像信号の場合には、制御部109は信号処理部105、電源部106、及び放射線発生装置202のうちの少なくとも一つを制御すればよい。また、本実施形態では、記憶手段108に感度補正用の画像信号を記憶する形態としたが、本発明はそれに限定されるものではなく、別途記憶手段を設けてもよい。
【0035】
本実施形態によると、A/D変換器のA/D変換特性が好ましくない領域に入力されるアナログ電気信号に対応する画素の数が低減するように制御することが可能となる。それにより、A/D変換器がA/D変換特性の好ましくない領域を有していても、精度の高いA/D変換を、A/D変換後のデジタル信号を補正処理する方式に比べて簡便に行うことが可能となる。また、デジタル信号を補正するための回路に比べて、規模が小さく簡易な回路を用いて精度の高いA/D変換を行うことが可能となる。
【0036】
(応用例)
次に、図6に本発明を用いた移動可能な放射線撮像システムへの応用例を示す。図6(a)は、透視撮影と静止画撮影が可能な可搬型の放射線撮像装置を用いた放射線撮像システムの概念図である。図6(a)において、撮像装置100をC型アーム601から取り外し、C型アーム601に備えられた放射線発生装置206を用いて撮影を行う例を示している。ここで、C型アーム601は放射線発生装置206及び撮像装置100を保持するものである。602は撮像装置100で得られた画像信号の表示が可能な表示部、603は被検体604を載せるための寝台である。また、605は放射線発生装置206、撮像装置100、及びC型アーム601を移動可能にする台車、606はそれらを制御可能な構成を有する移動型の制御装置である。制御装置606は、撮像装置100で得られた画像信号を画像処理して表示装置602等に伝送することも可能である。また、制御装置606による画像処理により生成された画像データは、電話回線等の伝送手段により遠隔地へ転送することができる。それにより、ドクタールームなどの別の場所でディスプレイに表示もしくは光ディスク等の保存手段に保存することができ、遠隔地の医師が診断することも可能である。また、伝送された画像データをフィルムプロセッサによりフィルムとして記録することもできる。なお、本発明の制御部109は、その構成の一部又は全部が撮像装置100内に備えられていてもよく、また制御装置606内に備えられていてもよい。
【0037】
図6(b)は、透視撮影と静止画撮影が可能な可搬型の放射線撮像装置を用いた放射線撮像システムである。図6(b)では、撮像装置100をC型アーム601から取り外し、C型アーム601に備えられた放射線発生装置206とは別の放射線発生装置607を用いて撮影を行う例を示している。なお、本発明の制御部109は、放射線発生装置206だけでなく、別の放射線発生装置607も制御可能であることは言うまでもない。
【0038】
なお、本発明の実施形態は、例えばコンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、上記のプログラムも本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。また、実施形態1、実施形態2から容易に想像可能な組み合わせによる発明も本発明の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る撮像装置の概念的ブロック図である。
【図2】本発明の撮像装置の概念的な等価回路図を含む撮像システムの概念図である。
【図3】A/D変換器のINL及びDNLについて説明するための入出力特性である。
【図4】本発明の第1の実施形態における制御のフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態における制御のフローチャートである。
【図6】本発明の撮像装置を用いた放射線撮像システムの概念図である。
【符号の説明】
【0040】
100 撮像装置
101 検出部
102 駆動回路
103 読出回路
104 A/D変換器
105 信号処理部
106 電源部
107 制御回路
108 記憶手段
109 制御部
201 画素
202 増幅回路部
203 サンプルホールド回路部
204 マルチプレクサ
205 可変増幅器
206 放射線発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線又は光をアナログ電気信号に変換するための画素を複数備えた検出部と、
前記検出部から出力されたアナログ電気信号を読み出す読出回路と、前記読出回路からのアナログ電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、を含む信号処理部と、
前記検出部及び前記信号処理部に対して夫々に対応するバイアスを与える電源部と、
を有する撮像装置であって、
前記A/D変換器のA/D変換特性に関する情報と、前記A/D変換器への入力が予想される入力アナログ電気信号に関する情報とを基に、前記信号処理部及び前記電源部の少なくとも一方を制御する制御部を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記A/D変換器のA/D変換特性がミッシングコードを有する領域又は前記A/D変換器の入出力誤差が所定値より大きい領域に入力される前記アナログ電気信号に対応する画素の数が低減するように、前記信号処理部及び前記電源部の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記A/D変換器に入力される前記アナログ電気信号が、前記A/D変換器のA/D変換特性がミッシングコードを有する領域又は前記A/D変換器の入出力誤差が所定値より大きい領域にあたらないように、前記信号処理部及び前記電源部の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記A/D変換特性に関する情報として前記A/D変換器の非直線性に関する情報及び前記A/D変換器の出力誤差に関する情報のうちの少なくとも一方の情報が記憶された記憶手段と、前記少なくとも一方の情報と前記入力アナログ電気信号に関する情報とを基に前記信号処理部及び前記電源部の少なくとも一方を制御する制御回路と、を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記撮像装置が補正用の画像信号を取得する際に、前記入力アナログ電気信号に関する情報として補正用の画像信号を取得する際の入力アナログ電気信号の範囲に関する情報を基に、前記信号処理部及び前記電源部の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記読出回路は、前記検出部から出力されたアナログ電気信号を増幅する増幅回路部を含み、
前記電源部は、前記検出部に対してバイアスを供給するバイアス電源と、前記増幅回路部に第1の基準電圧を供給する第1の基準電源と、前記A/D変換部に第2の基準電圧を供給する第2の基準電源と、を含み、
前記制御部は、前記バイアス、前記第1の基準電圧、及び前記第2の基準電圧の少なくとも1つの変更を決定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記読出回路の増幅率の変更を決定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の撮像装置と、
放射線を発生するための放射線発生装置と、
を含む撮像システム。
【請求項9】
放射線をアナログ電気信号に変換するための画素を複数備えた検出部と、
前記検出部から出力されたアナログ電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、
放射線を発生するための放射線発生装置と、
を含む撮像システムであって、
前記A/D変換器のA/D変換特性に関する情報と、前記A/D変換器への入力が予想される入力アナログ電気信号に関する情報とを基に、前記放射線発生装置を制御する制御部を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記A/D変換器のA/D変換特性がミッシングコードを有する領域又は前記A/D変換器の入出力誤差が所定値より大きい領域に入力される前記アナログ電気信号に対応する画素の数が低減するように、前記放射線発生装置から出射される放射線量を決定することを特徴とする請求項9に記載の撮像システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記A/D変換器に入力される前記アナログ電気信号が、前記A/D変換器のA/D変換特性がミッシングコードを有する領域又は前記A/D変換器の入出力誤差が所定値より大きい領域にあたらないように、前記放射線発生装置から出射される放射線量を決定することを特徴とする請求項9に記載の撮像システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記A/D変換特性に関する情報として前記A/D変換器の非直線性に関する情報及び前記A/D変換器の出力誤差に関する情報のうちの少なくとも一方の情報を記憶する記憶手段と、前記少なくとも一方の情報と前記入力アナログ電気信号に関する情報とを基に前記放射線発生装置から出射される放射線量を決定する制御回路と、を有することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の撮像システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記撮像システムが補正用の画像信号を取得する際に、前記入力アナログ電気信号に関する情報として補正用の画像信号を取得する際の入力アナログ電気信号の範囲に関する情報を基に、前記放射線発生装置から出射される放射線量を決定することを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−141715(P2010−141715A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317274(P2008−317274)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】