説明

撮像装置及び電子ズーム方法

【課題】ズーム倍率に応じて読み出しモードを切り替える際に生じる画像の乱れを防止する。
【解決手段】撮像装置100は、撮像信号を出力するイメージセンサ110と、撮像信号に対する信号処理を行って画像フレーム170を出力する撮像信号処理部120と、画像フレーム170をフレームバッファ131に一時記憶し、フレームバッファ131から出力された画像フレームに対して動画像符号化を行う画像符号化部130と、ズーム倍率を変更可能な操作部160とを備える。撮像信号処理部120は、ズーム倍率の変更に伴う撮像信号処理部120の動作モードの切り替えが開始された時点から正常な画像フレームが出力可能となるまでの移行期間中に移行状態信号171を有効とする。画像符号化部130は、移行状態信号171が有効となっている間では、移行期間直前にフレームバッファ131に記憶された画像フレームを用いて、動画像符号化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ズーム機能を有する撮像装置及び電子ズーム方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により動画像の撮像を行うデジタルカメラが普及している。デジタルカメラでは、撮像素子から出力された撮像信号は、デジタル信号処理、画像符号化処理を経て、フラッシュメモリ等の記録装置に記録される。
【0003】
このようなデジタルカメラでは、従来の光学ズーム機能に加え、いわゆる電子ズーム機能を有するものが登場している。電子ズームでは、撮像素子により撮像された画像の一部を切り出し、切り出した画像を拡大又は縮小することによってズーム倍率に応じた大きさの被写体画像を得るのが一般的である。
【0004】
さらに、デジタルカメラでは、画像の切り出し処理や拡大又は縮小処理のような電子ズームに必要な処理負荷を軽減するために、例えば撮像素子から撮像信号を読み出すときに、同一のフィルタ色の複数画素の信号電荷を加算して読み出す「画素加算読出し」や、撮像素子から画素間引きをして信号電荷を読み出す「間引き読み出し」が行われている。
【0005】
さらに、画素加算読出しや間引き読み出し等の画素の輝度値の読み出し方法(読み出しモード)をズーム倍率に応じて動的に変更することにより、信号処理負荷をさらに削減する撮像装置等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−17090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ズーム倍率に応じて画素の輝度値の読み出しモードを切り替えると、正常な画像の出力が一時的に停止する。この期間では、画像フレームに乱れが生じ、正確な画像の表示や符号化が困難になる。これは、上記特許文献1に記載の撮像装置等においても同様である。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、動画像撮影において、ズーム倍率に応じて読み出しモードを切り替える際に生じる画像の乱れを防止することにより、スムーズな電子ズームを実現することができる撮像装置及び電子ズーム方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る撮像装置は、
撮像素子の光電変換により得られた撮像信号をズーム倍率に応じた読み出しモードで出力するイメージセンサと、
前記ズーム倍率が変更された場合の前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えに伴って動作モードを切り換えながら、前記イメージセンサから出力された撮像信号に対する信号処理を行って画像フレームを出力する撮像信号処理部と、
前記撮像信号処理部から出力された画像フレームをフレームバッファに一時記憶し、前記フレームバッファから出力された画像フレームに対して動画像符号化を行う画像符号化部と、
操作入力により、前記ズーム倍率を変更可能な操作部と、
を備え、
前記撮像信号処理部は、
前記撮像信号処理部の動作モードの切り替えが開始された時点から正常な画像フレームが出力可能となるまでの移行期間中に移行状態信号を有効とし、
前記画像符号化部は、
前記移行状態信号が有効となっている間では、前記移行期間直前にフレームバッファに記憶された画像フレームを用いて、動画像符号化を行う、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の観点に係る電子ズーム方法は、
撮像素子の光電変換により得られた撮像信号をズーム倍率に応じた読み出しモードで出力するイメージセンサと、
前記ズーム倍率が変更された場合の前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えに伴って動作モードを切り換えながら前記イメージセンサから出力された撮像信号に対する信号処理を行って画像フレームを出力する撮像信号処理部と、
前記撮像信号処理部から出力された画像フレームをフレームバッファに一時記憶し、前記フレームバッファから出力された画像フレームに対して動画像符号化を行う画像符号化部と、
操作入力により、前記ズーム倍率を変更可能な操作部と、
を備える撮像装置の電子ズーム方法であって、
前記撮像信号処理部において、
前記撮像信号処理部の動作モードの切り替えが開始された時点から正常な画像フレームが出力可能となるまでの移行期間中に移行状態信号を有効とする工程と、
前記画像符号化部において、
前記移行状態信号が有効となっている間では、前記移行期間直前にフレームバッファに記憶された画像フレームを用いて、動画像符号化を行う工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ズーム倍率の変更に伴う撮像信号処理部の動作モードの切り替えにより、画像フレームが不安定となっている間は、切り替わる直前の画像フレームを用いて動画像符号化を行うので、画像の乱れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】撮影継続中にズーム倍率を変更していった場合の読み出しモードの切り替えの一例を示すグラフである。
【図3】図3(A)乃至図3(G)は、撮像装置を構成する各構成要素の間でやりとりされる信号のタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5(A)乃至図5(D)は、第2の実施形態に係る移行期間を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図7(A)乃至図7(D)は、第3の実施形態に係る移行期間を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図9】図9(A)乃至図9(D)は、第4の実施形態に係る移行期間を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0015】
図1には、本実施形態に係る撮像装置100の構成が示されている。図1に示すように、撮像装置100は、イメージセンサ110、撮像信号処理部120、画像符号化部130、記録部140、表示部150及び操作部160を備える。
【0016】
イメージセンサ110は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)又はCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子を有する。イメージセンサ110の撮像素子の各画素は、カラーフィルタを通して撮像対象(被写体)からの光を受光して光電変換する。撮像素子は、各画素の電荷の集合を撮像信号として出力する。イメージセンサ110は、撮像素子の光電変換により得られた撮像信号を、後述するようにズーム倍率に応じた読み出しモードで出力する。
【0017】
カラーフィルタは、R、G、Bの3色で構成される原色ベイヤ配列や、C、M、Y、Gの4色で構成される補色ベイヤ配列など、m×n画素(m,nは整数)を単位配列とする周期配列のカラーパターンで並べられている。このカラーフィルタにより、撮像信号に基づく画像は、カラー画像となる。以下では、この撮像信号に基づく画像データを、以下ではRAW画像と呼ぶ。
【0018】
イメージセンサ110は、複数の読み出しモードを設定可能である。より具体的には、イメージセンサ110では、撮像素子から電荷(輝度値)を読み出す際には、1画素ずつそのまま読み出すモード(画素加算なしモード)と、近隣の同色の複数の画素の輝度値を加算して読み出すモード(画素加算読み出しモード)とのいずれかが設定される。
【0019】
画素加算なしモードが設定された場合には、イメージセンサ110は、撮像素子のうち、一部の領域から画素の輝度値を出力する。これにより、イメージセンサ110から出力されるRAW画像のデータ数を減らすことができる。一方、画素加算読み出しモードが設定された場合には、イメージセンサ110は、近隣領域の同色の複数の画素の輝度値を加算して1つの画素の輝度値として出力する。例えば2×2画素加算だと、4画素ずつ加算されるので、イメージセンサ110から出力されるデータ数を1/4に減らすことができる。
【0020】
本実施形態では、イメージセンサ110において、画素加算読み出しモード(2×2画素加算)と、画素加算なしモードとを設定可能であるものとする。しかしながら、本発明はこれには限られない。例えば、イメージセンサ110では、読み出しモードとして、他に、画素加算読み出しモード(3×3画素加算)などの画素加算する画素数の異なるモードや、画素を間引いて読み出すモード(間引き読み出しモード)などのその他の読み出しモードがサポートされていてもよい。
【0021】
撮像信号処理部120は、ズーム倍率が変更された場合のイメージセンサ110の読み出しモードの切り替えに伴って動作モードを切り換えながら、イメージセンサ110から出力された撮像信号(RAW画像)に対して、信号処理(デジタル画像処理)を行って、輝度Y成分、色差U成分及びV成分からなるカラーの撮像信号であるYUV信号に変換して出力する。この出力は、1フレーム期間に出力されるYUV画像の撮像信号が1枚の画像を構成している。この画像を画像フレーム170と呼ぶ。
【0022】
画像符号化部130は、H.264/AVC(Advanced Video Coding)などに準拠した動画像符号化処理を行って撮像信号処理部120から出力された画像フレーム170を符号化し、動画像ストリームとして出力する。
【0023】
記録部140は、フラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)などの記録デバイスである。記録部140には、画像符号化部130から出力された画像フレームが記録される。
【0024】
表示部150は、画像を表示する。表示部150には、表示データ読み出し部134から出力された画像フレームに基づく画像が表示される。
【0025】
操作部160は、録画の開始・終了タイミングや、ズーム倍率等をユーザが指定するためのユーザインターフェイスである。例えば、操作部160は、操作入力により、画像フレームに基づく画像のズーム倍率を変更可能である。操作部160は、ユーザの操作内容を示す操作信号を、撮像信号処理部120に出力する。
【0026】
続いて、撮像信号処理部120の詳細な構成について説明する。
【0027】
撮像信号処理部120は、RAW−YUV変換部121を備える。RAW−YUV変換部121は、制御信号が入力されるタイミングで、イメージセンサ110から出力されたRAW画像を、YUV画像へ変換する。さらに、RAW−YUV変換部121は、ズーム倍率に応じて、YUV画像の一部領域を拡大した画像データを、画像フレーム170として出力する。
【0028】
撮像信号処理部120は、撮像信号処理クロック生成部122、撮像信号処理タイミングジェネレータ123、撮像信号処理制御部124及び移行状態信号生成部125をさらに備える。
【0029】
撮像信号処理クロック生成部122は、発振子とPLL(Phase-Locked loop)とを備える。撮像信号処理クロック生成部122は、動作クロック信号を生成し、撮像信号処理タイミングジェネレータ123に出力する。
【0030】
撮像信号処理タイミングジェネレータ123は、撮像信号処理クロック生成部122から出力された動作クロック信号に同期するサンプリングパルス信号を生成して、撮像信号処理制御部124に出力する。このサンプリングパルス信号は、イメージセンサ110から画素を読み出すタイミングを指定するための信号である。サンプリングパルス信号には、垂直同期信号と水平同期信号とが含まれる。
【0031】
撮像信号処理制御部124は、操作部160から出力されるズーム倍率等の操作信号に従って、動作モードを決定する。撮像信号処理制御部124は、RAW−YUV変換部121と、イメージセンサ110と、移行状態信号生成部125とにそれぞれ、決定された動作モードの内容を含む制御信号を出力する。RAW−YUV変換部121及びイメージセンサ110では、この制御信号に基づいて読み出しモードや画像の拡大倍率が設定される。撮像信号処理制御部124は、動作モードを切り替えるため、必要に応じてリセット・シーケンスを行う。
【0032】
移行状態信号生成部125は、撮像信号処理制御部122から出力される制御信号に基づいて、操作部160によるズーム倍率の変更に伴う撮像信号処理部120の動作モードの切り替えが開始されると、撮像信号処理部120が移行期間であることを示す移行状態信号171を信号レベルを有効なレベル(例えばハイレベル)として、画像符号化部130の移行状態制御部138に出力する。移行状態信号171は、1ビットの信号である。撮像信号処理部120から正常な画像フレームの出力が可能となり、移行期間が完了すると、移行状態信号生成部125は、移行状態信号171の信号レベルを無効なレベル(例えばローレベル)に変更する。
【0033】
続いて、画像符号化部130の詳細な構成について説明する。
【0034】
画像符号化部130は、フレームバッファ131、ストリーム生成部132、参照フレームバッファ133及び表示データ読み出し部134を備える。
【0035】
フレームバッファ131は、RAW−YUV変換部121から出力された画像フレーム170を一時記憶する。フレームバッファ131は、ストリーム生成部132に画像フレーム172を出力し、表示データ読み出し部134に画像フレーム173を出力する。
【0036】
なお、フレームバッファ131からストリーム生成部132に画像フレーム172を出力する際には、動画像符号化に適した順序に入れ替える処理(リオーダリング処理)が行われる。一方、フレームバッファ131から表示データ読み出し部134に画像フレーム173を出力する際には、リオーダリング処理は行われない。
【0037】
ストリーム生成部132は、フレームバッファ131から連続して出力される画像フレーム172を前述の動画像符号化方式を用いて符号化し、符号化された動画像ストリームを記録部140に出力する。
【0038】
参照フレームバッファ133は、動画像符号化の画面間予測符号化に必要な参照フレームを、ストリーム生成部132から受け取り、一時的に記録する。さらに、参照フレームバッファ133は、記録された参照フレームを、必要に応じてストリーム生成部132に出力する。
【0039】
表示データ読み出し部134は、フレームバッファ131から出力された画像フレーム173に撮影情報の字幕等を重畳するなど、スルー画像表示に必要な画像処理を行って表示データを生成し、生成された表示データを表示部150に出力する。
【0040】
画像符号化部130は、画像符号化クロック生成部135、画像符号化タイミングジェネレータ136、画像符号化制御部137及び移行状態制御部138をさらに備える。
【0041】
画像符号化クロック生成部135は、動作クロック信号を生成して画像符号化タイミングジェネレータ136に出力する。
【0042】
画像符号化タイミングジェネレータ136は、画像符号化クロック生成部135から出力された動作クロック信号を入力する。画像符号化タイミングジェネレータ136は、入力された動作クロック信号に同期して、ストリーム生成部132が画像フレームを読み込むタイミングを示すサンプリングパルス信号(垂直同期信号及び水平同期信号)を生成して画像符号化制御部137に出力する。このサンプリングパルス信号は、画像符号化クロック生成部135から出力された動作クロック信号に同期している。
【0043】
画像符号化制御部137は、画像符号化タイミングジェネレータ136から出力された動作クロック信号に同期したタイミングで、ピクチャ符号化制御信号など、動画像符号化に必要な制御信号をストリーム生成部132に出力し、表示に必要な制御信号を表示データ読み出し部134に出力する。
【0044】
また、画像符号化制御部137は、画像フレーム170をフレームバッファ131に書き込むタイミングと、フレームバッファ131から画像フレーム172、173を読み出すタイミングとを指定するサンプリングパルス信号を、移行状態制御部138に出力する。
【0045】
移行状態制御部138は、後述する移行状態信号171に基づいて、画像フレーム170をフレームバッファ131に書き込むか否かを示す制御信号を生成してフレームバッファ131に出力する。移行状態制御部138は、移行状態信号171の信号レベルが無効なレベルとなっている間は、画像フレーム170を記憶し、画像フレーム172、173を出力するように、フレームバッファ131を制御する。一方、移行状態制御部138は、移行状態信号171の信号レベルが有効なレベルとなっている間は、移行期間直前にフレームバッファ131に記憶された画像フレームを用いて、ストリーム生成部132で動画像符号化が行なわれるように、フレームバッファ131を制御する。
【0046】
次に、本実施形態に係る撮像装置100における電子ズーム処理について説明する。
【0047】
電子ズーム処理は、イメージセンサ110における読み出しモードの変更と、RAW−YUV変換部121の画像スケーリング機能とによって実現される。
【0048】
イメージセンサ110の読み出しモードは、ズーム倍率によって切り替えられる。ズーム倍率が低い広角撮影時には、イメージセンサ110に画素加算読み出しモード(2×2画素加算)が設定されて、イメージセンサ110の撮像素子の全体から最大画角で画像が読み出される。一方、ズーム倍率が高い望遠撮影時には、イメージセンサ110に画素加算なしモードが設定され、画角が狭く、画素加算されていない精細な画像が読み出される。本実施形態では、ズーム倍率が1.0倍以上2.0倍未満では、画素加算読み出し(2×2画素加算)モードが設定され、ズーム倍率が2.0倍以上では、画素加算なしモードが設定される。
【0049】
ただし、イメージセンサ110の読み出しモードの変更だけでは、1.0倍、2.0倍など、決まった倍率への変更しかできない。そこで、任意のズーム倍率を得るため、RAW−YUV変換部121には、画像スケーリング機能が設けられている。RAW−YUV変換部121は、ズーム倍率に応じて、画像の一部の領域を切り出して拡大する。このようにすることで、任意のズーム倍率での撮像が可能となる。
【0050】
図2には、このようにして撮影継続中にズーム倍率を変更していった場合の読み出しモードの変化の一例が示されている。
【0051】
ズーム倍率の変更は、ユーザの操作部160の操作によって行われる。操作部160の操作により、ズーム倍率が変更されると、変更されたズーム倍率に関する情報を含む操作信号が操作部160から撮像信号処理制御部124へ出力される。撮像信号処理制御部124は、操作信号に含まれるズーム倍率に基づく制御信号をイメージセンサ110と、RAW−YUV変換部121とに出力する。イメージセンサ110と、RAW−YUV変換部121とは、協働して、変更されたズーム倍率での画像フレーム170を生成する。
【0052】
ズーム倍率は、画像フレームの切り替わりタイミングでのみ変更される。このため、1フレーム期間では、同じズーム倍率での画像フレーム170の出力が継続される。図2では、時刻T4、T5、T6、T8、T9、T10でズーム倍率が変更されている。
【0053】
図2の太線で示されるように、ユーザによる操作部160の操作によって、時刻T4からズーム倍率が徐々に大きくなっていく。この間、イメージセンサ110は、入力された制御信号に従って設定された読み出しモードで、RAW画像を出力する。RAW−YUV変換部121は、入力された制御信号に従って、画像スケーリング機能を用いて画像を切り出す。
【0054】
より具体的には、時刻T5まではズーム倍率が2.0倍未満なので、時刻T6までは、イメージセンサ110の読み出しモードとして画素加算読み出しモード(2×2画素加算)設定される。1.0倍から2.0倍までのズーム倍率の微調整は、RAW−YUV変換部121の画像スケーリング機能によって行われる。
【0055】
時刻T6になると、ズーム倍率が2.0倍に達するので、イメージセンサ110の読み出しモードは、画素加算なしモードに変更される。撮像信号処理部120は、この読み出しモードの変更に対応するために、自らの動作モードを変更すべくリセット・シーケンスを実施する。これにより、画像フレーム170の出力が停止される。この期間を移行期間とする。移行期間の開始時刻は時刻T6であり、終了時刻は時刻T7である。移行期間終了後(すなわち時刻T7から)、イメージセンサ110は、画素加算なしモードで画像フレームを出力する。
【0056】
このように、移行期間は、撮像信号処理部120の内部の動作モードの変更に始まる。移行期間は、撮像信号処理部120の設計仕様として与えられる所定の期間とする。
【0057】
移行期間は、例えば、以下に示すような理由によって設ける必要がある。
【0058】
撮像信号処理部120は、イメージセンサ110が画素毎の輝度値を出力する周期に同期して内部の信号処理を実施している。イメージセンサ110の読み出しモードの変更に伴ってフレームレートを変更しようとすると、撮像信号処理部120の動作周波数を変更し、その際に動作クロックを一時的に停止させる必要がある場合がある。
【0059】
また、撮像信号処理部120は、イメージセンサ110が各画素の輝度値を出力するタイミング(垂直同期信号、水平同期信号)に同期して内部の信号処理を実施するので、イメージセンサ110の読み出しモードを変更すると、イメージセンサ110から画素の輝度値を読み出すタイミングを変更する必要がある場合がある。さらに、画素の輝度値を読み出す領域(画角)を変更する場合にも、イメージセンサ110から画素の輝度値を読み出すタイミングを変更する必要がある場合がある。このような画素の輝度値を読み出すタイミングの変更に対応するため、撮像信号処理部120では、リセット・シーケンスを実施する必要がある。リセットシーケンスは、ある程度時間を要する処理である。この処理を行うため、移行期間が必要となる。
【0060】
移行期間終了後(時刻T7から)、イメージセンサ110の読み出しモードが、画素加算なしモードに設定された状態で、イメージセンサ110からの撮像信号の出力や、撮像信号処理部120における信号処理等が再開される。
【0061】
次に、撮像装置100内部における信号シーケンスについて、図3(A)乃至図3(G)を参照して説明する。
【0062】
図3(A)には、移行状態信号171が示されている。また、図3(B)には、撮像信号処理タイミングジェネレータ123のサンプリングパルス信号303が示されている。また、図3(C)には、RAW−YUV変換部121から出力される画像フレーム170が示されている。
【0063】
さらに、図3(D)には、画像符号化タイミングジェネレータ136から出力される垂直同期信号306が示されている。また、図3(E)には、表示データ読み出し部134に入力される画像フレーム173が示されている。また、図3(F)には、ストリーム生成部132に入力される画像フレーム172が示されている。また、図3(G)には、
画像フレーム172を符号化ストリーム311として表したものである。
【0064】
図3(A)乃至図3(G)における時刻T0乃至時刻T12は、図2の時刻T0乃至時刻T12に対応している。この実施形態では、時刻T0から時刻T12まで、ズーム倍率が図2に示すように変化した場合における撮像装置100の信号シーケンスが示されている。
【0065】
まず、時刻T0から時刻T6に至るまでの処理シーケンスについて説明する。
【0066】
図3(A)に示すように、移行状態信号生成部125から出力される移行状態信号171は、ズーム倍率が1.0以上2.0未満の時刻T0から時刻T6までは、ローレベルとなっている。
【0067】
図3(B)に示すサンプリングパルス信号303は、撮像信号処理制御部124を介して、RAW−YUV変換部121に出力されている。図3(C)に示すように、RAW−YUV変換部121は、サンプリングパルス信号303が立ち上がる度に、1枚の画像フレームを構成する各画素の撮像信号を、ラスタ・スキャン順に出力する。すなわち、撮像信号処理部120から画像フレーム170が出力されるタイミングは、撮像信号処理タイミングジェネレータ123から出力されるサンプリングパルス信号303に同期している。
【0068】
なお、図3(C)において、各画像フレーム170に示される数値は、撮像信号処理部120から出力される画像フレーム170に、時系列順の番号として付与されたフレーム番号である。図3(C)では、時刻T0からT1の間に最初の画像フレーム(フレーム番号1)が出力され、時刻T1からT2の間に次の画像フレーム(フレーム番号2)が出力されている。
【0069】
撮像信号処理部120から出力された画像フレーム170は、フレームバッファ131に記録される。
【0070】
一方、図3(D)に示す垂直同期信号306は、画像符号化制御部137を介して、表示データ読み出し部134に出力されている。図3(E)に示すように、表示データ読み出し部134は、垂直同期信号306が立ち上がる度に、1枚の画像フレーム173をフレームバッファ131から読み出す。フレームバッファ131から表示データ読み出し部134へは、フレーム番号1からフレーム番号6までの画像フレームに関しては、フレームバッファ131に記録された順で出力される。
【0071】
また、図3(D)に示す垂直同期信号306は、画像符号化制御部137を介して、ストリーム生成部132に出力されている。図3(F)に示すように、ストリーム生成部132は、垂直同期信号306が立ち上がる度に、1枚の画像フレーム172をフレームバッファ131から読み出して、動画像符号化を行う。
【0072】
画像フレーム172は、動画像符号化に適した順序(符号化順)にリオーダリング処理されている。図3(F)及び図3(G)で総合的に示すように、リオーダリング処理によって、Iピクチャはディスプレイ順より1フレーム、Bピクチャはディスプレイ順より2フレーム遅延して、Pピクチャはディスプレイ順と同じタイミングで、ストリーム生成部132に出力される。
【0073】
図3(G)に示すように、ストリーム生成部132によって生成された符号化ピクチャ311は、画面内符号化を行うIピクチャ、画面間符号化を行うPピクチャ、Bピクチャから選択可能である。本実施形態では、I、P、B、P、Bの順序を1単位として、その順序を繰り返して符号化が行われる。より具体的には、Pピクチャは、過去に符号化されたIピクチャを参照して符号化され、Bピクチャは、過去に符号化されたIピクチャ又はPピクチャを参照して符号化される。
【0074】
続いて、時刻T6においてズーム倍率が2.0倍となった後の処理について説明する。
【0075】
この場合、撮像信号処理制御部124は、イメージセンサ110、RAW−YUV変換部121及び移行状態信号生成部125に対して、その旨の制御信号を出力する。
【0076】
この制御信号を受けて、イメージセンサ110は、読み出しモードを画素加算なしモードに切り替える。また、この制御信号を受けて、RAW−YUV変換部121は、画像スケーリング機能の倍率を初期化する。さらに、移行状態信号生成部125は、移行状態信号171を、移行期間の開始時にローレベルからハイレベルに切り換える。これにて、撮像装置100は、移行状態に遷移する。この後、撮像信号処理部120は、リセット・シーケンスを実施する。
【0077】
移行状態では、撮像信号処理部120から出力される画像フレーム170が乱れているので、移行状態信号171がハイレベルになったことを検出した移行状態制御部138は、画像フレーム170を記録せず、移行状態の直前に記録された画像フレームをリピート出力するように、フレームバッファ131を制御する。
【0078】
この制御により、フレームバッファ131から、画像フレーム172、173として、移行状態となる直前に記録された画像フレームがリピート出力される。図3(E)では、フレーム番号6の画像フレームが5回連続で、表示データ読み出し部134へリピート出力されている。
【0079】
なお、移行状態信号171は、移行状態信号生成部125の内部のメモリやレジスタ等の記憶領域に保持されているが、撮像信号処理部120のリセットがあっても、ハイレベルに維持されるように構成されており、撮像信号処理部120がリセット・シーケンスを実施している間も、その値が保持されるようになっている。
【0080】
続いて、移行期間が終了した時刻T7以降の処理について説明する。この時点では、撮像信号処理部120のリセット・シーケンスは終了している。
【0081】
時刻T7において、図3(A)に示すように、移行状態信号生成部125は、移行状態信号171を、ハイレベルからローレベルに切り換える。移行状態信号171がローレベルになったことを検出した移行状態制御部138は、フレームバッファ131を、画像フレーム170を記録して出力する状態に戻す。
【0082】
この時点で、イメージセンサ110は、すでに画素加算なしモードに切り替わっており、画素加算なしモードで撮像信号を出力している。図3(C)に示すように、RAW−YUV変換部121は、入力した撮像信号に基づいて、画像フレーム170としてフレーム番号7以降の画像フレームを生成して出力する。
【0083】
図3(E)に示すように、表示データ読み出し部134は、時刻T0乃至時刻T6と同様に、垂直同期信号306が立ち上がる度に、画像フレーム173を1枚ずつフレームバッファ131から読み出す。一方、図3(F)及び図3(G)に示すように、ストリーム生成部132は、時刻T0乃至時刻T6と同様に、垂直同期信号306が立ち上がる度に、1枚の画像フレーム172をフレームバッファ131から読み出して、動画像符号化を行う。
【0084】
なお、移行期間の長さはフレーム周期の整数倍になるとは限らないため、移行状態から通常状態に復帰した後は、撮像信号処理部120の出力タイミングが、移行前のタイミングとずれてしまうことがある。どのようなタイミングで撮像信号処理部120からフレームが出力されたとしても、画像符号化を可能とするためには、画像フレーム170を、画像符号化部タイミングジェネレータ123から出力される垂直同期信号306に同期させるフレームシンクロナイザの機能が必要となる。本実施形態では、画像符号化部130内のフレームバッファ131を用いて、フレームシンクロナイザの機能が実現されている。
【0085】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、ズーム倍率の変更に伴う撮像信号処理部120の動作モードの切り替えにより、画像フレーム170が不安定となっている間は、切り替わる直前の画像フレーム170を用いて動画像符号化等を継続するので、その間の画像の乱れを防止することができる。
【0086】
リセット・シーケンスに影響されずに画像フレームをリピートし、フレームシンクロナイザの機能を実現して、画像の乱れを防止するためには、RAW−YUV処理部121から出力された画像フレーム170を記録するためのバッファを、撮像信号処理部120より後段に用意する必要がある。しかしながら、フレームバッファを新たに追加すると、製造などにかかるコストが増えてしまう。動画像符号化におけるリオーダリング処理を行うために、画像符号化部130は、フレームバッファ131を備えている。そこで、本実施形態では、このフレームバッファ131を、画像フレームのリピート出力にも活用する。これにより、撮像装置100内に、新たなバッファを追加しなくて済むようになるので、より少ないコストで画像の乱れを防止することができる。
【0087】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0088】
上記第1の実施形態では、イメージセンサ110の読み出しモードの変更に伴い、撮像信号処理部120でリセット・シーケンスを行うなどの理由により、画像フレームを出力できない期間(移行期間)が発生するとして、その期間に生じる画像の乱れを防止した。
【0089】
本実施形態では、撮像信号処理部120が、自動露出(Auto Exposure:AE)制御を行う点に着目する。より具体的には、本実施形態では、イメージセンサ110の読み出しモードが切り替わってからAE制御が安定するまでに1フレームから数フレーム分の時間を要する点に着目する。
【0090】
読み出しモードを、画素加算読み出しモードと画素加算なしモードとの間で変更すると、出力される画素のゲインが変化する。ゲインの変化を補正し、AE制御の評価値である測光値が収束するまでには、数フレーム分の時間を要する。このため、撮像信号処理部120のリセット・シーケンスが発生しないか、もしくは終了した後であっても、測光値が収束していない場合には、撮像信号処理部120から出力される画像フレームはその画質が安定せず、画像が乱れてしまう。
【0091】
そこで、本実施形態では、測光値が収束する前に発生する画像の乱れを防止し、スムーズに電子ズームを行う。
【0092】
図4には、本実施形態の撮像装置100の構成が示されている。図4に示すように、本実施形態では、撮像信号処理制御部124がAE制御部400を備えている点が上記第1の実施形態と異なる。
【0093】
AE制御部400は、制御信号をイメージセンサ110に出力するとともに、制御信号を移行状態信号生成部125に出力する。
【0094】
図5(A)乃至図5(D)を参照して、本実施形態に係る移行期間について説明する。
図5(A)には、絞り(F)値の制御信号(F値制御信号)が示されている。また、図5(B)には、シャッタースピード制御信号が示されている。また、図5(C)には、測光値が示されている。さらに、図5(D)には、ズーム倍率が示されている。
【0095】
AE制御の動作モードには、絞り優先モードと、シャッタースピード優先モードとがある。それぞれの動作モードでは、絞り(F値)・シャッタースピードのどちらかの制御量が、ユーザの指定する数値に優先的に合わされており、もう1つの制御量が、露出が適正になるように、適応的に変更される。
【0096】
図5(A)乃至図5(D)では、絞り優先モードの場合が示されている。図5(A)に示すように、絞りは‘5.6’に設定されている。本実施形態では、図5(D)に示すように、時刻T6においてズーム倍率が2.0倍となり、イメージセンサ110の読み出しモードが切り替え、撮像信号処理部110の動作モードを切り替えが開始されてから、図5(C)に示すように、時刻T7において測光値が最適になるまで、図5(B)に示すように、シャッタースピードを調整してAE制御が行われる。
【0097】
AE制御を行っている間(時刻T6から時刻T7まで)は、測光値が最適ではないので、画像が乱れている。本実施形態では、イメージセンサ110の読み出しモードが切り替わり、撮像信号処理部120の動作モードの変更が開始されるとともに、AE制御が開始された時点から測光値が収束するまでの期間を移行期間とする。
【0098】
図5(A)乃至図5(D)では、絞り優先モードの場合について示しているが、シャッタースピード優先モードにおいても、同様に、測光値が最適になるまで、シャッタースピードを調整してAE制御が行われ、移行期間が継続される。
【0099】
本実施形態では、移行状態制御部125が、AE制御部400から出力される制御信号に基づいて、動作モード変更後(時刻T6後)の測光値を監視し、収束するまでの期間(時刻T7までの期間)が移行期間となるように、移行状態信号171を生成して出力する。出力された移行状態信号171は移行状態制御部138に入力される。移行状態制御部138は、上記第1の実施形態と同様に、移行期間に出力された画像フレームを、表示・符号化に用いないようにして、画像の乱れを防止する。
【0100】
本実施形態によれば、AE制御により、測光値が収束せず画像フレーム170が不安定となっている間は、切り替わる直前の画像フレーム170を用いて動画像符号化等を継続するので、その間の画像の乱れを防止することができる。
【0101】
また、上記第1の実施形態と同様に、符号化用に用いられるフレームバッファ131を、画像フレームのリピート出力に用いることで、新たなバッファを追加しなくて済むようになるので、より少ないコストで画像の乱れを防止することができる。
【0102】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0103】
本実施形態では、撮像信号処理部120がオートホワイトバランス(Auto White Balance; AWB)制御が行う点に着目する。より具体的には、本実施形態では、イメージセンサ110の読み出しモードを切り替えた後に、AWB制御が安定するまでに1フレームから数フレーム分の時間を要する点に着目する。
【0104】
読み出しモードを、画素加算読み出しモードと画素加算なしモードとの間で変更すると、イメージセンサ110の撮像素子の各画素のゲインが変化する。ゲインの変化を補正し、AWB制御の評価値である色温度が所望の値に収束するまでには、数フレーム分の時間を要する。このため、撮像信号処理部120のリセット・シーケンスが発生しないか、もしくは終了した後であっても、色温度が収束していない場合には、撮像信号処理部120から出力される画像フレームはその画質が安定しておらず、画像が乱れてしまう。
【0105】
本実施形態では、色温度が収束する前に発生する画像の乱れを防止し、スムーズに電子ズームを行う。
【0106】
図6には、第3の実施形態に係る撮像装置100の構成が示されている。図6に示すように、本実施形態では、撮像信号処理制御部124がAWB制御部600を備えている点が、上記第1の実施形態と異なる。
【0107】
AWB制御部600は、制御信号をRAW−YUV変換部121に出力するとともに、その制御信号を移行状態信号生成部125に通知する。
【0108】
図7(A)乃至図7(D)を参照して、本実施形態に係る移行期間について説明する。図7(A)には、AWB制御部600からRAW−YUV変換部121に出力されるR/Gゲイン制御信号が示されている。また、図7(B)には、AWB制御部600からRAW−YUV変換部121に出力されるB/Gゲイン制御信号が示されている。また、図7(C)には、色温度が示されている。さらに、図7(D)には、ズーム倍率が示されている。
【0109】
AWB制御部600は、撮像された画像の色温度を解析し、所望の色温度(例えば6500K)に変換されるように、R/Gゲイン、B/Gゲインを調整する。AWB制御を行っている間(時刻T6から自国T7まで)は、色温度が最適ではないので、画像が乱れている。本実施形態では、イメージセンサ110の読み出しモードが切り替わり、撮像信号処理部120の動作モードの切り替えが開始されるとともに、AWB制御部600のAWB制御が開始されてから、色温度が収束するまでの期間を移行期間とする。
【0110】
本実施形態では、移行状態制御部138は、AWB制御部600から出力される制御信号に基づいて、撮像信号処理部120の動作モード変更後の色温度を監視し、色温度が収束するまでの期間が移行期間となるように、移行状態信号171の信号レベルをハイレベルとする。移行状態信号171は移行状態制御部138に入力される。移行状態制御部138は、上記第1の実施形態と同様に、移行期間に撮像信号処理部120から出力された画像フレーム170を、表示・符号化に用いないようにして、画像の乱れを防止する。
【0111】
本実施形態によれば、AWB制御により、色温度が収束せず画像フレーム170が不安定となっている間は、切り替わる直前の画像フレーム170を用いて動画像符号化等を継続するので、その間の画像の乱れを防止することができる。
【0112】
また、上記第1の実施形態と同様、符号化用に用いられるフレームバッファ131を、画像フレームのリピート出力に用いることで、新たなバッファを追加しなくて済むようになるので、より少ないコストで画像の乱れを防止することができる。
【0113】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0114】
本実施形態では、撮像信号処理部120が、フレーム・ノイズ・リダクション(Frame Noise Reduction; FNR)処理を行う点に着目する。本実施形態では、イメージセンサ110の読み出しモードを切り替え、撮像信号処理部120の動作モードを切り換えた後に、FNR処理から出力される画像フレーム170の画質の安定に数フレーム分の時間を要する点に着目する。
【0115】
FNR処理は、連続して撮像された画像フレームを用いて、主として静止する被写体のノイズを低減する処理である。本実施形態では、連続する3枚の画像フレームを用いてFNR処理を行う場合について説明する。
【0116】
FNR処理では、連続した画像フレームの画像を比較して、その差分をノイズと判定して、ノイズ除去を行う。しかしながら、撮像信号処理部120の動作モードを切り替えると、その切り替え前後で、RAW−YUV処理部121から出力される画像フレームの画質が大きく変化するため、FNR処理を実施すると、出力される画像に乱れが生じる。本実施形態では、FNR処理を実施する場合に生じる画像の乱れを防止し、スムーズに電子ズームを行う。
【0117】
図8には、本実施形態に係る撮像装置100の構成が示されている。本実施形態では、撮像信号処理制御部124がFNR処理部800と、FNR用フレームバッファ801を備えている点が、上記第1の実施形態と異なる。
【0118】
FNR処理部800は、RAW−YUV変換部121から出力される画像フレームを、入力してFNR処理を行い、FNR処理を行った画像フレーム170をフレームバッファ131に出力する。
【0119】
FNR用フレームバッファ801は、FNR処理部800から、画像フレームを受け取り、一時的に記録する。また、FNR用フレームバッファ801は、FNR処理部800に対して、過去2枚前までに記録された画像フレームを出力する。ここでは、2つ前の画像フレームを画像フレームAとし、1つ前の画像フレームを画像フレームBとする。
【0120】
図9(A)乃至図9(D)を参照して、本実施形態に係る移行期間について説明する。図9(A)には、FNR用フレームバッファ801に記録される2フレーム前の画像フレームAが示されている。図9(B)には、FNR用フレームバッファ801に記録される1フレーム前の画像フレームBが示されている。図9(C)には、RAW−YUV変換部121から出力される画像フレームが示されている。さらに、図9(D)にはズーム倍率が示されている。
【0121】
本実施形態のFNR処理では、RAW−YUV変換部121が出力する画像フレーム1枚と、FNR用フレームバッファ801から読み取った過去2枚分の画像フレームA、Bの、計3枚を用いて、ノイズ除去が行われる。例えば、時刻T2から時刻T3の間では、フレーム番号1の画像フレームAと、フレーム番号2の画像フレームBと、RAW−YUV変換部121から出力されたフレーム番号3の画像フレームとを用いてノイズ除去が行われる。
【0122】
時刻T6と時刻T7の間、すなわち撮像信号処理部120の動作モードの変更前後に、RAW−YUV変換部121から出力された画像フレームを混在させてFNR処理を実施すると、画像が乱れてしまう。本実施形態では、これを防ぐために、動作モード変更後から、FNR処理に必要な2フレーム分の期間(すなわち時刻T6から時刻T7までの期間)を移行期間とする。
【0123】
本実施形態においては、移行状態信号生成部125は、FNR処理部800から出力される情報に基づいて、FNR処理に用いられる画像フレームを監視し、FNR処理に用いられる全ての画像フレームが同じ動作モードであるときにRAW−YUV部121から出力されていない期間が移行期間となるように、移行状態信号171を生成して出力する。出力された移行状態信号171は移行状態制御部138に入力される。移行状態制御部138は、上記第1の実施形態と同様に、移行期間に撮像信号処理部120から出力された画像フレームを、表示・符号化に用いないようにして、画像の乱れを防止する。
【0124】
本実施形態によれば、FNR処理が行われた画像フレーム170が不安定となっている間は、撮像信号処理部120の動作モードが切り替わる直前の画像フレーム170を用いて動画像符号化等を継続するので、その間の画像の乱れを防止することができる。
【0125】
また、上記第1の実施形態と同様、符号化用に用いられるフレームバッファ131を、画像フレームのリピート出力に用いることで、新たなバッファを追加しなくて済むようになるので、より少ないコストで画像の乱れを防止することができる。
【0126】
なお、本実施形態では、移行期間を2フレーム分としたが、この移行期間は、FNRフレームに必要なフレーム数に応じて増減する。
【0127】
上記実施の形態の一部又は全ては、以下の付記のようにも記載されうるが以下には限定されない。
【0128】
(付記1)
撮像素子の光電変換により得られた撮像信号をズーム倍率に応じた読み出しモードで出力するイメージセンサと、
前記ズーム倍率が変更された場合の前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えに伴って動作モードを切り換えながら、前記イメージセンサから出力された撮像信号に対する信号処理を行って画像フレームを出力する撮像信号処理部と、
前記撮像信号処理部から出力された画像フレームをフレームバッファに一時記憶し、前記フレームバッファから出力された画像フレームに対して動画像符号化を行う画像符号化部と、
操作入力により、前記ズーム倍率を変更可能な操作部と、
を備え、
前記撮像信号処理部は、
前記撮像信号処理部の動作モードの切り替えが開始された時点から正常な画像フレームが出力可能となるまでの移行期間中に移行状態信号を有効とし、
前記画像符号化部は、
前記移行状態信号が有効となっている間では、前記移行期間直前にフレームバッファに記憶された画像フレームを用いて、動画像符号化を行う、
ことを特徴とする撮像装置。
【0129】
(付記2)
前記撮像信号処理部は、
前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えられると、リセット・シーケンスを実行し、
前記撮像信号処理部の動作モードの変更が開始された時点から前記撮像信号処理部のリセット・シーケンスが終了するまでの期間を前記移行期間として、前記移行状態信号を有効とする、
ことを特徴とする付記1に記載の撮像装置。
【0130】
(付記3)
前記撮像信号処理部は、
前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えられると、前記イメージセンサから出力された撮像信号に対して自動露出制御を行い、
前記撮像信号処理部の動作モードの変更が開始された時点から前記自動露出制御により測光値が収束するまでの期間を前記移行期間として、前記移行状態信号を有効とする、
ことを特徴とする付記1に記載の撮像装置。
【0131】
(付記4)
前記撮像信号処理部は、
前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えられると、前記イメージセンサから出力された撮像信号に対してオートホワイトバランス制御を行い、
前記撮像信号処理部の動作モードの変更が開始された時点から前記オートホワイトバランス制御により色温度が収束するまでの期間を前記移行期間として、前記移行状態信号を有効とする、
ことを特徴とする付記1に記載の撮像装置。
【0132】
(付記5)
前記撮像信号処理部は、
出力する前記画像フレームに対してフレーム・ノイズ・リダクション処理を行い、
前記撮像信号処理部の動作モードの変更が開始された時点から前記フレーム・ノイズ・リダクション処理に必要なフレーム分の時間が経過するまでの期間を前記移行期間として、前記移行状態信号を有効とする、
ことを特徴とする付記1に記載の撮像装置。
【0133】
(付記6)
撮像素子の光電変換により得られた撮像信号をズーム倍率に応じた読み出しモードで出力するイメージセンサと、
前記ズーム倍率が変更された場合の前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えに伴って動作モードを切り換えながら前記イメージセンサから出力された撮像信号に対する信号処理を行って画像フレームを出力する撮像信号処理部と、
前記撮像信号処理部から出力された画像フレームをフレームバッファに一時記憶し、前記フレームバッファから出力された画像フレームに対して動画像符号化を行う画像符号化部と、
操作入力により、前記ズーム倍率を変更可能な操作部と、
を備える撮像装置の電子ズーム方法であって、
前記撮像信号処理部において、
前記撮像信号処理部の動作モードの切り替えが開始された時点から正常な画像フレームが出力可能となるまでの移行期間中に移行状態信号を有効とする工程と、
前記画像符号化部において、
前記移行状態信号が有効となっている間では、前記移行期間直前にフレームバッファに記憶された画像フレームを用いて、動画像符号化を行う工程と、
を含む電子ズーム方法。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、電子ズーム機能を有する撮像装置に好適である。
【符号の説明】
【0135】
100 撮像装置
110 イメージセンサ
120 撮像信号処理部
121 RAW−YUV変換部
122 撮像信号処理クロック生成部
123 撮像信号処理タイミングジェネレータ
124 撮像信号処理制御部
125 移行状態信号生成部
130 画像符号化部
131 フレームバッファ
132 ストリーム生成部
133 参照フレームバッファ
134 表示データ読み出し部
135 画像符号化クロック生成部
136 画像符号化タイミングジェネレータ
137 画像符号化制御部
138 移行状態制御部
140 記録部
150 表示部
160 操作部
170 画像フレーム
171 移行状態信号
172 画像フレーム
173 画像フレーム
303 サンプリングパルス信号
306 垂直同期信号
311 符号化ストリーム
400 AE制御部
600 AWB制御部
800 FNR処理部
801 FNR用フレームバッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子の光電変換により得られた撮像信号をズーム倍率に応じた読み出しモードで出力するイメージセンサと、
前記ズーム倍率が変更された場合の前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えに伴って動作モードを切り換えながら、前記イメージセンサから出力された撮像信号に対する信号処理を行って画像フレームを出力する撮像信号処理部と、
前記撮像信号処理部から出力された画像フレームをフレームバッファに一時記憶し、前記フレームバッファから出力された画像フレームに対して動画像符号化を行う画像符号化部と、
操作入力により、前記ズーム倍率を変更可能な操作部と、
を備え、
前記撮像信号処理部は、
前記撮像信号処理部の動作モードの切り替えが開始された時点から正常な画像フレームが出力可能となるまでの移行期間中に移行状態信号を有効とし、
前記画像符号化部は、
前記移行状態信号が有効となっている間では、前記移行期間直前にフレームバッファに記憶された画像フレームを用いて、動画像符号化を行う、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像信号処理部は、
前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えられると、リセット・シーケンスを実行し、
前記撮像信号処理部の動作モードの変更が開始された時点から前記撮像信号処理部のリセット・シーケンスが終了するまでの期間を前記移行期間として、前記移行状態信号を有効とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像信号処理部は、
前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えられると、前記イメージセンサから出力された撮像信号に対して自動露出制御を行い、
前記撮像信号処理部の動作モードの変更が開始された時点から前記自動露出制御により測光値が収束するまでの期間を前記移行期間として、前記移行状態信号を有効とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像信号処理部は、
前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えられると、前記イメージセンサから出力された撮像信号に対してオートホワイトバランス制御を行い、
前記撮像信号処理部の動作モードの変更が開始された時点から前記オートホワイトバランス制御により色温度が収束するまでの期間を前記移行期間として、前記移行状態信号を有効とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像信号処理部は、
出力する前記画像フレームに対してフレーム・ノイズ・リダクション処理を行い、
前記撮像信号処理部の動作モードの変更が開始された時点から前記フレーム・ノイズ・リダクション処理に必要なフレーム分の時間が経過するまでの期間を前記移行期間として、前記移行状態信号を有効とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮像素子の光電変換により得られた撮像信号をズーム倍率に応じた読み出しモードで出力するイメージセンサと、
前記ズーム倍率が変更された場合の前記イメージセンサの読み出しモードの切り替えに伴って動作モードを切り換えながら前記イメージセンサから出力された撮像信号に対する信号処理を行って画像フレームを出力する撮像信号処理部と、
前記撮像信号処理部から出力された画像フレームをフレームバッファに一時記憶し、前記フレームバッファから出力された画像フレームに対して動画像符号化を行う画像符号化部と、
操作入力により、前記ズーム倍率を変更可能な操作部と、
を備える撮像装置の電子ズーム方法であって、
前記撮像信号処理部において、
前記撮像信号処理部の動作モードの切り替えが開始された時点から正常な画像フレームが出力可能となるまでの移行期間中に移行状態信号を有効とする工程と、
前記画像符号化部において、
前記移行状態信号が有効となっている間では、前記移行期間直前にフレームバッファに記憶された画像フレームを用いて、動画像符号化を行う工程と、
を含む電子ズーム方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−151787(P2012−151787A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10731(P2011−10731)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】